JP4470264B2 - エリア型実装半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びエリア型実装半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント配線板や金属リードフレームの片面に半導体素子を搭載し、その搭載面側の実質的に片面のみを樹脂封止された、いわゆるエリア実装型半導体装置に適した半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びこれを用いた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の小型化、軽量化、高性能化の市場動向において、半導体素子の高集積化が年々進み、又半導体装置の表面実装化が促進されるなかで、新規にエリア実装型半導体装置が開発され、従来構造の半導体装置から移行し始めている。エリア実装型半導体装置としてはBGA(ボールグリッドアレイ)或いは更に小型化を追求したCSP(チップスケールパッケージ)等が代表的であるが、これらは従来QFP、SOPに代表される表面実装型半導体装置では限界に近づいている多ピン化・高速化への要求に対応するために開発されたものである。構造としては、BT樹脂/銅箔回路基板(ビスマレイミド・トリアジン樹脂/ガラスクロス基板)に代表される硬質回路基板、或いはポリイミド樹脂フィルム/銅箔回路基板に代表されるフレキシブル回路基板の片面上に半導体素子を搭載し、その半導体素子搭載面、即ち基板の片面のみがエポキシ樹脂組成物等で成形・封止されている。又基板の半導体素子搭載面の反対面には半田ボールを2次元的に並列して形成し、半導体装置を実装する回路基板との接合を行う特徴を有している。更に半導体素子を搭載する基板としては、上記の有機回路基板以外にもリードフレーム等の金属基板を用いる構造も開発されている。
【0003】
これらエリア実装型半導体装置の構造は、基板の半導体素子搭載面のみをエポキシ樹脂組成物で封止し、半田ボール形成面側は封止しないという片面封止の形態をとっている。リードフレーム等の金属基板等では、半田ボール形成面でも数十μm程度の封止樹脂層が存在することもあるが、半導体素子搭載面では数百μmから数mm程度の封止樹脂層が形成されるため、実質的に片面封止となっている。このため、有機基板や金属基板とエポキシ樹脂組成物の硬化物との間での熱膨張・熱収縮の不整合、或いはエポキシ樹脂組成物の成形硬化時の硬化収縮による影響で、これらの半導体装置では成形直後から反りが発生しやすい。更にこれらの半導体装置を実装する回路基板上に半田接合を行う場合、200℃以上の加熱工程を経るが、この際に半導体装置の反りが発生し、多数の半田ボールが平坦とならず、半導体装置を実装する回路基板から浮き上がってしまい、電気的接合の信頼性が低下する問題も起こる。
【0004】
基板上の実質的に片面のみをエポキシ樹脂組成物で封止した半導体装置において、反りを低減するには、基板の熱膨張係数とエポキシ樹脂組成物の硬化物の熱膨張係数とを近づけること、及びエポキシ樹脂組成物の硬化物の硬化収縮を小さくすることの二つの方法が重要である。
基板としては、有機基板ではBT樹脂やポリイミド樹脂のような高いガラス転移温度(以下、Tgという)を有する樹脂が広く用いられており、これらはエポキシ樹脂組成物の成形温度である170℃近辺よりも高いTgを有する。従って、成形温度から室温までの冷却過程では有機基板のα1の領域のみで収縮する。従って、エポキシ樹脂組成物の硬化物もTgが高く、かつα1が有機基板と同じで、更に硬化収縮がゼロであれば、反りはほぼゼロであると考えられる。このため、多官能型エポキシ樹脂と多官能型フェノール樹脂との組み合わせによりTgを高くし、無機充填材の配合量でα1を合わせる手法が既に提案されている。
【0005】
又赤外線リフロー、ベーパーフェイズソルダリング、半田浸漬等の手段での半田処理による半田接合を行う場合、エポキシ樹脂組成物の硬化物並びに有機基板からの吸湿により半導体装置内部に存在する水分が高温で急激に気化することによる応力で半導体装置にクラックが発生したり、有機基板の半導体素子搭載面とエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面で剥離が発生することもあり、エポキシ樹脂組成物の低応力化・低吸湿化とともに、有機基板との接着性も求められる。
