JP4024704B2 - 複層構造セラミックスフィルターの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複層構造セラミックスフィルターの製造方法に関する。さらに詳しくは、焼成回数の低減化を図ることができるとともに、中間で得られる多孔質中間層の諸特性(水中崩壊困難性、膜厚均一性、最大細孔径の品質安定性等)の向上を通して、その成膜作業の簡素化及び得られるセラミックスフィルターの欠陥数の減少化を図ることができる複層構造セラミックスフィルターの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
複層構造セラミックスフィルターとして、円筒状、板状等のセラミックス製多孔質基材の表面に、この多孔質基材よりも緻密な多孔質薄膜を形成したものが知られている。
【0003】
従来、複層構造セラミックスフィルターの製造方法は、多孔質基材の表面に、中間層となるスラリーを塗布した後、焼成し、二層積層体を得、得られた二層積層体の表面に、表面層(濾過膜層)となるスラリーを塗布した後、焼成する手順をとるものであり、焼成工程が多孔質基材の焼成を含めると少なくとも三回必要であった(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には、多孔質基材の表面に、中間層となるスラリーを塗布し、次いで表面層(濾過膜層)をコートした後、乾燥及び焼成することにより複層構造セラミックスフィルターを製造する際の焼成回数を低減し、生産効率を向上する技術が開示されている。
【0005】
そしてその手段として、中間層に用いるセラミックス粉体にアクリル系樹脂を加え、pH7以上のアルカリ側スラリー(多孔質中間層用スラリー)を作成し、これを多孔質基材に塗布した後、中性処理又は酸処理して不溶化処理を行う製造方法が開示されている。
【0006】
本発明者らは、この従来技術についてトレース実験を繰り返した結果、得られた複層構造セラミックスフィルターには、最大細孔径における品質安定性に欠け、膜機能の欠陥を生ずるという問題があることを見出した。また、上述の製造方法には、pH調整作業工程が煩雑であるという問題を見出した。
【0007】
また、特許文献1には、他の手段として、中間層に用いるセラミックス粉体にメチルセルロースを含有する水溶液(多孔質中間層用スラリー)を多孔質基材に塗布した後、45℃で加熱し、多孔質中間層用スラリーをゲル化して不溶化処理を行う製造方法が開示されている。
【0008】
本発明者らは、この従来技術についてトレース実験を繰り返した結果、得られた複層構造セラミックスフィルターには、中間層や濾過膜層の膜厚にばらつきが大きく、最大細孔径における品質の安定性に欠け、膜機能の欠陥を生ずるという問題があることを見出した。
【0009】
さらに、特許文献1には、別の手段として、中間層に用いるセラミックス粉体に蛋白質、例えば、カゼインを含有する水溶液(多孔質中間層用スラリー)を多孔質基材に塗布した後、70〜80℃で加熱し、多孔質中間層用スラリーをゲル化して不溶化処理を行う製造方法が開示されている。
【0010】
この従来技術についても本発明者らはトレース実験を繰り返した結果、得られた複層構造セラミックスフィルターには、中間層や濾過膜層の膜厚にばらつきが大きく、最大細孔径における品質の安定性に欠け、膜機能の欠陥を生ずるという問題があることを見出した。
【0011】
また、上述した各製造方法は未焼成の多孔質中間層の不溶化処理が煩雑であることから、中間で得られる未焼成の多孔質中間層の諸特性(水中崩壊困難性、膜厚均一性、最大細孔径の品質安定性等)が低下するという問題があった。
【0012】
【特許文献1】
特公平8−15524号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、焼成回数の低減化を図ることができるとともに、中間で得られる多孔質中間層の諸特性(水中崩壊困難性、膜厚均一性、最大細孔径の品質安定性等)の向上を通して、その成膜作業の簡素化及び得られるセラミックスフィルターの欠陥数の減少化を図ることができる複層構造セラミックスフィルターの製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明の複層構造セラミックスフィルターの製造方法は、多孔質基材の表面に多孔質中間層用スラリーを塗布して、得られた多孔質中間層を表面に有する二層積層体の表面に濾過膜層用スラリーを塗布して、得られた濾過膜層を表面に有する三層積層体を焼成する複層構造セラミックスフィルターの製造方法に関するものである。
【0015】
本発明の複層構造セラミックスフィルターの製造方法は、焼成回数の低減化を図ることができるとともに、中間で得られる多孔質中間層の諸特性(水中崩壊困難性、膜厚均一性、最大細孔径の品質安定性等)の向上を通して、その成膜作業の簡素化及び得られるセラミックスフィルターの欠陥数の減少化を図ることができる。
【0018】
本発明の複層構造セラミックスフィルターの製造方法は、上記したように、多孔質基材の表面に多孔質中間層用スラリーを塗布して、得られた多孔質中間層を表面に有する二層積層体の表面に濾過膜層用スラリーを塗布して、得られた濾過膜層を表面に有する三層積層体を焼成する複層構造セラミックスフィルターの製造方法であって、前記多孔質基材の表面に、SiO2ゾルからなる第1バインダー、及びウェランガムからなる第2バインダーを含有する前記多孔質中間層用スラリーを塗布し、乾燥して、耐水性を有する前記二層積層体を得、焼成することなく前記二層積層体の表面に前記濾過膜層用スラリーを塗布し、乾燥して、得られた前記三層積層体を焼成することを特徴とする(以下、「第一の発明」ということがある)。
【0019】
このように構成することによって、上述した作用、効果を得ることができる。また、本発明(第一の発明)においては、多孔質中間層用スラリーを構成する無機質分の含有量に対する第1バインダーの含有量の割合が、2〜15質量%であることが好ましい。
【0020】
