JP4879210B2 - 複層構造セラミックフィルターの製造方法 - Google Patents
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Description
[スラリーをクロスフローろ過方式で堆積させる方法]
多孔質基材の表面に、スラリーをクロスフローろ過方式で堆積させる方法は、同出願人による特開昭61-238315号公報において開示されている。この方法によれば、ピンホールのない、均一な複層構造セラミックフィルターを得ることができる。以下、図1により、スラリーをクロスフローろ過方式で堆積させる方法を詳細に説明する。
本発明では、上記のようにして、第1層を成膜終了後、チャンバー2から多孔質支持体1を取出して、乾燥することなく、第2層目の成膜を実施する。以後の各層成膜工程も連続して行われる。このように第1層から第n層までの各層成膜用スラリーを、連続して、クロスフローろ過方式で堆積させる工程は、図2に示す構造を有する製造装置により行われる。各弁の開閉は下記の表1に示す通りである。
本発明で製造する複層構造のセラミックフィルターは、セラミック製多孔質基材の上に、さらに緻密な多孔質薄膜を成膜させた構造を有している。従って、各層成膜用スラリー内の粉体粒径の大きさを比較すると、第1層>第2層>・・>第x−1層>第x層>・・>第n層となる。上記のように、本発明において第x層成膜開始前には、弁B(x−1)と弁F(x−1)を全開にして、配管内や多孔質支持体1内に残った第x−1層成膜用スラリーをタンクに戻している。しかし、この場合であっても、配管内から第x−1層成膜用スラリーを完全に除去することはできず、x−1層成膜用スラリーが第x層成膜用スラリーに混入して、第x層の均一性を阻害する問題が生じる。
従来の複層構造セラミックフィルター製造方法によると、例えば、特許文献2では、第1層成膜用スラリーにポリエステル系または酢酸ビニル系または無機系ゾルのバインダーを含有させて、スラリー塗布面に耐水性を付与することで、第1層成膜用スラリーを塗布した後の焼成工程を省き、焼成回数を低減化しているが、この方法によっても、前記の耐水性を、第2層成膜時に第1層成膜用スラリーが混入しない程度に発現させるためには、第1層成膜用スラリー塗布後に乾燥機等によって、例えば100〜180℃で15時間の乾燥を行うことが必要であった。これに対し、本発明に係る製造方法の乾燥工程は、各層ごとでの乾燥を省略し、第1層から第n層までの全層成膜用スラリー堆積後に多孔質基材を乾燥させるものである。本発明により、第x―1層成膜時における減圧による乾燥で、第x層成膜時における第1層〜第 x−1層成膜用スラリーの混入を十分に防止する。本発明では、第1層から第n−1層までの各層成膜用スラリーにバインダーとして無機ゾルまたはポリビニルアルコールのバインダーを含有させた上で、前記の乾燥工程を省略している。
(実施例1)
図4に示す装置により、下記の工程で複層構造セラミックフィルターを製造した。
第1層成膜:
前記の[スラリーをクロスフローろ過方式で堆積させる方法]に従って、多孔質第1層を表面に有する二層積層体を形成した。このとき、多孔質基材によってろ過され多孔質支持体の外壁側から滲み出たろ液の量によって多孔質第1層の膜厚を制御した。本実施例においては、多孔質第1層の膜厚が150μmになるように制御した。また、多孔質第1層用スラリーには、骨材粒子としてボールミルで粉砕したアルミナ粉末(平均粒径3μm)を用い、焼結助剤としてボールミルで粉砕したガラスフリット(平均粒径1μm)を用いた。本実施例においては、多孔質第1層用スラリーを、水80部に対して、前述した、骨材粒子のアルミナ粉末と焼結助剤のガラスフリットの混合物を20質量部の割合で混合し、分散剤を骨材粒子のアルミナ粉末と焼結助剤のガラスフリットの混合物に対し1質量%相当加え、バインダー1としてシリカゾル(粒子径10nm)を加えた多孔質第1層用スラリーを用いて複層構造セラミックフィルターの製造を行った。多孔質第1層用スラリーを構成する無機質分(骨材粒子と焼結助剤の混合物)の含有量に対するバインダー1の含有率は、表2に示すように4質量%とし、この際、骨材粒子のアルミナ粉末と焼結助剤のガラスフリットとは、100:14の質量比で混合した。
