JP4765159B2 - エポキシ樹脂組成物及び半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、反りが少なく、耐半田クラック性に優れるエポキシ樹脂組成物及び半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の小型化、軽量化、高機能化の市場動向において、半導体の高集積化が年々進み、又半導体装置の表面実装化が促進される中で、新規にエリア実装の半導体装置が開発され、従来構造の半導体装置から移行し始めている。
エリア実装型半導体装置としては、ボールグリッドアレイ(以下、BGAという)、或いは更に小型化を追求したチップサイズパッケージ(以下、CSPという)が代表的であるが、これらは従来QFP、SOPに代表される表面実装型半導体装置では限界に近づいている多ピン化・高速化への要求に対応するために開発されたものである。構造としては、ビスマレイミド・トリアジン(以下、BTという)樹脂/銅箔回路基板に代表される硬質回路基板或いはポリイミド樹脂フィルム/銅箔回路基板に代表されるフレキシブル回路基板の片面上に半導体素子を搭載し、その半導体素子搭載面、即ち基板の片面のみが樹脂組成物等で成形・封止されている。又基板の半導体素子搭載面の反対面には半田ボールを2次元的に並列して形成し、半導体装置を実装する回路基板との接合を行う特徴を有している。更に半導体素子を搭載する基板としては、上記有機回路基板以外にもリードフレーム等の金属基板を用いる構造も考案されている。
【0003】
これらエリア実装型半導体装置の構造は基板の半導体素子搭載面のみを樹脂組成物で封止し、半田ボール形成面側は封止しないという片面封止の形態が多い。中にはボードオンチップ(以下、BOCという)に見られるように半田ボール形成面に封止樹脂層が形成されることもあるが、封止樹脂層は半導体素子搭載面のそれより小さい。このため、有機基板や金属基板と樹脂組成物の硬化物との間での熱膨張・熱収縮の不整合或いは樹脂組成物の成形・硬化時の硬化収縮による影響により、これらの半導体装置では成形直後から反りが発生しやすい。又これらの半導体装置を実装する回路基板上に半田接合を行う場合、200℃以上の加熱工程を経るが、この際に半導体装置の反りが発生し、多数の半田ボールが平坦とならず、半導体装置を実装する回路基板から浮き上がってしまい、電気的接合信頼性が低下する問題も起こる。
これらエリア実装型半導体装置において、反りを低減するには、基板の線膨張係数と樹脂組成物の硬化物の線膨張係数を近づけること、及び樹脂組成物の硬化収縮を小さくする二つの方法が重要である。
基板としては有機基板では、BT樹脂やポリイミド樹脂のような高いガラス転移温度(以下、Tgという)の樹脂が広く用いられており、これらは樹脂組成物の成形温度である170℃近辺よりも高いTgを有する。つまり、成形温度から室温までの冷却過程では有機基板のα1の領域のみで収縮する。従って、樹脂組成物もTgが高く、かつα1が回路基板と同じであり、更に硬化収縮がゼロであれば反りはほぼゼロであると考えられる。このため、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂とトリフェノールメタン型フェノール樹脂との組合せによりTgを高くし、無機充填材の配合量でα1を合わせる手法が既に提案されている。
【0004】
又赤外線リフロー、ベーパーフェイズソルダリング、半田浸漬等の手段での半田処理による半田接合を行う場合、樹脂組成物の硬化物並びに有機基板からの吸湿により半導体装置内部に存在する水分が高温で急激に気化することによる応力で半導体装置にクラックが発生したり、基板の素子搭載面と樹脂組成物の硬化物との界面で剥離が発生することもあり、硬化物の高強度化、低応力化、低吸湿化とともに、基板との高密着も求められる。
従来のBGAやCSP等のエリア実装型半導体装置には、反りの低減のためにトリフェノールメタン型エポキシ樹脂とトリフェノールメタン型フェノール樹脂を樹脂成分とする樹脂組成物が用いられてきた。この樹脂組成物は、Tgが高く、硬化性、熱時曲げ強度に優れた特性を有しているが、硬化物の吸水率が高く、又樹脂組成物の溶融粘度が比較的高く、無機充填材の高充填化には限界があり、低吸湿化が不十分で、耐半田クラック性には問題があった。
一方、従来のQFPやSOP等の表面実装型半導体装置では、半田実装時のクラックや各素材界面での剥離防止のために、ビフェニル型エポキシ樹脂に代表されるような結晶性エポキシ樹脂を使用しているが、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂を用いた樹脂組成物の硬化物と比較して熱時曲げ強度が低く、かつ硬化が遅いのが問題であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、成形性、低弾性率、高密着性に優れたエポキシ樹脂組成物及び反りが小さく、耐半田クラック性に優れたエリア実装型半導体装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(1)基板の片面に半導体素子が搭載され、半導体素子が搭載された基板面側の実質的に片面のみを封止する際に用いるエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、(A)一般式(3)で示されるエポキシ樹脂、(B)式(2a)で示される骨格と式(2b)で示される骨格を有するフェノール樹脂、(C)無機充填材及び(D)硬化促進剤を必須成分とし、無機充填材が全エポキシ樹脂組成物中に84〜94重量%であることを特徴とするエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【0007】
【化5】
【0008】
【化6】
(nは平均値で、1〜3の正数)
(2)基板の片面に半導体素子が搭載され、この半導体素子が搭載された基板面側の実質的に片面のみが第(1)項記載のエポキシ樹脂組成物によって封止されていることを特徴とするエリア実装型半導体装置、
