JP4412866B2 - インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はインクジェットヘッド及びインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置等の画像記録装置或いは画像形成装置として用いるインクジェット記録装置において、インク滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する吐出室(インク流路、インク室、圧力室、液室、加圧室、加圧液室等とも称される。)と、この吐出室の壁面を形成する振動板と、この振動板に対向する電極とを有し、振動板を静電力で変形させて吐出室内の圧力/体積を変化させることによりノズルからインク滴を吐出させる静電型インクジェットヘッドを搭載したものがある。
【0003】
このような静電気力を利用したインクジェットヘッドは、振動板とそれと対向して設けられた個別電極に電圧を印加し、振動板を静電気力により変形させることによりノズルからインク液滴を吐出するため、振動板の機械的変形特性がインク噴射特性に大きく影響する。そのため、振動板厚の薄膜化及び高精度な制御を要する。
【0004】
そこで、従来、振動板の薄膜化及び高精度の厚さ制御に関しては、エッチングストップ層を用いた技術が有効であり、そのエッチングストップ層として高濃度ボロン層を用いたものが知られている(例えば、特開平6−71882号公報、特開平6−23986号公報、特開平9−267479号公報など)。
【0005】
また、振動板と電極間距離、すなわちギャップ寸法の極めて高精度な制御を要し、基板の積層構造からなるインクジェットヘッドの製造において、それが可能な接合が不可欠である。特に、シリコンウエハ同士の接合には、SOI(silicon-on-insulator)ウエハの製造などに用いられ、信頼性の高い強固な接合力が得られる接合法として一般に知られている直接接合法がそれを可能とする。一般に、SOIウエハの製造などに用いられている直接接合では1100〜1200℃の高温で行われており、シリコン酸化膜の溶融の効果によって高い接合信頼性を得ている。そのため、そこで、エッチングストップ層として高濃度ボロン層を用いたものでは、シリコンウエハ同士を直接接合法でいずれも1100℃で接合している(特開平H6−23986号公報、特開平9−267479号公報など)。
【0006】
さらに、共通電極としても使用する振動板と対向電極(個別電極)との間での残留電荷の発生を抑制し、信頼性の向上を図るため、例えば、特開平8−118626号公報に記載のインクジェットヘッドでは、共通電極(振動板)と個別電極の各々の表面にシリコン酸化膜を形成している。共通電極(振動板)と個別電極の各々の表面に絶縁膜としてのシリコン酸化膜を設けることで、インクジェットヘッドの駆動時に、共通電極と個別電極はいずれも直接当接することが避けられ、絶縁膜同士が当接することとなるので、各々の電極は衝突や繰り返しストレス等による劣化や損傷がないためヘッドとして耐絶縁性と耐久性が向上し、長寿命なインクジェットヘッドが得られる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、インクジェットヘッドの駆動時に、共通電極(振動板)と個別電極との短絡を防止するには、共通電極(振動板)か個別電極かの少なくともどちらかに絶縁膜(シリコン酸化膜)があれば良いが、共通電極(振動板)は繰り返し機械的に変形をするため、個別電極よりも劣化や損傷が起こり易い。従って、少なくとも、共通電極(振動板)の表面には絶縁膜(シリコン酸化膜)が在ることが好ましいと言える。
【0008】
ところが、これらの場合、接合プロセスに視点を移すと、シリコン酸化膜同士の接合となる。シリコン酸化膜同士の接合は、シリコン酸化膜の溶融の効果が不可欠であり、接合信頼性を得るにはシリコンとシリコン酸化膜との接合よりも、更に高温(1200℃以上)で接合する必要がある。
【0009】
しかしながら、電極基板の耐熱性や、上述のように振動板に高濃度ボロン層を用いた場合などはボロンの再分布はそのまま振動板の厚さ及びそのばらつきに影響を与え、また、接合時に使用する炉のチューブなどが石英では耐熱性が無いため、SiCなどの耐熱性の良いチューブを用いる必要があり、設備面でも限定される。
【0010】
したがって、上述のように少なくとも共通電極(振動板)に絶縁膜が付設されているようなアクチュエータないしは静電型インクジェットヘッドを製造する工程ににおいて、接合温度の低温化が重要な技術課題となる。
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、接合温度の低温化を図り、信頼性の向上を図ることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明に係るインクジェットヘッドは、
インク滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する吐出室と、この吐出室内の壁面を形成する振動板と、この振動板にギャップを介して対向する電極とを有し、前記振動板を静電力で変形させて前記ノズルからインク滴を吐出させるインクジェットヘッドにおいて、
前記振動板を形成する第一の基板と、前記電極を形成する第二の基板と、を備え、
前記第一の基板の前記第二の基板との接合面にはシリコン酸化膜が形成され、
前記第二の基板の前記第一の基板との接合面にはボロンが含有されたポリシリコン膜が形成されて、
前記第一の基板と前記第二の基板とは前記シリコン酸化膜と前記ボロンが含有されたポリシリコン膜が接して接合され、
前記第二の基板には前記電極となるポリシリコン層が設けられ、前記ポリシリコン層の前記吐出室に対応する部分に彫り込み部が形成されている
構成としたものである。
【0019】
