JP3436107B2 - インクジェット記録シート及びその製造方法 - Google Patents

インクジェット記録シート及びその製造方法

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JP3436107B2 JP32436397A JP32436397A JP3436107B2 JP 3436107 B2 JP3436107 B2 JP 3436107B2 JP 32436397 A JP32436397 A JP 32436397A JP 32436397 A JP32436397 A JP 32436397A JP 3436107 B2 JP3436107 B2 JP 3436107B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水性インクを使用
するインクジェットプリンター用の記録シートに関し、
特に、透明性が必要とされるOHPシートに適したイン
クジェット記録シートに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、コンピューターなどの出力用とし
て、ワイヤードット記録方式、感熱発色記録方式、溶融
熱転写記録方式、昇華記録方式、電子写真方式、インク
ジェット記録方式などの種々の方式が開発されている。
この中でインクジェット記録方式は、記録用シートとし
て普通紙を使用できること、ランニングコストが安価な
こと、ハードウェアがコンパクトで安価なことから、パ
ーソナルユーズに適した記録方式として認知されてい
る。さらに近年、フルカラー化及び高解像度化が達成さ
れたことによりカラー画像の手軽な出力手段としても注
目され、広く普及しつつある。
【0003】オーバーヘッドプロジェクター(以下OH
Pと略す)は会議、講演会などに広く使用されるが、近
年OHPにおいてもカラー表示の要望が強く、このた
め、OHP用のインクジェット記録シートが検討されて
いる。OHP用の記録シートはポリエチレンテレフタレ
ートなどの透明フィルムに透明なインク受容層を設けた
ものが使用される。インクジェット記録方式では、染
料、有機溶媒、添加剤等を水に溶解したインクが使用さ
れるため、OHP用の記録シートは透明フィルムにポリ
ビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セル
ロース誘導体、ゼラチンなどの水溶性高分子によるイン
ク受容層を設けたものが多く、かつ実際に市販されてい
る。
【0004】インク受容層に要求される性質としては、
精細な文字又は画像を再現できること、画像の色濃度が
高く、かつ色調に偏りがないこと、印字後素早く乾燥す
ること、印字した画像が保存期間中に劣化しないこと、
積層状態で保存してもブロッキングを生じないことなど
が要求される。
【0005】また、高湿度条件で粘着性が生じたり、水
と接触した場合に印字面が溶解してしまったり、印字さ
れた文字や画像が滲んだりしないように耐水性が高いこ
とも必要である。耐水性をインク受容層に付与すること
はかなり困難な課題であって、上記した水溶性高分子に
よるインク受容層は、元来水溶性であるから、耐水性は
全くない。耐水性を高めるために架橋剤を用いて水溶性
高分子を架橋することは一般的に行われている技術であ
る。しかし本発明者らの検討結果によれば、水溶性高分
子を架橋して水に不溶とすることによって、耐水性を付
与しようと試みても、インクを吸収しなくなって画質が
極端に悪化する傾向があることがわかった。画質を保つ
ためには架橋を弱くする必要があり、その結果、耐水性
は不十分なものとなった。この現象はどのような架橋剤
を用いようとも同様の結果であった。
【0006】架橋によらずにインク受容層に耐水性を付
与する方法もいくつか提案されている。例えば特開昭5
7−102391号公報では、親水性高分子と親油性高
分子を混合する方法が提案されているが、親水性高分子
と親油性高分子が相溶しにくいためにインク受容層の透
明性が悪くなるという問題がある。また特公平5−23
597号公報ではポリビニルアセタールからなることを
特徴とするインクジェット記録シート用樹脂が開示され
ている。この方法では、同一の高分子鎖の中に、親水性
の官能基と親油性の官能基が導入されているため、特開
昭57−102391号公報の場合のような相溶性の問
題はなく、透明でありかつ耐水性が高いインク受容層が
得られるという特徴がある。しかしこのインクジェット
