JP4410942B2 - 粉末の改良 - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、粉末に使用する粒子に関する。限定されるものではないが、特に本発明は、乾燥粉末吸入器用の粉末組成物に使用する粒子、特にそのような粉末に使用するアミノ酸粒子に関する。
【0002】
【背景技術】
吸入器は、吸入により呼吸系に薬剤を投与するためのよく知られた装置である。吸入器は、特に呼吸系疾患の治療に広く使用されている。
【0003】
現在多くの種類の吸入器が利用できる。これらの装置の1つに、乾燥粉末吸入器がある。この乾燥粉末吸入器で、薬剤の乾燥粉末粒子を呼吸器系に供給するのには、いくつか問題がある。吸入器は、特定の患者、特に喘息患者に限定されるような吸入能力の低い患者の場合に優先的に該当するが、大きな割合で下肺(lower lung)へ供給する場合も含めて、肺へと放出される活性粒子をできる限り最大の割合で供給する必要がある。しかしながら、現在利用できる乾燥粉末吸入器を使用すると、多くの場合、吸入時に吸入器から供給される活性粒子の約10%しか下肺に沈積しないことが見出されている。従って、より効率的な乾燥粉末吸入器には、臨床上の利点がある。
【0004】
吸入器に使用される粉末の物理的性質は、活性粒子を供給する際の効率と再現性の両方に、さらには呼吸器系の沈積部位に、影響を及ぼす。
【0005】
吸入器から供給されると、活性粒子は、物理的、化学的に安定なエーロコロイドを形成し、樹状肺(pulmonary tree)のより細い分岐である伝達用(conducting)の細気管支や他の、好ましくは下肺の、吸収部位に到達するまで、サスペンションのままである。一旦吸収部位に到達すると、活性粒子は、吸収部位から吐出されずに、肺粘膜により効率的に集められる必要がある。
【0006】
活性粒子の粒径は、特に重要である。活性粒子を肺の奥深く効果的に供給するために、活性粒子は、相当空気力学的直径(equivalent aerodynamic diameter)が実質的に0.1〜5μmの範囲にあるように小さく、ほぼ球状で、呼吸器系で単分散している必要がある。しかしながら、小さな粒子は、体積比表面積が大きく、大過剰の表面自由エネルギーを与えるので、熱力学的に不安定であり、粒子の凝集が促進される。吸入器では、小さな粒子が凝集し、さらに吸入器の壁に粒子が付着することが問題となり、活性粒子が大きな安定した凝集体として吸入器から供給されたり、あるいは、活性粒子が吸入器から供給されずに吸入器の内部に付着したままになる。
【0007】
吸入器のそれぞれの作動ごと、異なる吸入器ごと、粒子の異なる回分ごとに、粒子から安定な凝集体がどの程度形成されるか不確定なので、投与量の再現性が低下する。
【0008】
乾燥粉末吸入器に使用されるいくつかの既知の乾燥粉末には担体粒子が含まれ、細かな活性粒子は吸入器の中にある間にこの担体粒子に付着するが、呼吸器系への吸入時に担体粒子の表面から分散して細かなサスペンションを形成する。担体粒子は、通常、直径が90μmを超える大きな粒子であり、上述したように良好な流れ特性を示す。直径が10μm未満の小さな粒子は、供給装置である吸入器の壁に沈積することがあり、さらに流動性、飛沫同伴性が低く、投与量の均一性が低下する。
【0009】
吸入時に凝集体や担体粒子から細かな活性粒子を再分散させる効率を向上させることは、乾燥粉末吸入器の効率を改善する際の重要な段階と考えられる。
【0010】
いくつかの乾燥粉末吸入器では、投与するために活性粒子だけを含む粉末が調剤されている。粉末には、担体粒子やその他の添加剤は含まれず、それぞれの投与での粉末の量は少なく、通常1mg未満である。投与量の体積は、例えば、約6.5μlである。
【0011】
活性物質の粒子だけを含む粉末を分散させる際の問題は、
i.小さな粒子から安定した凝集体が形成することであり、この凝集体は、粒子が吸入される際、空気の流れの中で個々の粒子に崩壊せず、従って、個々の細かな活性粒子に比較して、粉末吸入時に下肺に到達する可能性が低くなり、
ii.粉末の流動性が低くさらに凝集が不確実なために、吸入器の貯蔵器から計量される粉末の量が変動することであり、この変動により、投与量が不確実になり、吸入器の公称投与量の±50%と同程度も変動することがあり、
iii.粒子が吸入器の壁に付着するため、吸入器からの投与量が完全には移動しないことであり、この移動の不完全さから、投与量の再現性が低下する、
ことなどである。
【0012】
肺に供給され得る活性粒子の割合を増やすために、粉末に別の構成要素を添加することが提案されている。
【0013】
WO96/23485には、活性物質の呼吸できる部分を増加させるために、担体粒子と活性粒子とを含む吸入用の粉末に、添加物質を添加することが記載されている。好ましい添加物質はロイシンである。
【0014】
WO97/03649にも、乾燥粉末吸入器用の粉末組成物にロイシンを添加することが記載されているが、この組成物には担体粒子は含まれていない。
【0015】
WO96/23485やWO97/03649に記載されているように、組成物に添加物質を添加することで、活性構成要素の呼吸できる部分が増加するが、添加物質の効果をよりいっそう高めることは、明らかに望ましいことである。
【0016】
【発明の開示】
本発明によれば、粒子の試料のかさ密度が0.1gcm-3以下であるアミノ酸粒子が提供される。
【0017】
試料のかさ密度は、以下に説明する試験を行って測定することができる。
【0018】
アミノ酸粒子は、1つのアミノ酸または複数のアミノ酸の混合物から構成することができる。好ましいアミノ酸には、昇華するアミノ酸、特に、ロイシン、イソロイシン、さらに、アラニン、バリン、セリン、フェニルアラニンなどが含まれる。
