JP3874503B2 - 記録体用組成物および記録体 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、水溶性インクを使用するインクジェット記録用記録体に用いる組成物およびこの組成物を用いて基材表面にインク受容層を形成した記録体に関し、特に透明性を必要とされるオーバーヘッドプロジェクター(以下、これをOHPという)用および製図用記録体、広告用のバックプリント用記録体、並びに耐水性をも必要とする塩化ビニルや布帛あるいは金属板や金属箔を基材とする広告板用、ネームプレート用に適した組成物とそれを用いた記録体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、フルカラー化が容易で画像の大型化が可能であり、記録パターンの融通性も大きく、しかも印字騒音が低い等種々の特徴を有していることから、近年各種の図形やカラー画像のハードコピーに広く用いられている。
【0003】
このインクジェット記録方式では、安全性、記録適性等の観点から染料または顔料を含有する水性インクが用いられている。インク液滴はノズルから高速で噴出され、記録シート上で画像を形成するのであるが、この時、インク中の水分は記録シートに吸収された後に蒸発する。
【0004】
しかしながら、基材として用いられる材料のうち、プラスチックシートや、金属の板、箔の表面は水分を吸収する性質を有していないので、そのままインクジェット記録用の基材として用いることは不可能である。
【0005】
そこで、これらの材料を基材として用いる場合には、水分吸収性を有する水溶性樹脂等を基材の表面にインク受容層として形成させた種々の記録シートが提案されている。例えば、プラスチック基材上に水溶性樹脂であるポリビニルピロリドンやポリビニルアルコールからなるインク受容層を形成した記録シート(特開昭60−132785号公報、特開昭60−145879公報、特開昭60−220750公報、特開昭63−115779公報)、基材上に多孔質擬ベーマイト層を形成してインクの吸収性を大きくした記録シート(特開平4−263982号公報、特開平6−270530号公報)、インクの乾燥性、吸着力を高めるために水溶性高分子に多孔質充填剤を含有してインク受容層としたもの(特開平6−239016号公報)などである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記に提案された記録シートは、何れも未だインクジェット用記録シートとして満足できるものとはいえない。即ち、水溶性高分子を用いる場合には、得られるシートの表面層であるインク受容層の耐水性が不足したり、架橋剤を用いて耐水性を向上させると、インクの吸収性が低下したりして両者のバランスを取ることが難しい。
【0007】
また、水溶性高分子を用いた場合には、インク中の水分との親和性が良いために、表面の記録層(インク受容層)上にインクが噴射された時に、インクが厚み方向に水分が吸収されるよりも平面方向に早く拡がりやすく、印字のドット間で互いに混合して画像の滲みの原因となる。さらに、水分の吸収性をよくするために微小な無機充填剤を用いることも行われているが、それのみでは充分な結果が得られない。
【0008】
この発明は、上記した従来の記録シートにおける課題を解決すべく検討の結果なされたもので、特にインクの水分吸収性を保ちながら、耐水性も充分で鮮明な印字を得ることのできる記録体用組成物と、この組成物をインク受容層として基材上に形成した記録体を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明のうち請求項1記載の発明は、ケン化度20〜45モル%のポリビニルアルコール100重量部に対して分子量10,000〜400,000のポリビニルピロリドン5〜200重量部を混合した混合液にカチオン性物質およびジルコニウム化合物を添加した記録体用組成物を特徴とするものである。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1において、カチオン性物質がカチオン性界面活性剤またはカチオン性高分子物質であり、ポリビニルアルコール100重量部に対して0.1〜100重量部用いることを特徴とし、請求項3に記載の発明は、請求項1において、ジルコニウム化合物が塩基性塩化ジルコニウムまたは酢酸ジルコニウムであり、ポリビニルアルコール100重量部に対して0.1〜50重量部用いることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項4記載の発明は、ケン化度20〜45モル%のポリビニルアルコール100重量部に対して分子量10,000〜400,000のポリビニルピロリドン5〜200重量部を混合した混合液にカチオン性物質およびジルコニウム化合物を添加して得た組成物からなる皮膜をインク受容層として基材表面に形成した記録体を特徴とするものである。
【0012】
さらに、請求項4において、インク受容層を表面に形成する基材がプラスチックのフィルム状物または板状物であることを請求項5とし、インク受容層を表面に形成する基材が金属の板状物または箔であることを請求項6とし、インク受容層を表面に形成する基材が布帛であることを請求項7とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を詳細に説明する。この発明において組成物を構成する主材として用いるケン化度20〜45モル%のポリビニルアルコールとは、ポリビニルアルコールポリマー中の全酢酸ビニル基のうち、ケン化された酢酸ビニル基の割合をモル%で示した時に20〜45%のものである。
【0014】
