JP4409840B2 - 加工対象物切断方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板の表面に積層部が設けられて構成された加工対象物を切断するための加工対象物切断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザ応用の一つに切断があり、レーザによる一般的な切断は次の通りである。例えば半導体ウェハやガラス基板のような基板の切断する箇所に、基板が吸収する波長のレーザ光を照射し、レーザ光の吸収により切断する箇所において基板の表面から裏面に向けて加熱溶融を進行させて基板を切断する。ところが、この方法では基板の表面のうち切断する箇所となる領域周辺も溶融される。よって、基板が半導体ウェハの場合、半導体ウェハの表面に形成された半導体素子のうち、上記領域周辺に位置する半導体素子が溶融する恐れがある。
【0003】
このような基板の表面の溶融を防止する方法として、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されたレーザによる切断方法がある。これらの文献1,2記載の切断方法では、基板の切断する箇所をレーザ光により加熱し、そして基板を冷却することにより、基板の切断する箇所に熱衝撃を生じさせて基板を切断する。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−219528号公報
【特許文献1】
特開2000−15467号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの文献1,2記載の切断方法では、基板に生じる熱衝撃が大きいと、基板の表面に、切断予定ラインから外れた割れやレーザ照射していない先の箇所までの割れ等の不必要な割れが発生することがある。よって、これらの切断方法では精密切断をすることができない。特に、基板が半導体ウェハ、液晶表示装置が形成されたガラス基板、電極パターンが形成されたガラス基板の場合、この不必要な割れにより半導体チップ、液晶表示装置、電極パターンが損傷することがある。また、これらの切断方法では平均入力エネルギーが大きいので、半導体チップ等に与える熱的ダメージも大きい。
【0006】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、基板の表面に積層部が設けられて構成された加工対象物を精度良く切断することのできる加工対象物切断方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る加工対象物切断方法は、基板と基板の表面に設けられた積層部とを有する加工対象物の基板の内部に集光点を合わせてパルスレーザ光を照射することにより、加工対象物のレーザ光入射面を溶融させずに、1パルスのパルスレーザ光の照射に応じて多光子吸収によって形成される部分としての溶融処理領域を加工対象物の切断予定ラインに沿って基板の内部のみに複数形成し、この溶融処理領域によって、切断予定ラインに沿ってレーザ光入射面から所定距離内側に切断起点領域を形成する切断起点領域形成工程と、加工対象物の表面側に第1のシートを貼り付ける第1の貼付工程と、第1のシートを介して押圧手段で加工対象物を押圧することにより、第1のシートを切断せずに、切断起点領域を起点として発生した割れを加工対象物の表面と裏面とに到達させて、切断予定ラインに沿って加工対象物を切断する押圧工程とを備えることを特徴とする。
【0008】
この加工対象物切断方法においては、多光子吸収により形成される改質領域によって、加工対象物を切断すべき所望の切断予定ラインに沿って加工対象物の内部に切断起点領域を形成する。このとき、多光子吸収は基板の内部で局所的に発生し、加工対象物のレーザ光入射面やその反対側の面ではレーザ光がほとんど吸収されないため、レーザ光の照射による積層部の溶融を防止することができる。そして、第1のシートを介して加工対象物を押圧すると、切断起点領域を起点として加工対象物に割れが発生するため、切断予定ラインから外れた不必要な割れの発生を防止して加工対象物を切断することができる。しかも、積層部は第1のシートにより覆われているため、押圧による積層部の損傷を防止することができる。したがって、基板の表面に積層部が設けられて構成された加工対象物を精度良く切断することが可能になる。なお、切断起点領域形成工程と第1の貼り付け工程とについては、どちらの工程が先に実施されてもよい。すなわち、それらの実施順序は問わない。
【0009】
ここで、基板の表面に設けられた積層部とは、基板の表面に堆積されたもの、基板の表面に貼り合わされたもの、或いは基板の表面に取り付けられたもの等をいい、基板に対し異種材料であるか同種材料であるかは問わない。そして、基板の表面に設けられた積層部には、基板に密着して設けられるものや、基板と間隙を取って設けられるもの等がある。例としては、基板上に結晶成長により形成された半導体動作層、基板上に形成された機能素子(フォトダイオード等の受光素子やレーザダイオード等の発光素子、或いは回路として形成された回路素子等を意味する)、ガラス基板上に貼り合わされた他のガラス基板等があり、積層部は異種材料を複数層形成したものも含む。また、シートとは、薄い膜状の部材を意味し、テープやフィルム等を含む意味である。また、基板の内部とは、積層部が設けられている基板の表面上をも含む意味である。また、集光点とは、レーザ光が集光した箇所のことである。さらに、切断起点領域とは、基板が切断される際に切断の起点となる領域を意味する。したがって、切断起点領域は、基板において切断が予定される切断予定部である。そして、切断起点領域は、改質領域が連続的に形成されることで形成される場合もあるし、改質領域が断続的に形成されることで形成される場合もある。
【0010】