また、本発明(第一の発明)の複層構造セラミックスフィルターの製造方法においては、多孔質中間層用スラリーを構成する無機質分の含有量に対する第1バインダー及び第2バインダーの合計の含有量の割合が、2〜15質量%であることが好ましい。
【0021】
また、本発明の複層構造セラミックスフィルターの製造方法は、多孔質基材の表面に多孔質中間層用スラリーを塗布して、得られた多孔質中間層を表面に有する二層積層体の表面に濾過膜層用スラリーを塗布して、得られた濾過膜層を表面に有する三層積層体を焼成する複層構造セラミックスフィルターの製造方法であって、前記多孔質基材の表面に、SiO 2 ゾルからなる第1バインダー、ウェランガムからなる第2バインダー、及び乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂又はポリ酢酸ビニル樹脂になるポリマーを含む第3バインダーを含有する前記多孔質中間層用スラリーを塗布し、乾燥して、耐水性を有する前記二層積層体を得、焼成することなく前記二層積層体の表面に前記濾過膜層用スラリーを塗布し、乾燥して、得られた前記三層積層体を焼成することを特徴とする(以下「第二の発明」ということがある)。
【0022】
このように構成することによって、上述した第一の発明の複層構造セラミックスフィルターの製造方法と同様の作用、効果を得ることができる。また、本発明(第二の発明)においては、多孔質中間層用スラリーを構成する無機質分の含有量に対する第1バインダー及び第3バインダーの合計の含有量の割合が、2〜15質量%であることが好ましい。
【0023】
また、本発明(第二の発明)の複層構造セラミックスフィルターの製造方法においては、多孔質中間層用スラリーを構成する無機質分の含有量に対する第1バインダー、第2バインダー及び第3バインダーの合計の含有量の割合が、2〜15質量%であることが好ましい。
【0024】
また、第一及び第二の発明においては、多孔質中間層用スラリーに含まれる第1バインダーを構成するSiO2ゾルの1次粒径が5〜200nmであることが好ましい。
【0025】
さらに、本発明(第一及び第二の発明)の複層構造セラミックスフィルターの製造方法においては、三層積層体の両端部にガラスシールを施した後に、三層積層体を焼成することが好ましい。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の複層構造セラミックスフィルターの製造方法の実施の形態を、図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0027】
複層構造セラミックスフィルターの製造方法の参考例としての参考形態について具体的に説明する。本参考形態の複層構造セラミックスフィルターの製造方法は、図1に示すような濾過成膜法を用いて行う方法である。まず、ホルダー11に保持された円筒状の多孔質基材1を、耐圧容器10内に設置する。この際、多孔質基材1の内壁側1aと外壁側1bとを隔離するように設置する。次に、耐圧容器10内の外壁側1bをポンプ等で減圧した状態で、ホルダー11のスラリー投入口11aから、多孔質基材1の内壁側1aに、乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂又はポリ酢酸ビニル樹脂になるポリマーを含むバインダーを含有する多孔質中間層用スラリー5を流入する。多孔質中間層用スラリー5は、アルミナ粉末等からなる骨材粒子と、ガラスフリットの粉末等からなる焼結助剤とを水等の溶媒に所定の割合で混合して得ることができる。この際、多孔質中間層用スラリーを構成する無機質分の含有量に対する第1バインダーの含有量の割合が、2〜10質量%であることが好ましく、4〜8質量%であることがさらに好ましい。
【0028】
ここで、図2は、図1におけるA部を拡大し模式的に示している。多孔質基材1の内壁側1aと外壁側1bとに圧力差があるために、図2に示すように、多孔質基材1の内壁側1aから流入した多孔質中間層用スラリー5は、外壁側1bへと引き寄せられる。この際、多孔質中間層用スラリー5を構成する水等の溶媒は、多孔質基材1の細孔を通過して成膜排水9として外壁側1bに流出する。また、その他の骨材粒子7、焼結助剤及び上記バインダー等の多孔質中間層用スラリー5を構成する分子は、多孔質基材1の細孔を通過することができないために、内壁側1aの表面に積層し、多孔質中間層2を形成する。このようにして多孔質基材1の内壁側1aの表面に多孔質中間層2が積層された二層積層体15を形成することができる。
【0029】
次に、二層積層体15を、耐圧容器10(図1参照)から取り出して、乾燥機等によって、例えば、100〜180℃で15時間乾燥する。このようにすることによって、二層積層体15の多孔質中間層2が固化し、二層積層体15が耐水性を有するようになる。本参考形態においては、上記バインダーに加えて、ウェランガムからなる他のバインダーを含有する多孔質中間層用スラリー5を用いることによって、二層積層体15の耐水性がさらに向上し、且つ多孔質中間層2の細孔径を安定的に保持することができるために好ましい。この場合、多孔質中間層用スラリー5を構成する無機質分の含有量に対するバインダーの合計の含有量の割合が、2〜10質量%であることが好ましく、さらに4〜8質量%であることが好ましい。
【0030】
この後に、図3に示すように、焼成することなく二層積層体15を水に浸漬し、二層積層体15の細孔内に水を含浸した状態で、二層積層体15の内壁側15aと外壁側15bと隔離し、外壁側15bをポンプ等で減圧した状態で、二層積層体15の内壁側15aに濾過膜層用スラリー18を流入し、二層積層体15の内壁側15aの表面に濾過膜層3が積層された三層積層体19を形成する。濾過膜層用スラリー18の骨材粒子20としては、チタニア粒子等を用いることができる。
【0031】
このように形成された三層積層体19を、乾燥機等によって、例えば、100〜180℃で15時間乾燥した後に、大気雰囲気電気炉等によって、例えば、1000℃で5時間の焼成を行い、複層構造セラミックスフィルターを製造する。また、上述した三層積層体19の乾燥工程と焼成工程とを、大気雰囲気電気炉等を用いて連続して行うこともできる。
【0032】