である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる一般式(1)で示されるエポキシ樹脂は、溶融すると極めて低粘度の液状になる特性を有している。これによって無機充填材の高充填化、ひいてはエポキシ樹脂組成物の硬化物の低吸湿化が可能となる。又硬化性に優れており、エポキシ樹脂組成物の硬化物のTgを越えた高温域での弾性率が小さく、反りが小さい。更にリードフレーム等の金属類との密着性に優れており、本発明の一般式(1)で示されるエポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物で封止された半導体装置は、実装時の半田処理下でも高い信頼性を得ることができる。
一般式(1)中のnは平均値で1〜3の正数であるが、nが3を越えるとエポキシ樹脂の粘度が増大し、成形時のエポキシ樹脂組成物の流動性が劣り、より一層の低吸湿化のための無機充填材の高充填化ができなくなるので好ましくない。これらの内では硬化性の点から、式(3)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。
【0010】
一般式(1)で示されるエポキシ樹脂の特性を損なわない範囲で、他のエポキシ樹脂と併用してもよいが、耐半田ストレス性を最大限に引き出すためには、一般式(1)で示されるエポキシ樹脂を全エポキシ樹脂中に30重量%以上含むことが好ましく、特に50重量%以上が好ましい。30重量%未満だと、耐半田ストレス性が不十分となるおそれがある。併用するエポキシ樹脂としては、例えばビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、トリフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いてもよい。更に半導体装置の長期信頼性の点から、不純物として含有される塩素イオン、ナトリウムイオン、その他のフリーのイオンは、極力少ないことが望ましい。
【0011】
本発明で用いる式(2a)で示される骨格と式(2b)で示される骨格を有するフェノール樹脂は、パラキシリレン結合を含むため、樹脂組成物の硬化物は低弾性率を示し、一般式(1)のエポキシ樹脂と式(2a)で示される骨格と式(2b)で示される骨格を有するフェノール樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物は、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂とトリフェノールメタン型フェノール樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物に比べて、弾性率が小さい特徴を有している。又比較的吸湿量が抑えられ、リードフレーム等の金属類及びシリコンチップとの密着性に優れる。
本発明に用いられるフェノール樹脂は、例えばビス(メトキシメチル)ベンゼンとベンズアルデヒドを酸触媒存在下で反応して得られる、ランダム共重合体の樹脂である。具体的には、以下構造のものである。
【化7】
【0012】
本発明のフェノール樹脂の特性を損なわない範囲で、他のフェノール樹脂と併用してもよいが、低吸湿性や高密着性を最大限に引き出すためには、式(2a)で示される骨格と式(2b)で示される骨格を有するフェノール樹脂を全フェノール樹脂中に30重量%以上含むことが好ましく、特に50重量%以上が好ましい。30重量%未満だと、低吸湿化や高密着性の向上といった式(2a)で示される骨格と式(2b)で示される骨格を有するフェノール樹脂の特徴が得られないおそれがある。併用するフェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、テルペン変性フェノール樹脂等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いてもよい。更に半導体装置の長期信頼性の点から、不純物として含有される塩素イオン、ナトリウムイオン、その他フリーのイオンは極力少ないことが望ましい。
全エポキシ樹脂のエポキシ基数と全フェノール樹脂のフェノール性水酸基数との当量比は、0.5〜2.0が好ましく、この範囲を外れると、エポキシ樹脂組成物の硬化性の低下、或いは硬化物のTgの低下等のおそれがあるので好ましくない。
【0013】
本発明で用いる硬化促進剤は、エポキシ基とフェノール性水酸基の反応を促進するものであれば特に限定はしないが、例えば1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケン及びその誘導体、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ安息香酸ボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイックアシッドボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイルオキシボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフチルオキシボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いてもよい。
【0014】
本発明で用いる無機充填材の種類については特に制限はなく、一般に封止材に用いられているものを使用することができる。例えば、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ、アルミナ、チタンホワイト、水酸化アルミニウム等が挙げられ、特に溶融球状シリカが好ましい。粒子の形状は限りなく真球状であることが好ましく、又、粒子の大きさの異なるものを混合することによって、充填量を多くできる。
又、本発明の無機充填材の含有量としては、全エポキシ樹脂組成物中に87〜94重量%が好ましい。84重量%未満だと、低吸湿性が得られず耐半田ストレス性が不十分となるおそれがあるので好ましくない。94重量%を越えると、流動性が低下し、成形時に充填不良等が生じたり、高粘度化による半導体装置内の金線変形等の不都合が生じるおそれがあるので好ましくない。