【0019】
特に好ましいアミノ酸は、ロイシンである。
【0020】
通常入手可能な標準結晶ロイシンのかさ密度は、0.6〜0.7gcm-3の範囲であり、粉砕したロイシンのかさ密度は、0.3〜0.4gcm-3の範囲である。本発明によるロイシンは、非常に小さなかさ密度を有する。低密度のロイシンは、粉末に添加すると、流れを向上させる特性を示すことが見出された。特に、低密度のロイシンを粉末に添加することで、滑り性が向上するとともに抗付着性が向上する。
【0021】
本明細書で、「密度」に言及する場合は、別の方法を用いて測定した密度に言及していることが文脈から明らかな場合を除いて、かさ密度に言及するものと理解される。
【0022】
アミノ酸粒子は、かさ密度が0.1gcm-3以下であるのが有利であり、さらに、0.05gcm-3以下が好ましい。
【0023】
さらに、本発明は、粉末のかさ密度が0.1gcm-3以下であるアミノ酸粉末を提供する。
【0024】
本発明の第2の態様は、質量中央空気力学的直径(mass median aerodynamic diameter(MMAD))が5μm以下であるアミノ酸粒子を提供する。粒子のMMADは上の方で言及する。本発明の第1の態様に従って粒子のかさ密度が小さい場合、粒子の望ましい空気力学的性質に対してMMADは依然として十分小さいが、粒子の実際の直径は、相対的に大きくなり得る。
【0025】
あるいは、粒子の粒度分布は、粒子の体積平均直径(VMD)によって特徴付けられる。アミノ酸粒子のVMDは、10μm以下が有利であり、さらに、5μm以下が好ましい。
【0026】
上に示したように、特に好ましいアミノ酸はロイシンであることが見出された。
【0027】
VMDが10μm以下のロイシンは、粉末に添加すると、流れ特性を向上させることが見出された。ロイシンの小さな粒径は、小さなかさ密度と密接に関連すると考えられる。上述したように、そのような粒子によって流れ特性が向上する。
【0028】
アミノ酸粒子の体積平均直径は、5μm以下が有利である。これは、アミノ酸粒子、特にロイシン粒子にとって、非常に小さな大きさである。
【0029】
本発明の第3の態様では、厚みが0.5μm以下のフレーク形状であるアミノ酸粒子が提供される。フレークの厚みは100nm以下が好ましい。
【0030】
上に示したように、好ましいアミノ酸は、ロイシンである。通常のロイシンは、厚みが少なくとも1μm、通常は5μmを上まわるフレーク形状である。フレークの厚みを小さくすることで、ロイシン粒子の流れ特性が向上することが見出された。ロイシンを粉末に添加すると、ロイシンの薄いフレークは、粉末の粒子間の「スペーサ」として作用し、粉末の流れ特性、特に滑り性を向上させると考えられる。
【0031】
ある場合には、本発明の第3の態様の粒子は、さらに、本発明の第2の態様の望ましいMMAD(あるいはVMD)を有する。
【0032】
本発明のこのさらなる態様によるロイシンの薄いフレークは、一般に、密度が小さく、さらに、流れ特性が向上することが見出された。
【0033】
ロイシンは、厚みが約100nm未満のフレーク形状が特に有利であることが見出された。
【0034】
例えば、以下に記載するスプレードライ法を用いてロイシンフレークを作成すると、ロイシンフレークは、100nm未満の非常に小さな厚みになることが見出された。フレークは引き続く粉末処理の間に破砕され得るが、フレークの有利な特性は、実質的には低減しないことが見出された。従って、有利な特性を与えるのは、フレークのこの非常に小さな厚みにあると考えられる。
【0035】
アミノ酸のフレークのアスペクト比は、(粒子の幅)/(粒子の厚み)と見なすことができる。粒子のアスペクト比は、少なくとも20が有利であり、さらに、少なくとも50が好ましい。
【0036】
フレークの厚みは、粒子の電子顕微鏡(SEM)像を調べることで観察することができる。例えば、フレークは、電子顕微鏡のスタブに両面テープで固定し、電子顕微鏡で観察する前に金を被覆する。
【0037】
本発明の粒子の寸法を観察する別の方法は、英国薬局方(British Pharmacopoeia)1973年(第645頁、エルゴタミン(Ergotamine)エーロゾル吸入)に記載されている方法と同様に、顕微鏡スライド上で粒径を測ることである。この場合、少量、例えば、10〜100mgの粒子を顕微鏡スライド上に振りかけて、顕微鏡下で観察して、沈積した粒径を評価する。
【0038】
粒子の形状、大きさに、上の方で言及する場合、個々の粒子の形状、大きさに言及していることを理解する必要がある。これらの粒子は、凝集して、個々の粒子からなるクラスターを形成することがある。
【0039】
本発明の第1、第2、第3のアミノ酸は、容易に言及できるように、以下では全て「低密度アミノ酸」と呼ぶことにする。さらに、アミノ酸が、例えば、ロイシンの場合、以下では「低密度ロイシン」と呼ぶことにする。しかしながら、本発明の第2、第3の態様のアミノ酸は、例えば、本発明の第1の態様について必要とされるかさ密度を有していない場合もあることを理解する必要がある。
【0040】
アミノ酸がロイシンの場合、ロイシンはL−ロイシンが有利である。L−ロイシンは、ロイシンの天然に存在する形態であり、従って、ロイシンを薬剤組成物に、あるいは体内に入る可能性のある他の組成物に使用する場合は、L−ロイシンが好ましい。
【0041】
低密度アミノ酸粒子は、このアミノ酸以外の物質を含まない方が、有利である。しかしながら、この粒子は、複数のアミノ酸の混合物を含んでもよい。
【0042】
