JP4409039B2 - パス故障診断装置、パス故障診断方法および自己診断機能を有する半導体集積回路装置 - Google Patents
パス故障診断装置、パス故障診断方法および自己診断機能を有する半導体集積回路装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回路の故障を診断する故障診断装置、故障診断方法および自己診断機能を有する半導体集積回路装置に関し、特に、パス遅延に基づいて回路の故障を診断するパス故障診断装置、パス故障診断方法および自己診断機能を有する半導体集積回路装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
集積回路の微細化/高速化に伴い、単純な縮退故障では診断しきれない不良が多く発生している。このようなロジック回路のアナログ的な不良を検出する手法として、ゲート遅延故障モデルやパス遅延故障モデルが提案されている。これらの遅延故障モデルは有効な手法ではあるが、実際のデバイスは回路規模が大きいため、全てのパスを試験することは現実的には不可能である。そのため、試験対象パスを限定して遅延故障の診断を行う研究が多く発表されている。
【0003】
図1は、被試験回路20のパス故障を診断する従来のパス故障診断装置10と、従来のパス故障診断方法の概念図を示す。図1(a)は、従来のパス故障診断装置10の概略構成を示す。パス故障診断装置10は、被試験回路20のパスに入力信号を供給する信号供給部30と、パスから出力される信号に基づいてパス故障の有無を診断する故障診断部42とを備える。信号供給部30は、複数のドライバ32、34、36、38、40を有する。故障診断時において、ドライバ32、34、36、38および40は、故障診断に必要な入力信号を回路の各パスに供給することができる。例えば、配線24から配線22までのパスの故障を診断する場合、ドライバ32、34、36および40は、論理値Hを被試験回路20に供給し、ドライバ38は、故障診断用の入力信号を配線24に供給する。
【0004】
図1(b)は、ドライバ38が回路の配線24に供給する入力信号と、配線22から出力される信号の波形を示す。配線22から出力される信号は、故障診断部42における比較器に入力される。比較器は、出力信号波形のエッジ位置により、パスの遅延量を測定する。故障診断部42は、測定した遅延量から、パス故障の有無を診断する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来のパス故障診断装置10は、パスから出力される信号の遅延量を直接計測し、計測した結果に基づいて被診断パスの故障の有無を診断する。しかし、デバイスの高速化に伴い、パス故障診断装置10がパス遅延量を正確に測定することは次第に困難となってくる。また、パス遅延量の精度を高めるためには、平均化処理を行う必要があり、この平均化処理はテストスループットの低下を招く。
【0006】
そこで本発明は、上記課題を解決することのできるパス故障診断装置およびパス故障診断方法を提供することを目的とする。この目的は特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態は、回路のパス故障を診断するパス故障診断装置であって、回路の所定のパスに、入力信号を供給する信号供給部と、所定の電圧を供給する電圧源と、電圧源より供給される電圧を、第1周波数を有する変動電圧に変動させる電圧変動器と、電圧変動器により変動された変動電圧が回路に供給された状態で、入力信号に基づいて所定のパスに含まれる少なくとも一つの素子を通過したパス信号に基づいて、パスの故障の有無を診断する故障診断部とを備えることを特徴とするパス故障診断装置を提供する。
【0008】
パス故障診断装置は、信号供給部と、電圧変動器に、動作タイミングを定めるタイミング信号を供給するタイミング回路を更に備え、信号供給部は、タイミング信号に基づいて、入力信号を供給し、電圧変動器は、タイミング信号に基づいて、電圧源より供給される電圧を変動させることが好ましい。故障診断部は、パス信号の遅延の変化量に基づいて、パスの故障の有無を診断することができる。
【0009】
信号供給部は、第1周波数と異なる第2周波数を有する入力信号を所定のパスに供給してもよい。また、信号供給部は、第1周波数よりも高い第2周波数を有する入力信号を所定のパスに供給してもよい。電圧変動器は、電圧源より供給される電圧を、第1周波数を有するように変動するコイルを有してもよく、また、電圧変動器は、電圧源より供給される電圧を、第2周波数を有するように変動するコンデンサを有してもよい。