この発明で、ケン化度が20〜45モル%と小さいポリビニルアルコールを用いるのは、次のような理由のためである。即ち、従来はケン化度が70〜90モル%と大きいポリビニルアルコールが親水性があり、水溶性のインクを吸収するのに優れている、とされている。しかしながら、親水性の大きいポリビニルアルコールは、それ自体が水に可溶性であるために、耐水性が十分ではない。耐水性を付与するために、架橋剤を用いる方法も提案されているが、ケン化度の高いポリビニルアルコールを架橋剤を用いて、しかも加熱乾燥すると、架橋とともに分子内に結晶化する部分が生じて吸水性が低下する。
【0015】
さらに、架橋により耐水化しても、ポリビニルアルコールの塗膜は水中に浸漬すると、膨潤して寸法変化が生じる。
【0016】
この発明で用いるケン化度の小さいポリビニルアルコールは、それ自体が水に対して溶解しないために耐水性がよく、さらにケン化度が小さいことから分子中に多くのカルボニル基を有するために、架橋剤と反応して架橋結合を作りやすく、一層耐水性がよくなるのである。また、架橋した塗膜は水中に浸漬しても膨潤しない。また、分子中に水酸基をも有しているために親水性も有しており、インクとのなじみも良好である。このようなケン化度の小さいポリビニルアルコールにおいて、この発明ではその重合度については特に限定するものではなく、通常のものを用いればよい。
【0017】
ポリビニルピロリドンは、得られる組成物をインク受容層とした時に、吸水性を与える目的で用いるが、その分子量としては10,000〜400,000のものが好ましい。特にインク受容層として皮膜の透明性を要する場合には、主材料であるポリビニルアルコールとの相溶性がよく、且つ吸水性をも保持させるために、40,000〜160,000の分子量のものが望ましい。その場合の両者の使用量としては、ポリビニルアルコール100重量部に対してポリビニルピロリドン5〜200重量部が適当である。
【0018】
記録体の基材として金属の板状体や箔あるいは布帛、さらには透明性に乏しいプラスチックシートを用いることからインク受容層としても透明性に乏しい皮膜でもよい場合には、上記の範囲内でポリビニルピロリドンの比率を大きくすることも可能である。何れにしても200重量部以上の使用は耐水性を低下させることになって好ましくない。また、5重量部以下ではインクの吸収性が低下する。さらに、分子量が40,000以下ではインク受容層としての皮膜中のポリビニルピロリドンが溶け出しやすくなって耐水性が不十分となる場合がある。
【0019】
この発明でカチオン性物質は、インク中の染料分子のアニオン性基と結合して水に不溶性の塩を作ることを目的として用いるのである。そのようなカチオン性物質としては、カチオン系界面活性剤や分子内にカチオン基を有する水溶性高分子物質があり、これらは単独で又は併用して用いられる。
【0020】
カチオン系界面活性剤としては、脂肪族アミン塩のほか、第4級アンモニウム塩であるアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩や、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩等が使用できる。
【0021】
分子内にカチオン基を有する水溶性高分子物質としては、変性して分子内にアミノ基またはアンモニウム塩基を導入したポリビニルアルコール、でんぷん、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどがあり、これらカチオン性物質はポリビニルアルコール100重量部に対して0.1〜100重量部、好ましくは0.4〜20重量部の使用が適当である。この使用量が0.1部より少ない場合は、耐水性の効果が少なくて印字した後に水中に浸漬すると、インクの流出が生じる。また、100部以上の使用は経済的見地から好ましくない。
【0022】
ジルコニウム化合物は、ケン化度の低いポリビニルアルコール分子中に存在するカルボニル基と架橋結合させてインク受容層として得られる皮膜の耐水性や強度を向上させる目的で架橋剤として用いるものであり、酢酸ジルコニウム、塩基性塩化ジルコニウムなどがポリビニルアルコール100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは2〜30重量部用いられる。この量が0.1部以下では架橋効果が低くて皮膜の耐水性が十分でなく、水中に浸漬した場合に皮膜が白濁したり、剥離するおそれがある。また、50部以上の使用は経済的見地から好ましくない。
【0023】
この発明において、基材としては、透明もしくは不透明な熱可塑性樹脂フィルム、セルロース誘導体フィルムまたはそれらの延伸フィルムや金属板、金属箔、布帛のほか、上記熱可塑性樹脂の板材を用いることもできる。
【0024】
熱可塑性樹脂のフィルムまたは板材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等の樹脂フィルムまたは板材等があり、これらは該表面とインク受容層との接着を改善するために、該表面上に下塗り層を施したものであってもよく、また、該表面にコロナ放電等の前処理を施したフィルムや板材を用いてもよい。
【0025】
特に、OHP用のフィルムとしては、透明性のよいポリエチレンテレフタレートやポリメチルメタクリレートフィルムで厚みが20〜200μmのものが好ましい。また、金属板または金属箔としては、鉄、銅、アルミニウム、ステンレス製の板状物あるいは箔もしくはそれらの成形物を用いることができる。
【0026】
特に、この発明で得られる組成物は、金属表面への密着性がよいので金属板または金属箔そのものの表面に塗布して用いることができるが、これらの表面に下地塗料を施した上に用いてもよい。
【0027】