このように、乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂又はポリ酢酸ビニル樹脂になるポリマーを含むバインダーを含有する多孔質中間層用スラリーを塗布して二層積層体を形成することによって、積層された多孔質中間層は乾燥すると固化するために、多孔質中間層用スラリーが未焼成であっても耐水性に優れた二層積層体を得ることができる。また、このような製造方法によれば、多孔質中間層の膜厚は均一に成膜され、この多孔質中間層を構成するセラミックス粒子間の結合力が強く、且つ所定の孔径を安定的に保持する二層積層体を得ることができる。
【0033】
従って、このようにして得られた二層積層体の表面に濾過膜層を成膜する工程においては、二層積層体に水中での崩壊が発生せず、多孔質中間層の構造を安定的に維持することができる。さらに、この二層積層体に濾過膜層を成膜して三層積層体を形成した後、焼成して、図4及び図5に示すような、複層構造セラミックスフィルターを製造することができる。この複層構造セラミックスフィルター4は、多孔質中間層2及び濾過膜層3の最大細孔径が小さく、欠陥となる細孔の数も少なく高品質のものとなる。
【0034】
このような製造方法によれば、上述した従来技術のような、多孔質中間層の成膜工程におけるpH調整やゲル化処理等を必要とせず、多孔質中間層の成膜工程が大幅に簡略化される。また、二層積層体、三層積層体を個々に焼成する従来方法に比べて焼成回数を低減することができる。
【0035】
上述したバインダーを構成する各ポリマーは、乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂又はポリ酢酸ビニル樹脂になる。乾燥処理は、上記した耐水性のポリエステル樹脂又はポリ酢酸ビニル樹脂の軟化点を上回る温度で行うことによって、樹脂−樹脂及び樹脂−無機粒子との接着を強めることから好ましく、また、これらの樹脂が変質、分解を生じる温度を超えない温度で行うことが好ましい。具体的には、硬化速度を考慮すると100〜180℃が好ましい。また、自然乾燥した場合であっても、脱水化されればバインダーは樹脂化し二層積層体の耐水性は向上する。
【0036】
ここで、本参考形態において説明した、乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂又はポリ酢酸ビニル樹脂になるポリマーを含むバインダーを含有する多孔質中間層用スラリーを塗布して成膜した二層積層体に濾過膜層用スラリーを塗布して濾過膜層を成膜する工程と、従来から使用されている水溶性ポリマーバインダー(水溶性アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロース等)を含有する多孔質中間層用スラリーを塗布して成膜した二層積層体に濾過膜層用スラリーを塗布して濾過膜層を成膜する工程とを、各多孔質中間層の状態を模式的に示す、図6(a)、図6(b)、図7(a)及び図7(b)を用いて具体的に説明する。
【0037】
乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂又はポリ酢酸ビニル樹脂になるポリマーを含むバインダーを含有する多孔質中間層用スラリーを塗布して成膜した場合は、図6(a)に示すように、得られた多孔質中間層2を乾燥することによって、この多孔質中間層2を構成する各セラミックス粒子7が互いに耐水性の高いポリエステル樹脂又はポリ酢酸ビニル樹脂12で強固に結合されており、その結果、図6(b)に示すように、濾過膜層3の成膜工程においてセラミックス粒子7(図6(a)参照)で囲まれて形成されている細孔13は崩壊することなく保持され、濾過膜層3を構成するセラミックス粒子8は均等な厚さに配列し、所定の濾過膜層3が成膜される。
【0038】
一方、水溶性ポリマーバインダーを使用した場合は、図7(a)に示すように、図6(a)に示した多孔質中間層2と同様に、各セラミックス粒子7で囲まれた細孔13が形成されるが、多孔質中間層を構成する各セラミックス粒子7を互いに結合するポリマー14に耐水性の点で問題がある。
【0039】
その結果、濾過膜層の成膜工程において、結合部のポリマー14が溶出し、図7(b)に示すように、セラミックス粒子7で囲まれて形成されている細孔13(図7(a)参照)が形状を保持できず崩壊する。この崩壊した細孔13(図7(a)参照)の周辺部分には、濾過膜層を構成するセラミックス粒子8の配列が不均等になり、この部分が欠陥部となり正常な複層構造セラミックスフィルターを製造することができない。
【0040】
従って、乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂又はポリ酢酸ビニル樹脂になるポリマーを含むバインダーを含有する多孔質中間層用スラリーを用いて二層積層体を形成し、焼成することなく二層積層体の表面に濾過膜層用スラリーを塗布し、乾燥して、得られた三層積層体を焼成することによって、欠陥の極めて少ない複層構造セラミックスフィルターを得ることができる。
【0041】
次に、本発明の(第一の発明)の複層構造セラミックスフィルターの製造方法の一の実施の形態について具体的に説明する。本実施の形態の複層構造セラミックスフィルターの製造方法は、上記参考形態において説明した、乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂又はポリ酢酸ビニル樹脂になるポリマーを含むバインダーを含有する多孔質中間層用スラリーに代えて、SiO2ゾルからなる第1バインダー、及びウェランガムからなる第2バインダーを含有する多孔質中間層用スラリーを用いた複層構造セラミックスフィルターの製造方法である。すなわち、多孔質基材の表面に多孔質中間層用スラリーを塗布して、得られた多孔質中間層を表面に有する二層積層体の表面に濾過膜層用スラリーを塗布して、得られた濾過膜層を表面に有する三層積層体を焼成する複層構造セラミックスフィルターの製造方法であって、多孔質基材の表面に、SiO2ゾルからなる第1バインダー、及びウェランガムからなる第2バインダーを含有する多孔質中間層用スラリーを塗布し、乾燥して、耐水性を有する二層積層体を得、焼成することなく二層積層体の表面に濾過膜層用スラリーを塗布し、乾燥して、得られた三層積層体を焼成することを特徴とする。このように構成することによって、上記参考形態と同様に、上述した従来技術のような、多孔質中間層の成膜工程におけるpH調整やゲル化処理等を必要とせず、多孔質中間層の成膜工程が大幅に簡略化される。また、二層積層体、三層積層体を個々に焼成する従来方法に比べて焼成回数を低減することができる。
