JP4770024B2 - エポキシ樹脂組成物及び半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント配線板や金属リードフレームの片面に半導体素子を搭載し、その搭載面側の実質的に片面のみを樹脂封止されたいわゆるエリア実装型半導体装置に適した半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の小型化、軽量化、高性能化の市場動向において、半導体素子の高集積化が年々進み、又、半導体装置の表面実装化が促進されるなかで、新規にエリア実装型半導体装置が開発され、従来構造の半導体装置から移行し始めている。
エリア実装型半導体装置としては、BGA(ボールグリッドアレイ)、或いは更に小型化を追求したCSP(チップスケールパッケージ)等が代表的であるが、これらは従来QFP、SOP等に代表される表面実装型半導体装置では限界に近づいている多ピン化・高速化への要求に対応するために開発されたものである。構造としては、BT樹脂/銅箔回路基板(ビスマレイミド・トリアジン樹脂/ガラスクロス基板)に代表される硬質回路基板、或いはポリイミド樹脂フィルム/銅箔回路基板に代表されるフレキシブル回路基板の片面上に半導体素子を搭載し、その半導体素子搭載面、即ち基板の片面のみがエポキシ樹脂組成物等で成形・封止されている。又、基板の半導体素子搭載面の反対面には半田ボールを2次元的に並列して形成し、半導体装置を実装する回路基板との接合を行う特徴を有している。更に、半導体素子を搭載する基板としては、上記の有機回路基板以外にもリードフレーム等の金属基板を用いる構造も開発されている。
【0003】
これらエリア実装型半導体装置の構造は、基板の半導体素子搭載面のみをエポキシ樹脂組成物で封止し、半田ボール形成面側は封止しないという片面封止の形態をとっている。リードフレーム等の金属基板等では、半田ボール形成面でも数十μm程度の封止樹脂層が存在することもあるが、半導体素子搭載面では数百μmから数mm程度の封止樹脂層が形成されるため、実質的に片面封止となっている。このため、有機基板や金属基板とエポキシ樹脂組成物の硬化物との間での熱膨張・熱収縮の不整合、或いはエポキシ樹脂組成物の成形硬化時の硬化収縮による影響で、これらの半導体装置では成形直後から反りが発生しやすい。
更に、これらの半導体装置を実装する回路基板上に半田接合を行う場合、200℃以上の加熱工程を経るが、この際に半導体装置の反りが発生し、多数の半田ボールが平坦とならず、半導体装置を実装する回路基板から浮き上がってしまい、電気的接合の信頼性が低下する問題も起こる。
【0004】
基板上の実質的に片面のみをエポキシ樹脂組成物で封止した半導体装置において、反りを低減するには、基板の熱膨張係数とエポキシ樹脂組成物の硬化物の熱膨張係数とを近づけること、及びエポキシ樹脂組成物の成形硬化時の硬化収縮を小さくすることの二つの方法が重要である。
基板としては、有機基板ではBT樹脂やポリイミド樹脂のような高いガラス転移温度(以下、Tgという)を有する樹脂が広く用いられており、これらはエポキシ樹脂組成物の成形温度である170℃近辺よりも高いTgを有する。従って、成形温度から室温までの冷却過程では有機基板のα1の領域のみで収縮する。よって、エポキシ樹脂組成物の硬化物も、Tgが高く且つα1が有機基板と同じで、更に成形硬化時の硬化収縮がゼロとなれば、反りはほぼゼロとなると考えられる。このため、多官能型エポキシ樹脂と多官能型フェノール樹脂との組み合わせによりTgを高くし、無機充填材の配合量でα1を合わせる手法が既に提案されている。
【0005】
又、赤外線リフロー、ベーパーフェイズソルダリング、半田浸漬等の手段での半田処理による半田接合を行う場合、エポキシ樹脂組成物の硬化物並びに有機基板からの吸湿により、半導体装置内部に存在する水分が高温で急激に気化することによる応力で、半導体装置にクラックが発生したり、有機基板の半導体素子搭載面とエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面で剥離が発生することもあり、エポキシ樹脂組成物の低応力化・低吸湿化とともに、有機基板との接着性も求められる。
更に、有機基板とエポキシ樹脂組成物の硬化物の熱膨張の不整合により、信頼性テストの代表例である温度サイクル試験でも、有機基板/エポキシ樹脂組成物の硬化物との界面の剥離やクラックが発生する。
従来のQFPやSOP等の表面実装型半導体装置では、半田実装時のクラックや各素材との界面での剥離の防止のために、ビフェニル型エポキシ樹脂に代表されるような結晶性エポキシ樹脂と、可撓性骨格を有するフェノール樹脂とを組み合わせて用い、且つ無機充填材の配合量を増加することにより、低Tg化、且つ低吸湿化を図る対策がとられてきた。しかし、この手法では、片面封止の半導体装置における反りの問題は解決できないのが現状であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、成形後や半田処理後の反りが小さくエリア実装型半導体封止用に適したエポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D)無機充填材、及び(E)グリセリンと炭素数24〜36の飽和脂肪酸とのグリセリントリ脂肪酸エステルを必須成分とするエポキシ樹脂組成物において、成分(E)が全エポキシ樹脂組成物中に0.05〜0.5重量%であり、無機充填材が全エポキシ樹脂組成物中に80〜94重量%であることを特徴とするエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及び基板の片面に半導体素子が搭載されこの半導体素子が搭載された基板面側の実質的に片面のみが前記エポキシ樹脂組成物を用いて封止されていることを特徴とする半導体装置である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明者は、エポキシ樹脂組成物において、成形硬化時の硬化収縮と、成形温度から室温までの熱収縮を小さくすることが、反りの低減に必要であると考え、鋭意検討を進めた結果、特定のワックスを使用したエポキシ樹脂組成物が、成形硬化時の硬化収縮が小さく、エリア実装型半導体装置での反りの低減に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明に用いられるエポキシ樹脂は、1分子内に2個以上のエポキシ基を有するモノマー、オリゴマー、及びポリマー全般を言う。例えば、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を含む)、ナフトール型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独又は二種類以上を併用して用いてもよい。
