JP4410827B2 - インキジェット記録用シート - Google Patents

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Description

本発明はインキジェットプリンターによって印刷されることを意図しているインキジェット記録用シートに関する。
インキジェットプリンター、すなわち、一つ又はそれ以上のノズルからインキの多数の離散液滴をノズルに隣接して配置された記録用シートの表面上に飛翔させることによって像を形成するプリンターは、最近は大きな販売増を享受している。かかるインキジェットプリンターは良好な品質の文書及び画像をモノクロ及びフルカラーどちらでも複製することができ、そして反射プリント及び透明画どちらもつくることができ、しかも例えばカラーレーザープリンターや熱ワックス転写プリンターや染料昇華プリンターと比べて製造及び操作が比較的安価である。従って、インキジェットプリンターは今や家庭用/小規模オフィス用の市場を支配しており、また、大規模オフィスで典型的に使用されているモノクロレーザープリンターからは入手できない色能力を提供するためにもしばしば使用される。
最近のインキジェットプリンターは殆ど全ての普通紙又は類似媒体に印刷することができ、そして実際に文書印刷用の市販の写真複写用紙と共に日常的に使用されるけれども、かかるプリンターによって作成された像の品質は使用した媒体の性質によって大きく影響される。高品質の像を信頼性をもって作成するには、インキが長時間にわたって湿ったままでいないように、使用した媒体(インキジェット記録用シート)が速やかにインキを吸収することが必要であり、そうでないと、プリンターの出口トレイに順次シートが堆積するときにインキがこすられて不明瞭になるようである。その一方で、媒体はインキ液滴の過度の広がりを助長すべきでない、何故ならば、かかる広がりは解像力を低下させ、そして隣接するインキ液滴が混ざり合うと色ゆがみを生じるかも知れないからである。媒体はまた、「吸上作用(wicking)」、すなわち、紙のような繊維状媒体を通しての毛管作用によるインキの広がり、を助長すべきでない。媒体は実質的な媒体のゆがみを伴わずにインキを吸収することができなければならない、そうでないと、見苦しい「シワ発生(cockling)」(小さな波打ち又は類似のひだの形成)が起こかも知れず、そして殆どの観察者がかかるゆがみを許容できないと気づくからである。インキが乾燥してしまったら、媒体は像が湿った表面(例えば、汗をかいた指)と接触しても像からインキを滲み出すべきでない。最後に、平滑性や光沢や感触のような像表面特性は大部分が媒体の同じ特性によって決まるので、媒体は印刷される像のタイプに適する特性を有すべきである。ますます普及してきているように、インキジェットプリンターがカメラやスキャナーによって生じたデジタル像を印刷するのに使用されるときには、媒体は平滑であり、そして通常の銀ハライド系写真印画紙の高い光沢と平滑感触を有しているべきである。
インキジェット印刷用媒体に対するこれら全ての要求を両立させることは困難であり、そして文献によって示されているように、多くの研究はかかる媒体を改良することにささげられた。例えば、米国特許第4,592,951号は架橋結合したポリ(ビニルアルコール)の層を担持している透明支持体を含んでいるインキジェット記録用シートを記載している。米国特許第4,575,465号はビニルピリジン/ビニルベンジル第四アンモニウム塩の共重合体と、ゼラチン、ポリ(ビニルアルコール)及びヒドロキシプロピルセルロース及びこれらの混合物からなる群から選ばれた親水性重合体との混合物から形成された層を担持している透明支持体を含んでいるインキジェット記録用シートを記載している。米国特許第4,547,405号は、ポリ(ビニルアルコール)とポリビニル(ベンジルアンモニウムクロライド)の凝集したブロック共重合体と、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)及びそれらの混合物からなる群から選ばれた水溶性重合体との混合物を含んでいる層を担持している透明支持体を含んでいるインキジェット記録用シートを記載している。
米国特許第4,904,519号は酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及びステアリン酸ビニルからなる群から選ばれたビニルエステルコモノマーと、N−ビニルピロリドン及びビニルアセトアミドからなる群から選ばれたビニルアミドコモノマーとの架橋結合した加水分解共重合体を含んでいる透明なインキ受容層を少なくとも一つの主表面上に有している透明重合体裏材を含んでいるインキジェット記録用シートを記載しており、加水分解度が約80〜95%であり、そして架橋結合はホウ酸塩、チタン酸塩、二クロム酸塩及びアルデヒドからなる群から選ばれた作用物質によって行われる。
米国特許第4,900,620号は主に70〜100重量%の木材パルプと0〜30重量%の沈降炭酸カルシウムから構成されておりそして64g/m2の坪量を有するシートにしたときに2秒以上かつ25秒以下のStockigtサイズ度を有しているシート様基体と、主に白色顔料から構成された被覆層とを包含しているインキジェット記録用シートを記載しており、被覆層は基体の少なくとも一方の側に1〜10g/m2の重量で形成されている。この特許によれば、このシートは高いインキ吸収速度を有しており、そして鮮やかな色彩及び先鋭な像を出現させることができる。
米国特許第5,139,867号は液体インキドットの適用によって像形成することができるインキ受容層を含有している透明な像記録要素を記載している。このインキ受容層は、
(i)ビニルピロリドン;
(ii)ポリエステル、すなわち、ポリ(シクロヘキシレンジメチレン−コ−オキシジエチレンイソフタレート−コ−ソジオ−スルホベンゼンジカルボキシレート)、の粒子;
(iii)2〜6個の炭素原子を含有するアルキレンオキシドの単独重合体又は共重合体;
(iv)ポリビニルアルコール;
(v)一般式
2O(CHR1CH2O)n3