また、切断起点領域形成工程では、基板の厚さ方向における中心位置から基板の裏面側に偏倚させて改質領域を形成することが好ましい。切断起点領域形成後の加工対象物の押圧は加工対象物の表面側から行われるが、基板の厚さ方向における中心位置に改質領域が形成されている場合に比べ、基板の裏面側に偏倚して改質領域が形成されている場合の方が、より一層小さな押圧力で加工対象物を切断することができる。これにより、加工対象物の切断をより一層精度良く行うことが可能になると共に、押圧による積層部への影響をより一層軽減することが可能になる。
【0011】
なお、「基板の厚さ方向における中心位置から基板の裏面側に偏倚させて改質領域を形成する」とは、切断起点領域を構成する改質領域が、基板の厚さ方向における厚さの半分の位置から裏面側に偏倚して形成されることを意味する。つまり、基板の厚さ方向における改質領域の幅の中心位置が、基板の厚さ方向における中心位置から裏面側に偏倚して位置している場合を意味し、改質領域の全ての部分が基板の厚さ方向における中心位置に対して裏面側に位置している場合のみに限る意味ではない。
【0012】
また、押圧工程では、切断予定ラインに沿って加工対象物を押圧することが好ましい。例えば、基板の表面に積層部として機能素子をマトリックス状に形成してなる加工対象物をその機能素子毎に切断するような場合、隣り合う機能素子間に切断予定ラインを設定し、この切断予定ラインに沿って加工対象物を押圧すれば、機能素子毎に正確に加工対象物を切断することができる。しかも、機能素子への押圧力の作用をほぼなくすことができる。
【0013】
また、切断起点領域形成工程では、加工対象物に対する切断予定ラインの位置データを記憶し、押圧工程では、位置データに基づいて、切断予定ラインに沿って加工対象物を押圧することが好ましい。これにより、加工対象物の内部に形成された切断起点領域に対して容易且つ正確に押圧力を作用させることが可能になる。
【0014】
また、加工対象物の裏面側に第2のシートを貼り付ける第2の貼付工程を押圧工程前に備え、第2のシートを拡張させる拡張工程を押圧工程後に備えることが好ましい。これにより、切断された加工対象物を互いに離間させることができ、チップのピックアップの容易化を図ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面と共に本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。本実施形態に係る加工対象物切断方法の切断起点領域形成工程では、加工対象物の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射し、加工対象物の内部に多光子吸収による改質領域を形成する。そこで、このレーザ加工方法、特に多光子吸収について最初に説明する。
【0016】
材料の吸収のバンドギャップEGよりも光子のエネルギーhνが小さいと光学的に透明となる。よって、材料に吸収が生じる条件はhν>EGである。しかし、光学的に透明でも、レーザ光の強度を非常に大きくするとnhν>EGの条件(n=2,3,4,・・・)で材料に吸収が生じる。この現象を多光子吸収という。パルス波の場合、レーザ光の強度はレーザ光の集光点のピークパワー密度(W/cm2)で決まり、例えばピークパワー密度が1×108(W/cm2)以上の条件で多光子吸収が生じる。ピークパワー密度は、(集光点におけるレーザ光の1パルス当たりのエネルギー)÷(レーザ光のビームスポット断面積×パルス幅)により求められる。また、連続波の場合、レーザ光の強度はレーザ光の集光点の電界強度(W/cm2)で決まる。
【0017】
このような多光子吸収を利用する本実施形態に係るレーザ加工の原理について、図1〜図6を参照して説明する。図1はレーザ加工中の加工対象物1の平面図であり、図2は図1に示す加工対象物1のII−II線に沿った断面図であり、図3はレーザ加工後の加工対象物1の平面図であり、図4は図3に示す加工対象物1のIV−IV線に沿った断面図であり、図5は図3に示す加工対象物1のV−V線に沿った断面図であり、図6は切断された加工対象物1の平面図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、加工対象物1の表面3には、加工対象物1を切断すべき所望の切断予定ライン5がある。切断予定ライン5は直線状に延びた仮想線である(加工対象物1に実際に線を引いて切断予定ライン5としてもよい)。本実施形態に係るレーザ加工は、多光子吸収が生じる条件で加工対象物1の内部に集光点Pを合わせてレーザ光Lを加工対象物1に照射して改質領域7を形成する。なお、集光点とはレーザ光Lが集光した箇所のことである。
【0019】
レーザ光Lを切断予定ライン5に沿って(すなわち矢印A方向に沿って)相対的に移動させることにより、集光点Pを切断予定ライン5に沿って移動させる。これにより、図3〜図5に示すように改質領域7が切断予定ライン5に沿って加工対象物1の内部にのみ形成され、この改質領域7でもって切断起点領域(切断予定部)8が形成される。本実施形態に係るレーザ加工方法は、加工対象物1がレーザ光Lを吸収することにより加工対象物1を発熱させて改質領域7を形成するのではない。加工対象物1にレーザ光Lを透過させ加工対象物1の内部に多光子吸収を発生させて改質領域7を形成している。よって、加工対象物1の表面3ではレーザ光Lがほとんど吸収されないので、加工対象物1の表面3が溶融することはない。
【0020】
加工対象物1の切断において、切断する箇所に起点があると加工対象物1はその起点から割れるので、図6に示すように比較的小さな力で加工対象物1を切断することができる。よって、加工対象物1の表面3に不必要な割れを発生させることなく加工対象物1の切断が可能となる。
【0021】