この発明の組成物の調製は以下のようにして行う。即ち、ケン化度20〜45モル%のポリビニルアルコールをメタノール等の有機溶剤に溶解し、さらに分子量10,000〜400,000のポリビニルピロリドンを加えて溶解する。有機溶剤としては、メタノールのほかイソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミドが用いられる。この時、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンの使用量は、ポリビニルアルコール100重量部に対してポリビニルピロリドン5〜200重量部が適当である。そしてこの両者の混合液の濃度は10〜50%、好ましくは20〜40%が適当である。
【0028】
次に、上記混合液にカチオン性物質を溶剤に溶解して、もしくはそのまま加えて混合する。カチオン性物質の添加量はポリビニルアルコール100重量部に対して0.1〜100重量部、好ましくは0.4〜20重量部である。さらに、カチオン性物質を混合した混合液にジルコニウム化合物を加えることによって組成物が得られるが、ジルコニウム化合物は量的に多い場合は、組成物がゲル化の傾向を示すこともあるので、この組成物を基材上に塗布する直前に加えることが望ましい。
【0029】
かくして得られた組成物は減圧脱泡したのち基材上に塗布してインク受容層を形成する。塗布方法としては、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート、マイヤーバーコート、ブレードコート、ナイフコート、エアナイフコート、コンマコート、スロットダイコート、スライドダイコート、ディップコート、刷毛塗りなどの公知の塗布法によればよい。
【0030】
上記塗布法で形成される皮膜厚みは、乾燥時に5〜50μm、好ましくは10〜30μmが適当である。この厚みが5μmより薄いと、インクの吸収量が不十分となり、50μmより厚くなるとコスト高となって好ましくない。
【0031】
上記の塗布後の乾燥条件は、基材の種類や用いる組成物中に含有するジルコニウム化合物の量や溶媒、あるいは所望する皮膜厚みによって適宜決めればよいが、80〜120℃で0.5〜5分が適当である。80℃より低温では架橋反応が不十分なために皮膜の耐水性の向上に寄与せず、また120℃以上では得られたインク受容層が印字時に小さなひび割れを生じる恐れがあるほか、シートがカールするなどの不都合も生じるので好ましくない。
【0032】
このようにして得られた記録シートは、その主材の如何によっては、これを何枚も積層した場合にブロッキングを引き起こすことがある。このような恐れのある場合には、ブロッキングを防止するために、ポリビニルアルコール100重量部に対して2〜5重量部程度の無機または有機微粒子を添加するか、ステアリン酸亜鉛を少量添加すればよい。
【0033】
また、インク受容層として不透明な皮膜を得るには、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンの重量比を変えるか、分子量の大きいポリビニルピロリドンを用いればよく、また炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、マイカ、クレー、タルク、シリカ微粉末、コロイダルシリカ、ケイソウ土などの無機粒子やポリエチレン、ポリスチレン、アクリル、ウレタン等の有機微粒子などを充填剤として用いればよい。さらに、記録体の生産性、記録特性、保存安定性などを高めるために、必要により消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防黴剤や着色剤などを適宜加えることも可能である。また、皮膜を形成した記録体が湿度等の影響で曲がることを防ぐために、ポリエチレンオキサイドポリマーやグリセリン等を加えてもよい。
【0034】
【実施例】
以下、実施例によりこの発明を詳細に説明する。なお、部数は全て重量部である。
実施例1
ケン化度33〜38モル%のポリビニルアルコール(クラレ社製、LM−15)100部とポリビニルピロリドン(ドイツ、BASF社製、ルビスコールK−30、分子量40,000)100部をメチルアルコール150部とジメチルホルムアミド150部に溶解し、これにカチオン性高分子物質としてポリアクリル酸エステルの第4級アンモニウム塩(第一工業製薬社製、ハイセットCA)5部、架橋剤として塩基性塩化ジルコニウム(第一稀元素化学工業社製、ジルコゾールZC−2)10部を加えて記録体用組成物を調製した。次いで、この組成物を80μm厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製)上にバーコーターにて塗布し、120℃で3分間乾燥して皮膜厚が25μmのインク受容層を有する透明な記録シートを得た。
【0035】
上記で得た記録シートにインクジェットプリンター(キャノン社製、BCJ−420)を用いてパターンをプリントした。次に、得られた記録画像について、インクの乾燥性、画像性、耐水性および透明性の性能テストを行った。その結果は表1に示した。
【0036】
なお、各テストの評価は以下のようにして行った。
*インクの乾燥性:印字後十分以内にその表面を指で触ってみて、完全に乾燥しているものを○、少しでも指にべとつき感があるものは×として判定した。
*画像性:ドット間の混合やインクの滲みがなく、色濃度が高く、鮮明な画質が得られたものを○、多少でも滲みがみられ、画質の鮮明性に欠けるものを×として判定した。
*耐水性:記録シートを水中に1分間浸漬して皮膜の膨潤や水中へのインクのしみだしのないものを○、皮膜の膨潤や水中へのインクのしみだしが少しでも認められるものを×として判定した。
*透明性:透明なプラスチックシートを基材に用いたものについて、印字後においても透明性に変化のないものを○、やや透明性に欠けるものを△として判定した。
【0037】
実施例2
実施例1におけるポリビニルピロリドンを分子量360,000のポリビニルピロリドン(ドイツ、BASF社製、ルビスコールK−90)に変え、これをポリビニルアルコール100部に対して50部用いたほかは実施例1と同様にして記録体用組成物を得、同様にして記録画像を得た。この画像の性能テスト結果は表1に示した。