(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2及びR3は各々、水素原子、1〜4の炭素数を有するアルキル基、又はフェニル基を表し、そして、nは1〜10の整数である)を有する化合物又は化合物の混合物;及び
(vi)不活性粒子
の組合せを含有する。
米国特許第4,592,954号は支持基体とその上の本質的にカルボキシメチルセルロースとポリエチレンオキシドのブレンドからなる被覆とから構成されたインキジェット印刷用透明体を記載している。普通紙基体とその上の本質的にポリエチレンオキシドからなる被覆とから構成された、インキジェット印刷に使用するための用紙も開示されている。
米国特許第5,342,688号は少なくとも一つの像形成性重合体と有効量の高分子媒染剤とを含んでいるインキ受容層を透明基体の少なくとも一つの主表面上に担持しているインキ受容シートを記載しており、高分子媒染剤はアミノグアニジノペンダント基を担持するポリメチレン骨格を含んでいる。
米国特許第4,547,405号は、ポリ(ビニルアルコール)とポリビニル(ベンジルアンモニウムクロライド)の凝集ブロック共重合体ラテックスと、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)及びそれらの共重合体からなる群から選ばれた水溶性重合体との混合物を含んでいる層を担持している透明支持体を含んでいるインキジェット記録用シートを記載している。
米国特許第4,575,465号は、ビニルピリジン/ビニルベンジル第四アンモニウム塩の共重合体と、ゼラチン、ポリ(ビニルアルコール)、及びヒドロキシプロピルセルロース、及びそれらの混合物からなる群から選ばれた親水性重合体との混合物から形成された層を担持している透明支持体を含んでいるインキジェット記録用シートを記載している。
ポリ(ビニルアルコール)を含有するインキ受容層を有するインキジェット記録用シートの性質は、誘導体化されたポリ(ビニルアルコール)と誘導体化されてないポリ(ビニルアルコール)との混合物をポリ(ビニルアルコール)として使用することによって改良できることがこの度、判明した。また、親水性重合体を含有するインキ受容層を有するインキジェット記録用シートの性質は、インキ受容層の中にビニルベンジル第四アンモニウム塩共重合体の特異サブ基及び/又はポリ(ビニルピリジン)を使用することによって改良できることが判明した。ポリ(ビニルアルコール)を含有するインキジェット記録用シートは改良された像形成特性を示す;特に、これらシート上に形成された像の耐水堅牢度は実質的に改良される。
従って、一つの局面においては、本発明はインキ受容層を担持している支持体を含んでいるインキジェット記録用シートであって、このインキ受容層が非誘導体化(non-derivatized)ポリ(ビニルアルコール)と誘導体化(derivatized)ポリ(ビニルアルコール)を含んでいる、前記インキジェット記録用シートを提供する。本発明のこの形態は以後、本発明の「誘導体化/非誘導体化シート」と称する。
別の局面では、本発明はインキ受容層を担持している支持体を含んでいるインキジェット記録用シートであって、このインキ受容層が、親水性重合体と、(a)式
Figure 0004410827
(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6の各々は独立に、炭素原子1〜4個のアルキルであり;R7、R8及びR9の各々は独立に、炭素原子1〜18個のアルキルであり、そしてR7とR8とR9の炭素原子の総数が13〜20であり;各M-はアニオンであり;そしてa、b及びcの各々はそれぞれの反復単位のモル比率である)のポリ(ビニルベンジル第四アンモニウム塩)及び(b)ポリ(ビニルビリジン)の少なくとも一つを含んでいる、前記インキジェット記録用シートを提供する。本発明のこの形態は以後、本発明の「親水性重合体シート」と称する。
本発明の誘導体化/非誘導体化シートと親水性重合体シートは互いに排他的ではない;もっと詳しく後述されている通り、有効なシートは、例えば、誘導体化ポリ(ビニルアルコール)と非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)の混合物を親水性重合体として、ポリ(ビニルベンジル第四アンモニウム塩)及び/又はポリ(ビニルピリジン)と一緒に使用することによって製造できる。
本発明はまた、インキジェットプリンターから発生したインキ液滴の複数をインキジェット記録用シートに適用することを含んでいるインキジェット印刷方法であって、インキジェット記録シートが本発明のシートである、前記インキジェット印刷方法を提供する。
本発明の誘導体化/非誘導体化シートの中に使用される誘導体化ポリ(ビニルアルコール)は、通常のポリ(ビニルアルコール)(本明細書中では、便宜上、「非誘導体化」ポリ(ビニルアルコール)とも称する)とは、非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)の中に存在するヒドロキシル基の少なくとも幾つかがエーテル又はエステルの原子団(好ましくは後者)によって置換される点において相違している。本発明に使用するための誘導体化ポリ(ビニルアルコール)の好ましいタイプは、その中のヒドロキシル基がアセト酢酸によってエステル化されているところの、アセトアセチル化ポリ(ビニルアルコール)である。アセトアセチル化ポリ(ビニルアルコール)は、例えば、大阪市北区野崎町9の6に在る日本合成によって販売されているゴーセファイマー(Gohsefimer)Z−200として入手できる。この物質は、加水分解度99〜100%、20℃における4%水溶液中の粘度13.3〜14.3cps、及び同溶液中のpH3.5〜5、を有する超加水分解ポリ(ビニルアルコール)であると製造元が言っている。
