以下、添付図面を参照して、めっき装置及びめっき方法の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
実施形態であるめっき装置について説明する。図1は、実施形態であるめっき装置1の断面図である。図1に示すように、めっき装置1は、めっき液Fを貯留するめっき槽10と、めっき槽10内に配されるポッド12と、ポッド12をその内部に配するシリンダ14とを備えている。めっき槽10内であってポッド12外にはアノード22が、ポッド12内にはカソード18がそれぞれ配されている。また、めっき槽10とシリンダ14とは2系統の管路によって接続されており、それぞれの管路には第1ポンプP1と第2ポンプP2とが設けられている。
めっき槽10は、樹脂といった絶縁材料によって直方体形状に形成され、上部が開口した有底容器である。めっき槽10の内部はめっき液Fによって満たされている。めっき槽10の底を貫通するように棒状のカソード18が設けられている。
カソード18がめっき槽10の底から延出する部分には、アノード22が設けられている。アノード22はリング状の電極であって、カソード18を囲繞するように設けられている。
カソード18は、その軸線周りに回転可能なように構成されている。カソード18及びアノード22は、図示しない直流電圧印加手段(直流電源、整流器)によって電圧が印加されて、それぞれ陰極及び陽極として機能している。
シリンダ14は、めっき槽10の開口からめっき液Fに没入されている。シリンダ14は、その一端がめっき槽10の底部に当接するまでめっき液Fに没入されても、他端はめっき液Fの外に突出するように十分な長さが確保されている。また、シリンダ14のめっき槽10に没入されない方の端部は閉じられており、シリンダ14内部はめっき液Fによって満たされている。
第1ポンプP1が設けられている管路は、めっき槽10から第1ポンプP1を経由してシリンダ14へとめっき液Fを循環させることができる。従って、第1ポンプP1を作動させている場合には、シリンダ14内においては、図1の上方から下方へとめっき液Fが流動する。
第2ポンプP2が設けられている管路は、シリンダ14から第2ポンプP2を経由してめっき槽10へとめっき液Fを循環させることができる。従って、第2ポンプP2を作動させている場合には、シリンダ14内においては、図1の下方から上方へとめっき液Fが流動する。
シリンダ14は、その内部にポッド12を収納するように配置されている。ポッド12について図2を参照しながら説明する。図2は、ポッド12の分解斜視図である。ポッド12は、筒121と、一対のメッシュ123(篩部材)とから構成されている。筒121は円筒形状を成している。メッシュ123は、筒121の両端に配されるものである。一方のメッシュ123にはカソード18が取り付けられており、メッシュ123を筒に配した場合に、カソード18が筒121内部に突出するように形成されている。
メッシュ123は網状の部材であって、ポッド12内に配されるワークW(被めっき物)が実質的に通過しないように構成されている。例えば、メッシュ123の網の目を個々のワークWよりも小さく構成したり、網状部材を複数積層させることでワークWが通過できないように構成したりしてもよい。また、メッシュ123の代わりに、シート状部材や板状部材にレーザ加工などによって微細孔を形成して同様の機能を果たす部材を用いてもよい。メッシュ123をこのような構成にすることで、ポッド12内に収容されるワークW(被めっき物)は、メッシュ123を実質的に通過しない。尚、ワークWとしては、例えばチップコンデンサ、チップバリスタ、チップインダクタ、チップビーズといった積層型電子部品が用いられる。
カソード18は一方のメッシュ123に固定されている。従って、図示しないモータ等(回転機構)によってカソード18(回転機構)をその軸線周りに回転させると、ポッド12もその回転に応じて自転する。ポッド12内のめっき液Fには、この回転に応じて渦流が発生する。
本実施形態においては、第1ポンプP1及び第2ポンプP2を交互に作動させることで、シリンダ14内及びポッド12内のめっき液Fを上下方向に交互に流動させることができる。この場合、めっき液Fは、メッシュ123の一方を介してポッド12から流出し、そのメッシュ123を介してポッド12内に流入するので、第1ポンプP1が設けられた管路及び第2ポンプP2が設けられた管路が液流動手段として機能する。
液流動手段としては図1に示した第1ポンプP1と第2ポンプP2との組み合わせ以外にも様々なものが採用可能である。液流動手段を変更する観点からの本実施形態の変形例を図3及び図4を参照しながら説明する。図3は第1の変形例を示す図であり、図4は第2の変形例を示す図である。
図3に示す第1の変形例に係るめっき装置2は、めっき液Fを貯留するめっき槽10と、めっき槽10内に配されるポッド12と、ポッド12をその内部に配するシリンダ14とを備えている。めっき槽10内であってポッド12外にはアノード22が、ポッド12内にはカソード18がそれぞれ配されている。また、めっき槽10とシリンダ14とは1系統の管路によって接続されている。
めっき槽10、ポッド12、シリンダ14、アノード22については既に説明した通りである。めっき槽10の底を貫通するようにシャフト20が設けられており、カソード18は、このシャフト20の先端に設けられている。