本発明によれば、さらに、活性物質と低密度アミノ酸粒子を含む乾燥粉末吸入に使用する粉末が提供される。
【0043】
低密度アミノ酸は、吸入用粉末に使用するのが、特に有利である。粉末の流れ特性を向上させるために、吸入用粉末組成物に含まれる通常の添加剤が、いくつか使用できる。しかしながら、流れを向上させる添加剤の多くは、例えばシリカなどのように、特に生理学的には受け入れられないので、吸入には望ましくない。アミノ酸は、生体適合性があり、吸入には相対的に安全である。
【0044】
低密度アミノ酸を吸入用粉末に添加することで、粉末のうちの呼吸できる部分を増加させ、あるいは吸入器の作動時に吸入器から移動する粉末を増加させることができることが見出された。
【0045】
粉末は、粉末の重量に基づいて重量で10%以下の低密度アミノ酸を含むのが、有利である。吸入用粉末では、活性粒子の分散を向上させるために、低密度アミノ酸を粉末に添加する場合、低密度アミノ酸を重量で10%まで添加すると、粉末の特性を向上させることが可能であり、低密度アミノ酸を重量で約20%添加すると、利点が低減することが見出された。
【0046】
低密度アミノ酸を、例えば、乾燥粉末吸入器に使用する以外の粉末で、流れの補助剤として使用する場合、低密度アミノ酸を、不利益な影響もなく大量に含ませることができる、例えば、低密度アミノ酸は重量で50%存在してもよいことが見出された。
【0047】
上に示したように、いくつかの吸入用粉末では、活性物質は、実質的に粉末全体を構成する。ある場合には、少量の添加剤、例えば、着色剤、香味料などが含まれる。従って、粉末は、活性物質やアミノ酸以外の物質を、粉末の重量に基づいて重量で10%未満、好ましくは5%未満含んでもよい。活性物質は、重量で粉末の60%以上を構成することができる。
【0048】
他の吸入用粉末では、粉末は、他の希釈剤、例えば、上述したような担体粒子を含むことができる。従って、粉末は、さらに、希釈剤粒子を含んでもよい。担体粒子は、粉末の重量に基づいて重量で少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の量で存在することができる。
【0049】
希釈剤は、重量で少なくとも90%の希釈剤粒子の粒径が10μm以下となるような粒径とすることができる。希釈剤の細かな粒子を添加すると、呼吸できる部分が増加するのが見出された。
【0050】
あるいは、希釈剤は、重量で少なくとも90%の希釈剤粒子の粒径が50μm以上となるような粒径とすることができる。このような粒子は、上述した担体粒子に相当し、粉末の流れ特性が向上する。
【0051】
低密度アミノ酸を添加すると、粉末を乾燥粉末吸入器に使用する際に、活性粉末の呼吸できる部分が増加することが見出された。これは、粉末の流れ特性が向上することで、吸入器から移動する粉末が増加し、あるいは吸入器の作動時に活性粒子の分散が向上することによると考えられる。
【0052】
希釈剤は、細かな粒子部分の重量で少なくとも90%の粒子の粒径が10μm以下となるような細かな粒子部分と、重量で少なくとも90%の粒子の粒径が50μm以上となるような粗い粒子部分とを含むことが、有利である。
【0053】
言及される粒径あるいは粒子の直径は、そうでないと明らかにならない限り、以下に説明する方法によって測定することができる粒子の空気力学的直径MMADであることが理解されるであろう。
【0054】
細かな粒子部分と粗い粒子部分とは、同じ物質で構成しても、別の物質で構成してもよい。さらに、細かな粒子部分と粗い粒子部分のそれぞれは、複数の物質の混合物であってもよい。
【0055】
細かな粒子部分と粗い粒子部分とは、例えば、互いに単純に混合することができる。しかしながら、細かな粒子部分と粗い粒子部分とが同じ物質で構成される場合、希釈剤は、希釈剤の粗い部分を処理してその表面から小さな断片を取り除いて作成するのが、有利である。この小さな断片は、細かな粒子部分を構成する。そのような処理は、例えば、粗い粒子を慎重に粉砕することで実施できる。希釈剤粒子のそのような処理は、例えば、WO96/23485に記載されている。
【0056】
希釈剤粒子は、薬理学上不活性な、どのような物質からも、あるいは、吸入が許容される物質の組合せからも、構成することができる。希釈剤粒子は、1つまたは複数の結晶性の糖から構成すると有利であり、すなわち、希釈剤粒子は、1つまたは複数の糖アルコールまたは多価アルコールから構成することができる。希釈剤粒子はラクトースの粒子が好ましい。
【0057】
粉末は、粉末の重量に基づいて重量で10%以下、好ましくは5%以下の細かな粒子部分を含むのが、有利である。希釈剤の細かな粒子部分は、粒子を肺の奥深く供給するのに有利な粒径を有する。活性物質以外の物質はできる限り肺の奥深くまで移動しないのが、一般的に有利である。
【0058】
本発明によれば、さらに、上述した粉末を収容する乾燥粉末吸入器が提供される。
【0059】
本発明は、さらに、蒸気または溶媒から固体アミノ酸粒子を形成することを含むアミノ酸粒子を作成する方法であって、気体の流れ中に浮遊している間に粒子が形成される方法を提供する。
【0060】
上に示したように、アミノ酸、特に粒径が小さなロイシンを作成する通常の方法は、アミノ酸を粉砕することである。しかしながら、多くのアミノ酸、例えばロイシンなどは、軟らかい物質であり、この方法では、粒径が非常に小さなロイシンを作成するのは、困難である。さらに、粉砕技術を用いて、アミノ酸、例えばロイシンを作成すると、アミノ酸中に汚染物質や不純物が存在する可能性が増加する。さらに、粉砕によって作成する粉末の物理的性質を制御するのは、困難である。
【0061】
