JP4410607B2 - 酸素ラジカル発生電極 - Google Patents

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Description

本発明は、酸化促進材や殺菌材などの用途展開が期待されている、活性酸素種であるO やOの酸素ラジカルを高濃度に含むカルシウムアルミネート膜を利用した酸素ラジカル発生電極に関する。
やOの酸素ラジカルは、活性酸素の1種であり、有機物や無機物の酸化過程で重要な役割を果たすことが知られている。酸化物化合物の固体表面上に吸着したO については、広範な研究が行われている(非特許文献1参照)。
この研究では、γ線などの高エネルギーの放射線を酸化物化合物表面に照射することでO を作成している。
を構成アニオンとする結晶はRO(R=アルカリ金属)が知られているが、これらの化合物はいずれも300℃以下の低温で容易に分解してしまうため、酸化促進材や殺菌材などの用途には使用できない。
1970年にH.B.Bartlらは、12CaO・7Al(以下、C12という)結晶においては、2分子を含む単位胞にある66個の酸素のうち、2個はネットワークに含まれず、結晶の中に存在するケージ内の空間に「フリー酸素」として存在すると主張している(非特許文献2参照)。
また、細野らは、CaCOとAlまたはAl(OH)を原料として空気中で1200℃の温度で固相反応により合成したC12結晶中に1×1019/cm程度のO が包接されていることを電子スピン共鳴の測定から発見し、フリー酸素の一部がO の形でゲージ内に存在するというモデルを提案している(非特許文献3参照)。
12は、融点1415℃の安定な酸化物であり、包接されるO の量を増加させ、可逆的な取り込み、放出が可能となれば、酸化促進材や殺菌材などとしての用途が開けるものと期待できる。
細野らは、更に、前記O を包接するC12について検討を行い、CaCO、Ca(OH)又はCaOと、Al又はAl(OH)とを原料に用い、酸素分圧10Pa以上、水蒸気分圧10Pa以下の乾燥酸化雰囲気下、1200℃以上1415℃未満に焼成し、固相反応させることで、活性酸素種であるO 及びOを1020/cm以上の高濃度で包接するC12を得ている(特許文献1参照)。
特開2002−3218号公報 J.H.Lunsford、Catal.Rev.8,135,1973、M.Che and A.J.Tench,Adv.Catal,32,1,1983 H.B.Bartl and T.Scheller、Neues Jarhrb.Mineral.,Monatsh.1970、547 H.Hosono and Y.Abe,Inorg.Chem.26、1193、1997
しかし、細野らの見いだした高濃度に活性酸素種を含有するC12を産業上利用する場合、更に解決するべき課題がある。
すなわち、高濃度の酸素ラジカルを含有するC12を、酸化促進材や殺菌材等の用途に適用する場合、当該用途に応じた機能を充分発揮させるためには、それぞれの用途に適合した様々な形態とする必要がある。
12を粉末形態以外の成形体として使用する場合、形態の付与はC12を焼結させることによってなされるのが一般的である。成形体は、原料となるC12粉末またはカルシウム化合物とアルミニウム化合物との混合粉末を、金型等を用いて所定の形状に成形した後に焼成することによって、製造することができる。しかし、大面積の板状品等の大型品を製造する際には大規模な成形機や焼成炉が必要になるため、高価なものとなってしまう。
この対策として、大面積化が比較的容易なC12の膜を基材上に形成させて積層体にすることが考えられる。ただし、高濃度の酸素ラジカルを含有するC12膜を基材上に形成させた積層体を酸化促進材や殺菌材等の用途に適用する場合、酸素ラジカルをC12膜の表面から放出させる必要がある。
酸素ラジカルを表面から放出させるにはC12の膜を700℃以上の高温で保持し、負電位を負荷すれば良いが、膜中の酸素ラジカルが全て放出してしまうと、使用を継続できなくなってしまう。特に膜の場合は焼結体の場合とは異なりC12自体の総量は少ないため、そのまま使用するとすぐに使用できなくなってしまう。