本発明に係るインクジェット記録装置は、本発明に係るいずれかのインクジェットヘッドを搭載したものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。先ず、本発明の第1実施形態について図1乃至図3を参照して説明する。なお、図1は同実施形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視図、図2は同ヘッドのノズル板を除いた状態の平面説明図、図3は同ヘッドの吐出室長手方向に沿う略断面説明図、図4は同ヘッドの吐出室短手方向に沿う略断面説明図である。
【0021】
このインクジェットヘッドは、第一の基板である流路基板1と、流路基板1の下側に設けた第二の基板である電極基板2と、流路基板1の上側に設けた第三の基板であるノズル板3とを積層した積層構造体からなり、これらにより、複数のノズル4が連通するインク流路である吐出室6、吐出室6に流体抵抗部7を介して連通する共通液室8などを形成している。
【0022】
流路基板1は、(110)面方位の単結晶シリコン基板からなり、吐出室6及びこの吐出室6の底部となる壁面を形成する振動板10を形成する凹部(凹部間が吐出室6の隔壁となる)、共通液室8を形成する凹部などを形成している。この流路基板1の電極基板2側の表面には駆動時に振動板10と後述する電極15との絶縁破壊やショートが起こるのを防止するため、熱酸化により0.1μmのSiO2などの保護絶縁膜11を成膜している。
【0023】
この流路基板1は、例えばなお、単結晶シリコン基板に振動板厚みの高濃度p型不純物拡散層としての高濃度ボロン拡散層(ボロンドープ層)を形成し、アルカリ異方性エッチングにより、吐出室6、共通液室8などを形成する際に、ボロンドープ層が露出した時点でエッチングレートが極端に小さくなる、いわゆるエッチストップ技術を用いて、振動板10を所望の板厚に作製したものである。なお、高濃度p型不純物層を形成する不純物としては、ボロン・ガリウム・アルミニウム等があるが、半導体分野においてはp型不純物層を形成する不純物としボロンが一般的であり、ここでもボロンを不純物とした。
【0024】
電極基板2は、厚み625μmのシリコン基板からなり、その上面には、熱酸化膜12が厚さ0.6μm形成されており、その熱酸化膜12上に振動板10に対向する個別電極15、個別電極15上にはシリコン酸化膜からなる絶縁膜17が形成され、この絶縁膜17にギャップ16を構成することになる凹部14を設けている。電極15と振動板10によって、振動板10を変位させて吐出室6の内容積を変化させる静電型アクチュエータ部(圧力発生手段)を構成している。
【0025】
そして、絶縁膜17上において、流路基板1との接合面にはポリシリコン膜25を形成している。すなわち、接合が困難であるシリコン酸化膜同士の接合とならないように、接合面にはポリシリコン膜25を設けることにより、接合を「シリコン酸化膜(ここでは絶縁膜11に相当)とポリシリコンとの接合」とすることで、シリコン酸化膜同士の接合に比べ、低温で、接合信頼性が高い直接接合を可能としている。
【0026】
ポリシリコン膜25は成膜直後にはAFMを用いた表面性の評価で、表面粗さ:Ra値が3〜4nm程度であったが表面を研磨加工することで、Ra値が0.15〜0.25nmとなり、非常に良好な直接接合が可能な表面性が得られる。なお、ポリシリコン膜にボロンを含有させることで、接合時にボロンがシリコン酸化膜に拡散し、接合界面近傍のシリコン酸化膜の融点を下げるため、さらに接合の低温化及び信頼性の向上が図れる。
【0027】
そこで、上述したように流路基板1と電極基板2とをシリコン酸化膜である絶縁膜11とポリシリコン膜25とを介した直接接合のプロセスで接合している。なお、流路基板1と電極基板2とを接合した後のギャップ16の長さ(振動板10と電極15との間隔)は、0.25μmとなっている。
【0028】
ノズル板3は、例えばガラス又はプラスチック、ステンレス、コバール(Fe29-Ni-17Co)等の金属、シリコン等の薄板からなり、吐出室6に対応する位置に吐出室6の個数分のノズル4が形成されている。また、流路基板1の吐出室6と共通液室8を連通するように流体抵抗部7を形成している。
【0029】
そして、流路基板1には共通電極12を設けている。この共通電極12は、Al等の金属をスパッタしてシンタリング(熱拡散)することにより付設しており、流路基板1との導通を確保して、半導体基板よりなる流路基板1とオーミックコンタクトを取っている。そして、共通電極12と各個別の電極15に通じる電極パッド部15aに、例えばリード線をボンディングしてドライバ21を接続する。
【0030】
さらに、電極基板2には流路基板1の共通液室8にインクを供給するインク供給口19となる貫通口を形成している。インク取り入れ口18にはインク供給管を接着して接続することにより、共通液室8、吐出室6等には、インクタンク(図示省略)からインク取り入れ口18を通して供給されたインクを充填する。なお、使用するインクとしては、水、アルコール、トルエン等の主溶媒にエチレングリコールなどの界面活性剤と、染料又は顔料とを溶解又は分散させることにより調製したものを用いているが、インクジェットヘッドにヒーターなどを付設すれば、ホットメルトインクも使用できる。
【0031】
このように構成したインクジェットヘッドにおいては、個別の電極15に対して、ドライバ21により、例えば、正の電圧パルスを印加することで、電極15の表面が正の電位に帯電し、この電極15に対向する振動板10の下面は負の電位に帯電するので、振動板10は静電気力によって吸引されて個別の電極15との間隔が狭まる方向へ撓む。このとき、振動板10が撓むことにより、インクがリザーバ(共通液室)8からオリフィス(流体抵抗部)7を経由して吐出室6に供給される。
【0032】
そこで、個別の電極15へ印加している電圧パルスをオフにし、蓄えられている電荷を放電することによって、上述のように撓んだ振動板10は元の位置に復元し、この復元動作によって、吐出室6の内圧が急激に上昇して、ノズル4からインク滴が記録紙(図示省略)に向けて吐出される。
【0033】
次に、本発明に係るインクジェットヘッドの第2実施形態についてその製造工程とともに図5及び図6を参照して説明する。
先ず、図5を参照して電極基板の製造工程について説明する。