第2層成膜:
次に、第2層用スラリーを用いて、前記同様にスラリーをクロスフローろ過方式で堆積させる方法により、第2層成膜を行った。篩は、目開きが20μmのものを用いた。第2層用スラリーには、骨材粒子としてチタニア(平均粒径0.5μm)を用いた。また、第2層用スラリーは、水とチタニアを、97:3の質量比で混合し、分散剤をチタニアに対し1質量%相当量加え、バインダー2としてポリビニルアルコールを水に対して0.3%相当量加えて形成した。
乾燥と焼成:
第2層成膜後、乾燥機にて100〜180℃で15時間以上乾燥し、焼成用電気炉にて1000℃で5時間の焼成を行い、複層構造セラミックフィルターを製造した。
図5に示す装置により、下記の工程で複層構造セラミックフィルターを製造した。
第1層成膜:
実施例1に同じ。
第2層成膜:
実施例1のスラリーに、バインダー1を加えた他は、実施例1に同じ。多孔質第2層用スラリーを構成する無機質分(骨材粒子と焼結助剤の混合物)の含有量に対するバインダー1の含有率は4質量%とした。
第3層成膜:
次に、第3層用スラリーを用いて、前記同様にスラリーをクロスフローろ過方式で堆積させる方法により、第3層成膜を行った。篩は、目開きが2μmのものを用いた。第3層用スラリーには、骨材粒子としてチタニア(平均粒径0.4μm)を用いた。また、第2層用スラリーは、水とチタニアを、97:3の質量比で混合し、分散剤をチタニアに対し1質量%相当量加え、バインダー2としてポリビニルアルコールを水に対して0.3%相当量加えて形成した。
乾燥と焼成:
第3層成膜後、乾燥機にて100〜180℃で15時間以上乾燥し、焼成用電気炉にて1000℃で5時間の焼成を行い、複層構造セラミックフィルターを製造した。
図5に示す装置により、下記の工程で複層構造セラミックフィルターを製造した。
第1層成膜:
実施例1に同じ。
第2層成膜:
実施例2に同じ。
第3層成膜:
次に、第3層用スラリーを用いて、前記同様にスラリーをクロスフローろ過方式で堆積させる方法により、第3層成膜を行った。篩は、目開きが2μmのものを用いた。第3層用スラリーには、骨材粒子としてジルコニア粒子(平均粒径0.1μm)を用いた。また、第3層用スラリーは、水とジルコニアを、97:3の質量比で混合し、分散剤をジルコニアに対し1質量%相当量加え、バインダー2としてポリビニルアルコールを水に対して0.3%相当量加えて形成した。
乾燥と焼成:
第3層成膜後、乾燥機にて100〜180℃で15時間以上乾燥し、焼成用電気炉にて1000℃で5時間の焼成を行い、複層構造セラミックフィルターを製造した。
図5に示す装置により、下記の工程で複層構造セラミックフィルターを製造した。
第1層成膜:
実施例1に同じ。
第2層成膜:
実施例2に同じ。
第3層成膜:
次に、第3層用スラリーを用いて、前記同様にスラリーをクロスフローろ過方式で堆積させる方法により、第3層成膜を行った。篩は、目開きが2μmのものを用いた。第3層用スラリーには、骨材粒子としてジルコニア粒子(平均粒径0.06μm)を用いた。また、第3層用スラリーは、水とジルコニアを、97:3の質量比で混合し、分散剤をジルコニアに対し1質量%相当量加え、バインダー2としてポリビニルアルコールを水に対して0.3%相当量加えて形成した。
乾燥と焼成:
第3層成膜後、乾燥機にて100〜180℃で15時間以上乾燥し、焼成用電気炉にて1000℃で5時間の焼成を行い、複層構造セラミックフィルターを製造した。
図5に示す装置により、下記の工程で複層構造セラミックフィルターを製造した。