これを防ぐため、酸素ラジカルを補給する構造の電極(以下、「酸素ラジカル発生電極」という)とすることが考えられる。補給のための具体的方法としては、C12膜の基材に酸素イオン伝導性を有する材料を配し、酸素イオンで補給する方法が挙げられる。
しかし、酸素イオン伝導性材料からなる基材から補給される酸素イオンは2価の負イオン(O2−)であり、これが活性酸素種であるO又はO としてC12膜に包接されるためには、基材とC12膜との界面において、式1又は式2に示される電子(e)放出反応が生じる。
(式1)O2− → O + e
(式2)2O2− → O + 3e
この時放出された電子が、静電気としてC12膜中に蓄積され、蓄積量が一定量以上に達すると、電子が一気に放出される放電現象が生じ、C12膜を酸化促進材や殺菌材等の電極として使用する際に、均一に効率良く酸素ラジカルを放出させることが困難になるだけでなく、放出された電子が別の個所に蓄積されて静電気が生じる等、種々の悪影響が発生する。
本発明者らは、C12成形体、特に基材とC12膜の積層体からなる酸素ラジカル発生電極の有する前記の問題点について検討し、基材とC12膜の間に、酸素イオンや酸素ラジカルの移動を妨げず、かつ電子伝導性を有する中間膜を形成することによって、電子を中間層を通じて除去することが可能になり、放電現象を防止できるという知見を得て、本発明に至ったものである。
即ち、本発明は、酸素イオン伝導性の基材上に酸素ラジカル含有カルシウムアルミネート膜を設けてなる酸素ラジカル発生電極であって、前記基材の前記酸素ラジカル含有カルシウムアルミネート膜が設けられていない側にカソードを設け、前記基材と前記酸素ラジカル含有カルシウムアルミネート膜との間にアノードを設けて、このアノード・カソード間に適宜電圧を印加して前記静電気としてC12膜中に蓄積された電子を該アノード(中間層)を通じて除去することにより放電現象を防止できることを特徴とする酸素ラジカル発生電極である。
本発明は、酸素ラジカル含有カルシウムアルミネート膜が、酸素ラジカル含有カルシウムアルミネート粉末を溶射してなることを特徴とする前記の酸素ラジカル発生電極である。
本発明は、基材が酸化ジルコニウム成形体からなることを特徴とする前記の酸素ラジカル発生電極であり、好ましくは、基材が酸化マグネシウムを含有する酸化ジルコニウム成形体からなることを特徴とする前記の酸素ラジカル発生電極であり、更に好ましくは、アノード及び/又はカソードが多孔質の白金であることを特徴とする前記の酸素ラジカル発生電極であり、アノード及び/又はカソードがランタンマンガナイト系複合酸化物からなることを特徴とする前記の酸素ラジカル発生電極である。
また、本発明は、前記の電極を用いてなることを特徴とする酸素ラジカル発生装置である。
本発明の酸素ラジカル発生電極は、特定な性質を有する基材に、特定な性質を有する複数の膜を形成することによって、電子の蓄積によって生じる放電現象を防止し、その結果、均一な酸素ラジカルを効率良く放出でき、しかも静電気の発生を抑えることができる酸素ラジカル発生電極であり、しかも容易に、再現性高く得ることができる特徴を有しているので、例えば、酸化促進材や殺菌材等の用途に用いて好適であり、産業上非常に有用である。
本発明の酸素ラジカル発生電極は、特定な性質を有する基材に、特定な性質を有する複数の膜を形成することによって、電子の蓄積によって生じる放電現象を防止することにより、均一な酸素ラジカルを効率良く放出でき、しかも静電気の発生を抑えることができる積層体が得られることを見出したことに基づいている。
即ち、本発明は酸素イオン伝導性を有する基材と、前記基材の一主面に設けられている電子伝導性を有する中間膜並びに酸素ラジカル含有カルシウムアルミネート膜及び前記基材の反対側主面に設けられている電子伝導性を有する膜からなることを特徴とする酸素ラジカル発生電極である。そして前記構成を有している故に、均一な酸素ラジカルを効率良く放出でき、しかも静電気の発生を抑えることができる特徴を示すものである。
図1は、本発明の酸素ラジカル発生電極の模式図の例である。本発明における基材の一主面に設けられる中間膜(図1の2)及び反対側主面に設けられる膜(図1の4)は電子伝導性を有する。中間膜は、基材(図1の3)から補給された酸素イオン(O2−)が、活性酸素種であるO又はO としてC12膜(図1の1)に包接される際に、基材3とC12膜1との界面において放出する電子がC12膜1に蓄積しないよう、電子を逃がすための通路としての役割を担う。また反対側主面に設けられる膜4は、酸素ガスを含む雰囲気に接触させて基材に酸素イオン(O2−)を取り込ませる際に、酸素ガスをイオン化するための電子供給用電極としての役割を担う。従ってこれらの膜は何れも電子伝導性を有することが必要である。
