JP4307745B2 - 液滴吐出ヘッド及びインクジェット記録装置 - Google Patents

液滴吐出ヘッド及びインクジェット記録装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は液滴吐出ヘッド及びインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ等の画像記録装置或いは画像形成装置として用いるインクジェット記録装置において使用するインクジェットヘッドとしては、インク滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する吐出室(加圧液室、圧力室、液室、インク流路等とも称される。)と、吐出室内の壁面を形成する振動板と、この振動板に対向する電極とを備え、振動板を静電気力で変形変位させることで吐出室内インクを加圧してノズルからインク滴を吐出させる静電型インクジェットヘッドがある。
【0003】
このような静電型インクジェットヘッドとしては、従来、特開平6−71882号公報に記載されているように、吐出室の壁面を形成する振動板と電極とを平行に配置したもの(これにより形成されるギャップを「平行ギャップ」と称する。)がある。
【0004】
また、特開平9−39235号公報に記載されているように、振動板と電極との間にギャップを設け、且つ、電極を階段状に配置することでギャップ寸法が段階的に変化するようにしたもの、或いは、特開平9−193375号公報に記載されているように振動板に対向して電極を斜めに傾斜させて配置することで振動板と電極との間のギャップの断面形状が振動板側の面(辺)と電極側の面(辺)とで少なくとも一部が非平行になるようにしたもの(このようなギャップを「非平行ギャップ」と称する。)も知られている。
【0005】
ところで、このような静電型インクジェットヘッドにおいては、振動板と電極との間に形成されるギャップを高精度に形成しなければならないため、従来は、例えば電極を形成する基板(電極基板)としてシリコン基板に酸化膜を形成したもの或いはパイレックスガラスなどの絶縁基板を用いて、酸化膜或いは絶縁基板に所定深さの電極形成用溝を彫り込み、この溝底面に所定厚さの電極を形成することにより、酸化膜或いは絶縁基板の溝以外の部分を振動板と電極との間のギャップを規定するギャップスペーサ部とすることで、振動板と電極との間に所定のギャップ長を得るようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の静電型インクジェットヘッドにあっては、振動板と電極との間に平行ギャップを形成する場合でも、電極形成用溝(凹部)深さのバラツキ(ギャップスペーサ部の高さのバラツキ)と、電極厚さのバラツキと、この電極表面に保護絶縁膜を形成する場合には保護絶縁膜の厚さのバラツキがあるために、ギャップ長(振動板面と電極面との間の距離)にバラツキが生じるとともにギャップの微小化にも限界がある。
【0007】
また、振動板と電極との間に非平行ギャップを形成する場合、特にギャップ長ゼロから始まる非平行ギャップを形成しようとする場合、電極基板に非平行ギャップ形状となる彫り込み部を形成し、この彫り込み部に電極を形成しなければならないので、電極端部或いは電極表面に形成した保護絶縁膜端部が電極基板上面(ギャップスペーサ部上面)からはみ出したり、電極基板上面より低くなるなどして、電極基板表面に段差や凹凸が生じる。
【0008】
そのため、このような電極基板と振動板を設けた基板(振動板基板或いは流路基板と称する。)を接合することが困難になったり、或いは、電極基板と振動板基板との接合を可能にするための研磨代が大きくなってギャップ長のバラツキが大きくなる。このようにギャップ長にバラツキが生じると、インク滴吐出体積やインク滴速度などの噴射特性にバラツキが生じたり、インク着弾位置がバラついたりして、画像品質が低下することになる。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、インク滴吐出特性のバラツキの少ない液滴吐出ヘッド及び画像品質を向上したインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液滴吐出ヘッドは、振動板にギャップとなる彫り込み部を形成し、彫り込み部は、振動板と、振動板との接合面に形成された液室配列方向における幅が彫り込み部の幅より広く平坦である電極との間の距離であるギャップ長がゼロとなる部位を有する傾斜面で形成される構成としたものである。
【0013】
ここで、振動板の表面に形成した絶縁膜にギャップとなる彫り込み部を形成している構成とできる
【0015】
また、振動板を形成する基板にシリコン基板を用いて、このシリコン基板には彫り込み部或いはギャップを形成する範囲にのみ高濃度ボロン拡散層からなる振動板を形成していることが好ましい。
【0017】
さらに、吐出室は、高濃度ボロン拡散層を形成した領域内にあることが好ましい。
【0018】
またギャップの開口部は封止されていることが好ましい。ここで、ギャップ内圧を製造途中で大気圧に開放する手段を備えていることが好ましい。
【0019】
本発明に係るインクジェット記録装置は、本発明に係る液滴吐出ヘッドを搭載したものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。先ず、本発明を適用した液滴吐出ヘッドとしてのインクジェットヘッドの第1実施形態について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同ヘッドの振動板短手方向の模式的断面説明図、図2は同ヘッドの振動板長手方向の模式的断面説明図である。
【0021】
このインクジェットヘッドは、第一基板である流路基板1と、流路基板1の下側に設けた第二基板である電極基板3と、流路基板1の上側に設けた第三基板であるノズル板4とを積層した構造を有し、インク滴を吐出する複数のノズル5、各ノズル5が連通するインク流路である吐出室6、各吐出室6にインク供給路を兼ねた流体抵抗部7を介して連通する共通液室8などを形成している。
【0022】
流路基板1にはノズル5が連通する複数の吐出室6及びこの吐出室6の壁面である底部をなす振動板10(共通電極を兼ねている)を形成する凹部、流体抵抗部7を形成する溝部、共通液室8を形成する凹部を形成している。
【0023】
そして、この流路基板1の振動板10の面外方向(電極基板3側)表面には所定の断面形状を有するギャップとなる彫り込み部12を形成している。この流路基板1の彫り込み部12のない部分は、後述する個別電極としての電極15とのギャップ16を精密に保つギャップスペーサ部13を形成している。
【0024】
この流路基板1にはシリコン基板からなるベース基板21に酸化膜22を介して活性層基板23を接合したSOI基板を用いて、吐出室6などとなる凹部をKOH水溶液などのエッチング液を用いて異方性エッチングすることにより、酸化膜22がエッチストップ層となって活性層基板22からなる振動板10を形成することができる。
【0025】
電極基板3には、シリコン基板を用いて、このシリコン基板の表面に熱酸化法などにより酸化膜3aを形成し、この酸化膜3a上に振動板10に彫り込み部12で形成されるギャップ16を介して対向する電極(個別電極)15を形成し、更にこの電極15上には保護絶縁膜17を形成し、これらの電極15及び保護絶縁膜17は分離溝18で各チャンネルに分離している。これらのギャップ16を介して対向する振動板10と電極15によって静電型マイクロアクチュエータを構成している。なお、電極15は電極基板3の端部付近まで延設して外部駆動回路と接続手段を介して接続するための電極パッド部15aを形成している。