なお、切断起点領域を起点とした加工対象物の切断には、次の2通りが考えられる。1つは、切断起点領域形成後、加工対象物に人為的な力が印加されることにより、切断起点領域を起点として加工対象物が割れ、加工対象物が切断される場合である。これは、例えば加工対象物の厚さが大きい場合の切断である。人為的な力が印加されるとは、例えば、加工対象物の切断起点領域に沿って加工対象物に曲げ応力やせん断応力を加えたり、加工対象物に温度差を与えることにより熱応力を発生させたりすることである。他の1つは、切断起点領域を形成することにより、切断起点領域を起点として加工対象物の断面方向(厚さ方向)に向かって自然に割れ、結果的に加工対象物が切断される場合である。これは、例えば加工対象物の厚さが小さい場合には、1列の改質領域により切断起点領域が形成されることで可能となり、加工対象物の厚さが大きい場合には、厚さ方向に複数列形成された改質領域により切断起点領域が形成されることで可能となる。なお、この自然に割れる場合も、切断する箇所において、切断起点領域が形成されていない部位に対応する部分の表面上にまで割れが先走ることがなく、切断起点領域を形成した部位に対応する部分のみを割断することができるので、割断を制御よくすることができる。近年、シリコンウェハ等の加工対象物の厚さは薄くなる傾向にあるので、このような制御性のよい割断方法は大変有効である。
【0022】
さて、本実施形態において多光子吸収により形成される改質領域としては、次の(1)〜(3)がある。
【0023】
(1)改質領域が1つ又は複数のクラックを含むクラック領域の場合
加工対象物(例えばガラスやLiTaO3からなる圧電材料)の内部に集光点を合わせて、集光点における電界強度が1×108(W/cm2)以上で且つパルス幅が1μs以下の条件でレーザ光を照射する。このパルス幅の大きさは、多光子吸収を生じさせつつ加工対象物の表面に余計なダメージを与えずに、加工対象物の内部にのみクラック領域を形成できる条件である。これにより、加工対象物の内部には多光子吸収による光学的損傷という現象が発生する。この光学的損傷により加工対象物の内部に熱ひずみが誘起され、これにより加工対象物の内部にクラック領域が形成される。電界強度の上限値としては、例えば1×1012(W/cm2)である。パルス幅は例えば1ns〜200nsが好ましい。なお、多光子吸収によるクラック領域の形成は、例えば、第45回レーザ熱加工研究会論文集(1998年.12月)の第23頁〜第28頁の「固体レーザー高調波によるガラス基板の内部マーキング」に記載されている。
【0024】
本発明者は、電界強度とクラックの大きさとの関係を実験により求めた。実験条件は次ぎの通りである。
【0025】
(A)加工対象物:パイレック(登録商標)スガラス(厚さ700μm)
(B)レーザ
光源:半導体レーザ励起Nd:YAGレーザ
波長:1064nm
レーザ光スポット断面積:3.14×10-8cm2
発振形態:Qスイッチパルス
繰り返し周波数:100kHz
パルス幅:30ns
出力:出力<1mJ/パルス
レーザ光品質:TEM00
偏光特性:直線偏光
(C)集光用レンズ
レーザ光波長に対する透過率:60パーセント
(D)加工対象物が載置される載置台の移動速度:100mm/秒
【0026】
なお、レーザ光品質がTEM00とは、集光性が高くレーザ光の波長程度まで集光可能を意味する。
【0027】
図7は上記実験の結果を示すグラフである。横軸はピークパワー密度であり、レーザ光がパルスレーザ光なので電界強度はピークパワー密度で表される。縦軸は1パルスのレーザ光により加工対象物の内部に形成されたクラック部分(クラックスポット)の大きさを示している。クラックスポットが集まりクラック領域となる。クラックスポットの大きさは、クラックスポットの形状のうち最大の長さとなる部分の大きさである。グラフ中の黒丸で示すデータは集光用レンズ(C)の倍率が100倍、開口数(NA)が0.80の場合である。一方、グラフ中の白丸で示すデータは集光用レンズ(C)の倍率が50倍、開口数(NA)が0.55の場合である。ピークパワー密度が1011(W/cm2)程度から加工対象物の内部にクラックスポットが発生し、ピークパワー密度が大きくなるに従いクラックスポットも大きくなることが分かる。
【0028】
次に、本実施形態に係るレーザ加工において、クラック領域形成による加工対象物の切断のメカニズムについて図8〜図11を用いて説明する。図8に示すように、多光子吸収が生じる条件で加工対象物1の内部に集光点Pを合わせてレーザ光Lを加工対象物1に照射して切断予定ラインに沿って内部にクラック領域9を形成する。クラック領域9は1つ又は複数のクラックを含む領域である。このクラック領域9でもって切断起点領域が形成される。図9に示すようにクラック領域9を起点として(すなわち、切断起点領域を起点として)クラックがさらに成長し、図10に示すようにクラックが加工対象物1の表面3と裏面21に到達し、図11に示すように加工対象物1が割れることにより加工対象物1が切断される。加工対象物の表面と裏面に到達するクラックは自然に成長する場合もあるし、加工対象物に力が印加されることにより成長する場合もある。
【0029】
(2)改質領域が溶融処理領域の場合
加工対象物(例えばシリコンのような半導体材料)の内部に集光点を合わせて、集光点における電界強度が1×108(W/cm2)以上で且つパルス幅が1μs以下の条件でレーザ光を照射する。これにより加工対象物の内部は多光子吸収によって局所的に加熱される。この加熱により加工対象物の内部に溶融処理領域が形成される。溶融処理領域とは一旦溶融後再固化した領域や、まさに溶融状態の領域や、溶融状態から再固化する状態の領域であり、相変化した領域や結晶構造が変化した領域ということもできる。また、溶融処理領域とは単結晶構造、非晶質構造、多結晶構造において、ある構造が別の構造に変化した領域ということもできる。つまり、例えば、単結晶構造から非晶質構造に変化した領域、単結晶構造から多結晶構造に変化した領域、単結晶構造から非晶質構造及び多結晶構造を含む構造に変化した領域を意味する。加工対象物がシリコン単結晶構造の場合、溶融処理領域は例えば非晶質シリコン構造である。電界強度の上限値としては、例えば1×1012(W/cm2)である。パルス幅は例えば1ns〜200nsが好ましい。