例えば、蒸気からの凝縮またはロイシンを含有する溶媒液滴の乾燥により、アミノ酸を作成することによって、粒径が小さなアミノ酸粒子を、より容易に得ることができる。さらに、粒径や形態をよりよく制御することができる。粒子は、浮遊方式で作成するので、汚染の可能性が低下する。気体の流れ中に浮遊させて作成する粒子は、その空気力学的性質によって、容易に分級し分離することができる。
【0062】
本発明に従って、アミノ酸粒子を作成する方法は、アミノ酸の物理的性質に依存することになる。例えば、ロイシンは、昇華するアミノ酸であり、本発明の有利な一実施態様では、ロイシンは、ロイシン蒸気から凝縮させて、本発明による低密度の粒子を形成する。他のアミノ酸は加熱すると分解する。従って、そのようなアミノ酸は、その蒸気から凝縮させるのには適していないが、例えば、本発明のさらなる実施態様に従って、スプレードライにより作成して、低密度アミノ酸を形成する。
【0063】
アミノ酸は昇華する物質が有利である。
【0064】
本発明の一態様では、アミノ酸粒子を作成する方法は、アミノ酸蒸気を凝縮させて固体アミノ酸粒子を形成することを含む。この方法は、アミノ酸が別の物質とともに凝縮可能な場合、特に好ましい。例えば、アミノ酸が、活性物質を含む粉末の中で使用できる場合、アミノ酸と活性物質とは、いっしょに凝縮させることができる。
【0065】
アミノ酸粒子は、エーロゾル凝縮により形成するのが、有利である。この方法により作成するのに特に適した1つのアミノ酸は、ロイシンである。
【0066】
ロイシンは、約220℃で昇華する。
【0067】
この方法は、
a)アミノ酸がアミノ酸蒸気を形成するように、アミノ酸を加熱し、
b)アミノ酸蒸気を冷たい空気と混合して、凝縮したアミノ酸粒子雲を形成させ、
c)凝縮粒子を集める、
ことを含む。
【0068】
アミノ酸は、炉を通過させるのが、有利である。炉は、管状炉にすることができる。最初のアミノ酸粒子は、空気の流れにより流動床から浮遊させるのが、有利である。アミノ酸粒子は、次に、気体の流れにより管状炉に移送し、そこで、蒸気を形成する。
【0069】
凝縮粒子は、サイクロンやフィルター、あるいは沈殿により集めるのが、有利である。
【0070】
この方法は、アミノ酸粒子を周囲圧力下、少なくとも150℃の温度に加熱することを含むのが、有利である。圧力を低下させて、アミノ酸蒸気を形成するのに必要とされる温度を低下させることも、考えられる。アミノ酸を加熱する温度は、使用するアミノ酸の性質と、アミノ酸の蒸気を形成するのに必要とされる温度とに依存することになる。
【0071】
本発明のさらなる態様によれば、アミノ酸粒子を作成する方法では、スプレードライの工程で、溶媒中のアミノ酸の液滴を乾燥して、アミノ酸の固体粒子を形成し、この方法では、スプレードライの間にアミノ酸の少なくとも一部が昇華する。
【0072】
この方法は、溶媒中のアミノ酸をスプレードライすることを含むのが、有利である。
【0073】
乾燥する物質は、溶液中のアミノ酸から構成されるのが、有利であり、さらに、この溶液は、水溶液が、有利である。
【0074】
アミノ酸が昇華するアミノ酸である、例えばロイシンの場合、ロイシンのスプレードライの間にロイシンの一部が昇華して、生成するロイシン粒子が最も有利な形態になるのが、有利であると考えられる。そのような場合、スプレードライ法は、スプレードライの間に少なくもアミノ酸の一部が昇華するのが、有利である。
【0075】
アミノ酸の通常のスプレードライでは、一般に形状が球状の大きなアミノ酸粒子が得られることになる。アミノ酸がロイシンの場合、そのような粒子は、粒子の直径が40μmかそれ以上になり得る。スプレードライ法によって作成されるそのようなロイシン粒子は、スイス製薬会報(Pharmaceutica Acta Helvetiae)第70巻(1995年)第133〜139頁に記載されている。そのような粒子は、低密度ロイシンに対する望ましい性質が得られないので、望ましくないことが見出された。
【0076】
ヤマシタ(Yamashita)らは呼吸薬剤供給(Respiratory Drug Delivery、J1、1998、p483)で、スプレードライしたL−イソロイシン粒子を、吸入用疎水性担体として使用することを記載している。上に示したように、アミノ酸の通常のスプレードライでは、好ましくない形態を有する粒子が作成されると考えられる。しかしながら、通常のスプレードライした粒子ならば、ヤマシタが吸湿性の問題を考慮したように望ましい性質を有するであろう。
【0077】
WO98/31346には、吸入用物質のスプレードライが記載されている。スプレードライは、粒子表面の不規則性を増加させるとともに粒子の多孔度を増加させることにより、物質のタップ密度を減少させると言われている。上に示したように、概略球状の多孔質粒子では、本発明の物質に望ましい特性が得られないと考えられる。本発明の態様によれば、驚くべきことに、ここに記載する従来にない、アミノ酸のスプレードライによって、新規で特に望ましい形態を有する粒子が得られることが見出された。
【0078】
スプレードライにより作成して最良の特性を有するロイシンや他のアミノ酸を得るためには、液滴の大きさが非常に小さいのが有利であることが見出された。スイス製薬会報第70巻(1995年)第133〜139頁で使用されている液滴の大きさは、少なくとも30μmである。本発明の方法で乾燥する液滴は、平均大きさが10μm以下、より好ましくは5μm以下が、最も有利である。
【0079】