【0026】
ここでは、電極15をポリシリコン膜で、保護絶縁膜17をHTO膜(高温酸化膜:High−Temperature-Oxide)で形成しており、少なくとも、ギャップ16を形成する彫り込み部12より広い(大きい)領域で平坦に形成している。このように電極15及び保護絶縁膜17を彫り込み部12より広い領域で平坦に形成することで高精度のギャップ16を得ることができる。
【0027】
なお、この電極15としては、ポリシリコン膜に代えて、タングステンシリサイド膜、チタンシリサイド膜或いはそれらの積層膜などを用いることもできる。また、保護絶縁膜17としては、ポリシリコンを熱酸化して得られるポリシリコン酸化膜、或いは高温の熱CVDで形成されるHTO膜を用いることが好ましい。
【0028】
保護絶縁膜17としては、この他、例えば、LP−CVD窒化膜、プラズマ酸化膜、プラズマ窒化膜、スパッタ系絶縁膜或いはそれらの積層膜等を用いることもできるが、これらの保護絶縁膜はその膜中の電子トラップレベルが多く、電気的劣化が早くなる。この場合、電気的劣化を緩和するためにその膜厚を厚くすることもできるが、ギャップ長(振動板10と電極15との間の距離)が増加するため駆動電圧を高くしなければならない。
【0029】
ここで、電極15と振動板10との間の彫り込み部12で形成されるギャップ16は、ギャップ16の端においてギャップ長が「0」(ゼロ)になる部位(断面形状でギャップ長ゼロとなる傾斜面)を有している。ギャップ16の断面形状としては、低電圧駆動を容易にする上で、ガウシャン形状が好ましいが、これ以外の形状であっても適度な傾斜を有することで少なからず低電圧化の効果が得られるため、これに限るものではない。
【0030】
また、図中では、彫り込み部12で形成するギャップ16を顕著に図示しているが、実際のディメンジョンは、例えば、振動板10の厚さ2μm、振動板10の幅125μm、振動板10の長さ800μm、彫り込み部12の深さ0.2μm、電極15の厚さ0.3μm、電極15の保護絶縁膜17の厚さ0.2μm、ギャップスペーサ部13の幅(直接接合される領域の幅)44μmというようになる。
【0031】
これらの流路基板1(より具体的にはギャップスペーサ部13)と電極基板3(より具体的には保護絶縁膜17)とは、シリコンの直接接合(DB:Silicon Direct-Bonding)方法で接合している。
【0032】
ノズル板4は、金属層或いは金属層と高分子層とを接合した積層部材、樹脂部材、ニッケル電鋳等を用いて、多数のノズル5を形成したものであり、ノズル面(吐出方向の表面:吐出面)には、インクとの撥水性を確保するため、メッキ被膜或いは撥水剤コーティングなどの周知の方法で撥水膜を形成している。また、このノズル板4には共通液室8に外部からインクを供給するためのインク供給口19を形成している。
【0033】
このように構成したインクジェットヘッドにおいては、振動板10を共通電極とし、電極15を個別電極として、振動板10と電極15との間に駆動電圧を印加することによって、振動板10と電極15との間に発生する静電力によって振動板10が電極15側に変形変位し、この状態から振動板10と電極15間の電荷を放電させること(駆動電圧をゼロにすること)によって振動板10が復帰変形して、吐出室6の内容積(体積)/圧力が変化することによって、ノズル5からインク滴が吐出される。
【0034】
すなわち、個別電極とする電極15にパルス電圧を印加すると、共通電極となる振動板10との間に電位差が生じて、電極15と振動板10の間に静電力が生じる。この結果、振動板10は印加した電圧の大きさに応じて変位する。その後、印加したパルス電圧を立ち下げることで、振動板10の変位が復元して、その復元力により吐出室6内の圧力が高くなり、ノズル5からインク滴が吐出される。
【0035】
この場合、振動板10に作用する静電力は振動板10と電極15との間のギャップ長が短いほど大きくなるので、ギャップ長ゼロの部分から振動板10の変形が開始されて、変形に従ってギャップ長が短くなるので、低電圧で振動板10を変形変位させることができ、低電圧駆動化を図ることができる。
【0036】
そして、このインクジェットヘッドにおいては、振動板10にギャップ16となる彫り込み部12を形成しているので、高精度の非平行ギャップを容易に形成することができる。そして、振動板10と電極15との間のギャップ16を振動板10そのものに形成した彫り込み部12によって形成し、電極15及び保護絶縁膜17は少なくとも彫り込み部12より広い(大きい)領域で平坦に形成しているので、高精度の非平行ギャップを容易に形成することができる。
【0037】
ここで、非平行ギャップは平行ギャップに比較して低電圧化に極めて有利であるということが分かっている。この場合、傾斜の角度にも依存するのであるが、傾斜が緩やかな場合には、振動板10は電極15にギャップ長ゼロのギャップ側から滑らかに当接(電極15に接触)して変位するため、低電圧化の効果だけでなく、吐出室6中の圧力変動を減らし、ノズル5近傍のメニスカス振動を低減させることができる。
【0038】
したがって、彫り込み部12で形成するギャップ16は断面形状でギャップ長ゼロとなる傾斜面を有する形状にすることにより、噴射するインク液滴量やインク噴射速度のバラツキが少なく、制御性がよく、しいては紙面へのインク滴着弾位置精度も向上して、品質の高い印刷が可能となる。
【0039】
なお、この実施形態では、ガウシアン分布形状のギャップ16(図は簡単のため三角形状で示してある。)としている。このガウシアン形状は振動板10の変形形状に合致させたものであり、緩やかな傾斜に比べて滑らかな当接という観点では劣るものの、低電圧化に最も効果があることをシミュレーション及び実験により確認している。
【0040】
また、このインクジェットヘッドにおいては、ギャップ16の開口(周囲)がギャップスペーサ部13で封止されているので、ギャップ16内に水、埃などの異物が侵入することを防止できる。
【0041】
次に、本発明の第2実施形態に係るインクジェットヘッドについて図3及び図4を参照して説明する。なお、図3は同ヘッドの振動板短手方向の模式的断面説明図、図4は同ヘッドの振動板長手方向の模式的断面説明図である。
【0042】
このインクジェットヘッドは、流路基板1としてシリコン基板を用いて、このシリコン基板に高濃度P型不純物層(ここでは高濃度ボロン拡散層)30を形成して、この高濃度ボロン拡散層30からなる振動板10を形成している。そして、この振動板10の面外方向(電極基板2側)にギャップ16となる彫り込み部12を形成している。また、吐出室6は高濃度ボロン拡散層30を形成した領域内で形成している。
【0043】
ここで、高濃度ボロン拡散層30からなる振動板10は彫り込み部12或いはギャップ16を形成する範囲にのみ形成している。これにより、後述するようにギャップ16の形成と振動板用ボロン拡散層30の形成を1つのマスクで形成できて製造コストを低減できる。
【0044】
また、振動板10を高濃度ボロン拡散層30で形成することにより、前記第1実施形態で説明したSOI基板の活性層基板を用いて振動板を形成する場合に比べて振動板厚み制御が容易になる。すなわち、数μm以下の活性層基板23を有するSOI基板はすでに市販されているが、静電型インクジェットヘッドに要求される仕様値を満足するには現段階ではまだ厳しいものがある。例えば、厚さ2μmの活性層基板23の場合、そのバラツキによる仕様値は±0.5μm程度以下である。これに対し、シリコン基板に高濃度ボロン拡散層を形成して、これをエッチングストップ層としてエッチングストップ(以下ボロンストップという。)させて高濃度ボロン拡散層からなる振動板10を形成する場合には、例えば2μm±0.1〜0.2μm程度、或いは、それ以下の厚み制御が可能になる。
