JP4411760B2 - エポキシ樹脂組成物及び半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、離型性、耐湿性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びこれを用いた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の高度化、軽薄短小化が求められる中、半導体素子の高集積化、表面実装化が進んでいる。これに伴い、半導体封止用エポキシ樹脂組成物への要求は益々過酷なものとなっているのが現状である。特に半導体装置の表面実装に際しては、吸湿した水分が半田処理時の昇温過程で急激に膨張し、半導体素子とエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面における密着性を低下させ、半導体装置の信頼性を損なうといった問題が生じている。この点に鑑み、エポキシ樹脂組成物の硬化物と半導体素子間の密着性改善、ひいては耐半田クラック性の向上は、封止材料にとって最も重要な課題となっている。
【0003】
一般に、耐半田クラック性を向上させる手段としては、(1)低粘度の樹脂成分を用いることで無機質充填材の高充填化を可能にし、エポキシ樹脂組成物の硬化物を低熱膨張化、低吸湿化させる 、(2)吸湿性が少なく可撓性を有する樹脂を使用する等が挙げられる。
しかしながら、低粘度成分である低分子量のエポキシ樹脂、結晶性エポキシ樹脂、フェノール樹脂系の硬化剤等を用いる場合、硬化物の架橋密度が低くなり、機械的強度や熱時弾性率が低下する。このため、硬化物が金型から離型する際に金型表面に付着したり、硬化物に亀裂や欠陥が生じ易いといった欠点を有する。又低吸水性、可撓性を有するフェノールアラルキル樹脂等を用いる場合、耐半田クラック性は向上するものの熱時の剛性に欠け、硬化速度も遅いため、金型からの離型性に劣る。
【0004】
離型性を向上させる手段としては、離型剤を多量に配合する方法があるが、多量の離型剤の配合は金型からの離型性を向上させるが、半導体装置内部の半導体素子やそれを搭載するリードフレームとエポキシ樹脂組成物の硬化物との間の密着性を低下させる。これにより、吸湿した半導体装置を半田処理すると、これら界面で剥離が生じたり、剥離に起因するクラックが発生することになる。更に多量の離型剤成分が金型に付着することにより金型汚れ、型取られといった問題が生じる。このため金型汚れが少なく、無機質充填材を高充填化でき、離型性、耐湿性ひいては耐半田クラック性に優れたエポキシ樹脂組成物の開発が望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、金型汚れが少なく、離型性、耐湿性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びこれを用いた半導体装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D)無機質充填材、及び(E)グリセリンと炭素数24〜36の飽和脂肪酸とのグリセリントリ脂肪酸エステルを必須成分とすることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるエポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いてもよい。
これらの内では、常温では結晶性の固体であるが、融点以上では極めて低粘度の液状となり、無機質充填材を高充填化でき、その結果として耐半田クラック性に優れるビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂が好ましい。ビフェニル型エポキシ樹脂としては、例えば、3,3’,5,5’−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル等が挙げられる。その他のエポキシ樹脂も極力粘度の低いものを使用することが望ましい。低粘度のエポキシ樹脂を用いることにより無機質充填材を高充填化できるが、架橋密度が低くなるため離型性に難点があり、本発明の離型剤を用いることにより離型性を改善できる。
【0008】
本発明で用いられるフェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、トリフェノールメタン樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、フェニレン及び/又はジフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いてもよい。
無機質充填材の高充填化のためには、エポキシ樹脂と同様に低粘度のものが好ましい。可撓性、低吸湿性のためには、フェニレン及び/又はジフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂の使用が望ましい。低粘度、可撓性を有するフェノール樹脂は、架橋密度が低くなるため離型性に難点があり、本発明の離型剤と併用することにより離型性を改善できる。
【0009】
本発明で用いられる硬化促進剤としては、前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂との架橋反応の触媒となり得るものを指し、例えば、トリブチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のアミン系化合物、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート塩等の有機リン系化合物、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。又これらの硬化促進剤は単独でも混合して用いてもよい。
【0010】
本発明で用いられる無機質充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミ等が挙げられる。無機質充填材の配合量を特に多くする場合は、溶融シリカを用いるのが一般的である。溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、かつエポキシ樹脂組成物の溶融粘度の上昇を抑えるためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布がより広くなるように調整することが望ましい。
【0011】
本発明で用いられるグリセリンと炭素数24〜36の飽和脂肪酸とのグリセリントリ脂肪酸エステルは、エポキシ樹脂組成物に充分な流動性を付与し、更に離型性を向上する機能を有している。具体的には、グリセリントリリグノセリン酸エステル、グリセリントリセロチン酸エステル、グリセリントリモンタン酸エステル等が挙げられる。これらは、単独でも混合して用いてもよい。