同図(a)に示すように、まず、厚さ625μm(100)面方位のシリコン基板32の片側に厚さ0.6μmの熱酸化膜32aを形成し、全面に後に電極となるポリシリコン膜をCVD法により300nm堆積し、リンをデポ拡散(PHとOガスを拡散源としてPSGがデポされ、950℃60分の熱処理が施され、その後PSG膜を除去)し、リンがドープされた低抵抗のポリシリコン層33が形成される。
【0034】
なお、ここではリンのドープにデポ拡散を用いたが、イオン注入法などによってポリシリコン膜にドーピングしてもよい。また、ここでは電極材料にN型(リンがドープされた)ポリシリコンを用いたが、タングステンなどの高融点金属、タングステンシリサイドなどの高融点シリサイド、或いはそれらとポリシリコンとの積層体を用いることにより、さらに低抵抗化が図れる。
【0035】
次に、同図(b)に示すように、CVD法によりポリシリコン層33上にポリシリコン膜25を120nm堆積し、ポリシリコン膜25にボロンを30keV、1E16(atoms/cm2)でイオン注入する。ここで、ポリシリコン膜25にボロンを含有させることで、後の接合時(熱処理)にボロンが第一の基板のシリコン酸化膜11に拡散し、接合界面近傍のシリコン酸化膜の融点を下げるため、さらに接合の低温化及び信頼性の向上が図れる。
【0036】
ここで用いたイオン注入に関しては、後工程の研磨による膜減りを考慮して、ポリシリコン膜中にピーク濃度或いはピーク濃度の近傍が位置するように、注入条件を設定することが望ましい。なお、ここで、ポリシリコン膜25に、ボロンをドープする方法として、ポリシリコン成膜中にボロンを導入する通称ドープドポリシリコンや、固体拡散法、塗布拡散法などを用いても良い。
【0037】
その後、ポリシリコン膜25表面を研磨加工する。この研磨はCMP(chemical-mechanical-polishing)と呼ばれ、シリコンウエハの鏡面研磨や半導体プロセスにおける基板の平坦化に使用される技術である。研磨加工前のポリシリコン膜25の表面はAFMを用いた表面性の評価で、表面粗さ:Ra値が3〜4nm程度であったのがこの研磨加工により表面粗さ:Ra値が0.2nm以下となり、非常に良好な直接接合が可能な表面性が得られる。なお、この研磨によりポリシリコン膜25が70nm膜減りした。この膜減り量のばらつきは、研磨条件の最適化で+―7nmに抑制することが可能である。
【0038】
その後、同図(c)に示すように、吐出室6に対応する部分にはギャップを形成する彫り込み部14をポリシリコン膜25及びポリシリコン33をエッチング加工して形成する。この彫り込み部14の形成は、グラデーションパターンを有するマスクを用いたフォトリソグラフィー技術によりレジスト形状に傾斜をつけ、Arガスなどを用いてレジスト形状を転写するようにエッチングを行うことにより形状が非平行状態であるように形成した。
【0039】
次に、同図()に示すように、周知のフォトリソグラフィー技術及びドライエッチング技術により、ポリシリコン膜25及びポリシリコン33を個別の電極に分離することで個別電極15を形成して、電極基板2を得た。
【0040】
ここで、ギャップ16を形成する彫り込み部14は個別電極15自体に形成されているので、従来のインクジェットヘッドにおけるギャップ形成(絶縁膜に彫り込み部を形成し、彫り込み部に電極膜を形成するので、ギャップのバラツキは彫り込み量のバラツキと電極膜の厚さバラツキの和となる)に比べ、ギャップの精度を向上することができる。なお、工程の増加になるが、個別電極15にも保護絶縁膜を設けることで、インクジェットヘッドの耐久性をさらに向上させることも出来る。
【0041】
次に、図6を参照して振動板形成からヘッド完成までについて説明する。
まず、同図(a)に示すように、(110)を面方位とする厚さ520μmのSi基板31にボロンを拡散するのに塗布拡散法を用いた。Si基板31上にBを有機溶媒に分散させスピンコートし、熱処理(1125℃40分)することによりボロンを拡散し、高濃度ボロン拡散層31aを形成する。なお、拡散方法は、本実施例の他にBBrを用いた気相拡散法、イオン注入法、固体拡散法などを用いても良い。
【0042】
その後、Si基板31表面のB層をフッ酸により除去する。B層の下にシリコンとボロンの化合物層が形成されており、これを除去する場合は、酸化することによってフッ酸で除去できるようになる。しかし、このように酸化してフッ酸で化合物層を除去してもボロンの拡散されたシリコン表面には荒れが生じているので、後に行う直接接合で接合できない。
【0043】
そこで、CMP研磨により直接接合可能な表面性(AFMを用いた5μm□領域の測定にてRa=0.15nm以下)を得た。このように良好な表面性がもたらされたSi基板31(高濃度ボロン拡散層31a)を熱酸化することにより良好な表面性(Ra=0.20nm以下)を有する酸化膜11を形成した。
【0044】
ここで、酸化膜11は振動板10の保護絶縁膜として機能することになり、本実施例のように保護絶縁膜に熱酸化膜を用いることで、耐絶縁性及び信頼性(電荷トラップの低減や耐吸湿性に優れることによる)を向上させることができる。なお、振動板の保護絶縁膜であるところの酸化膜11は、電極側にも保護絶縁膜が形成されている場合は、膜厚が薄くなっても良い。例えば電極の保護絶縁としてシリコン酸化膜が100nm以上の厚さが形成されている場合、酸化膜11は30から50nmほどの厚さがあれば良い。
【0045】
次いで、同図(b)に示すように、電極基板2と第一の基板(シリコン基板)31を直接接合法により接合する。
【0046】
具体的には、各基板2、31をRCA洗浄で知られる基板洗浄法を用いて洗浄した後、硫酸過水(硫酸と過酸化水素水を体積比2:1で混合、温度100℃以上)にて洗浄し、接合面を親水化させることで直接接合をし易い表面状態とする。そして、各基板2、31を乾燥後、両基板を減圧下(室温)で重ね合わせ、減圧下において押さえつけることでプリボンドを完了した。
【0047】