用樹脂は水溶性ではないため、水と有機溶媒の混合物に
溶解して塗工しなければならないという欠点があり、ま
たインクの乾燥時間が比較的長いという問題もある。
【0007】また電子線や紫外線などの活性エネルギー
線を用いる方法も提案されている。例えば特開平1−2
29685号公報では水溶性樹脂、ポリエチレングリコ
ールジ(メタ)アクリレート、及び水を必須成分とする
組成物を活性エネルギー線で架橋させた耐水性の高い受
容層を有するインクジェット記録シートが提案されてい
る。また特開昭62−94380号公報では光重合性二
重結合を有するカチオン系合成樹脂を含む樹脂組成物を
活性エネルギー線で硬化させた受容層を設けたインクジ
ェット記録シートが開示されている。さらに特開平1−
286886号公報では電離放射線硬化型の親水性モノ
マー又は/及び親水性オリゴマーの溶液を溶媒を含んだ
状態で電離放射線を照射することにより硬化させた受容
層を有するインクジェット記録シートが示されている。
これらの従来技術に共通することは活性エネルギー線に
よりラジカル重合する二重結合を含む組成物を基材シー
トに塗工後、活性エネルギー線を照射して重合及び架橋
を行って受容層を形成するものである。確かにこれらの
方法では耐水性に富む受容層が得られるが、インクジェ
ットプリンターで印字した場合の画質が劣るという欠点
がある。その理由としては架橋密度が高くなりやすいこ
と、及び重合時間が短いために高分子量のポリマーが生
成しにくいためと推定される。
【0008】二重結合を含まない樹脂組成物を活性エネ
ルギー線で照射して架橋することにより、耐水性の高い
受容層を形成する試みも知られている。例えば特開平7
−81211号公報では水溶性ポリマーのみを含む溶液
を基材シートに塗工し乾燥後、電子線を照射して受容層
を形成する実施例が含まれている。しかしながら本発明
者等の検討結果では10Mrad程度の少ない電子線照
射量で架橋し、水不溶性となる水溶性樹脂はごく種類が
限られていること、十分に架橋を行う場合にはラジカル
反応性の親水性モノマーを併せて用いたり、水溶性ポリ
マー中にラジカル反応性不飽和基を導入する必要がある
ことがわかった。また特開平8−267905号公報に
は基材シート上にポリビニルピロリドンと水性電子線硬
化型化合物を主成分とする電子線硬化した内層を設け、
その上にポリアルキレンオキシド系水溶性高分子の水溶
液を塗工後、乾燥しないうちに電子線を照射し乾燥させ
て外層を設けた二層構成の受容層が含まれている。この
方法では耐水性が高く、画質が良好なインクジェット記
録シートが得られるものの、塗工と電子線照射を2回行
わなければならず生産性が低いという欠点がある。ま
た、ポリアルキレンオキシドは画像の「にじみ」という
問題もある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、水性
インクを使用するインクジェットプリンター用の記録シ
ートにおいて、上記した従来技術が有している欠点を改
善し、耐水性に優れ、かつインク乾燥性、画質などにも
優れ、にじみが少なく、さらに透明性が必要とされるO
HPシートに適したインクジェット記録用シートを提供
しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明は以下の構成を採用する。即ち、本発明の第
1の発明は「ラジカル重合性の不飽和結合を有さず、か
つ水溶液に電子線を照射することによりハイドロゲルを
形成する水溶性樹脂であり、且つポリビニルアルコー
ル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリ
アクリロイルモルホリン、水溶性ポリビニルアセター
ル、ポリ−N−ビニルアセトアミド、ヒドロキシエチル
セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセ
ルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒド
ロキシエチルメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、
のそれぞれのカチオン性誘導体から選ばれる一種以上の
水溶性樹脂の水溶液を基材シートに塗布し、電子線を照
射してハイドロゲルを形成させた後に乾燥させることを
特徴とする、インクジェット記録シートの製造方法」で
ある。
【0011】
【0012】また、本発明の第2の発明は、第1の発明の