ただし、この中間膜2及び反対側主面の膜4が電子だけを伝導して酸素イオン(O2−)を伝導しない場合は、積層体の厚さ方向における酸素イオンの伝導が膜によって遮断されてしまい、C12膜に酸素が供給されなくなる。これを防ぐため中間膜及び反対側主面の膜は、酸素イオンを透過しなければならないが、このための方法として膜を多孔質にして酸素イオンの通り道を確保するか、電子伝導性を酸素イオン伝導性を兼ね備えた膜にすることが考えられる。前者の具体例としては多孔質の白金が、後者としてはランタンマンガナイト系複合酸化物が挙げられる。
さらに、この中間膜2及び反対側主面の膜4は、熱に強く、耐酸化性等の化学的安定性を有することも同時に必要とされ、これらの点からも多孔質の白金及びランタンマンガナイト系複合酸化物が特に好ましい。
多孔質の白金からなる中間膜2及び反対側主面の膜4を形成させる具体的な方法としては、例えば白金ペーストの焼き付けや、白金の溶射などが挙げられる、特別の装置を要せず経済的であることから、白金ペーストの焼き付けが特に好ましい。
白金ペーストを焼き付ける具体的な方法は、ペーストを基材に塗布後、加熱する方法が挙げられる。例えば、市販の白金ペーストを、ハケ塗り、スタンプ塗り又はスクリーン印刷等の方法で基材に塗布し、100〜200℃程度の低温で揮発成分を揮発させた後、酸素等の酸化性雰囲気、窒素雰囲気又は大気中で1000〜1400℃の高温で基材ごと焼成して焼き付ける方法である。かかる方法では、白金ペーストに含まれる揮発成分が揮発する際に、塗布膜に開気孔が形成されて焼き付け後の膜が多孔質になるため、特に好ましい。一方、焼き付け時の雰囲気として、水素等の還元性雰囲気又は真空は、白金の脆化の原因になる場合があるため好ましい方法ではない。
ランタンマンガナイト系複合酸化物からなる中間膜2及び反対側主面の膜4を形成させる具体的な方法は、ランタンマンガナイト系複合酸化物粉末を水又は有機溶媒等に分散させて、さらに塗布後の塗膜に強度を付与するため少量の結合剤を添加してスラリーを作製し、これを基材に塗布後、加熱する方法が挙げられる。例えば、市販のランタンマンガナイト系複合酸化物粉末をエタノールに分散させて、結合剤として少量のポリビニルブチラールを添加してスラリーを作製し、これをハケ塗り又はスタンプ塗りした後、酸素等の酸化性雰囲気又は大気中で、1200〜1400℃の高温で基材ごと焼成して焼き付ける方法である。焼き付け時の雰囲気として、水素等の還元性雰囲気は、ランタンマンガナイト系複合酸化物が還元されるため、本発明には適さない。
ランタンマンガナイト系複合酸化物の具体例としては、例えばランタンストロンチウムマンガナイト(La1−XSrMnO[0<X≦0.5])が挙げられる。
中間膜及び反対側主面の膜の厚さは、酸素イオンを透過しやすくするためになるべく薄い方が好ましいが、薄すぎると電子が逃げる際の電気抵抗が大きくなってしまい、好ましくない。従って本発明の中間膜及び反対側主面の膜として好適な厚さは0.5〜100μm、さらに好ましくは1〜50μmである。
基材3の一主面に中間膜2が形成された後、さらにその上に酸素ラジカル含有カルシウムアルミネート(C12)膜1が形成される。本発明におけるカルシウムアルミネートは、主たる元素がCa、Al、酸素(O)で構成され、さらに主たる鉱物相が結晶性の12CaO・7Al(C12)である。
カルシウムアルミネートとしては、他に、3CaO・Al(CA)、CaO・Al(CA)、CaO・2Al(CA)、CaO・6Al(CA)などの鉱物相を含有できるが、結晶質のC12だけが酸素ラジカルを1020/cm以上の高濃度で含有する性質を有する。
カルシウムアルミネートの主たる成分をC12にするためには、原料中に含まれるCaとAlのモル比を、0.77:1 〜 0.96:1とすれば良い。CaとAlのモル比が上記以外の範囲では、C12以外のカルシウムアルミネートであるCAやCAの生成量が多くなり、酸素ラジカルを含有する性質が損なわれる。
