JP4408182B2 - セラミックス多孔質膜を分離膜とするフィルタの製造方法 - Google Patents

セラミックス多孔質膜を分離膜とするフィルタの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックス多孔質膜(以下、「多孔質膜」という。)を分離膜とするフィルタの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セラミックス多孔質膜を分離膜とするフィルタは、高分子膜を分離膜とするフィルタ等と比較して、物理的強度、耐久性に優れるため信頼性が高いこと、耐食性が高いため酸アルカリ等による洗浄をおこなっても劣化が少ないこと、更には、濾過能力を決定する細孔径の精密な制御が可能である点において、固液分離用のフィルタ等として有用である。
【0003】
通常、前記のセラミックス多孔質膜を分離膜とするフィルタ(以下、単に「フィルタ」という。)は、透水量を確保しつつ濾過性能を向上させる観点から、多孔質材料からなる基材の表面に、当該基材の細孔に比して更に細孔径が小さいセラミックス多孔質膜を形成し、分離膜とした構造のものが汎用される。
【0004】
前記のフィルタは、基材の表面に、従来公知のスラリー成膜方法、例えばディッピング法等によりセラミックスからなる骨材粒子を含むスラリーを成膜した後、当該成膜体を焼成することにより製造することができるが、本出願人はピンホール等の膜欠陥を防止することができる優れたスラリー成膜方法である濾過成膜法を既に開示している(特公昭63−66566号公報)。
【0005】
濾過成膜法とは、多孔質材料からなる基材にセラミックスからなる骨材粒子を含む成膜用のスラリーを分離膜を形成すべき面側から基材を通過させて、基材表面に成膜層を形成させる方法である。
【0006】
上述の濾過成膜法はスラリーを連続的に供給するため、スラリー中の骨材粒子が沈降し難く、厚さが均一で、均質な成膜をおこなうことができるために、ディッピング法等の成膜方法と比較して更に良質なフィルタを得ることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、フィルタの処理能力を向上すべく、フィルタの濾過面積、或いはフィルタ自体の大型化が図られていること等に起因して、厚さが均一で、均質な成膜ができるという濾過成膜法のメリットが減殺される場合が生じていた。
特にセラミックスフィルタの濾過面積増大のためには、複数の貫通孔を有するハニカム状基材(以下、単に「ハニカム状基材」という。)等の単位堆積当りの濾過面積を増加させる構造が広く採用されつつある。
この種の構造を有するハニカム状基材の貫通孔のうち、スラリー供給側末端ほど成膜が進行し易く、逆にスラリー排出側末端ほど成膜が進行し難いという現象が生じ、貫通孔内において均一な膜厚で成膜層を形成することが困難であるという問題点があった。
【0008】
更に、ハニカム状基材の多数の貫通孔のうち外周面側の貫通孔ほど成膜が進行し易く、逆に基材中心部近傍の貫通孔ほど成膜が進行し難いため、全ての貫通孔に均一な膜厚で成膜層を形成することが困難であることに加え、1の貫通孔内においても基材の外周側に偏肉して成膜層が形成されるという問題点があった。
【0009】
本願出願人は上記問題点を解消すべく、特開2000−288324号公報において、スラリーに有機高分子を添加し濾過抵抗を付与することによって、均一な膜厚の成膜層が形成され得るセラミックス多孔質膜を分離膜とするフィルタの製造方法を開示している。当該製造方法によれば、ハニカム状基材であっても均一な膜厚の成膜層を形成することが可能である。
【0010】
また、従前の製造方法においては、骨材粒子の平均粒子径を選択することにより多孔質膜の平均細孔径を制御していた。しかしながら、原料として入手可能な骨材粒子の平均粒子径が限定されている場合等には、多孔質膜の平均細孔径を制御することができなくなるといった問題があった。
【0011】
そこで、本願出願人は上記問題点を解消すべく、特開2000−288325号公報において、スラリーに造孔作用を有する有機高分子を、骨材粒子に対して所定の割合で配合するセラミックス多孔質膜を分離膜とするフィルタの製造方法を開示している。当該製造方法によれば、骨材粒子の平均粒子径に拘わらず多孔質膜の平均細孔径を制御することが可能である。