シャフト20には、スクリュー201が設けられている。スクリュー201は、シリンダ14内に位置するように設けられている。スクリュー201はシャフト20の回転に応じて回転し、その回転方向に応じてシリンダ14内におけるめっき液Fを図3の上下方向に流動させることができる。シリンダ14内はめっき液Fで満たされており、シリンダ14とめっき槽10とは管路で接続されているので、めっき液Fはめっき装置2内を循環する。従って、スクリュー201と管路が液流動手段として機能する。
図4に示す第2の変形例に係るめっき装置2は、めっき液Fを貯留するめっき槽10と、めっき槽10内に配されるポッド12と、ポッド12をその内部に配するシリンダ14とを備えている。めっき槽10内であってポッド12外にはアノード22が、ポッド12内にはカソード18がそれぞれ配されている。
めっき槽10、ポッド12、カソード18、アノード22については既に説明した通りである。シリンダ14は、図示しない上下動手段によって図4の上下方向に往復運動が可能なように構成されている。シリンダ14内には、ポッド12が浸漬可能な程度にめっき液Fが満たされている。シリンダ14の上下方向への往復運動に応じて、シリンダ14内のめっき液Fが図4の上下方向に流動する。従って、シリンダ14と上下動手段が液流動手段として機能する。
引き続いて、めっき装置1〜3を用いるめっき方法について説明し、併せてめっき装置1〜3の動作についても説明する。図5は、めっき方法の手順を示す図である。図1〜5を適宜参照しながら説明する。
まず、ポッド12を準備し(図2参照)、ポッド12の筒121内部にワークWを収容する。続いて、シリンダ14の内部にポッド12を収容し、カソード18とシャフト20とを固定する(図1、図3参照)。ポッド12及びシリンダ14をめっき槽10内に配した状体で、めっき槽10にめっき液Fを貯留する(図5の準備工程S01)。
ステップS01の準備段階から、シリンダ14内のめっき液を流動させる(図5の液流動工程S02)。図1に示しためっき装置1では、第2ポンプP2を作動させて、シリンダ14内のめっき液Fを図1の上方向に流動させ、ワークWを舞い上げる。また、図3に示しためっき装置2では、スクリュー201を順回転させて、シリンダ14内のめっき液Fを図3の上方向に流動させ、ワークWを舞い上げる。また、図4に示しためっき装置3では、シリンダ14を図4の上方向に動かして、ワークWを舞い上げる。
その後、ポッド12内に舞い上がったワークWを沈降させる。具体的には、図1に示しためっき装置1では、第2ポンプP2を停止させ、第1ポンプP1を作動させて、シリンダ14内のめっき液Fを図1の下方向に流動させ、ワークWを沈降させる。また、図3に示しためっき装置2では、スクリュー201を逆回転させて、シリンダ14内のめっき液Fを図3の下方向に流動させ、ワークWを沈降させる。また、図4に示しためっき装置3では、シリンダ14を図4の下方向に動かして、ワークWを沈降させる。
このように、ポッド12内にめっき液Fが流入し、収容されているワークWがポッド12の底部に沈降してカソード18と接触する。この状態で、カソード18及びアノード22に所定の電圧を印加し、ワークWに対するめっき処理を行う(図5の流入工程、めっき工程S03)。このように、ワークWが沈降堆積した状態でめっき処理を行うので、めっき処理時にカソード18にワークWが的確に接触する。従って、通電効率を向上させることが可能となり、めっき効率が向上する。また、カソード18にめっき膜が形成されてしまうことを抑制できる。
なお、図4に示した変形例によるめっき装置によれば、以下のようなめっき方法を実施することもできる。すなわち、まず、ワークWを収容したポッド12と、1つの開口端を有するシリンダ14とを用意する(準備工程)。次に、ポッド12をシリンダ14の内部に配し、シリンダ14の長手方向がめっき槽10内のめっき液Fの液面と直交し、且つシリンダ14の開口端がめっき槽10の底部と対向するように、シリンダ14をめっき槽10内に配するとともに、シリンダ14内部をめっき液で満たす(めっき槽内配置工程)。次に、シリンダ14を上下方向に往復移動させ、シリンダ14内のめっき液を上下方向に流動させることによりポッド12内の気泡をポッド12内から当該ポッド12外に流出させる(ポッド内エア抜き工程)。続いて、めっき液Fに通電してワークWにめっき処理を施す(めっき工程)。この場合、めっき工程においてめっき処理をされる前に、ポッド12内の気泡が除去される。そのため、ワークWに発生する不具合を効果的に低減することが可能となる。
本実施形態では電気めっきについて例示したけれども、無電解めっき法によってめっきを行ってもよい。また、本実施形態ではポッド12内にメディア(導電性媒体)を用いていないけれども、必要に応じてこのようなメディアをワークWと共にポッド12内に投入してもよい。
続いて、他の実施形態であるめっき装置及びめっき方法について説明する。図6は、他の実施形態に係るめっき装置100の構成図である。図6に示すように、めっき装置100は、めっき槽支持部材101と、基台102と、めっき槽30と、シリンダ40と、アクチュエータ41と、ポッド50と、回転ユニット60と、めっき液管理槽70とを備える。
めっき装置100は、ポッド50内に被めっき物であるワークWを収容し、ポッド50を内部に配するシリンダ40及びアクチュエータ41を用いてポッド50内の気泡を除去するとともにポッド50内に液流を発生させ、ワークWにめっき処理を施す装置である。