誘導体化/非誘導体化シートの中に使用するのに好ましい非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)は、米国ペンシルバニア州アレンタウン(Allentown)に在るエアプロダクツ社によって販売されているエアボル(Airvol)−205である。この物質は、加水分解度87〜89%、20℃における4%水溶液中の粘度5.2〜6.2cps、及び同溶液中のpH4.5〜6.5、を有する部分加水分解ポリ(ビニルアルコール)であると製造元が言っている。
誘導体化/非誘導体化シートの中に誘導体化ポリ(ビニルアルコール)と非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)の混合物を使用することは重要である。何故ならば、この混合物はどちらかの成分単独よりも優れたインキ吸収特性を有することが判明したからである。最適混合(それは当業者が日常的実験によって決定できる)は使用される具体的な誘導体化及び非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)に依存して或る程度変動するであろうが、一般的には、インキ受容層の中の非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)対誘導体化ポリ(ビニルアルコール)の重量比は約2:1から約1:2までの範囲にあることが好ましい;場合によっては2つの重合体をほぼ等しい重量で使用することが最良の結果を与える。
誘導体化及び非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)の他に、誘導体化/非誘導体化シートのインキ受容層は望ましくは、層のインキ結合能力を改良するために媒染剤も含んでいる。この目的のための好ましい媒染剤はポリ(ビニルベンジル第四アンモニウム塩)、特に上記式を有するもの、である。これら媒染剤及びその製造方法は米国特許第4,794,067号に記載されており、この特許はこれら媒染剤を含有している受像要素も特許請求している。好ましくは、ポリ(ビニルベンジル第四アンモニウム塩)は式中のR7が少なくとも11個の炭素原子を含有するアルキル基であり、そしてR8及びR9が各々メチル基である場合のものである。このタイプの特別の好ましい媒染剤は、R1、R2、R3、R8及びR9の各々がメチル基であり、R4、R5及びR6の各々がエチル基であり、そしてR7がn−C1225基である場合のものであり、この物質は後で示す実施例の中では簡単に「三元共重合体」と称している。aとbとcのモル比率は望ましくは5〜10:5〜10:1の比にある。
本発明の親水性重合体シートがポリ(ビニルベンジル第四アンモニウム塩)を含有するとき、好ましい塩は先のパラグラフの中で言及した誘導体化/非誘導体化シートの中に使用するのに好ましいものと同じである。本発明の親水性重合体シートがポリ(ビニルピリジン)を含有するとき、この重合体は非常に望ましくはポリ(4−ビニルピリジン)である。インキ受容層の性質はポリ(4−ビニルピリジン)を製造するのに使用されたプロセスによって有意に影響されるということが判明した;望ましくは、ポリ(4−ビニルピリジン)と一緒に使用される親水性重合体はポリ(ビニルアルコール)であり、そしてポリ(4−ビニルピリジン)はポリ(ビニルアルコール)の少なくとも一部分の存在下で4−ビニルピリジンを重合させることによって製造される。かかる重合は米国特許第3,208,964号および米国特許第3,507,846号に記載されたプロセスによって行うことができる、しかし、これら2つのプロセスによって製造されたポリ(4−ビニルピリジン)はその記録用シートから作成される像の黒領域に若干の不均一性を生じる傾向がある。この不均一性は、生成物に或る不均質性を起こさせる傾向があるらしい、これら2つの特許に記載されたプロセスの懸濁重合メカニズムに起因すると考えられる(しかし、本発明はこの考えによって何ら制限されるものではない)。
本発明の記録用シートの上に作成された像の黒領域の均一性は、開始剤の実質的に全部と4−ビニルピリジンの全部ではないとしても殆どが溶液中に存在しているところの沈殿重合手順を使用して4−ビニルピリジンの重合を行うことによって、改良されることがこの度判明した。従って、好ましい手順においては、本発明の記録用シートの中に使用されるポリ(4−ビニルピリジン)を製造するには、ポリ(ビニルアルコール)の水性分散物をつくり、この水溶液を(水溶液の重量を基準にして)約10重量%未満の4−ビニルピリジン単量体及び水溶性ラジカル開始剤と接触させる。この反応に使用するための好ましいラジカル開始剤は2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩であり、米国23237バージニア州リッチモンドのベルウッドロード(Bellwood Rd.)1600に在るワコーケミカルUSA社から登録商標V50で市販されている。4−ビニルピリジンの濃度を比較的低く保つことによって、この単量体の大部分が水性分散物の中に可溶化され、それは均質開始が起こることそしてより均質な生成物が生成されることを可能にする。このプロセスは更に、典型的に生成物中の残留単量体濃度が上記の2つの特許に記載されているプロセスの生成物と比べて、通常はほぼオーダーの大きさで大幅に低下するという利点を有する。
既に言及した通り、この好ましい重合プロセスにおいては、ポリ(ビニルアルコール)の少なくとも一部分は存在しており、そして乳化剤及び粘度増強剤として作用する。多くの場合において、インキ受容層の中のポリ(4−ビニルピリジン)と最終的には混合されるであろうポリ(ビニルアルコール)の全部を重合反応の中に包含させることは必ずしも必要ないということに留意すべきである。特に、インキ受容層の中のポリ(4−ビニルピリジン)が誘導体化ポリ(ビニルアルコール)と非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)の混合物を成すとき(即ち、シートが本発明の誘導体化/非誘導体化シート及び親水性重合体シートの両方であるとき)は、重合反応中には非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)だけを包含しそして後で誘導体化ポリ(ビニルアルコール)を添加することはしばしば有利である。