更に、有機基板とエポキシ樹脂組成物の硬化物の熱膨張の不整合により、信頼性テストの代表例である温度サイクル試験でも、有機基板/エポキシ樹脂組成物の硬化物との界面での剥離や半導体装置のクラックが発生する。
従来のQFPやSOP等の表面実装型半導体装置では、半田実装時のクラックや各素材界面での剥離の防止のために、ビフェニル型エポキシ樹脂に代表されるような結晶性エポキシ樹脂と可撓性骨格を有するフェノール樹脂とを組み合わせて用い、かつ無機質充填材の配合量を増加することにより、低Tg化、かつ低吸湿化を行う対策がとられてきた。しかし、この手法では、片面封止の半導体装置における反りの問題は解決できないのが現状であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、エリア実装型半導体装置での成形後や半田処理後の反りが小さく、又低吸湿率で、特に有機基板との接着性に優れるため半田処理時等の信頼性に優れるエポキシ樹脂組成物及びこれを用いた半導体装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基板の片面に半導体素子が搭載され、半導体素子が搭載された基板面側の実質的に片面のみを封止する際に用いるエポキシ樹脂組成物であって、(A)式(1)で示されるエポキシ樹脂(a)と式(2)で示されるエポキシ樹脂(b)の重量比(a)/(b)が、20/80〜80/20であるエポキシ樹脂、(B)式(3)で示されるフェノ−ル樹脂を全フェノ−ル樹脂中に30〜100重量%含むフェノ−ル樹脂、(C)硬化促進剤、及び(D)無機充填材からなるエポキシ樹脂組成物であり、前記無機充填材が全エポキシ樹脂組成物中に80〜94重量%含まれるエリア型実装半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びこれを用いて半導体素子を封止してなるエリア型実装半導体装置である。
【化4】
(nは平均値で、1〜10の正数)
【0008】
【化5】
【0009】
【化6】
(nは平均値で、1〜10の正数)
【0010】
【発明の実施の形態】
基板上の実質的に片面のみをエポキシ樹脂組成物で封止した半導体装置において、反りを低減するには、基板の熱膨張係数とエポキシ樹脂組成物の硬化物の熱膨張係数とを近づけること、及びエポキシ樹脂組成物の硬化収縮を小さくすることの二つの方法が重要と考えられてきた。即ちエポキシ樹脂、フェノール樹脂、硬化促進剤、及び無機充填材を主成分とするエポキシ樹脂組成物において、硬化収縮と、成形温度から室温までの熱収縮を小さくすることが、反りの低減に必要となる。又半田処理後の信頼性、即ち耐半田クラック性を向上させるには、エポキシ樹脂組成物の硬化物の吸湿率を低減させること、及びエポキシ樹脂組成物と有機基板の接着性を向上させることが重要となる。
本発明者が鋭意検討を進めた結果、特定のエポキシ樹脂と特定のフェノ−ル樹脂を組み合わせることにより、エリア実装型半導体装置での反りと半田処理時等の信頼性を両立させることができることを見出した。
【0011】
本発明で用いられるエポキシ樹脂は、式(1)で示されるエポキシ樹脂と式(2)で示されるエポキシ樹脂を併用するものである。式(1)で示されるエポキシ樹脂は、硬化後の樹脂組成物において、Tg以上での弾性率が低い特徴を有するため、基板の熱膨張係数とエポキシ樹脂組成物の硬化物との熱膨張係数の差により発生する応力、特に樹脂組成物の硬化物の熱膨張係数が大きいTg以上で発生する応力を緩和する効果があり、反りを低減させることができる。又低吸湿率で耐半田クラック性が良好である。しかし、式(1)で示されるエポキシ樹脂は、溶融粘度が高く流動性が悪いという欠点があり、溶融粘度の低いエポキシ樹脂を併用することで、流動性の改善を図ることが必要となる。式(2)で示されるエポキシ樹脂は、分子量が小さいため溶融粘度が低く、この樹脂と併用することにより流動性を改善することができる。
【0012】
式(1)で示されるエポキシ樹脂と式(2)で示されるエポキシ樹脂との重量比を調整することにより、各々の樹脂の性能を最大限に引き出すことができる。式(1)で示されるエポキシ樹脂(a)と式(2)で示されるエポキシ樹脂(b)の重量比(a)/(b)が、20/80〜80/20となるように配合する必要がある。式(1)で示されるエポキシ樹脂が20重量%未満では、エポキシ樹脂組成物の硬化物のTg以上での弾性率が高くなり、発生する応力を緩和することができずに、反りが大きくなる。又80重量%を越えると、溶融粘度が高く流動性が低下し、成形性が悪くなる。式(1)中のnの値は平均値で、nは1〜10が望ましく、nが10を越えると流動性が低下し、成形性が悪くなる。式(2)で示されるエポキシ樹脂が20重量%未満では、溶融粘度が高く流動性が低下し、又80重量%を越えると、エポキシ樹脂組成物の硬化物のTg以上での弾性率が高くなり、発生する応力を緩和することができずに、反りが大きくなる。