【0042】
本実施の形態においては、多孔質中間層用スラリーにSiO2ゾルからなる第1バインダー、及びウェランガムからなる第2バインダーを含有させる以外は、上述した図1〜図5に示した上記参考形態において説明した製造方法と同様の工程を経ることにより、複層構造セラミックスフィルターを簡便かつ容易に製造することができる。
【0043】
なお、本実施の形態においては、多孔質中間層用スラリーを構成する無機質分の含有量に対する第1バインダーの含有量の割合が、2〜15質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがさらに好ましい。また、多孔質中間層用スラリーを構成する無機質分の含有量に対する第1バインダー及び第2バインダーの合計の含有量の割合が、2〜15質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがさらに好ましい。
【0044】
また、本実施の形態においては、多孔質中間層用スラリーに含まれる第1バインダーを構成するSiO2ゾルの1次粒径が5〜200nmであることが好ましく、10〜100nmであることがさらに好ましい。
【0045】
SiO2ゾルの1次粒径が5nmより小さいと、SiO2ゾルの乾燥時や焼成時の収縮が大きくなり中間層や濾過膜層にクラックが発生することがある。また、200nmより大きいと中間層の耐水性が不十分となることがある。
【0046】
また、SiO2ゾルとして、1次粒径の異なるものを混合したものを使用してもかまわない。
【0047】
次に、本発明の(第二の発明)の複層構造セラミックスフィルターの製造方法の一の実施の形態について具体的に説明する。本実施の形態の複層構造セラミックスフィルターの製造方法は、SiO 2 ゾルからなる第1バインダー、ウェランガムからなる第2バインダー、及び乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂又はポリ酢酸ビニル樹脂になるポリマーを含む第3バインダーを含有する多孔質中間層用スラリーを用いた複層構造セラミックスフィルターの製造方法である。すなわち、多孔質基材の表面に多孔質中間層用スラリーを塗布して、得られた多孔質中間層を表面に有する二層積層体の表面に濾過膜層用スラリーを塗布して、得られた濾過膜層を表面に有する三層積層体を焼成する複層構造セラミックスフィルターの製造方法であって、多孔質基材の表面に、SiO 2 ゾルからなる第1バインダー、ウェランガムからなる第2バインダー、及び乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂又はポリ酢酸ビニル樹脂になるポリマーを含む第3バインダーを含有する多孔質中間層用スラリーを塗布し、乾燥して、耐水性を有する二層積層体を得、焼成することなく二層積層体の表面に濾過膜層用スラリーを塗布し、乾燥して、得られた三層積層体を焼成することを特徴とする。このように構成することによって、第一の発明と同様に、上述した従来技術のような、多孔質中間層の成膜工程におけるpH調整やゲル化処理等を必要とせず、さらに、この二つのバインダーを含有した多孔質中間層用スラリーを用いることにより、多孔質中間層の成膜工程が、より大幅に簡略化される。また、二層積層体、三層積層体を個々に焼成する従来方法に比べて焼成回数を低減することができる。
【0048】
本実施の形態においては、多孔質中間層用スラリーにSiO 2 ゾルからなる第1バインダー、ウェランガムからなる第2バインダー、及び乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂又はポリ酢酸ビニル樹脂になるポリマーを含む第3バインダーを含有させる以外は、上述した第一の発明の実施の形態において説明した製造方法と同様の工程を経ることにより、複層構造セラミックスフィルターを簡便かつ容易に製造することができる。
【0049】
なお、本実施の形態においては、多孔質中間層用スラリーを構成する無機質分の含有量に対する第1バインダー及び第3バインダーの合計の含有量の割合が、2〜15質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがさらに好ましい。また、多孔質中間層用スラリーを構成する無機質分の含有量に対する第1バインダー、第2バインダー及び第3バインダーの合計の含有量の割合が、2〜15質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがさらに好ましい。
【0050】
また、本実施の形態においては、多孔質中間層用スラリーに含まれる第1バインダーを構成するSiO2ゾルの1次粒径が5〜200nmであることが好ましく、10〜100nmであることがさらに好ましい。
【0051】
また、これまでに説明した第一及び第二の発明の実施の形態においては、三層積層体の両端部にガラスシールを施した後に、三層積層体を焼成することが好ましい。このように構成することによって、多孔質中間層、濾過膜層及びガラスシール層の焼成を1回で行うことができ、焼成回数をさらに低減させることができる。
【0052】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0053】
全実施例を通じて、図8に示すような、外径が30mm、長さが1100mmの円筒形で、平均気孔径が10μmのアルミナ質基材に、軸方向に55個の貫通孔を穿設した形状の多孔質基材1を用いた。
【0054】
(参考例1)
