JP4524835B2 - エポキシ樹脂組成物及び半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、離型性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の小型化、軽量化、高性能化の市場動向において、半導体素子の高集積化が年々進み、又、半導体装置の表面実装化が促進されるなかで、半導体封止用エポキシ樹脂組成物への要求は益々厳しいものとなってきている。特に半導体装置の表面実装化が一般的になってきている現状では、吸湿した半導体装置が半田処理時に高温にさらされ、気化した水蒸気の爆発的応力により半導体装置にクラックが発生したり、或いは半導体素子やリードフレームとエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面に剥離が発生することにより、電気的信頼性を大きく損なう不良が生じ、これらの不良の防止、即ち耐半田クラック性の向上が大きな課題となっている。
この耐半田クラック性を向上させる手段として、種々の提案がなされており、代表的なものとしては、(1)低粘度の樹脂成分を使用して無機充填材を高充填化し、樹脂成分を減少させて、エポキシ樹脂組成物の硬化物を低熱膨張化、低吸湿化させる、(2)吸湿性が少なく可撓性を有する樹脂の使用等が挙げられる。
低粘度樹脂成分としては、低粘度のエポキシ樹脂や結晶性エポキシ樹脂、硬化剤としての低粘度のフェノール樹脂が挙げられ、これらは一般的に低分子量化合物であり、このため成形時の加熱により3次元化して得られる架橋構造の架橋密度は低くなり、機械的強度や熱時弾性率が低い硬化物となるため、金型からの離型時に硬化物が金型に付着したり、或いは成形品の割れ・欠けが発生する等、離型性に劣るという欠点を有する。
【0003】
この離型性を向上させるためには、離型剤を多量に配合することが対策として挙げられるが、多量の離型剤が金型側に付着することによる金型曇り、型取られといった成形性の低下の問題があり、必ずしも満足できるものではなかった。このため、金型汚れが少なく、離型性に優れたエポキシ樹脂組成物の開発が望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、無機充填材を高充填化でき、金型汚れが少なく、離型性に優れる半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D)無機充填材、(E)酸化マイクロクリスタリンワックス、及び(F)酸化ポリエチレンワックスを必須成分とし、(E)成分と(F)成分との重量比(E/F)が10/90〜90/10であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物で、特にエポキシ樹脂がビフェニル型エポキシ樹脂、フェノール樹脂がフェノールアラルキル樹脂である半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるエポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いてもよい。
これらの内では、常温では結晶性の固体であるが、融点を越えると極めて低粘度の液状となり、無機充填材を高充填化できるビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂が好ましい。
特に、ビフェニル型エポキシ樹脂を用いると、粘度を低下できるため無機充填材を高充填化でき、耐湿性向上や低線膨張化が図れるため、成形品としての特性も向上するので好ましい。
ビフェニル型エポキシ樹脂としては、例えば、3,3’,5,5’−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル、ビフェニルジグリシジルエーテル等が挙げられる。
その他のエポキシ樹脂も極力粘度の低いものを使用することが望ましい。低粘度のエポキシ樹脂を用いることにより、無機充填材を高充填化でき、耐半田クラック性を向上できるが、架橋密度が低くなるため、離型性に難点があり、本発明の離型剤と併用することにより離型性を改善できる。
【0007】
本発明で用いられるフェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、フェニレン及び/又はジフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いてもよい。無機充填材の高充填化のためには、エポキシ樹脂と同様に、低粘度のものが好ましい。
可撓性、低吸湿性のためには、フェニレン及び/又はジフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂の使用が望ましい。
低粘度、可撓性を有するフェノール樹脂は、架橋密度が低くなるため、離型性に難点があり、本発明の離型剤と併用することにより、離型性を改善できる。
【0008】
本発明で用いられる硬化促進剤としては、前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂との架橋反応の触媒となり得るものを指し、例えば、トリブチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のアミン系化合物、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート塩等の有機リン系化合物、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、これらの硬化促進剤は単独でも混合して用いてもよい。
【0009】
本発明で用いられる無機充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミ等が挙げられる。