【0012】
しかしながら、前述の特開2000−288324号公報に開示された製造方法であっても、場合によっては細孔径がばらつく等の欠陥が生ずることがある。また、特開2000−288325号公報に開示された製造方法であっても、多孔質膜の平均細孔径を完全に制御することは困難な場合もあるため、更なる高品質なフィルタを製造する方法の確立が産業界から要請されている。
【0013】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、膜厚が均一で細孔径がばらつく等の欠陥がなく、また、骨材粒子の粒子径に拘わらず透水量の大きいセラミックス多孔質膜を分離膜とするフィルタの製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明によれば、セラミックスからなる骨材粒子を含む成膜用のスラリーを用いて、多孔質材料からなる基材の表面に成膜層を形成して成膜体を得る工程と、該成膜体を焼成して焼成体を得る工程とを備えたセラミックス多孔質膜を分離膜とするフィルタの製造方法であって、有機高分子のゲルを粉砕処理してなる粉砕物を前記スラリーに添加することを特徴とするセラミックス多孔質膜を分離膜とするフィルタの製造方法が提供される。
【0015】
本発明においては、有機高分子が温度条件によりゲル化する化合物であり、有機高分子を、有機高分子のゲル化温度以上の温度の溶媒に溶解して溶液を得、当該溶液を有機高分子のゲル化温度以下まで冷却してゲル化し、得られたゲルを粉砕処理することが好ましい。
【0016】
本発明においては、有機高分子のゲルを、骨材粒子の平均粒子径の1〜5倍の平均粒子径となるよう粉砕処理することが好ましく、寒天、ゼラチン、デンプン、及びメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種の有機高分子を用いることが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜、設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0018】
本発明の製造方法は、成膜用のスラリー(以下、単に「スラリー」という。)に粘稠性を付与するとともに、骨材粒子間の空隙を拡大する、即ち、造孔作用を付与するために、有機高分子のゲルを粉砕処理してなる粉砕物(以下、「ゲル粉砕粒子」という。)をスラリーに添加することを特徴としている。以下、その詳細について説明する。
【0019】
本発明によれば、スラリーにゲル粉砕粒子を添加することにより、スラリーに粘稠性が付与されるため、分離膜を形成すべき面の全域に渡って均一に濾過差圧がかかるようになり、長尺、或いはハニカム状基材等を用いた場合であっても、成膜層を形成すべき面の全域に渡って均一な厚みを有する成膜層が形成される。また、有機高分子を単に添加する方法に比して、分離膜を形成すべき面に対してより均一にスラリーを接触させることができる。したがって、成膜層の形成後に焼成して得られる分離膜の細孔径がばらつく等の欠陥が極めて起こり難い、高品質のフィルタを製造することが可能である。
【0020】
また、本発明の製造方法において、ゲル粉砕粒子は成膜用のスラリーに添加することによって、骨材粒子間の空隙を拡大する効果も同時に付与される。即ち、スラリー中のゲル粉砕粒子が骨材粒子間に入り込み、骨材粒子間の空隙容積を拡大するため、骨材粒子の粒径が同じであっても分離膜の平均細孔径(以下、「細孔径」という。)を大きくすることが可能となる。また、有機高分子を単に添加する方法に比して、ゲル粉砕粒子がスラリー中に、より均一に分散し易く、全体に均一な細孔径分布を有する分離膜を形成することができる。
【0021】
なお、本発明におけるゲル粉砕粒子は、成膜層を焼成して分離膜とした後は分離膜や基材の細孔部分を閉塞しない材料、即ち、有機質の高分子であることが必要である。有機高分子のような長鎖状分子は、基材や成膜層内部に留まり易く、骨材粒子間の空隙容積を拡大する効果が大きい点においても好ましい。