これらの内では、特に、溶融粘度が低く、無機充填材を高充填化することができ、ひいてはエポキシ樹脂組成物の低吸湿化が可能となり、耐半田クラック性を向上できる結晶性エポキシ樹脂が好ましい。
【0010】
本発明に用いられるフェノール樹脂は、1分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有するモノマー、オリゴマー、及びポリマー全般を言う。例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を含む)、ナフトールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を含む)、トリフェノールメタン樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等が挙げられ、これらは単独又は二種類以上を併用して用いてもよい。
【0011】
本発明に用いられる硬化促進剤としては、前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂との架橋反応の触媒となり得るものを指し、例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリブチルアミン等のアミン化合物、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレート塩等の有機リン系化合物、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独又は二種類以上を併用して用いてもよい。
【0012】
本発明に用いられる無機充填材の種類については特に制限はなく、一般に封止材料に用いられているものを使用することができる。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ、アルミナ、チタンホワイト、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、ガラス繊維等が挙げられ、特に溶融シリカが好ましい。溶融シリカは、破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、配合量を高め、且つエポキシ樹脂組成物の溶融粘度の上昇を抑えるためには、球状シリカを主に用いる方がより好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布をより広くとるよう調整することが望ましい。この無機充填材の含有量としては、成形性、信頼性のバランスから全エポキシ樹脂組成物中に80〜94重量%が好ましい。80重量%未満だと、成形硬化時の硬化収縮及び成形温度から室温までの熱収縮が増大するため反りが大きくなり、又、吸湿率が増大するため耐半田クラック性が低下するので好ましくない。94重量%を越えると、流動性が低下し、成形性が悪くなるので好ましくない。
又、必要に応じて無機充填材をカップリング剤やエポキシ樹脂、或いはフェノール樹脂硬化剤等で予め処理して用いても良く、処理の方法としては、例えば、溶剤を用いて混合した後に溶媒を除去する方法や、直接無機充填材に添加し、混合機を用いて処理する方法等がある。
【0013】
本発明に用いられるグリセリンと炭素数24〜36の飽和脂肪酸とのグリセリントリ脂肪酸エステルは、従来離型剤として使用されてきたが、本発明者は新たにエリア実装型半導体装置の反りを低減する効果を見出した。なお、本発明での飽和脂肪酸の炭素数とは、飽和脂肪酸中のアルキル基とカルボキシル基の炭素数を合計したものを指す。
本発明でエステル化に用いる飽和脂肪酸の炭素数が23以下だと、反りを低減する効果が不十分であり、又、十分な離型性が得られないため好ましくない。炭素数37以上だと、分子量が大き過ぎて流動性が低下したり、過度に染み出すことにより金型汚れの原因になったりするので好ましくない。本発明の炭素数24〜36の飽和脂肪酸としては、例えば、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸等が挙げられ、これらは単独又は二種類以上を併用して用いてもよく、又、炭素数が同一のものでも、異なるものを併用して用いてもよい。
又モノエステル、ジエステルだと、残存する水酸基の影響によってエポキシ樹脂組成物の硬化物の耐湿性が低下し、その結果として耐半田クラック性に悪影響を及ぼすので好ましくない。本発明のグリセリントリ脂肪酸エステルは、単独又は二種類以上を併用して用いてもよい。
本発明のグリセリントリ脂肪酸エステルの含有量としては、全エポキシ樹脂組成物中に0.05〜0.5重量%が好ましい。0.05重量%未満だと反りの低減効果が低く、0.5重量%を越えると硬化性や成形品の外観等の成形性に不具合を生じ、又、密着性の低下により耐半田クラック性が低下するので好ましくない。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化性等の成形性を損なわない程度で、例えば、天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸及びその金属塩類もしくはパラフィン等の離型剤を併用してもよく、これらは単独又は二種類以上を併用して用いてもよい。