【0030】
本発明者は、シリコンウェハの内部で溶融処理領域が形成されることを実験により確認した。実験条件は次の通りである。
【0031】
(A)加工対象物:シリコンウェハ(厚さ350μm、外径4インチ)
(B)レーザ
光源:半導体レーザ励起Nd:YAGレーザ
波長:1064nm
レーザ光スポット断面積:3.14×10-8cm2
発振形態:Qスイッチパルス
繰り返し周波数:100kHz
パルス幅:30ns
出力:20μJ/パルス
レーザ光品質:TEM00
偏光特性:直線偏光
(C)集光用レンズ
倍率:50倍
N.A.:0.55
レーザ光波長に対する透過率:60パーセント
(D)加工対象物が載置される載置台の移動速度:100mm/秒
【0032】
図12は、上記条件でのレーザ加工により切断されたシリコンウェハの一部における断面の写真を表した図である。シリコンウェハ11の内部に溶融処理領域13が形成されている。なお、上記条件により形成された溶融処理領域13の厚さ方向の大きさは100μm程度である。
【0033】
溶融処理領域13が多光子吸収により形成されたことを説明する。図13は、レーザ光の波長とシリコン基板の内部の透過率との関係を示すグラフである。ただし、シリコン基板の表面側と裏面側それぞれの反射成分を除去し、内部のみの透過率を示している。シリコン基板の厚さtが50μm、100μm、200μm、500μm、1000μmの各々について上記関係を示した。
【0034】
例えば、Nd:YAGレーザの波長である1064nmにおいて、シリコン基板の厚さが500μm以下の場合、シリコン基板の内部ではレーザ光が80%以上透過することが分かる。図12に示すシリコンウェハ11の厚さは350μmであるので、多光子吸収による溶融処理領域13はシリコンウェハの中心付近、つまり表面から175μmの部分に形成される。この場合の透過率は、厚さ200μmのシリコンウェハを参考にすると、90%以上なので、レーザ光がシリコンウェハ11の内部で吸収されるのは僅かであり、ほとんどが透過する。このことは、シリコンウェハ11の内部でレーザ光が吸収されて、溶融処理領域13がシリコンウェハ11の内部に形成(つまりレーザ光による通常の加熱で溶融処理領域が形成)されたものではなく、溶融処理領域13が多光子吸収により形成されたことを意味する。多光子吸収による溶融処理領域の形成は、例えば、溶接学会全国大会講演概要第66集(2000年4月)の第72頁〜第73頁の「ピコ秒パルスレーザによるシリコンの加工特性評価」に記載されている。
【0035】
なお、シリコンウェハは、溶融処理領域でもって形成される切断起点領域を起点として断面方向に向かって割れを発生させ、その割れがシリコンウェハの表面と裏面とに到達することにより、結果的に切断される。シリコンウェハの表面と裏面に到達するこの割れは自然に成長する場合もあるし、シリコンウェハに力が印加されることにより成長する場合もある。なお、切断起点領域からシリコンウェハの表面と裏面とに割れが自然に成長する場合には、切断起点領域を形成する溶融処理領域が溶融している状態から割れが成長する場合と、切断起点領域を形成する溶融処理領域が溶融している状態から再固化する際に割れが成長する場合とのいずれもある。ただし、どちらの場合も溶融処理領域はシリコンウェハの内部のみに形成され、切断後の切断面には、図12のように内部にのみ溶融処理領域が形成されている。加工対象物の内部に溶融処理領域でもって切断起点領域を形成すると、割断時、切断起点領域ラインから外れた不必要な割れが生じにくいので、割断制御が容易となる。
【0036】
(3)改質領域が屈折率変化領域の場合
加工対象物(例えばガラス)の内部に集光点を合わせて、集光点における電界強度が1×108(W/cm2)以上で且つパルス幅が1ns以下の条件でレーザ光を照射する。パルス幅を極めて短くして、多光子吸収を加工対象物の内部に起こさせると、多光子吸収によるエネルギーが熱エネルギーに転化せずに、加工対象物の内部にはイオン価数変化、結晶化又は分極配向等の永続的な構造変化が誘起されて屈折率変化領域が形成される。電界強度の上限値としては、例えば1×1012(W/cm2)である。パルス幅は例えば1ns以下が好ましく、1ps以下がさらに好ましい。多光子吸収による屈折率変化領域の形成は、例えば、第42回レーザ熱加工研究会論文集(1997年.11月)の第105頁〜第111頁の「フェムト秒レーザー照射によるガラス内部への光誘起構造形成」に記載されている。
【0037】
以上、多光子吸収により形成される改質領域として(1)〜(3)の場合を説明したが、ウェハ状の加工対象物の結晶構造やその劈開性などを考慮して切断起点領域を次のように形成すれば、その切断起点領域を起点として、より一層小さな力で、しかも精度良く加工対象物を切断することが可能になる。
【0038】
すなわち、シリコンなどのダイヤモンド構造の単結晶半導体からなる基板の場合は、(111)面(第1劈開面)や(110)面(第2劈開面)に沿った方向に切断起点領域を形成するのが好ましい。また、GaAsなどの閃亜鉛鉱型構造のIII−V族化合物半導体からなる基板の場合は、(110)面に沿った方向に切断起点領域を形成するのが好ましい。さらに、サファイア(Al2O3)などの六方晶系の結晶構造を有する基板の場合は、(0001)面(C面)を主面として(1120)面(A面)或いは(1100)面(M面)に沿った方向に切断起点領域を形成するのが好ましい。
【0039】
なお、上述した切断起点領域を形成すべき方向(例えば、単結晶シリコン基板における(111)面に沿った方向)、或いは切断起点領域を形成すべき方向に直交する方向に沿って基板にオリエンテーションフラットを形成すれば、そのオリエンテーションフラットを基準とすることで、切断起点領域を形成すべき方向に沿った切断起点領域を容易且つ正確に基板に形成することが可能になる。