【0022】
本発明の製造方法においては、骨材粒子とゲル粉砕粒子との体積比によって、分離膜の細孔径を制御することが可能である。即ち、同じ平均粒子径(以下、「粒子径」という。)の骨材粒子であっても、ゲル粉砕粒子の体積比を大きくすれば細孔径をより大きくすることができる。したがって、骨材粒子の粒子径に拘わらず、所望の細孔径である分離膜を有するフィルタを製造することができる。
【0023】
即ち、本発明の製造方法は、濾過除去能力を決定する細孔径が同等であり、且つ、透水量の大きい(即ち、処理能力の高い)フィルタを製造できる点において非常に有用である。
【0024】
本発明の製造方法においては、膜厚を均一化できることに加えて、スラリーの成膜条件やスラリー組成を適宜設定することにより所望の厚さである多孔質膜を有するフィルタを製造することができる。
このような製造方法は、膜厚の均一性を保持しつつ、多孔質膜を薄膜化できるため、濾過性能を確保しつつ、透水量の大きい(即ち、処理能力の高い)フィルタを簡便に製造できる点において非常に有用な製造方法である。
【0025】
次に、本発明のフィルタの製造方法について詳細に説明する。
本発明における基材とは、細孔径が0.05〜50μmの、比較的細孔径が大きい多数の細孔を有する多孔質体をいい、多孔質体の表面に更に細孔径が小さい多孔質膜が形成されているものであってもよい。
【0026】
基材の材質は、多孔質材料である限りにおいて特に限定されず、例えばセラミックス、或いは金属のいずれもが使用できる。但し、耐久性を考慮するとセラミックスであることが好ましく、具体的にはアルミナ、シリカ、チタニア、ムライト、ジルコニア、或いはこれらの混合物等を好適に用いることができる。
【0027】
本発明の製造方法においては、基材の形状は特に限定されず、板状等であってもよいが、後述するように長さが50cm以上である比較的長尺の基材、或いはハニカム状基材の貫通孔内壁にスラリーを成膜する場合に特に好適に用いることができる。
【0028】
本発明における成膜用のスラリーとは、焼成により基材表面に分離膜たるセラミックス多孔質膜を形成するためのスラリーであって、セラミックスからなる骨材粒子を含むものである。
なお、本発明における骨材粒子とは、多孔質膜の骨格を形成する粒子をいい、その粒子径は多孔質膜の細孔径やフィルタ機能等を決定するために適宜選択されるものである。ここで、本発明においては細孔径が0.05〜1μm程度の多孔質膜を形成することを目的とするため、0.1〜10μm程度の比較的粒子径が小さい骨材粒子を使用する。
【0029】
骨材粒子の種類はセラミックスである限りにおいて特に限定されず、例えばアルミナ、チタニア、ムライト、ジルコニア、シリカ、スピネル或いはこれらの混合物等を用いることができる。
【0030】
スラリー中の骨材粒子の濃度は、成膜する膜厚にもよるが通常は0.5〜40質量%に調整することが好ましい。0.5質量%未満では成膜に時間がかかり、40質量%を超えると骨材粒子の凝集が起こり、多孔質膜とした際に欠陥を生じ易くなるからである。スラリー中には、分散性向上のための分散剤、成膜体乾燥時のクラックを防止するためのクラック防止剤等、目的に応じた添加剤を添加してもよい。
【0031】
ここで、本発明において用いる有機高分子は、温度条件によりゲル化する化合物であり、この有機高分子のゲル化温度以上の温度の溶媒に、当該有機高分子を溶解して溶液を得た後、これを有機高分子のゲル化温度以下まで冷却してゲル化し、次いで、得られたゲルを粉砕処理することが好ましい。このことにより、粒子径が均一なゲル粉砕粒子を得ることが可能であり、このようなゲル粉砕粒子をスラリーに添加することによって、ゲル粉砕粒子がスラリー中に均一に分散されるため、当該スラリーに適度な粘稠性が付与される。また、成膜層を形成した後で乾燥する際、ゲル粉砕粒子の粒子径にバラツキが少ないと、収縮割合が一様となるために、焼成後の気孔径が均一となり、優れた造孔作用が付与される。
【0032】
