JP4370666B2 - 半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、信頼性、表面実装性に優れたエリア実装型半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の小型化、軽量化、高性能化の市場動向において、半導体の高集積化が年々進み、又半導体装置の表面実装化が促進されるなかで、新規にエリア実装型の半導体装置が開発され、従来構造の半導体装置から移行し始めている。
エリア実装型半導体装置としては、BGA(ボールグリッドアレイ)、あるいは更に小型化を追求したCSP(チップスケールパッケージ)が代表的であるが、これらは従来のQFP、SOPに代表される表面実装型半導体装置では限界に近づいている、多ピン化・高速化への要求に対応するために開発されたものである。構造としては、BT樹脂/銅箔回路基板(ビスマレイミド・トリアジン/ガラスクロス基板)に代表される硬質回路基板、あるいはポリイミド樹脂フィルム/銅箔回路基板に代表されるフレキシブル回路基板の片面上に半導体素子を搭載し、その半導体素子搭載面、即ち有機基板の片面のみがエポキシ樹脂組成物等で成形・封止され、更に有機基板の半導体素子搭載面の反対面には半田ボールを2次元的に並列して形成し、半導体装置を実装するプリント配線板との接合を行う特徴を有している。
【0003】
又、半導体装置の表面実装化が促進されるなかで、半導体封止用エポキシ樹脂組成物への要求は益々厳しいものとなってきている。特に半導体装置の表面実装化が一般的になってきている現状では、吸湿した半導体装置が半田処理時に高温にさらされ、気化した水蒸気の爆発的応力により半導体装置にクラックが発生したり、或いは半導体素子や有機基板とエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面に剥離が発生することにより、電気的信頼性を大きく損なう不良が生じ、これらの不良の防止、即ち耐半田クラック性の向上が大きな課題となっている。
この耐半田クラック性を向上させる手段として、種々の提案がなされており、代表的なものとしては、(1)低粘度の樹脂成分を使用して無機充填材を高充填化し、樹脂成分を減少させて、エポキシ樹脂組成物の硬化物を低熱膨張化、低吸湿化させる、(2)吸湿性が少なく可撓性を有する樹脂を使用する等が挙げられる。
(1)の手段の低粘度の樹脂成分としては、低粘度のエポキシ樹脂や結晶性エポキシ樹脂、硬化剤としての低粘度のフェノール樹脂が挙げられるが、これらは一般的に低分子量の化合物であるため、硬化物の架橋密度が低くなり、機械的強度や熱時弾性率が低くなるため、金型からの離型時に硬化物が金型に付着したり、或いは成形品の割れ・欠けが発生する等、離型性に劣るという欠点を有する。
(2)の手段の可撓性を有する樹脂成分としては、パラキシリレン変性やジシクロペンタジエン変性のフェノール樹脂が挙げられるが、これらを用いると熱時弾性率が低くなるため、(1)の場合と同様に離型性に劣るという欠点を有する。
【0004】
離型性を向上させるためには、離型剤を多量に配合することが対策として挙げられるが、一方、多量の離型剤が、半導体装置内部の半導体素子やそれを搭載する有機基板とエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面に移行するため、これら界面の密着性を著しく損なう結果になる。このことにより、半導体装置を吸湿後、半田処理すると、これらの界面で剥離が発生したり、その剥離に起因するクラックが発生することがある。
このため、離型性と耐半田クラック性が両立する手法の開発が望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、離型性に優れるとともに、連続して成形した場合の金型の汚れが少なく、半導体装置を実装する際の密着性に優れたエポキシ樹脂組成物を用いた耐半田クラック性に優れたエリア実装型半導体装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、有機基板の片面に半導体素子が搭載され、半導体素子が搭載された基板面側の実質的に片面のみがエポキシ樹脂組成物で封止された半導体装置において、有機基板が絶縁性を必要とする部分にソルダーレジストが塗布された構成であり、前記エポキシ樹脂組成物が、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D)無機充填材、及び(E)炭素数12〜24の飽和脂肪酸(a)と炭素数12〜40の脂肪酸アマイド(b)が重量比(a/b)30/70〜70/30の割合で含まれる離型剤を必須成分とし、離型剤(E)の添加量が全エポキシ樹脂組成物中に0.05〜0.4重量%であることを特徴とするエリア実装型半導体装置である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる有機基板としては、従来からエリア実装型半導体装置に用いられているビスマレイミド・トリアジン/ガラスクロス基板、ポリイミド樹脂フィルム/銅箔回路基板に代表されるフレキシブル回路基板等の耐熱性に優れた基板が挙げられる。