【0010】
故障診断部は、パス信号の第1周波数成分またはその高調波成分に基づいて、パスの故障の有無を診断することが好ましい。また、故障診断部は、パス信号の遅延の変化量を測定して、パスの故障の有無を診断してもよい。パス信号は、パスから出力される電気信号であってよいが、パスに設けられた発光素子に電気信号が入力されることにより生じる光信号であってもよい。
【0011】
また、本発明の第2の形態は、回路のパス故障を診断するパス故障診断装置であって、回路の所定のパスに、入力信号を供給する信号供給部と、所定の電圧を供給する電圧源と、電圧源より供給される電圧を、第1周波数を有する変動電圧に変動させる電圧変動器と、電圧変動器により変動された変動電圧が回路に供給された状態で、所定のパスに含まれるトランジスタにおいて、入力信号に基づいて生じるホットエレクトロンの発光を検出する光検出器と、検出された発光に基づいて、パスの故障の有無を診断する故障診断部とを備えることを特徴とするパス故障診断装置を提供する。信号供給部は、第1周波数と異なる第2周波数を有する入力信号を所定のパスに供給することが好ましい。
【0012】
また、本発明の第3の形態は、複数の半導体素子を有する半導体集積回路装置であって、入力信号を入力されたパスに含まれる少なくとも1つの半導体素子を通過したパス信号に含まれる、半導体集積回路に供給されるべき電圧が有する所定の周波数と同一の周波数成分またはその高調波成分を検出するロックインアンプと、ロックインアンプにより検出された周波数成分の振幅を出力する出力端子とを備えたことを特徴とする自己診断機能を有する半導体集積回路装置を提供する。半導体集積回路装置は、ロックインアンプに、所定の周波数を有する電圧またはその高調波に同期した信号を入力させる入力端子を更に備えたもよい。
【0013】
また、本発明の第4の形態は、回路のパス故障を診断するパス故障診断方法であって、回路に、第1周波数を有する変動電圧を供給する変動電圧供給ステップと、回路の所定のパスに、第2周波数を有する入力信号を供給する信号供給ステップと、変動電圧が回路に供給された状態で、入力信号に基づいて所定のパスに含まれる少なくとも一つの素子を通過したパス信号に基づいて、パスの故障の有無を診断する故障診断ステップとを備えることを特徴とするパス故障診断方法を提供する。
【0014】
また、本発明の第5の形態は、回路のパス故障を診断するパス故障診断方法であって、回路に、第1周波数を有する変動電圧を供給する変動電圧供給ステップと、回路の所定のパスに、第2周波数を有する入力信号を供給する信号供給ステップと、変動電圧が回路に供給された状態で、所定のパスに含まれるトランジスタにおいて、入力信号に基づいて生じるホットエレクトロンの発光を検出する光検出ステップと、光検出ステップにおいて検出された発光に基づいて、パスの故障の有無を診断する故障診断ステップとを備えることを特徴とするパス故障診断方法を提供する。
【0015】
なお上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションも又発明となりうる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、又実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
図2は、本発明の第1実施形態における、被試験回路20のパス故障を診断するパス故障診断装置100を示す。本実施形態によるパス故障診断装置100は、回路の所定のパスに含まれる少なくとも一つの素子を通過した信号に基づいて、当該パスの故障の有無を診断する。パス故障診断装置100は、信号供給部30、タイミング回路60、電圧源80、電圧変動器70および故障診断部50を備える。試験中、信号供給部30は、被試験回路20の所定のパスに、故障診断用の入力信号を供給する。信号供給部30は、被試験回路20の配線に入力信号を供給することができる複数のドライバ32、34、36、38、40を有する。
【0018】