本発明においては、有機高分子をゲル化温度以上の温度の溶媒に溶解することが好ましい。有機高分子をゲル化温度以下の溶媒に溶解することは困難であり、また、その後に冷却した場合においても均質なゲルが得られず、ゲルを均一な粒子径となるように粉砕することが困難となるために好ましくない。例えば、用いる有機高分子が寒天である場合、寒天のゲル化温度30〜40℃に対して、70℃以上の温度の溶媒に溶解することが好ましい。ここで、均質なゲルを調製する観点からは、溶解後に得られる溶液の温度が有機高分子を溶解することによってゲル化温度以下とならず、ゲル化温度以上に保たれていることが好ましい。
なお、溶媒の温度の上限については特に限定されないが、溶媒が水である場合を想定すると、95℃程度までの温度であれば十分である。
【0033】
また、得られた有機高分子の溶液を、有機高分子のゲル化温度以下まで冷却しゲル化することが好ましい。有機高分子を溶解したときと同じく、一様にゲル化していないと、ゲルを均一な粒子径となるように粉砕することが困難であるために好ましくない。用いる有機高分子が寒天である場合、粉砕前の温度として、概ね20℃以下まで冷却することが好ましい。
なお、冷却する温度の下限については、均質なゲルが得られる温度まで冷却すれば十分である。また、急激な温度勾配をもって冷却することは、不均質なゲルを形成してしまい易いために好ましくなく、したがって、均質なゲルとすべく徐々に冷却することが好ましい。
【0034】
本発明においては既述の如く、ゲル粉砕粒子を成膜用のスラリーに添加することを特徴とするが、有機高分子のゲルを、骨材粒子の平均粒子径の1〜5倍の平均粒子径となるよう粉砕処理してなるゲル粉砕粒子を用いることが好ましい。1倍未満にまで粉砕処理すると、造孔作用が付与され難くなり、焼成後のフィルタに十分な透水量が確保されなくなるために好ましくない。また、5倍超に粉砕処理すると、透水量の大きいフィルタとすることができる反面、焼成後に形成される分離膜の細孔径がばらつく等の欠陥が発生し易くなるために好ましくない。したがって、上記数値範囲に規定した本発明の製造方法によれば、均一な厚みを有する成膜層が形成されるとともに、焼成後に形成される分離膜にも細孔径がばらつく等の欠陥が生ずることがなく、焼成後のフィルタに十分な透水量が確保される。
【0035】
なお、特開2000−288324号公報に開示されているセラミック多孔質膜を分離膜とするフィルタの製造方法においては、濾過抵抗を付与するために有機高分子をスラリーに添加することは記載されているが、単にスラリーに添加することのみが記載されており、場合によっては形成される分離膜の細孔径がばらつく等の不具合を生ずるおそれもある。
【0036】
これに対して本発明においては、当該有機高分子をゲル化した後、得られたゲルを粉砕してなる粉砕物をスラリーに添加する。即ち、均一な粒子径を有するゲル粉砕粒子が添加されることにより、スラリーに適度な粘稠性が付与されるとともに、形成される分離膜の細孔径にもばらつきが生じ難い。
【0037】
更に、本発明においてはゲルの粉砕粒子としての特性を有する有機高分子として寒天、ゼラチン、デンプン、及びメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。これらの有機高分子は、上述してきたスラリーに粘稠性を付与する効果に優れているために好ましいばかりでなく、極めて入手が容易で、且つ、取り扱いも簡便であるために、製造コスト低減にも寄与するものである。
【0038】
なお、上記有機高分子のうち、ゲルの粉砕粒子の粉砕均一性、及び、乾燥後の粉砕粒子の収縮性等の物理的な性質を考慮に入れると、寒天が最も優れた性質を有するために好ましい。
【0039】
ここで、ゲル粉砕粒子の調製方法について、有機高分子が寒天である場合を例に挙げて説明する。
予め寒天粉末をゲル化温度以上の温水に溶解しておき、これを冷却してゲル化する。このときの冷却温度は、寒天がゲル化する温度であれば十分であり、概ね20℃以下まで冷却すればよい。なお、予め濃厚な寒天溶液を調製しておき、これを冷水中に投入することによって、寒天をゲル化することは避けるべきである。急激な冷却によって、ゲル化した寒天に密度分布が生ずる場合があり、その後の粉砕処理によって、粒子径が不均一となる場合があるからである。
【0040】