【0038】
実施例3
ケン化度33〜38モル%のポリビニルアルコール(クラレ社製、LM−15)100部とポリビニルピロリドン(ドイツ、BASF社製、ルビスコールK−30、分子量40,000)100部をメチルアルコール150部とジメチルホルムアミド150部に溶解し、これにカチオン性物質としてポリアクリル酸エステルの第4級アンモニウム塩(第一工業製薬社製、ハイセットCA)5部を加えた後、シリカ微粉末(富士シリシア化学社製、サイリシア350)15部およびタルク(三木産業社製、LMS200)150部を加え、ディゾルバーにて30分間撹拌混合した後に、塩基性塩化ジルコニウム(第一稀元素化学工業社製、ジルコゾールZC−2)10部を加えて記録体用組成物を調製した。次いで、この組成物を予め塩化ビニル−酢酸ビニル系ポリマー溶液を下塗りしてある1.5mm厚さの不透明な塩化ビニルシート基材上にバーコーターにて塗布し、80℃で5分間乾燥して皮膜厚が40μmのインク受容層を有する記録シートを得た。この記録シートについて実施例1と同様にして記録画像を作成した。そのテスト結果は表1の通りであった。
【0039】
実施例4
上記実施例3にて得た記録体用組成物を厚さ0.5mmの市販のアルミニウム箔に塗布し、120℃で3分乾燥して皮膜厚30μmの記録体を得た。この記録体について実施例1と同様にして記録画像を作成し、テストしたところ、表1の通りであった。
【0040】
実施例5
上記実施例3にて得た記録体用組成物を、目付け量100g/m2 の市販布帛に塗布し、100℃で3分乾燥して表面にインク受容層としての皮膜を有する記録体を作成した。この記録体について実施例1と同様にして記録画像を作成し、テストしたところ、表1の結果を得た。
【0041】
実施例6
実施例1のカチオン性物質を、カチオン界面活性剤であるラウリルトリメチルアンモニウムクロライド(花王社製、コータミン24P)10部に変えた以外は実施例1と同様にして組成物を調製し、さらに記録シートを作成したのち、その上に記録画像を得た。この記録画像のテスト結果は表1に示した。
【0042】
実施例7
実施例1のジルコニウム化合物を酢酸ジルコニウム(第一稀元素化学工業社製、ジルコゾールZA)25部に変えた以外は実施例1と同様にして組成物を調製し、さらに記録シートを作成したのち、その上に記録画像を得た。この記録画像のテスト結果は表1に示した。
【0043】
比較例1
実施例1におけるポリビニルピロリドン(ルビスコールK−30)の使用量を3部と減じた以外は、全て実施例1と同様にして記録体用組成物を得、また記録画像を作成し、性能テストを行った。テスト結果は表1に示した。
【0044】
比較例2
実施例1におけるジルコニウム化合物を用いない以外は全て実施例1と同様にして記録画像を作成し、そのテストを行った。その結果は表1に示した。
【0045】
比較例3
ケン化度98%のポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA117)80部と分子量360,000のポリビニルピロリドン(ドイツ、BASF社製、ルビスコールK−90)20部を水900部に溶解し、カチオン性物質(ハイセットCA)を5部加えた後、ジルコニウム化合物(ジルコゾールZC−2)10部を混合して組成物を得た。この組成物を厚さ80μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにバーコーターによって塗布し、80℃で3分間乾燥して厚さ20μmのインク受容層を有する透明な記録シートを得た。この記録シートに実施例1と同様にして得た記録画像のテストを行ったところ、表1の結果を得た。
【0046】
【表1】
【0047】
上記の表から、比較例1の記録シートはインクジェットによるプリント時にインクの吸収性が悪いため、インクの乾燥性、画像性が好ましくなく、比較例2は架橋剤を用いていないことから、インク受容層としての皮膜は耐水試験において、1分間の水中浸漬で白濁して不透明となり、指で擦ると皮膜の一部剥離が認められた。また、比較例3はケン化度の大きいポリビニルアルコールを主成分としたものであるので、インクの乾燥性、画像性、透明性は良好であったが、1分間の水中浸漬で皮膜が膨潤して耐水性が不良であった。
【0048】
これに対して、この発明の組成物を用いた実施例1〜7においては、実施例2の記録シートが透明性にやや欠ける結果を示した以外は、インクの乾燥性、画像性、耐水性、透明性全てについて良好であった。なお、実施例2〜4は使用した基材が不透明であるので、透明性テストは対象外とした。
【0049】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明は20〜45モル%の低いケン化度のポリビニルアルコールを主材料とし、これに高分子量のポリビニルピロリドンとカチオン性物質、さらに架橋剤としてジルコニウム化合物を配合した組成物であり、この組成物を用いてインク受容層を形成したインクジェット記録用記録体は、水性インクを使用するインクジェット記録において、インク乾燥性、画像性にすぐれ、耐水性が良好で、鮮明な画像を得ることができるのである。
【発明の属する技術分野】
この発明は、水溶性インクを使用するインクジェット記録用記録体に用いる組成物およびこの組成物を用いて基材表面にインク受容層を形成した記録体に関し、特に透明性を必要とされるオーバーヘッドプロジェクター(以下、これをOHPという)用および製図用記録体、広告用のバックプリント用記録体、並びに耐水性をも必要とする塩化ビニルや布帛あるいは金属板や金属箔を基材とする広告板用、ネームプレート用に適した組成物とそれを用いた記録体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、フルカラー化が容易で画像の大型化が可能であり、記録パターンの融通性も大きく、しかも印字騒音が低い等種々の特徴を有していることから、近年各種の図形やカラー画像のハードコピーに広く用いられている。