【0015】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(D)成分を必須成分とするが、これ以外に必要に応じてシランカップリング剤、カーボンブラック等の着色剤、天然ワックス、合成ワックス等の離型剤、及びポリシロキサン化合物、ゴム等の低応力剤、酸化防止剤等の種々の添加剤を適宜配合しても差し支えない。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(D)成分、及びその他の添加剤等を、ミキサー等を用いて常温混合し、ロール、押出機等の混練機で加熱混練し、冷却後粉砕して得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子等の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の従来からの成形方法で硬化成形すればよい。本発明のエポキシ樹脂組成物が適用される半導体装置としては、QFP、SOP、TSOP、BGA、その他特に限定はしない。
【0016】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。配合単位は重量部とする。
実施例1
を常温でミキサーを用いて混合した後、二軸ロールを用いて混練し、冷却後粉砕し、エポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0017】
評価方法
スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用い、金型温度175℃、注入圧力70kg/cm2、硬化時間2分で測定した。単位はcm。
硬化トルク:キュラストメータ((株)オリエンテック・製、JSRキュラストメータIVPS型)を用い、金型温度175℃、加熱開始90秒後のトルクを求めた。キュラストメータにおけるトルクは硬化性のパラメータであり、数値の大きい方が硬化性が良好である。単位はN・m。
吸水率:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力75kg/cm2、硬化時間2分で直径50mm、厚さ3mmの成形品を成形し、ポストキュアーとして175℃、8時間処理した後、得られた成形品を30℃、相対湿度60%の環境下で696時間放置し、吸湿前後の重量変化を測定して吸水率を求めた。単位は重量%。
熱時強度、熱時弾性率:熱時曲げ強度、熱時曲げ弾性率をJIS K 6911に準じて(240℃で)測定した。単位はいずれもN/mm2。
パッケージ反り量:トランスファー成形機を用いて、金型温度180℃、注入圧力75kg/cm2、硬化時間2分で225pBGA(基板は厚さ0.36mm、ビスマレイミド・トリアジン/ガラスクロス基板、パッケージサイズは24×24mm、厚さ1.17mm、シリコンチップはサイズ9×9mm、厚さ0.35mm、チップと回路基板のボンディングパッドとを25μm径の金線でボンディングしている。)を成形した。更にポストキュアとして175℃で8時間処理した。室温に冷却後パッケージのゲートから対角線方向に、表面粗さ計を用いて高さ方向の変位を測定し、変位差の最も大きい値を反り量とした。単位はμm。
基材密着性評価:トランスファー成形機を用いて、金型温度180℃、注入圧力75kg/cm2、硬化時間2分で成形品を成形した。この成形品をポストキュアとして175℃で8時間処理した後、引っ張り試験器にて成形品部と基材部を治具で挟み、成形品部を固定し、雰囲気温度240℃中で基材部を上方に引っ張り基材密着性を測定した。対象となる基材は、42合金フレーム及び42合金フレームの表面にポリメチルメタクリレート・ソルダーレジスト(PMMAという)を塗布したもの。単位はN/mm2。
耐半田クラック性:トランスファー成形機を用いて、金型温度180℃、注入圧力75kg/cm2、硬化時間2分で225pBGA(基板は厚さ0.36mm、ビスマレイミド・トリアジン/ガラスクロス基板、パッケージサイズは24×24mm、厚さ1.17mm、シリコンチップはサイズ9×9mm、厚さ0.35mm、チップと回路基板のボンディングパッドとを25μm径の金線でボンディングしている。)を成形した。ポストキュアとして175℃で8時間処理したパッケージ8個を、30℃、相対湿度60%で696時間処理した後、IRリフロー処理(240℃)を行った。処理後の内部の剥離、及びクラックの有無を超音波探傷機で観察し、不良パッケージの個数を数えた。不良パッケージの個数がn個であるとき、n/8と表示する。
【0018】
実施例2、3、比較例1〜5
表1の処方に従って配合し、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
実施例2、比較例4ではビフェニル型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)・製、YX−4000H、エポキシ当量197。以下、エポキシ樹脂(E−2)という)を用いた。
比較例3ではパラキシリレン変性フェノール樹脂(三井化学(株)・製、XL−225、水酸基当量175。以下、フェノール樹脂(H−2)という)を用いた。
比較例5ではトリフェノールメタン型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)・製、E1032H60、エポキシ当量171。以下、エポキシ樹脂(E−3)という)、トリフェノールメタン型フェノール樹脂(明和化成(株)・製、MEH7500、水酸基当量97。以下、フェノール樹脂(H−3)という)を用いた。
【0019】
【表1】
【0020】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、成形性、低弾性率、高密着性に優れた特性を有し、これを用いて封止されたエリア実装型半導体装置は、成形後や半田処理時の反りが小さく、耐半田クラック性に優れている。
Claims (2)
- 基板の片面に半導体素子が搭載され、この半導体素子が搭載された基板面側の実質的に片面のみが請求項1記載のエポキシ樹脂組成物によって封止されていることを特徴とするエリア実装型半導体装置。
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