【0040】
次に、上述したレーザ加工方法に使用されるレーザ加工装置について、図14を参照して説明する。図14はレーザ加工装置100の概略構成図である。
【0041】
レーザ加工装置100は、レーザ光Lを発生するレーザ光源101と、レーザ光Lの出力やパルス幅等を調節するためにレーザ光源101を制御するレーザ光源制御部102と、レーザ光Lの反射機能を有しかつレーザ光Lの光軸の向きを90°変えるように配置されたダイクロイックミラー103と、ダイクロイックミラー103で反射されたレーザ光Lを集光する集光用レンズ105と、集光用レンズ105で集光されたレーザ光Lが照射される加工対象物1が載置される載置台107と、載置台107をX軸方向に移動させるためのX軸ステージ109と、載置台107をX軸方向に直交するY軸方向に移動させるためのY軸ステージ111と、載置台107をX軸及びY軸方向に直交するZ軸方向に移動させるためのZ軸ステージ113と、これら3つのステージ109,111,113の移動を制御するステージ制御部115とを備える。
【0042】
この集光点PのX(Y)軸方向の移動は、加工対象物1をX(Y)軸ステージ109(111)によりX(Y)軸方向に移動させることにより行う。Z軸方向は、加工対象物1の表面3と直交する方向なので、加工対象物1に入射するレーザ光Lの焦点深度の方向となる。よって、Z軸ステージ113をZ軸方向に移動させることにより、加工対象物1の内部にレーザ光Lの集光点Pを合わせることができる。これにより、例えば、加工対象物1が多層構造を有しているような場合に、加工対象物1の基板や或いは当該基板上の積層部等、所望の位置に集光点Pを合わせることができる。
【0043】
レーザ光源101はパルスレーザ光を発生するNd:YAGレーザである。レーザ光源101に用いることができるレーザとして、この他、Nd:YVO4レーザ、Nd:YLFレーザやチタンサファイアレーザがある。本実施形態では、加工対象物1の加工にパルスレーザ光を用いているが、多光子吸収を起こさせることができるなら連続波レーザ光でもよい。
【0044】
レーザ加工装置100はさらに、載置台107に載置された加工対象物1を可視光線により照明するために可視光線を発生する観察用光源117と、ダイクロイックミラー103及び集光用レンズ105と同じ光軸上に配置された可視光用のビームスプリッタ119とを備える。ビームスプリッタ119と集光用レンズ105との間にダイクロイックミラー103が配置されている。ビームスプリッタ119は、可視光線の約半分を反射し残りの半分を透過する機能を有しかつ可視光線の光軸の向きを90°変えるように配置されている。観察用光源117から発生した可視光線はビームスプリッタ119で約半分が反射され、この反射された可視光線がダイクロイックミラー103及び集光用レンズ105を透過し、加工対象物1の切断予定ライン5等を含む表面3を照明する。なお、加工対象物1の裏面が集光用レンズ105側となるよう加工対象物1が載置台107に載置された場合は、ここでいう「表面」が「裏面」となるのは勿論である。
【0045】
レーザ加工装置100はさらに、ビームスプリッタ119、ダイクロイックミラー103及び集光用レンズ105と同じ光軸上に配置された撮像素子121及び結像レンズ123を備える。撮像素子121としては例えばCCDカメラがある。切断予定ライン5等を含む表面3を照明した可視光線の反射光は、集光用レンズ105、ダイクロイックミラー103、ビームスプリッタ119を透過し、結像レンズ123で結像されて撮像素子121で撮像され、撮像データとなる。
【0046】
レーザ加工装置100はさらに、撮像素子121から出力された撮像データが入力される撮像データ処理部125と、レーザ加工装置100全体を制御する全体制御部127と、モニタ129とを備える。撮像データ処理部125は、撮像データを基にして観察用光源117で発生した可視光の焦点を加工対象物1の表面3上に合わせるための焦点データを演算する。この焦点データを基にしてステージ制御部115がZ軸ステージ113を移動制御することにより、可視光の焦点が加工対象物の表面3に合うようにする。よって、撮像データ処理部125はオートフォーカスユニットとして機能する。また、撮像データ処理部125は、撮像データを基にして表面3の拡大画像等の画像データを演算する。この画像データは全体制御部127に送られ、全体制御部で各種処理がなされ、モニタ129に送られる。これにより、モニタ129に拡大画像等が表示される。
【0047】
全体制御部127には、ステージ制御部115からのデータ、撮像データ処理部125からの画像データ等が入力し、これらのデータも基にしてレーザ光源制御部102、観察用光源117及びステージ制御部115を制御することにより、レーザ加工装置100全体を制御する。よって、全体制御部127はコンピュータユニットとして機能する。
【0048】
次に、上述したレーザ加工装置100を使用した場合の切断起点領域形成工程について、図14及び図15を参照して説明する。図15は、本実施形態に係る切断起点領域形成工程を説明するためのフローチャートである。
【0049】
加工対象物1の光吸収特性を図示しない分光光度計等により測定する。この測定結果に基づいて、加工対象物1に対して透明な波長又は吸収の少ない波長のレーザ光Lを発生するレーザ光源101を選定する(S101)。続いて、加工対象物1の厚さを測定する。厚さの測定結果及び加工対象物1の屈折率を基にして、加工対象物1のZ軸方向の移動量を決定する(S103)。これは、レーザ光Lの集光点Pを加工対象物1の基板の内部に位置させるために、加工対象物1の表面3に位置するレーザ光Lの集光点Pを基準とした加工対象物1のZ軸方向の移動量である。この移動量は全体制御部127に入力される。
【0050】