めっき槽支持部材101は、断面がL字を描く部材である。めっき槽支持部材101は、図2における左右方向に伸びるL字の一画に相当する部分101aでめっき槽30を支持し、L字のもう一方の一画に相当する部分101bでアクチュエータ41を支持する。
めっき槽30を支持する、めっき槽支持部材101のL字の一画に相当する部分101aには、当該部分に直交する方向に伸びる上下動ガイド部材103及び傾斜ねじ支持部材8が設けられている。上下動ガイド部材103には、回転ユニット60が取り付けられており、当該回転ユニット60を上下動ガイド部材103に沿って往復移動させるガイドが設けられている。傾斜ねじ支持部材8は、後述の傾斜軸ねじ7によって基台102と連結される。これにより、めっき槽支持部材101と基台102とが一体に連結される。
基台102は、断面がL字を描く部材である。基台102は、図2における上下方向に伸びるL字の一画に相当する部分で、傾斜軸ねじ7によって傾斜ねじ支持部材8と連結される。
めっき槽30は、めっき槽支持部材101のL字の一画に相当する部分101b上に配置される。めっき槽30は、樹脂といった絶縁材料によって直方体形状に形成され、上部が開口した有底容器である。めっき槽30の内部はめっき液Fによって満たされている。めっき槽30の底を貫通するように後述のシャフト61が設けられている。
めっき槽30は、内部に形成された、当該めっき槽30の側面と平行な分割壁30aによって分割された貯留部31及びオーバーフロー部32を有する。貯留部31は、めっき液Fを貯留し、シリンダ40を内部に配する。貯留部31側のめっき槽30の壁面には、めっき液循環供給口33が設けられている。めっき液循環供給口33は、第1のパイプ35に接続されている。
オーバーフロー部32は、分割壁30aを越えて貯留部31から溢れ出てきためっき液Fを受け止める。オーバーフロー部32側のめっき槽30の壁面には、めっき液排出口34が設けられている。めっき液排出口34は、第2のパイプ36に接続されている。
また、めっき槽30の底部には、めっき槽30外部に向かって突出する筒状のめっき槽軸受け部30bが形成されている。
シリンダ40は、めっき槽30の貯留部31内のめっき液Fに没入されている。シリンダ40は、その一端がめっき槽30の底部に当接するまでめっき液Fに没入されても、他端はめっき液Fの外に突出するように十分な長さが確保されている。シリンダ40は、長手方向の両端部が開口している筒状体である。シリンダ40は、めっき槽30内に一方の開口端がめっき槽30の底部と対向するように配され、アクチュエータ41と連結しているシリンダ支持部材42によって支持されている。シリンダ40は、他方の開口端を介して、第3のパイプ43に接続されている。当該他方の開口端は、第3のパイプを介して後述する電磁バルブEBに接続されており、電磁バルブEBによって閉じることができる構造となっている。
シリンダ40の内部空間は、ポッド収容部40a及びめっき液流出部40bとで構成され、シリンダ40の長手方向に伸びる。シリンダ40の長手方向に対して直交するめっき液流出部40bの断面の断面積は、当該長手方向に対して直交するポッド収容部40aの断面の断面積に比べて小さい。ポッド収容部40aは、ポッド50を収納することができる。一方、めっき液流出部40bは、めっき液の通過は許容されているが、ポッド50を収納することはできない。
アクチュエータ41は、シリンダ支持部材42を介して連結されたシリンダ40をめっき液Fの液面に対して直交する方向に往復移動させる。アクチュエータ41は、めっき槽支持部材101によって支持されている。
アクチュエータ41は、図示しないアクチュエータ制御部と接続されている。アクチュエータ制御部は、シリンダ40がめっき槽30底部から離れる方向に移動する速度及び加速度を制御するようアクチュエータ41の駆動を制御する。アクチュエータ41及びアクチュエータ制御部は、シリンダ40の移動に伴い、ポッド50内のめっき液Fの少なくとも一部が一対のメッシュ53の一方を介してポッド50外に流出し、ポッド50外のめっき液Fが一対のメッシュ53の他方を介してポッド50内に流入するよう、シリンダ40を往復移動させるシリンダ移動手段として機能する。
アクチュエータ制御部はさらに、ポッド50内のめっき液Fの少なくとも一部が所望の加速度で一対のメッシュ53の一方を介してポッド50外に流出し、ポッド50外のめっき液Fが所望の加速度で一対のメッシュ53の他方を介してポッド50内に流入するよう、シリンダ40がめっき槽30底部から離れる方向に移動する速度及び加速度を制御するシリンダ移動制御手段として機能する。
図7は、ポッド50の分解斜視図である。ポッド50は、筒51と、上部リング52と、一対のメッシュ53(篩部材)と、下部リング54から構成されている。筒51は、円筒形状を成している。筒51は、図7に示されるように、両端部が開口している。すなわち、一方の端部から他方の端部まで伸びる貫通空間が形成された胴体である。メッシュ53は、筒51の両端部のそれぞれに配されるものである。一方のメッシュ53にはカソード55が取り付けられており、メッシュ53を筒51に配した場合にカソード55が筒51内部に突出するように形成されている。すなわち、カソード55は、少なくとも一部が筒51の内部空間として伸びる貫通空間に露出している。筒51の両端近傍の外壁には、螺旋溝が形成されている。
