ところで、このような紙幣処理装置では、新しい紙幣だけではなく、市場で流通した紙幣も処理するため、様々な紙幣に対応することが求められる。こうした処理紙幣の中には、損傷が非常に多いものもあり、このような損傷の多い紙幣を集積した場合には、集積幅も新しい紙幣の集積幅より増大してしまう。
例えば、海外においては、紙幣の扱いが粗雑であるため、このように損傷の多い紙幣が流通している場合が多く、集積幅が増大することが多い。
しかし、一般の紙幣処理装置では、出金口の紙幣収納スペースにそのまま紙幣を集積する「空間集積」といわれる方式により紙幣集積を行うため、前述のように紙幣の集積幅が増大すると、限られた出金口の紙幣収容スペースでは出金額が限られてしまうといった問題や、集積された紙幣が整列せず、紙幣収納スペース内での詰まり、所謂ジャムの原因を誘発するといった問題が生じることになる。
そこで、損傷の多い紙幣を集積する場合であっても、集積幅を減少し、紙幣を整列させる方法として、前述の特許文献1にも開示されているように、出金口の紙幣集積に集積ホイールを用いることが考えられる。
確かに、特許文献1のように集積ホイールを用いて紙幣を集積することにより、損傷の多い紙幣であっても、集積幅をコンパクトにすることができるため、前述の問題を解消できる。
しかしながら、前述の特許文献1の場合には別の問題がある。それは、出金口と入金口を別々に設けているため、入出金のためのレイアウトスペースを、確保する必要が生じ、装置自体をコンパクトにできないという問題である。
この問題に対しては、前述のように入金口と出金口を共通化して一つの入出金口で紙幣の入出金を行う構成を採用することが考えられる。
しかし、このように、集積ホイールを出金口の近傍に設けるものにおいて入出金口を一つとしてしまうと、また新たな問題が生じる。それは、操作者が入金を行う場合に入出金口内の紙幣収納スペースに手を入れて、その紙幣収納スペースに露出した集積ホイールを破損させてしまうという問題である。
すなわち、入金口と出金口を共通化すると、操作者がその紙幣収納スペースに手を差し込む可能性が生じ、その手によって、集積ホイールを破損させてしまうおそれが生じるのである。
そこで、この発明は、紙幣を入出金取引する紙幣処理装置において、入出金口を共通化することで、装置のコンパクト化を図り、その入出金口の近傍に集積ホールを設けることで、紙幣の詰まり等を防止しつつも、その入出金口内に操作者が手を差し込んでも、集積ホイールを破損しないようにした紙幣処理装置を提供することを目的とする。
この発明による紙幣処理装置は、紙幣の入金と出金とを行う紙幣処理装置にあって、該装置に対して紙幣の入出金を行う入出金口と、該入出金口内に露出するように配置され、該入出金口内に紙幣を一枚ずつ分離集積する集積ホイールと、該集積ホイールの露出部分に位置し、集積ホイールを保護する保護部材と、該保護部材を、集積ホイールを保護する保護位置、紙幣集積に影響を与えない退避位置、及び集積紙幣を押圧する押圧位置にそれぞれ移動させる移動制御手段とを備え、前記保護部材は、前記押圧位置において集積紙幣を押圧する略上下方向に延びる押圧面と、該押圧面の上端から略水平方向に延びて前記保護位置において集積ホイールを保護する保護面とを備える断面略L字状のプレート部材で構成したものである。
上記構成によれば、紙幣の入金を行う入金口と出金を行う出金口を一つの入出金口とすることで共通化して、その入出金口内に露出するように配置した集積ホイールで紙幣を一枚ずつ入出金口内に集積し、その集積ホイールを露出部分に位置する保護部材で保護しつつ、その保護部材を、集積ホイールを保護する保護位置、紙幣集積に影響を与えない退避位置、及び集積紙幣を押圧する押圧位置に、それぞれ移動制御手段で移動させることになる。
すなわち、入出金口を一つとすることで装置のコンパクト化を図り、集積ホイールを用いることで損傷が多い紙幣の集積であっても集積幅の増大を防ぎ、また、集積ホイールを保護する保護部材を、移動制御手段で保護位置、退避位置、押圧位置といった3つの位置を移動させるため、一つの保護部材に様々な機能を持たせることができる。
具体的には、保護位置に移動させることにより、集積ホイールを保護する機能、退避位置に移動させることにより、集積ホイールの紙幣集積を阻害しない機能、さらに押圧位置に移動させることにより、繰出す集積紙幣を押圧する機能を、一つの保護部材に持たせることができる。