重合反応の完了時には、生成ポリ(4−ビニルピリジン)の多くが沈殿物の形態にあるので、この重合体の可溶化は重合体混合物をインキ受容層の形成に使用する以前に行われることが大いに望ましい。かかる可溶化を行うには、反応生成物に酸を添加することが望ましく、このための好ましい酸は乳酸である。
他の親水性重合体、例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルセルロースが本発明の親水性重合体シートの中に使用されてもよいが、かかるシートの全てにおいて好ましい親水性重合体はポリ(ビニルアルコール)である、何故ならば、この重合体は最良のインキ受容性をもったインキ受容層を与えることが判明したからである。具体的インキにとって、ポリ(ビニルベンジル第四アンモニウム塩)及びポリ(ビニルピリジン)の全重量に対するポリ(ビニルアルコール)の最適重量比は当業者が日常的実験によって決定できるであろう;しかしながら、一般的指針としては、ポリ(ビニルベンジル第四アンモニウム塩)及びポリ(ビニルピリジン)の全重量部当り代表的には3〜15重量部、望ましくは5〜8重量部のポリ(ビニルアルコール)が最適結果を生じると言ってもよい。
先に指摘した通り、ポリ(ビニルアルコール)を含有している本発明の親水性重合体シートにおいては、このポリ(ビニルアルコール)は望ましくは、誘導体化ポリ(ビニルアルコール)と非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)の混合物であり、そして望ましくは、非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)対誘導体化ポリ(ビニルアルコール)の重量比は2:1から1:2までの範囲にあり、誘導体化ポリ(ビニルアルコール)は望ましくはアセトアセチル化ポリ(ビニルアルコール)である。
ポリ(ビニルアルコール)を含有している本発明の全てのインキジェット受容シートにおいて、最適靱性とインキ広がりの制御をもったインキ受容層を製造するためには、ポリ(ビニルアルコール)が架橋結合されることが望ましい。かかる架橋結合はポリ(ビニルアルコール)のための既知の架橋結合剤のいずれか、例えば、上記米国特許第4,592,951号に記載されているホウ素化合物及び塩化クロム、を用いて行われてもよい。しかしながら、殆どの場合において、架橋結合剤がアルデヒドであることが好ましい。しかしながら、ポリ(4−ビニルピリジン)を含有している親水性重合体シートの場合においては、架橋結合剤の好ましいタイプはジエポキシ架橋結合剤である;このタイプの一つの好ましい架橋結合剤は1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルである。かかるジエポキシ架橋結合剤は塩基性条件下では実際により良く機能するが、本発明の実施においては、インキ受容層を形成するのに使用される組成物の中のポリ(4−ビニルピリジン)を可溶化するのに酸例えば酢酸又は乳酸を包含することが望ましく、そしてジエポキシ架橋結合剤はかかる酸の存在下で満足な架橋結合度をなお与えることができる。どちらのタイプの架橋結合剤が使用されようとも、それは代表的には、インキ受容層の約3重量%未満の量で存在するであろう。
先に言及した必須成分に加えて、本シート全てのインキ受容層は有利にはポリ(ビニルピロリドン)を含んでおり;この重合体はインキ受容層によるインキ受理をコントロールすること及びドットの広がり即ちインキ液滴がシートの横方向に広がる傾向をコントロールすることに作用する。この重合体はシートの光沢も改良し、通常の銀ハライド系写真印画紙の外観によく似た外観をもつシートを生じる。シートの感触が写真印画紙の感触によく似るためには、インキ受容層の中にスターチ顆粒を(代表的にはインキ受容層の2〜8重量%の量で)包含させることも有利である。最後に、インキ受容層の中に界面活性剤を包含することはドット広がりをコントロールする層の能力を更に改良することが判明した;この目的のためには、米国ニュージャージー州パーシパニー(Parsippany)に在るBASF社によってプルラファック(Plurafac)C17の商品名で市販されているもののような線状アルコキシル化脂肪アルコール界面活性剤が好ましい。特に、ポリ(ビニル‐ピリジン)を含有している親水性重合体シートの場合は、インキ受容層の中にシリカゲルを包含することも有利であろう;例えば、シリカゲルは代表的にはインキ受容層の1〜4重量%の量で存在するであろう。シリカゲルの包含は像のぼけ汚れ(smudge)抵抗性を増加させること及び印刷中のシート取扱を容易にすることが判明した。
インキジェット記録用シートの製造には、シートのインキ受容性ばかりでなくその機械的性質も考慮する必要がある。家庭用又は小規模オフィス用を意図した殆どのインキジェットプリンターはプリンターの前方に記録用シートのための入口トレイを有している。このトレイから引き出されるシートはローラー又はローラーアセンブリーのまわりを180度まわってからプラテンを横断して搬送されプラテンの上方では一つ又はそれ以上のインキジェットヘッドが往復運動して印刷を行う。シートはプラテンから、入口トレイの上方に垂直に配置された出口トレイに搬送される;印刷を経て未だ「湿っている」シートが先行シートと接触するのを防いでどちらのシート上の像のこすれ汚れも回避するためには、代表的には、可動性支持部材を出口トレイの上に設けて、プラテンから出口トレイの上に出てくるシートを数秒間保持する。プリンターの空間抑制のために、ローラー又はローラーアセンブリーは直径が通常約4cmしかなく、そして記録用シートはその小さな直径のまわりに永久的な「固定」を帯びずにまとわることが可能にならなければならず、そうなればシートはプラテンの上及び出口トレイの中では平坦になることができる。媒体のシート繰り出し性質を改良するには、インキ受容層の中にポリ(アルキルアクリレート)又はポリ(アルキルメタクリレート)を小さな割合で包含することが有利であることが判明し、この目的のためには特にポリ(メチルメタクリレート)が好ましい。