多孔質基材1の内壁側と外壁側を隔壁し、内壁側に多孔質中間層用スラリーを通過させ外壁側を真空ポンプで真空に減圧し濾過成膜を行い、多孔質中間層を表面に有する二層積層体を形成した。このとき、多孔質基材によって濾過され外壁側から滲み出た多孔質中間層用スラリーの濾液の量によって多孔質中間層の膜厚を制御した。本参考例においては、多孔質中間層の膜厚が150μmになるように制御した。また、多孔質中間層用スラリーには、骨材粒子としてボールミルで粉砕した平均粒径が3μmのアルミナ粉末を用い、焼結助剤としてボールミルで粉砕した平均粒径が1μmのガラスフリットを用いた。
【0055】
本参考例においては、多孔質中間層用スラリーを、水80質量部に対して、前述した骨材粒子のアルミナと焼結助剤のガラスフリットの混合物を20質量部の割合で混合し、分散剤を骨材粒子のアルミナと焼結助剤のガラスフリットとの混合物に対し1質量%相当量加え、第3バインダーとして乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂になるポリマーを加えた多孔質中間層用スラリーを用いて複層構造セラミックスフィルターの製造を行った。多孔質中間層用スラリーを構成する無機質分(骨材粒子と焼結助剤との混合物)の含有量に対する第3バインダーの含有量の割合は、表1に示すように4質量%とし、この際、骨材粒子のアルミナと、焼結助剤のガラスフリットとは、100:10の質量比で混合した。次に、この二層積層体を温風乾燥機にて100〜180℃で、15時間以上の乾燥を行った。
【0056】
次に、このようにして得られた二層積層体を水に浸漬して各細孔内に水を含浸し、二層積層体の内壁側と外壁側を隔壁し、内壁側に濾過膜層用スラリーを通過させ外壁側を真空ポンプで真空に減圧し濾過成膜を行った。濾過膜層用スラリーには、骨材粒子として平均粒径0.5μmのチタニア粒子を用いた。また、濾過膜層用スラリーは、水とチタニアとを、97:3の質量比で混合し、分散剤をチタニアに対し1質量%相当量加え、有機バインダーとしてポリビニルアルコールを水に対し0.3質量%相当量加えて形成した。
【0057】
次に、乾燥機にて100〜180℃で15時間以上乾燥し、焼成用電気炉にて、1000℃で5時間の焼成を行い複層構造セラミックスフィルター(供試体1)を製造した。
【0058】
このようにして製造された複層構造セラミックスフィルター(供試体1)について、最大発泡径の測定と、膜厚分布の測定を行った。
【0059】
最大発泡径の測定には、いわゆるバブルポイント法を用いた。以下に測定方法を説明する。複層構造セラミックスフィルターを水に浸漬し気孔中の穴に水を含浸させた。この際、含浸性を向上させるために各複層構造セラミックスフィルターを浸した容器を真空に減圧した。複層構造セラミックスフィルターを水に浸漬したまま内壁側と外壁側を隔壁し、内壁側を空気にて加圧し外壁の細孔を観察し、このときの細孔圧力から欠陥レベルを判断した。含浸に用いる溶媒及び加圧するガスは、表面張力、接触角及び密度等が既知であるものであれば、如何なるものでも用いることができるが、価格や環境等への安全性を考慮して、本参考例においては、空気と水を用いた。この最大発泡径が小さいものが高性能の複層構造セラミックスフィルターとなる。
【0060】
また、膜厚分布の測定は、多孔質中間層と濾過膜層の形成された複層構造セラミックスフィルターの膜厚を光学顕微鏡にて測定した。膜厚の測定は、成膜時の上下端からそれぞれ5cmの位置の断面の全貫通孔を形成する部分について、一個の貫通孔当たり四箇所測定し、膜厚変動係数(%)として求めた。膜厚変動係数は、「測定した膜厚の標準偏差×平均×100」の式から求めた。
【0061】
(参考例2)
本参考例においては、多孔質中間層用スラリーに第3バインダーとして乾燥すると、耐水性のポリ酢酸ビニル樹脂になるポリマーを加え、多孔質中間層用スラリーを構成する無機質分(骨材粒子と焼結助剤との混合物)の含有量に対する第3バインダーの含有量の割合を5質量%とした他は、参考例1と同様の方法で複層構造セラミックスフィルター(供試体2)を製造し、最大発泡径の測定と、膜厚分布の測定を行った。
【0062】
(比較例1)
本比較例においては、多孔質中間層用スラリーに第3バインダーとして水溶性アクリル樹脂を加え、多孔質中間層用スラリーを構成する無機質分(骨材粒子と焼結助剤との混合物)の含有量に対する第3バインダーの含有量の割合を1質量%とした他は、参考例1と同様の方法で複層構造セラミックスフィルター(比較体1)を製造し、最大発泡径の測定と、膜厚分布の測定を行った。
【0063】
(比較例2)
本比較例においては、多孔質中間層用スラリーに第3バインダーとして水溶性アクリル樹脂を加え、第2バインダーとしてアクリルエマルジョンを加えた。多孔質中間層用スラリーを構成する無機質分(骨材粒子と焼結助剤との混合物)の含有量に対する第3バインダーの含有量の割合を4質量%とし、第2バインダーの含有量の割合を6質量%とした他は、参考例1と同様の方法で複層構造セラミックスフィルター(比較体2)を製造し、最大発泡径の測定と、膜厚分布の測定を行った。
【0064】
上述した参考例1、2及び比較例1、2で行った、最大発泡径の測定と、膜厚分布の測定の測定結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
第3バインダーとして乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂になるポリマーを用いた供試体1は、最大発泡径が1.2μm、また、乾燥すると、耐水性のポリ酢酸ビニル樹脂になるポリマーを用いた供試体2は、最大発泡径が1.8μmであるのに対し、水溶性アクリル樹脂や、アクリルエマルジョンとの混合物をバインダーとして使用した比較体1及び2は、最大発泡径が3μm以上となり、供試体1及び2と比べ最大発泡径が大きく、複層構造セラミックスフィルターに欠陥細孔を有するものであった。また、膜厚変動係数は、供試体1、2及び比較体1、2共に10%であった。このことにより、第3バインダーとしてポリエステル樹脂又は酢酸ビニル樹脂を用いることによって、膜機能性能に優れた複層構造セラミックスフィルターを製造することができる。
【0067】
(参考例3)