さらに、上記構成によれば、押圧面と保護面とを有する断面略L字状のプレート部材で保護部材を構成しているため、それぞれの面で押圧機能と保護機能を確実に確保することができる。すなわち、押圧する方向が略水平方向であるため、それと直交する略上下方向に押圧面を設けることで押圧機能を確保することができ、また、操作者の手を差し込む方向が略上下方向であることから、それと直交する略水平方向に保護面を設けることで保護機能を確保することができるのである。
この発明による紙幣処理装置は、紙幣の入金と出金とを行う紙幣処理装置にあって、該装置に対して紙幣の入出金を行う入出金口と、該入出金口内に露出するように配置され、該入出金口内に紙幣を一枚ずつ分離集積する集積ホイールと、該集積ホイールの露出部分に位置し、集積ホイールを保護する保護部材と、前記集積ホイールの紙幣集積時に、前記保護部材を前記集積ホイールの保護位置から紙幣集積に影響を与えない退避位置に移動させる移動制御手段とを備え、前記移動制御手段は、前記保護部材を、入出金時に集積ホイールを保護する保護位置に移動させ、紙幣繰出時に前記入出金口内の紙幣を繰出すべく紙幣を押圧する押圧位置にそれぞれ移動させるように構成し、前記保護部材は、前記押圧位置において集積紙幣を押圧する略上下方向に延びる押圧面と、該押圧面の上端から略水平方向に延びて前記保護位置において集積ホイールを保護する保護面とを備える断面略L字状のプレート部材で構成したものである。
上記構成によれば、紙幣の入金を行う入金口と出金を行う出金口を、一つの入出金口とすることで共通化して、その入出金口内に露出するように配置した集積ホイールで紙幣を一枚ずつ入出金口内に集積し、その集積ホイールを露出部分に位置する保護部材で保護しつつ、集積ホイールの紙幣集積時には、その保護部材を移動制御手段で紙幣集積に影響を与えない退避位置に移動させることになる。
すなわち、紙幣の入出金口を一つとすることで、装置のコンパクト化を図り、集積ホイールで紙幣を集積することで、損傷が多い紙幣の集積であっても集積幅の増大を防ぎ、また、この集積ホイールの露出部分を、移動制御手段で移動可能な保護部材で保護することで、操作者の手との干渉を防ぐのである。
さらに、上記構成によれば、押圧面と保護面とを有する断面略L字状のプレート部材で保護部材を構成しているため、それぞれの面で押圧機能と保護機能を確実に確保することができる。すなわち、押圧する方向が略水平方向であるため、それと直交する略上下方向に押圧面を設けることで押圧機能を確保することができ、また、操作者の手を差し込む方向が略上下方向であることから、それと直交する略水平方向に保護面を設けることで保護機能を確保することができるのである。
なお、この保護部材は、集積ホイールの露出部分を保護するものであれば、特に形状及び移動形態は限定されるものではなく、例えば、集積ホイールの露出部分を操作者から目視できないように覆うものや、また目視できたとしても、その露出部分に操作者の手が触れないように保護するもの、さらに手が触れるとしても、容易に触れることができないように保護するものまで含みうるものである。
さらに、上記構成によれば、移動制御手段が、保護部材を、入出金時には集積ホイールを保護する保護位置に移動させ、紙幣繰出時には紙幣を押圧する押圧位置に移動させるため、保護部材に、入出金時、紙幣繰出時それぞれに応じた様々な機能を持たせることができる。
この発明の一実施態様においては、前記保護部材を、紙幣繰出し時に集積紙幣を押圧する押圧板で構成したものである。
上記構成によれば、紙幣繰出し時に紙幣に押圧する押圧板で保護部材を構成しているため、既存の押圧板に集積ホイールの保護機能を与えることができ、別途保護部材のため、別部材を設けなくてもよい。
よって、部品点数を増加させることなく、コストアップをできるだけ抑えて、集積ホイールの破損を防止することができる。
この発明の一実施態様においては、前記集積ホイールを、複数の片が所定の傾斜角を持って放射状に延びる回転体で構成し、該集積ホイールを、その片が前記入出金口の紙幣投入方向に略対向して延びるように配置したものである。
上記構成によれば、集積ホイールを、その片が入出金口の紙幣投入方向に略対向して延びるように配置しているため、破損しやすい集積ホイールの片と紙幣投入を行う操作者の手とが干渉しやすくなるが、前述のように保護部材で集積ホイールを保護するため、操作者の手が集積ホイールに干渉することなく、集積ホイールの破損を防止することができる。
