JP3846854B2 - エポキシ樹脂組成物及び半導体装置 - Google Patents

エポキシ樹脂組成物及び半導体装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント配線板や金属リードフレームの片面に半導体素子を搭載し、その搭載面側の実質的に片面のみが樹脂封止されたいわゆるエリア実装型半導体装置に適した半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の小型化、軽量化、高性能化の市場動向において、半導体素子の高集積化が年々進み、又、半導体装置の表面実装化が促進されるなかで、新規にエリア実装型半導体装置が開発され、従来構造の半導体装置から移行し始めている。
【0003】
エリア実装型半導体装置としては、BGA(ボールグリッドアレイ)、或いは更に小型化を追求したCSP(チップスケールパッケージ)等が代表的であるが、これらは従来QFP、SOP等に代表される表面実装型半導体装置では限界に近づいている多ピン化・高速化への要求に対応するために開発されたものである。構造としては、BT樹脂/銅箔回路基板(ビスマレイミド・トリアジン樹脂/ガラスクロス基板)に代表される硬質回路基板、或いはポリイミド樹脂フィルム/銅箔回路基板に代表されるフレキシブル回路基板の片面上に半導体素子を搭載し、その半導体素子搭載面、即ち基板の片面のみがエポキシ樹脂組成物等で成形・封止されている。又、基板の半導体素子搭載面の反対面には半田ボールを2次元的に並列して形成し、半導体装置を実装する回路基板との接合を行う特徴を有している。更に、半導体素子を搭載する基板としては、上記の有機回路基板以外にもリードフレーム等の金属基板を用いる構造も開発されている。
【0004】
半導体装置の表面実装化が促進されるなかで、半導体封止用エポキシ樹脂組成物への要求は益々厳しいものとなってきている。特に半導体装置の表面実装化が一般的になってきている現状では、吸湿した半導体装置が半田処理時に高温にさらされ、気化した水蒸気の爆発的応力により半導体装置にクラックが発生したり、あるいは半導体装置や有機基板とエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面に剥離が発生したりすることにより、電気的信頼性を大きく損なう不良が生じ、これらの不良の防止、即ち耐半田クラック性の向上が大きな課題となっている。
【0005】
この耐半田クラック性を向上させる手段として、種々の提案がなされているが、低粘度の樹脂成分を使用して無機充填材を高充填化し、樹脂成分を減少させて、エポキシ樹脂組成物の硬化物を低熱膨張化、低吸湿化させる等の手法がよく用いられている。無機充填材を高充填化した場合、エポキシ樹脂組成物の流動性及び充填性は低下する。このため、無機充填材の高充填化とエポキシ樹脂組成物の高流動化を両立することが不可欠となってくる。
【0006】
又、プリント配線基板の場合、基板はエポキシ樹脂組成物との密着性を高めるため、封止成形前にプラズマなどによる表面処理を施す手法が一般的である。但し、封止成形の際に容易に分離されなくてはならないゲート、ランナー部については、相応する基板部分に金メッキを施し分離し易い様に工夫されている。しかし近年、エポキシ樹脂組成物の耐半田クラック性の向上に伴って、エポキシ樹脂組成物と有機基板、半導体装置との密着性のみならずゲート、ランナー部の金メッキとの密着性も向上しているため封止成形の際に容易に分離できないという問題が発生している。
【0007】
このため、プリント配線基板上の金メッキとエポキシ樹脂組成物の分離性、及び耐半田クラック性が両立する手法の開発が望まれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、プリント配線基板上の金メッキとエポキシ樹脂組成物の分離性、及び耐半田クラック性を両立させるエリア実装型半導体封止用に適したエポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D)溶融球状シリカを必須成分とし、該溶融球状シリカが全エポキシ樹脂組成物中に85〜95重量%であり、溶融球状シリカの比表面積が5〜10m2/g、溶融球状シリカの粒度分布において粒径0.5μm未満の粒子が10〜20重量%、粒径0.5μm以上、2.0μm未満の粒子が5〜15重量%、粒径2.0μm以上、20μm以下の粒子が10〜40重量%含まれることを特徴とするエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物である。また、基板の片面に半導体素子が搭載され、この半導体素子が搭載された基板面側の実質的に片面のみが前記のエポキシ樹脂組成物を用いて封止されている半導体装置である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるエポキシ樹脂としては、特に限定しないが、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、フェニレン及び/又はビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0011】
これらの内では、常温では結晶性の固体であるが、融点を越えると極めて低粘度の液状となり、無機充填材を高充填化できるビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0012】
特にビフェニル型エポキシ樹脂を用いると、エポキシ樹脂組成物の粘度を低下でき、無機充填材を高充填化できるため、耐湿性の向上や低線膨張化が図れ、成形品としての特性も向上するので好ましい。ビフェニル型エポキシ樹脂としては、例えば、3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルジグリシジルエーテル、ビフェニルジグリシジルエーテル等が挙げられる。その他のエポキシ樹脂も極力粘度の低いものを使用することが望ましい。