電圧源80は、電圧供給線82を介して、被試験回路20に所定の電圧を供給する。この例では、電圧源80が、被試験回路20に対して、電源電圧Vddを供給する。電圧変動器70は、電圧源80より供給される電圧を、所定の第1周波数を有する変動電圧に変動する。本実施形態においては、電圧変動部70が、電圧源80より供給される電源電圧Vddを変動している。別の実施形態においては、電圧変動部70は、被試験回路20に含まれる素子を駆動させる電源電圧以外の電圧を変動する機能を有してもよく、例えば、接地電圧を変動し、または基板に与える基板電圧を変動してもよい。
【0019】
故障診断部50は、電圧変動器70により変動された変動電圧が被試験回路20に供給された状態で、入力信号に基づいて所定のパスに含まれる少なくとも一つの素子を通過したパス信号に基づいて、当該パスの故障の有無を診断する。故障診断部50は、パス信号の遅延の変化量に基づいて、パスの故障の有無を診断することが好ましい。本実施形態による故障診断部50は、故障を有する不良素子が電源電圧Vddの変動により出力特性を大きく変化させることを利用して、パス故障の診断を行う。
【0020】
タイミング回路60は、信号供給部30、電圧変動器70および故障診断部50に、それぞれの動作タイミングを定めるタイミング信号を供給する。信号供給部30は、供給されたタイミング信号に基づいて、故障診断用の入力信号を被試験回路20の所定のパスに供給する。また、電圧変動器70は、供給されたタイミング信号に基づいて、電圧源80より供給される電圧を変動させる。信号供給部30が入力信号を被試験回路20のパスに供給する信号供給タイミングと、電圧変動器70が電圧を変動させる電圧変動タイミングは、同期していてもよい。別の例においては、信号供給タイミングと電圧変動タイミングとが非同期であってもよい。また、故障診断部50は、供給されたタイミング信号に基づいて、故障診断用の入力信号を供給されたパスの故障の有無を診断する。
【0021】
例えば、被試験回路20の配線24から配線22を通るパスを試験する場合、ドライバ32、34、36、40が、それぞれ論理値H(ハイ)の信号を被試験回路20に供給する。ドライバ38は、所定の第2周波数を有する入力信号を、当該パスに供給する。入力信号の第2周波数は、電圧変動器70により変動された変動電圧の第1周波数とは異なっていることが好ましい。また、入力信号の第2周波数は、変動電圧の第1周波数よりも高いことが好ましい。具体的には、入力信号の第2周波数は、被試験回路20の実動作時における数百MHzのクロック周波数に等しく設定されてもよく、また変動電圧の第1周波数は、10MHz程度に設定されてもよい。
【0022】
本実施形態においては、ドライバ38が、配線24に、変動電圧の第1周波数よりも高い第2周波数を有する入力信号を供給する。図3〜5に関連して本実施形態の原理を詳述するが、故障を有する不良素子は、第1周波数を有する変動電圧を供給された状態で入力信号を供給されると、故障の無い素子よりも、第1周波数成分またはその高調波成分の振幅が大きい信号を出力する。故障診断部50は、配線24から配線22までのパスを通過したパス信号を受け取り、パス信号の第1周波数成分またはその高調波成分に基づいて、当該パスの故障の有無を診断する。
【0023】
このように、被試験回路20の電源電圧Vddが第1周波数を有して変動される場合には、不良素子から出力される信号が、第1周波数成分およびその高調波成分を有しているので、故障診断部50は、パス信号をスペクトル分析し、第1周波数成分またはその高調波成分の振幅を検出することによって、パスに不良素子が含まれているか否かを診断することができる。故障診断部50は、入力信号の第2周波数成分またはその高調波成分の近傍に現れる第1周波数の高調波成分の振幅に基づいて、パスの不良の有無を診断してもよい。故障診断部50において、不良の有無は、所定の周波数成分に現れる振幅と、所定の振幅閾値とを比較することにより、定められてもよい。
【0024】
図3は、電源電圧Vddと素子出力特性の関係を説明するための説明図である。図3(a)は、異なる電源電圧Vddにより動作するトランジスタなどの素子出力特性を示す。図示されるように、供給される電源電圧Vddが異なると、論理値の反転に伴う遅延時間が変化する。高い電源電圧と低い電源電圧で素子を駆動させる場合を比較すると、低い電源電圧で駆動される素子の方が、出力を変化させるのに、より長い時間がかかる。
【0025】