【0003】
このインクジェット記録方式では、安全性、記録適性等の観点から染料または顔料を含有する水性インクが用いられている。インク液滴はノズルから高速で噴出され、記録シート上で画像を形成するのであるが、この時、インク中の水分は記録シートに吸収された後に蒸発する。
【0004】
しかしながら、基材として用いられる材料のうち、プラスチックシートや、金属の板、箔の表面は水分を吸収する性質を有していないので、そのままインクジェット記録用の基材として用いることは不可能である。
【0005】
そこで、これらの材料を基材として用いる場合には、水分吸収性を有する水溶性樹脂等を基材の表面にインク受容層として形成させた種々の記録シートが提案されている。例えば、プラスチック基材上に水溶性樹脂であるポリビニルピロリドンやポリビニルアルコールからなるインク受容層を形成した記録シート(特開昭60−132785号公報、特開昭60−145879公報、特開昭60−220750公報、特開昭63−115779公報)、基材上に多孔質擬ベーマイト層を形成してインクの吸収性を大きくした記録シート(特開平4−263982号公報、特開平6−270530号公報)、インクの乾燥性、吸着力を高めるために水溶性高分子に多孔質充填剤を含有してインク受容層としたもの(特開平6−239016号公報)などである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記に提案された記録シートは、何れも未だインクジェット用記録シートとして満足できるものとはいえない。即ち、水溶性高分子を用いる場合には、得られるシートの表面層であるインク受容層の耐水性が不足したり、架橋剤を用いて耐水性を向上させると、インクの吸収性が低下したりして両者のバランスを取ることが難しい。
【0007】
また、水溶性高分子を用いた場合には、インク中の水分との親和性が良いために、表面の記録層(インク受容層)上にインクが噴射された時に、インクが厚み方向に水分が吸収されるよりも平面方向に早く拡がりやすく、印字のドット間で互いに混合して画像の滲みの原因となる。さらに、水分の吸収性をよくするために微小な無機充填剤を用いることも行われているが、それのみでは充分な結果が得られない。
【0008】
この発明は、上記した従来の記録シートにおける課題を解決すべく検討の結果なされたもので、特にインクの水分吸収性を保ちながら、耐水性も充分で鮮明な印字を得ることのできる記録体用組成物と、この組成物をインク受容層として基材上に形成した記録体を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明のうち請求項1記載の発明は、ケン化度20〜45モル%のポリビニルアルコール100重量部に対して分子量10,000〜400,000のポリビニルピロリドン5〜200重量部を混合した混合液にカチオン性物質およびジルコニウム化合物を添加した記録体用組成物を特徴とするものである。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1において、カチオン性物質がカチオン性界面活性剤またはカチオン性高分子物質であり、ポリビニルアルコール100重量部に対して0.1〜100重量部用いることを特徴とし、請求項3に記載の発明は、請求項1において、ジルコニウム化合物が塩基性塩化ジルコニウムまたは酢酸ジルコニウムであり、ポリビニルアルコール100重量部に対して0.1〜50重量部用いることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項4記載の発明は、ケン化度20〜45モル%のポリビニルアルコール100重量部に対して分子量10,000〜400,000のポリビニルピロリドン5〜200重量部を混合した混合液にカチオン性物質およびジルコニウム化合物を添加して得た組成物からなる皮膜をインク受容層として基材表面に形成した記録体を特徴とするものである。
【0012】
さらに、請求項4において、インク受容層を表面に形成する基材がプラスチックのフィルム状物または板状物であることを請求項5とし、インク受容層を表面に形成する基材が金属の板状物または箔であることを請求項6とし、インク受容層を表面に形成する基材が布帛であることを請求項7とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を詳細に説明する。この発明において組成物を構成する主材として用いるケン化度20〜45モル%のポリビニルアルコールとは、ポリビニルアルコールポリマー中の全酢酸ビニル基のうち、ケン化された酢酸ビニル基の割合をモル%で示した時に20〜45%のものである。
【0014】
この発明で、ケン化度が20〜45モル%と小さいポリビニルアルコールを用いるのは、次のような理由のためである。即ち、従来はケン化度が70〜90モル%と大きいポリビニルアルコールが親水性があり、水溶性のインクを吸収するのに優れている、とされている。しかしながら、親水性の大きいポリビニルアルコールは、それ自体が水に可溶性であるために、耐水性が十分ではない。耐水性を付与するために、架橋剤を用いる方法も提案されているが、ケン化度の高いポリビニルアルコールを架橋剤を用いて、しかも加熱乾燥すると、架橋とともに分子内に結晶化する部分が生じて吸水性が低下する。
【0015】
さらに、架橋により耐水化しても、ポリビニルアルコールの塗膜は水中に浸漬すると、膨潤して寸法変化が生じる。
【0016】