筒51の貫通空間の、貫通空間が伸びる方向に対して垂直な断面での断面積は、ワークWの引っかかりを抑制するため、筒51の一方の端部から他方の端部に向けて同一である。すなわち、筒51の内壁によって画成され、筒51の両端部の対向方向に対して垂直な筒51の貫通空間の断面の断面積は、当該対向方向について同一である。
メッシュ53は網状の部材であって、ポッド50内に配されるワークW(被めっき物)が実質的に通過しないように構成されている。すなわち、メッシュ53は、篩部材として、めっき液Fの通過を許容し、且つ被めっき物の通過を規制するように構成されている。一対のメッシュ53は、互いに対向する。
上部リング52及び下部リング54はいずれも、筒51との間にメッシュ53を保持するための部材である。リング52、54の内壁には螺旋溝が形成されている。メッシュ53を挟み込んで、リング52,54の内壁に形成された螺旋溝と筒51の外壁に形成された螺旋溝とを螺合させることにより、リング52、54は筒51に取り付けられる。筒51の両端にメッシュ53を配し、リング52、54を筒51の両端に螺合すると、筒51と一対のメッシュ53とによって郭定される空間が形成される。
カソード55は、筒51の貫通空間に露出する突出部55aと延伸部55bとを有する。突出部55aは、筒51の一端に配されるメッシュ53を、当該突出部55aと下部リング54との間に挟み込むことにより固定する。ワークWの引っかかりを抑制するため、カソード55の突出部55aの、筒51の貫通空間が伸びる方向に対して垂直な断面での断面積は、カソード55が配されたメッシュ53から離れるにしたがって単純減少で変化する。さらに、電流の集中を抑制するため、突出部55aは、角部を有さず、凸面形状を有している。延伸部55bは、突出部55aからポッド50外に向かって延び、後述するシャフト61の軸線に沿うようにしてシャフト61の先端に設けられる。
再び、図6に戻ってめっき装置100の説明を続ける。ポッド50は、シリンダ40の長手方向が一対のメッシュ53の対向方向と平行になるように、シリンダ40内部に配される。すなわち、ポッド50は、シリンダ40の長手方向がポッド50の貫通空間が伸びる方向と平行になるように、シリンダ40内部に配される。
シャフト61がめっき槽30の底から延出する部分には、アノード56が設けられている。アノード56はリング状の電極であって、カソード55を囲繞するように設けられている。アノード56は、めっき槽30内であって、ポッド50外に配される。
カソード55は、シャフト61及び導線CL2を介し図示しない直流電圧印加手段(直流電源、整流器)によって電圧が印加されて、陰極として機能している。アノード56は、導体からなるアノード支持部57及び導線CL1を介し図示しない直流電圧印加手段によって電圧が印加されて、陽極として機能している。
回転ユニット60は、シャフト61と接続され、シャフト61をその軸線周りに回転させ、その回転に応じてカソード55の延伸部55bをその軸線周りに回転させると、ポッド50もその回転に応じて自転する。すなわち、回転ユニット60は、ポッド50を、当該ポッド50の貫通空間(内部空間)が伸びる方向を中心に回転させる。また、回転ユニット60は、図示しない上下動モータに接続されており、シャフトと共に上下動ガイド部材103に沿って、図6の上下方向に移動する。
回転ユニット60は、ポッド回転モータ62、ベース63、ベアリング64、及び一対の回転駆動ギア65を有する。ポッド回転モータ62は、回転棒62aをその軸線周りに回転させる。ポッド回転モータ62は、ベース63に取り付けられ、回転棒62aを介して一対の回転駆動ギア65の一方に接続される。ポッド回転モータ62は、スピードコントローラを備えていてもよい。
一対の回転駆動ギア65は、互いに噛み合っており、一方を回転させると他方も回転するように構成されている。従って、回転棒62aが回転することによって一方の回転駆動ギア65が回転されると、他方の回転駆動ギア65も回転される。
ベアリング64は、その中心に貫通孔を有し、当該貫通孔をシャフト61が貫通するようにベース63内に設けられている。ベアリング64は、シャフト61の軸受けとして機能する。
シャフト61は、ポッド50内に配されたカソード55に対して給電し、さらに回転ユニット60によって生成される回転駆動をポッド50に伝達する。シャフト61のうち、めっき槽30内に配される部分の表面には、めっきの析出を抑制するために塩化ビニールあるいはポリテトラフルオロエチレンがコーティングされていることが好ましい。シャフト61の、回転ユニット60と接続されている側の端部には通電のための接点があり、導線CL2によって整流器の負極へ結線されている。
シャフト61は、ロータリーガイドブッシュ66及びオイルシール67によって周囲を取り囲まれている。ロータリーガイドブッシュ66及びオイルシール67は、筒状であるめっき槽30のめっき槽軸受け部30bの内部空間に取り付けられている。
ロータリーガイドブッシュ66は、筒状の部材であって、本実施形態ではシャフト61の軸受けとして機能する。オイルシール67は、ロータリーガイドブッシュ66を間に挟むように、その両端側に位置する。オイルシール67は、回転を促すためにロータリーガイドブッシュ66とシャフト61との間に挿入されたオイル等を、ロータリーガイドブッシュ66とシャフト61との間に封入しておくシール部材として機能する。
