JP4412814B2 - 横形内燃機関 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、クランク軸及びシリンダ部を共に略水平に配置してなる横形内燃機関に関する。
【0002】
【従来の技術】
図3及び図4は、この種単気筒横形内燃機関の従来例を示しており、縱断面を示す図3において、シリンダブロック100のシリンダ部101及びクランク軸102は共に水平姿勢に配置されており、カム軸103は、クランク軸102の下方に配置され、バランサ軸105はクランク軸102に対してシリンダ部配置側と反対側であって、クランク軸102よりも少し上方位置に配置されている。カム軸103にはクランク軸102のカム軸駆動ギヤ110に噛み合うカム軸ギヤ111が設けられると共に吸,排気弁駆動用の動弁系カム106等が形成されている。該動弁系カム106にはポペット棒107が係合し、該ポペット棒107に連結するプッシュロッド108は、シリンダ部101及びシリンダヘッド120の下側を通過して、弁腕カバー121内に至り、吸,排気弁腕122に当接している。
【0003】
潤滑油ポンプ115は、シリンダブロック100の下端オイルパン部123にできるだけ近づけるために、潤滑油の液面L1近くに配置され、ポンプ兼ガバナウエイト駆動用ギヤ112が上記カム軸ギヤ111に噛み合っている。
【0004】
図3の水平断面を示す図4において、燃料噴射ポンプ114はシリンダ部101に対してクランク軸芯O1方向の側方に配置されており、シリンダブロック100の側面開口に取り付けられた側蓋116に装着されている。燃料噴射ポンプ114のポンプ駆動用タペット114aは、カム軸103に形成されたポンプ用カム103に係合している。
【0005】
側蓋116の配置側と反対側には、フライホイールケース131が固着され、フライホイール130が収納されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
図3のようにシリンダ部101及びクランク軸102を水平に配置した横形内燃機関は、シリンダが縱向きに配置された縱形内燃機関に比べると機関全高を低くすることができる。しかしながら、カム軸103をクランク軸102の下方に配置し、燃料噴射ポンプ114をシリンダ部101の側方の配置しているために、次のような課題がある。
【0007】
(1)カム軸103をクランク軸102の下方に配置している場合には、カム軸ギヤ111の下端が潤滑油面L1に浸るのを避けるために、潤滑油面L1とクランク軸102との間に少なくともカム軸ギヤ111の径に相当する程度の上下方向間隔を確保しなければならず、シリンダブロック下端面100aからのクランク軸高さH01が高くなる。特に、カム軸103はクランク軸102の1/2の回転数で回転するため、カム軸ギヤ111はクランク軸102のカム軸駆動ギヤ110の2倍の径になっており、このカム軸ギヤ111の大きさも、上記クランク軸高さH01が高くなる一因となっている。
【0008】
なお、カム軸103をクランク軸102の下方に配置していると、クランク軸102より上方のシリンダブロック100部分については、クランク軸芯O1からの高さ(上下方向幅)H02を小さく抑えることができる。しかしながら、フライホイールケース13はシリンダブロック100の上端より上方に突出しており、機関全体の高さH03は必然的に高くなってしまうのである。
【0009】
ちなみにカム軸ギヤ111の位置を下げようとすれば、オイルパン部123内の潤滑油に浸らないようにするためにギヤカバーなどを別途設けなければならず、部品点数の増加及び構造の複雑化を来たす。
【0010】
(2)図3のように、クランク軸高さH01が高くなることにより、シリンダブロック全体の重心が高くなっている。
【0011】
(3)図4のように燃料噴射ポンプ114を、シリンダ部101に対してクランク軸芯O1方向の側方に配置していると、シリンダブロック100のクランク軸芯方向の寸法が大きくなり、重量も増加する。
【0012】
(4)カム軸103の位置が低いと、たとえばカム軸PTOを採用する場合には、カム軸103のPTO軸部に取り付けるプーリ等がシリンダブロック下端面(取付面)から下方に食み出す。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本願請求項1記載の発明は、クランク軸及びシリンダブロックのシリンダ部を、共に略水平に配置してなる横形内燃機関において、クランク軸の上方のクランクケース部内に、吸,排気弁駆動用の動弁系カム及び燃料噴射ポンプ駆動用のポンプ用カムが形成された一本のカム軸を配置し、前記カム軸により作動する燃料噴射ポンプを、前記シリンダ部より上方のシリンダブロック部分に配置していることを特徴とする横形内燃機関である。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の横形内燃機関において、シリンダブロックのクランクケース部の下端にオイルパンを取り付け、クランク軸と平行なバランサ軸を、クランク軸に対してシリンダ部配置側と反対側で、クランク軸よりも低位置に配置し、バランサ軸と同一軸芯上に、該バランサ軸より駆動する潤滑油ポンプを配置している