【0045】
次に、この第2実施形態にかかるインクジェットヘッドの製造工程について図5乃至図7を参照して説明する。
先ず、図5(a)に示すように、振動板10及び吐出室6等のベースを形成する流路基板1となるシリコン基板31(シリコンウエハを用いる。)上に、彫り込み部12を形成する領域に対応して酸化膜のマスクパターン33を形成する。そして、同図(b)に示すように、公知の固体拡散法或いは塗布拡散法により、振動板10の形成を目的とした高濃度ボロン拡散層30を形成する。このとき、シリコン基板31の全面にはボロンガラス層34が形成される。
【0046】
そこで、同図(c)に示すように、ボロンガラス34及び酸化膜マスクパターン33をバッファード弗酸により除去した後、シリコン基板31の高濃度ボロン拡散層30側表面に、所望の彫り込み深さに対応したグラデーションパターンを形成したマスク(フォトマスクの1種)を用いて、所望の彫り込み深さ及び断面形状の彫り込み部12に対応する凹部35を形成したレジストパターン36を形成する。
【0047】
そして、同図(d)に示すように、このレジストパターン36をドライエッチング技術を用いてシリコン基板31の表面に転写することで高濃度ボロン拡散層30に彫り込み部12を形成する。この場合、レジストパターン36のエッチングレートをシリコン基板31(より具体的には高濃度ボロン拡散層30)のエッチングレートより通常高く設定するが、エッチングレート比に単純に比例して転写されるわけではないので、そのつど所望形状に見合ったレジスト形状、エッチング条件の整合を行うようにする。
【0048】
その後、同図(e)に示すように、残存しているレジストパターン36を除去することにより、振動板10を形成する高濃度ボロン拡散層30に彫り込み部12を形成したシリコン基板31が得られる。
【0049】
一方、図6(a)に示すように、シリコン基板からなる電極基板3上に熱酸化法などで例えば膜厚0.5〜2.0μm程度の酸化膜3aを形成する。なお、酸化膜種はこれに限定されるものではなく、この膜厚は電極15間の電極基板3を介した容量カップリングを減らすため比較的厚い方が好ましいが、各ビットの静電容量や抵抗、これを駆動するドライバの容量、電圧で適宜設定されるもので、これに限るものではない。
【0050】
そして、同図(b)に示すように、電極基板3の酸化膜3a上に電極15を形成するためのポリシリコン膜37を形成する。ここでは、このポリシリコン膜37を低抵抗化するためにリンをイオン注入して熱拡散した。
【0051】
なお、ポリシリコン膜37への低抵抗化用の不純物導入は、これに限るものではなく、その他の公知技術を用いても良いが、注入法を用いることで、ポリシリコン表面のマイクロラフネスを最も小さくすることができる。また、成膜中に不純物を導入する通称ドープドポリシリコンも比較的表面性は良いが、低抵抗化に準じて膜厚を厚くする場合には表面性が低下することを確認している。また、拡散源を用いたデポ拡散による方法ではポリシリコンの結晶成長が著しく表面ラフネスが大きくなることも確認している。電極材料して、ポリシコン膜37以外にもタングステンシリサイドやチタンシリサイド或いはこれらの積層膜などを用いることもできる。
【0052】
続いて、このポリシコン膜37表面に振動板10と電極15との間の絶縁を図るため、保護絶縁膜17となる高温の熱CVDで形成するHTO膜(高温酸化膜)38を成膜する。なお、保護絶縁膜17は例えばポリシコン膜37を熱酸化して得られるポリシコン酸化膜とすることもできる。
【0053】
そして、こHTO膜38の表面を鏡面研磨する。この研磨工程は表面のモホロジーを改善して、電極基板3と流路基板1となるシリコン基板31を容易に直接接合するためにある。この研磨工程は、表面のモホロジィを改善するのが目的であるので、極力少ない研磨量がよいが、研磨面のマイクロラフネスが表面モホロジィ1nm程度以下になるまで研磨する必要があり、具体的には0.005〜0.2μm程度の研磨量によって所望の研磨面を得ることができる。
【0054】
なお、研磨量はポリシリコン膜37及び/又はHTO膜38の表面モホロジィによって適宜決められるもので上記研磨量の範囲に限るものではない。また、ポリシリコン膜37のモホロジィはポリシリコン形成方法(成膜方法、低抵抗化用の不純物導入方法、不純物活性化方法等)や膜厚によって異なるため、それ応じて適宜研磨量の設定が必要であるが、上記研磨量の範囲で研磨量がばらつくというものでもない。このような研磨工程を行わない場合には、直接接合時の接合強度が極端に弱くなり、接合面に発生するボイドも多くなって、全く接合しないこともある。
【0055】
また、半導体LSI等の作製に使用するSOI基板の形成には、通常0.3nm程度以下のモホロジィが必要とされているが、本発明の場合、後工程において電極基板2と流路基板1となるシリコン基板31との剥がれが発生しない程度の接合強度を得られればよく、実験により、表面モホロジィ1nmを越えない範囲であれば、このような接合が可能であることを確認している。
【0056】
次に、同図(c)に示すように、このポリシリコン膜37及びHTO膜38に公知の写真製版技術及びエッチング技術を用いて分離溝18を形成することで、各チャンネルのポリシリコン膜37からなる電極15及びHTO膜38からなる保護絶縁膜17に分離する。このとき、電極15及び保護絶縁膜17の積層膜のパターンは、前述した流路基板1となるシリコン基板31に形成した彫り込み部12より広い範囲(大きいパターン)とし、最上層の保護絶縁膜17表面はその範囲において前述した表面研磨処理により平坦になっている。
【0057】
次に、図7(a)に示すように、流路基板1となるシリコン基板31と電極基板3を直接接合で接合する。このとき、シリコン基板31には前述したように彫り込み部12(ギャップ16を形成する部分)のみに高濃度ボロン拡散層30を形成し、ギャップスペーサ部13となる部分には高濃度ボロン拡散層30を形成していないので、シリコン基板31の研磨工程を経ることなく電極基板3との直接接合を行うことができる。
【0058】
すなわち、高濃度ボロン拡散層30を形成した場合、通常、表面のマイクロラフネスが大きなるため、ボロン拡散面を他のシリコン基板に接合する場合においては、シリコン基板の表面を研磨するなどしてマイクロラフネスを小さくすることが必要となる。これに対し、このシリコン基板31には電極基板3と接合するギャップスぺーサ部13を避けて高濃度ボロン拡散層30を形成しているので、接合面(ギャップスぺーサ部13の表面)でのマイクロラフネスの発生がなく、シリコン基板31表面を研磨することなく電極基板3(シリコン基板である。)と直接接合を行うことができるのである。
【0059】
次に、同図(b)に示すように、シリコン基板31に吐出室6などの流路パターン用の凹部38などを彫り込み、吐出室6及び高濃度ボロン拡散層30からなる振動板10などを形成して流路基板1を得る。なお、ここでは、流路基板1に結晶面方位(110)のシリコン基板を用いて、10wt%〜30wt%程度のKOH水溶液にて異方性エッチングし、この異方性エッチングの際のマスクは、減圧CVD或いはプラズマCVDによる窒化膜或いは酸化膜と窒化膜の積層膜をパターニングして用いた。
【0060】
その後、同図(c)に示すように、流路基板1上にノズル5を形成したノズル板4を接合して、所望のインクジェットヘッドを完成する。
【0061】
ここで、上述した第1、第2実施形態係るインクジェットヘッドにおいて非平行ギャップの形成が容易になることについて、比較例として示す図8及び図9を参照して説明する。