方法により製造され、かつ、基材シートが透明であるこ
とを特徴とするインクジェット記録シートである。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明者らは、インク乾燥性、画
質、さらに透明性を損なうことなく、高い耐水性をイン
ク受容層に付与する方法を種々検討した。その結果、水
溶性樹脂の乾燥塗膜に電子線を照射しても、耐水性はほ
とんど改善されないが、水溶液に電子線を照射するとハ
イドロゲルを形成する特定の種類の水溶性樹脂が存在す
ること、及びそのハイドロゲルを乾燥すると耐水性が高
く、かつ画質も良好なインク受容層が得られることを見
いだし、本発明を完成させるに至った。また本発明では
ハイドロゲルを形成する水溶性樹脂がカチオン性である
ため、インク中の染料がカチオン基と静電気的に反応し
て定着されるので、紙への裏写りが少なく、水に浸漬し
ても染料が水に溶出しないという優れた特徴が得られ、
インクジェット記録用シートとして好都合であることが
わかった。
【0014】本発明に使用される水溶性樹脂は、ラジカ
ル重合性の不飽和結合を有さず、かつ水溶液に電子線を
照射することによりハイドロゲルを形成する前記水溶性
樹脂である。水溶性樹脂水溶液に電子線を照射したとき
にハイドロゲルを形成するか、形成しないかは分子構造
によって決まるものと思われるが、現在のところ規則は
見いだされていない。ハイドロゲルを形成する前記水溶
性樹脂の中でインクジェット記録適性および耐水性に優
れ、インクの「にじみ」が少ないものは下記のものであ
る。即ち、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリド
ン、ポリアクリルアミド、ポリアクリロイルモルホリ
ン、水溶性ポリビニルアセタール、ポリ−N−ビニルア
セトアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシ
プロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプ
ロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセル
ロース、ゼラチン、カゼインのそれぞれのカチオン性誘
導体である。上記の中から水溶性樹脂を単独であるいは
二種類以上の混合物として使用することができる。
【0015】上記の水溶性樹脂の誘導体は特に限定する
ものではないが、各種のモノマーが共重合やグラフト重
合された誘導体や、樹脂が有している水酸基、アミノ
基、アミド基、カルボキシル基を例えばエーテル化、エ
ステル化、アミド化、アセタール化して得られる誘導
体、及び架橋剤により部分的に架橋された誘導体などを
例示することができる。
【0016】本発明に使用できるカチオン性水溶性樹脂
の例としてはカチオン性ポリビニルアルコール、カチオ
ン性ポリビニルピロリドン、カチオン性ポリアクリルア
ミド、カチオン性ポリアクリロイルモルホリン、カチオ
ン性水溶性ポリビニルアセタール、カチオン性ポリ−N
−ビニルアセトアミド、カチオン性ヒドロキシエチルセ
ルロース、カチオン性ヒドロキシプロピルセルロース、
カチオン性メチルセルロース、カチオン性ヒドロキシプ
ロピルメチルセルロース、カチオン性ヒドロキシエチル
メチルセルロースが挙げられる。
【0017】本発明に使用する水溶性樹脂およびそれら
の誘導体の好ましい分子量は高分子の種類毎に異なるの
で一概にいえないが、例えば1万〜100万である。
【0018】カチオン性ポリビニルアルコールはインク
吸収性が良いので本発明に好適に用いられるが、けん化
度が高いと結晶化によってインクを吸収しないのでけん
化度の選択は非常に重要である。好ましいカチオン性ポ
リビニルアルコールは冷水に易溶の部分けん化型のもの
であって、けん化度は70〜91%が望ましい。
【0019】逆にいくら電子線照射量を増やしてもハイ
ドロゲルを形成しない水溶性樹脂も存在し、例えばポリ
ビニルメチルエーテル、ポリエチレンイミン、カルボキ
シメチルセルロース、キトサンが挙げられる。
【0020】ラジカル重合性の不飽和結合を有さず、か
つ水溶液に電子線を照射することによりハイドロゲルを
形成する前記水溶性樹脂を主成分として含有する水性組
成物には必要に応じ、各種の補助材料を添加することが
できる。ただし従来技術記載の理由により活性エネルギ
ー線によりラジカル重合する二重結合を含む組成物を除
く。例えばインク中の染料を不溶化して、インク受容層