めっき液管理槽70は、めっき液Fを貯留する。めっき液管理槽70のめっき液F内には、温度管理装置(例えば、ヒータ、チラー等)71が没入されている。温度管理装置71は、例えば、ヒータ、チラー等であって、めっき液管理槽70内のめっき液Fの温度を所定の温度に管理する。めっき液管理槽70のめっき液F内には、第1〜第3のパイプ35、36、43の端部が没入されている。めっき液Fは、めっき液管理槽70とめっき槽30との間を、第1〜第3のパイプ35、36、43を介して循環している。
第1のパイプ35は、めっき液循環ポンプCP及びめっき液ろ過フィルターBFを介して、めっき槽30のめっき液循環供給口33に接続されており、めっき液Fをめっき液管理槽70内からめっき槽30の貯留部31内に供給する。めっき液循環ポンプCPは、めっき液管理槽70内のめっき液Fを第1のパイプ35に流入させて、めっき液Fをめっき槽30内に流入させる。すなわち、めっき液循環ポンプCPは、めっき液Fをめっき槽30とめっき液管理槽70との間で循環させる液循環手段として機能する。めっき液ろ過フィルターBFは、第1のパイプ35を通過するめっき液をろ過する。
第2のパイプ36は、めっき槽30のめっき液排出口34に接続されており、めっき槽30のオーバーフロー部32に溢れ出ためっき液Fをめっき液管理槽70に排出する。
第3のパイプ43は、電磁バルブEB及びエア吸引ポンプAPを介して、シリンダ40の他方の開口端(めっき液流出部40b側の開口端)に接続されており、シリンダ40内のめっき液をシリンダ内の気泡とともにめっき液管理槽70に排出する。電磁バルブEBは開閉可能であって、電磁バルブEBを閉じることにより当該電磁バルブEBからシリンダ40側の空間を閉じた空間とすることができる。すなわち、シリンダ40の他方の開口端側の空間を閉じた空間とすることができる。エア吸引ポンプAPは、電磁バルブEBが開いている状態のときに起動することで、シリンダ40内のめっき液を当該シリンダ40内の気泡とともに吸引し第3のパイプ43内に流入させ、めっき液管理槽70に流出する。
電磁バルブEB及びエア吸引ポンプAPは何れも、排気制御部(図示なし)に接続されていてもよい。排気制御部は、電子バルブEBの開閉及びエア吸引ポンプAPの起動及び停止を制御する。具体的には、排気制御部は例えば、シリンダ40内の排気時には電磁バルブEBを開いて且つエア吸引ポンプAPを起動するように、また、ポッド50内のめっき液を流出入させる時には電磁バルブEBを閉じて且つエア吸引ポンプAPを停止するように、電子バルブEBの開閉及びエア吸引ポンプAPの起動及び停止を制御する。第3のパイプ43、電磁バルブEB、エア吸引ポンプAP、及び排気制御部は、シリンダ40内を排気する排気手段として機能する。なお、排気制御部に代わって、例えば手動により電子バルブEBの開閉及びエア吸引ポンプAPの起動及び停止を制御してもよい。
引き続いて、図8〜図15を参照して、めっき装置100を用いるめっき方法について説明し、併せてめっき装置100の動作についても説明する。めっき方法は、シリンダ移動工程、排気工程、及びめっき工程を備える。
まず、めっき槽30、めっき液管理槽70にめっき液を満たし、温度管理装置71によりめっき液管理槽70内のめっき液の温度を所定の温度にする。めっき液管理槽70内のめっき液の温度が所定の温度になった後、めっき液循環ポンプCPを起動して、めっき槽30とめっき液管理槽70との間でのめっき液Fの循環を開始する。
シリンダ40を、めっき槽30の上方に位置するよう、シリンダ支持部材42に取り付けて用意する。ポッド50を準備し、ポッド50の筒51内部にワークWを収容する。上下動モータを起動し、シャフト61がめっき槽30のめっき液面より上に出るまで、回転ユニット60をシャフト61と共に上昇させる。図8に示すように、ポッド50内に配されたカソード55とシャフト61とを固定することによって、めっき液面より上に出たシャフト61の先端にポッド50をセットする。なお、シャフト61を上下してポッド50をめっき槽30に出し入れする構造をとることにより、ポッド50のシャフト61への取り付けあるいは取り外しの作業性が向上される。
次に、シャフト61の先端にセットしたポッド50を下降して、めっき槽30内のめっき液F中に沈める。その後、図9に示すように、アクチュエータ41によってシリンダ40をポッド収容部40a側の開口端がアノード56近傍に達するまで下降させる。これにより、シリンダ40は、ポッド50全体を覆い、ポッド50を内部に配する。このとき、シリンダ40は、長手方向がめっき槽30内のめっき液の液面と直交し、且つポッド収容部40a側の開口端がめっき槽30の底部と対向するようにめっき槽30内に配される。このとき、シリンダ40内部はポッド50内部を含めて、空気で満たされている。
続いて、排気制御部は、電磁バルブEBを開けて、エア吸引ポンプAPを起動する。これにより、図10に示すように、少なくともポッド50内部以外のシリンダ40内部をめっき液で満たし、シリンダ40内のめっき液の液面を上昇させる。ポッド50内部は、ほぼ空気で満たされている。
続いて、排気制御部は、電磁バルブEBを閉め、エア吸引ポンプAPを停止する。アクチュエータ制御部は、図11に示すように、所定の加速度により速度を上昇させながらシリンダ40を上方に、すなわちめっき槽30の底面から離れる方向に移動させるようアクチュエータ41を駆動する(シリンダ移動工程)。すなわち、シリンダ移動工程が、めっき工程に先立って行われる。このようにシリンダ40を引き上げて移動させることによって、ポッド50内のめっき液の少なくとも一部はポッド50内の気泡と共に他方のメッシュ53を介してポッド50外に流出し、ポッド50外のめっき液はポッド50内に一方のメッシュ53を介して流入する。このように、シリンダ40はシリンジとして機能する。この場合、ポッド50外とは、具体的にはポッド50外であってシリンダ40内であるシリンダ40のポッド収容部40a上部である。
