JP4409705B2 - 合金型温度ヒュ−ズ - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、作動温度が125℃〜135℃の合金型温度ヒュ−ズに関するものである。
【従来の技術】
【0002】
合金型温度ヒュ−ズにおいては、フラックスを塗布した低融点可溶合金片をヒュ−ズエレメントとしており、保護すべき電気機器に取り付けて使用される。
【0003】
この場合、電気機器がその異常時に発熱すると、その発生熱により低融点可溶合金片が液相化され、その溶融金属がフラックスとの共存下、表面張力により球状化され、球状化の進行により分断されて機器への通電が遮断される。
【0004】
上記低融点可溶合金に要求される要件の一つは、固相線と液相線との間の固液共存域が狭いことである。
すなわち、通常、合金においては、固相線と液相線との間に固液共存域が存在し、この領域においては、液相中に固相粒体が分散した状態にあり、液相様の性質も備えているために、上記の球状化分断が発生する可能性があり、従って、液相線温度(この温度をTとする)以前に固液共存域に属する温度範囲(ΔTとする)で、低融点可溶合金片が球状化分断される可能性がある。而して、かかる低融点可溶合金片を用いた温度ヒュ−ズにおいては、ヒュ−ズエレメント温度が(T−ΔT)〜Tとなる温度範囲で動作するものとして取り扱わなければならず、従って、ΔTが小であるほど、すなわち、固液共存域が狭いほど、温度ヒュ−ズの作動温度範囲のバラツキを小として、温度ヒュ−ズを所定の設定温度で作動させることができる。
従って、温度ヒュ−ズのヒュ−ズエレメントとして使用される合金には、まず固液共存域が狭いことが要求される。
【0005】
更に、近来、電子電気機器の小型化に伴い、温度ヒュ−ズにおいても小型化が要求され、かかる小型化に対処するために、例えば、300μmφという細線加工性が要求される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
作動温度が125℃〜135℃の汎用の合金型温度ヒュ−ズのヒュ−ズエレメントとしては、固液共存域が130℃前後で、その領域の巾が温度ヒュ−ズの作動上許容できる範囲、通常4℃以内にあることが要求され、かかる合金としては、128℃共晶のIn−Cd合金(In75重量%,Cd25重量%)やSn−Tl−Cd合金(Sn46重量%,Tl37重量%,Cd17重量%)、130℃共晶のBi−Sn−Zn合金(Bi56重量%,Sn40重量%,Zn4重量%)が知られている。
しかしながら、128℃共晶のIn−Cd合金及びSn−Tl−Cd合金においては、生態に有害なCdやTlを含有しており、環境保全の面から不適当である。また、130℃共晶のBi−Sn−Zn合金では、酸化され易く、反応性に富むZnを含有しているため、酸化やヒュ−ズエレメント塗布フラックスとの反応が促進され、経時変化による作動不良が懸念される。
【0007】
従来、上記の有害金属や反応性金属を含有しない合金型温度ヒュ−ズのヒュ−ズエレメントとして、Sn−In−Biの三元合金が知られているが、動作温度が違うばかりでなく、延性が合金強度に比べて大きいため、従来の合金型温度ヒュ−ズで用いているヒュ−ズエレメント径500μmφ以上の加工は可能であっても、前記300μmφといった細線化は難しい。
【0008】
かかる現況下、本発明者において、Bi−Sn−Inの三元合金をヒュ−ズエレメント組成とし、作動温度が125℃〜135℃の範囲で、ヒュ−ズエレメント径をほぼ300μmφ程度に極細化し得、自己発熱をよく抑えて正確に作動させ得る合金型温度ヒュ−ズを開発すべく鋭意検討したところ、Sn33〜43重量%、In0.5〜10重量%、残部Biの合金組成によって、その目的を達成できることを知った。
【0009】
本発明の目的は、かかる成果を基礎として、作動温度が125℃〜135℃の範囲で、環境保全の要請を充足し、ヒュ−ズエレメント径をほぼ300μmφ程度に極細化し得、自己発熱をよく抑えて正確に作動させ得る合金型温度ヒュ−ズを提供することにある。
【0010】
〔課題を解決するための手段〕
請求項1に係る合金型温度ヒュ−ズは、低融点可溶合金をヒュ−ズエレメントとする作動温度125℃〜135℃の温度ヒューズにおいて、低融点可溶合金の合金組成が、Sn33〜43重量%、In0.5〜10重量%、残部Biであることを特徴とする。