本発明に用いられるカルシウムアルミネートは、前述の配合となるように、いろいろな原料から得ることができる。その原料として用いられるCa源の物質としては、例えば石灰石(CaCO)、消石灰(Ca(OH))または生石灰(CaO)などがあげられる。またAl源の物質としてはアルミナ(Al)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、ボーキサイトまたはアルミ残灰などがあげられる。これらのうち、入手が容易であり安全性が高い事から、特にCaCO及びAlを好適に使用することができる。
前記の原料を混合後、雰囲気と温度を制御した条件下で、直接反応させることによって、あるいは反応後に雰囲気と温度を制御した条件下で保持することによって酸素ラジカルを1020/cm以上の高濃度で含有するカルシウムアルミネートが得られる。雰囲気と温度を制御した条件の具体例としては、例えば、酸素分圧10Pa以上、水蒸気分圧10Pa以下の乾燥酸化雰囲気、1200℃以上1415℃未満の温度である。
前記操作で得た高濃度の酸素ラジカルを含有したカルシウムアルミネートは、粉砕や篩い分けなどの方法で用途に応じて平均粒径を調整した粉末とされる。例えば溶射用の原料としては10〜100μm、好ましくは10〜50μmに、塗布用の原料としては0.5〜10μm、好ましくは1〜5μmに平均粒径を調整した粉末とされる。
本発明に於いては、基材3に酸素ラジカル含有カルシウムアルミネート膜1を形成させる方法として、前記のカルシウムアルミネート粉末を原料として用いる方法が挙げられ、このうち、溶射法又は前記のカルシウムアルミネート粉末を基材に塗布後に焼成する方法が選択される。この理由は次に記す通りである。
上記の本発明の方法以外にも、酸素ラジカル含有カルシウムアルミネート膜を形成させる方法として、カルシウムアルミネート粉末を原料として用いない方法、例えばスパッタ法やレーザーアブレイシブ法などの物理気相蒸着(PVD)法、ゾルゲル法あるいは化学気相蒸着(CVD)法等があるが、それぞれに問題点があった。
即ち、PVD法やゾルゲル法で得られるC12膜は非晶質であり、そのままでは酸素ラジカルを含有することができない。酸素ラジカルを高濃度に含有できる結晶質のC12とするためには、成膜後さらに1000℃以上の高温で熱処理する必要があるが、この結晶化の過程でC12が急激に体積膨張するため、膜が基材から剥がれてしまう問題がある。
又、CVD法によれば結晶質のC12を直接成膜することが可能であるが、この時基材は1000℃以上の高温に保持せねばならない。従ってC12膜と基材との熱膨張係数が一致しないと、冷却時に膜が基材から剥離したり、膜にクラックが発生したりするため、基材の材質が大幅に制限されてしまう問題がある。
これに対し、本発明の膜を形成させる第一の方法である溶射法は、予め酸素ラジカルを含有させたカルシウムアルミネート粉末原料が溶射ガンと呼ばれる部位に搬送されると同時に、プラズマやフレームによって高温に加熱されて少なくとも表面が液状になり、これが溶射ガンの先端から連続的に噴射されて基材表面に付着した後、凝固することによって膜が形成されると言われており、本発明の効果を達成するに好適な積層体を容易に提供出来る特徴がある。
本発明における溶射法としては、プラズマ溶射法、フレーム溶射法、爆発溶射法あるいはレーザー溶射法等であればいずれでも良いが、膜の均一性や膜と基材の密着性が良好であり、安全性や経済性にも優れたプラズマ溶射法が特に好ましい。
溶射法では、基材3を加熱することなく結晶質酸素ラジカル含有カルシウムアルミネートを含む膜が得られるので、前記のPVD法、ゾルゲル法あるいはCVD法のように、基材から膜が剥離する問題は生じない。溶射法で結晶質膜が得られる原因は明らかではないが、原料粉末がプラズマやフレームによって高温に加熱されて少なくとも粉末表面が液状になった時でも、粉末の中心部は元の結晶質固体酸素ラジカル含有カルシウムアルミネートのままであり、膜が形成された後も変化しないためであると考えられる。