無機充填材の配合量を特に大きくする場合は、溶融シリカを用いるのが一般的である。溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、且つエポキシ樹脂組成物の溶融粘度の上昇を抑えるためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布がより広くなるように調整することが望ましい。
【0010】
本発明で用いられる離型剤は、酸化マイクロクリスタリンワックス、及び酸化ポリエチレンワックスを含むものである。
本発明で用いられる酸化マイクロクリスタリンワックスは、重油留分から得られるnパラフィン及び分岐炭化水素を含むマイクロクリスタリンワックスを酸化することで得られ、カルボキシル基や水酸基を含むものである。
酸化マイクロクリスタリンワックスの特性としては、融点50〜120℃、酸価10〜40mgKOH/g、鹸化価20〜60mgKOH/gのものが好ましい。融点が50℃未満だと、成形時に過度に染み出すため金型汚れが激しくなり、120℃を越えると、成形時に十分に溶融せず離型性が発揮できないので好ましくない。酸価が10mgKOH/g未満だと、樹脂成分との相溶性に劣るため金型汚れの原因となり、40mgKOH/gを越えると、樹脂成分と過度に相溶するため十分な離型性が発揮されないので好ましくない。鹸化価が20mgKOH/g未満だと、樹脂成分との相溶性に劣るため金型汚れの原因となり、60mgKOH/gを越えると、樹脂成分と過度に相溶するため十分な離型性が発揮されないので好ましくない。
酸化マイクロクリスタリンワックスは、東洋ペトロライト株式会社等から市販されており、市場から容易に入手できる。
一般的に、nパラフィン及び分岐炭化水素を含むマイクロクリスタリンワックスは、エポキシ樹脂組成物の低粘度化が図れる反面、樹脂成分との相溶性に乏しく、成形時に金型表面に過度に染みだし、離型性は優れるものの、金型汚れが激しいという欠点を有する。
そこで本発明の酸化マイクロクリスタリンワックスを用いることで、樹脂成分との適度な相溶性による金型汚れの防止と、優れた離型性の両立を図ることができる。
【0011】
本発明で用いられる酸化ポリエチレンワックスは、エチレン重合法やポリエチレンの熱分解物として得られるポリエチレンワックスを酸化することで得られ、カルボキシル基や水酸基を含むものである。分子量1000〜10000程度のものが一般的である。特に分子量を限定するものではないが、エポキシ樹脂組成物の低粘度化のためには、低分子量のものを用いることが好ましい。
酸化ポリエチレンワックスの特性としては、融点80〜120℃、酸価10〜40mgKOH/g、鹸化価20〜60mgKOH/gのものが好ましい。融点が90℃未満だと、成形時の加熱による分解が進み金型汚れが激しくなり、120℃を越えると、成形時に十分に溶融せず離型性が発揮できないので好ましくない。酸価が10mgKOH/g未満だと、樹脂成分との相溶性に劣るため金型汚れの原因となり、40mgKOH/gを越えると、樹脂成分と過度に相溶するため十分な離型性が発揮されないので好ましくない。鹸化価が20mgKOH/g未満だと、樹脂成分との相溶性に劣るため金型汚れの原因となり、60mgKOH/gを越えると、樹脂成分と過度に相溶するため十分な離型性が発揮されないので好ましくない。
このような酸化ポリエチレンワックスは三洋化成工業株式会社、三井石油化学工業株式会社等から市販されており、市場から容易に入手できる。
一般的なポリエチレンワックスでは、融点が高く、樹脂成分との相溶性にも乏しく、成形時に金型表面に過度に染みだし、金型汚れが激しいという欠点を有する。
そこで本発明の酸化ポリエチレンワックスを用いることで、樹脂成分との適度な相溶性による金型汚れの防止を図ることができる。
一方、酸化ポリエチレンワックスのみを含有するエポキシ樹脂組成物では、十分な低粘度化が図れず、無機充填材の高充填化は難しいが、本発明の酸化マイクロクリスタリンワックスと併用することで、低粘度のエポキシ樹脂組成物となり、無機充填材の高充填化も可能となる。
【0012】
酸化マイクロクリスタリンワックス(E)と酸化ポリエチレンワックス(F)との配合割合は、重量比(E/F)で10/90〜90/10が好ましい。さらに望ましくは30/70〜70/30である。10/90未満だと、酸化マイクロクリスタリンワックスの低粘度化の効果が十分に発揮されず、無機充填材の高充填化が望めないので好ましくない。又、90/10を越えると、低粘度化は十分に行えるものの、ワックス全体の粘度が低くなり過ぎて、成形時にワックス分がエポキシ樹脂組成物から分離し、金型への染みだしが多くなり、金型汚れが発生するので好ましくない。
酸化マイクロクリスタリンワックス(E)と酸化ポリエチレンワックス(F)の添加量としては、(E)成分と(G)成分との合計量が、全エポキシ樹脂組成物中に0.05〜0.4重量%が好ましい。0.05重量%未満だと、十分な流動性と離型性が得られず、0.4重量%を越えると、離型性は十分なものの、金型曇りが発生するので好ましくない。
【0013】
本発明の酸化マイクロクリスタリンワックス及び酸化ポリエチレンワックスの特性を損なわない範囲で、他の離型剤を併用することもできる。併用できるものとしては、例えば、カルナバワックス等の天然ワックス、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸の金属塩類等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いてもよい。
又、全離型剤の添加量としては、全エポキシ樹脂組成物中に0.05〜0.4重量%が好ましい。0.05重量%未満だと、十分な流動性と離型性が得られず、0.4重量%を越えると、離型性は十分なものの、金型曇りが発生するので好ましくない。