プリボンドで重要な点は、第二の基板(電極基板)2の接合面であるポリシリコン膜25の表面は上述したように良好な表面性(Ra:0.2nm以下)であり、かつ第一の基板(シリコン基板)31の接合面である酸化膜11の表面も上述したように良好な表面性(Ra:0.2nm以下)をもつことである。接合する両基板の表面性が良くないと室温でプリボンドすることはなく、また信頼性の高い接合はできない。
【0048】
さらにこの後、貼り合わせたウェハを窒素ガス雰囲気下で、熱処理(900℃、2時間)し、強固な接合を得た。ここで重要な点は、第二の基板(電極基板)2の接合面にボロンを含むポリシリコン膜25が形成されているので、接合時にボロンがシリコン酸化膜11に拡散し、接合界面近傍のシリコン酸化膜の融点を下げるため、比較的低温で接合信頼性が高い直接接合が可能となっていることである。
【0049】
次に、厚さ520μmの基板31を厚さ100μmまで研磨によって薄くし、フォトリソグラフィー技術、ドライエッチング技術によりパターニングされたシリコン窒化膜などをマスクとし、10〜30wt%の水酸化カリウム水溶液によって温度80〜90℃にて基板31に異方性エッチングを行う。
【0050】
このエッチングはボロン濃度が1E20/cmである深さに達した時エッチングがストップ(エッチレートが極端に下がり)し、高濃度ボロンドープシリコン層31aからなる振動板10及び吐出室6などが形成された流路基板1が得られる。このように、高濃度ボロン層を用いたエッチストップ技術を用い、ボロンの再拡散が起こらないような温度で接合を行うことで、高精度に厚さが制御された振動板10を形成することができる。
【0051】
最後に、同図(c)に示すように、ノズル4や流体抵抗部7となる溝などを形成したノズルプレート3を接着剤などで流路基板1上に接合することによりインクジェットヘッドが完成する。
【0052】
次に、本発明の第3実施形態に係るインクジェットヘッドについてその製造工程とともに図7を参照して説明する。
まず、同図(a)に示すように、厚さ625μm(100)面方位のシリコン基板32の片側に厚さ0.6μmの熱酸化膜32aを形成し、全面にポリシリコン膜33をCVD法により100nm堆積し、リンや砒素をイオン注入し、活性化のための熱処理を行う。次に、タングステンシリサイド膜34を200nmスパッタ法により堆積する。これらのポリシリコン膜33及びタングステンシリサイド膜34の積層膜で後述するように個別電極15を形成する。
【0053】
なお、タングステンシリサイド膜のスパッタ前に、ポリシリコン膜33表面をArで逆スパッタ(エッチング)して清浄化(自然酸化膜などの除去)することで膜の密着性に対して高い信頼性が確保できるため、マルチチャンバーのスパッタ装置を使用し、前記のデポ面の清浄化とデポを連続処理することが好ましい。
【0054】
ここでは、タングステンシリサイド膜を厚さ200nmで形成してあるので、後に個別電極15のシート抵抗は10Ω/□以下が得られることとなる。なお、ここでは電極にポリシリコンとタングステンシリサイドを用いたが、他の高融点金属や、これらの金属の積層構造を用いても良い。
【0055】
続いて、個別電極15を構成するタングステンシリサイド膜34表面に高温(830℃)の熱CVDにより保護絶縁膜としてシリコン酸化膜17を形成する。
【0056】
さらに、シリコン酸化膜17表面に、前述したと同様にして、CVD法によりポリシリコン膜25を120nm堆積し、ポリシリコン膜25にボロンを30keV、1E16(atoms/cm)でイオン注入し、ポリシリコン膜25表面を研磨加工する。ポリシリコン膜25表面の表面粗さ:Ra値が0.2nm以下となり、非常に良好な直接接合が可能な表面性が得られる。
【0057】
次に、同図(b)に示すように、ギャップ16を形成する彫り込み部14をポリシリコン膜25及びシリコン酸化膜17をエッチング加工して形成する。この彫り込み部14の形成は、グラデーションパターンを有するマスクを用いたフォトリソグラフィー技術によりレジスト形状に傾斜をつけ、Arガスなどを用いてレジスト形状を転写するようにエッチングを行うことにより形状が非平行状態であるように形成した。
【0058】
なお、グラデーションマスク及びフォトリソグラフィー条件、ドライエッチング条件はレジストとポリシリコン膜25及びシリコン酸化膜17のエッチングレート比なども考慮して所望のギャップ形状になるように整合する。
【0059】
その後、周知のフォトリソグラフィー技術及びドライエッチング技術により、ポリシリコン膜25及びシリコン酸化膜17、タングステンシリサイド膜34、ポリシリコン膜32を分離して個別電極15を形成した電極基板2を得た。その後、前述したと同様に、流路基板1を形成しノズル板3を接合してインクジェットヘッドが完成する。
【0060】
次に、本発明の第4実施形態に係るインクジェットヘッドについてその製造工程とともに図8を参照して説明する。
まず、同図(a)に示すように、厚さ625μm(100)面方位のシリコン基板32の片側に厚さ0.6μmの熱酸化膜32aを形成し、全面にポリシリコン膜33をCVD法により100nm堆積し、リンや砒素をイオン注入し、活性化のための熱処理を行う。次に、タングステンシリサイド膜34を200nmスパッタ法により堆積する。これらのポリシリコン膜33及びタングステンシリサイド膜34の積層膜で後述するように個別電極15を形成する。
【0061】
なお、タングステンシリサイド膜のスパッタ前に、ポリシリコン膜33表面をArで逆スパッタ(エッチング)して清浄化(自然酸化膜などの除去)することで膜の密着性に対して高い信頼性が確保できるため、マルチチャンバーのスパッタ装置を使用し、前記のデポ面の清浄化とデポを連続処理することが好ましい。
【0062】
そして、周知のフォトリソグラフィー技術及びドライエッチング技術により、タングステンシリサイド膜34及びポリシリコン膜33を分離して個別電極15を形成する。ここで、個別電極15は分離間を埋め込みやすくするために、分離間距離が0.5μmとなるように形成した。
【0063】