加工対象物1をレーザ加工装置100の載置台107に載置する。そして、観察用光源117から可視光を発生させて加工対象物1を照明する(S105)。照明された切断予定ライン5を含む加工対象物1の表面3を撮像素子121により撮像する。撮像素子121により撮像された撮像データは撮像データ処理部125に送られる。この撮像データに基づいて撮像データ処理部125は観察用光源117の可視光の焦点が表面3に位置するような焦点データを演算する(S107)。
【0051】
この焦点データはステージ制御部115に送られる。ステージ制御部115は、この焦点データを基にしてZ軸ステージ113をZ軸方向の移動させる(S109)。これにより、観察用光源117の可視光の焦点が加工対象物1の表面3に位置する。なお、撮像データ処理部125は撮像データに基づいて、切断予定ライン5を含む加工対象物1の表面3の拡大画像データを演算する。この拡大画像データは全体制御部127を介してモニタ129に送られ、これによりモニタ129に切断予定ライン5付近の拡大画像が表示される。
【0052】
全体制御部127には予めステップS103で決定された移動量データが入力されており、この移動量データがステージ制御部115に送られる。ステージ制御部115はこの移動量データに基づいて、レーザ光Lの集光点Pが加工対象物1の基板の内部となる位置に、Z軸ステージ113により加工対象物1をZ軸方向に移動させる(S111)。
【0053】
続いて、レーザ光源101からレーザ光Lを発生させて、レーザ光Lを加工対象物1の表面3の切断予定ライン5に照射する。レーザ光Lの集光点Pは加工対象物1の基板の内部に位置しているので、改質領域は加工対象物1の基板の内部にのみ形成される。そして、切断予定ライン5に沿うようにX軸ステージ109やY軸ステージ111を移動させて、切断予定ライン5に沿って改質領域を形成し、この改質領域によって、加工対象物1の基板の内部に切断予定ライン5に沿った切断起点領域を形成する(S113)。
【0054】
次に、本実施形態に係る加工対象物切断方法について、図16〜図25を参照して説明する。なお、図17〜図24は、図16に示す加工対象物1のXVII−XVII線に沿った部分断面図である。
【0055】
図16及び図17に示すように、シリコンウェハである基板15の表面15aに、基板15のオリエンテーションフラット16と平行に複数の機能素子(積層部)17をマトリックス状に形成して、加工対象物1を作製する。続いて、図18に示すように、加工対象物1の裏面15b側に拡張可能な拡張フィルム(第2のシート)19を貼り付ける(第2の貼付工程)。
【0056】
拡張フィルム19が貼り付けられた加工対象物1を、例えば上述のレーザ加工装置100の載置台107に載置し、図19に示すように、加工対象物1の基板15の内部に集光点Pを合わせてレーザ光Lを照射し、基板15の内部に改質領域7を形成し、この改質領域7によって、加工対象物1のレーザ光照射面(すなわち、基板15の表面15a)から所定距離内側に切断予定ライン5に沿って切断起点領域8を形成する(切断起点領域形成工程)。なお、基板15がシリコンウェハであるため、改質領域7としては溶融処理領域が形成される。
【0057】
この切断起点領域形成工程では、レーザ光Lが切断予定ライン5上を走査されるが、この切断予定ライン5は、隣り合う機能素子17,17間を通るように格子状に設定される(図16参照)。そして、この加工対象物1に対する切断予定ライン5の位置データは、例えばレーザ加工装置100の全体制御部127内の記憶部に記憶される。なお、この切断予定ライン5が設定される基板15の表面15a上にも、通常はSiO2等の絶縁膜が積層部として形成されている。
【0058】
切断起点領域8を形成した後、図20に示すように、加工対象物1の表面15a側に保護フィルム(第1のシート)20を貼り付け、この保護フィルム20により機能素子17を覆う(第1の貼付工程)。そして、図21に示すように、保護フィルム20を介して加工対象物1に押圧手段としてのナイフエッジ23を押し当て、切断起点領域8を起点として割れ24を発生させて、この割れ24を基板15の表面15aと裏面15bとに到達させる(押圧工程)。これにより、加工対象物1は、機能素子17を1つ有する個々の半導体チップ25に分割されていく。
【0059】
この押圧工程では、記憶部に記憶されていた切断予定ライン5の位置データが読み出され、この位置データに基づいてナイフエッジ23が制御されて、切断予定ライン5に沿って加工対象物1にナイフエッジ23が押し当てられ、これにより、切断予定ライン5に沿って加工対象物1が押圧されることになる。
【0060】
このように、切断起点領域形成工程において、加工対象物1に対する切断予定ライン5の位置データを記憶し、押圧工程において、その位置データに基づいて切断予定ライン5に沿って加工対象物1を押圧することで、基板1の内部に形成された切断起点領域8に対して容易且つ正確に押圧力を作用させることができる。そして、切断予定ライン5に沿って加工対象物1を押圧することで、機能素子17毎に正確に加工対象物1を切断することができ、しかも、機能素子17への押圧力の作用をほぼなくすことができる。
【0061】
加工対象物1を押圧した後、図22に示すように、保護フィルム20に紫外線を照射して保護フィルム20の粘着剤である紫外線硬化樹脂を硬化させ、図23に示すように、保護フィルム20を剥がし取る。続いて、図24に示すように、拡張フィルム19を外方側にエキスパンドして各半導体チップ25を互いに離間させる(拡張工程)。このように拡張フィルム19を用いて各半導体チップ25を互いに離間させることで、半導体チップ25のピックアップの容易化を図ることができる。なお、保護フィルム20の剥離は拡張フィルム19のエキスパンド後に行ってもよい。
【0062】