また、スプレードライの温度は高いことが重要であると思われる。多くの場合、本発明の少なくとも1つの態様に従って有利な粒子を作成するためのスプレードライの温度は、従来のスプレードライ技術で使用されている温度より、実質的に高くなっている。例えば、スプレードライヤーの入口空気温度は、150℃を超え、周囲圧力で好ましくは200℃を超えることができる。スプレードライの温度は、昇華しさらに凝縮して望ましい形態の粒子を形成する物質に対しては、特に重要である。そのような場合、スプレードライ条件は、スプレードライ中に物質の少なくとも一部で望ましい昇華が起こるようなのが有利である。
【0080】
この方法に関する本発明の第1、第2の態様では、この方法は、生成する固体アミノ酸粒子のMMADが10μm以下となるのが有利である。上に示したように、粒径が小さなアミノ酸粒子は、粉末の流れ特性を向上させるための添加剤として使用することができる。
【0081】
この方法は、生成するアミノ酸粒子が、上述した低密度アミノ酸粒子であるようなのが有利である。
【0082】
また、本発明は、上述した方法により得られるアミノ酸を提供する。
【0083】
容易に言及できるように、上述した方法で作成したアミノ酸粒子は、同様に、「低密度アミノ酸」と呼ぶことにする。また、低密度アミノ酸が、例えば、ロイシンからなる場合、この物質は、「低密度ロイシン」と呼ぶことにする。しかしながら、この方法で作成されるアミノ酸は、例えば、上述したアミノ酸粒子に関する本発明の第1の態様について必要とされるかさ密度を有していない場合もあることを理解する必要がある。
【0084】
本発明によれば、さらに、低密度アミノ酸を活性物質と混合する工程を含む、粉末を作成する方法が提供される。
【0085】
上に示したように、粉末は、さらに、希釈剤を含むことができる。この場合、粉末を作成する方法は、低密度アミノ酸を活性物質と混合する工程と、その後に、低密度アミノ酸と活性物質とを、希釈剤と混合する工程とを含むのが有利である。
【0086】
本発明によれば、さらに、粉末の流れ特性を向上させるための粉末の中での低密度アミノ酸の使用が提供される。
【0087】
さらに、乾燥粉末吸入器で使用するための粉末の中での低密度アミノ酸の使用が提供される。
【0088】
上述したように、このアミノ酸の使用は、粉末中の活性物質の呼吸できる部分を増加させることができる。呼吸できる部分は、吸入器の作動時に活性物質の分散が向上することで、増加すると考えられる。さらに、粉末が、担体粒子も含む場合、低密度アミノ酸は、吸入器の作動時に担体粒子の表面から活性物質が放出されるのを促進させると考えられる。
【0089】
本明細書を通して言及する活性物質は、1つの薬剤または複数の薬剤の混合物から構成される物質とする。「活性物質」という用語は、生物学的環境内で作用速度を増減することができるという意味において、生物学的に活性であると理解されるものである。薬剤は、通常、呼吸器系疾患などの疾患を治療するために吸入により経口投与されるもの、例えば、β−作動薬(β−agonists)、サルブタモールやその塩、サルメテロール(salmeterol)やその塩などを含む。乾燥粉末吸入器を使用して投与できるであろう他の薬剤には、ペブチド、DNアーゼ、ロイコトリエン、インシュリンなどのポリペプチドなどが含まれる。
【0090】
活性物質は、β2−作動薬(β2−agonist)を含むことができ、サルブタモール、サルブタモールの塩、これらの混合物などを含むことができる。サルブタモールやその塩は、呼吸器系疾患の治療で広く使用されている。活性物質は、硫酸サルブタモールでもよい。活性物質は、テルブタリン、例えば硫酸テルブタリンなどのテルブタリンの塩、これらの混合物でもよい。活性物質は、臭化イパトロピウム(ipatropium bromide)でもよい。
【0091】
活性物質は、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、フルチカゾン(fluticasone)などのステロイドを含むことができる。活性物質は、クロモグリク酸ナトリウム(sodium cromoglycate)、ネドクロミル(nedocromil)やその塩などのクロモン(cromone)を含むことができる。活性物質は、ロイコトリエン受容体拮抗薬を含むことができる。
【0092】
活性物質は、例えばヘパリンなどの炭水化物を含むことができる。
【0093】
(かさ密度)
本発明の物質のかさ密度(あるいは、注ぎ密度(poured density))は、以下の方法により測定される。
【0094】
2gの物質を、秤量紙(weighing paper)から、直立させた状態で目盛り付きの100cm3のガラス製メスシリンダーの中へ注ぎ込む。秤量紙からシリンダーへの物質の移動は、流れが許す限り速く行う。注ぎ込んだ粉末のシリンダー内を占める体積が、0.5ml(かさ体積)の最も近くになるように計量してから、粉末の重量を測定する。
【0095】
物質のかさ密度は、粉末の重量をかさ密度で割って算出する。
【0096】
かさ密度の別の測定方法は、欧州薬局方(European Pharmacopoeia)1997年2.9.15に記載されている。
【0097】
(粒径分布)
粒径分布は、低角度レーザー光散乱(マスターサイザー X(Mastersizer X)、モールヴァンインスツルメンツ(Malvern Instruments)、モールヴァン(Malvern)、英国)によって測定した。約5mgの測定用の試料に、分散剤10mlを添加した(シクロヘキサン中の0.05%レシチン)。試料サスペンションは、分析前に30秒間音波処理した。体積中央直径(VMD)とD(v,90)を測定した。VMDは、体積で50%の粒子がVMDより小さな直径を有するような直径である。D(v,90)は、90%累積体積での、相当体積直径である。
【0098】
(質量中央空気力学的直径(mass median aerodynamic diameter)(MMAD))