ここで、アクチュエータ制御手段は、ポッド50内のめっき液の少なくとも一部が所望の加速度(すなわち、気泡をポッド外に流出させるのに最適な加速度)でポッド50外に流出するようアクチュエータの駆動を制御する。すなわち、所定の加速度で速度を上昇させながらシリンダ40をめっき槽30底部から離れる方向に移動させるよう、アクチュエータ制御手段によってシリンダ40の移動速度及び加速度が制御される。
その後、ポッド50内の気泡の残留量によっては、シリンダ40をポッド収容部40a側の開口端がアノード56近傍に達するまで下降して、再度図11に示すようにシリンダ40を上昇させるようにアクチュエータ41を駆動してもよい。こうしたシリンダ40の往復移動を、ポッド50内の気泡の残留量に応じて複数回繰り返してもよい。
ポッド50内の気泡をポッド50外であってシリンダ40のポッド収容部40a上部に移動した後、排気手段(第3のパイプ43、電磁バルブEB、エア吸引ポンプAP、及び排気制御部、シリンダ40)は、シリンダ40内部を排気する(排気工程)。これにより、ポッド収容部40a上部に移動させた気泡が除去される。具体的には、排気制御部が電磁バルブEBを開き、エア吸引ポンプAPを起動して、めっき液ごとシリンダ40内の気泡を第3のパイプ43内に吸引してシリンダ40内を排気する。除去された気泡は、共に吸引されためっき液とともにめっき液管理槽70内に排出される。
続いて、図12〜図15を参照して、めっき工程を説明する。めっき工程では、ポッド50をシャフト61の軸線周りに回転させながら処理を行う。ポッド50は、回転ユニット60のポッド回転モータ62を駆動することにより回転される。
まず、排気制御部は電磁バルブEBを閉める。そして、図12に示すように、アクチュエータ41は、シリンダ40を、ポッド収容部40a側の開口端がアノード56近傍に達するまでめっき槽30底部に近づける方向で移動する。すなわち、ポッド50を内部に配したシリンダ40を、シリンダ40の長手方向がめっき槽30内のめっき液の液面と直交し、且つポッド収容部40a側の開口端がめっき槽30の底部と対向するように、めっき槽30内に配する。これにより、ポッド50内部及びシリンダ40内部はめっき液で満たされる。
次に、図13に示すように、ポッド50内のめっき液Fの少なくとも一部がポッド50外に流出し、ポッド50外のめっき液Fがポッド50内に流入するよう、シリンダ40をめっき槽30の底部から離れる方向に移動する(シリンダ移動工程)。すなわち、シリンダ移動工程が、めっき工程の中で行われる。このとき、ポッド50内にめっき液が流出入するため、ポッド50内には、図13の下方に位置するメッシュ53から上方に位置するメッシュ53に向かって液流が発生する。この液流によって、ポッド50内のワークWが撹拌される。
ここで、アクチュエータ制御手段は、ポッド50内のめっき液の少なくとも一部が所望の加速度(すなわち、ワークWの撹拌に最適な加速度)でポッド50外に流出するようアクチュエータの駆動を制御する。すなわち、所定の加速度で速度を上昇させながらシリンダ40をめっき槽30底部から離れる方向に移動させるよう、アクチュエータ制御手段によってシリンダ40の移動速度及び加速度が制御される。
シリンダ40が往復運動における上死点に達すると、図14に示すように、アクチュエータ41はシリンダ40の移動を停止する。アクチュエータ制御部は、シリンダ40を上死点の位置で所定の時間停止させておくように、アクチュエータ41を駆動する。所定の時間とは、撹拌されたワークWが、図14に示すように、ポッド50の底部に堆積するまでの時間をいう。
次に、図15に示すように、アクチュエータ制御部は、先ほどのシリンダ移動工程によって移動されたシリンダ40をめっき槽30の底部に近づける方向に移動させながら、めっき液Fに通電してワークWにめっき処理を施す(めっき工程)。すなわち、この場合、アクチュエータ制御部は、先ほどのシリンダ移動工程によって移動されたシリンダ40を引き下げながら、めっき液Fに通電してワークWにめっき処理を施す
その後、必要に応じて、図12〜図15に示すめっき工程を複数回繰り返してもよい。
めっき工程の終了後、電磁バルブEBを開け、ポッド50がシリンダ40内に配された状態でシリンダ40及びポッド50(すなわち、シャフト61)を上昇させて、ポッド50及びシリンダ40をめっき槽30外に取り出す。なお、ポッド50に配されるメッシュ53が細かい場合には、ポッド50及びシリンダ40をめっき槽30外に取り出した後、電磁バルブEBを閉めてポッド50を内部に配したままシリンダ40を下降してもよい。これにより、ポッド50内に残留するめっき液が強制的にポッド50外に排出され、めっき処理に掛かる時間を短くすることができる。
その後、図16に示すように、シリンダ40を上方に移動して、ポッド50をシリンダ40内部から取り出す。ポッド50をシャフト61から取り外し、めっき処理が施されたワークWをポッド50から取り出す。