又、有機基板が絶縁性を必要とする部分に塗布されるソルダーレジストとしては、プリント配線板の銅箔回路の絶縁保護に用いられている写真現像型レジスト、紫外線硬化型レジスト等がある。
本発明に用いられるエポキシ樹脂は、分子中にエポキシ基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマーを指し、例えば、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独でも併用してもよい。
本発明に用いられるフェノール樹脂は、分子中にフェノール性水酸基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマーを指し、例えば、フェノールノボラック樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのフェノール樹脂は、単独でも併用してもよい。
【0008】
本発明に用いられる硬化促進剤としては、エポキシ樹脂とフェノール樹脂との架橋反応の触媒となり得るものを指し、具体的にはトリブチルアミン等のアミン系化合物、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレート塩等の有機リン系化合物、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの硬化促進剤は、単独でも併用してもよい。
【0009】
本発明に用いられる無機充填材としては、破砕状、又は球状の溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ等があり、無機充填材としての配合量を高め、かつエポキシ樹脂組成物の成形時の溶融粘度の上昇を抑えるためには、球状溶融シリカの使用が好ましい。更に、球状溶融シリカの配合量を高めるためには、球状溶融シリカの粒度分布がより広くなるように調整することが好ましい。
【0010】
本発明に用いられる離型剤は、炭素数12〜24の飽和脂肪酸と炭素数12〜40の脂肪酸アマイドとを特定の割合で含むものである。
炭素数12〜24の飽和脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いてもよい。炭素数11以下のものだと、分子量が低すぎるため、連続成形時に離型剤自身の耐熱性不足による分解が進み、型汚れ、離型不良を起こし、又、炭素数25以上のものだと、融点が高くなり、溶融時の粘度を十分に低下させることができず十分な流動性が得られないので好ましくない。
【0011】
炭素数12〜40の脂肪酸アマイドとしては、例えば、ステアリン酸モノアマイド、N−ステアリン酸モノメチロールアマイド、N,N’−メチレンビスステアリン酸アマイド、N,N’−エチレンビスステアリン酸アマイド等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いてもよい。エポキシ樹脂を用いる場合は、特に高温時での離型性が悪く、高温での離型性を補うために、本発明の炭素数12〜40の脂肪酸アマイドとの併用が必須となる。炭素数11以下のものだと十分な離型性が得られず、又、炭素数41以上のものだと流動性が低下するため好ましくない。モノアマイド、ビスアマイドのいずれでも使用可能であるが、連続成形時の型汚れ防止のためには、耐熱性の良いビスアマイドがより好ましい。
【0012】
炭素数12〜24の飽和脂肪酸(a)と炭素数12〜40の脂肪酸アマイド(b)の配合割合としては、重量比(a/b)で30/70〜70/30であることが必須であり、飽和脂肪酸分がこの範囲より多すぎると、粘度が低下し流動性は出やすいものの、十分な離型性が得られないので好ましくない。又、飽和脂肪酸分がこの範囲より少なすぎると、離型性は十分であるが、粘度が高くなり、十分な流動性が得られないので好ましくない。
本発明の炭素数12〜24の飽和脂肪酸及び炭素数12〜40の脂肪酸アマイドの特性を損なわない範囲で、他の離型剤を併用することもできる。併用できるものとしては、例えば、カルナバワックス等の天然ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、高級脂肪酸、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸の金属塩類もしくはパラフィン等が挙げられる。
又、本発明の離型剤の添加量としては、全エポキシ樹脂組成物中に0.05〜0.4重量%が好ましい。0.05重量%未満だと、十分な流動性と離型性が得られず、0.4重量%を越えると、成形時に半導体装置内部の半導体素子やそれを搭載するリードフレームとエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面に移行するため、密着性を著しく損ない、耐半田クラック性を低下させるので好ましくない。