この発明の一実施態様においては、前記集積ホイールを、回転軸方向に離間して複数設け、該複数の集積ホイールの間に、前記保護部材を配置し、前記保護位置では、該保護部材を集積ホイールの外周端より外方に突出させ、前記退避位置では、該保護部材を集積ホイールの回転軸側に没入するように、前記移動制御手段を制御したものである。
上記構成によれば、複数の集積ホイールを回転軸方向に離間して配置し、その集積ホイールの間に保護部材を配置し、その間で保護部材が出没するように移動制御手段を制御することになる。このため、保護部材は、集積ホイールの間のスペースで出没することになるため、保護部材の退避スペースを別途設ける必要がない。よって、装置を大型化することなく保護部材を配置することができる。
この発明の一実施態様においては、前記集積ホイールの回転軸方向に集積ホイールと保護部材を複数交互に配置し、該保護部材を外端部に位置するように設定したものである。
上記構成によれば、集積ホイールと保護部材を交互に配置し、保護部材を外端部に配置することになるため、集積ホイールは外端部には位置しない。このため、紙幣集積時に紙幣の端部を集積ホイールで挟み込まないため、端部が垂れ下がるような損傷の多い紙幣であっても、確実に集積することができる。よって、損傷が多い紙幣であってもスムーズに集積することができる。
この発明の一実施態様においては、前記保護部材の押圧面と保護面を連続する曲面によって連ならせたものである。
上記構成によれば、保護部材の押圧面と保護面とが曲面でなだらかに連なることになるため、押圧面に押圧機能だけでなく集積ホイールの保護機能を持たせることができる。よって、押圧面を利用して保護面積を広く確保することができる。
この発明の一実施態様においては、前記保護部材の保護面の端部に上方に突出する鉤部を設けたものである。
上記構成によれば、保護部材の保護面の端部に上方に突出する鉤部を設けたことにより、集積ホイールによる紙幣集積後、集積ホイール上に集積途中の紙幣が残存していたとしても、保護部材を移動させる際にその鉤部で集積方向に払い落とすことができるため、集積ホイール上に紙幣を残存させることなく、紙幣を確実に集積することができる。よって、紙幣の搬送処理をより効率的に行うことができる。
この発明によれば、紙幣の入出金口を一つとすることで装置のコンパクト化を図り、集積ホイールで紙幣を集積することで損傷が多い紙幣の集積であっても集積幅の増大を防ぎ、また、この集積ホイールの露出部分を、移動制御手段で移動可能な保護部材で保護することで、操作者の手との干渉を防ぐことになる。
よって、入出金口を共通化することで装置のコンパクト化を図り、その入出金口の近傍に集積ホイールを設けることで、紙幣の詰まり等を防止しつつも、その入出金口内に操作者が手を差し込んでも、集積ホイールを破損しないようにすることができる。
以下、図面に基づいてこの発明の実施形態を詳述する。
図1は本実施態様の紙幣処理装置の内部構造を示した概略図である。この紙幣処理装置1は上部一側(図中右上)に、紙幣の入出金を行う入出金口11を設け、この入出金口11の上方には、異物等の返却を行う返却口トレー12を設けている。
また、入出金口11と連通する装置内方には、入出金紙幣の真偽や金種を識別する識別部13と、識別部を通過した紙幣を入出金が確定するまで一旦保留する一時保留部14と、金種別に収納する第1〜第4カセットC1〜C4と、識別不良と判定した紙幣や損券紙幣を回収するリジェクトカセットC5とを内蔵し、これらをリサイクル式にループ状に搬送経路L1〜L4で接続している。
この場合、紙幣処理装置1の上部側を紙幣搬送用の搬送処理群15として設け、下部側を紙幣収納用の収納処理群16として設けて、上下を搬送系と収納系とに分離構成している。
上部側の搬送処理群15には、入出金口11から識別部13を介して一時保留部14に連なる第一搬送経路L1と、識別部13の下流位置から分離して入出金口11に戻る第二搬送経路L2とを有している。この第二搬送経路L2には、さらに返却口トレー12に異物等を搬送する第三搬送経路L3をその下流に設けている。
また、入出金口11の前段には、紙幣A…を整列集積する集積ホイール17を配設して整列集積を促進し、またこの整列集積に基づいて繰出し時の安定した繰出し動作を促進している。
一方、下部側の収納処理群16には、一時保留部14から延びて第一搬送経路L1の上流に接続されるループ状の第四搬送経路L4と、紙幣処理装置1の前面側から後面側にかけて千円札、五千円札、万円札、予備札や混合札を収納する第1〜第4カセットC1〜C4とリジェクトカセットC5と、を配設し、第四搬送経路で搬送される紙幣を、これらのカセットC1〜C5に出入れすることで入出金取引を許容している。