に定着させる目的で各種のカチオン性物質、例えばカチ
オン性樹脂やアルミナゾルなどを配合することは特に好
ましい。また、消泡剤を混合して塗工時の作業性を向上
したり、プラスチックフィルムの濡れ性を良くして均一
なインク受容層を得るために界面活性剤を配合すること
もできるし、シートのブロッキング防止やプリンターの
通紙性向上のため、デンプンや合成樹脂粒子を混合して
も良い。
【0021】さらには、透明性を損なわない微細粒子、
例えばコロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、エマル
ジョン、ラテックスを混合することもできるし、OHP
シートを目的とせず、インク受容層が透明でなくても差
し支えない場合には、各種の無機または有機の填料また
は顔料を配合しても良い。例えば、シリカ、アルミナ、
水酸化アルミナ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、二
酸化チタン、ゼオライト、酸化亜鉛、硫酸バリウムなど
が例示される。これらによりインク吸収性を更に優れた
ものとしたり、表面の光沢を調整することができる。た
だし、従来技術記載の理由により活性エネルギー線によ
りラジカル重合する二重結合を含む組成物を除く。
【0022】基材シートとしては、OHPシート等の光
透過性記録媒体として用いる態様では、透明性が優れて
いるプラスチックフィルムを用いることが望ましく、例
えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、
ポリカーボネート、ポリイミド、セルローストリアセテ
ート、セルロースジアセテート、ポリエチレン、ポリプ
ロピレン等のフィルムが例示できる。
【0023】またOHPシートを目的としない記録媒体
では基材シートとしては上質紙、中質紙、コート紙、ア
ート紙、キャストコート紙、板紙、合成樹脂ラミネート
紙、金属蒸着紙、合成紙、白色フィルム等の不透明基材
も使用することができる。この場合、本発明による記録
層は透明度が高いため高い色濃度を示し、かつ光沢に優
れたインクジェット用記録シートを得ることができる。
【0024】これらの基材シートはその表面に形成する
インク受容層との接着力が不十分な場合には下引き層を
施したり、コロナ放電処理などの各種の易接着処理を施
すことができる。基材シートの厚さはプリンターの通紙
性を考慮すると50〜500μmが好ましい。
【0025】塗工方法としては公知の塗布手段、例えば
バーコーティング法、ロールコーティング法、ブレード
コーティング法、エアーナイフコーティング法、グラビ
アコーティング法、ダイコーティング法、カーテンコー
ティング法などを用いることができる。
【0026】塗布量は乾燥後の重量として1〜50g/
2程度が望ましく、さらに好ましくは3〜20g/m2
程度である。ここで1g/m2より少ないとインクの吸
収が不十分となりやすく、50g/m2以上になるとカ
ールが発生しやすくなるし、コストもかさむので望まし
くない。
【0027】電子線の照射方式としては、例えばスキャ
ニング方式、カーテンビーム方式、ブロードビーム方式
などが採用され、電子線を照射する際の加速電圧は10
0〜300kV程度が適当である。電子線の照射量は
0.1〜20Mrad程度の範囲で調節するのが好まし
い。0.1Mrad未満ではハイドロゲルを形成するの
に不十分であり、20Mradを越えるような照射は水
溶性樹脂の着色や基材の劣化をもたらす恐れがあるため
好ましくない。
【0028】本発明においては特定の水溶性樹脂を含有
する水溶液を基材シートに塗布し、次いで電子線を照射
する。電子線の作用により水溶性樹脂の架橋反応が起こ
り、流動性の無いゼリー状の状態、すなわちハイドロゲ
ルとなる。このハイドロゲルを乾燥することにより耐水
性が高く、且つ画質に優れたインク受容層が得られる。
【0029】電子線照射時の水溶性樹脂の濃度は重要で
あって2〜50%が適当であり、さらに好ましくは3〜
30%である。ハイドロゲルが形成されるためには水溶
性樹脂の分子が互いに接触していることが必要条件であ
るので、濃度が高いほど、または分子量が高いほど高分
子鎖の重なり度合いが増えるのでハイドロゲルを形成し
やすい。濃度が2%未満であると非常に高分子量の水溶
性樹脂でないとハイドロゲルを形成しにくいし、たとえ
ハイドロゲルが形成されたとしても、インク吸収に必要
な塗布量を得るためには多量の水溶性樹脂水溶液を塗布