図3(b)は、異なる電源電圧Vddを供給された素子の論理値出力特性を示す。この例では、高い電源電圧で駆動される素子は、論理値を反転するのに時間(t1−t0)を要するが、低い電源電圧で駆動される素子は、論理値を反転するのに時間(t3−t0)を要する。これは、電源電圧Vddの減少に伴って、オン電流が減少し、ゲート出力の容量を充電する時間が長くなるためであると考えられる。
【0026】
図4は、故障素子を有する回路の出力特性を説明するための説明図である。図4(a)は、不良トランジスタを含むインバータ回路の回路図である。図4(b)は、インバータ回路の出力特性を示す。点線で示された曲線は、トランジスタが正常であったときのインバータ回路の出力特性を示す。実線で示された曲線は、不良トランジスタを含むインバータ回路の出力特性である。不良トランジスタの出力は、正常なトランジスタの出力と比べて大きく遅延する。図4(c)は、インバータ回路の論理値出力特性を示す。点線で示された曲線は、トランジスタが正常であるときのインバータ回路の論理値出力特性を示す。実線で示された曲線は、トランジスタが不良であるときのインバータ回路の論理値出力特性を示す。図示されるように、不良インバータの出力論理値の立ち下がりは、正常なインバータ回路と比較して、大きく遅延する。
【0027】
図5は、本発明の実施形態の原理を説明するための概念図である。図5(a)は、本実施形態において電源電圧Vddを所定の第1周波数で変動させた場合の、ドライバ38が回路の配線24に供給する入力信号と、配線22から出力される信号の波形を示す。図5(b)は、電源電圧Vddが高くなったときの、配線22から出力される出力信号の波形を示す。電源電圧Vddが高いときには、オン電流が増加するため、ゲート出力の容量を充電する時間が短くなり、出力論理値の反転にかかる遅延時間は減少する。図5(c)は、電源電圧Vddが低くなったときの、配線22から出力される出力波形を示す。図5(b)に示された信号波形とは逆に、電源電圧が低いときには、オン電流が減少するため、出力論理値の反転にかかる遅延時間は増加する。
【0028】
図5(d)は、被診断パスに故障素子が存在し、電源電圧Vddが低くなったときに、配線22から出力される出力信号の波形を示す。図3に関連して説明したように、電源電圧Vddが低い場合には、素子の出力が遅延する。また、図4に関連して説明したように、素子が不良である場合にも、素子の出力が遅延する。従って、図5(d)に示されるように、素子が不良であり、且つ回路に供給される電源電圧が低い場合には、不良素子を含むパスを通過したパス信号は、大きく遅延する。この遅延の変化量は、電源電圧Vddの変動周波数成分およびその高調波成分によって表現される。図2を参照して、本実施形態によるパス故障診断装置100は、故障診断部50において、被診断パスからの出力信号に含まれる電源電圧Vddの第1周波数成分およびその高調波成分に基づいて、当該パスの故障の有無を診断することができる。例えば、故障診断部50は、被診断パスの出力信号の第1周波数成分またはその高調波成分をスペクトル分析し、その振幅を測定することによって、パス故障の有無を判定してもよい。
【0029】
図6は、パスの出力信号をスペクトル分析した分析結果を示す。図中、横軸は、周波数成分を表し、縦軸は、周波数成分における振幅を表す。電源電圧Vddの変動周波数を10MHz、パスに供給される入力信号の周波数を200MHzに設定する。図6(a)は、故障の無いパスの出力信号をスペクトル分析した分析結果であり、図6(b)は、故障のあるパスの出力信号をスペクトル分析した分析結果である。
【0030】
図6(a)に示されるように、故障のないパスの出力信号は、電源電圧Vddの変動を受け、電源電圧Vddの変動周波数成分(10MHz)およびその高調波成分に僅かな振幅を有していることが観測される。これは、図5(b)または(c)に関連して説明したように、電源電圧の変動により、良好なトランジスタが、僅かながら遅延成分を増減させるためである。
一方、図6(b)に示されるように、故障のあるパスの出力信号は、電源電圧Vddの変動を受け、電源電圧Vddの変動周波数成分またはその高調波成分に大きな振幅を有していることが観測される。このスペクトル分析結果においては、電源電圧Vddの変動周波数に相当する10MHzの周波数成分に、特に大きな振幅が観測される。この例では、故障診断部50(図2参照)は、周波数10MHzの振幅に基づいて、パス故障の有無を診断するのが好ましい。このとき、故障診断部50は、変動周波数の振幅を所定の振幅閾値と比較することによって、パスの遅延が故障による遅延であるか否かを判断してもよい。また、故障診断部50は、入力信号の周波数(200MHz)の高調波成分近傍に存在する、電源電圧Vddの変動周波数の高調波成分の振幅に基づいて、パスの故障の有無を診断しても良い。