また、これら搬送経路L1〜L4および下方の各カセットC1〜C5の紙幣出入れ部分には、紙幣Aの通過を検知確認する通過検知センサ(図示せず)を複数配設して、紙幣の入出金処理状態等を検知確認している。
次に、この紙幣処理装置の紙幣の搬送処理について説明する。
例えば、入金時に入出金口11に投入された紙幣A…は、入出金口11→第一搬送経路L1→識別部13→一時保留部14の順で搬送処理する入金経路を介して一時保留部14に一時保留し、次処理の入金確定処理か入金取消し処理かに備えて待機する。
入金確定すると、一時保留部14から紙幣A…を繰出して→第四搬送経路L4→カセットC1〜C5の順で搬送処理する収納経路を介して、各カセットC1〜C5に振分けて、紙幣を収納処理する。
これに対し、入金取消し時は、一時保留部14から紙幣A…を繰出し→第四搬送経路L4→第一搬送経路L1→識別部13→第二搬送経路L2→集積ホイール17→入出金口11という順で返却処理する。
なお、入金時に識別部13において異物と判断された紙幣等については、一時保留部14には搬送されず、第二搬送経路L2、第三搬送経路L3を介して返却トレー12に返却される。
また、出金時には、金種に対応する第1〜第4カセットC1〜C4から紙幣A…を繰出し→第四搬送経路L4→第1搬送経路L1→識別部13→第二搬送経路L2→集積ホイール17→入出金口11という順で出金処理する。
次に、入出金口11の詳細構造について説明する。図2は紙幣投入及び取出し時における入出金口11の詳細断面図、図3はその平面図である。
入出金口11には、図2に示すように、紙幣Aの投入及び取出しを行う際に開閉するシャッター21、紙幣収納スペースSを確保するよう傾斜して略上下方向に延びる縦壁部22、集積紙幣A…の下端を支持するよう略水平方向に延びる底面部23、縦壁部22の対向位置に配置され紙幣収納スペースSに露出する集積ホイール17、その集積ホイール17の露出部分に位置して集積ホイール17を保護する保護板24、その保護板24を移動制御する移動リンク機構25、紙幣集積時に集積紙幣A…を支持するセパレータ26、入金時に集積紙幣A…を装置内に繰出す繰出し機構27を備えている。
このうち、前述の集積ホイール17は、中央に回転軸28を有し、その周囲に放射状に且つ湾曲して延びる複数の片17a…を有しており、この片17a…の間に、第三搬送経路L3から搬送されてきた紙幣Aを一枚ずつ挟み込み、図面上、時計回りに回転することで紙幣収納スペースSに紙幣A…を整列集積するように構成している(後述図5参照)。
また、この集積ホイール17の各片17a…は、図2からも分かるように、繊細で且つその先端部が紙幣投入方向Zに対して対向するように設定されており、操作者の手Hと干渉すると容易に破損しやすい配置関係となっている。
前述の保護板24は、こうした破損しやすい集積ホイール17の露出部分に位置し、集積ホイール17を保護している。具体的には、この保護板24は、略上下方向に延びて紙幣繰出し時集積紙幣A…を押圧する押圧面24aと、略水平方向に延びて上方からの操作者の手の差込み投入に対して集積ホイールを保護する保護面24bと、を有する略L字状断面のプレート部材で構成され、集積ホイール17の外周端よりも縦壁部22側に位置することで、集積ホイール17を保護している。
この保護板24は、図3に示すように、回転軸28上に設けた3つの集積ホイール17…間に1つずつ、計4つ配置され、後述する移動リンク機構25により、その集積ホイール17…間で出没自在に移動するように構成している。
なお、一点鎖線で示した矩形ラインKは、シャッター21を開放した状態の入出金口11の開口ラインを示したものである。この図から、入出金口11内の紙幣収納スペースSに集積ホイールが露出していることが分かる。
この保護板24の押圧面24aと保護面24bは、連続する曲面24cで連なるように形成される。このように曲面で押圧面と保護面を連続させることにより、押圧面においても、集積ホイールの保護をはかる機能を持たせることができる。
また、保護面24bの後端部には上方に延びる鉤部24dを形成している。このように鉤部を形成することにより、後述する紙幣集積後の保護板が退避位置から保護位置に移行する際に、集積ホイール上に残存した紙幣を紙幣収納スペース内に払い落とすことが可能となる。