以上説明したように、本実施形態に係る加工対象物切断方法においては、多光子吸収により形成される改質領域7によって、切断予定ライン5に沿って加工対象物1の内部に切断起点領域8を形成する。このとき、多光子吸収は基板1の内部で局所的に発生し、加工対象物1の周囲面ではレーザ光Lの吸収がほとんど起こらないため、レーザ光Lの照射による機能素子17の溶融を防止することができる。そして、保護フィルム20を介した加工対象物1の押圧により、切断起点領域8を起点として割れ24が発生するため、切断予定ライン5から外れた不必要な割れの発生を防止して加工対象物1を割断することができる。しかも、機能素子17は保護フィルム20により覆われているため、押圧工程での機能素子17の損傷を防止することができる。したがって、基板15の表面15aに機能素子17を形成してなる加工対象物1を精度良く切断することが可能になる。
【0063】
また、図25に示すように、切断起点領域形成工程において、基板15の厚さ方向における中心位置を通る中心線CLから、基板15の裏面15b側に偏倚させて改質領域7を形成すれば、偏倚させずに改質領域7を形成した場合や表面15a側に偏倚させて改質領域7を形成した場合に比べ、より一層小さな押圧力で加工対象物1を切断することができる。これは、押圧工程においてナイフエッジ23の押し当てが基板15の表面15a側から行われるため(図21参照)、ナイフエッジ23の押し当てにより基板15に生じる曲げ応力のうち大きな引張応力が改質領域7に作用するからである。これにより、加工対象物1の切断をより一層精度良く行うことが可能になると共に、押圧工程での機能素子17への影響をより一層軽減することが可能になる。
【0064】
本発明は上記実施形態には限定されない。例えば、上記実施形態の押圧工程では、切断予定ライン5に沿って加工対象物1の表面15a側を押圧したが、ローラ等を用いて加工対象物1の表面15a側の全体を押圧してもよい。この場合にも、切断起点領域8を起点として割れ24が発生するため、切断予定ライン5に沿って加工対象物1を効率良く切断することができる。また、加圧ニードル等を用いて加工対象物1の表面15a側の一部分(例えば機能素子17毎の部分)を順次押圧していってもよい。なお、切断予定ライン5に沿って加工対象物1を押圧する手段としては、上述のナイフエッジ23の他にカッタ等がある。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る加工対象物切断方法によれば、基板の表面に積層部が設けられて構成された加工対象物を精度良く切断することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係るレーザ加工方法によるレーザ加工中の加工対象物の平面図である。
【図2】図1に示す加工対象物のII−II線に沿った断面図である。
【図3】本実施形態に係るレーザ加工方法によるレーザ加工後の加工対象物の平面図である。
【図4】図3に示す加工対象物のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図3に示す加工対象物のV−V線に沿った断面図である。
【図6】本実施形態に係るレーザ加工方法により切断された加工対象物の平面図である。
【図7】本実施形態に係るレーザ加工方法における電界強度とクラックスポットの大きさとの関係を示すグラフである。
【図8】本実施形態に係るレーザ加工方法の第1工程における加工対象物の断面図である。
【図9】本実施形態に係るレーザ加工方法の第2工程における加工対象物の断面図である。
【図10】本実施形態に係るレーザ加工方法の第3工程における加工対象物の断面図である。
【図11】本実施形態に係るレーザ加工方法の第4工程における加工対象物の断面図である。
【図12】本実施形態に係るレーザ加工方法により切断されたシリコンウェハの一部における断面の写真を表した図である。
【図13】本実施形態に係るレーザ加工方法におけるレーザ光の波長とシリコン基板の内部の透過率との関係を示すグラフである。
【図14】本実施形態に係るレーザ加工装置の概略構成図である。
【図15】本実施形態に係る切断起点領域形成工程を説明するためのフローチャートである。
【図16】本実施形態に係る加工対象物切断方法における加工対象物の平面図である。
【図17】本実施形態に係る加工対象物切断方法における加工対象物の作製工程を示す断面図である。
【図18】本実施形態に係る加工対象物切断方法における第2の貼付工程を示す断面図である。
【図19】本実施形態に係る加工対象物切断方法における切断起点領域形成工程を示す断面図である。
【図20】本実施形態に係る加工対象物切断方法における第1の貼付工程を示す断面図である。
【図21】本実施形態に係る加工対象物切断方法における押圧工程を示す断面図である。
【図22】本実施形態に係る加工対象物切断方法における紫外線照射工程を示す断面図である。
【図23】本実施形態に係る加工対象物切断方法における保護フィルムの剥離工程を示す断面図である。
【図24】本実施形態に係る加工対象物切断方法における拡張工程を示す断面図である。
【図25】図16に示す加工対象物のXXV−XXV線に沿った部分断面図である。
【符号の説明】
1…加工対象物、3…(加工対象物の)表面、5…切断予定ライン、7…改質領域、8…切断起点領域、15…基板、15a…(基板の)表面、15b…(基板の)裏面、21…(加工対象物の)裏面、17…機能素子(積層部)、19…拡張フィルム(第2のシート)、20…保護フィルム(第1のシート)、23…ナイフエッジ(押圧手段)、CL…中心線、L…レーザ光、P…集光点。
Claims (9)
- 基板と前記基板の表面に設けられた積層部とを有する加工対象物の前記基板の内部に集光点を合わせてパルスレーザ光を照射することにより、前記加工対象物のレーザ光入射面を溶融させずに、1パルスの前記パルスレーザ光の照射に応じて多光子吸収によって形成される部分としての溶融処理領域を前記加工対象物の切断予定ラインに沿って前記基板の内部のみに複数形成し、この溶融処理領域によって、前記切断予定ラインに沿って前記レーザ光入射面から所定距離内側に切断起点領域を形成する切断起点領域形成工程と、