また本発明の膜を形成させる第二の方法である、基材3にカルシウムアルミネート粉末原料を塗布後に焼成する方法は、溶射法よりもさらに強固で、基材との付着性にも強い膜が得られる方法である。この方法は、使用に際して基材3を1000℃以上の高温に保持する必要があるので、本発明のように基材3とカルシウムアルミネート膜1の間に中間膜2を形成した場合でも、中間膜2の気孔等を通じて基材とカルシウムアルミネート膜が接触・反応して膜中のカルシウムアルミネートが変質し、酸素ラジカルを含有する性質が損なわれてしまい、冷却時に膜が基材から剥離してしまう問題が発生するが、酸化マグネシウムを含有する酸化ジルコニウム成形体を基材3として用いた場合には、原因は明らかではないが、前記問題は解消され、冷却時の膜剥離も生じない。
本発明のカルシウムアルミネート粉末原料を塗布後に焼成する具体的な方法としては、例えば、カルシウムアルミネート粉末を含んでなるスラリーを塗布し、これを酸素分圧10Pa以上、水蒸気分圧10Pa以下の雰囲気下、1300℃以上1400℃以下の温度範囲で加熱すれば良い。なお、予め酸素ラジカルを含有させたカルシウムアルミネート粉末原料を用いる方法が特に好ましいが、酸素ラジカルを含まないカルシウムアルミネート粉末原料を用い、加熱時に酸素ラジカルを含有させながら焼成しても良いし、一旦大気中等で1300℃以上1400℃以下の温度範囲で加熱して焼成した後に、再度酸素分圧10Pa以上、水蒸気分圧10Pa以下の雰囲気下、1300℃以上1400℃以下の温度範囲で加熱して酸素ラジカルを含有させても良い。
尚、前記スラリー化に際して、カルシウムアルミネートは水と反応するために、溶媒として水を用いることはできず、代わりにメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、n−へキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素化炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族類等の有機溶媒を用いることができる。これらのうちアルコール類、とりわけエタノールを好適に用いることができる。
また、塗布後の塗膜に強度を付与するために、必要に応じて、ニトロセルロース、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルブチラール、ポリメタクリル酸エステル、あるいはエチルセルロース等の結合剤が用いられる。これらのうち、とりわけポリビニルブチラールを好適に用いることができる。これらの結合剤は通常予め有機溶剤に溶解させて使用することができる。
本発明における基材3は、本発明の膜を形成させる方法が基材3にカルシウムアルミネート粉末原料を塗布後に焼成する方法である場合は、酸化マグネシウムを含有する酸化ジルコニウム成形体に制限されるが、それ以外の場合は、酸素イオン伝導性を有するものであればいずれであっても良い。但し酸素ラジカル放出時にカルシウムアルミネート膜を高温で保持する必要があることから、膜の剥離を防止するために、熱膨張率がカルシウムアルミネートの熱膨張率と近く、カルシウムアルミネートとの反応性に乏しい材料であること、また耐熱性を有する材料であることが好ましい。このような点から特に酸化ジルコニウム成形体が好ましい。
酸化ジルコニウムは、加熱又は冷却時に相転移に伴う急激な体積変化が生じて成形体が破損するため、相転移を抑えるために通常は安定化材が添加される。安定化材としては、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化スカンジウム又は酸化セリウムなどの金属酸化物が用いられる。本発明においては特に、酸化イットリウム又は酸化マグネシウムを含む酸化ジルコニウム成形体を好適に用いることができる(以下、本発明に用いるジルコニア又はイットリア安定ジルコニア等の丈夫な固体電解質をYSZという。また、同じく酸化マグネシウム安定化酸化ジルコニウム基板をSZM、もしくはMSZという。)。
以下、実施例及び比較例をあげて、さらに本発明を説明する。
(実施例1)
炭酸カルシウム(CaCO)粉末と、アルミナ(γ−Al)粉末とを、CaとAlのモル比が0.82:1になるように混合した後、大気中、1300℃で3時間焼成して白色粉末を得た。冷却後X線回折測定を行い、この粉末がC12であることを確認した。