本参考例においては、多孔質中間層用スラリーに第3バインダーとして乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂になるポリマーを加え、多孔質中間層用スラリーを構成する無機質分(骨材粒子と焼結助剤との混合物)の含有量に対する第3バインダーの含有量の割合を0.5質量%とした他は、参考例1と同様の方法で複層構造セラミックスフィルター(供試体3)を製造し、最大発泡径の測定と、膜厚分布の測定を行った。
【0068】
(参考例4)
本参考例においては、多孔質中間層用スラリーに第3バインダーとして乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂になるポリマーを加え、多孔質中間層用スラリーを構成する無機質分(骨材粒子と焼結助剤との混合物)の含有量に対する第3バインダーの含有量の割合を2質量%とした他は、参考例1と同様の方法で複層構造セラミックスフィルター(供試体4)を製造し、最大発泡径の測定と、膜厚分布の測定を行った。
【0069】
(参考例5)
本参考例においては、多孔質中間層用スラリーに第3バインダーとして乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂になるポリマーを加え、多孔質中間層用スラリーを構成する無機質分(骨材粒子と焼結助剤との混合物)の含有量に対する第3バインダーの含有量の割合を4質量%とし、参考例1と同様の方法で複層構造セラミックスフィルター(供試体5)を製造し、最大発泡径の測定と、膜厚分布の測定を行った。
【0070】
(参考例6)
本参考例においては、多孔質中間層用スラリーに第3バインダーとして乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂になるポリマーを加え、多孔質中間層用スラリーを構成する無機質分(骨材粒子と焼結助剤との混合物)の含有量に対する第3バインダーの含有量の割合を8質量%とした他は、参考例1と同様の方法で複層構造セラミックスフィルター(供試体6)を製造し、最大発泡径の測定と、膜厚分布の測定を行った。
【0071】
(参考例7)
本参考例においては、多孔質中間層用スラリーに第3バインダーとして乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂になるポリマーを加え、多孔質中間層用スラリーを構成する無機質分(骨材粒子と焼結助剤との混合物)の含有量に対する第3バインダーの含有量の割合を10質量%とした他は、参考例1と同様の方法で複層構造セラミックスフィルター(供試体7)を製造し、最大発泡径の測定と、膜厚分布の測定を行った。
【0072】
(参考例8)
本参考例においては、多孔質中間層用スラリーに第3バインダーとして乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂になるポリマーを加え、多孔質中間層用スラリーを構成する無機質分(骨材粒子と焼結助剤との混合物)の含有量に対する第3バインダーの含有量の割合を15質量%とした他は、参考例1と同様の方法で複層構造セラミックスフィルター(供試体8)を製造し、最大発泡径の測定と、膜厚分布の測定を行った。
【0073】
上述した参考例3〜8で行った、最大発泡径の測定と、膜厚分布の測定の測定結果を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
多孔質中間層用スラリーに第3バインダーとして乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂になるポリマーを加えると、各供試体3〜8において最大発泡径がいずれも3.0μm以下となり、膜機能性能に優れた複層構造セラミックスフィルターを製造することができた。この際、第3バインダーの含有量の割合を2〜10質量%の範囲内とした参考例4〜7においては、最大発泡径がいずれも2.0μm以下となり、特に良好な結果を得ることができた。
【0076】
(参考例9)
第3バインダーとして乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂になるポリマーを、前述した骨材粒子のアルミナと焼結助剤のガラスフリットとの混合物に対し4質量%加え、第2バインダーとしてウェランガムを0.1質量%加えた多孔質中間層用スラリーを用いて製造した複層構造セラミックスフィルター(供試体9)について、参考例1と同様の評価を行った。
【0077】
(参考例10)
第3バインダーとして乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂になるポリマーを、前述した骨材粒子のアルミナと焼結助剤のガラスフリットとの混合物に対し4質量%加え、第2バインダーとしてウェランガムを0.2質量%加えた多孔質中間層用スラリーを用いて製造した複層構造セラミックスフィルター(供試体10)について、参考例1と同様の評価を行った。
【0078】
(参考例11)
第3バインダーとして乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂になるポリマーを、前述した骨材粒子のアルミナと焼結助剤のガラスフリットとの混合物に対し4質量%加え、第2バインダーとしてウェランガムを0.5質量%加えた多孔質中間層用スラリーを用いて製造した複層構造セラミックスフィルター(供試体11)について、参考例1と同様の評価を行った。
【0079】
上述した参考例9〜11で行った、最大発泡径の測定と、膜厚分布の測定の測定結果を表3に示す。
【0080】
【表3】
【0081】
第2バインダーとしてウェランガムを加えると、各供試体9〜11において膜厚変動係数が小さくなり、形成される複層構造セラミックスフィルターの膜厚のばらつきが小さくなった。
【0082】
(参考例12)
参考例10における、供試体10を製造する工程において、濾過膜層成膜後、得られた三層積層体の長さが1000mmになるように、その両端部を切断加工した後、ガラスフリットを含むスラリーを三層積層体にスプレー塗布し、ガラスシールを施した後、乾燥し、1000℃で5時間焼成して、供試体12を製造した。