【0013】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(E)成分を必須成分とするが、これ以外にも必要に応じてカップリング剤、臭素化エポキシ樹脂、三酸化アンチモン、リン化合物等の難燃剤、カーボンブラック等の着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム、合成ゴム等の低応力剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜配合してもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(E)成分、及びその他の添加剤等をミキサー等を用いて混合後、加熱ニーダ、熱ロール、押し出し機等を用いて加熱混練し、続いて冷却、粉砕して得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子等の電子部品を封止し、エリア実装型半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の従来からの成形方法で硬化成形すればよい。特に、本発明のエポキシ樹脂組成物は、エリア実装型半導体装置用に適している。
【0014】
【実施例】
以下、本発明を実施例で具体的に説明する。配合割合は重量部とする。
《実施例1》
式(1)のエポキシ樹脂(軟化点60℃、エポキシ当量170)9.10重量部
【化1】
【0015】
式(2)のフェノール樹脂(軟化点107℃、水酸基当量97)5.10重量部
【化2】
トリフェニルホスフィン 0.20重量部
球状溶融シリカ 85.00重量部
ステアリン酸 0.10重量部
N−ステアリン酸アマイド 0.20重量部
カーボンブラック 0.30重量部
をミキサーを用いて混合した後、表面温度が90℃と45℃の2本ロールを用いて30回混練し、冷却後粉砕して、エポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0016】
《評価方法》
スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用いて、金型温度175℃、注入圧力7MPa、硬化時間2分で測定した。単位はcm。BGAパッケージへの充填性を考慮すると、70cm以上が好ましい。
離型性:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力7MPa、硬化時間2分で、225ピンBGAパッケージ(絶縁性が必要な部分にソルダーレジストを塗布された基板は、0.36mm厚のビスマレイミド・トリアジン/ガラスクロス基板、パッケージサイズは24×24mm、厚み1.17mm、シリコンチップはサイズ9×9mm、厚み0.35mm、チップと回路基板のボンディングパッドとを25μm径の金線でボンディングしている)を10回連続で成形した。この10回の成形で、離型時に成形品が金型に付着したり、成形品に割れ・欠けが1回でも発生したものを不良、付着や割れ・欠けが発生しなかったものを良好と判定した。
型汚れ:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力7MPa、硬化時間2分で、前記の225ピンBGAパッケージを500回連続で成形した。成形品表面と金型表面のどちらかに白化があるものを不良、どちらにも白化のないものを良好と判定した。
耐半田クラック性:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力7MPa、硬化時間2分で前記の225ピンBGAパッケージを成形し、更に175℃、8時間で後硬化させた。85℃、相対湿度60%の環境下で168時間放置し、その後240℃の半田槽に10秒間浸漬した。超音波探傷機を用いてパッケージを観察し、クラック発生率[(内部クラック発生パッケージ数)/(全パッケージ数)×100]の値、及び「剥離発生率[(パッケージ内部で剥離が発生したパッケージ数)/(全パッケージ数)×100」の値を求めた。単位はそれぞれ%。
【0017】
《実施例2〜5》、《比較例1〜8》
表1、表2の配合に従って、実施例1と同様にエポキシ樹脂組成物を得、実施例1と同様にして評価した。結果を表1、表2に示す。
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
【発明の効果】
本発明に用いるエポキシ樹脂組成物は、離型性に優れるとともに、連続して成形した場合の金型の汚れが少なく、半導体装置を実装する際の密着性に優れており、このエポキシ樹脂組成物を用いて封止されたエリア実装型半導体装置は、耐半田クラック性に優れている。
Claims (1)
- 有機基板の片面に半導体素子が搭載され、半導体素子が搭載された基板面側の実質的に片面のみがエポキシ樹脂組成物で封止された半導体装置において、有機基板が絶縁性を必要とする部分にソルダーレジストが塗布された構成であり、前記エポキシ樹脂組成物が、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D)無機充填材、及び(E)炭素数12〜24の飽和脂肪酸(a)と炭素数12〜40の脂肪酸アマイド(b)が重量比(a/b)30/70〜70/30の割合で含まれる離型剤を必須成分とし、離型剤(E)の添加量が全エポキシ樹脂組成物中に0.05〜0.4重量%であることを特徴とするエリア実装型半導体装置。
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