【0031】
図7は、電圧源80より供給される電圧を変動させる電圧変動器70の具体的な構成例を示す。図7(a)の例において、電圧変動器70は、電圧供給線82に所定の周波数を有する電磁波を出力するコイルである。コイルは、交流電源より、所定の周波数を有する交流電流を供給される。コイルは、電圧供給線82の方向に対して垂直な磁界を発生するのが好ましい。磁界の向きに垂直な方向に存在する電圧供給線82は、電磁波を受けるアンテナとして機能し、電源電圧を変動させる。
【0032】
図7(b)の例において、電圧変動器70は、コンデンサの構成を有し、具体的には、交流電源72および電極70a、70bを有する。被試験回路20は、電極70aと70bの間に挟まれるように配置される。交流電界は、電極70aと70bの間で生成され、被試験回路20に含まれる電源電圧Vddを、交流電界の周波数で変動させる。交流電源72は、交流電界の周波数を変化させることができる。
【0033】
図7(c)の例において、電圧変動器70が、電圧供給線82に所定の周波数を有する交流電界を供給するプローブを有する。プローブは、電圧供給線82に接触される。電源電圧は、交流電界により、所定の周波数を有して変動される。
【0034】
図8は、被試験回路20の配線22から出力されるパス信号を取り出す実施例を示す。図8(a)は、配線22にプローブ52を接触させ、パス信号を回路外部に取り出す例を示す。プローブ52により取り出されたパス信号は、故障診断部50に供給される。
【0035】
図8(b)は、配線22に設けられた発光素子26を利用して、パス信号を取り出す例を示す。この実施例におけるパス故障診断装置100は、光信号を検出する光検出器54を備える。被診断パスにおいて、電気信号が発光素子26に入力されと、発光素子26は、電気信号を光信号に変換して、出力する。光検出器54は、発光素子26により出力された光信号をパス信号として受け取り、電気信号に変換して、後段の故障診断部に供給する。この例においては、光信号をパス信号として利用するため、高速にパス故障診断を行うことが可能となる。
【0036】
図9は、本発明の第2実施形態における、被試験回路20のパス故障を診断するパス故障診断装置100を示す。本実施形態によるパス故障診断装置100は、被診断パスに含まれるトランジスタにおけるキャリアの発光を利用して、当該パスの故障の有無を診断する。パス故障診断装置100は、信号供給部30、タイミング回路60、電圧源80、電圧変動器70、故障診断部50および光検出器54を備える。信号供給部30は、被試験回路20の配線に入力信号を供給することができる複数のドライバ32、34、36、38、40を有する。図9において、図2に示された構成と同一の符号を付された構成は、対応する符号を付された構成と同一または同様の構造および機能を有する。
【0037】
CMOS集積回路において、半導体内のキャリア(ホットエレクトロン)は、印加された電界と取得エネルギとにより加速される。例えば、電界効果型トランジスタ(FET)において、ソースとドレイン間に印加される電界は、ほぼ106V/cmと非常に大きい。このような大きな電界の下で、キャリアは、スペクトラムの可視領域と赤外領域で測定可能な光量を生成するのに十分なエネルギを取得することができる。高いエネルギを有するキャリアの発光は、FETが状態を切り替えたときに発生する。
【0038】
光検出器54は、このようにしてトランジスタにおいて生じるホットエレクトロン(熱電子)の発光を検出する。本実施形態において、光検出器54は、電圧変動器70により変動された変動電圧が被試験回路20に供給された状態で、所定のパスに含まれるトランジスタにおいて、パスに供給される入力信号に基づいて生じるホットエレクトロンの発光を検出する。故障診断部50は、光検出器54において検出された発光に基づいて、パスの故障の有無を診断する。
【0039】
不良トランジスタを通過した信号波形は、変動電圧の第1周波数成分およびその高調波成分を含んだ遅延成分を有する。この遅延成分は、トランジスタにおいて生じるホットエレクトロンの発光タイミングに現れる。光検出器54は、ホットエレクトロンの発光を検出して、対応する電気信号に変換し、故障診断部50は、この電気信号をスペクトル分析して、変動電圧の第1周波数成分またはその高調波成分の振幅を検出する。この第1周波数またはその高調波成分の振幅に基づいて、パスの良否が判定される。本実施形態は、トランジスタの発光を利用するため、パスの良否判定を高速に行うことができるという利点を有する。