【0083】
このようにして製造された供試体12は、最大発泡径が1.1μmであり、ガラスシールを施したシール部からの細孔は認められなかった。このことにより、ガラスシールを有する複層構造セラミックスフィルターであっても、多孔質基材の焼成を除いて、一度の焼成で製造することができる。
【0084】
(参考例13)
多孔質中間層用スラリーに、1次粒径80nmのSiO2ゾルからなる第1バインダーを加え、多孔質中間層用スラリーを構成する無機質分(骨材粒子と焼結助剤との混合物)の含有量に対する第1バインダーの含有量の割合を10質量%とした以外は、参考例1と同様の方法で複層構造セラミックスフィルター(供試体13)を製造し、最大発泡径の測定と、膜厚分布の測定を行った。
【0085】
(実施例1)
多孔質中間層用スラリーに、前述した骨材粒子のアルミナと焼結助剤のガラスフリットとの混合物に対し、1次粒径5nmのSiO2ゾルからなる第1バインダーを15質量%加え、第2バインダーとしてウェランガムを0.4質量%加えた多孔質中間層用スラリーを用いて製造した複層構造セラミックスフィルター(供試体14)について、参考例1と同様の評価を行った。
【0086】
(実施例2)
多孔質中間層用スラリーに、前述した骨材粒子のアルミナと焼結助剤のガラスフリットとの混合物に対し、1次粒径200nmのSiO2ゾルからなる第1バインダーを8質量%加え、第2バインダーとしてウェランガムを0.4質量%加えた多孔質中間層用スラリーを用いて製造した複層構造セラミックスフィルター(供試体15)について、参考例1と同様の評価を行った。
【0087】
(実施例3)
多孔質中間層用スラリーに、前述した骨材粒子のアルミナと焼結助剤のガラスフリットとの混合物に対し、1次粒径10nmのSiO2ゾルからなる第1バインダーを4質量%加え、第2バインダーとしてウェランガムを0.4質量%加えた多孔質中間層用スラリーを用いて製造した複層構造セラミックスフィルター(供試体16)について、参考例1と同様の評価を行った。
【0088】
(実施例4)
多孔質中間層用スラリーに、前述した骨材粒子のアルミナと焼結助剤のガラスフリットとの混合物に対し、1次粒径10nmのSiO2ゾルからなる第1バインダーを2質量%加え、第2バインダーとしてウェランガムを0.5質量%加えた多孔質中間層用スラリーを用いて製造した複層構造セラミックスフィルター(供試体17)について、参考例1と同様の評価を行った。
【0089】
(参考例14)
多孔質中間層用スラリーに、前述した骨材粒子のアルミナと焼結助剤のガラスフリットとの混合物に対し、1次粒径10nmのSiO2ゾルからなる第1バインダーを2質量%、及び第3バインダーとして乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂になるポリマーを1質量%を加えた多孔質中間層用スラリーを用いて製造した複層構造セラミックスフィルター(供試体18)について、参考例1と同様の評価を行った。
【0090】
(参考例15)
多孔質中間層用スラリーに、前述した骨材粒子のアルミナと焼結助剤のガラスフリットとの混合物に対し、1次粒径10nmのSiO2ゾルからなる第1バインダーを2質量%、及び第3バインダーとして乾燥すると、耐水性のポリ酢酸ビニル樹脂になるポリマーを3質量%加えた多孔質中間層用スラリーを用いて製造した複層構造セラミックスフィルター(供試体19)について、参考例1と同様の評価を行った。
【0091】
(実施例5)
多孔質中間層用スラリーに、前述した骨材粒子のアルミナと焼結助剤のガラスフリットとの混合物に対し、1次粒径10nmのSiO2ゾルからなる第1バインダーを2質量%、第3バインダーとして乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂になるポリマーを2質量%、及び第2バインダーとしてウェランガムを0.3質量%を加えた多孔質中間層用スラリーを用いて製造した複層構造セラミックスフィルター(供試体20)について、参考例1と同様の評価を行った。
【0092】
(実施例6)
多孔質中間層用スラリーに、前述した骨材粒子のアルミナと焼結助剤のガラスフリットとの混合物に対し、1次粒径10nmのSiO2ゾルからなる第1バインダーを4質量%、第3バインダーとして乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂になるポリマーを1質量%、及び第2バインダーとしてウェランガムを0.4質量%を加えた多孔質中間層用スラリーを用いて製造した複層構造セラミックスフィルター(供試体21)について、参考例1と同様の評価を行った。
【0093】
(実施例7)
多孔質中間層用スラリーに、前述した骨材粒子のアルミナと焼結助剤のガラスフリットとの混合物に対し、1次粒径10nmのSiO2ゾルからなる第1バインダーを8質量%、第3バインダーとして乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂になるポリマーを1質量%、及び第2バインダーとしてウェランガムを0.3質量%を加えた多孔質中間層用スラリーを用いて製造した複層構造セラミックスフィルター(供試体22)について、参考例1と同様の評価を行った。
【0094】
(実施例8)
多孔質中間層用スラリーに、前述した骨材粒子のアルミナと焼結助剤のガラスフリットとの混合物に対し、1次粒径100nmのSiO2ゾルからなる第1バインダーを4質量%、第3バインダーとして乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂になるポリマーを1質量%、及び第2バインダーとしてウェランガムを0.4質量%を加えた多孔質中間層用スラリーを用いて製造した複層構造セラミックスフィルター(供試体23)について、参考例1と同様の評価を行った。
【0095】
上述した参考例13〜15、及び実施例1〜8で行った、最大発泡径の測定と、膜厚分布の測定の測定結果を表4に示す。
【0096】
【表4】
【0097】