上記成分の他に、インキ受容層は様々な通常の添加剤、たとえば、紫外線吸収剤、抗酸化剤、保湿剤、殺菌剤、殺カビ剤、及び架橋結合剤、を含んでいてもよい。
本発明において使用される支持体は重要ではなく、そして通常は、作成されることを意図されている像のタイプ、像の提起された用途、及び使用される具体的インキに関連して、選択されるであろう。透明画が望まれるか又は反射プリントが望まれるかに依存して、支持体は透明又は不透明である。合成及び天然どちらの高分子物質の重合体フィルムが使用されてもよい。適する透明高分子物質の例はポリメタクリル酸;メチル及びエチルエステル;ポリアミド、例えば、ナイロン;ポリエステル、例えば、エチレングリコールテレフタレート酸から誘導された重合体フィルム;ポリマー性セルロース誘導体;ポリカーボート;ポリスチレン、等を包含する。透明でない支持体は紙及び合成紙、たとえば、シリカ系合成紙、を包含する。支持体へのインキ受容層の密着性を改良するには、支持体の下塗り又は表面処理、例えば、コロナ放電、が使用されてもよい。
本発明のインキジェット記録用シートは主として水性及びアルコール性のインキと共に使用することを意図されているが、本発明者らはシートが炭水化物のような疎水性有機溶剤に基づいたインキと組み合わせて有効である可能性を排除しない。
本発明のインキジェット記録用シートは通常のコーティング手法によって製造することができる。後述する実施例の中で例証されているように、代表的には、インキ受容層の各種成分が水性の溶液又は分散物の形態で調製され、所望の支持体の上に塗布され、そして乾燥されて最終の記録用シートを生じる。
先に指摘した通り、インキ受容層の中の各種成分の割合はかなりの範囲にわたって変動可能であるが、インキジェット記録用媒体の製造分野に精通する者は日常的実験によって具体的配合のための最適割合を決定することができよう。一般的指針として、本シートにおけるインキ受容層の組成物の好ましい範囲の例を下記に提供する:
1.誘導体化/非誘導体化シート:
約20〜約40重量部の非誘導体化ポリ(ビニルアルコール);
約20〜約40重量部のアセトアセチル化ポリ(ビニルアルコール);
約5〜約15重量部のポリ(ビニルベンジル第四アンモニウム塩);
約15〜約30重量部のポリ(ビニルピロリドン);
0〜約5重量部(最も望ましくは約2重量部)のポリ(アルキルアクリレート)又はポリ(アルキルメタクリレート);及び
0〜約1重量部(最も望ましくは約0.2重量部)の界面活性剤。
2.ポリ(ビニルベンジル第四アンモニウム塩)を含有する親水性重合体シート:
約50〜約80重量部のポリ(ビニルアルコール);
約5〜約15重量部のポリ(ビニルベンジル第四アンモニウム塩);
約15〜約30重量部のポリ(ビニルピロリドン);
0〜約5重量部(最も望ましくは約2重量部)のポリ(アルキルアクリレート)又はポリ(アルキルメタクリレート);及び
0〜約1重量部(最も望ましくは約0.2重量部)の界面活性剤。
3.ポリ(ビニルピリジン)を含有する親水性重合体シート:
約50〜約80重量部のポリ(ビニルアルコール);
約5〜約15重量部のポリ(4−ビニルピリジン);
約15〜約30重量部のポリ(ビニルピロリドン);及び
0〜約1重量部(最も望ましくは約0.2重量部)の界面活性剤。
しかしながら、本発明の記録用シートのインキ受容層の中の各種成分の最適割合は一緒に使用されることを意図されているインキの化学的組成に依存して変動することが認識されよう、何故ならば、インキの広がり、光沢、等のような要因はインキとインキ受容層の間の化学的相互作用によって大きく影響されるからである。特に、像形成のために使用されるべきインキが水の他にグリコールエーテル補助溶剤を含有するときは、インキ受容層の中のポリ(ビニルピロリドン)の割合を層の80%のような多さまで有意に増加させ結果としてポリ(ビニルアルコール)とポリ(ビニルピリジン)の割合を減少させることが有利である。従って、かかるインキを用いる場合には、インキ受容層は、 約10〜約30重量部のポリ(ビニルアルコール)(これは全部誘導体化ポリ(ビニルアルコール)であってもよい);
約5〜約15重量部のポリ(4−ビニルピリジン);
約50〜約80重量部のポリ(ビニルピロリドン);
0〜約5重量部のシリカゲル;
0〜約5重量部の、ポリ(ビニルアルコール)およびポリ(4−ビニルピリジン)を架橋結合させることができる架橋結合剤;及び
0〜約1重量部の界面活性剤を含んでいる。
次に、本発明のインキジェット記録用シートを製造するのに使用される特に好ましい試薬、条件及手法を示すために下記実施例を与えるが、それらは単なる例証である。
(実施例1)
下記成分から分散物をつくった;重量部はどれも乾燥固体基準で引用されている:
重量部
非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)(エアボル205) 33.0
アセトアセチル化ポリ(ビニルアルコール)(Z200) 32.8
三元共重合体 10.0
ポリ(ビニルピロリドン) 22.0
ポリ(メチルメタクリレート) 2.0
界面活性剤(プルラファックC17) 0.2
分散物を製造するために、313gの水に、エアボル(Airvol)205の20重量%水溶液の115.5g、Z200の8重量%水溶液の287g、及び三元共重合体の12.6重量%水溶液の55.6gを加え、そして空気駆動ミキサーで30分間混合した。次いで、界面活性剤(10重量%水溶液の1.4g)、ポリ(メチルメタクリレート)(4重量%水性分散物の35g)、及びポリ(ビニルピロリドン)(8重量%水溶液の192.5g)を加え、そして得られた混合物をさらに30分間混合して塗布に適する分散物を生じた。
こうして製造した分散物を7.6ミルのポリクラッド(polyclad)フォトペーパーの上に、No.24のマイヤーロッドを使用して4.2g/m2の被覆量で塗布し、そしてこの被覆されたシートをオーブンで80℃で10分間乾燥した。この乾燥したインキジェット記録用シートはレックスマーク(Lexmark)2050プリンターを使用して試験され、そしてインキ広がり及びこすれ汚れが最小の優れた色像を与えることがわかった。また、この印刷されたシートは通常の銀ハライド系写真印画紙のそれによく似た光沢及び感触を有していた。耐水堅牢度を試験するために、この印刷された像を、脱イオン水のビーカーの中に3分間入れ、取り出し、10秒間振ってから、水の中に戻して更に2分間置いた。この洗浄された像は実に染料褪色を殆ど示さなかった。これは優れた耐水堅牢度の指標である。