この発明で用いるケン化度の小さいポリビニルアルコールは、それ自体が水に対して溶解しないために耐水性がよく、さらにケン化度が小さいことから分子中に多くのカルボニル基を有するために、架橋剤と反応して架橋結合を作りやすく、一層耐水性がよくなるのである。また、架橋した塗膜は水中に浸漬しても膨潤しない。また、分子中に水酸基をも有しているために親水性も有しており、インクとのなじみも良好である。このようなケン化度の小さいポリビニルアルコールにおいて、この発明ではその重合度については特に限定するものではなく、通常のものを用いればよい。
【0017】
ポリビニルピロリドンは、得られる組成物をインク受容層とした時に、吸水性を与える目的で用いるが、その分子量としては10,000〜400,000のものが好ましい。特にインク受容層として皮膜の透明性を要する場合には、主材料であるポリビニルアルコールとの相溶性がよく、且つ吸水性をも保持させるために、40,000〜160,000の分子量のものが望ましい。その場合の両者の使用量としては、ポリビニルアルコール100重量部に対してポリビニルピロリドン5〜200重量部が適当である。
【0018】
記録体の基材として金属の板状体や箔あるいは布帛、さらには透明性に乏しいプラスチックシートを用いることからインク受容層としても透明性に乏しい皮膜でもよい場合には、上記の範囲内でポリビニルピロリドンの比率を大きくすることも可能である。何れにしても200重量部以上の使用は耐水性を低下させることになって好ましくない。また、5重量部以下ではインクの吸収性が低下する。さらに、分子量が40,000以下ではインク受容層としての皮膜中のポリビニルピロリドンが溶け出しやすくなって耐水性が不十分となる場合がある。
【0019】
この発明でカチオン性物質は、インク中の染料分子のアニオン性基と結合して水に不溶性の塩を作ることを目的として用いるのである。そのようなカチオン性物質としては、カチオン系界面活性剤や分子内にカチオン基を有する水溶性高分子物質があり、これらは単独で又は併用して用いられる。
【0020】
カチオン系界面活性剤としては、脂肪族アミン塩のほか、第4級アンモニウム塩であるアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩や、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩等が使用できる。
【0021】
分子内にカチオン基を有する水溶性高分子物質としては、変性して分子内にアミノ基またはアンモニウム塩基を導入したポリビニルアルコール、でんぷん、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどがあり、これらカチオン性物質はポリビニルアルコール100重量部に対して0.1〜100重量部、好ましくは0.4〜20重量部の使用が適当である。この使用量が0.1部より少ない場合は、耐水性の効果が少なくて印字した後に水中に浸漬すると、インクの流出が生じる。また、100部以上の使用は経済的見地から好ましくない。
【0022】
ジルコニウム化合物は、ケン化度の低いポリビニルアルコール分子中に存在するカルボニル基と架橋結合させてインク受容層として得られる皮膜の耐水性や強度を向上させる目的で架橋剤として用いるものであり、酢酸ジルコニウム、塩基性塩化ジルコニウムなどがポリビニルアルコール100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは2〜30重量部用いられる。この量が0.1部以下では架橋効果が低くて皮膜の耐水性が十分でなく、水中に浸漬した場合に皮膜が白濁したり、剥離するおそれがある。また、50部以上の使用は経済的見地から好ましくない。
【0023】
この発明において、基材としては、透明もしくは不透明な熱可塑性樹脂フィルム、セルロース誘導体フィルムまたはそれらの延伸フィルムや金属板、金属箔、布帛のほか、上記熱可塑性樹脂の板材を用いることもできる。
【0024】
熱可塑性樹脂のフィルムまたは板材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等の樹脂フィルムまたは板材等があり、これらは該表面とインク受容層との接着を改善するために、該表面上に下塗り層を施したものであってもよく、また、該表面にコロナ放電等の前処理を施したフィルムや板材を用いてもよい。
【0025】
特に、OHP用のフィルムとしては、透明性のよいポリエチレンテレフタレートやポリメチルメタクリレートフィルムで厚みが20〜200μmのものが好ましい。また、金属板または金属箔としては、鉄、銅、アルミニウム、ステンレス製の板状物あるいは箔もしくはそれらの成形物を用いることができる。
【0026】
特に、この発明で得られる組成物は、金属表面への密着性がよいので金属板または金属箔そのものの表面に塗布して用いることができるが、これらの表面に下地塗料を施した上に用いてもよい。
【0027】
この発明の組成物の調製は以下のようにして行う。即ち、ケン化度20〜45モル%のポリビニルアルコールをメタノール等の有機溶剤に溶解し、さらに分子量10,000〜400,000のポリビニルピロリドンを加えて溶解する。有機溶剤としては、メタノールのほかイソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミドが用いられる。この時、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンの使用量は、ポリビニルアルコール100重量部に対してポリビニルピロリドン5〜200重量部が適当である。そしてこの両者の混合液の濃度は10〜50%、好ましくは20〜40%が適当である。
【0028】
次に、上記混合液にカチオン性物質を溶剤に溶解して、もしくはそのまま加えて混合する。カチオン性物質の添加量はポリビニルアルコール100重量部に対して0.1〜100重量部、好ましくは0.4〜20重量部である。さらに、カチオン性物質を混合した混合液にジルコニウム化合物を加えることによって組成物が得られるが、ジルコニウム化合物は量的に多い場合は、組成物がゲル化の傾向を示すこともあるので、この組成物を基材上に塗布する直前に加えることが望ましい。