なお、本実施態様では、保護板の押圧面と保護面がなす角度αを約100°に設定しているが、この角度αについては、特に限定されるものではない。
前述の移動リンク機構25は、保護板24を移動させるべく、保護板24の中央に回動自在に軸支されたメインリンク25aと、保護板24に突出形成した係合部24eにスライド自在に係合するサブリンク25bとからなる。
まず、このうちメインリンク25aは、下端が装置の固定部に対して回動自在に軸支され(回動軸25c)、上端が保護板24の押圧面24a背面に回動自在に軸支された(回動軸25d)、略くの字状のリンク部材で構成している。また、サブリンク25bは、下端がメインリンク25a同様に装置の固定部に対して回動自在に軸支され(回動軸25e)、上端が保護板24の押圧面24a背面に形成した略J字状の係合溝部29にスライド係合された(回動軸25f)、I字状のリンク部材で構成している。
このように構成した、メインリンク25aとサブリンク25bを、それぞれ回動することにより、保護板24を集積ホイール17間で出没自在に移動させることが可能となる。なお、具体的な各リンクの動きは後述する。
前述のセパレータ26は、略上下方向に延びる平板状のプレート部材で構成され、図示しない移動機構により、紙幣収納スペースSを縦壁部22と平行に水平移動する。このセパレータ26は、紙幣集積時に、集積ホイール17側に移動して集積紙幣A…を支持する。
前述の繰出し機構27は、縦壁部22に設けたピックアップローラ27a、フィードローラ27b、それと底面部23側に設けたゲートローラ27cとから構成される。繰出し時には、ピックアップローラ27aとフィードローラ27bを繰出し方向(図4参照)に回転させることで、縦壁部22と底面部23との間から紙幣Aを一枚ずつ第一搬送経路L1に繰出す。
次に、図2、図4〜図10により、この入出金口11の作動及び制御方法について説明する。図2、図4、図5は入出金口の各作動過程における詳細断面図、図6〜図10は入出金口11の制御方法を示したフローチャートである。なお、図4、図5の具体的な説明については、図2と同一符号を付して省略する。
まず、図6のフローチャートに示す待機時(アイドル時)の制御方法について説明する。初めにS1で紙幣処理装置1に電源を投入すると、紙幣処理装置1はS2でアイドル状態となる。このアイドル状態を検出すると、S3で保護板24を退避位置に移動させる。
この退避位置とは、図5に示す保護板24の位置である。すなわち、保護板24を、集積ホイール17の回転軸28側に後倒した位置である。
この退避位置に保護板24を移動させるには、メインリンク25a下端の回動軸25cを、回転モータ(図示せず)によって、矢印で示すように反時計廻りに回動させることで、保護板24を集積ホイール17の回転軸28側に引き込み、その引き込まれた保護板24の傾斜角を、係合溝部29にスライド係合したサブリンク25bでコントロールすることで行う。
このように、保護板24を退避位置に移動させた状態で、S4で操作者の取引処理の指示を待つ。
次に、図7のフローチャートに示す紙幣投入時の制御方法について説明する。操作者が紙幣入金の取引指示を行った場合には、S11で保護板24を図2に示す保護位置に移動させる。すなわち、集積ホイール17と操作者の手Hが干渉しないように、集積ホイール17の外周端よりも縦壁部22側に保護板24を位置させる。
この保護位置への移動も、前述と同様、メインリンク25a下端の回転軸25cを回転モータによって時計廻りに回動させることで、保護板24を立ち上げ、その立ち上げた保護板24の傾斜角をサブリンク25bでコントロールすることで行う。
そして、S12でシャッターを開放して、入出金口11の紙幣収納スペースSを外部に開放し、S13で操作者の紙幣投入を待つ。
その後、操作者が紙幣Aの投入を行うことで、S14で紙幣の投入完了が検知されると、S15でシャッター21を閉鎖して、紙幣収納スペースSを封鎖する。こうして、次の紙幣繰出しに備える。
このとき、入出金口11の紙幣収納スペースSに操作者が手Hを差し込んでも、保護板24が保護位置に位置しているため、集積ホイール17と操作者の手Hが干渉することはなく、集積ホイール17は保護される。
なお、各保護板24…の間隔は、図3に示すように1つの集積ホイール17の幅より若干広く設定されているが、操作者が手Hを差し込むことができない間隔に設定されているため、確実に集積ホイール17を保護することができる。