し、かつ多量の水を蒸発させなければならないので現実
的ではない。逆に濃度が高いと本発明の効果が小さくな
り画質が悪化する恐れもある。
【0030】本発明によって耐水性に優れ、かつインク
乾燥性、画質にも優れたインク受容層が得られる原理は
以下のように考えられる。水溶性高分子をインク受容層
とした場合に耐水性を高めるため、架橋剤を混合し、加
熱して架橋することで耐水性を高めることは一般的な技
術であるが、インクを吸収しなくなって画質が極端に悪
化する傾向があることは前述した通りである。このよう
な現象は水溶性高分子の架橋剤による架橋反応が水分の
ない乾燥した塗膜中で起こることに原因があると推定し
ている。架橋剤の反応は高温でないと、事実上起こらな
いため、水溶性高分子と架橋剤の混合水溶液を基材シー
トに塗工し、次いで高温のドライヤーを通すことによっ
て、水分を蒸発させ、次いで架橋反応を行わせる。水溶
液中では高分子は広がった分子形態をしているが、水分
のない乾燥した状態では高分子は収縮した分子形態をと
り、それが複雑に絡み合い、高分子の種類によっては部
分的に結晶化している。乾燥した状態で架橋すること
は、収縮し、絡み合い、部分的に結晶化した状態をいわ
ば“固定”することであり、水と接触しても広がった分
子形態に戻ることができないので水性インクを吸収でき
ず、画質が悪化する。それに対し、本発明の好ましい態
様では、高分子鎖が広がった水溶液状態で架橋が起こる
ため、水溶液状態の分子形態が“固定”され、乾燥後に
水と接触すると元の水溶液状態の分子形態に戻ろうとし
て、水を素早く吸収することができる。即ち、本発明に
よるインク受容層は通常の架橋剤による架橋とは網目構
造が異なるものと推定される。
【0031】
【実施例】以下、本発明を実施例を挙げて具体的に説明
するが、もとより本発明は、これらの実施例によって限
定されるものではない。
【0032】<実施例1>1リットルビーカーに水36
0gを入れ、けん化度86.0〜91.0%、重合度1
800のカチオン性ポリビニルアルコール((株)クラ
レ製CM−318)40gを加え、室温でゆっくり撹拌
して完全に溶解させて、濃度10%の水溶液とした。厚
さ100μの透明ポリエチレンテレフタレートフィルム
((株)東レ製ルミラー100−Q80D)上にこのカ
チオン性ポリビニルアルコール水溶液を乾燥重量で10
g/m2になるようにバー塗工した。これを直ちに電子
線照射装置(ESI社製エレクトロカーテン)により加
速電圧175kV、照射線量5Mradの電子線を照射
した。照射後の塗工面に触ったところカチオン性ポリビ
ニルアルコール水溶液はゼリー状の固体となっておりハ
イドロゲルとなったことがわかった。これを130℃の
温度で乾燥して、インクジェット記録用シートを得た。
このインクジェット記録用シートの耐水性、画質、及び
乾燥性を以下に示す方法で試験し、結果を表1に示し
た。また目視にて透明性を評価したが良好であった。
【0033】受容層の耐水強度、画質、及びインク乾燥
性の試験法 <受容層の耐水強度>試験用シートの表面に水を1ミリリッ
トル滴下し、指で強くこすって塗膜が剥がれて基材シート
表面が露出するまでの時間を測定し、次の5段階に評価
した。 5点: 5分以上 4点: 2分以上5分未満 3点: 10秒以上2分未満 2点: 10秒未満 1点: 水溶性
【0034】<画質>試験用シートにインクジェットプ
リンター(EPSON製、PM700C)でシアン、マ
ゼンタ、イエロー、及びブラックの各色でベタ印字(専
用OHPシート印刷モード)を行って印字濃度の均一性
を目視で次の4段階に評価した。 4点: 小さい濃度ムラがあるのみ 3点: 中位の濃度ムラがある 2点: 大きな濃度ムラがある 1点: インクをはじく
【0035】<インク乾燥性>試験用シートにインクジ
ェットプリンター(EPSON製、PM700C)でシ
アン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの各色でベタ
印字(専用OHPシート印刷モード)を行い、PPC用
紙を手で押し当てて、インクの転写の有無を調べ、転写
が無くなるまでの時間を測定し、各色の平均値を計算し
て、次の4段階に評価した。 4点: 1分以上3分未満 3点: 3分以上5分未満 2点: 5分以上10分未満 1点: 10分以上
【0036】<比較例1>1リットルビーカーに水36
0gを入れ、けん化度78.0〜81.0%、重合度2
000のポリビニルアルコール((株)クラレ製PVA