本発明の物質の粒子のMMADは、粉末吸入器のための欧州薬局方(補遺 1999年)2.9.18.(細かな粒子の空気力学的評価)に記載された方法に従って、マルチステージ液体インピンジャー(Multi−Stage Liquid Impinger)を使用して測定した。
【0099】
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の実施態様は、実施例により以下説明する。
【0100】
(実施例1)
スプレードライしたロイシンを以下の方法により作成した。
【0101】
L−ロイシンは、実験室規模の共流(cocurrent)スプレードライヤー(モデル 191、ビューヒ(Buchi)、スイス)を使用してスプレードライした。1.0重量%のL−ロイシン水溶液を調製し、圧縮空気(600L hr-1、0.7mmノズル)を使用して、4.5mlmin-1の速度で噴霧した。スプレードライヤーの中で生成した液滴は、VMDが約10μm以下であった。スプレードライヤーの入口、出口の空気温度は、それぞれ220℃、150℃であった。
【0102】
生成した粉末は、サイクロン分離で集め、ガラス瓶に移し、使用するまではデシケータ中、シリカゲル上、室温で保存した。スプレードライしたL−ロイシンは、軽い疎な白い粉末であった。スプレードライした粉末の顕微鏡観察では、薄いフレーク状粒子の存在が見られた。
【0103】
スプレードライしたロイシンについて、かさ密度と粒径直径(VMDとして)を測定した。かさ密度とVMDは、上述した方法を用いて測定した。
【0104】
表1に、未処理のL−ロイシンと、実施例1の方法でスプレードライした5回分のL−ロイシンとについて、かさ密度と粒径分布を示す。スプレードライしたロイシンは、かさ密度が0.02〜0.05gcm-3の範囲であったことが理解されるであろう。
【0105】
【表1】
Figure 0004410942
【0106】
表1で、NDは、未測定(Not Determined)を示し、※ D(v,90)は、この直径より小さい粒子が、体積で90%存在するような直径である。
【0107】
(流れ特性)
ロイシンの流れ特性は、粉末のカー指数(Carr‘s Index)を測定することによって決定した。スプレードライしたL−ロイシンを粉末化タンパク質(BSA−マルトデキストリン(maltodextrin)50:50)に添加した。
【0108】
試料のカー指数は、250cm3のメスシリンダーに注ぎ込んだ重量(W)の体積(Vpour)を測定し、さらにこのシリンダーをタッピングして試料の一定体積(Vtap)を得ることによって、決定した。注ぎ密度(かさ密度)とタップ密度は、それぞれ、W/Vpour、W/Vtapとして算出し、さらにカー指数は、タップ密度と注ぎ密度から、式:
カー指数(%)=((タップ密度−注ぎ密度)/タップ密度)×100、
により算出した。
【0109】
表2に、注ぎ密度(かさ密度)、タップ密度、カー指数を示す。
【0110】
【表2】
Figure 0004410942
【0111】
スプレードライしたロイシンをタンパク質粉末に添加すると、流れ特性が向上したことを示す、より低いカー指数が得られる。
【0112】
(実施例2)
エーロゾル化したロイシンを以下の方法で調製した。
【0113】
粉砕したL−ロイシンを、管状炉に通過させた。ロイシン粒子は、空気の流れにより(約20L mim-1)流動床から浮遊させた。ロイシン粒子は、気体の流れにより、150〜300℃の温度範囲にある管状炉の中に移送した。ロイシンは昇華した。炉から放出される蒸気は、冷たい空気と混合して、凝縮した粒子雲を形成させ、この粒子雲は、次に、サイクロンとメンブレンフィルターで集めた。集めた物質は、軽く、「ふわふわ(fluffy)」で、薄いフレーク形状の粒子を含む。
【0114】
かさ密度と粒径分布は、上述した実施例1で説明した方法を用いて測定し、表3に示す。
【0115】
【表3】
Figure 0004410942
【0116】
(ツインステージインピンジャー)
粉末混合物は、ツインステージインピンジャー(TSI)(欧州薬局方 1997年 2.9.18)で試験し、活性粒子を吸入器により患者の肺に供給する効率を評価した。
【0117】
TSIは、経口吸入器の評価に使用する2段分割装置である。上部インピンジャーを含む装置の1段目は、上部呼吸器系を模倣している。下部インピンジャーを含む2段目は、下部呼吸器系を模倣している。上部と下部のインピンジャーの両方に使用する液体は、以下の例では、蒸留水である。
【0118】
使用に際しては、吸入器は、TSIの吸入口に取り付ける。TSIの2段目に接続されているポンプによって空気がTSI装置を通って流れるようになる。空気は、吸入口からTSI装置を通って吸入される、上部インピンジャーを介して上部管を流れ、さらに下部管を通して下部インピンジャーに流れ、そこで、液体を通って泡立ち、出口管を介してTSI装置から排出される。上部インピンジャーの液体は、TSIの2段目に到達できないような大きさの粒子はすべて捕捉する。呼吸器系で肺に浸透することができる粒子である細かな粒子は、TSIの2段目に通過することができ、そこで、細かな粒子は下部インピンジャーの液体の中に流入する。
【0119】
30mlの蒸留水を下部インピンジャーに入れ、7mlの蒸留水を上部インピンジャーに入れる。ポンプは、TSI装置において60Lmin-1の空気流量となるように調節する。
【0120】
吸入器は、重量を測定する。吸入器のマウスピースは、TSIの吸入口に接続し、吸入器は、投与量の粉末を投与するように作動させ、ポンプのスイッチを入れ、10秒間の時間を設定する。次に、ポンプのスイッチが切られ、吸入器は、TSIから取り外し、再度重量を測定し、吸入器から失われた粉末量を算出する。