次に、図8のフローチャートに示す紙幣繰出し時の制御方法について説明する。紙幣収納スペースSに紙幣Aを投入した状態で、操作者が入金の取引指示を行った場合には、S21で保護板24を押圧位置に移動させ、集積紙幣A…を押圧する。
この保護板24の押圧位置とは、図4に示す保護板24の位置である。すなわち、保護板24を縦壁部22側に移動させ、集積紙幣A…を押圧する位置である。
この押圧位置への移動も、前述と同様、メインリンク25a下端の回転軸25cを回転モータによって時計廻りに回動させることで、保護板24を縦壁部22側に移動させ、サブリンク25bでその保護板24の傾斜角をコントロールすることで行う。
こうして集積紙幣A…を押圧した状態で、S22でピックアップローラ27a及びフィードローラ27bの回転駆動を開始する。そして、S23で集積紙幣A…を入出金口11の紙幣収納スペースSから、一枚ずつ第一搬送経路L1に繰出す(図4参照)。
こうして紙幣Aを繰出した後、S24で入出金口11に紙幣Aが残存していないかを検出し、残存していないことを検出するとS25で保護板24を退避位置に移動して、S26でピックアップローラ27a及びフィードローラ27bの回転駆動を停止する。なお、この保護板24の退避位置への移動も、前述と同様、メインリンク25aとサブリンク25bを回動させることにより行う。
このとき、保護板24は、押圧位置に位置して集積紙幣A…を押圧するため、繰出し機構27による紙幣繰出しを補助する押圧板として機能することになる。
次に、図9のフローチャートに示す紙幣集積時の制御方法について説明する。操作者が紙幣出金の取引指示を行った場合には、S31で保護板24を図5に示す退避位置に移動させる。すなわち、前述したように、保護板24を集積ホイール17の回転軸28側に後倒させる。
そして、S32で紙幣Aの搬送タイミングに合わせて、集積ホイール17を回転駆動し、S33で紙幣Aを一枚ずつ入出金口11の紙幣収納スペースSに集積する。なお、このとき、図5に示すように、セパレータ26を集積ホイール17側に移動させておき、集積紙幣A…を保持する。
そして、S34で入出金口11の紙幣収納スペースSに紙幣Aが指定枚数集積されたかをカウントし、指定枚数集積されたことを検出すると、S35で紙幣Aの集積を完了して集積ホイール17の回転を停止する。
このとき、保護板24は、前述したように退避位置にあるため、集積ホイール17の紙幣集積を阻害しない
図11は、紙幣集積時の平面図である。この図から分かるように、紙幣Aは、集積ホイール17の後方側から、一枚ずつ長手方向を横にして搬送され、集積ホイールの片17aの間に一枚ずつ挟み込まれる。
そして、集積ホイール17を搬送タイミングに合わせて回転駆動することで、セパレータ26との間に紙幣Aを立てて整列集積する。このとき、セパレータ26は付勢手段(図示せず)で集積ホイール17側に付勢されることから、紙幣Aを集積ホイール17側に付勢して、その集積幅の増大を防いでいる。
このように、集積ホイール17を用いて紙幣Aを集積することで、損傷の多い紙幣Aを集積する場合にも、その集積幅をコンパクトにすることができるため、限られた紙幣収納スペースSであっても、出金額を増加させることができ、また、紙幣収納スペースS内での詰まり、所謂ジャムの発生も抑えることができる。
図12は、紙幣集積時の正面図である。この図から分かるように、回転軸28上に設けた3つの集積ホイール17は、紙幣Aの中央とその両側を挟み込んで集積を行うように設置しているが、紙幣の端部Aaを挟み込むようには設置していない。これは損傷の多い紙幣の場合、図示するようにその端部Aaが下側に折れ曲がり垂れた状態になるため、端部を挟み込むように集積ホイール17を設置するとジャムが生じやすくからである。
次に、図10のフローチャートに示す紙幣取出し時の制御方法について説明する。この制御は、通常、前述の紙幣集積制御の後に行われる。
まず、集積ホイール17の回転を停止した(S35参照)後に、S41で保護板24を前述の保護位置に移動させる。そして、S42でシャッター21を開放して、紙幣収納スペースSから集積紙幣A…の取り出しを許容する。
そして、S43で操作者の紙幣取出しを待ち、その後、S44で紙幣Aの取出し完了が検知されると、S45でシャッター21を閉鎖して紙幣収納スペースSを封鎖する。
このとき、保護板24は、紙幣投入時と同様、保護位置に位置しているため、紙幣取出し時に紙幣収納スペースSに操作者が手Hを差し込んだとしても、集積ホイール17と操作者の手Hが干渉することはなく、集積ホイール17は保護される。