前記加工対象物の前記表面側に第1のシートを貼り付ける第1の貼付工程と、
前記第1のシートを介して押圧手段で前記加工対象物を押圧することにより、前記第1のシートを切断せずに、前記切断起点領域を起点として発生した割れを前記加工対象物の表面と裏面とに到達させて、前記切断予定ラインに沿って前記加工対象物を切断する押圧工程とを備えることを特徴とする加工対象物切断方法。 - 基板と前記基板の表面に設けられた積層部とを有する加工対象物の前記基板の内部に集光点を合わせて、集光点におけるピークパワー密度が1×108(W/cm2)以上で且つパルス幅が1μs以下の条件でパルスレーザ光を照射することにより、前記加工対象物のレーザ光入射面を溶融させずに、1パルスの前記パルスレーザ光の照射に応じて形成される部分としての溶融処理領域を前記加工対象物の切断予定ラインに沿って前記基板の内部のみに複数形成し、この溶融処理領域によって、前記切断予定ラインに沿って前記レーザ光入射面から所定距離内側に切断起点領域を形成する切断起点領域形成工程と、
前記加工対象物の前記表面側に第1のシートを貼り付ける第1の貼付工程と、
前記第1のシートを介して押圧手段で前記加工対象物を押圧することにより、前記第1のシートを切断せずに、前記切断起点領域を起点として発生した割れを前記加工対象物の表面と裏面とに到達させて、前記切断予定ラインに沿って前記加工対象物を切断する押圧工程とを備えることを特徴とする加工対象物切断方法。 - 半導体材料からなる基板と前記基板の表面に設けられた積層部とを有する加工対象物の前記基板の内部に集光点を合わせて、集光点におけるピークパワー密度が1×108(W/cm2)以上で且つパルス幅が1μs以下の条件でパルスレーザ光を照射することにより、前記加工対象物のレーザ光入射面を溶融させずに、1パルスの前記パルスレーザ光の照射に応じて形成される部分としての溶融処理領域を前記加工対象物の切断予定ラインに沿って前記基板の内部のみに複数形成し、この溶融処理領域によって、前記切断予定ラインに沿って前記レーザ光入射面から所定距離内側に切断起点領域を形成する切断起点領域形成工程と、
前記加工対象物の前記表面側に第1のシートを貼り付ける第1の貼付工程と、
前記第1のシートを介して押圧手段で前記加工対象物を押圧することにより、前記第1のシートを切断せずに、前記切断起点領域を起点として発生した割れを前記加工対象物の表面と裏面とに到達させて、前記切断予定ラインに沿って前記加工対象物を切断する押圧工程とを備えることを特徴とする加工対象物切断方法。 - 半導体材料からなる基板と前記基板の表面に設けられた積層部とを有する加工対象物の前記基板の内部に集光点を合わせてパルスレーザ光を照射することにより、前記加工対象物のレーザ光入射面を溶融させずに、1パルスの前記パルスレーザ光の照射に応じて形成される部分としての溶融処理領域を前記加工対象物の切断予定ラインに沿って前記基板の内部のみに複数形成し、この溶融処理領域によって、前記切断予定ラインに沿って前記レーザ光入射面から所定距離内側に切断起点領域を形成する切断起点領域形成工程と、
前記加工対象物の前記表面側に第1のシートを貼り付ける第1の貼付工程と、
前記第1のシートを介して押圧手段で前記加工対象物を押圧することにより、前記第1のシートを切断せずに、前記切断起点領域を起点として発生した割れを前記加工対象物の表面と裏面とに到達させて、前記切断予定ラインに沿って前記加工対象物を切断する押圧工程とを備えることを特徴とする加工対象物切断方法。 - 前記切断起点領域形成工程では、前記基板の厚さ方向における中心位置から前記基板の裏面側に偏倚させて前記溶融処理領域を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の加工対象物切断方法。
- 前記押圧工程では、前記切断予定ラインに沿って押圧手段を前記加工対象物に押し当てることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の加工対象物切断方法。
- 前記切断起点領域形成工程では、前記加工対象物に対する前記切断予定ラインの位置データを記憶し、
前記押圧工程では、前記位置データに基づいて、前記切断予定ラインに沿って前記加工対象物を押圧することを特徴とする請求項6記載の加工対象物切断方法。 - 前記加工対象物の裏面側に拡張可能な第2のシートを貼り付ける第2の貼付工程を前記押圧工程前に備え、
前記第2のシートを拡張させることにより、切断された前記加工対象物を互いに離間させる拡張工程を前記押圧工程後に備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載の加工対象物切断方法。 - 基板と前記基板の表面に設けられた積層部とを有する加工対象物の前記基板の内部に集光点を合わせてパルスレーザ光を照射することにより、前記加工対象物のレーザ光入射面を溶融させずに、1パルスの前記パルスレーザ光の照射に応じて形成される部分としての溶融処理領域を前記加工対象物の切断予定ラインに沿って前記基板の内部のみに複数形成し、この溶融処理領域によって、前記切断予定ラインに沿って前記レーザ光入射面から所定距離内側に切断起点領域を形成する切断起点領域形成工程と、
前記切断起点領域形成工程後に、前記加工対象物の前記表面側に第1のシートを貼り付け、前記加工対象物の裏面側に拡張可能な第2のシートを貼り付けた状態で、前記第1のシート及び前記第2のシートを切断せずに、前記切断起点領域を起点として発生した割れを前記加工対象物の表面と裏面とに到達させて、前記切断予定ラインに沿って前記加工対象物を切断する切断工程と、
前記切断工程後に、前記第1のシートを剥がす剥離工程と、
前記剥離工程後に、前記第2のシートを拡張させることにより、切断された前記加工対象物を互いに離間させる拡張工程とを備えることを特徴とする加工対象物切断方法。
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