【0121】
TSIの1段目を構成する装置の部分は、第2のフラスコに洗い流し、蒸留水で250mlにする。TSIの2段目を構成する部分は、第3のフラスコに洗い流し、蒸留水で100mlにする。
【0122】
TSIの各部分の活性物質の量は、それぞれの試験で測定する。以下の方法を用いることができる。
【0123】
TSIの段からの洗浄物を収容するフラスコの内容物は、活性物質の含有量を、例えば0.5μgml-1や1μgml-1の活性物質の標準溶液に対して、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を用いて分析する。
【0124】
TSIの各段での活性物質の百分率は、各試験に対する標準応答から算出し、試験の平均を算出して、TSI装置の2段目に到達する活性粒子の割合を示すことができる。呼吸できる部分(細かな粒子部分)は、吸入器から放出される薬剤の全量のうちTSIの2段目に到達する百分率として算出し、これは、患者の肺の奥深くに到達するであろう活性粒子の割合を示す。
【0125】
(マルチステージ液体インピンジャー)
粉末混合物は、同様に、マルチステージ液体インピンジャー(MSLI)(欧州薬局方 2.9.18.)で、上に示したように試験し、活性粒子を吸入器により患者の肺に供給する効率を評価した。
【0126】
MSLIは、経口吸入器を使用して生成した粒子雲の細かな粒子特性の評価に使用する5段分割装置である。
【0127】
密着段である1段目は、前分離器であり、5段目は、必要不可欠なフィルター段である。密着段は、上部水平金属隔壁からなり、その壁を通って密着プレートを備えた金属入口噴出管が突き出ている。
【0128】
使用する際は、活性物質を定量的に集めることができる適切な低抵抗フィルターを5段目に配置する。MSLI装置は、組み立てて、流れ供給装置に接続する。以下の実施例では、90Lmin-1の流量を使用した。
【0129】
20mlの溶媒を、1段目〜4段目のそれぞれに供給する。ポンプを作動させて、吸入器のマウスピースをMSLIのマウスピースアダプターに取り付けて、吸入器を作動させる。
【0130】
MSLI装置の各段の活性成分の量を、例えば、欧州薬局方2.9.18に記載されている方法を用いて、測定する。このように、細かな粒子の投与量を算出することができる。
【0131】
以下の実施例では、TSIとMSLI試験には、吸入器として、モノヘイラー(Monohaler)(ミャト(Miat)製、イタリア)を使用した。
【0132】
(実施例3)
粉末混合物を、TSI装置の試験用に調製した。この混合物は、以下の工程からなる標準の手順により調製した。
【0133】
i. タービュラ(Turbula)ミキサー(タンブリングブレンダー)で、30分間から1時間の間、高速で混合し、
ii. 混合物を、600μm、420μm、355μm開き目の一連のふるいに通し、混合を向上させ、安定な凝集体の崩壊を促進させ、
iii. さらに、タービュラミキサーで、30分間から1時間の間、低速で混合し、
iv. 混合物を、モノヘイラーで使用するために、各ゼラチンカプセルに約5mgずつ含むように充填する。
【0134】
活性物質、硫酸サルブタモール、添加物質からなるさまざまな粉末混合物を調製した。いくつかの混合物には、添加物質として本発明による低密度ロイシンを含ませた。低密度ロイシンは、上の実施例2で説明したエーロゾル法によって調製した。比較結果を得るために、他の混合物には、添加物質を含ませないか、添加物質として、エーロジル(Aerosil)(コロイド状二酸化ケイ素に対するデグサ(Degussa)の商品名)、または、通常の粉砕したロイシンを含ませた。混合物中の添加物質量に与えた百分率は、活性物質と添加物質の重量に基づく添加物質の重量百分率である。
【0135】
混合物の成分量に与えた%は、粉末混合物の重量に基づく成分の重量%である。
【0136】
【表4】
Figure 0004410942
【0137】
この表は、低密度ロイシンを添加すると、活性物質の呼吸できる部分が増加したことを示す。特に良好な結果は、低密度ロイシンの重量百分率が1%の場合に得られた。
【0138】
微粉化したサルブタモール粉末自体は、取り扱いが困難であり、凝集性、付着性があり、静電気の影響をかなり受ける。この粉末は、固く緻密な凝集体を形成し、静電力により、表面に貼り付いたり、表面から飛び跳ねたりする。粉砕したロイシンを重量で1%と10%添加すると、サルブタモール粉末の流れ特性が向上し、取り扱いが容易になった。低密度ロイシンを重量で1%と10%含む混合物は、粉末の流れ特性が大幅に向上し、粉砕したロイシンを含む混合物に比較して、ガラス壁への付着が最小になった。
【0139】
(実施例4)
粉末混合物中の低密度ロイシンの含有量の効果は、硫酸サルブタモールとさまざまな重量百分率で低密度ロイシンとを含む混合物を試験することによって測定した。また、混合方法の効果も、以下の混合方法、
HS…金属製ブレードを有するフードプロセッサーを使用した高剪断力混合、
LS…乳棒、乳鉢を使用した低剪断力混合とふるい通し、
S…ふるい通し、
T…タンブリングブレンダー(タービュラミキサー)での混合、
を組み合わせることによって調べた。混合物は、TSIを使用して試験を行った。それぞれのカプセル中の粉末混合物の投与量は、約5mgであった。それぞれの試験は、合計で2カプセル(合計10mgの粉末混合物)繰り返した。結果を表5に示す。
【0140】
混合物中の成分量に与えた%は、粉末混合物の重量に基づく成分の重量%である。
【0141】
【表5】