なお、ゲル化した寒天を、骨材粒子を含む成膜用のスラリーと混合した後に粉砕することも可能であるが、骨材粒子も同時に粉砕されてしまう場合がある。即ち、骨材の粒子径の管理が困難になるため、スラリーと混合する前に、ゲルを粉砕しておくことが好ましい。
【0041】
次いで、上記ゲル化した寒天を所定の粒子径となるように粉砕処理する。ここで、ゲルの粉砕方式としては小径の玉石を用いた粉砕方式が好ましく、具体的にはアトライターやボールミル方式を採用すると、ゲル粉砕粒子の粒子径を均一にし易いために好ましい。また、このような粉砕方式に用いる粉砕機としては、摩滅効果をもたらす粉砕機を用いることが好ましく、具体的な種類としてはアトライター、ボールミル、又はビーズミル等が好適に採用される。なお、粉砕媒体(玉石)に関しても特に限定されることはないが、ゲル粉砕粒子に粉砕媒体の成分が混入することを回避する観点からは、適当な硬度を有することが好ましく、具体的にはアルミナ、ジルコニア等が好ましく、特にジルコニアが好ましい。
【0042】
なお、本発明でいうゲル粉砕粒子の平均粒子径とは、以下に示すように測定するものをいう。即ち、レーザー回折/散乱式測定機(堀場製、型式:LA−920)を使用し、溶媒を水とした湿式方式を採用し、相対屈折率1.10、超音波分散を実施しない条件下でゲル粉砕粒子の平均粒子径を測定する。
【0043】
このようにして調製した所定の粒子径を有するゲル粉砕粒子と、既述の骨材粒子を含むスラリーとを適当な比率で混合して成膜用のスラリーを調製し、これを用いて既述の濾過成膜法により基材表面に成膜層を形成する。
【0044】
上述の前処理を施した基材を用いて、セラミックスからなる骨材粒子を含む成膜用のスラリーを分離膜を形成すべき面側から基材を通過させて、基材表面に分離膜を形成させる。この場合、スラリーを連続的に送液することによりスラリー中の骨材粒子が沈降せず均質で均一な厚さの成膜をおこなうことができる。
【0045】
なお、「分離膜を形成すべき面」とは、基材形状によっても異なるが、平板状の基材であれば任意に選択した一表面、チューブ状、又はハニカム状基材であれば貫通孔内壁を意味する。
【0046】
更に、本発明においては、上述のように分離膜を形成すべき面側から成膜用のスラリーを接触させた状態で、分離膜を形成すべき面側から加圧する。このことにより、基材の分離膜を形成すべき面には成膜層が形成される。最終的には、スラリーの送液を停止し、残余のスラリーを排出した後、加圧を解除する。
【0047】
上述のような方法により、表面に骨材粒子を含む成膜層が形成された基材(以下、「成膜体」という。)を得ることができ、当該成膜体を1400℃程度の高温で焼成する方法等で焼成することにより、基材表面に厚さ1〜300μm程度、細孔径が0.05〜1μm程度の薄膜状の多孔質膜からなる分離膜が形成されたフィルタが製造される。
なお、焼成温度は骨材粒子の材質や大きさ、スラリー中の焼成助剤の種類によって適宜設定すればよい。
【0048】
【実施例】
以下、本発明の製造方法を実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
まず、実施例及び比較例で使用した基材、成膜方法、及び焼成方法について説明する。
【0049】
(1)基材
平均粒子径100μmのアルミナ粉末に有機バインダとしてメチルセルロース、水を添加し、混練して坏土を作製した。次に、プランジャー押出機を使用して、内径180mmφ、長さ1000mm、貫通孔数2000個のハニカム形状を有する成形体を得た。これを1500℃で焼成して、基材(ハニカム状基材)を得た。なお、水銀圧入法により測定したこの基材の平均細孔径は、15μmであった。
【0050】
(2)成膜方法
成膜方法として濾過成膜法を採用し、図1に示すような真空チャンバ6、貯蔵槽8、スラリーポンプ7、フランジ2、3、配管10等からなる装置により実施した。なお、図1において、基材1はチューブ状の基材として描かれているが、ハニカム状基材であっても原理的には同様にして成膜できることはいうまでもない。
【0051】
基材1は、基材1外周面側と貫通孔17内部とが液密的に隔離されるように貫通孔17の両開口端をO−リング4、フランジ2、3、ボルト5により固定した後、貯蔵槽8内のスラリー9をスラリーポンプ7により0.2〜0.4Paの吐出圧で貫通孔17内に連続的に送液した。