【0015】
【発明の実施の形態】
図1及び図2は本願発明を適用した単気筒の横形ディーゼル機関であり、水平断面図を示す図2において、シリンダブロック1は、シリンダライナー2が嵌着されたシリンダ部3と、クランク軸5が収納されたクランクケース部6を一体に有しており、シリンダ部3及びクランク軸5は水平に配置されている。シリンダ部3のシリンダ中心線C1方向の先端面には、シリンダヘッド及10び弁腕カバー11が順次締着されている。
【0016】
クランクケース部6のクランク軸芯O1方向の一端部は開口しており、該開口部に側蓋8が固定され、クランク軸芯O1方向の他端部には、フライホイール13を収納するフライホイールケース(ファンケース)14が固着されている。ここで説明を容易にするために、シリンダ中心線C1方向を前後方向とし、クランク軸芯O1方向を左右方向とし、かつ、シリンダヘッド10側を前方、側蓋8側を左方と仮定して、以下、説明する。
【0017】
クランク軸5の左端部は側蓋8に支持されると共に左方へ突出し、突出部分が出力軸18となっており、クランク軸5の右端部はクランクケース部6の右端壁に支持されると共にフライホイールケース14内に突出し、突出端部にはフライホイール13が固着されている。フライホイール13には冷却用ファン15が形成されている。
【0018】
クランク軸5は、左右1対のクランクアーム20を介してクランクピン21が設けられ、コネクティングロッド22を介してピストン23に連結し、側蓋8と左側クランクアーム20の間にはカム軸駆動ギヤ25が固着され、右側クランクアーム20とクランクケース部6の右端壁の間にはバランサ駆動ギヤ26が固着されている。
【0019】
バランサ駆動ギヤ26はクランク軸5の後下方に配置されたバランサ軸28のバランサギヤ29に噛み合っている。バランサ軸28は、右端部がクランクケース部6の右端壁に支持され、左端部は側蓋8に支持されており、側蓋8にはバランサ軸芯と同一軸芯上に潤滑油ポンプ30が設けられ、該潤滑油ポンプ30のポンプ軸31はバランサ軸28にオルダム継手機構を介して連動連結している。
【0020】
シリンダヘッド10には、1対の吸,排気弁33がシリンダ中心線C1を挟んで左右に配置されている。
【0021】
図1は縦断面図であり、仮想線で示す円はフライホイールケース14の外周を示している。弁腕カバー11は、シリンダヘッド10の上半部に締着され、燃料噴射弁34はシリンダ中心線C1より下側に装着されている。弁腕カバー3内には左右1対の吸,排気弁腕35が揺動可能に配置され、吸,排気弁腕35の下端部はそれぞれ吸,排気弁33の前端に当接し、吸,排気弁腕35の上端部は、シリンダ部3及びシリンダヘッド10の上側に配置されたプッシュロッド38の前端に当接している。
【0022】
クランクケース部6内において、クランク軸5の上方にカム軸40が配置され、カム軸40の後方にガバナウエイト軸41が配置されており、また、前述のようにバランサ軸28は、クランク軸5の後方であってクランク軸5よりも下方位置に配置されている。カム軸40には、吸,排気弁駆動用の動弁系カム43と、燃料噴射ポンプ駆動用のポンプ用カム44が形成されると共に、カム軸ギヤ45が設けられており、カム軸ギヤ45はクランク軸5の前記カム軸駆動ギヤ25に噛み合っている。ガバナウエイト軸41の駆動ギヤ47は上記カム軸ギヤ45に噛み合っている。
【0023】
シリンダ部3より上方のクランクケース部6の上壁には、カム軸40の前上方向に対応する位置にポンプ取付孔50が形成されており、該ポンプ取付孔50には燃料噴射ポンプ51が前上がり傾斜姿勢で挿入固定され、燃料噴射ポンプ50の駆動用のタペット52がカム軸40のポンプ用カム44に当接している。また、ガバナウエイト軸41の前上方部分には、垂直なレギュレータ軸54が配置され、クランクケース部6の上壁に支持されており、該レギュレータ軸54の下端部にはガバナレバー57が設けられ、上端部にはレギュレータレバー56が設けられている。ガバナレバー57の一端はガバナ機構に連結し、他端は燃料噴射ポンプ51の燃料コントロールレバーに連結している。
【0024】
シリンダ部3及びシリンダヘッド10の上部にはそれぞれロッド挿通孔60,61が形成され、該ロッド挿通孔60,61内に前記吸,排気弁駆動用のプッシュロッド38が配置されており、該プッシュロッドロッド38の後端部は、ポペット棒62を介してカム軸40の動弁系カム43に当接している。
【0025】
クランクケース部6の下端部には、オイルパン部7が一体に形成されており、該オイルパン部7には油面L1まで潤滑油が収納され、前記バランサギヤ29及びバランサ軸28は、それらの下端部が油面L1より少し上方に位置するように配置されている。
【0026】
【作用】
図2において、クランク軸5の回転は、出力軸18により直接外部に出力されるが、バランサ駆動ギヤ26及びバランサギヤ29を介してバランサ軸28にも伝達され、さらに、バランサ軸28から潤滑油ポンプ30にも伝達される。