Figure 0004410942
【0142】
このように、低密度ロイシンを添加すると、それぞれの場合、吸入器の作動時に吸入器にかなりの割合で活性物質が残るけれども、活性物質の呼吸できる部分が大幅に増加したことが理解できる。
【0143】
硫酸サルブタモールの微粉化した粉末は、サルブタモール基本粉末より、取り扱いは困難ではないが、やはり凝集性、付着性を示す。ロイシンを添加すると、粉末の流れ特性が幾分向上し、取り扱いがいくらか容易になるが、低密度ロイシンを添加すると、粉末の流れ特性が大幅に向上し、取り扱いがかなり容易になった。
【0144】
(実施例5)
活性物質、低密度ロイシン、ラクトース希釈剤から構成される吸入用の粉末混合物を、マルチステージ液体インピンジャー(MSLI)を使用して、90Lmin-1の流量で試験した。粉末混合物は、上の実施例3について説明した方法を用いて、活性物質と低密度ロイシンとを混合して調製した。使用した活性物質は、硫酸サルブタモールであり、低密度ロイシンは、上の実施例2で説明したエーロゾル化により調製した。混合物は、次に、ラクトースと混合した。2つの等級のラクトースを使用した。ソルボラック(Sorbolac)(400)は、有効粒子直径が7μmのラクトース微粉から構成され、ラクトケム(Lactochem)は、ふるい分けにより得られた粒径が63μmから90μmの間のラクトースから構成される。試験用のカプセルは、20mgから25mgの間の粉末混合物を充填した。
【0145】
MSLI試験の結果を表6に示す。ここに示す%は、粉末混合物の重量に基づく物質の重量%である。
【0146】
【表6】
Figure 0004410942
【0147】
このように、ラクトースを含有させても、呼吸できる部分が高く維持され、さらに、ラクトースを含まない混合物に比較して、カプセルがいっそう空に近づくことが理解できる。
【0148】
低密度ロイシン物質の使用を、薬剤用の粉末、特に粉末特性が非常に重要である吸入用の粉末に、低密度ロイシン物質を使用するのに関連させて、上に説明した。
【0149】
また、本発明の低密度アミノ酸は、他の薬剤用に使用できる。低密度ロイシンは、例えば、錠剤用の粉末処方に使用できる。有利な特性は、特に流れ特性は、タブレットをプレス成形する際の粉末特性を向上させるであろう。
【0150】
さらに、低密度アミノ酸は、カプセルに充填する粉末の添加剤として使用できる。低密度アミノ酸を含有する粉末の流れ特性が向上し、取り扱いが容易になるので、カプセルに容易に充填しかつカプセルから空けられるであろう。
【0151】
例えば、エーロジル(コロイド状シリカ)などのように、現在入手可能で、粉末の流れ特性を向上させるために慣例的に粉末に添加するいくつかの添加剤物質がある。例えば、シリカと比較して、アミノ酸の実質的な利点は、アミノ酸が、薬剤として、特に肺への吸入に対して、より許容されることである。
【0152】
シリカに対する、いくつかのアミノ酸、特にロイシンのさらなる利点は、ロイシンが、シリカと異なり、水に溶けて透明な溶液を生成することである。従って、低密度アミノ酸、例えばロイシンは、透明溶液を生成できることが本質的になり得る診断用試薬として使用する粉末に使用すると、有利になるであろうと考えられる。
【0153】
さらに、低密度アミノ酸は、医薬分野以外の分野への適用を見出すことができると考えられる。例えば、低密度アミノ酸は、燃焼抑制剤用の乾燥粉末に、例えば、乾燥粉末消火剤の粉末特性を向上させるために、使用することができる。

Claims (11)

  1. 生物学的活性物質とミノ酸粒子とを含む粉末を収容する、呼吸系に薬剤を投与するための乾燥粉末吸入器であって、アミノ酸はロイシンであり、さらに、アミノ酸粒子は、質量中央空気力学的直径が5μm以下であるかまたはアミノ酸粒子は、厚みが0.5μm以下のフレーク形状であるかの少なくとも一方であることを特徴とする、呼吸系に薬剤を投与するための乾燥粉末吸入器
  2. 前記粉末は、粉末の重量に基づいて重量で20%以下のアミノ酸を含むことを特徴とする請求項記載の乾燥粉末吸入器
  3. 前記粉末は、粉末の重量に基づいて重量で10%以下のアミノ酸を含むことを特徴とする請求項記載の乾燥粉末吸入器
  4. 前記粉末は、希釈剤の粒子をさらに含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の乾燥粉末吸入器
  5. 前記希釈剤は、結晶性の糖を含むことを特徴とする請求項記載の乾燥粉末吸入器
  6. 前記希釈剤は、重量で少なくとも90%の希釈剤粒子の粒径が10μm以下となるような粒径であることを特徴とする請求項または記載の乾燥粉末吸入器
  7. 前記希釈剤は、重量で少なくとも90%の希釈剤粒子の粒径が50μm以上となるような粒径であることを特徴とする請求項または記載の乾燥粉末吸入器
  8. 前記希釈剤は、細かな粒子部分の重量で少なくとも90%の粒子の粒径が10μm以下となるような細かな粒子部分と、粗い粒子部分の重量で少なくとも90%の粒子の粒径が50μm以上となるような粗い粒子部分とを含むことを特徴とする請求項または記載の乾燥粉末吸入器
  9. 前記細かな粒子部分と前記粗い粒子部分とは、同じ物質で構成されることを特徴とする請求項記載の乾燥粉末吸入器
  10. 前記粉末は、粉末の重量に基づいて重量で5%以下の前記細かな粒子部分を含むことを特徴とする請求項または記載の乾燥粉末吸入器
  11. 前記粉末は、粉末の重量に基づいて重量で95%以下の前記粗い粒子部分を含むことを特徴とする請求項〜1のいずれかに記載の乾燥粉末吸入器
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