【0029】
かくして得られた組成物は減圧脱泡したのち基材上に塗布してインク受容層を形成する。塗布方法としては、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート、マイヤーバーコート、ブレードコート、ナイフコート、エアナイフコート、コンマコート、スロットダイコート、スライドダイコート、ディップコート、刷毛塗りなどの公知の塗布法によればよい。
【0030】
上記塗布法で形成される皮膜厚みは、乾燥時に5〜50μm、好ましくは10〜30μmが適当である。この厚みが5μmより薄いと、インクの吸収量が不十分となり、50μmより厚くなるとコスト高となって好ましくない。
【0031】
上記の塗布後の乾燥条件は、基材の種類や用いる組成物中に含有するジルコニウム化合物の量や溶媒、あるいは所望する皮膜厚みによって適宜決めればよいが、80〜120℃で0.5〜5分が適当である。80℃より低温では架橋反応が不十分なために皮膜の耐水性の向上に寄与せず、また120℃以上では得られたインク受容層が印字時に小さなひび割れを生じる恐れがあるほか、シートがカールするなどの不都合も生じるので好ましくない。
【0032】
このようにして得られた記録シートは、その主材の如何によっては、これを何枚も積層した場合にブロッキングを引き起こすことがある。このような恐れのある場合には、ブロッキングを防止するために、ポリビニルアルコール100重量部に対して2〜5重量部程度の無機または有機微粒子を添加するか、ステアリン酸亜鉛を少量添加すればよい。
【0033】
また、インク受容層として不透明な皮膜を得るには、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンの重量比を変えるか、分子量の大きいポリビニルピロリドンを用いればよく、また炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、マイカ、クレー、タルク、シリカ微粉末、コロイダルシリカ、ケイソウ土などの無機粒子やポリエチレン、ポリスチレン、アクリル、ウレタン等の有機微粒子などを充填剤として用いればよい。さらに、記録体の生産性、記録特性、保存安定性などを高めるために、必要により消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防黴剤や着色剤などを適宜加えることも可能である。また、皮膜を形成した記録体が湿度等の影響で曲がることを防ぐために、ポリエチレンオキサイドポリマーやグリセリン等を加えてもよい。
【0034】
【実施例】
以下、実施例によりこの発明を詳細に説明する。なお、部数は全て重量部である。
実施例1
ケン化度33〜38モル%のポリビニルアルコール(クラレ社製、LM−15)100部とポリビニルピロリドン(ドイツ、BASF社製、ルビスコールK−30、分子量40,000)100部をメチルアルコール150部とジメチルホルムアミド150部に溶解し、これにカチオン性高分子物質としてポリアクリル酸エステルの第4級アンモニウム塩(第一工業製薬社製、ハイセットCA)5部、架橋剤として塩基性塩化ジルコニウム(第一稀元素化学工業社製、ジルコゾールZC−2)10部を加えて記録体用組成物を調製した。次いで、この組成物を80μm厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製)上にバーコーターにて塗布し、120℃で3分間乾燥して皮膜厚が25μmのインク受容層を有する透明な記録シートを得た。
【0035】
上記で得た記録シートにインクジェットプリンター(キャノン社製、BCJ−420)を用いてパターンをプリントした。次に、得られた記録画像について、インクの乾燥性、画像性、耐水性および透明性の性能テストを行った。その結果は表1に示した。
【0036】
なお、各テストの評価は以下のようにして行った。
*インクの乾燥性:印字後十分以内にその表面を指で触ってみて、完全に乾燥しているものを○、少しでも指にべとつき感があるものは×として判定した。
*画像性:ドット間の混合やインクの滲みがなく、色濃度が高く、鮮明な画質が得られたものを○、多少でも滲みがみられ、画質の鮮明性に欠けるものを×として判定した。
*耐水性:記録シートを水中に1分間浸漬して皮膜の膨潤や水中へのインクのしみだしのないものを○、皮膜の膨潤や水中へのインクのしみだしが少しでも認められるものを×として判定した。
*透明性:透明なプラスチックシートを基材に用いたものについて、印字後においても透明性に変化のないものを○、やや透明性に欠けるものを△として判定した。
【0037】
実施例2
実施例1におけるポリビニルピロリドンを分子量360,000のポリビニルピロリドン(ドイツ、BASF社製、ルビスコールK−90)に変え、これをポリビニルアルコール100部に対して50部用いたほかは実施例1と同様にして記録体用組成物を得、同様にして記録画像を得た。この画像の性能テスト結果は表1に示した。
【0038】
実施例3
ケン化度33〜38モル%のポリビニルアルコール(クラレ社製、LM−15)100部とポリビニルピロリドン(ドイツ、BASF社製、ルビスコールK−30、分子量40,000)100部をメチルアルコール150部とジメチルホルムアミド150部に溶解し、これにカチオン性物質としてポリアクリル酸エステルの第4級アンモニウム塩(第一工業製薬社製、ハイセットCA)5部を加えた後、シリカ微粉末(富士シリシア化学社製、サイリシア350)15部およびタルク(三木産業社製、LMS200)150部を加え、ディゾルバーにて30分間撹拌混合した後に、塩基性塩化ジルコニウム(第一稀元素化学工業社製、ジルコゾールZC−2)10部を加えて記録体用組成物を調製した。次いで、この組成物を予め塩化ビニル−酢酸ビニル系ポリマー溶液を下塗りしてある1.5mm厚さの不透明な塩化ビニルシート基材上にバーコーターにて塗布し、80℃で5分間乾燥して皮膜厚が40μmのインク受容層を有する記録シートを得た。この記録シートについて実施例1と同様にして記録画像を作成した。そのテスト結果は表1の通りであった。