【0014】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(F)成分を必須成分とするが、これ以外にも必要に応じてカップリング剤、臭素化エポキシ樹脂、酸化アンチモン、リン化合物等の難燃剤、カーボンブラック等の着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム、合成ゴム等の低応力剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜配合してもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(F)成分、及びその他の添加剤等をミキサー等を用いて混合後、加熱ニーダ、熱ロール、押し出し機等を用いて加熱混練し、続いて冷却、粉砕して得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子等の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の従来からの成形方法で硬化成形すればよい。
【0015】
【実施例】
以下、本発明を実施例で具体的に説明する。配合割合は重量部とする。
実施例1
3,3’,5,5’−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)・製、YX4000H、融点105℃、エポキシ当量195、以下、ビフェニル型エポキシ樹脂という)
7.5重量部
フェノールアラルキル樹脂(軟化点75℃、水酸基当量175)
6.7重量部
1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下、DBUという)
0.2重量部
球状溶融シリカ 85.10重量部
酸化マイクロクリスタリンワックス(融点87℃、酸価18、鹸化価40)
0.10重量部
酸化ポリエチレンワックス(融点94℃、酸価31、鹸化価50)
0.10重量部
カーボンブラック 0.30重量部
をミキサーを用いて混合した後、表面温度が95℃と25℃の2軸ロールを用いて20回混練し、得られた混練物シートを冷却後粉砕して、エポキシ樹脂組成物とした。得られたエポキシ樹脂組成物の特性を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0016】
評価方法
スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用いて、金型温度175℃、注入圧力70kg/cm2、硬化時間2分で測定した。単位はcm。
離型性:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力75kg/cm2、硬化時間2分で144pQFP(20×20×1.7mm厚さ)を10回連続で成形した。この10回の成形で、離型時に金型に付着したり、成形品に割れ・欠けが発生した回数が5回以上のものを×、1〜4回のものを△、発生なしのものを○と判定した。
金型汚れ:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力75kg/cm2、硬化時間2分で144pQFP(20×20×1.7mm厚さ)を500回連続で成形した。成形品表面と金型表面の両方に白化があるものを×、どちらかに白化があるものを△、どちらにも白化のないものを○と判定した。
【0017】
実施例2〜6、比較例1〜7
表1、表2の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得、実施例1と同様にして評価した。結果を表1、表2に示す。
なお、実施例2〜4、比較例2〜4で用いたオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂は軟化点65℃、エポキシ当量220である。実施例2、3、比較例2、3で用いたフェノールノボラック樹脂は水酸基当量120である。比較例1、2で用いたマイクロクリスタリンワックスは融点90℃、非酸化品である。比較例2〜7で用いたポリエチレンワックスは融点92℃、非酸化品である。
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
【発明の効果】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、無機充填材を高充填化でき、金型汚れが少なく、離型性に優れ、これを用いた半導体装置は、耐湿信頼性並びに耐半田クラック性に優れる。
Claims (4)
- (A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D)無機充填材、(E)酸化マイクロクリスタリンワックス、及び(F)酸化ポリエチレンワックスを必須成分とし、(E)成分と(F)成分との重量比(E/F)が10/90〜90/10であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、(E)酸化マイクロクリスタリンワックスと(F)酸化ポリエチレンワックスとの合計量が、全エポキシ樹脂組成物中に0.05〜0.4重量%である半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- エポキシ樹脂が、ビフェニル型エポキシ樹脂である請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- フェノール樹脂が、フェノールアラルキル樹脂である請求項1又は2記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 請求項1、2、又は3記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。
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