第1層成膜:
実施例1に同じ。
第2層成膜:
実施例2に同じ。
第3層成膜:
次に、第3層用スラリーを用いて、前記同様にスラリーをクロスフローろ過方式で堆積させる方法により、第3層成膜を行った。篩は、目開きが2μmのものを用いた。第3層用スラリーには、骨材粒子としてチタニア粒子(平均粒径0.04μm)を用いた。また、第3層用スラリーは、水とジルコニアを、97:3の質量比で混合し、分散剤をジルコニアに対し1質量%相当量加え、バインダー2としてポリビニルアルコールを水に対して0.3%相当量加えて形成した。
乾燥と焼成:
第3層成膜後、乾燥機にて100〜180℃で15時間以上乾燥し、焼成用電気炉にて1000℃で5時間の焼成を行い、複層構造セラミックフィルターを製造した。
図1に示すものと同様の装置により、下記の工程で複層構造セラミックフィルターを製造した。
第1層成膜:
実施例1と同様にして第1層成膜後、乾燥機にて100〜180℃で15時間以上乾燥を行った。乾燥中、装置配管の洗浄を行った。
第2層成膜:
実施例1に同じ。
乾燥と焼成:
第2層成膜後、乾燥機にて100〜180℃で15時間以上乾燥し、焼成用電気炉にて1000℃で5時間の焼成を行い、複層構造セラミックフィルターを製造した。
上記のようにして製造された複層構造セラミックフィルター(実施例1〜5、比較例)について、最大発泡径の測定を行った結果を下記の表2に示す。最大発泡径の測定には、バブルポイント法を用いた。
1a多孔質支持体内側面
2 チャンバー
3 弁A
4 弁B(第1層用)
5 弁C(第1層用)
6 ポンプ
7 弁D
8 弁E
9 タンク(第1層用)
9a スラリー(第1層用)
10 真空ポンプ
11 弁F(第1層用)
12 タンク(第2層用)
12a スラリー(第2層用)
13 弁B(第2層用)
14 弁C(第2層用)
15 篩分け手段(第2層用)
16 弁F(第2層用)
17 タンク(第n層用)
17a スラリー(第n層用)
18 弁B((第n層用)
19 弁C(第n層用)
20 篩分け手段(第n層用)
21 弁F(第n層用)
22 篩分け手段
23 篩
24 篩分け装置の蓋
Claims (2)
- 多孔質基材の表面に、第1層から第n層までの各層成膜用スラリーを、連続して、クロスフローろ過方式で堆積させる工程と、
第1層から第n層までの各層成膜用スラリー堆積後に多孔質基材を乾燥させる工程と、
乾燥後の多孔質基材を焼成させる工程とからなる複層構造セラミックフィルターの製造方法であって、
第1層から第n−1層までの各層成膜用スラリーはバインダーとして無機ゾルまたはポリビニルアルコールを含有すること、
及び
多孔質基材の表面に、第1層から第n層までの各層成膜用スラリーを、連続して、クロスフローろ過方式で堆積させる工程は、xを2以上n以下の整数値として、
第x−1層成膜用スラリーをクロスフローろ過方式で堆積させる工程と、
第x−1層成膜用スラリーの流路を塞ぎ、第x層成膜用スラリーの流路を開放する工程と、
第x−1層成膜用スラリーが堆積した多孔質基材の表面に、第x層成膜用スラリーをクロスフローろ過方式で堆積させる工程とを、連続して行うものであり、
第x層成膜用スラリー堆積工程には、第1層〜第x−1層成膜用スラリー流入防止手段を設けることで、第x層成膜用スラリーの粉体よりも粒径の大きい粉体の流入を阻止していること
を特徴とする複層構造セラミックフィルターの製造方法。 - 第x層成膜用スラリー堆積工程に設けられた、第1層〜第x−1層成膜用スラリー流入防止手段は、
スラリー内の粉体粒径による篩分け手段であって、
第1層〜第x−1層成膜用スラリーは透過させず、第x層成膜用スラリーは透過させる篩分け手段であることを特徴とする請求項1記載の複層構造セラミックフィルターの製造方法。
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