【0013】
本発明で用いられるフェノール樹脂としては、特に限定しないが、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、フェニレン及び/又はビフェニル骨格を有するフェノールアラルキル樹脂等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。無機充填材の高充填化のためには、エポキシ樹脂と同様に、低粘度のものが好ましい。可撓性、低吸湿性のためには、フェニレン及び/又はビフェニル骨格を有するフェノールアラルキル樹脂の使用が望ましい。
【0014】
本発明で用いられる硬化促進剤としては、エポキシ基とフェノール性水酸基の反応を促進するものであれば特に限定しないが、例えば1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケン及びその誘導体、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ安息香酸ボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイックアシッドボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイルオキシボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフチルオキシボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0015】
本発明で用いられる溶融球状シリカの含有量は、全エポキシ樹脂組成物中に85〜95重量%であり、好ましくは85〜90重量%である。85重量%未満だと、低吸湿性、低熱膨張性が得られず耐半田クラック性が不十分となるので好ましくない。95重量%を越えると、流動性が低下し、成形時に充填不良等が生じたり、高粘度化による半導体装置内の金線変形等の不都合が生じたりするおそれがあるので好ましくない。
【0016】
また、本発明で用いられる溶融球状シリカは、比表面積が5〜10m2/gであり、粒度分布が粒径0.5μm未満の粒子が10〜20重量%、粒径0.5μm以上、2.0μm未満の粒子が5〜15重量%、粒径2.0μm以上、20μm以下の粒子が10〜40重量%含むものである。
【0017】
本発明において溶融球状シリカの比表面積は、JIS R 1626−1996 ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法に準じて、窒素を吸着質として用い、BET1点法によって測定した値である。また溶融球状シリカの粒度分布は、JIS M8100 粉塊混合物−サンプリング方法通則に準じて溶融球状シリカを採取し、JIS R 1622−1995ファインセラミックス原料粒子径分布測定のための試料調整通則に準じて溶融球状シリカを測定用試料として調整し、JIS R 1629−1997 ファインセラミックス原料のレーザー回折・散乱法による粒子径分布測定方法に準じて(株)島津製作所製のレーザー回折式粒度分布測定装置SALD−7000(レーザー波長:405nm)を用いて、溶媒に水を用い溶融球状シリカの屈折率が実数部1.45、虚数部0.00の条件のもと測定した値である。
【0018】
本発明者が鋭意検討を行った結果、比表面積が5〜10m2/gで、粒度分布が粒径0.5μm未満の粒子を10重量%以上、粒径0.5μm以上、2.0μm未満の粒子を5重量%以上含む球状シリカを配合することで、プリント配線基板上の金メッキとエポキシ樹脂組成物との分離性が良好なエポキシ樹脂組成物が得られることを見いだした。更に、溶融球状シリカの粒度分布を、粒径0.5μm未満の粒子が10〜20重量%、粒径0.5μm以上、2.0μm未満の粒子が5〜15重量%、粒径2.0μm以上、20μm以下の粒子が10〜40重量%に制御することでプリント配線基板上の金メッキとエポキシ樹脂組成物との分離性と高充填化が両立できるエポキシ樹脂組成物が得られることを見いだし、本発明をなすに至った。
【0019】
本発明において溶融シリカの比表面積が、5m2/g未満だとプリント配線基板上の金メッキとエポキシ樹脂組成物の分離性が低下し、10m2/gを越えると流動性、充填性が低下するので好ましくない。
【0020】
本発明における溶融球状シリカの粒度分布として、粒径0.5μm未満の粒子が10重量%未満だとプリント配線基板上の金メッキとエポキシ樹脂組成物の分離性が低下し、20重量%を越えると流動性、充填性が低下するので好ましくない。又、粒径0.5μm以上、2.0μm以下の粒子が5重量%未満だとプリント配線基板上の金メッキとエポキシ樹脂組成物の分離性が低下し、15重量%を越えると流動性、充填性が低下するので好ましくない。更に、粒径2.0μm以上、20μm以下の粒子が10重量%未満あるいは40重量%を越えると流動性、充填性が低下するので好ましくない。
【0021】
また本発明においては、必要に応じて溶融球状シリカをカップリング剤やエポキシ樹脂或いはフェノール樹脂で予め処理して用いてもよく、処理の方法としては、溶剤を用いて混合した後に溶剤を除去する方法や直接溶融球状シリカに添加し、混合機を用いて処理する方法等がある。
【0022】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(D)成分の他、必要に応じて無機イオン交換体、カップリング剤、カーボンブラックに代表される着色剤、臭素化エポキシ樹脂、酸化アンチモン、リン化合物等の難燃剤、シリコーンオイル、ゴム等の低応力成分、酸化防止剤等の各種添加剤、溶融破砕シリカ、結晶シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、タルク等の無機充填材が適宜配合可能である。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(D)成分、及びその他の添加剤等を、ミキサー等を用いて常温混合し、ロール、ニーダー、押出機等の混練機で加熱混練、冷却後粉砕して得られる。