【0040】
図10は、本発明の第3実施形態における、被試験回路20のパス故障を診断するパス故障診断装置100を示す。本実施形態によるパス故障診断装置100は、回路の所定のパスに含まれる少なくとも一つの素子を通過した信号に基づいて、当該パスの故障の有無を診断する。パス故障診断装置100は、信号供給部30、タイミング回路60、電圧源80、電圧変動器70および故障診断部50を備える。試験中、信号供給部30は、被試験回路20の所定のパスに、故障診断用の入力信号を供給する。信号供給部30は、被試験回路20の配線に入力信号を供給することができる複数のドライバ32、34、36、40およびフリップフロップ44を有する。フリップフロップ44の出力は、被試験回路20の配線22に接続される。故障診断部50は、被試験回路20の配線22からの出力をデータ入力とするフリップフロップ56を有する。図10において、図2に示された構成と同一の符号を付された構成は、対応する符号を付された構成と同一または同様の構造および機能を有する。
【0041】
タイミング回路60は、動作タイミングを定めるタイミング信号を、フリップフロップ44、56および電圧変動器70に供給する。タイミング回路60は、フリップフロップ44に対して、被試験回路20の所定のパスに入力信号を供給するタイミングを定めるタイミング信号を供給し、フリップフロップ56に対して、パスから出力されるパス信号の出力タイミングを走査して検出するためのタイミング信号を供給する。
【0042】
フリップフロップ44が、タイミング信号に基づいて、故障診断用の入力信号を配線24に供給する。入力信号に基づいて、遅延成分を含んだパス信号が配線22から出力される。パス信号は、被試験回路20に供給される電源電圧の変動周波数に応じた遅延変化量を有する。パス信号は、フリップフロップ56に入力される。フリップフロップ56は、タイミング回路60からクロック入力に供給されるタイミング信号に基づいて、データ入力に入力されているパス信号の論理値を出力する。タイミング回路60は、供給タイミングをずらしながら、フリップフロップ56にタイミング信号を供給する。故障診断部50において、フリップフロップ56から出力される論理値が切り替わると、切り替わったタイミングで、パス信号の遅延量が測定される。故障診断部50は、パス信号の遅延量に基づいて、パスの故障の有無を診断することができる。
【0043】
図11は、複数の半導体素子を有する、自己診断機能を備えた半導体集積回路装置110を示す。半導体集積回路装置110は、所定のパスに故障診断用の入力信号を供給する信号供給部30、所要の回路動作を実現し、自己診断時において故障の有無を診断される被試験回路20、被試験回路20から出力されるパス信号の位相検波を行うロックインアンプ90を備える。信号供給部30は、被試験回路20に信号を供給する複数のドライバ32、34、36、38および40を有する。また、半導体集積回路装置110は、端子として、信号供給部30に必要なデータ信号を供給させるデータ入力端子102、半導体集積回路装置110に電源電圧を供給させる電源電圧端子96と接地電位を供給させる接地端子98、ロックインアンプ90に所定の周波数を有する信号を供給させる入力端子94、およびロックインアンプ90の検波結果を出力させる出力端子92を備える。
【0044】
半導体集積回路装置110の自己診断機能を用いてパス故障診断を行う際、電源電圧端子96には、所定の周波数で変動された変動電源電圧が供給される。信号供給部30は、所定のパスに入力信号を供給する。ロックインアンプ90は、入力端子94より、変動電源電圧の周波数またはその高調波に同期した同期信号を入力される。ロックインアンプ90は、入力信号を入力されたパスに存在する素子を通過したパス信号に含まれる、半導体集積回路110に供給されるべき電圧が有する所定の周波数と同一の周波数成分またはその高調波成分を検出する。詳細には、ロックインアンプ90は、変動電源電圧の周波数またはその高調波に同期した同期信号を入力され、パス信号に含まれる同期信号と同一の周波数成分を検出し、その振幅レベルを出力端子92より出力する。半導体集積回路装置110の外部に設けられたパス故障診断装置は、出力端子92から出力される信号に基づいて、被試験回路20の良否の診断を行う。