続いて、高温(830℃)の熱CVDにより保護絶縁膜としてシリコン酸化膜17を堆積することにより、個別電極15の分離15a間をシリコン酸化膜17で埋め込み、個別電極15表面に200nmの厚さのシリコン酸化膜17が形成される。シリコン酸化膜17の表面は分離間の埋め込み形状の影響で、凹部17aができる。
【0064】
さらにシリコン酸化膜17表面に、前述したと同様に、CVD法によりポリシリコン膜25を250nm堆積し、ポリシリコン膜25にボロンを60keV、1E16(atoms/cm)でイオン注入する。ここで、後工程のポリシリコン膜25の研磨工程時の膜減りを考慮して、ポリシリコン膜中にピーク濃度或いはピーク濃度の近傍が位置するように、注入条件を設定することが好ましい。
【0065】
次いで、同図(c)に示すように、ポリシリコン膜25表面からCMP(chemical-mechanical-polishing)を行う。研磨量(とり代)を150nmとすることで、分離間の埋め込み形状の影響で発生した凹部が消滅し、ポリシリコン膜25は完全に平坦化できる。また、ポリシリコン膜25表面の表面粗さ:Ra値が0.2nm以下となり、非常に良好な直接接合が可能な表面性を得る。
【0066】
その後、同図(d)に示すように、ギャップを形成する彫り込み部14を形成すし、図示しないが前述したと同様に流路基板1を形成してノズル板3を接合することでインクジェットヘッドが完成する。
【0067】
次に、本発明の第5実施形態に係るインクジェットヘッドについてその製造工程とともに図9を参照して説明する。
まず、同図(a)に示すように、厚さ625μm(100)面方位のシリコン基板32の片側に厚さ0.6μmの熱酸化膜32aを形成し、全面にポリシリコン膜33をCVD法により100nm堆積し、リンや砒素をイオン注入し、活性化のための熱処理を行う。次に、タングステンシリサイド膜34を200nmスパッタ法により堆積する。これらのポリシリコン膜33及びタングステンシリサイド膜34の積層膜で後述するように個別電極15を形成する。
【0068】
なお、タングステンシリサイド膜のスパッタ前に、ポリシリコン膜33表面をArで逆スパッタ(エッチング)して清浄化(自然酸化膜などの除去)することで膜の密着性に対して高い信頼性が確保できるため、マルチチャンバーのスパッタ装置を使用し、前記のデポ面の清浄化とデポを連続処理することが好ましい。
【0069】
次に、タングステンシリサイド膜34上にLP−CVDによりシリコン窒化膜42を50nm成膜する。
【0070】
そして、周知のフォトリソグラフィー技術及びドライエッチング技術により、タングステンシリサイド膜34及びポリシリコン膜33及びシリコン窒化膜42を分離してシリコン窒化膜42で被覆された個別電極15を形成する。ここで、個別電極15は分離間を埋め込みやすくするために、分離間距離が0.5μmとなるように形成した。
【0071】
続いて、高温(830℃)の熱CVDにより保護絶縁膜としてシリコン酸化膜17を400nm堆積することにより、個別電極15の分離15a間をシリコン酸化膜17で埋め込む。。
【0072】
その後、同図(b)に示すように、シリコン酸化膜17表面からCMP(chemical-mechanical-polishing)を行う。シリコン窒化膜42は研磨レートがシリコン酸化膜17に対して非常に低い(1/20程度)ため、CMPのストッパとしてシリコン窒化膜42は非常に有効である。研磨が進むとともに、基板の平坦化が進み、研磨ストッパーであるシリコン窒化膜42と研磨パッドとの接触が支配的になると基板を保持しているキャリアのトルクが上昇する。このトルクをモニターすることにより研磨の終点を検知することができ、高精度に研磨量の制御が可能となる。その結果、高精度にギャップを形成できる。
【0073】
そして、同図(c)に示すように、CMPが終わったシリコン酸化膜17表面に高温(830℃)の熱CVDによりシリコン酸化膜17を20nm堆積し、続いて、前述したと同様に、CVD法によりポリシリコン膜25を120nm堆積し、ポリシリコン膜25にボロンを30keV、1E16(atoms/cm)でイオン注入する。
【0074】
次いで、同図(c)に示すように、ポリシリコン膜25表面から研磨加工(研磨量50nm程度)し、良好な表面性を得る。
【0075】
その後、同図(d)に示すように、ギャップを形成する彫り込み部14を形成し、図示しないが前述したと同様に流路基板1を形成してノズル板3を接合することでインクジェットヘッドが完成する。
【0076】
次に、本発明の第6実施形態に係るインクジェットヘッドについてその製造工程とともに図10を参照して説明する。
まず、同図(a)に示すように、厚さ625μm(100)面方位のシリコン基板32の片側に厚さ0.6μmの熱酸化膜32aを形成し、全面にポリシリコン膜33をCVD法により100nm堆積し、リンや砒素をイオン注入し、活性化のための熱処理を行う。次に、タングステンシリサイド膜34を200nmスパッタ法により堆積する。これらのポリシリコン膜33及びタングステンシリサイド膜34の積層膜で後述するように個別電極15を形成する。
【0077】
なお、タングステンシリサイド膜のスパッタ前に、ポリシリコン膜33表面をArで逆スパッタ(エッチング)して清浄化(自然酸化膜などの除去)することで膜の密着性に対して高い信頼性が確保できるため、マルチチャンバーのスパッタ装置を使用し、前記のデポ面の清浄化とデポを連続処理することが好ましい。
【0078】
次に、タングステンシリサイド膜34上にLP−CVDによりシリコン窒化膜42を300nm成膜する。
【0079】
そして、周知のフォトリソグラフィー技術及びドライエッチング技術により、タングステンシリサイド膜34及びポリシリコン膜33及びシリコン窒化膜42を分離してシリコン窒化膜42で被覆された個別電極15を形成する。ここで、個別電極15は分離間を埋め込みやすくするために、分離間距離が0.5μmとなるように形成した。
【0080】
続いて、高温(830℃)の熱CVDにより保護絶縁膜としてシリコン酸化膜17を400nm堆積することにより、個別電極15の分離15a間をシリコン酸化膜17で埋め込む。。
【0081】