【0024】
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子等の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の従来からの成形方法で硬化成形すればよい。その他の半導体装置の製造方法は、公知の方法を用いることができる。
【0025】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。配合割合は重量%とする。
Figure 0003846854
をミキサーで混合した後、表面温度が90℃と45℃の2本ロールを用いて混練し、冷却後粉砕してエポキシ樹脂組成物とした。得られたエポキシ樹脂組成物を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0026】
評価方法
スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用い、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間2分で測定した。単位はcm。
【0027】
ゲート、ランナー部の分離性:トランスファー成形機を用い、金型温度175℃、注入圧力7.8MPa、硬化時間2分で352pBGA(基板は厚さ0.56mmのビスマレイミド・トリアジン樹脂/ガラスクロス基板、半導体装置のサイズは30mm×30mm、厚さ1.17mm、半導体素子のサイズ20mm×20mm、厚さ0.35mm、半導体素子と回路基板のボンディングパッドを25μm径の金線でボンディングしている。半導体素子占有面積44.4%。ゲート、ランナー部は金メッキが施されている)を成形し、得られた成形品のランナー、ゲート部のエポキシ樹脂組成物と金メッキ部分を人手により分離させた。この際、金メッキ上に残存したエポキシ樹脂組成物が20%未満の場合は○、金メッキ上に残存したエポキシ樹脂組成物20%以上だった場合は×とした。
【0028】
耐半田クラック性:前記の352pBGAを成形し、175℃、2時間で後硬化してサンプルを得た。得られた半導体装置10個を、60℃、相対湿度60%の環境下で168時間、又は85℃、相対湿度60%の環境下で168時間処理した後、IRリフロー処理(240℃)を行った。処理後の内部の剥離及びクラックの有無を超音波探傷機で観察し、不良半導体装置の個数を数えた。不良半導体装置の個数がn個であるとき、n/10と表示した。
【0029】
実施例2〜5、比較例1〜6
表1の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得、同様に評価した。これらの評価結果を表2に示す。
【表1】
Figure 0003846854
【0030】
実施例1以外で用いた樹脂を以下に示す。
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(軟化点53℃、エポキシ当量244)、フェノールアラルキル樹脂(軟化点75℃、水酸基当量174)、溶融球状シリカB(比表面積を9.0m2/gに、粒度分布を粒径0.5μm未満の粒子が15重量%、粒径0.5μm以上、2.0μm未満の粒子が13重量%、粒径2.0μm以上、20μm未満の粒子が30重量%含まれるように調整したもの)、溶融球状シリカC(比表面積を5.5m2/gに、粒度分布を粒径0.5μm未満の粒子が3重量%、粒径0.5μm以上、2.0μm未満の粒子が2重量%、粒径2.0μm以上、20μm未満の粒子が35重量%含まれるように調整したもの)、溶融球状シリカD(比表面積を3.5m2/gに、粒度分布を粒径0.5μm未満の粒子が10重量%、粒径0.5μm以上、2.0μm未満の粒子が5重量%、粒径2.0μm以上、20μm未満の粒子が15重量%含まれるように調整したもの)、溶融球状シリカE(比表面積を9.0m2/gに、粒度分布を粒径0.5μm未満の粒子が30重量%、粒径0.5μm以上、2.0μm未満の粒子が30重量%、粒径2.0μm以上、20μm未満の粒子が10重量%含まれるように調整したもの)、溶融球状シリカF(比表面積を7.0m2/gに、粒度分布を粒径0.5μm未満の粒子が15重量%、粒径0.5μm以上、2.0μm未満の粒子が10重量%、粒径2.0μm以上、20μm未満の粒子が3重量%含まれるよう調整したもの)。
【0031】
【発明の効果】
本発明に従うと、エリア実装型半導体封止用に適したエポキシ樹脂組成物が得られ、これを用いた半導体装置は、プリント配線基板上の金メッキとエポキシ樹脂組成物の分離性、及び耐半田クラック性を両立できる。

Claims (2)

  1. (A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D)溶融球状シリカを必須成分とし、該溶融球状シリカが全エポキシ樹脂組成物中に85〜95重量%であり、溶融球状シリカの比表面積が5〜10m2/g、溶融球状シリカの粒度分布において粒径0.5μm未満の粒子が10〜20重量%、粒径0.5μm以上、2.0μm未満の粒子が5〜15重量%、粒径2.0μm以上、20μm以下の粒子が10〜40重量%含まれることを特徴とするエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
  2. 基板の片面に半導体素子が搭載され、この半導体素子が搭載された基板面側の実質的に片面のみが請求項1記載のエポキシ樹脂組成物を用いて封止されている半導体装置。
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