(実施例2)
この実施例は実施例1で達成された優れた結果が非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)単独の使用では達成されないことを例証する。
下記成分から分散物をつくった;重量部はどれも乾燥固体基準で引用されている:
重量部
非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)(エアボル205) 65.8
三元共重合体 10.0
ポリ(ビニルピロリドン) 22.0
ポリ(メチルメタクリレート) 2.0
界面活性剤(プルラファックC17) 0.2
分散物を製造するために、485.2gの水に、エアボル(Airvol)205の20重量%水溶液の230.3gおよび三元共重合体の12.6重量%水溶液の55.6gを加え、そして空気駆動ミキサーで30分間混合した。次いで、界面活性剤(10重量%水溶液の1.4g)、ポリ(メチルメタクリレート)(4重量%水性分散物の35g)、及びポリ(ビニルピロリドン)(8重量%水溶液の192.5g)を加え、そして得られた混合物を更に30分間混合して塗布に適する分散物を生じた。
こうして製造した分散物を、上記実施例1におけると同じように、塗布し、乾燥し、そして得られたシートに印刷した。この印刷されたシートは黒領域では柔らかい粘着な像を有することがわかった。
(実施例3)
この実施例は実施例1で達成された優れた結果が誘導体化ポリ(ビニルアルコール)単独の使用では達成されないことを例証する。
下記成分から分散物をつくった;重量部はどれも乾燥固体基準で引用されている:
重量部
アセトアセチル化ポリ(ビニルアルコール)(Z200) 65.8
三元共重合体 10.0
ポリ(ビニルピロリドン) 22.0
ポリ(メチルメタクリレート) 2.0
界面活性剤(プルラファックC17) 0.2
分散物を製造するために、139.8gの水に、Z200の8重量%水溶液の575.75g及び三元共重合体の12.6重量%水溶液の55.6gを加え、そして空気駆動ミキサーで30分間混合した。次いで、界面活性剤(10重量%水溶液の1.4g)、ポリ(メチルメタクリレート)(4重量%の水性分散物の35g)、及びポリ(ビニルピロリドン)(8重量%水溶液の192.5g)を加え、そして得られた混合物をさらに30分間混合して塗布に適する分散物を生じた。
こうして製造した分散物を、上記実施例1におけると同じように、塗布し、乾燥し、そして得られたシートに印刷した。この印刷されたシートは僅かなインキこすれ汚れと液たまりをもった色像を有することがわかった。
(比較例4)
この比較例は実施例1で達成された優れた結果がビニルピリジンとビニルベンジル第四アンモニウム塩の共重合体の使用では達成されないことを例証する。
下記の分散物の中に使用されたコポリマーAは4−ビニルピリジンとビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドの単量体比1:1の共重合体であった。
下記成分から分散物をつくった;重量部はどれも乾燥固体基準で引用されている:
重量部
非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)(エアボル205) 33.0
アセトアセチル化ポリ(ビニルアルコール)(Z200) 32.8
コポリマーA 10.0
ポリ(ビニルピロリドン) 22.0
ポリ(メチルメタクリレート) 2.0
界面活性剤(プルラファックC17) 0.2
分散物を製造するために、185gの水に、エアボル(Airvol)205の10重量%水溶液の231g、Z200の8重量%水溶液の287g及びコポリマーAの10.3重量%水溶液の70gを加え、そして空気駆動ミキサーで30分間混合した。次いで、界面活性剤(10重量%水溶液の1.4g)、ポリ(メチルメタクリレート)(4重量%水性分散物の35g)、およびポリ(ビニルピロリドン)(8重量%水溶液の192.5g)を加え、そして得られた混合物をさらに30分間混合して塗布に適する分散物を生じた。
こうして製造した分散物を、上記実施例1におけると同じように、塗布し、乾燥し、そして得られたシートに印刷した。この印刷されたシートはインキ広がりとこすれ汚れが最小の優れた色像を有することがわかった。この印刷されたシートは通常の銀ハライド系写真印画紙のそれによく似た光沢及び感触をも有していた。耐水堅牢度を試験するために、この印刷された像を脱イオン水のビーカーの中に3分間入れ、取り出し、10秒間振ってから、水の中に戻して更に2分間置いた。この洗浄された像は約30%の染料褪色を示し、それは劣った耐水堅牢度を表している。
(比較例5)
この比較例は実施例1で達成された優れた結果がビニルピリジンとビニルベンジル第四アンモニウム塩の共重合体の使用では達成されないことを例証する。
下記の分散物の中に使用されたコポリマーBは4−ビニルピリジンとビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドの単量体比3:1の共重合体であった。
下記成分から分散物をつくった;重量部はどれも乾燥固体基準で引用されている:
重量部
非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)(エアボル205) 33.0
アセトアセチル化ポリ(ビニルアルコール)(Z200) 32.8
コポリマーA 10.0
ポリ(ビニルピロリドン) 22.0
ポリ(メチルメタクリレート) 2.0
界面活性剤(プルラファックC17) 0.2