【0039】
実施例4
上記実施例3にて得た記録体用組成物を厚さ0.5mmの市販のアルミニウム箔に塗布し、120℃で3分乾燥して皮膜厚30μmの記録体を得た。この記録体について実施例1と同様にして記録画像を作成し、テストしたところ、表1の通りであった。
【0040】
実施例5
上記実施例3にて得た記録体用組成物を、目付け量100g/m2 の市販布帛に塗布し、100℃で3分乾燥して表面にインク受容層としての皮膜を有する記録体を作成した。この記録体について実施例1と同様にして記録画像を作成し、テストしたところ、表1の結果を得た。
【0041】
実施例6
実施例1のカチオン性物質を、カチオン界面活性剤であるラウリルトリメチルアンモニウムクロライド(花王社製、コータミン24P)10部に変えた以外は実施例1と同様にして組成物を調製し、さらに記録シートを作成したのち、その上に記録画像を得た。この記録画像のテスト結果は表1に示した。
【0042】
実施例7
実施例1のジルコニウム化合物を酢酸ジルコニウム(第一稀元素化学工業社製、ジルコゾールZA)25部に変えた以外は実施例1と同様にして組成物を調製し、さらに記録シートを作成したのち、その上に記録画像を得た。この記録画像のテスト結果は表1に示した。
【0043】
比較例1
実施例1におけるポリビニルピロリドン(ルビスコールK−30)の使用量を3部と減じた以外は、全て実施例1と同様にして記録体用組成物を得、また記録画像を作成し、性能テストを行った。テスト結果は表1に示した。
【0044】
比較例2
実施例1におけるジルコニウム化合物を用いない以外は全て実施例1と同様にして記録画像を作成し、そのテストを行った。その結果は表1に示した。
【0045】
比較例3
ケン化度98%のポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA117)80部と分子量360,000のポリビニルピロリドン(ドイツ、BASF社製、ルビスコールK−90)20部を水900部に溶解し、カチオン性物質(ハイセットCA)を5部加えた後、ジルコニウム化合物(ジルコゾールZC−2)10部を混合して組成物を得た。この組成物を厚さ80μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにバーコーターによって塗布し、80℃で3分間乾燥して厚さ20μmのインク受容層を有する透明な記録シートを得た。この記録シートに実施例1と同様にして得た記録画像のテストを行ったところ、表1の結果を得た。
【0046】
【表1】
【0047】
上記の表から、比較例1の記録シートはインクジェットによるプリント時にインクの吸収性が悪いため、インクの乾燥性、画像性が好ましくなく、比較例2は架橋剤を用いていないことから、インク受容層としての皮膜は耐水試験において、1分間の水中浸漬で白濁して不透明となり、指で擦ると皮膜の一部剥離が認められた。また、比較例3はケン化度の大きいポリビニルアルコールを主成分としたものであるので、インクの乾燥性、画像性、透明性は良好であったが、1分間の水中浸漬で皮膜が膨潤して耐水性が不良であった。
【0048】
これに対して、この発明の組成物を用いた実施例1〜7においては、実施例2の記録シートが透明性にやや欠ける結果を示した以外は、インクの乾燥性、画像性、耐水性、透明性全てについて良好であった。なお、実施例2〜4は使用した基材が不透明であるので、透明性テストは対象外とした。
【0049】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明は20〜45モル%の低いケン化度のポリビニルアルコールを主材料とし、これに高分子量のポリビニルピロリドンとカチオン性物質、さらに架橋剤としてジルコニウム化合物を配合した組成物であり、この組成物を用いてインク受容層を形成したインクジェット記録用記録体は、水性インクを使用するインクジェット記録において、インク乾燥性、画像性にすぐれ、耐水性が良好で、鮮明な画像を得ることができるのである。
Claims (7)
- ケン化度20〜45モル%のポリビニルアルコール100重量部に対して分子量10,000〜400,000のポリビニルピロリドン5〜200重量部を混合した混合液にカチオン性物質およびジルコニウム化合物を添加したことを特徴とする記録体用組成物。
- カチオン性物質がカチオン系界面活性剤またはカチオン性高分子物質であり、ポリビニルアルコール100重量部に対して0.1〜100重量部用いることを特徴とする請求項1に記載の記録体用組成物。
- ジルコニウム化合物が塩基性塩化ジルコニウムまたは酢酸ジルコニウムであり、ポリビニルアルコール100重量部に対して0.1〜50重量部用いることを特徴とする請求項1に記載の記録体用組成物。
- ケン化度20〜45モル%のポリビニルアルコール100重量部に対して分子量10,000〜400,000のポリビニルピロリドン5〜200重量部を混合した混合液にカチオン性物質およびジルコニウム化合物を添加して得た組成物からなる皮膜をインク受容層として基材表面に形成したことを特徴とする記録体。
- インク受容層を表面に形成する基材がプラスチックのフィルム状物または板状物であることを特徴とする請求項4に記載の記録体。
- インク受容層を表面に形成する基材が金属の板状物または箔であることを特徴とする請求項4に記載の記録体。
- インク受容層を表面に形成する基材が布帛であることを特徴とする請求項4に記載の記録体。
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