また、保護板24を退避位置から保護位置に移行させる際、その後端部に形成した鉤部24dによって、集積ホイール17上に残存する紙幣Aを、紙幣収納スペースS側に払い落とすこともできるため、ジャムの発生を防止することができる。
なお、以上の保護板24の保護位置、押圧位置、退避位置は、移動リンク機構25の回動角を遮光センサ(図示せず)で検出することで、位置確認しているが、その他の方法で位置確認を行ってもよい。
次に、以上のように構成した本実施態様の作用及び効果について詳述する。
このように、本実施態様の紙幣処理装置は、紙幣Aの入金と出金とを行う紙幣処理装置1にあって、該装置1に対して紙幣Aの入出金を行う入出金口11と、該入出金口11内に露出するように配置され、該入出金口11内に紙幣Aを一枚ずつ分離集積する集積ホイール17と、該集積ホイール17の露出部分に位置し、集積ホイール17を保護する保護板24と、前記集積ホイール17の紙幣集積時に、前記保護板24を前記集積ホイール17の保護位置から集積作業に影響を与えない退避位置に移動させる移動リンク機構25とを備えたものである。
上記構成によれば、紙幣の入金を行う入金口と出金を行う出金口を、一つの入出金口11とすることで共通化して、その入出金口11内に露出するように配置した集積ホイール17で紙幣Aを一枚ずつ入出金口11内に集積し、その集積ホイール17を露出部分に位置する保護板24で保護しつつ、集積ホイール17による紙幣集積時には、その保護板24を移動リンク機構25で集積作業に影響を与えない退避位置に移動させることになる。
すなわち、紙幣の入出金口を一つとすることで、装置のコンパクト化を図り、集積ホイール17で紙幣を集積することで、損傷が多い紙幣Aの集積であっても集積幅の増大を防ぎ、また、この集積ホイール17の露出部分を、移動リンク機構25で移動可能な保護板24で保護することで、操作者の手Hとの干渉を防ぐのである。
よって、入出金口11を共通化することで装置1のコンパクト化を図り、その入出金口11の近傍に集積ホイール17を設けることで、紙幣Aの詰まり等を防止しつつも、その入出金口11内に操作者が手Hを差し込んでも、集積ホイール17を破損しないようにすることができる。
なお、この保護板24は、集積ホイール17の露出部分に操作者の手が触れないように保護するものであるが、集積ホイール17の露出部分を保護するものであれば、特に形状及び移動形態は限定されるものではない。
また、この実施態様では、前記保護板24を、紙幣繰出し時に集積紙幣A…を押圧する押圧板として機能させている。
上記構成によれば、例えば、予め押圧板を設けているような紙幣処理装置の場合には、別途保護板24のために、別部材を設けなくてもよい。
よって、部品点数を増加させることなく、コストアップをできるだけ抑えつつ、集積ホイール17の破損を防止することができる。
また、この実施態様では、紙幣の入金と出金とを行う紙幣処理装置1にあって、該装置1に対して紙幣Aの入出金を行う入出金口11と、該入出金口11内に露出するように配置され、該入出金口11内に紙幣Aを一枚ずつ分離集積する集積ホイール17と、該集積ホイール17の露出部分に位置し、集積ホイール17を保護する保護板24と、該保護板24を、集積ホイール17を保護する保護位置、紙幣集積に影響を与えない退避位置、及び集積紙幣A…を押圧する押圧位置にそれぞれ移動させる移動リンク機構25とを備えたものである。
上記構成によれば、紙幣の入金を行う入金口と出金を行う出金口を一つの入出金口11とすることで共通化して、その入出金口11内に露出するように配置した集積ホイール17で紙幣Aを一枚ずつ入出金口11内に集積し、その集積ホイール17を露出部分に位置する保護板24で保護しつつ、その保護板24を、集積ホイール17を保護する保護位置、紙幣集積に影響を与えない退避位置、及び集積紙幣A…を押圧する押圧位置に、それぞれ移動リンク機構25で移動させることになる。
すなわち、入出金口11を一つとすることで装置のコンパクト化を図り、集積ホイール17を用いることで損傷が多い紙幣の集積であっても集積幅の増大を防ぎ、また、集積ホイール17を保護する保護板24を、移動リンク機構25で保護位置、退避位置、押圧位置といった3つの位置を移動させるため、一つの保護板24に様々な機能を持たせることができる。