分散物を製造するために、185gの水に、エアボル(Airvol)205の10重量%水溶液の231g、Z200の8重量%水溶液の287g及びコポリマーBの9.02重量%水溶液の77.6gを加え、そして空気駆動ミキサーで30分間混合した。次いで、界面活性剤(10重量%水溶液の1.4g)、ポリ(メチルメタクリレート)(4重量%水性分散物の35g)、およびポリ(ビニルピロリドン)(8重量%水溶液の192.5g)を加え、そして得られた混合物をさらに30分間混合して塗布に適する分散物を生じた。
こうして製造した分散物を、上記実施例1におけると同じように、塗布し、乾燥し、そして得られたシートに印刷した。この印刷されたシートはインキ広がりとこすれ汚れが最小の優れた色像を有していることがわかった。この印刷されたシートは通常の銀ハライド系写真印画紙のそれによく似た光沢及び感触をも有していた。耐水堅牢度を試験するために、この印刷された像を脱イオン水のビーカーの中に3分間入れ、取り出し、10秒間振ってから、水の中に戻して更に2分間置いた。この洗浄された像は約40%の染料褪色を示し、それは劣った耐水堅牢度を表している。
(比較例6)
この比較例は実施例1で達成された優れた結果がビニルピリジンとビニルベンジル第四アンモニウム塩とヒドロキシエチルセルロースの三元共重合体の使用では達成されないことを例証する。
下記の分散物の中に使用されたコポリマーCは4−ビニルピリジンとビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドとヒドロキシエチルセルロースの三元共重合体であった。
下記成分から分散物をつくった;重量部はどれも乾燥固体基準で引用されている:
重量部
非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)(エアボル205) 33.0
アセトアセチル化ポリ(ビニルアルコール)(Z200) 32.8
コポリマーC 10.0
ポリ(ビニルピロリドン) 22.0
ポリ(メチルメタクリレート) 2.0
界面活性剤(プルラファックC17) 0.2
分散物を製造するために、185gの水に、エアボル(Airvol)205の10重量%水溶液の231g、Z200の8重量%水溶液の287g及びコポリマーCの10.3重量%水溶液の70gを加え、そして空気駆動ミキサーで30分間混合した。次いで、界面活性剤(10重量%水溶液の1.4g)、ポリ(メチルメタクリレート)(4重量%水性分散物の35g)、およびポリ(ビニルピロリドン)(8重量%水溶液の192.5g)を加え、そして得られた混合物をさらに30分間混合して塗布に適する分散物を生じた。
こうして製造された分散物を、上記実施例1におけると同じように、塗布し、乾燥し、そして得られたシートに印刷した。この印刷されたシートは最小のインキ広がりとこすれ汚れをもった優れた色像を有していることがわかった。この印刷されたシートは通常の銀ハライド系写真印画紙のそれによく似た光沢及び感触をも有していた。耐水堅牢度を試験するために、この印刷された像を脱イオン水のビーカーの中に3分間入れ、取り出し、10秒間振ってから、水の中に戻して更に2分間置いた。この洗浄された像は約20%の染料褪色を示し、それは劣った耐水堅牢度を表している。
参考例7)
この参考例は、親水性重合体シートの中に使用するための混合ポリ(ビニルアルコール)/ポリ(4−ビニルピリジン)溶液を製造するのに好ましいプロセスを例証する。
310.6kgのポリビニルアルコール(エアボル(Airvol)350、完全加水分解されている)を、窒素下の約95℃の脱気された脱イオン水の5466Lの中に約45分間可溶化し、次いで約65℃に冷却した。
約65℃のこのポリビニルアルコール溶液に、163.2kgの4−ビニルピリジン単量体[レイリー インダストリーズ社(Reilly Industries,Inc.)、米国インディアナ州46204インディアナポリスのシュート(Suite)1600のノースメリディアンストリート(Norh Meridian Street)300]と75.6Lの脱気された脱イオン水を加え、そして約45分間攪拌した。
次に、この、ポリ(ビニルアルコール)と4−ビニルピリジン単量体を含有している溶液に、37.8Lの脱気された脱イオン水中の4.4gの水溶性開始剤(V50)を加えて重合を開始させ、重合を約65℃で約3時間進行させた。
上記重合プロセスによって生成されたポリ(4−ビニルピリジン)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ポリ−2−ビニルピリジン標準)によって測定したとき、約250,000である。
残留した4−ビニルピリジン単量体の濃度は、ガスクロマトグラフィー(10%ポリエチレングリコール、2%水酸化カリウム、ガラスカラム、1/4インチの×12フィート)によって測定したとき、97ppmである。
上記プロセスによって製造された得られた流体をインキ受容性記録層の塗布に使用するために調製するには、残っているV50を破壊するように流体を約90℃に約30分間加熱した。得られた流体を約60℃に冷却した後、攪拌しながら88%乳酸水溶液72.8kgと脱イオン水1243Lを30分間かけて加え、その間は溶液を約60℃に維持してポリ(4−ビニルピリジン)を可溶化させ、次いで、室温に冷却した。
この参考例で報告されたデータから理解されるように、重合プロセスから得られた流体の中には認め得る残留4−ビニルピリジン単量体が残っていない、すなわち、0.01重量%未満であり、それは先に挙げた米国特許第3,507,846号に報告されたデータと比べるとビニルピリジン単量体が一般に約10倍も低減される結果となる。この低減は水溶性開始剤の水中溶解度に由来し得る均質開始と、本発明の重合プロセスにおいて選択された4−ビニルピリジン単量体の量とに起因すると考えられる。
参考例8)
この参考例は、親水性重合体シートの中に使用するための混合ポリ(ビニルアルコール)/ポリ(4−ビニルピリジン)溶液を製造するのに好ましい別のプロセスを例証する。
2.6kgのポリビニルアルコール(エアボル(Airvol)540、部分加水分解されている)を、窒素下で約95℃の脱気された脱イオン水41kgの中に可溶化した。