請求項2に係る合金型温度ヒュ−ズは、低融点可溶合金をヒュ−ズエレメントとする作動温度125℃〜135℃の温度ヒュ−ズにおいて、低融点可溶合金の合金組成が、Sn33〜43重量%、In0.5〜10重量%、残部Biの100重量部にAgが0.5〜3.5重量部添加された組成であることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に係る合金型温度ヒュ−ズにおいて、ヒュ−ズエレメントには、外径200μmφ〜500μmφ、好ましくは250μmφ〜350μmφの円形線、または当該円形線と同一断面積の扁平線を使用できる。
【0012】
このヒュ−ズエレメントの合金は、Sn33〜43重量%、In0.5〜10重量%、残部Bi、好ましくはSn38〜42重量%、In2〜7重量%、残部Biであり、基準組成は、Bi54.8重量%,Sn41.3重量%,In3.9重量%であり,その液相線温度は131℃,固液共存域巾は4℃である。
【0013】
前記Bi及びSnにより融点が140℃付近にされ、かつ細線の線引きに必要な充分な延性が与えられ、Inにより、融点が123℃〜133℃の固液共存域に設定される。Inが10重量%を越えると、延性が過度になり、300μmという細線の線引きが至難となる。
温度ヒュ−ズのヒュ−ズエレメントと機器との間には、その間の熱抵抗のために約2℃の温度差が生じるから、この基準組成を使用した温度ヒュ−ズの作動温度は125℃〜135℃である。
前記ヒュ−ズエレメントの抵抗率は、ほぼ50μΩ・cmである。
【0014】
上記合金組成100重量部にAgを0.5〜3.5重量部添加することにより、比抵抗を前記よりも低くすることができ、例えば、3.5重量部添加することにより、10%程度低くできる。
【0015】
本発明に係る温度ヒュ−ズのヒュ−ズエレメントは、合金母材の線引きにより製造され、断面丸形のまま、または、さらに扁平に圧縮加工して使用できる。
【0016】
図1は、本発明に係るテ−プタイプの合金型温度ヒュ−ズを示し、厚み100〜300μmのプラスチックベ−スフィルム41に厚み100〜200μmの帯状リ−ド導体1,1を接着剤または融着により固着し、帯状リ−ド導体間に線径250μmφ〜500μmφのヒュ−ズエレメント2を接続し、このヒュ−ズエレメント2にフラツクス3を塗布し、このフラツクス塗布ヒュ−ズエレメントを厚み100〜300μmのプラスチックカバ−フィルム41の接着剤または融着による固着で封止してある。
【0017】
本発明に係る合金型温度ヒュ−ズは、筒型ケ−スタイプ、ケ−ス型ラジアルタイプ、基板タイプ、樹脂モ−ルドラジアルタイプの形式で実施することもできる。
図2は筒型ケ−スタイプを示し、一対のリ−ド線1,1間に低融点可溶合金片2を接続し、該低融点可溶合金片2上にフラックス3を塗布し、このフラックス塗布低融点可溶合金片上に耐熱性・良熱伝導性の絶縁筒4、例えば、セラミックス筒を挿通し、該絶縁筒4の各端と各リ−ド線1との間を常温硬化の接着剤、例えば、エポキシ樹脂で封止してある。
【0018】
図3はケ−ス型ラジアルタイプを示し、並行リ−ド導体1,1の先端部間にヒュ−ズエレメント2を溶接により接合し、ヒュ−ズエレメント2にフラックス3を塗布し、このフラックス塗布ヒュ−ズエレメントを一端開口の絶縁ケ−ス4、例えばセラミックスケ−スで包囲し、この絶縁ケ−ス4の開口をエポキシ樹脂等の封止材5で封止してある。
【0019】
図4は基板タイプを示し、絶縁基板4、例えばセラミックス基板上に一対の膜電極1,1を導電ペ−スト(例えば銀ペ−スト)の印刷焼付けにより形成し、各電極1にリ−ド導体11を溶接等により接続し、電極1,1間にヒュ−ズエレメント2を溶接により接合し、ヒュ−ズエレメント2にフラックス3を塗布し、このフラックス塗布ヒュ−ズエレメントを封止材4例えばエポキシ樹脂で封止してある。
【0020】
図5は樹脂モ−ルドラジアルタイプを示し、並行リ−ド導体1,1の先端部間にヒュ−ズエレメント2を溶接により接合し、ヒュ−ズエレメント2にフラックス3を塗布し、このフラックス塗布ヒュ−ズエレメントを樹脂液ディッピングにより樹脂モ−ルド5してある。
【0021】
また、通電式発熱体付きヒュ−ズ、例えば、基板タイプの合金型温度ヒュ−ズの絶縁基板に抵抗体(膜抵抗)を付設し、機器の異常時、抵抗体を通電発熱させ、その発生熱で低融点可溶合金片を溶断させる抵抗付きの基板型ヒュ−ズの形式で実施することもできる。