めっき装置100は、アクチュエータ41によって往復移動させられるシリンダ40を備え、当該シリンダ40内にワークWが収容されたポッド50が配される。また、シリンダ40はその一端を電磁バルブEBで閉じ、一端側に閉じた空間を形成することができる。このようにシリンダ40の一端側に閉じられた空間を形成した状態でシリンダ40を移動させるため、ポッド50内の少なくとも一部のめっき液はシリンダ40の移動に伴って、一方のメッシュ53を介してポッド50外に流出し、ポッド50外のめっき液が他方のメッシュ53を介してポッド50内に流入する。すなわち、めっき装置100では、シリンダ40を上昇させて、ポッド50内のめっき液をポッド50外に移動させることができ、その際ポッド50内に残留する気泡をシリンダ40の移動に併せてポッド50外に流出させることができる。
ポッド50内に気泡が存在する場合、当該気泡内にワークWが浮遊してしまう、あるいは微小気泡にワークWが付着してしまうなどといった事態が発生してしまう。この場合、ワークWには、通電されない、若しくは通電が十分になされないことによるめっきムラ(膜厚のばらつき、めっき無しのワークWの存在)が発生してしまうおそれがある。めっき装置100では、ポッド50内の気泡の量を減少させることができるため、めっきの仕上がり具合に発生する不具合を低減することが可能となる。
特に、ワーク(被めっき物)Wが小さくなればなるほど、ポッド50に配されるメッシュ53の目は細かくなる。そのため、ポッド50から気泡が抜けにくくなり、めっきが不完全に施される傾向にある。これに対し、めっき装置100では、シリンダ40の移動によって強制的に気泡をポッド50外に流出させるので、メッシュ53の目が小さくなっても気泡を十分に除去することができる。したがって、ワーク(被めっき物)Wが小さくなればなるほど、めっき装置100による不具合発生の抑制効果は効いてくる。
また、めっき装置100では、シリンダ40の移動に伴ってめっき液Fがポッド50内から流出入する。こうしためっき液Fの流出入によって、ポッド50内のめっき液には液流が発生する。ワークWはこうして発生された液流によって舞い上がるので、ワークWに必要以上に外力を加えずに攪拌することができる。これにより、ワークWに割れ、あるいは欠け等の不良が発生することが抑制される。
また、液流によってワークWが撹拌されることにより、ワークW近傍に存在する気泡をワークWから離すことができる。これによっても、めっきの仕上がり具合に発生する不具合を低減することが可能となる。
また、メッシュ53の目が小さくなるにしたがって、めっき処理後にポッド50からめっき液を排出するのに要する時間が長くなり、場合によっては十分に排出することが困難となる。これに対し、めっき装置100では、一端が閉じた空間であるシリンダ40の移動によって、ポッド50内に残留するめっき液を強制的に排出することができる。そのため、めっき装置100では、ポッド50からめっき液を排出する時間を短縮でき、さらにはめっき液を必要以上にめっき槽30から持ち出してしまうことも抑制される。このように、めっき液排出の点においても、めっき装置100は有効である。
また、ポッド50内のめっき液は入れ替えられるので、ポッド50内における金属イオン濃度の減少を抑制できる。これにより、めっきムラ(めっき膜のばらつき)の発生が低減される。
めっき装置100は、排気手段として機能する第3のパイプ43、電磁バルブEB、エア吸引ポンプAP、及び排気制御部を備える。これらによって機能する排気手段は、シリンダ40内を排気する。そのため、例えば、ポッド50内からポッド50外であってシリンダ40内に移動した気泡を強制的にシリンダ40外に除去することが可能となる。このようにシリンダ40内を排気することにりより、めっき装置100では、ワークWに発生する不具合をより一層効果的に低減することが可能となる。
アクチュエータ制御部は、シリンダ40を、所定の加速度で速度を上昇させながらめっき槽30底部から離れる方向に移動させる。所定の加速度とは、例えばポッド50内の残留気泡をポッド50外に流出するのに最適な加速度である。あるいは、例えばワークWの撹拌に最適な加速度である。これにより、ポッド50内に残留する気泡の除去をより一層好適に行うこと、あるいはワークWの撹拌をより一層好適に行うことが可能となる。その結果、ワークWに発生する不具合をより一層効果的に低減することができる。また、ワークWの種類等に応じて、最適な加速度でシリンダを移動させることも可能である。
また、実施形態に係るめっき方法によれば、シリンダ移動工程において、シリンダ40をめっき槽30の底部から離れる方向に移動ることで、ポッド50内のめっき液の少なくとも一部をポッド50外に流出させる。この時、ポッド50内の気泡もめっき液と共にポッド50外に流出させることができる。従って、ポッド50内の気泡の量が低減されるため、ワークWに発生する不具合を効果的に低減することが可能となる。
さらに、実施形態に係るめっき方法によれば、シリンダ40内を排気する排気工程を備えている。これにより、シリンダ40の移動に伴ってシリンダ40内に移動したポッド50内の気泡を、元々シリンダ40内に存在していた気泡と共に除去することができる。そのため、ワークWに発生する不具合をより一層効果的に低減することが可能となる。
実施形態に係るめっき方法によれば、めっき工程に先立ってシリンダ移動工程を行う。この場合、めっき工程の実施前にポッド50内の気泡の量を低減することができるため、ワークWに発生する不具合をより一層効果的に低減することが可能となる。