さらに前記粉末を酸素分圧4×10Pa、水蒸気分圧10Paの乾燥酸化雰囲気下、1250℃で2時間焼成した。冷却後室温及び77KでのESRスペクトルを測定し、それぞれの吸収バンドの強度からO イオンラジカル及びOイオンラジカルの濃度を求めたところ、それぞれ5×1020cm−3であった(以下、この粉末を「酸素ラジカル含有C12粉」という)。
市販の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム焼結体基板(ニッカトー製YSZ−8、直径50mm、厚さ3mm)の表裏両主面を、#54のAlブラスト材でブラスト処理して表面粗さを(触針式表面粗さ測定器を用いて測定した最大高さで)8.3μmに粗らした後、両主面の内側直径40mmの部位に、基板に対して同心円となるように、市販の白金ペースト(フルヤ金属製8103)を、刷毛を用いて塗布した。
その後、大気中150℃で10分間保持して、ペーストの揮発成分を揮発させた後、大気中1300℃で10分間保持して白金を焼き付けた。冷却後、焼き付けた膜が多孔質であること及び平均の厚さが約5μmであることを、走査型電子顕微鏡(SEM)により確認した。
前記の酸素ラジカル含有C12粉を粉砕、篩い分けして10〜100μmの粉末を調製し、プラズマ溶射機に装填した。プラズマガスはアルゴンと水素の混合ガスを用い、電流値500アンペア、電圧値64ボルト、溶射距離100mmの条件で、白金を焼き付けた前記基材の一主面に溶射を行い、得られた溶射膜は、厚さ約100μmで白金上に隙間無く密着していることを確認した。
このようにして得た酸素ラジカル含有C12膜を有する酸素ラジカル発生電極を、C12膜側の主面が真空チャンバー内に入り、もう一方の主面はチャンバーの外側で圧力133Paの酸素ガス雰囲気に浸るようにして、真空チャンバーに装填した。チャンバー内にはC12膜表面と100mmの間隔で正対するように、中心部に直径5mmの孔を開けた金属製の対向電極を配した。
次いで真空チャンバー内を圧力1.33×10−3Pa以下になるまで排気した後、赤外線ランプを用いて積層体を加熱してC12膜表面の温度が800℃に達した時点で、2台の直流電源を用いて酸素ガス雰囲気に浸ったチャンバー外側の主面の白金膜に対し、真空チャンバー内の主面の白金中間膜が+150Vの電位になるように、また白金中間膜に対し、前記対向電極が+150Vの電位になるようにそれぞれ電圧を印加した。さらに対向電極の直径5mm孔の裏側にファラデーカップを配して、電圧印加から96時間経過後における積層体から対向電極に到達した荷電粒子線による電流密度を測定したところ7μA/cmであり、安定していた。
(実施例2)
市販の酸化マグネシウム安定化酸化ジルコニウム焼結体基板(品川ファインセラミックス製SZM−M、直径50mm、厚さ3mm)の表裏両主面を、#80のAlブラスト材でブラスト処理して表面粗さを(触針式表面粗さ測定器を用いて測定した最大高さで)5.7μmに粗らした後、両主面の内側直径40mmの部位に、基板に対して同心円となるように、市販のランタンマンガナイト系複合酸化物粉末(第一稀元素化学製LSM−85微粉)を、エタノールとポリビニルブチラール100:0.5(質量比)の混合溶媒に分散させてスラリー化したものを、刷毛を用いて塗布した。その後大気中1350℃で2時間保持してランタンマンガナイト系複合酸化物を焼き付けた。冷却後、焼き付けた膜の厚さが約16μmであることを、SEMにより確認した。
次に実施例1の酸素ラジカル含有C12粉を、目開き1mmの篩を用いて篩い落として粗砕物500gを調製し、これを直径10mmのジルコニア(ZrO)製粉砕ボール1500g及びエタノール1リットル(約795g)とを、2リットルのポリエチレン製容器に充填し、ボールミルで1分間当たり72回の回転数で20時間連続粉砕した。得られた粉末の平均粒径及び比表面積を、レーザー回折・散乱法及びBET1点法にて測定したところ、それぞれ4.4μm及び2.1m/gであった。
前記の粉末を、エタノールとポリビニルブチラール100:0.5(質量比)の混合溶媒に分散させてスラリー化した後、ランタンマンガナイト系複合酸化物を焼き付けた前記基材の一主面に、刷毛を用いて塗布した。これを酸素分圧8×10Pa、水蒸気分圧0.5×10Paの乾燥酸化雰囲気下、1350℃で2時間加熱し、C12膜として焼き付けた。焼き付けた膜は、厚さ約50μmでランタンマンガナイト系複合酸化物面に隙間無く密着していることを確認した。