このポリビニルアルコール溶液に、1.37kgの4−ビニルピリジン単量体(レイリー インダストリーズ社)を加え、そして温度を65℃に上げた。
次に、この、ポリ(ビニルアルコール)と4−ビニルピリジン単量体を含有している溶液に、730gの脱気された脱イオン水の中の44gの水溶性開始剤(V50)を加えて重合を開始させ、重合を約65℃で約3時間進行させた。
上記重合プロセスによって生成されたポリ(4−ビニルピリジン)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ポリ−2−ビニルピリジン標準)によって測定したとき、約215,000である。
残留した4−ビニルピリジン単量体の濃度は、上記参考例7におけると同じ仕方のガスクロマトグラフィーによって測定したとき、42ppmである。
上記プロセスによって生成された得られた流体をインキ受容性記録層の塗布に使用するために調製するには、残っているV50を破壊するように流体を約90℃に約30分間加熱した。得られた流体を約60℃に冷却した後、攪拌しながら88%酢酸水溶液565gと脱イオン水1kgを30分間かけて加え、その間は溶液を約60℃に維持してポリ(4−ビニルピリジン)を可溶化させ、次いで、室温に冷却した。
この参考例で報告されたデータから理解されるように、重合プロセスから得られた流体の中には認め得る残留4−ビニルピリジン単量体が残っていない、すなわち、0.01重量%未満である。
参考例9)
この参考例は上記参考例7で製造した混合重合体溶液を使用して本発明の親水性重合体シートを製造し印刷することを例証する。
下記成分から分散物をつくった;重量部はどれも乾燥固体基準で引用されている:
重量部
非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)(エアボル350) 20.0*
ポリ(4−ビニルピリジン) 10.0*
アセトアセチル化ポリ(ビニルアルコール)(Z200) 39.0
ポリ(ビニルピロリドン) 27.5
シリカゲル 2.0
ジエポキシ架橋結合剤 0.3
酢酸 1.0
界面活性剤(プルラファックC17) 0.2
*非誘導体化ポリ(ビニルアルコール)及びポリ(4−ビニルピリジン)は上記参考例7に記載したように製造した混合溶液の形態で添加された。
水に、混合ポリ(ビニルアルコール)/ポリ(4−ビニルピリジン)溶液と、Z200の水溶液を加え、そして空気駆動ミキサーで30分間混合した。次いで界面活性剤、シリカゲル及びポリ(ビニルピロリドン)を加え、そして得られた混合物をさらに30分間混合して塗布に適する分散物を生じた。
こうして製造した分散物を7.6ミルのポリクラッドフォトペーパーの上に、No.24のマイヤーロッドを使用して4.2g/m2の被覆量で塗布し、そしてこのコーテッドシートをオーブンで80℃で10分間乾燥した。この乾燥されたインキジェット記録用シートは、ヒューレット パッカード デスクジェット(Hewlett Packard Deskjet)(登録商標)693Cプリンターを使用して試験され、そして最小のインキ広がりとこすれ汚れをもった優れた色像を与えることが判明した。この印刷されたシートは通常の銀ハライド系写真印画紙のそれによく似た光沢及び感触をも有していた。耐水堅牢度を試験するために、シアン、マゼンタ及び黄色の印刷像を脱イオン水のビーカーの中に3分間入れ、取り出し、10秒間振ってから、水の中に戻して更に2分間置いた。この洗浄されたサンプルを乾燥した後に、シアン、マゼンタおよび黄色の色濃度を、米国ミシガン州グランドビル(Grandville)に在るX−ライト社(X-Rite,Inc.)によって供給され適切なフィルターを装備したX−ライト310写真濃度計を使用して記録した。浸漬の前及び後の乾燥像の光学濃度は次の通りであった:
シアン光学濃度 マゼンタ光学濃度 黄色光学濃度
浸漬前 1.64 2.10 1.84
浸漬後 1.52 2.09 1.08
これらデータはインキ受容層におけるインキの耐水堅牢度が良好であることを表している。

Claims (6)

  1. インキジェット記録用シートであって、このインキジェット記録用シートは、インキ受容層を担持する支持体を備えており、このインキ受容層は、親水性重合体と、式
    Figure 0004410827
    のポリ(ビニルベンジル第四アンモニウム塩)とを含んでおり、上記式中、Xは、式
    Figure 0004410827
    であり、Yは、式
    Figure 0004410827
    であり、Zは、式
    Figure 0004410827
    であり、R1、R2、R3、R4、R5及びR6の各々は独立に、炭素原子1〜4個のアルキルであり、R7、R8及びR9の各々は独立に、炭素原子1〜18個のアルキルであり、R7とR8とR9の炭素原子の総数が13〜20であり、各M-はアニオンであり、a、b及びcの各々はそれぞれの反復単位のモル比率であり、前記親水性重合体と前記ポリ(ビニルベンジル第四アンモニウム塩)との重量比が、前記ポリ(ビニルベンジル第四アンモニウム塩)1重量部に対し、前記親水性重合体が3〜15重量部であるインキジェット記録用シート。
  2. 前記ポリ(ビニルベンジル第四アンモニウム塩)は、R7が少なくとも11個の炭素原子を含有するアルキル基であり、R8及びR9の各々がメチル基である請求項1のインキジェット記録用シート。
  3. 1、R2及びR3の各々がメチル基であり、R4、R5及びR6の各々がエチル基であり、R7がドデシル基である請求項のインキジェット記録用シート。
  4. 前記ポリ(ビニルベンジル第四アンモニウム塩)は、aとbとcのモル比率が5〜10:5〜10:1である請求項のインキジェット記録用シート。
  5. 前記親水性重合体がポリ(ビニルアルコール)である請求項1のインキジェット記録用シート。
  6. 前記ポリ(ビニルベンジル第四アンモニウム塩)1重量部に対し、前記親水性重合体が5〜8重量部である請求項のインキジェット記録用シート。
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