なお、基材1に成膜されず貫通孔17内を通過したスラリー9は、配管10を通過して貯蔵槽8に循環される。
【0052】
その後、スラリー9の送液を継続しながら真空チャンバ6内を0.1atm以下の真空条件とし、基材1外周面側と貫通孔17内部との間に濾過差圧を付与することにより、貫通孔17内のスラリーを基材1外周面側から減圧吸引し成膜をおこなった。この場合における濾過差圧は、圧力計15で示される貫通孔17内のスラリー9の圧力と圧力計16で示される真空チャンバ6内の雰囲気圧力との差圧となる。
【0053】
基材1を通過してきた濾過水が所定量となったところでスラリー9の送液を停止した後に余分なスラリーを排出、その後減圧した。これを100℃の乾燥機で50時間乾燥することにより成膜体とした。
【0054】
(3)焼成方法
電気炉で、1200℃、2時間焼成をおこなった。
【0055】
(実施例1〜4)
濃度が0.3%、4000g、80℃の寒天溶液を作り、これを、ゲル化するまで(液温20℃以下)放置した後、ゲル化した寒天の粒子径が表1に示した粒子径(6、10、20、30μm)となるように、アトライターを用いて粉砕時間を変え粉砕した。得られた粉砕物を、骨材粒子として予め調製した粒子径6μmのアルミナ粉末溶液(固形分50%)4000gに投入して成膜用のスラリーを得た。
このように調製した成膜用のスラリーを使用して、(1)で得た基材に(2)の成膜方法により成膜後、(3)の焼成方法により焼成してフィルタを製造した。なお、分離膜の厚さは200μmであった。
(実施例5〜7)
濃度が0.3%、4000g、90℃のデンプン、ゼラチン、メチルセルロースの各溶液を作り、これをそれぞれの有機高分子のゲル化温度(ゲル化温度はそれぞれ、デンプン:60〜80℃、ゼラチン:15〜20℃、メチルセルロース:50〜80℃)以下(液温20℃以下)まで放置した後、ゲル化したそれぞれの有機高分子のゲルの粒子径が10μmとなるように、アトライターを用いて粉砕した。得られた各粉砕物を、骨材粒子として予め調製した粒子径6μmのアルミナ粉末溶液(固形分50%)4000gに投入して成膜用のスラリーを得た。このように調製したそれぞれの成膜用のスラリーを使用して、(1)で得た基材に(2)の成膜方法により成膜後、(3)の焼成方法により焼成してフィルタを製造した。なお、分離膜の厚さは200μmであった。
【0056】
(比較例1)
骨材粒子として、予め調製した粒子径6μmのアルミナ粉末溶液(固形分50%、水温30℃以下)4000gを攪拌機によって攪拌している中に、濃度が0.3%、4000gの寒天溶液を投入して成膜用のスラリーを得た。
このように調製した成膜用のスラリーを使用して、(1)で得た基材に(2)の成膜方法により成膜後、(3)の焼成方法により焼成してフィルタを製造した。なお、分離膜の厚さは200μmであった。
【0057】
(比較例2)
ゲル化した寒天の粒子径が3μmとなるように粉砕すること以外は、実施例1〜4の場合と同様の手順によりフィルタを製造した。なお、分離膜の厚さは200μmであった。
【0058】
(比較例3)
ゲル化した寒天の粒子径が40μmとなるように粉砕すること以外は、実施例1〜4の場合と同様の手順によりフィルタを製造した。なお、分離膜の厚さは200μmであった。
【0059】
(比較例4)
寒天をゲル化温度以下30℃で溶解して20℃以下まで除冷し10μmまで粉砕すること以外は、実施例1〜4の場合と同様の手順によりフィルタを製造した。なお分離膜の厚さは200μmであった。
【0060】
(比較例5)
寒天をゲル化温度以上80℃で溶解してそのまま冷却せずに10μmまで粉砕すること以外は実施例1〜4の場合と同様の手順によりフィルタを製造した。なお分離膜の厚さは200μmであった。
【0061】
(分離膜の欠陥の調査)
実施例1〜7、比較例1〜3のフィルタについて、エアーバブル法により分離膜の細孔径を測定した。図2に示すように、フィルタ22を高圧発泡試験機20内に設置した後に液体で湿潤し、これに対し圧力を徐々に上昇させながら加圧エアを送り込み、細孔から発泡する圧力より細孔径を算出した。この方法によって、2μm以上の発泡が起きた細孔径を有する貫通孔を欠陥とし、その数(膜欠陥数)を調査した。結果を表1に示す。