このようにして得た酸素ラジカル含有C12膜を有する酸素ラジカル発生電極を、C12膜側の主面が真空チャンバー内に入り、もう一方の主面はチャンバーの外側で圧力133Paの酸素ガス雰囲気に浸るように実施例1と同様にして真空チャンバー内に装填し、その後の操作も実施例1と全く同様にして加熱、電圧印加を行い、96時間後における電流密度を測定したところ3μA/cmであり、安定していた。
(実施例3)
実施例2において、基材とC12膜の中間に配する膜を、ランタンマンガナイト系複合酸化物焼き付け膜から、実施例1と同様にして焼き付けた厚さ約5μmの白金膜に変更した他は、実施例2と同様にして積層体を作製した後、真空チャンバーに装填して加熱、電圧印加を行い、96時間後における電流密度を測定したところ4μA/cmであり、安定していた。
(比較例1〜3)
実施例1〜3の基材の一主面において、C12膜の中間に膜を配さず、基材上に直にC12膜を形成するように変更した他は、それぞれ実施例1〜3と同様にして酸素ラジカル発生電極を作製した。
このようにして得た酸素ラジカル含有C12膜を有する酸素ラジカル発生電極を、実施例1〜3と同様にC12膜側の主面が真空チャンバー内に入り、もう一方の主面はチャンバーの外側で圧力133Paの酸素ガス雰囲気に浸るようにして、真空チャンバーに装填し、金属製の対向電極を配した。
次いで真空チャンバー内を圧力1.33×10−3Pa以下になるまで排気した後、赤外線ランプを用いて積層体を加熱してC12膜表面の温度が800℃に達した時点で、1台の直流電源を用いて酸素ガス雰囲気に浸ったチャンバー外側の主面の白金膜に対し、前記対向電極が+300Vの電位になるように電圧を印加した。さらに対向電極の直径5mm孔の裏側にファラデーカップを配して、電圧印加から96時間経過後における積層体から対向電極に到達した荷電粒子線による電流密度を測定したところ、それぞれ、6〜8、3〜5及び3〜4μA/cmであり、実施例1〜3と比較すると電流が不安定であった。また何れの比較例においても、時折不規則なスパイク状の大電流が認められ、C12膜に蓄積された電子が放電していると推定された。
本発明の酸素ラジカル発生電極は、特定構造を有しているので、電子の蓄積によって生じる放電現象が防止されて、その結果として、酸素ラジカルを均一に効率良く放出することができ、しかも静電気の発生を抑えることができる。その上、酸素ラジカルを発生する酸素ラジカル含有のカルシウムアルミネート膜が溶射法や塗布法により作製することができるので、用途に応じて大面積や複雑形状にも対応が可能で、しかも再現性高く提供されるので、産業上非常に有用である。
図1は、本発明の酸素ラジカル発生電極の模式図である。
符号の説明
1 C12A7
2 Pt電極
3 YSZ
4 Pt電極

Claims (7)

  1. 酸素イオン伝導性の基材上に酸素ラジカル含有カルシウムアルミネート膜を設けてなる酸素ラジカル発生電極であって、前記基材の前記酸素ラジカル含有カルシウムアルミネート膜が設けられていない側にカソードを設け、前記基材と前記酸素ラジカル含有カルシウムアルミネート膜との間にアノードを設けていることを特徴とする酸素ラジカル発生電極。
  2. 酸素ラジカル含有カルシウムアルミネート膜が、酸素ラジカル含有カルシウムアルミネート粉末を溶射してなることを特徴とする前記請求項1記載の酸素ラジカル発生電極。
  3. 基材が、酸化ジルコニウム成形体からなることを特徴とする前記請求項1又は請求項2記載の酸素ラジカル発生電極。
  4. 基材が酸化マグネシウムを含有する酸化ジルコニウム成形体からなることを特徴とする前記請求項1、又は請求項2記載の酸素ラジカル発生電極。
  5. アノード及び/又はカソードが多孔質の白金であることを特徴とする前記請求項1〜4の内、いずれか1項記載の酸素ラジカル発生電極。
  6. アノード及び/又はカソードがランタンマンガナイト系複合酸化物からなることを特徴とする前記請求項1〜4の内、いずれか1項記載の酸素ラジカル発生電極。
  7. 前記請求項1〜6の内、いずれか1項に記載の電極を用いてなることを特徴とする酸素ラジカル発生装置。
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