その後、同図(b)に示すように、シリコン酸化膜17表面からCMP(chemical-mechanical-polishing)を行う。シリコン窒化膜42は研磨レートがシリコン酸化膜17に対して非常に低い(1/20程度)ため、CMPのストッパとしてシリコン窒化膜42は非常に有効である。研磨が進むとともに、基板の平坦化が進み、研磨ストッパーであるシリコン窒化膜42と研磨パッドとの接触が支配的になると基板を保持しているキャリアのトルクが上昇する。このトルクをモニターすることにより研磨の終点を検知することができる。
【0082】
そして、同図(b)に示すように、CMPが終わったシリコン酸化膜17表面に前述したと同様に、CVD法によりポリシリコン膜25を120nm堆積し、ポリシリコン膜25にボロンを30keV、1E16(atoms/cm)でイオン注入し、ポリシリコン膜25表面から研磨加工(研磨量50nm程度)し、良好な表面性を得る。
【0083】
その後、同図(c)に示すように、ギャップを形成する彫り込み部14をポリシリコン膜25及びシリコン窒化膜42をエッチング加工して形成する。この彫り込み部14の形成は、グラデーションパターンを有するマスクを用いたフォトリソグラフィー技術によりレジスト形状に傾斜をつけ、Arガスなどを用いてレジスト形状を転写するようにエッチングを行うことにより形状が非平行状態であるように形成した。この場合、シリコン窒化膜が電極の保護膜絶縁膜となるが、電荷トラップレベルは高温の熱CVDにより形成されるシリコン酸化膜より多いが、耐吸湿性に優れた保護膜となる。
【0084】
そして、図示しないが前述したと同様に流路基板1を形成してノズル板3を接合することでインクジェットヘッドが完成する。
【0085】
次に、本発明の第7実施形態に係るインクジェットヘッドについて図11及び図12を参照して説明する。なお、図11は同ヘッドの分解斜視説明図、図12は同ヘッドの振動板長手方向に沿う断面説明図である。
このインクジェットヘッドでは、電極基板2の流路基板1との接合面において、インク供給口18の周囲の接合面にはホウ素或いは燐とホウ素の両方を含むシリコン酸化膜50が形成されており、それ以外の接合面にはポリシリコン膜25が形成されている。
【0086】
接合時にホウ素或いは燐とホウ素の両方を含むシリコン酸化膜層50が溶融し、インク供給口18周囲の接合をより強固にすることができ、インクなどに接合界面が曝されても接合界面をインク液が通過することがなく、インクジェットヘッドの信頼性を向上できる。また、インク供給口18の形成にフッ酸やKOHなどを用いたウエットプロセスを用いることができ、プロセスコストの低減が図れる。
【0087】
また、電極15と同平面にはダミー電極55を形成している。ダミー電極55を設けることでシリコン酸化膜17の表面性を向上することができる。
【0088】
次に、このインクジェットヘッドの製造工程について図13及び図14を参照して説明する。
同図(a1)に示すように、厚さ625μm(100)面方位のシリコン基板32の片側に厚さ0.6μmの熱酸化膜32aを形成し、全面にポリシリコン膜をCVD法により100nm堆積し、リンや砒素をイオン注入し、活性化のための熱処理を行う。次に、タングステンシリサイド膜を200ンmスパッタ法により堆積する。なお、タングステンシリサイド膜のスパッタ前に、ポリシリコン膜表面をArで逆スパッタ(エッチング)して清浄化(自然酸化膜などの除去)することで膜の密着性に対して高い信頼性が確保できるため、マルチチャンバーのスパッタ装置を使用し、前記のデポ面の清浄化とデポを連続処理することが望ましい。
【0089】
そして、タングステンシリサイド膜及びポリシリコン膜を周知のフォトリソグラフィー技術、およびドライエッチング技術によりパターニングし、タングステンシリサイド膜とポリシリコン膜とからなる個別電極15を形成するとともに、電極としては機能しないダミーの電極パターン50を形成する。ダミーの電極パターン50は、疎或いは密に形成することにより、後の埋め込み酸化膜17に段差を設けることができる。
【0090】
ここでは、基板を上から見た同図(a2)に示すように、インク供給口18を形成するインク供給口部58の周辺部ではダミーの電極パターン50の分離間距離が長くなるように、つまりダミー電極パターン50を疎に形成する。
【0091】
続いて、高温(830℃)の熱CVDにより保護絶縁膜としてシリコン酸化膜17を堆積することにより個別電極15の分離間をシリコン酸化膜17で埋め込む。その際、インク供給口部58の周辺部に凹部59ができる。次に、シリコン酸化膜17上にCVD法によりポリシリコン膜25を120nm堆積し、ポリシリコン膜25にボロンを30keV、1E16(atoms/cm)でイオン注入する。
【0092】
次に、同図(b)に示すように、凹部59上のポリシリコン膜25を周知のフォトリソグラフィー技術及びドライエッチング技術により除去する。
【0093】
その後、同図(c)に示すようにBPSG膜(ホウ素及びリンを含むシリコン酸化膜)からなるシリコン酸化膜60をCVD法で400nm堆積する。なお、ここでシリコン酸化膜60は、燐を含まないBSG膜となっても構わない。本発明の重要な点は、シリコン酸化膜中に、燐あるいはボロンをまたは燐とボロンの両方を含有させることによって、融点を下げることにある。
【0094】
次に、図14(a)に示すように、シリコン酸化膜60表面からCMP(chemical-mechanical-polishing)を行い基板の平坦化を行う。ここでのCMPは機械的研磨が支配的となる条件(硬めの研磨布を用いて、研磨剤はpHを抑えた中性に近いものを用いる。)により、ポリシリコン膜25を研磨ストッパーとして用いることができる。
【0095】
研磨後、接合面において、インク供給口部58の周辺部の凹部59にはシリコン酸化膜60が形成され、その他の接合面にはポリシリコン膜25が形成されている。また、研磨後のポリシリコン膜25及びシリコン酸化膜60の表面は、良好な直接接合が可能な表面性が得られる。
【0096】