上述したように、各実施形態ではギャップ16を振動板10に彫り込んだ彫り込み部12で形成しており、また、電極15(より具体的に保護絶縁膜17表面)が彫り込み部12より広い範囲で平坦である、つまり、彫り込み部12(或いはギャップ16)の領域より保護絶縁膜17と電極15の領域の方を大きく形成しているので、ギャップ形状、彫り込み深さを制御性よく均一に作製することができ、滑らかな当接が可能なギャップゼロの非平行形状を容易に形成することができる。
【0062】
これに対して、電極基板3に凹部を形成してこの凹部に電極15を形成する場合、つまり、電極基板3の接合部と電極15 (或いは保護絶縁膜17を含む積層膜)とが異なる層になっている場合には、少なからず正負の段差が発生し、所望のギャップ長が得られなかったり、場合によっては直接接合ができなくなる。
【0063】
すなわち、例えば図8(a)に示すように、電極基板3の酸化膜3aに電極形成用の溝である凹部41を形成し、この凹部41の底面に電極15及び保護絶縁膜17を積層して構成した場合に、保護絶縁膜17の表面が電極基板3の接合部43の接合面より低くなると、同図(b)に示すように、流路基板1となるシリコン基板31を接合することはできるが、ギャップ16の長さ(電極と振動板の距離)が凹部41の深さバラツキ、電極15の厚さバラツキ、保護絶縁膜17の厚さバラツキによる影響を受けることになり、ギャップ長がばらつくことになる。
【0064】
また、例えば図9(a)に示すように、電極基板3の酸化膜3aに電極形成用の溝である凹部41を形成し、この凹部41の底面に電極15及び保護絶縁膜17を積層して構成した場合に、保護絶縁膜17の表面が電極基板3の接合部43の接合面より高くなると、同図(b)に示すように、流路基板1となるシリコン基板31を電極基板3に接合することが不可能になる。
【0065】
したがって、振動板10にギャップ16となる彫り込み部12を形成する場合には、電極15を彫り込み部12より広い範囲、すなわち電極基板3と流路基板1との接合部(ギャップスペーサ部13)を含む領域で平坦面とすることが好ましい。
【0066】
次に、本発明の第3実施形態に係るインクジェットヘッドについて、図10及び図11を参照して説明する。なお、図10は同ヘッドの振動板短手方向の模式的断面説明図、図11は同ヘッドの振動板長手方向の模式的断面説明図である。このインクジェットヘッドは、電極基板3の酸化膜3a上にポリシリコン膜からなる電極15を形成し、各電極15表面及び各電極15間の分離溝18内にHTO膜からなる保護絶縁膜17を形成したものである。
【0067】
なお、ここでも電極15となるポリシリコン膜にはリンをイオン注入して熱拡散することで低抵抗化したが、低抵抗化用の不純物導入はこれに限るものでなく、また、電極15は、ポリシリコン膜のみならず、タングステンシリサイド膜、チタンシリサイド膜、或いはそれらの積層膜などを用いることもできる。また、保護絶縁膜47としてHTO膜を使用しているのは、HTO膜が表面反応型であって電極15間の分離溝18を確実に埋め込めることができるとともに、絶縁品質が高いからであるが、表面反応型の保護絶縁膜はこれに限るものではない。さらに、電極15及び保護絶縁膜47の積層膜のパターンは、振動板10上の彫り込み部12より広い領域(大きいパターン)で平坦面としている。
【0068】
また、流路基板1としては、前述した第1実施形態のSOI基板を用いて振動板10を活性層基板で形成した流路基板1、或いは第2実施形態のシリコン基板に高濃度ボロン拡散層を形成してこれで振動板10を形成した流路基板1のいずれでも用いることができる。したがって、両実施形態のいずれでも良いことを示すため、流路基板1の詳細な図示は省略している(以下の実施形態の説明でも同様である。)。
【0069】
このようなインクジェットヘッドを製造するには、シリコン基板からなる電極基板3の酸化膜3a上に電極材料であるポリシリコン膜を成膜し、このポリシリコン膜に公知の写真製版技術及びエッチング技術により、例えば0.5μm幅の分離溝18を形成して各チャンネル毎の電極15に分離した後、電極15上に保護絶縁膜17としてのHTO膜を成膜するとともに、このHTO膜で分離溝18を埋め込む。その後、保護絶縁膜17の表面を鏡面研磨し、流路基板1となるシリコン基板との直接接合が可能な表面にする。なお、その後の流路基板1となるシリコン基板との直接接合工程以降については前記第2実施形態のインクジェットヘッドの製造工程として説明したと同様である。
【0070】
このように構成したインクジェットヘッドによれば、前記第1、第2実施形態と同様な作用効果が得られるとともに、電極15間の分離溝18を保護絶縁膜17で完全に埋め込んでいるため、電極基板3表面がすべて平坦になり、ギャップ16の周囲を完全に封止することができる。また、これにより、後述するように、ギャップ16内を大気圧で使用する場合において、連通孔を形成しても、電極パッド部15aから大気の流通や水の流入、例えばダイシング工程時における水の流入がなく、しかも、電極パッド部15aを封止する工程を経ることなく、大気流通や水の流入を防ぐことができる。
【0071】
次に、本発明の第4実施形態に係るインクジェットヘッドについて図12及び図13を参照して説明する。なお、図12は同ヘッドの振動板長手方向の模式的断面説明図、図13は同ヘッドの振動板短手方向の模式的断面説明図である。
このインクジェットヘッドは、流路基板1の振動板10の電極側表面と電極基板3の電極15の振動板側表面のいずれにも保護絶縁膜47、17を形成したものである。
【0072】
このように振動板10と電極15表面のいずれにも保護絶縁膜47、17を形成した場合には、振動板10と電極15のいずれか一方の表面に形成した場合に比べて残留電荷が低減することを実験により確認している。
【0073】
すなわち、静電型インクジェットヘッドにおいて、そのメカニズムの詳細は不明であるが、振動板10と電極15との間の印加電圧をオフした場合においても、見かけ上電極15間に電荷が残留するという現象が確認されている。この影響を回避するため種々の電気的手段を講じるのであるが、電極15表面及び振動板10表面の双方に保護絶縁膜48,17を有している場合には、この影響が少ないことが確認されている。
【0074】
次に、本発明の第5実施形態に係るインクジェットヘッドについて図14及び図15を参照して説明する。なお、図14は同ヘッドの振動板短手方向の模式的断面説明図、図15は同ヘッドの振動板長手方向の模式的断面説明図である。
このインクジェットヘッドは、流路基板1の振動板10の電極側表面に保護絶縁膜を兼ねる酸化膜48を形成し、この酸化膜48にギャップ16となる彫り込み部12を形成したものである。
【0075】
なお、ここでは電極15側には保護絶縁膜17を形成していないが、上記第4実施形態で説明したように、電極15側にも保護絶縁膜17を形成する方が絶縁性確保や残留電荷の回避には有効である。
【0076】
このインクジェットヘッドのように振動板10に形成した絶縁膜(酸化膜)48に彫り込み部12を形成することで、振動板10自体に彫り込み部12を形成する場合に比べて、非平行形状のギャップ制御性(ギャップ精度)が向上する。すなわち、彫り込み部12をエッチングで形成する場合においては、彫り込み部12のギャップ精度はレジストマスクとの選択比やエッチング安定性に起因するが、酸化膜48を加工する場合の方がシリコン基板を加工する場合より制御性が高くなる。
【0077】