【0014】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(E)成分の他、必要に応じて無機イオン交換体、カップリング剤、カーボンブラックに代表される着色剤、臭素化エポキシ樹脂、酸化アンチモン、リン化合物等の難燃剤、シリコーンオイル、ゴム等の低応力成分、酸化防止剤等の各種添加剤が適宜配合可能である。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(E)成分、及びその他の添加剤等をミキサー等を用いて混合後、加熱ニーダ、熱ロール、押し出し機等の混練機で加熱混練し、冷却、粉砕して得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子等の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の従来からの成形方法で硬化成形すればよい。特に、本発明のエポキシ樹脂組成物は、エリア実装型半導体装置用に適している。
【0015】
【実施例】
以下、本発明を実施例で具体的に説明する。配合割合は重量部とする。
実施例1
ビフェニル型エポキシ樹脂(融点105℃、エポキシ当量185)
6.40重量部
フェノールノボラック樹脂(軟化点81℃、水酸基当量105)
4.00重量部
トリフェニルホスフィン 0.15重量部
球状溶融シリカ(平均粒径15μm) 86.75重量部
グリセリントリモンタン酸エステル(エステル化前の飽和脂肪酸の炭素数28)
0.20重量部
カルナバワックス 0.20重量部
カーボンブラック 0.30重量部
臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量273)
1.00重量部
三酸化アンチモン 1.00重量部
をミキサーで混合した後、表面温度が90℃と45℃の2本ロールを用いて混練し、冷却後粉砕してエポキシ樹脂組成物とした。得られたエポキシ樹脂組成物を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0016】
評価方法
スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒で測定した。単位はcm。
ショアD硬度:金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒で成形し、型開き10秒後に測定したショアD硬度の値を硬化性とした。ショアD硬度は硬化性の指標であり、数値が大きい方が硬化性が良好である。
パッケージ反り量(半田処理前):トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間90秒で、225pBGA(厚さ0.36mmBT樹脂基板、チップサイズ12mm×12mm×厚さ0.35mm、パッケージサイズ24mm×24mm、封止樹脂の厚さ1.17mm)を成形し、175℃、2時間で後硬化した。室温まで冷却後、パッケージのゲートから対角線方向に、表面粗さ計を用いて高さ方向の変位を測定し、変位差の最も大きい値をパッケージ反り量とした。単位はμm。
耐半田クラック性:前記の225pBGAを成形し、175℃、2時間で後硬化して10個のサンプルを得た。60℃、相対湿度60%の環境下で168時間、又は85℃、相対湿度60%の環境下で168時間処理し、その後IRリフロー(240℃)で10秒間処理した。超音波探傷装置を用いて観察し、内部クラック及び各種界面剥離の有無を調べた。不良パッケージの個数がn個であるとき、n/10と表示する。
パッケージ反り量(半田処理後):前記の225pBGAを成形し、175℃、2時間で後硬化してサンプルを得た。60℃、相対湿度60%の環境下で168時間処理し、その後IRリフロー(240℃)で10秒間処理した。室温まで冷却後、不良発生のないパッケージを選んでゲートから対角線方向に、表面粗さ計を用いて高さ方向の変位を測定し、変位差の最も大きい値をパッケージ反り量とした。単位はμm。
【0017】
実施例2〜5、比較例1〜5
表1に従って配合し、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
実施例及び比較例で使用したエポキシ樹脂、フェノール樹脂の性状を以下に示す。
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(軟化点53℃、エポキシ当量244)、
ナフトールアラルキル樹脂(軟化点87℃、水酸基当量210)、
グリセリントリステアリン酸エステル(エステル化前の飽和脂肪酸の炭素数18)。
【表1】
【0018】
【発明の効果】
本発明に従うと、エリア実装型半導体封止用に適したエポキシ樹脂組成物が得られ、これを用いた半導体装置は、成形後や半田処理後の反りが小さい。
Claims (2)
- (A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D)無機充填材、及び(E)グリセリンと炭素数24〜36の飽和脂肪酸とのグリセリントリ脂肪酸エステルを必須成分とするエポキシ樹脂組成物において、成分(E)が全エポキシ樹脂組成物中に0.05〜0.5重量%であり、無機充填材が全エポキシ樹脂組成物中に80〜94重量%であることを特徴とするエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 基板の片面に半導体素子が搭載され、この半導体素子が搭載された基板面側の実質的に片面のみが請求項1記載のエポキシ樹脂組成物を用いて封止されていることを特徴とする半導体装置。
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