その後、同図(b)に示すように、ギャップを形成する彫り込み部14を形成し、前述したと同様に流路基板1となるシリコン基板31を接合する。そして、同図(c)に示すように、フォトリソグラフィー技術、ドライエッチング技術によりパターニングされたシリコン窒化膜などをマスクとし、25wt%の水酸化カリウム水溶液によって温度90℃にてシリコン基板32に異方性エッチングを行う。
【0097】
このエッチング液では(100)面のエッチングは2.5μm/分の速さで進行する。エッチングが進行し熱酸化膜32aに達すると、熱酸化膜のエッチレートが非常に小さいためエッチングは停止する。続いて、フッ酸水溶液により熱酸化膜32a、シリコン酸化膜17、ダミーの電極パターン50、シリコン酸化膜60を除去することにより開口部69が形成される。ここで、ダミー電極パターン50はシリコン酸化膜がエッチングされることによりリフトオフすることにより除去される。ここでは、開口部69のポリシリコン膜25はリフトオフで除去できず、残存した。
【0098】
次に、前述したと同様に、10〜30wt%の水酸化カリウム水溶液(温度80〜90℃)を用いてシリコン基板31に異方性エッチングすることにより振動板10及び吐出室6、共通液室8が形成される。この際、開口部69は水酸化カリウム水溶液に曝される為、開口部の高濃度ボロン層31a、シリコン酸化膜11、ポリシリコン膜25がエッチング除去され、インク供給口18が形成される。
【0099】
その後、図示しないがノズル板3を接合することでインクジェットヘッドが完成する。
【0100】
次に、本発明に係るインクジェットヘッドを搭載したインクジェット記録装置の一例について図15及び図16を参照して説明する。なお、図15は同記録装置の斜視説明図、図16は同記録装置の機構部の側面説明図である。
このインクジェット記録装置は、記録装置本体111の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ、キャリッジに搭載した本発明に係るインクジェットヘッドからなる記録ヘッド、記録ヘッドへインクを供給するインクカートリッジ等で構成される印字機構部112等を収納し、装置本体111の下方部には前方側から多数枚の用紙113を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい。)114を抜き差し自在に装着することができ、また、用紙113を手差しで給紙するための手差しトレイ115を開倒することができ、給紙カセット114或いは手差しトレイ115から給送される用紙113を取り込み、印字機構部112によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ116に排紙する。
【0101】
印字機構部112は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド12と従ガイドロッド122とでキャリッジ123を主走査方向(図16で紙面垂直方向)に摺動自在に保持し、このキャリッジ123にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出するインクジェットヘッドからなるヘッド124を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。またキャリッジ123にはヘッド124に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ125を交換可能に装着している。
【0102】
インクカートリッジ125は上方に大気と連通する大気口、下方にはインクジェットヘッドへインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力によりインクジェットヘッドへ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。
【0103】
また、記録ヘッドとしてここでは各色のヘッド124を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドでもよい。
【0104】
ここで、キャリッジ123は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド112に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド122に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ123を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ127で回転駆動される駆動プーリ128と従動プーリ129との間にタイミングベルト130を張装し、このタイミングベルト130をキャリッジ123に固定しており、主走査モーター127の正逆回転によりキャリッジ123が往復駆動される。
【0105】
一方、給紙カセット114にセットした用紙113をヘッド124の下方側に搬送するために、給紙カセット114から用紙113を分離給装する給紙ローラ131及びフリクションパッド132と、用紙113を案内するガイド部材133と、給紙された用紙113を反転させて搬送する搬送ローラ134と、この搬送ローラ134の周面に押し付けられる搬送コロ135及び搬送ローラ134からの用紙113の送り出し角度を規定する先端コロ136とを設けている。搬送ローラ134は副走査モータ137によってギヤ列を介して回転駆動される。
【0106】
そして、キャリッジ123の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ134から送り出された用紙113を記録ヘッド124の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材139を設けている。この印写受け部材139の用紙搬送方向下流側には、用紙113を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ141、拍車142を設け、さらに用紙113を排紙トレイ116に送り出す排紙ローラ143及び拍車144と、排紙経路を形成するガイド部材145,146とを配設している。