【0045】
上記説明から明らかなように、本発明によれば、回路のパス故障を有効に診断するパス故障診断装置、パス故障診断方法、および自己診断機能を有する半導体集積回路装置を提供することができる。以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることができることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0046】
【発明の効果】
本発明によると、回路のパス故障を有効に診断することのできるパス故障診断装置、パス故障診断方法および自己診断機能を有する半導体集積回路装置を提供することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】被試験回路20のパス故障を診断する従来のパス故障診断装置10と、従来のパス故障診断方法の概念図を示す。
【図2】本発明の第1実施形態における、被試験回路20のパス故障を診断するパス故障診断装置100を示す。
【図3】電源電圧Vddと素子出力特性の関係を説明するための説明図である。
【図4】故障素子を有する回路の出力特性を説明するための説明図である。
【図5】本発明の実施形態の原理を説明するための概念図である。
【図6】パスの出力信号をスペクトル分析した分析結果を示す。
【図7】電圧源80より供給される電圧を変動させる電圧変動器70の具体的な構成例を示す。
【図8】被試験回路20の配線22から出力されるパス信号を取り出す実施例を示す。
【図9】本発明の第2実施形態における、被試験回路20のパス故障を診断するパス故障診断装置100を示す。
【図10】本発明の第3実施形態における、被試験回路20のパス故障を診断するパス故障診断装置100を示す。
【図11】複数の半導体素子を有する、自己診断機能を備えた半導体集積回路装置110を示す。
【符号の説明】
10・・・パス故障診断装置、20・・・被試験回路、22、24・・・配線、26・・・発光素子、30・・・信号供給部、32、34、36、38、40・・・ドライバ、42、50・・・故障診断部、44、56・・・フリップフロップ、52・・・プローブ、54・・・光検出器、60・・・タイミング回路、70・・・電圧変動器、70a、70b・・・電極、72・・・交流電源、80・・・電圧源、82・・・電圧供給線、90・・・ロックインアンプ、92・・・出力端子、94・・・入力端子、96・・・電源電圧端子、98・・・接地端子、100・・・パス故障診断装置、102・・・データ入力端子、110・・・半導体集積回路装置
Claims (17)
- 回路のパス故障を診断するパス故障診断装置であって、
前記回路の所定のパスに、入力信号を供給する信号供給部と、
所定の電圧を供給する電圧源と、
前記電圧源より供給される電圧を、第1周波数を有する変動電圧に変動させる電圧変動器と、
前記電圧変動器により変動された変動電圧が前記回路に供給された状態で、前記入力信号に基づいて前記所定のパスに含まれる少なくとも一つの素子を通過したパス信号の前記第1周波数の成分またはその高調波成分に基づいて、前記パスの故障の有無を診断する故障診断部とを備えることを特徴とするパス故障診断装置。 - 前記信号供給部と、前記電圧変動器に、動作タイミングを定めるタイミング信号を供給するタイミング回路を更に備え、
前記信号供給部は、前記タイミング信号に基づいて、前記入力信号を供給し、
前記電圧変動器は、前記タイミング信号に基づいて、前記電圧源より供給される電圧を変動させることを特徴とする請求項1に記載のパス故障診断装置。 - 前記故障診断部は、前記パス信号の前記第1周波数の成分またはその高調波成分によって表現される遅延の変化量に基づいて、前記パスの故障の有無を診断することを特徴とする請求項1または2に記載のパス故障診断装置。
- 前記信号供給部は、前記第1周波数と異なる第2周波数を有する前記入力信号を前記所定のパスに供給することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のパス故障診断装置。
- 前記信号供給部は、前記第1周波数よりも高い前記第2周波数を有する前記入力信号を前記所定のパスに供給することを特徴とする請求項4に記載のパス故障診断装置。