−420)40gを加え、室温でゆっくり撹拌して完全
に溶解させて、濃度10%の水溶液とした。厚さ100
μの透明ポリエチレンテレフタレートフィルム上にこの
ポリビニルアルコール水溶液を乾燥重量で10g/m2
になるようにバー塗工した。直ちに実施例1と同様に加
速電圧175kV、照射線量5Mradの電子線を照射
した。電子線照射後のポリビニルアルコール水溶液はゼ
リー状のハイドロゲルとなっていた。これを130℃の
温度で乾燥して、インクジェット記録用シートを得た。
このインクジェット記録用シートの耐水性、画質、及び
乾燥性を試験し、結果を表1に示した。また目視にて透
明性を評価したが良好であった。
【0037】<実施例2>カチオン性ポリビニルピロリ
ドン20%水溶液(ビーエーエスエフジャパン(株)製
Luviquat HM 552、分子量80万、ビニル
イミダゾリウムメトクロライド・ビニルピロリドン共重
合体)150gに水50gを加え、室温でゆっくり撹拌
して濃度15%に希釈した。厚さ100μの透明ポリエ
チレンテレフタレートフィルム上にこのカチオン性ポリ
ビニルピロリドン水溶液を乾燥重量で10g/m2にな
るようにバー塗工した。直ちに実施例1と同様に加速電
圧175kV、照射線量5Mradの電子線を照射し
た。電子線照射後のカチオン性ポリビニルピロリドン水
溶液はゼリー状のハイドロゲルとなっていた。これを1
30℃の温度で乾燥して、インクジェット記録用シート
を得た。このインクジェット記録用シートの耐水性、画
質、及び乾燥性を試験し、結果を表1に示した。また目
視にて透明性を評価したが良好であった。
【0038】<比較例2>1リットルビーカーに水36
0gを入れ、ポリビニルピロリドン(和光純薬工業株式
会社製、分子量36万)を加え、室温でゆっくり撹拌し
て完全に溶解させて、濃度10%の水溶液とした。厚さ
100μの透明ポリエチレンテレフタレートフィルム上
にこのポリビニルピロリドン水溶液を乾燥重量で10g
/m2になるようにバー塗工した。直ちに実施例1と同
様に加速電圧175kV、照射線量5Mradの電子線
を照射した。電子線照射後のポリビニルピロリドン水溶
液はゼリー状のハイドロゲルとなっていた。これを13
0℃の温度で乾燥して、インクジェット記録用シートを
得た。このインクジェット記録用シートの耐水性、画
質、及び乾燥性を試験し、結果を表1に示した。また目
視にて透明性を評価したが良好であった。
【0039】<比較例3>1リットルビーカーに水34
8gを入れ、ゼラチン(宮城化学工業(株)製アルカリ
処理ゼラチンP487)52gを加え、80℃でゆっく
り撹拌して完全に溶解させ、濃度13%の水溶液とし
た。厚さ100μの透明ポリエチレンテレフタレートフ
ィルム上に80℃のゼラチン水溶液を乾燥重量で10g
/m2になるようにバー塗工した。直ちに実施例1と同
様に加速電圧175kV、照射線量5Mradの電子線
を照射した。電子線照射後のゼラチン水溶液は寒天状の
ハイドロゲルとなっていた。これを130℃の温度で乾
燥して、インクジェット記録用シートを得た。このイン
クジェット記録用シートの耐水性、画質、及び乾燥性を
試験し、結果を表1に示した。また目視にて透明性を評
価したが良好であった。
【0040】<比較例4>1リットルビーカーに水65
gを入れ、カゼイン(和光純薬工業株式会社製)30g
を加え、室温でゆっくり20分撹拌した。次に水65g
と28%アンモニア水6gを加え、撹拌しながらウォー
ターバスで70℃に昇温して、完全に溶解するまで撹拌
を続けた。完全に溶解してから水34gを追加して、濃
度15%の水溶液とした。厚さ100μの透明ポリエチ
レンテレフタレートフィルム上にこのカゼイン水溶液を
乾燥重量で10g/m2になるようにバー塗工した。直
ちに実施例1と同様に加速電圧175kV、照射線量5
Mradの電子線を照射した。電子線照射後のカゼイン
水溶液はゼリー状のハイドロゲルとなっていた。これを
130℃の温度で乾燥して、インクジェット記録用シー
トを得た。このインクジェット記録用シートの耐水性、
画質、及び乾燥性を試験し、結果を表1に示した。また
目視にて透明性を評価したが良好であった。
【0041】<比較例5〜12>実施例1、2、比較例
1〜4において水溶性樹脂を塗工後、130℃の温度で
乾燥してから加速電圧175kV、照射線量5Mrad
の電子線を照射した試料を作成し、比較例5〜12とし
た。このインクジェット記録用シートの耐水性、画質、
及び乾燥性を試験し、結果を表1に示した。