具体的には、保護位置に移動させることにより、集積ホイール17を保護する機能、退避位置に移動させることにより、集積ホイール17の集積作業を阻害しない機能、さらに押圧位置に移動させることにより、繰出す集積紙幣A…を押圧する機能を、一つの保護板24に持たせることができる。
また、この実施態様では、前記集積ホイール17を、複数の片17a…が所定の傾斜角を持って放射状に延びる回転体で構成し、該集積ホイール17を、その片17aが前記入出金口11の紙幣投入方向に略対向して延びるように配置したものである。
上記構成によれば、集積ホイール17を、その片17aが入出金口の紙幣投入方向に略対向して延びるように配置しているため、破損しやすい集積ホイールの片17aと紙幣投入を行う操作者の手とが干渉しやすくなるが、前述のように保護板24で集積ホイール17を保護するため、操作者の手Hが集積ホイール17に干渉することなく、集積ホイール17の破損を防止することができる。
また、この実施態様では、前記集積ホイール17を、回転軸28方向に離間して複数設け、該複数の集積ホイール17の間に、前記保護板24を配置し、前記保護位置では、該保護板24を集積ホイール17の外周端より外方に突出させ、前記退避位置では、該保護板24を集積ホイール17の回転軸側に没入するように、前記移動リンク機構25を制御したものである。
上記構成によれば、複数の集積ホイール17を回転軸28方向に離間して配置し、その集積ホイール17の間に保護板24を配置し、その間で保護板24が出没するように移動リンク機構25を制御することになる。このため、保護板24は集積ホイール17の間のスペースで出没することになるため、保護板24の退避スペースを別途設ける必要がない。よって、装置1を大型化することなく保護板24を配置することができる。
また、この実施態様では、前記集積ホイール17の回転軸方向に集積ホイール17と保護板24を複数交互に配置し、そのうち保護板24を外端部に位置するように設定したものである。
上記構成によれば、集積ホイール17と保護板24を交互に配置し、保護板24を外端部に配置することになるため、集積ホイール17は外端部には位置しない。このため、紙幣集積時に紙幣Aの端部を集積ホイール17で挟み込まないため、端部が垂れ下がるような損傷の多い紙幣Aであっても、確実に集積することができる。よって、損傷が多い紙幣Aであってもスムーズに集積することができる。
また、この実施態様では、前記保護板24を、集積紙幣Aを押圧する略上下方向に延びる押圧面24aと該押圧面24aの上端から略水平方向に延びて集積ホイール17を保護する保護面24bを備える断面略L字状のプレート部材で構成したものである。
上記構成によれば、押圧面24aと保護面24bとを有する断面略L字状のプレート部材で保護板24を構成しているため、それぞれの面で押圧機能と保護機能を確実に確保することができる。すなわち、押圧する方向が略水平方向であるため、それと直交する略上下方向に押圧面24aを設けることで押圧機能を確保することができ、また、操作者の手Hを差し込む方向が略上下方向であることから、それと直交する略水平方向に保護面24bを設けることで保護機能を確保することができる。
また、この実施態様では、前記保護板24の押圧面24aと保護面24bを連続する曲面によって連ならせたものである。
上記構成によれば、保護板24の押圧面24aと保護面24bとがなだらかに連なることになるため、押圧面に押圧機能だけでなく集積ホイール17の保護機能を持たせることができる。よって、押圧面24aを利用して保護面積を広く確保することができる。
また、この実施態様では、前記保護板24の保護面24aの後端部に上方に突出する鉤部24dを設けたものである。
上記構成によれば、保護板24の保護面24aの後端部に上方に突出する鉤部24dを設けたことにより、集積ホイール17による集積作業後、集積ホイール17上に集積途中の紙幣Aが残存していたとしても、保護板24を移動させる際にその鉤部24dで集積方向に払い落とすことができるため、集積ホイール17上に紙幣Aを残存させることなく、紙幣Aを確実に集積することができる。よって、紙幣Aの搬送処理をより効率的に行うことができる。
以上、この発明の構成と、前述の実施態様との対応において、
この発明の保護部材は、実施態様の保護板24に対応し、
以下同様に、
移動制御手段は、移動リンク機構25及び回転モータに対応し、
押圧板は保護板24に対応するも、
この発明は、前述の実施態様の構成のみに限定されるものではなく、その他様々な実施態様を含むものである。