なお、振動板10の絶縁膜48に彫り込み部12を形成すると、振動板10に彫り込み部12を形成する場合(前記第1乃至第4実施形態の場合)に比べて、絶縁膜48の厚み分だけ振動板10と電極15間の距離が長くなるので、その分ギャップ16の実効電界をロスすることになり、非平行ギャップとすることによる低電圧化の効果は若干小さくなる。ただし、絶縁膜48としての酸化膜の誘電率(比誘電率:3.8)は空気(比誘電率:1)の約4倍であるため、低電圧化の効果の減殺も僅かである。ギャップ16となる彫り込み部12を振動板10或いは絶縁膜48のいずれに形成するかは、その目的によって選択すれば良いが、プロセス面を重視した場合には、彫り込み部12を絶縁膜48に形成する方が振動板10に形成する場合よりも有利と考えられる。
【0078】
次に、本発明の第6実施形態に係るインクジェットヘッドについて図16及び図17を参照して説明する。なお、図16は同ヘッドの振動板短手方向の模式的断面説明図、図17は同ヘッドの振動板長手方向の模式的断面説明図である。
このインクジェットヘッドは、流路基板1のギャップ16となる彫り込み部12を熱酸化とその部分の除去より形成したものである。ここでの彫り込み部12は平行ギャップを形成する形状としている。
【0079】
このようにギャップ用彫り込み部12の形成を熱酸化とその部分の除去により形成することで、レジストマスクを用いた或いは写真製版技術を用いた彫り込み部の形成工程よりもギャップ精度及び再現性が向上する。
【0080】
そこで、この第6実施形態に係るインクジェットヘッドの製造工程について図18及び図19を参照して説明する。
先ず、図18(a)に示すように、流路基板1となるシリコン基板31に直接接合する面の表面荒れを防ぐためのバッファ酸化膜54を成膜し、このバッファ酸化膜54上に酸化防止マスクとなるLP−CVD窒化膜、LP−SiN膜等などの減圧窒化膜を形成して、これらを公知の写真製版技術及びエッチング技術を用いてパターニングして、バッファ酸化膜54及び窒化膜55のマスクパターンを形成する。
【0081】
そして、同図(b)に示すように、上記窒化膜55を酸化マスクとして、所望のギャップ16を得るための熱酸化を行って酸化膜56を形成する。例えば、ギャップ長0.2μmのギャップ16を得るためには、厚さ約0.44μm程度の酸化膜56を形成すればよい。
【0082】
次に、同図(c)に示すように、酸化膜56を除去する。ここでは酸化膜56をバッファード弗酸で除去した。次いで、同図(d)に示すように、窒化膜55及びバッファ酸化膜54を順次除去する。ここでは、窒化膜55を熱燐酸で除去した。これにより、シリコン基板31に熱酸化とその部分の除去により彫り込み部12が形成される。
【0083】
そこで、図19に示すように、前述した第2実施形態に係るインクジェットヘッドの製造工程で説明した同様の工程で、シリコン基板31を電極基板3に直接接合し、シリコン基板31に吐出室6等の凹部及び振動板10を形成した後、ノズル板4を接合してインクジェットヘッドを完成する。
【0084】
このように、熱酸化とその除去によりギャップとなる彫り込み部12を形成することにより、酸化膜56の膜厚制御がエッチング深さ制御に比べて高いため、レジストマスク或いは写真製版技術を使った彫り込み部の形成に比べて、高いギャップ精度と再現性を得ることができる。
【0085】
なお、ここでは、平行ギャップ形状となる彫り込み部を形成しているが、マスクパターンに工夫を施すことにより非平行形状のギャップ形成が可能である。ただし、グラデーションマスクを用いたフォトリソ技術とエッチング転写技術を用いた場合に比べると、自由度が少なく幾分制限が加わる。
【0086】
次に、本発明の第7実施形態に係るインクジェットヘッドについて図20及び図21を参照して説明する。なお、図20は同ヘッドの振動板短手方向の模式的断面説明図、図21は同ヘッドの振動板長手方向の模式的断面説明図である。
このインクジェットヘッドは、振動板10を形成するための高濃度ボロン拡散層30をギャップ16となる彫り込み部12のみに形成し、或いはギャップ用彫り込み部12を形成する領域にのみ高濃度ボロン拡散層30を形成した(いずれであるかは製造工程上の違いである。)ものであり、前記第6実施形態におけると同様な熱酸化とその部分の除去を行うことで彫り込み部12を形成したものである。
【0087】
このように振動板10の形成に使用する、より具体的にはボロンストップに利用する高濃度ボロン拡散層30を、ギャップ16となる彫り込み部12のみに形成し、或いはギャップ用彫り込み部12を形成する領域にのみ形成することで、後に直接接合するギャップスぺーサ部13の表面モホロジーが低下せず、表面性のよい接合面を確保することができ、接合信頼性が向上することは前述したとおりである。
【0088】
そこで、この第7実施形態に係るインクジェットヘッドの製造工程の一例について図22及び図23を参照して説明する。
先ず、図22(a)に示すように、流路基板1となるシリコン基板31に直接接合する面の表面荒れを防ぐためのバッファ酸化膜54を成膜し、このバッファ酸化膜54上に酸化防止マスクとなるLP−CVD窒化膜、LP−SiN膜等などの減圧窒化膜を形成して、これらを公知の写真製版技術及びエッチング技術を用いてパターニングして、バッファ酸化膜54及び窒化膜55のマスクパターンを形成する。
【0089】
そして、同図(b)に示すように、上記窒化膜55を酸化マスクとして、所望のギャップ16を得るための熱酸化を行って酸化膜56を形成する。例えば、ギャップ長0.2μmのギャップ16を得るためには、厚さ約0.44μm程度の酸化膜56を形成すればよい。
【0090】
次に、同図(c)に示すように、バッファード弗酸などで酸化膜56を除去すした後、同図(d)に示すように、公知の固体拡散法或いは塗布拡散法により振動板10の形成を目的とした高濃度ボロン拡散層30を形成する。このとき、シリコン基板31の全面にはボロンガラス層34が形成される。
【0091】
そこで、同図(e)に示すように、ボロンガラス34及び窒化膜55並びにバッファ酸化膜54をバッファード弗酸により除去することで、振動板10を形成する高濃度ボロン拡散層30を彫り込み部12のみに形成した流路基板1となるシリコン基板31が得られる。
【0092】
その後、図23に示すように、前述した第2実施形態に係るインクジェットヘッドの製造工程で説明したと同様の工程で、シリコン基板31を電極基板3に直接接合し、シリコン基板31に吐出室6等の凹部及び振動板10を形成した後、ノズル板4を接合してインクジェットヘッドを完成する。
【0093】
次に、この第7実施形態に係るインクジェットヘッドの製造工程の他の例について図24を参照して説明する。
先ず、同図(a)に示すように、流路基板1となるシリコン基板31に直接接合する面の表面荒れを防ぐためのバッファ酸化膜54を成膜し、このバッファ酸化膜54上に酸化防止マスクとなるLP−CVD窒化膜、LP−SiN膜等などの減圧窒化膜を形成して、これらを公知の写真製版技術及びエッチング技術を用いてパターニングして、バッファ酸化膜54及び窒化膜55のマスクパターンを形成する。
【0094】
次に、同図(b)に示すように、バッファ酸化膜54及び窒化膜55をマスクとして、公知の固体拡散法或いは塗布拡散法により振動板10の形成を目的とした高濃度ボロン拡散層30を形成する。このとき、シリコン基板31の全面にはボロンガラス層34が形成される。
【0095】
そこで、ボロンガラス34をバッファード弗酸により除去した後、同図(c)に示すように、上記窒化膜マスク層55を酸化マスクとして、所望のギャップ51を得るための熱酸化を行い、酸化膜56を形成する。例えば、ギャップ長0.2μmのギャップ51を得るためには、厚さ約0.44μm程度の酸化膜56を形成すればよい。次に、同図(d)に示すように、バッファード弗酸にて酸化膜56を除去する。