【0027】
図1において、クランク軸5の回転は、カム軸駆動ギヤ25及びカム軸ギヤ45を介してカム軸40にも伝達され、さらに、ガバナ用の駆動ギヤ45を介してガバナウエイト軸41にも伝達される。
【0028】
カム軸40の回転により、ポンプ用カム44及びタペット52を介して燃料噴射ポンプ51を駆動すると共に、動弁系カム43、ポペット棒62、プッシュロッド38及び吸,排気弁腕35を介して吸,排気弁33を開閉駆動する。
【0029】
図1及び図2に示す構造において、カム軸40をクランク軸5の上方に配置することにより、シリンダブロック1の下端面1aからクランク軸芯O1までの高さH1を低く抑え、かつ、クランク軸芯O1をシリンダブロック1の上下方向幅(H1+H2)の概ね中央部に位置させている。これにより、シリンダブロック1は、クランク軸芯O1より上側部分の上下方向寸法H2と、クランク軸芯O1より下側部分の寸法(クランク軸高さ)H1を略同程度にすることができ、フライホイールケース14に対して概ね上下方向の中央部にバランス良くシリンダブロック1を納めることができ、また、シリンダブロック下端面1aからフライホイールケース上端までの高さ(機関全高)H3も図3に比べて大幅に低くすることができる。
【0030】
また、バランサ軸28をクランク軸5より後下方に配置することにより、上記クランク軸芯O1に対する上下寸法H1、H2の均等性と相俟って、クランク軸芯O1に対する上下の重量配分もバランス良く保つことができる。
【0031】
【発明のその他の実施の形態】
(1)複数気筒の横形内燃機関に適用することも可能である。
【0032】
【発明の効果】
(1)本願請求項1記載の発明によると、カム軸40をクランク軸5の上方に配置することにより、クランク軸高さH1を低く抑えることができると共に、クランク軸芯O1に対する上下の寸法H1,H2を概ね均等にでき、シリンダブロック1が機関全高H3の概ね中央部にバランス良く納まると共に、機関全高H3を低く抑えることができる。これにより、アンダーフロアーに搭載する作業機に適した内燃機関を提供することができる。
【0033】
(2)カム軸40及び燃料噴射ポンプ51をクランク軸5及びシリンダ部3の上方に配置する一方、バランサ軸28をクランク軸5より下方に配置することにより、前記クランク軸芯O1に対する上下寸法H1、H2の均等性に加え、クランク軸芯O1に対する重量配分もバランス良く保つことができる。
【0034】
(2)燃料噴射ポンプ51の配置位置を、シリンダブロック1の側方ではなくて、クランク軸5の上方位置で、かつ、シリンダブロック1に装着するようにしているので、シリンダブロック1のクランク軸芯O1方向の幅をコンパクトにできると共に、軽量化を達成できる。
【0035】
(3)請求項2記載の発明のように、バランサ軸28をクランク軸5より下方に配置し、バランサ軸29で潤滑油ポンプ30を駆動するようにしていると、潤滑油ポンプ30をオイルパン部近傍に配置しながらも、潤滑油ポンプ30のための動力伝達機構が簡素化され、部品点数の節約にもなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願発明を適用した横形ディーゼル機関の縱断面図である。
【図2】 図1の水平断面図である。
【図3】 従来例の縦断面図である。
【図4】 図3の水平断面図である。
【符号の説明】
1 シリンダブロック
3 シリンダ部
5 クランク軸
6 クランクケース部
7 オイルパン部
8 側蓋
10 シリンダヘッド
11 弁腕カバー
13 フライホイール
14 フライホイールケース
25 カム軸駆動ギヤ
26 バランサ駆動ギヤ
28 バランサ軸
29 バランサギヤ
30 潤滑油ポンプ
31 ポンプ軸
34 燃料噴射弁
40 カム軸
51 燃料噴射ポンプ

Claims (2)

  1. クランク軸(5)及びシリンダブロック(1)のシリンダ部(2)を、共に略水平に配置してなる横形内燃機関において、
    クランク軸(5)の上方のクランクケース部(6)内に、吸,排気弁駆動用の動弁系カム(43)及び燃料噴射ポンプ駆動用のポンプ用カム(44)が形成された一本のカム軸(40)を配置し、
    前記カム軸(40)により作動する燃料噴射ポンプ(51)を、前記シリンダ部(3)より上方のシリンダブロック(1)部分に配置していることを特徴とする横形内燃機関。
  2. 請求項1記載の横形内燃機関において、
    シリンダブロック(1)のクランクケース部(6)の下端にオイルパン(7)を取り付け、
    クランク軸(5)と平行なバランサ軸(28)を、クランク軸(5)に対してシリンダ部配置側と反対側で、クランク軸(5)よりも低位置に配置し、バランサ軸(28)と同一軸芯上に、該バランサ軸(28)より駆動する潤滑油ポンプ(30)を配置していることを特徴とする横形内燃機関。
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