本発明で用いられるエポキシ樹脂は、式(1)と式(2)を混合したエポキシ樹脂の特性を損なわない範囲で他のエポキシ樹脂を併用しても差し支えない。併用する他のエポキシ樹脂は、エポキシ基を有するモノマ−、オリゴマ−、ポリマ−全般を指し、オルソクレゾ−ルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等があげられ、これらは、単独もしくは混合して用いても差し支えない。また、併用するエポキシ樹脂の配合量は、全エポキシ樹脂中に30重量%以下が好ましい。30重量%を越えると、式(1)と式(2)を混合したエポキシ樹脂の特性が損なわれ、成形性の低下や、反りの増大を招くおそれがある。
【0013】
本発明で用いられる式(3)で示されるフェノ−ル樹脂は、成形硬化時の硬化収縮が小さく、更に成形温度から室温までの熱収縮も小さく、反りを低減させることができる。又低吸湿率で耐半田クラック性が良好である。式(3)で示されるフェノ−ル樹脂は、全フェノ−ル樹脂中に30〜100重量%、好ましくは50〜100重量%使用することが望ましい。30重量%未満では、成形硬化時の硬化収縮の増大、成形温度から室温までの熱収縮の増大により、反りが大きくなり、又吸湿率が増大し、耐半田クラック性も低下するので好ましくない。
式(3)中のnの値は平均値で、nは1〜10が望ましく、nが10を越えると流動性が低下し、成形性が悪くなる。
式(3)で示されるフェノ−ル樹脂と他のフェノ−ル樹脂を併用する場合、併用する樹脂は、特に限定されるものではないが、フェノ−ルノボラック樹脂、クレゾ−ルノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、キシリレン変性フェノール樹脂等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いてもよい。
【0014】
本発明で用いられる硬化促進剤としては、前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂との架橋反応の触媒となり得るものを指し、例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリブチルアミン等のアミン化合物、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレート塩等の有機リン系化合物、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独でも混合して用いてもよい。
【0015】
本発明で用いられる無機充填材の種類については特に制限はなく、一般に封止材料に用いられているものを使用することができる。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ、アルミナ、チタンホワイト、水酸化アルミニウム等が挙げられ、特に溶融シリカが好ましい。溶融シリカは、破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、配合量を高め、かつエポキシ樹脂組成物の溶融粘度の上昇を抑えるためには、球状シリカを主に用いる方がより好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布をより広くとるよう調整することが望ましい。この無機充填材の配合量としては、成形性、信頼性のバランスから全樹脂組成物中に80〜94重量%含有することが好ましい。80重量%未満では、成形硬化時の硬化収縮及び成形温度から室温までの熱収縮の増大により反りが大きくなり、吸湿率の増大により耐半田クラック性が低下する。又94重量%を越えると流動性が低下し、成形性が悪くなる。