【0096】
次いで、同図(e)に示すように、窒化膜55及びバッファ酸化膜54を順次除去する。ここでは、窒化膜55を熱燐酸で除去した。これにより、シリコン基板31にギャップ16となる領域のみ高濃度ボロン拡散層30が形成されて熱酸化とその部分の除去により彫り込み部12が形成される。
【0097】
その後、前記図23に示すように、前述した第2実施形態に係るインクジェットヘッドの製造工程で説明したと同様の工程で、シリコン基板31を電極基板3に直接接合し、シリコン基板31に吐出室6等の凹部及び振動板10を形成した後、ノズル板4を接合してインクジェットヘッドを完成する。
【0098】
上述した各製造工程のいずれにおいても、ギャップ形成と振動板用高濃度ボロン拡散層の形成を1つのマスク(窒化膜55)で行うことができて、製造工程が簡単になり、低コスト化を図れる。
【0099】
次に、本発明の第8実施形態に係るインクジェットヘッドについて図25及び図26を参照して説明する。なお、図25は同ヘッドの振動板短手方向の模式的断面説明図、図26は同ヘッドの振動板長手方向の模式的断面説明図である。
このインクジェットヘッドは、流路基板1となるシリコン基板に振動板10を形成するための高濃度ボロン拡散層30を形成し、この高濃度ボロン拡散層30を熱酸化するときの増速酸化を利用して、高濃度ボロン拡散層領域の酸化膜を自己選択的に厚く成膜した後、その酸化膜を除去することで、ギャップ16となる彫り込み部12を形成したものである。
【0100】
このように高濃度ボロン拡散層の増速酸化とその酸化膜の除去によって彫り込み部12を形成することで、ギャップ形成を簡単な工程で低コストに行うことができるようになり、ヘッドの低コスト化を図れる。
【0101】
そこで、この第8実施形態に係るインクジェットヘッドの製造工程について図27及び図28を参照して説明する。
先ず、図27(a)に示すように、振動板10及び吐出室6等のベースを形成する流路基板1となるシリコン基板31(シリコンウエハを用いる。)上に、彫り込み部12を形成する領域に対応して酸化膜のマスクパターン33を形成する。そして、同図(b)に示すように、公知の固体拡散法或いは塗布拡散法により、振動板10の形成を目的とした高濃度ボロン拡散層30を形成する。このとき、シリコン基板31の全面にはボロンガラス層34が形成される。
【0102】
そこで、同図(c)に示すように、ボロンガラス34及び酸化膜マスクパターン33をバッファード弗酸により除去した後、同図(d)に示すように、シリコン基板31に熱酸化処理を施す。このとき、ボロン拡散層30の増速酸化現象を利用することにより、ボロン拡散層30に対応する領域の酸化膜56を自己選択的に厚く成膜する。
【0103】
そして、同図(e)に示すように、バッファード弗酸などで酸化膜56を除去する。これにより、シリコン基板31に所望のギャップ16となる彫り込み部12が形成される。
【0104】
その後、図28に示すように、前述した第2実施形態に係るインクジェットヘッドの製造工程で説明したと同様の工程で、シリコン基板31を電極基板3に直接接合し、シリコン基板31に吐出室6等の凹部及び振動板10を形成した後、ノズル板4を接合してインクジェットヘッドを完成する。
【0105】
ここで、ギャップ用の彫り込み部を形成する高濃度ボロン拡散層30の形成領域と吐出室6の形成領域との関係について前述した第7実施形態で用いた図20と図29とを参照して説明する。
前述したように、振動板10を形成する高濃度ボロン拡散層30は、接合面(ギャップスペーサ部13表面)にマイクロラフネスが発生しないように彫り込み部12を形成する範囲或いはギャップ16を形成する範囲にのみ形成する。この場合、吐出室6は、図20に示すように、高濃度ボロン拡散層30を形成した領域内に形成する。
【0106】
これに対して、吐出室6の大きさが高濃度ボロン拡散層30を形成した領域よりも大きくなると、ボロンストップが働かないため、図29に示すように、流路基板1と振動板10が一部、或いは全部分離することになるので、振動板10の固定端がわずかな接合部のみになって振動板強度が弱くなる。
【0107】
したがって、吐出室6を高濃度ボロン拡散層30を形成した領域内に形成することで、デバイスの強度が向上し、また、歩留まりが向上する。
【0108】
次に、振動板10或いは振動板10の絶縁膜47にギャップ16となる彫り込み部12を形成することによるギャップ開口の封止効果について図30乃至図32を参照して説明する。
本発明に係るインクジェットヘッドでは、図30にも示すように、振動板10或いは振動板10の絶縁膜47にギャップ16となる彫り込み部12を形成しているので、ギャップ16の開口部(周囲)が完全に封止される。
【0109】
したがって、シリコンウエハから各ヘッドチップに分離するとき(ダイシング時)、図30に示すように電極パッド部15aに対応する流路基板1の一部1aを除去していても、水がギャップ16内に流入することがなく、プロセスが単純化して、低コスト化を図ることができる。また、ギャップ16の開口部(周囲)が封止されているため、湿度や温度などの使用環境に左右されることがなく、湿度の高い環境下では結露により水玉或いは水分子が架橋となって振動板10が電極基板3側に固着する現象を回避することができる。
【0110】
これに対して、図31に示すように、電極基板63の酸化膜63aに電極形成溝(凹部)64を形成して、この電極形成溝64の底面に電極65を形成し、電極65表面に保護絶縁膜67を成膜し、電極形成溝64以外の部分をギャップ66を規定するギャップスペーサ部68としたヘッド構成の場合、ギャップ66が電極パッド部55a側の開口部66aを通じて開放される。また、図32に示すように、電極形成溝64と開口部66aとの間に凸部63bを形成したヘッド構成も考えられる。
【0111】
ところが、これらの図31或いは図32のヘッド構造では、ギャップ66が開口部66aを通じて開放されており、開口部66aを完全に封止することが困難であるので、ウェハ上に形成しヘッドチップ群をダイシングによって個々のチップに分割するときに、開口部66aからギャップ66に水が流入することになる。
【0112】
これを防ぐためには、図31及び図32に示すように、流路基板1の電極パッド部15aに対応する部分1aを残してダイシング(チップ化)した後に、その部分1aを除去して電極パッド部15aを開口するという工程を採らなければならない。そのため、チップ毎に電極引出し用開口部の形成が必要となり、ウェハプロセスのメリットが半減する。また、ウェハ状態で電極引出し用開口部の形成を行なった場合には、ダイシング前に、電極引き出し用開口部を封止することなく開口部66aのみを予め封止しておかなければならないが、このような封止は後工程の熱履歴等を考えるとかなりの困難である。
【0113】
したがって、本発明に係るインクジェットヘッドのように振動板側(振動板10自体或いはその表面に保護絶縁膜47)に彫り込み部12を形成してギャップ16を形成することで、簡単にギャップ16の周囲を完全に封止することができ、ギャップ16が開口することによる不都合を回避できる。
【0114】
次に、本発明の第9実施形態に係るインクジェットヘッドについて図33及び図34を参照して説明する。なお、図33は同ヘッドのノズル板を省略した上面説明図、図34は図36のA−A線に沿う振動板長手方向の模式的断面説明図である。
【0115】
このインクジェットヘッドでは、電極基板3の保護絶縁膜17に、各ギャップ16に連通する連通路71を形成するとともに、各連通路71が連通する共通連通路72を設け、流路基板1に共通連通路72の端部を大気に開放する大気開放口73を形成している。これらの連通路71、共通連通路72及び大気開放口73によって製造途中でギャップ内圧を大気圧に解放する手段を構成している。