【0062】
(透水量の測定)
実施例1〜7、比較例1〜3のフィルタについて、図2に示す高圧発泡試験機20を使用し、0.1MPa加圧条件下、単位時間当りに流れる水量(透水量、t/日・本)を測定した。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
Figure 0004408182
【0064】
表1から明らかなように、比較例1、4、及び5のフィルタに関しては前記高圧発泡試験によって確認し得る膜欠陥数、即ち2μm以上の発泡が起きた細孔径を有する貫通孔の数が100(本/2000貫通孔)超、比較例3のフィルタに関しても、20(本/2000貫通孔)存在した。これに対し、実施例1〜4のフィルタに関して確認し得る膜欠陥は5(本/2000貫通孔)以下と少ない。なお、エアーバブル法により測定した実施例1〜7のフィルタの細孔径は1μmであった。
【0065】
ここで、比較例4については、寒天を粉砕することが不可能であったため、また、比較例5については寒天を粉砕することは可能であった。しかし、ゲル化させずに粉砕したため、10μmの粒子径までは粉砕可能であったが、粒子径の分布がブロードとなり、このため膜欠陥数が膨大になったと考えられる。
【0066】
更に、実施例1〜7のフィルタの透水量に関しても、いずれの比較例のフィルタより劣ることはなく、本発明の優位性を確認することができた。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ゲル化した有機高分子を粉砕処理してなる粉砕物を成膜用のスラリーに添加しているために、膜厚が均一、且つ、高品質であるとともに、骨材粒子の粒子径に拘わらず透水量の大きいセラミックス多孔質膜を分離膜とするフィルタを製造することができる。本発明の製造方法により製造されたセラミックス多孔質膜を分離膜とするフィルタは、その特徴を生かし、被濾過物を含有する流体の濾過、特に液体の濾過に好適に採用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 濾過成膜法に使用する装置の一例を示す概略図である。
【図2】 高圧発泡試験機の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1…基材、2,3…フランジ、4…O−リング、5…ボルト、6…真空チャンバ、7…スラリーポンプ、8…貯蔵槽、9…成膜用スラリー、10…配管、11,14…バルブ、12…多孔質基材の貫通孔内壁、13…真空ポンプ、15,16…圧力計、17…貫通孔、20…高圧発泡試験機、21…パッキン、22…フィルタ、A…供給口、B…排出口。

Claims (4)

  1. セラミックスからなる骨材粒子を含む成膜用のスラリーを用いて、多孔質材料からなる基材の表面に成膜層を形成して成膜体を得る工程と、該成膜体を焼成して焼成体を得る工程とを備えたセラミックス多孔質膜を分離膜とするフィルタの製造方法であって、
    有機高分子のゲルを粉砕処理してなる粉砕物を前記スラリーに添加することを特徴とするセラミックス多孔質膜を分離膜とするフィルタの製造方法。
  2. 該有機高分子は、温度条件によりゲル化する化合物であり、
    該有機高分子を、該有機高分子のゲル化温度以上の温度の溶媒に溶解して溶液を得、
    該溶液を、該有機高分子のゲル化温度以下まで冷却してゲル化し、
    得られたゲルを粉砕処理する請求項1に記載のセラミックス多孔質膜を分離膜とするフィルタの製造方法。
  3. 有機高分子のゲルを、骨材粒子の平均粒子径の1〜5倍の平均粒子径となるよう粉砕処理する請求項1又は2に記載のセラミックス多孔質膜を分離膜とするフィルタの製造方法。
  4. 寒天、ゼラチン、デンプン、及びメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種の有機高分子を用いる請求項1〜3のいずれか一項に記載のセラミックス多孔質膜を分離膜とするフィルタの製造方法。
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