【0042】<比較例11>1リットルビーカーに水3
60gを入れ、カルボキシメチルセルロース(第一工業
製薬(株)製セロゲン7A)40gを加え、室温でゆっ
くり撹拌して完全に溶解させ、濃度10%の水溶液とし
た。厚さ100μの透明ポリエチレンテレフタレートフ
ィルム上にこのカルボキシメチルセルロース水溶液を乾
燥重量で10g/m2になるようにバー塗工した。直ち
に加速電圧175kV、照射線量10Mradの電子線
を照射した。照射後の塗膜に触ってみたところ液体のま
までありハイドロゲルになっていないことがわかった。
これを130℃の温度で乾燥して、比較例11とした。
このインクジェット記録用シートの耐水性、画質、及び
乾燥性を試験し、結果を表1に示した。
【0043】<比較例12>実施例1で用いたカチオン
性ポリビニルアルコール((株)クラレ製CM318)
の10%水溶液100gに耐水化剤(架橋剤)として住
友化学(株)のSumirez Resin 5004
(濃度45%)を0.444g(対PVA添加率2%)
混合し、実施例1と同様に透明ポリエチレンテレフタレ
ートフィルム上に乾燥重量で10g/m2になるように
バー塗工した。これを130℃の温度で乾燥すると同時
に架橋を行って、インクジェット記録用シートを得た。
このインクジェット記録用シートの耐水性、画質、及び
乾燥性を試験し、結果を表1に示した。
【0044】
【表1】
【0045】表1の実施例1、2から明らかなように、
前記水溶性樹脂を含む水溶液を基材シートに塗工後、電
子線を照射してハイドロゲルとしたのち、乾燥させた場
合には、耐水性が良好にも拘わらず、画質及び乾燥性も
良好であり、インクジェット記録用シートとして品質の
良いものであった。実施例1及び実施例2のようにカチ
オン性の水溶性樹脂を用いた場合には、カチオン性でな
い水溶性樹脂を用いた場合(比較例1及び比較例2)よ
りインク乾燥性が改善され、好ましい品質であった。
【0046】しかし比較例5〜12のように乾燥してか
ら電子線を照射した場合には水溶性のままであり耐水性
が付与されなかった。また比較例11のように水溶液に
電子線を照射してもハイドロゲルとならない水溶性樹脂
の場合、水溶液に電子線を照射しても耐水性は得られな
かった。さらに実施例1で用いたカチオン性ポリビニル
アルコールを耐水化剤によって架橋して、耐水性を高め
た場合には画質及びインク乾燥性が著しく低下してしま
った(比較例12)。
【0047】
【発明の効果】本発明によるインクジェットプリンター
用記録シートは、耐水性に優れ、かつインク乾燥性、画
質などにも優れ、さらに透明性にも優れているのでOH
Pシートに好適であるばかりでなく、広範囲のインクジ
ェット記録用シートに用いることができるものである。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41M 5/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ラジカル重合性の不飽和結合を有さず、か
    つ水溶液に電子線を照射することによりハイドロゲルを
    形成する水溶性樹脂であり、且つ ポリビニルアルコー
    ル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリ
    アクリロイルモルホリン、水溶性ポリビニルアセター
    ル、ポリ−N−ビニルアセトアミド、ヒドロキシエチル
    セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセ
    ルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒド
    ロキシエチルメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、
    のそれぞれカチオン性誘導体から選ばれる一種以上の
    水溶性樹脂の水溶液を基材シートに塗布し、電子線を照
    射してハイドロゲルを形成させた後に乾燥させることを
    特徴とする、インクジェット記録シートの製造方法。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の方法により製造され、か
    つ、基材シートが透明であることを特徴とするインクジ
    ェット記録シート。
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