【0116】
ここで、これらの連通路71、共通連通路72及び大気開放口73は、電極引き出し用開口部(電極取り出し部)やダイシングライン上を避けて設形成している。これにより、ダイシング時に水等が流入することがなくなる。また、大気開放口73は、振動板10と同様な処理を行って、つまり、流路基板1を大気開放口73の部分では振動板10と同程度の厚さにして、必要な時点で、突き当てたり、或いはレーザービーム等により貫通できるようにしている。
【0117】
このように構成したので、製造途中でギャップ内圧を大気圧に容易に解放することができ、噴射効率の低下、噴射特性のバラツキを低減することができる。すなわち、封止したギャップ16内は通常、正圧か、負圧のどちらかになる。例えば、前述した電極基板3と流路基板1(シリコン基板31)の直接接合を減圧中で実施すると、ギャップ16内はある程度の減圧状態に保持される。この場合、振動板10と電極15との間に電圧を印加する前に振動板10が極端に変形していると、噴射効率が低くなるだけでなく、駆動電圧バラツキ、吐出インク量や吐出インク速度のバラツキ、インク滴着弾位置のバラツキ等の種々のバラツキが生じるので、大気、窒素或いは希ガス中等でギャップ16内を大気圧に開放することが好ましい。そこで、このインクジェットヘッドでは、ギャップ16内を大気開放するための連通路71、共通連通路72及び大気開放口73を設けているのである。
【0118】
なお、電極15間の分離溝18に隙間があると、この隙間から共通連通路72を通じて、ダイシング時或いはその他の洗浄時において水の流入が起こりうるので、大気圧開放と水の流入防止を完全に図るには、前記第3実施形態のインクジェットヘッドのように電極分離溝18を保護絶縁膜17で平坦に且つ隙間なく完全に埋め込むことが好ましい。
【0119】
次に、本発明に係るインクジェットヘッドを搭載した本発明に係るインクジェット記録装置の機構部の概要について図35及び図36を参照して簡単に説明する。なお、図35は本発明に係るインクジェット記録装置の一例を説明する斜視説明図、図36は同記録装置の機構部の説明図である。このインクジェットヘッド記録装置は、記録装置本体81の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ、キャリッジに搭載したインクジェットヘッドからなる記録ヘッド、記録ヘッドへのインクを供給するインクカートリッジ等で構成される印字機構部82等を収納し、給紙カセット84或いは手差しトレイ85から給送される用紙83を取り込み、印字機構部82によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ86に排紙する。
【0120】
印字機構部82は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド91と従ガイドロッド92とでキャリッジ93を主走査方向(図39で紙面垂直方向)に摺動自在に保持し、このキャリッジ93にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する本発明に係るインクジェットヘッドからなるヘッド94をインク滴吐出方向を下方に向けて装着し、キャリッジ93の上側にはヘッド94に各色のインクを供給するための各インクタンク(インクカートリッジ)95を交換可能に装着している。
【0121】
このインクカートリッジ95から上記インク供給口19を介してインクをヘッド94内に供給する。ここで、インク供給口19は、上記実施形態までの例ではインク噴射面(ノズル板4装着面)側に設けているが、その反対側(裏面側、ベース基板側)或いは側面側に設けてもよく、これに限るものではない。
【0122】
また、キャリッジ93は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド91に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド92に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ93を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ97で回転駆動される駆動プーリ98と従動プーリ99との間にタイミングベルト100を張装し、このタイミングベルト100をキャリッジ93に固定している。
【0123】
また、記録ヘッドとしてここでは各色のヘッド94を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズル5を有する1個のヘッドでもよい。
【0124】
一方、給紙カセット84にセットした用紙83をヘッド94の下方側に搬送するために、給紙カセット84から用紙83を分離給装する給紙ローラ101及びフリクションパッド102と、用紙83を案内するガイド部材103と、給紙された用紙83を反転させて搬送する搬送ローラ104と、この搬送ローラ104の周面に押し付けられる搬送コロ105及び搬送ローラ104からの用紙83の送り出し角度を規定する先端コロ106とを設けている。搬送ローラ104は副走査モータ107によってギヤ列を介して回転駆動される。
【0125】
そして、キャリッジ93の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ104から送り出された用紙83を記録ヘッド94の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材109を設けている。この印写受け部材109の用紙搬送方向下流側には、用紙83を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ111、拍車112を設け、さらに用紙83を排紙トレイ86に送り出す排紙ローラ113及び拍車114と、排紙経路を形成するガイド部材115,116とを配設している。
【0126】
また、キャリッジ93の移動方向右端側にはヘッド94の信頼性を維持、回復するための信頼性維持回復機構(以下「サブシステム」という。)117を配置している。キャリッジ93は印字待機中にはこのサブシステム117側に移動されてキャッピング手段などでヘッド94をキャッピングされる。
【0127】
なお、上記各実施形態においては、振動板変位方向とノズル滴吐出方向が同じになるサイドシュータ方式で説明しているが、振動板変位方向とノズル滴吐出方向が直交するサイドシュータ方式にすることもできる。また、本発明は、インクジェットヘッド以外にも、例えば、インク以外の液滴、例えば、パターニング用の液体レジストを吐出する液滴吐出ヘッドにも適用することでき、さらに、マイクロモータ、マイクロポンプ、その他のマイクロアクチュエータなどにも適用することができる
【0128】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る液滴吐出ヘッドによれば、振動板にギャップとなる彫り込み部を形成し、彫り込み部は、振動板と、振動板との接合面に形成された液室配列方向における幅が彫り込み部の幅より広く平坦である電極との間の距離であるギャップ長がゼロとなる部位を有する傾斜面で形成される構成としたので、ヘッドの低電圧駆動化、噴射特性の向上を図れ、滴吐出特性のバラツキが低減する。
【0131】
ここで、振動板の表面に形成した絶縁膜にギャップとなる彫り込み部を形成しているので、ギャップ精度が向上してインク滴吐出特性のバラツキが低減するとともに、特に高精度の非平行ギャップを容易に形成することができるようになる