【0022】
上記のフラックスには、通常、融点がヒュ−ズエレメントの融点よりも低いものが使用され、例えば、ロジン90〜60重量部、ステアリン酸10〜40重量部、活性剤0〜3重量部を使用できる。この場合、ロジンには、天然ロジン、変性ロジン(例えば、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン)またはこれらの精製ロジンを使用でき、活性剤には、ジエチルアミンの塩酸塩や臭化水素酸塩等を使用できる。
【0023】
【実施例】
〔実施例1〕
Bi54.8重量%,Sn41.3重量%,In3.9重量%の合金組成の母材を線引きして直径300μmφの線に加工した。1ダイスについての引落率を6.5%とし、線引き速度を45m/minとしたが、断線は皆無であった。
この線の抵抗率を測定したところ、50μΩ・cmであった。
この線を長さ4mmに切断してヒュ−ズエレメントとし、テ-プタイプの温度ヒュ−ズを作成した。フラックスには、ロジン80重量部,ステアリン酸20重量部,ジエチルアミン臭化水素酸塩1重量部の組成物を使用し、プラスチックベ−スフィルム及びプラスチックカバ−フィルムには厚み200μmのホリエチレンテレフタレ−トフィルムを使用した。
【0024】
この実施例品50箇を、0.1アンペアの電流を通電しつつ、昇温速度1℃/分のオイルバスに浸漬し、溶断による通電遮断時のオイル温度を測定したところ、131℃±1℃の範囲内であった。
また、上記した合金組成の範囲内であれば、動作温度を130℃を中心として±5℃の範囲内に納めることができた。
【0025】
なお、Inを11重量%以上にして直径300μmφの線引きを試みたが、合金の延性が大きく、至難であった。
【0026】
〔実施例2〕
Bi52.8重量%,Sn39.9重量%,In3.8重量%,Ag3.4重量%の合金組成の母材を線引きして直径300μmφの線に加工した。1ダイスについての引落率を6.5%とし、線引き速度を45m/minとしたが、断線は皆無であった。この線の抵抗率を測定したところ、45μΩ・cmであった。この線を長さ4mmに切断してヒュ−ズエレメントとし、実施例1と同様のテ−プタイプの温度ヒュ−ズを作成した。
【0027】
この実施例品50箇を、0.1アンペアの電流を通電しつつ、昇温速度1℃/分のオイルバスに浸漬し、溶断による通電遮断時のオイル温度を測定したところ、130℃±1℃の範囲内であった。
また、上記した合金組成の範囲内であれば、動作温度を130℃を中心として±4℃の範囲内に納めることができた。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、生態に影響のないSn−Bi−In系の低融点可溶合金母材の能率のよい線引きで300μmφクラスの極細線ヒュ−ズエレメントを製造し、このヒュ−ズエレメントを用いて動作温度が125℃〜135℃で、かつ自己発熱による作動誤差を充分に防止できる合金型温度ヒュ−ズを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る合金型温度ヒュ−ズの一例を示す図面である。
【図2】本発明に係る合金型温度ヒュ−ズの上記とは別の例を示す図面である。
【図3】本発明に係る合金型温度ヒュ−ズの上記とは別の例を示す図面である。
【図4】本発明に係る合金型温度ヒュ−ズの上記とは別の例を示す図面である。
【図5】本発明に係る合金型温度ヒュ−ズの上記とは別の例を示す図面である。
【符号の説明】
2 ヒュ−ズエレメント
Claims (2)
- 低融点可溶合金をヒュ−ズエレメントとする作動温度125℃〜135℃の温度ヒューズにおいて、低融点可溶合金の合金組成が、Sn33〜43重量%、In0.5〜10重量%、残部Biであることを特徴とする合金型温度ヒュ−ズ。
- 低融点可溶合金をヒュ−ズエレメントとする作動温度125℃〜135℃の温度ヒュ−ズにおいて、低融点可溶合金の合金組成が、Sn33〜43重量%、In0.5〜10重量%、残部Biの100重量部にAgが0.5〜3.5重量部添加された組成であることを特徴とする合金型温度ヒュ−ズ。
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