表4に示すように、得られた複層構造セラミックスフィルターは、最大発泡径が1.1〜1.6μmと小さく優れた特性を有するものであった。また、膜厚変動係数も5〜15%の範囲内であり、膜厚均一性に優れたものであった。特に、本実施例(実施例13〜23)においては、多孔質中間層用スラリーとして、多孔質中間層用スラリーに含まれるバインダーの合計の含有量の割合(質量%)が2〜15質量%の範囲であるとともに、SiO2ゾルの一次粒径が5〜200nmの範囲のものを用いたことから、上述した各種特性において特に優れたものを得ることができた。
【0098】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によって、焼成回数の低減化を図ることができるとともに、中間で得られる多孔質中間層の諸特性(水中崩壊困難性、膜厚均一性、最大細孔径の品質安定性等)の向上を通して、その成膜作業の簡素化及び得られるセラミックスフィルターの欠陥数の減少化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 複層構造セラミックスフィルターの製造方法の参考形態における、多孔質基材の表面に多孔質中間層を成膜する工程を示す断面図である。
【図2】 図1における、A部を模式的に示す拡大図である。
【図3】 複層構造セラミックスフィルターの製造方法の参考形態における、三層積層体を形成する工程を模式的に示す説明図である。
【図4】 複層構造セラミックスフィルターの製造方法の参考形態によって製造された複層構造セラミックスフィルターを示す斜視図である。
【図5】 複層構造セラミックスフィルターの製造方法の参考形態によって製造された複層構造セラミックスフィルターの中心軸に対して垂直方向の断面図である。
【図6】 図6(a)及び図6(b)は、複層構造セラミックスフィルターの製造方法の参考形態における、二層積層体の表面に濾過膜層を成膜する工程を模式的に示す説明図である。
【図7】 図7(a)及び図7(b)は、多孔質中間層用スラリーに水溶性ポリマーバインダーを用いた場合における、二層積層体の表面に濾過膜層を成膜する工程を模式的に示す説明図である。
【図8】 本発明の複層構造セラミックスフィルターの製造方法の各実施例に用いられる多孔質基材を示す斜視図である。
【符号の説明】
1…多孔質基材、1a…内壁側、1b…外壁側、2…多孔質中間層、3…濾過膜層、4…複層構造セラミックスフィルター、5…(乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂又はポリ酢酸ビニル樹脂になるポリマーを含むバインダーを含有する)多孔質中間層用スラリー、6…多孔質基材を構成するセラミックス粒子、7…中間層を構成するセラミックス粒子(骨材粒子)、8…濾過膜層を構成するセラミックス粒子、9…成膜排水、10…耐圧容器、11…ホルダー、11a…スラリー投入口、11b…スラリー出口、12…ポリエステル樹脂又はポリ酢酸ビニル樹脂、13…多孔質中間層を構成するセラミックス粒子で囲まれた細孔(細孔)、14…ポリマー(水溶性ポリマーバインダー)、15…二層積層体、15a…内壁側、15b…外壁側、18…濾過膜層用スラリー、19…三層積層体、20…骨材粒子。
Claims (8)
- 多孔質基材の表面に多孔質中間層用スラリーを塗布して、得られた多孔質中間層を表面に有する二層積層体の表面に濾過膜層用スラリーを塗布して、得られた濾過膜層を表面に有する三層積層体を焼成する複層構造セラミックスフィルターの製造方法であって、
前記多孔質基材の表面に、SiO 2 ゾルからなる第1バインダー、及びウェランガムからなる第2バインダーを含有する前記多孔質中間層用スラリーを塗布し、乾燥して、耐水性を有する前記二層積層体を得、焼成することなく前記二層積層体の表面に前記濾過膜層用スラリーを塗布し、乾燥して、得られた前記三層積層体を焼成することを特徴とする複層構造セラミックスフィルターの製造方法。 - 前記多孔質中間層用スラリーを構成する無機質分の含有量に対する前記第1バインダーの含有量の割合が、2〜15質量%である請求項1に記載の複層構造セラミックスフィルターの製造方法。
- 前記多孔質中間層用スラリーを構成する無機質分の含有量に対する前記第1バインダー及び前記第2バインダーの合計の含有量の割合が、2〜15質量%である請求項1又は2に記載の複層構造セラミックスフィルターの製造方法。
- 多孔質基材の表面に多孔質中間層用スラリーを塗布して、得られた多孔質中間層を表面に有する二層積層体の表面に濾過膜層用スラリーを塗布して、得られた濾過膜層を表面に有する三層積層体を焼成する複層構造セラミックスフィルターの製造方法であって、
前記多孔質基材の表面に、SiO 2 ゾルからなる第1バインダー、ウェランガムからなる第2バインダー、及び乾燥すると、耐水性のポリエステル樹脂又はポリ酢酸ビニル樹脂になるポリマーを含む第3バインダーを含有する前記多孔質中間層用スラリーを塗布し、乾燥して、耐水性を有する前記二層積層体を得、焼成することなく前記二層積層体の表面に前記濾過膜層用スラリーを塗布し、乾燥して、得られた前記三層積層体を焼成することを特徴とする複層構造セラミックスフィルターの製造方法。 - 前記多孔質中間層用スラリーを構成する無機質分の含有量に対する前記第1バインダー及び前記第3バインダーの合計の含有量の割合が、2〜15質量%である請求項4に記載の複層構造セラミックスフィルターの製造方法。
- 前記多孔質中間層用スラリーを構成する無機質分の含有量に対する、前記第1バインダー、前記第2バインダー及び前記第3バインダーの合計の含有量の割合が、2〜15質量%である請求項4又は5に記載の複層構造セラミックスフィルターの製造方法。
- 前記多孔質中間層用スラリーに含まれる前記第1バインダーを構成するSiO 2 ゾルの1次粒径が5〜200nmである請求項1〜6のいずれかに記載の複層構造セラミックスフィルターの製造方法。
- 前記三層積層体の両端部にガラスシールを施した後に、前記三層積層体を焼成する請求項1〜7のいずれかに記載の複層構造セラミックスフィルターの製造方法。
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