【0133】
また、振動板を形成する基板にシリコン基板を用いて、このシリコン基板には彫り込み部或いはギャップを形成する範囲にのみ高濃度ボロン拡散層からなる振動板を形成することで、ギャップの形成と振動板用の高濃度ボロン拡散層の形成を1つのマスクで形成することができるようになり、高精度のギャップを簡単なプロセスで低コストに形成することができる。
【0135】
さらに、吐出室は、高濃度ボロン拡散層を形成した領域内にあることで製造歩留まりが向上するとともに、振動板の強度を確保できる。
【0136】
またギャップの開口部は封止されていることで、チップ化時に水等がギャップ内に侵入することを容易に防止することができるようになり、製造プロセスの簡略化を図れる。この場合、ギャップ内圧を製造途中で大気圧に開放する手段を備えることで、簡単にギャップ内圧を大気圧開放するこができてインク滴吐出特性のバラツキを抑えることができる。
【0137】
本発明に係るインクジェット記録装置によれば、インク滴を吐出させるインクジェットヘッドが上記液滴吐出ヘッドのいずれかである構成としたので、インク滴吐出特性やインク滴着弾位置精度が向上し、画像品質が向上する
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェットヘッドの振動板短手方向の模式的断面説明図
【図2】同ヘッドの振動板長手方向の模式的断面説明図
【図3】本発明の第2実施形態に係るインクジェットヘッドの振動板短手方向の模式的断面説明図
【図4】同ヘッドの振動板長手方向の模式的断面説明図
【図5】同ヘッドの流路基板となるシリコン基板の製造工程を説明する説明図
【図6】同ヘッドの電極基板の製造工程を説明する説明図
【図7】同ヘッドの製造工程を説明する説明図
【図8】同ヘッドと比較するヘッドの一例を説明する説明図
【図9】同ヘッドと比較するヘッドの他の例を説明する説明図
【図10】本発明の第3実施形態に係るインクジェットヘッドの振動板短手方向の模式的断面説明図
【図11】同ヘッドの振動板長手方向の模式的断面説明図
【図12】本発明の第4実施形態に係るインクジェットヘッドの振動板短手方向の模式的断面説明図
【図13】同ヘッドの振動板長手方向の模式的断面説明図
【図14】本発明の第5実施形態に係るインクジェットヘッドの振動板短手方向の模式的断面説明図
【図15】同ヘッドの振動板長手方向の模式的断面説明図
【図16】本発明の第6実施形態に係るインクジェットヘッドの振動板短手方向の模式的断面説明図
【図17】同ヘッドの振動板長手方向の模式的断面説明図
【図18】同ヘッドの流路基板となるシリコン基板の製造工程を説明する説明図
【図19】同ヘッドの製造工程を説明する説明図
【図20】本発明の第7実施形態に係るインクジェットヘッドの振動板短手方向の模式的断面説明図
【図21】同ヘッドの振動板長手方向の模式的断面説明図
【図22】同ヘッドの流路基板となるシリコン基板の製造工程の一例を説明する説明図
【図23】同ヘッドの製造工程を説明する説明図
【図24】同ヘッドの流路基板となるシリコン基板の他の製造工程を説明する説明図
【図25】本発明の第8実施形態に係るインクジェットヘッドの振動板短手方向の模式的断面説明図
【図26】同ヘッドの振動板長手方向の模式的断面説明図
【図27】同ヘッドの流路基板となるシリコン基板の製造工程を説明する説明図
【図28】同ヘッドの製造工程を説明する説明図
【図29】本発明に係るインクジェットヘッドにおける吐出室と高濃度ボロン層の関係の説明に供する比較のためのヘッドの振動板短手方向の模式的断面説明図
【図30】本発明にかかるインクジェットヘッドにおけるギャップ開口の封止による効果の説明に供するヘッドの振動板長手方向の模式的断面説明図
【図31】同じくギャップ開口の封止による効果の説明に供する比較のためのヘッドの一例の振動板長手方向の模式的断面説明図
【図32】同じくギャップ開口の封止による効果の説明に供する比較のためのヘッドの他の例の振動板長手方向の模式的断面説明図
【図33】本発明の第9実施形態に係るインクジェットヘッドのノズル板を省略した上面説明図
【図34】図33のA−A線に沿う振動板長手方向の模式的断面説明図
【図35】本発明に係るインクジェット記録装置の機構部の概略斜視説明図
【図36】同記録装置の側断面説明図
【符号の説明】
1…流路基板、3…電極基板、4…ノズル板、5…ノズル、6…吐出室、10…振動板、12…彫り込み部、15…電極、16…ギャップ、17…保護絶縁膜、18…分離溝、30…高濃度ボロン拡散層、73…大気開放口。

Claims (7)

  1. インク滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する吐出室と、この吐出室の壁面を形成する振動板と、この振動板にギャップを介して対向する電極とを有し、前記振動板を静電力で変形変位させて前記ノズルからインク滴を吐出させる液滴吐出ヘッドにおいて、
    前記振動板に前記ギャップとなる彫り込み部を形成し、
    前記彫り込み部は、前記振動板と、前記振動板との接合面に形成された液室配列方向における幅が前記彫り込み部の幅より広く平坦である前記電極との間の距離であるギャップ長がゼロとなる部位を有する傾斜面で形成される
    ことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  2. 請求項1に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記振動板の表面に形成した絶縁膜に前記ギャップとなる彫り込み部を形成していることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  3. 請求項1又は2に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記振動板を形成する基板がシリコン基板であり、このシリコン基板には前記彫り込み部或いは前記ギャップを形成する範囲にのみ高濃度ボロン拡散層からなる振動板が形成されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  4. 請求項に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記吐出室は、前記高濃度ボロン拡散層を形成した領域内にあることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  5. 請求項1乃至のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記ギャップの開口部は封止されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  6. 請求項に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記ギャップ内圧を製造途中で大気圧に開放する手段を備えていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  7. インク滴を吐出させるインクジェットヘッドを搭載したインクジェット記録装置において、前記インクジェットヘッドが前記請求項1乃至のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドからなることを特徴とするインクジェット記録装置。
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