【0107】
記録時には、キャリッジ123を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド124を駆動することにより、停止している用紙113にインクを吐出して1行分を記録し、用紙113を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または、用紙113の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙113を排紙する。
【0108】
また、キャリッジ123の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、ヘッド124の吐出不良を回復するための回復装置147を配置している。回復装置147はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ123は印字待機中にはこの回復装置147側に移動されてキャッピング手段でヘッド124をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
【0109】
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段でヘッド124の吐出口を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
【0110】
なお、上記各実施形態においては、主として本発明を振動板変位方向とインク滴吐出方向が同じになるサイドシュータ方式のインクジェットヘッドに適用したが、前述したように振動板変位方向とインク滴吐出方向と直交するエッジシュータ方式のインクジェットヘッドにも同様に適用することができる。
【0111】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るインクジェットヘッドによれば、振動板を形成する第一の基板と、電極を形成する第二の基板と、を備え、第一の基板の第二の基板との接合面にはシリコン酸化膜が形成され、第二の基板の第一の基板との接合面にはボロンが含有されたポリシリコン膜が形成されて、第一の基板と第二の基板とはシリコン酸化膜とボロンが含有されたポリシリコン膜が接して接合され、第二の基板には電極となるポリシリコン層が設けられ、第ポリシリコン層の吐出室に対応する部分に彫り込み部が形成されている構成としたので、シリコン酸化膜ボロンが含有されたポリシリコンとの接合となって接合信頼性が高い直接接合が可能になり、また、シリコン酸化膜同士の接合に比べ接合温度の低温化が図ることができて、電極や振動板に影響を与えない温度領域で行うことができ、信頼性が向上する。
【0121】
本発明に係るインクジェット記録装置によれば、本発明に係るいずれかのインクジェットヘッドを搭載したので、インク吐出特性や耐久性が向上し、画像品質と信頼性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視説明図
【図2】同ヘッドのノズル板を除いた上面説明図
【図3】同ヘッドの吐出室長辺方向に沿う模式的断面説明図
【図4】同ヘッドの吐出室短辺方向に沿う模式的断面説明図
【図5】本発明の第2実施形態に係るインクジェットヘッドをその製造工程とともに説明する説明図
【図6】同じく同ヘッドをその製造工程とともに説明する説明図
【図7】本発明の第3実施形態に係るインクジェットヘッドをその製造工程とともに説明する説明図
【図8】本発明の第4実施形態に係るインクジェットヘッドをその製造工程とともに説明する説明図
【図9】本発明の第5実施形態に係るインクジェットヘッドをその製造工程とともに説明する説明図
【図10】本発明の第6実施形態に係るインクジェットヘッドをその製造工程とともに説明する説明図
【図11】本発明の第7実施形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視説明図
【図12】同ヘッドの振動板長手方向に沿う断面説明図
【図13】同ヘッドの製造工程を説明する説明図
【図14】図13に続く工程を説明する説明図
【図15】本発明に係るインクジェットヘッドを搭載したインクジェット記録装置の斜視説明図
【図16】同記録装置の機構部の側面説明図
【符号の説明】
1…流路基板、2…電極基板、3…ノズル板、4…ノズル、6…吐出室、7…流体抵抗部、8…共通液室、10…振動板、11…保護絶縁膜、14…彫り込み部、15…電極、16…ギャップ、17…保護絶縁膜。

Claims (2)

  1. インク滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する吐出室と、この吐出室内の壁面を形成する振動板と、この振動板に対向する電極とを有し、前記振動板を静電力で変形させて前記ノズルからインク滴を吐出させるインクジェットヘッドにおいて、
    前記振動板を形成する第一の基板と、前記電極を形成する第二の基板と、を備え、
    前記第一の基板の前記第二の基板との接合面にはシリコン酸化膜が形成され、
    前記第二の基板の前記第一の基板との接合面にはボロンが含有されたポリシリコン膜が形成されて、
    前記第一の基板と前記第二の基板とは前記シリコン酸化膜と前記ボロンが含有されたポリシリコン膜が接して接合され、
    前記第二の基板には前記電極となるポリシリコン層が設けられ、前記ポリシリコン層の前記吐出室に対応する部分に彫り込み部が形成されている
    ことを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. インクジェットヘッドを搭載したインクジェット記録装置において、前記インクジェットヘッドが前記請求項1に記載のインクジェットヘッドであることを特徴とするインクジェット記録装置。
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