【0016】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(D)成分の他、必要に応じて臭素化エポキシ樹脂、酸化アンチモン、リン化合物等の難燃剤、無機イオン交換体、カップリング剤、カーボンブラックに代表される着色剤、天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸及びその金属塩類もしくはパラフィン等の離型剤、シリコーンオイル、ゴム等の低応力成分、酸化防止剤等の各種添加剤が適宜配合可能である。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(D)成分、及びその他の添加剤等をミキサー等を用いて混合後、加熱ニーダ、熱ロール、押し出し機等の混練機で加熱混練し、冷却、粉砕して得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子等の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の従来からの成形方法で硬化成形すればよい。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を実施例で具体的に説明する。配合割合は重量部とする。
実施例1
をミキサーで混合した後、表面温度が90℃と45℃の2本ロールを用いて5分間混練し、冷却後粉砕してエポキシ樹脂組成物とした。得られたエポキシ樹脂組成物を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【化7】
【0018】
【化8】
【0019】
【化9】
【0020】
評価方法
スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用いて、金型温度175℃、注入圧力70kg/cm2、硬化時間2分で測定した。
パッケージ反り量:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力70kg/cm2、硬化時間90秒で、225pBGA(厚さ0.36mmBT樹脂基板、チップサイズ12mm×12mm×厚さ0.35mm、パッケージサイズ24mm×24mm、封止樹脂の厚さ1.17mm)を成形し、175℃、2時間で後硬化した。室温まで冷却後、パッケージのゲートから対角線方向に、表面粗さ計を用いて高さ方向の変位を測定し、変位差の最も大きい値を反り量とした。単位はμm。
耐半田クラック性:前記の225pBGAを成形し、175℃、2時間で後硬化して10個のサンプルを得た。60℃、相対湿度60%の環境下で168時間、又は85℃、相対湿度60%の環境下で168時間処理し、その後IRリフロー(240℃)で10秒間処理した。超音波探傷装置を用いて観察し、内部クラック及び各種界面剥離の有無を調べた。不良パッケージの個数がn個であるとき、n/10と表示する。
【0021】
実施例2〜6、比較例1〜7
表1、表2に従って配合し、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得、実施例1と同様にして評価した。結果を表1、表2に示す。実施例及び比較例で使用したエポキシ樹脂、フェノール樹脂の構造及び性状を以下に示す。
【0022】
式(4)で示されるフェノール樹脂(軟化点83℃、水酸基当量175)
【化10】
【0023】
式(5)で示されるエポキシ樹脂(軟化点60℃、エポキシ当量170)
【化11】
【0024】
式(6)で示されるフェノール樹脂(軟化点105℃、水酸基当量97)
【化12】
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
【発明の効果】
本発明によると、エリア実装型半導体装置での成形後や半田処理後の反りが小さく、低吸湿性で、特に有機基板との接着性に優れるため半田処理時等の信頼性に優れている。
Claims (2)
- 基板の片面に半導体素子が搭載され、半導体素子が搭載された基板面側の実質的に片面のみを封止する際に用いるエポキシ樹脂組成物であって、(A)式(1)で示されるエポキシ樹脂(a)と式(2)で示されるエポキシ樹脂(b)の重量比(a)/(b)が、20/80〜80/20であるエポキシ樹脂、(B)式(3)で示されるフェノ−ル樹脂を全フェノ−ル樹脂中に30〜100重量%含むフェノ−ル樹脂、(C)硬化促進剤、及び(D)無機充填材からなるエポキシ樹脂組成物であって、前記無機充填材が全エポキシ樹脂組成物中に80〜94重量%含まれることを特徴とするエリア型実装半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 請求項1記載のエリア型実装半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とするエリア型実装半導体装置。
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