実施形態に係るめっき方法によれば、シリンダ移動工程は、さらにめっき工程の中でも行われている。シリンダ移動工程を行うことによりめっき液Fがポッド50内を流出入するため、ポッド50内のめっき液F中に液流が発生する。ワークWはこうして発生された液流によって舞い上げられるので、ワークWがポッド50内で攪拌される。そのため、めっきムラ(めっき膜のばらつき、めっき無しのワークWの発生)の発生が低減され、ワークWに発生する不具合を効果的に低減することが可能となる。
また、ワークWは液流によって舞い上げられるので、ワークWに必要以上に外力を加えずに攪拌することができる。そのため、ワークWに割れや欠け等が発生することが抑制される。
また、めっき工程中に、めっき液Fがポッド50内を流出入するため、ポッド50内のめっき液F中の金属イオン濃度が減少することが抑制される。これにより、めっきムラの発生が低減される。
また、めっき工程中にシリンダ移動工程を行うことで、めっき液Fへの通電中にポッド50内に発生された気泡についても、ポッド50内からポッド50外に除去することが可能となる。
実施形態に係るめっき方法のめっき工程では、シリンダ移動工程によって移動されたシリンダ40をめっき槽30の底部に近づく方向に移動させながら、めっき液Fに通電してワークWにめっき処理を施している。シリンダ40を移動させることによって、ワークWに対し、ポッド50内のめっき液Fによるめっき槽30の底部に近づく方向に向かう圧力がかかる。そのため、撹拌されたワークWのポッド50底部への堆積が促進され、めっき工程に要する時間を短縮することができる。また、ワークWに対してかかる当該圧力によって、ワークW同士が密着され、ワークWの通電効率が上昇し、効率よくめっき処理を行うことが可能となる。
以上、本発明の好適な実施形態及び変形例について説明したが、本発明は上記実施形態及び変形例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記他の実施形態では、ポッド50を回転しながらめっき工程を実施していたが、ポッド50を回転させずにめっき工程を実施してもよい。
あるいは、例えば、図12〜図15に示されためっき工程のように、シリンダ40を移動させながらめっき処理を行わず、ポッド50を内部に配したシリンダ40をめっき槽30内において傾斜し、且つ回転することによって、めっき処理を行ってもよい。この場合のめっき工程を、図17及び図18を参照して説明する。
まず、排気工程の後、ポッド50を内部に配したシリンダ40をめっき槽30内に配する(図12参考)。次に、図17に示したように、めっき槽30内に配されたシリンダ40をポッド50と共に傾斜させる(傾斜工程)。シリンダ40は、傾斜軸ねじ7を中心に、オーバーフロー部32が床面(地面)に近づくように傾斜される。この場合、めっき槽30のオーバーフロー部32は、シリンダ支持部材42側に位置するように、めっき槽30は配置されている。図18は、シリンダ40と共にポッド50を傾斜した場合の、ポッド50内でのワークWの状態を模式的に示す。図18では、ワークW個々の状態を表さず、ワークW全体の状態を表す。続いて、傾斜したポッド50をシリンダ40の長手方向を軸として回転させながら、めっき液に通電してワークWにめっき処理を施す(通電工程)。この場合、ポッド50を回転してワークWを撹拌させながら連続通電することができる。その結果、めっき時間を短縮し、さらにワークW同士が付着することを抑制することが可能となる。なお、当該めっき工程(傾斜工程、通電工程)後、シリンダ移動工程を繰り返し、その後めっき工程をまた繰り返してもよい。繰り返しによって、ポッド50内のワークWが気泡に付着すること、あるいはポッド50内のワークWがポッド50内の内壁等に引っかかること等が抑制される。
上記実施形態では電気めっきについて例示したが、無電解めっき法によってめっきを行ってもよい。また、本実施形態ではポッド50内にメディア(導電性媒体)を用いていないけれども、必要に応じてこのようなメディアをワークWと共にポッド50内に投入してもよい。また、ワークWとして、上記したような積層型電子部品以外のものを用いてもよい。
また、めっき装置100は、排気手段として、第3のパイプ43、電磁バルブEB、エア吸引ポンプAP、及び排気制御部と異なる構成を有していてもよく、あるいは排気手段を備えていなくてもよい。また、アクチュエータ制御部は、上記実施形態で示したような制御内容以外に沿って、アクチュエータの駆動を制御してもよい。
また、シリンダ移動工程とめっき工程とが行われる順番は、上記実施形態で示した順番に限られない。また、排気工程を行わなくてもよい。また、めっき液への通電は、シリンダ40を移動させながら行わなくてもよい。
1、100…めっき装置、10、30…めっき槽、12、50…ポッド、14、60…シリンダ、18、55…カソード、20、61…シャフト、22、56…アノード、121、51…筒、123、53…メッシュ、31…貯留部、32…オーバーフロー部、33…めっき液循環供給口、34…めっき排出口、35…第1のパイプ、36…第2のパイプ、41…アクチュエータ、42…シリンダ支持部材、43…第3のパイプ、57…アノード支持部、60…回転ユニット、61…シャフト、62…ポッド回転モータ、63…ベース、64…ベアリング、65…回転駆動ギア、66…ロータリーガイドブッシュ、67…オイルシール、70…めっき液管理槽、71…温度管理装置、BF…めっき液ろ過フィルタ、CP…めっき液循環ポンプ、AP…エア吸引ポンプ、F…めっき液、W…ワーク。