- 前記故障診断部は、前記第1周波数の高調波成分の振幅に基づいて、前記パスの故障の有無を診断することを特徴とする請求項4または5に記載のパス故障診断装置。
- 前記電圧変動器は、前記電圧源より供給される電圧を、前記第1周波数を有するように変動するコイルを有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のパス故障診断装置。
- 前記電圧変動器は、前記電圧源より供給される電圧を、前記第2周波数を有するように変動するコンデンサを有することを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載のパス故障診断装置。
- 前記故障診断部は、前記パス信号の遅延の変化量を測定して、前記パスの故障の有無を診断することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のパス故障診断装置。
- 前記パス信号は、前記パスに設けられた発光素子に電気信号が入力されることにより生じる光信号であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のパス故障診断装置。
- 前記故障診断部は、前記パス信号の所定の周波数成分に現れる振幅と、予め定められた振幅閾値とを比較して、前記パスの故障の有無を診断することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のパス故障診断装置。
- 回路のパス故障を診断するパス故障診断装置であって、
前記回路の所定のパスに、入力信号を供給する信号供給部と、
所定の電圧を供給する電圧源と、
前記電圧源より供給される電圧を、第1周波数を有する変動電圧に変動させる電圧変動器と、
前記電圧変動器により変動された変動電圧が前記回路に供給された状態で、前記所定のパスに含まれるトランジスタにおいて、前記入力信号に基づいて生じるホットエレクトロンの発光を検出して対応する電気信号に変換する光検出器と、
前記電気信号の前記第1周波数の成分またはその高調波成分に基づいて、前記パスの故障の有無を診断する故障診断部とを備えることを特徴とするパス故障診断装置。 - 前記信号供給部は、前記第1周波数と異なる第2周波数を有する前記入力信号を前記所定のパスに供給することを特徴とする請求項12に記載のパス故障診断装置。
- 複数の半導体素子を有する半導体集積回路装置であって、
入力信号を入力されたパスに含まれる少なくとも1つの前記半導体素子を通過したパス信号に含まれる、前記半導体集積回路に供給されるべき電圧が有する所定の周波数と同一の周波数成分またはその高調波成分を検出するロックインアンプと、
前記ロックインアンプにより検出された周波数成分の振幅を出力する出力端子とを備え、
前記出力端子から出力される前記パス信号の前記所定の周波数成分またはその高調波成分の振幅に基づいて、前記パスの故障の良否の診断を行うことを特徴とする半導体集積回路装置。 - 前記ロックインアンプに、所定の周波数を有する前記電圧またはその高調波に同期した信号を入力させる入力端子を更に備えたことを特徴とする請求項14に記載の半導体集積回路装置。
- 回路のパス故障を診断するパス故障診断方法であって、
前記回路に、第1周波数を有する変動電圧を供給する変動電圧供給ステップと、
前記回路の所定のパスに、第2周波数を有する入力信号を供給する信号供給ステップと、
前記変動電圧が前記回路に供給された状態で、前記入力信号に基づいて前記所定のパスに含まれる少なくとも一つの素子を通過したパス信号の前記第1周波数の成分またはその高調波成分に基づいて、前記パスの故障の有無を診断する故障診断ステップとを備えることを特徴とするパス故障診断方法。 - 回路のパス故障を診断するパス故障診断方法であって、
前記回路に、第1周波数を有する変動電圧を供給する変動電圧供給ステップと、
前記回路の所定のパスに、第2周波数を有する入力信号を供給する信号供給ステップと、
前記変動電圧が前記回路に供給された状態で、前記所定のパスに含まれるトランジスタにおいて、前記入力信号に基づいて生じるホットエレクトロンの発光を検出する光検出ステップと、
前記光検出ステップにおいて検出された発光信号の前記第1周波数の成分またはその高調波成分に基づいて、前記パスの故障の有無を診断する故障診断ステップとを備えることを特徴とするパス故障診断方法。
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