エステル化に用いる飽和脂肪酸が、炭素数23以下では十分な離型性が得られないため好ましくない。炭素数37以上では分子量が大きいため流動性が低下したり、過度に染み出すことにより金型汚れの原因となるので好ましくない。又モノエステル、ジエステルでは、残存する水酸基の影響によってエポキシ樹脂組成物の硬化物の耐湿性が低下し、その結果として耐半田クラック性に悪影響を及ぼすので好ましくない。なお、本発明での飽和脂肪酸の炭素数とは、飽和脂肪酸中のアルキル基とカルボキシル基の炭素数を合計したものを指す。
【0012】
本発明で用いられるグリセリンと炭素数24〜36の飽和脂肪酸をエステル化したグリセリントリ脂肪酸エステルの特性を損なわない範囲で他の離型剤を併用することもできる。例えば、カルナバワックス等の天然ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸の金属塩類等が挙げられる。
又グリセリンと炭素数24〜36の飽和脂肪酸をエステル化したグリセリントリ脂肪酸エステルの添加量としては、全エポキシ樹脂組成物中に0.02〜0.5重量%が好ましい。0.02重量%未満の場合では十分な流動性と離型性が得られない。0.5重量%を越えると成形時に半導体装置内部の半導体素子やそれを搭載するリードフレームとエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面に移行するため、密着性を著しく損ない耐湿性を低下させ、その結果として耐半田クラック性に悪影響を及ぼす。更に過度に染み出すことで金型汚れが発生するので好ましくない。
【0013】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(E)成分を必須成分とするが、これ以外に必要に応じてカップリング剤、臭素化エポキシ樹脂、三酸化アンチモン、リン化合物等の難燃剤、カーボンブラック等の着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム、合成ゴム等の低応力剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜配合してもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(E)成分、及びその他の添加剤等をミキサー等を用いて混合後、加熱ニーダ、熱ロール、押し出し機等を用いて加熱混練し、続いて冷却、粉砕して得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子等の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の従来からの成形方法で硬化成形すればよい。
【0014】
【実施例】
以下、本発明を実施例で具体的に説明する。配合割合は重量部とする。
をミキサーを用いて混合した後、表面温度が95℃と25℃の2軸ロールを用いて20回混練し、得られた混練物シートを冷却後粉砕して、エポキシ樹脂組成物とした。得られたエポキシ樹脂組成物の特性を以下の方法で評価した。
【0015】
評価方法
スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用いて、金型温度175℃、注入圧力70kg/cm2、硬化時間2分で測定した。単位はcm。
離型性:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力75kg/cm2、硬化時間2分で144pQFP(20×20×1.7mm厚さ)を10回連続で成形した。この10回の成形で、離型時に金型に付着したり、硬化物に割れ・欠けが発生した回数が5回以上のものを×、1〜4回のものを△、発生なしのものを○と判定した。
金型汚れ:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力75kg/cm2、硬化時間2分で144pQFP(20×20×1.7mm厚さ)を500回連続で成形した。硬化物表面と金型表面の両方に白化があるものを×、どちらかに白化のあるものを△、どちらにも白化のないものを○と判定した。耐半田クラック性:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力75kg/cm2、硬化時間2分で144pQFP(20×20×1.7mm厚さ)を成形し、175℃、8時間で後硬化させ、85℃、相対湿度85%の環境下で168時間放置し、その後240℃の半田槽に10秒間浸漬した。その後超音波探傷装置で内部を透視し、[(剥離発生パッケージ数)/(全パッケージ数×100)]を求め、0%のものを○、20%未満のものを△、20%以上のものを×とした。
【0016】
実施例2〜5、比較例1〜5
実施例1以外に用いた各成分は、以下の通りである。
オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(軟化点55℃、エポキシ当量196)、フェノールノボラック樹脂(軟化点110℃、水酸基当量104)、グリセリントリセロチン酸エステル(炭素数26)、グリセリントリステアリン酸エステル(炭素数18)、グリセリントリ長鎖脂肪酸エステル(炭素数37以上)、グリセリンモノモンタン酸エステル(炭素数29)、グリセリンジモンタン酸エステル(炭素数29)。
表1、表2の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得、実施例1と同様にして評価した。結果を表1、表2に示す。
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、金型汚れが少なく、離型性に優れており、これを用いた半導体装置は耐湿性に優れ、その結果として耐半田クラック性にも優れている。
Claims (3)
- (A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D)無機質充填材、及び(E)グリセリンと炭素数24〜36の飽和脂肪酸とのグリセリントリ脂肪酸エステルを必須成分とすることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 成分(E)が、全エポキシ樹脂組成物中に0.02〜0.5重量%含まれる請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 請求項1又は2記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。
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