JP4407131B2 - ビピロリノニリデン系化合物、該化合物を含有する着色剤およびビピロリノニリデン系化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、染料または顔料の如き着色剤に有用なビピロリノニリデン系化合物およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
式(a)
【0003】
【化5】
で表わされるピロリノンを空気酸化させることにより、式(b)
【0004】
【化6】
で表わされるビピロリノニリデンを製造する方法が開示されている(非特許文献1参照。)。
【0005】
しかしながら、上記方法による収率は10〜15%と低く、上記方法は、ビピロリノニリデンの大規模な工業生産には適さなかった。
【0006】
また、上記式(b)で表わされるビピロリノニリデンは、水および有機溶剤に対する溶解性が低く、染料、顔料、もしくはその他の有機化学品、あるいはこれらの中間体として利用することが困難であった。
【0007】
【非特許文献1】
Liebigs Ann. Chem.,702,112〜130(1967)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、染料、顔料の如き着色剤、もしくはその他の有機化学品、あるいはこれらの中間体として有用なビピロリノニリデン系化合物を提供し、さらには、高収率で大規模工業生産に適したビピロリノニリデン系化合物の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、特定の触媒を使用してピロリノン化合物を空気酸化することにより、鮮やかな紺系色を呈し、各種有機溶媒に可溶なビピロリノニリデン系化合物を高収率で製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、一般式(1)
【0011】
【化7】
【0012】
(式中、Ar1およびAr2はそれぞれ独立して、アリール基を表わし、R1およびR2はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数3〜18のシクロアルキル基またはアリール基を表わす。)
で表わされることを特徴とするビピロリノニリデン系化合物を提供する。
【0013】
また、本発明は上記課題を解決するために、一般式(3)
【0014】
【化8】
【0015】
(式中、Ar3はアリール基を表わし、Rは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アルコキシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、アリール基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、カルボキシル基またはスルホン酸基を表わす。)
で表わされるピロリノン化合物を、アントラキノン系触媒存在下で酸化することによって、一般式(4)
【0016】
【化9】
【0017】
(式中、Ar3はアリール基を表わし、Rは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アルコキシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、アリール基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、カルボキシル基またはスルホン酸基を表わす。)
で表わされるビピロリノニリデン系化合物を製造する方法を提供する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明で使用する前記一般式(1)で表わされるビピロリノニリデン系化合物において、Ar1およびAr2はそれぞれ独立してアリール基を表わす。前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフタレン基、アントラセン基、フェナントレン基、ピレン基、ビフェニル基の如き芳香環基、ピロール基、ピラゾール基、イミダゾール基、ピリジン基、ピリミジン基、ピラジン基、インドール基、キノリン基、カルバゾール基、フラン基、チアゾール基の如き芳香族ヘテロ環基が挙げられる。
【0020】
また、これらの芳香環は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシル基、アリール基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、スルホン酸基またはスルホン酸塩基などが挙げられる。これらの置換基の中でも、ハロゲン原子またはスルホン酸基が好ましい。置換基がハロゲンである場合のビピロリノニリデンジカルボン酸誘導体(A)は化学的安定性が高くなる傾向にあり、また、置換基がスルホン酸基またはスルホン酸金属塩基である場合のビピロリノニリデンジカルボン酸誘導体(A)は水あるいは有機溶媒への溶解性が高くなる傾向にある。
【0021】
さらに、これらの芳香環が複数のハロゲン原子で置換されている場合、ハロゲン原子は、同一であっても、異なっていてもよい。ハロゲン原子が塩素原子または臭素原子である場合は、ビピロリノニリデンジカルボン酸誘導体(A)の化学的安定性が高くなる傾向にあるので好ましい。
【0022】
また、前記一般式(1)中、R1およびR2はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数3〜18のシクロアルキル基またはアリール基を表わす。これらの中でも、R1およびR2はそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜18のアルキル基であることが好ましい。前記炭素原子数が1〜18のアルキル基としては、例えば、メトル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−オクタデシル基の如きアルキル基、シクロヘキシル基の如きシクロアルキル基が挙げられる。これらの中でも、R1およびR2がそれぞれ独立して、炭素原子数が1〜8のアルキル基である場合は、一般式(1)で表わされるビピロリノニリデン系化合物の熱安定性が高くなる傾向にあるので好ましい。
【0023】
一般式(1)で表わされるビピロリノニリデン系化合物の中でも一般式(2)
【0024】
【化10】
【0025】
(式中、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9およびX10はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシル基、アリール基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、スルホン酸基またはスルホン酸塩基を表わし、R1およびR2はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数3〜18のシクロアルキル基またはアリール基を表わす。)
で表わされるビピロリノニリデン系化合物が好ましい。
【0026】
本発明で使用する一般式(1)で表わされるビピロリノニリデン系化合物は、分子内にカルボキシル基またはエステル結合を有しているため、水または有機溶剤に対して高い溶解性を有しており、かつ青ないし紫の色相を呈するので、それ自身染料として利用することができる。また、一般式(1)で表わされる化合物の中でも、R1およびR2が水素原子であるビピロリノニリデン系化合物の金属塩は、水や有機溶剤に不溶となるので、顔料として使用することもできる。
【0027】
本発明で使用するビピロリノニリデン系化合物のうち、R1およびR2が水素原子であるビピロリノニリデン系化合物は、水および有機溶剤に対して溶解性を有するが、カルボキシル基を反応させて種々の原子団を導入することによって、目的の用途に適した溶解性を付与することができる。
【0028】
以下に、本発明で使用する一般式(1)で表わされるビピロリノニリデン系化合物のうち、R1およびR2が水素原子である化合物の金属塩またはそのエステルである場合について説明する。
【0029】
本発明で使用する一般式(1)で表わされるビピロリノニリデン系化合物は、その2つのカルボキシル基のうち、片方もしくはその両方が金属原子と塩を形成していてもよいが、生成する金属塩の溶解性は金属原子の種類に大きく影響される。金属原子が、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の場合、金属塩は水溶性となるが、カルシウム、バリウム、アルミニウム、ストロンチウムなどの如き多価金属の場合、金属塩は水に不溶となる。本発明の着色剤を、印刷インキ用の顔料として用いる場合、水に不溶であることが好ましく、カルシウム、アルミニウムなどの多価金属塩を用いるとよい。
【0030】
また本発明で使用する一般式(1)で表わされるビピロリノニリデン系化合物は、その2つのカルボキシル基のうち、片方、もしくはその両方がエステルであってもよい。エステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、n−ブチルエステル、i−ブチルエステル、n−ヘキシルエステル、n−オクチルエステル、n−デシルエステル、n−オクタデシルエステルなどの脂肪族一価アルコールとのエステルや、2−ヒドロキシエチルエステル、2,3−ジヒドロキシプロピルエステル、4−ヒドロキシブチルエステル、6−ヒドロキシヘキシルエステルなどの脂肪族多価アルコールとのエステル;ベンジルエステル、アリルエステル、2−(メタクリロイル)−エチルエステル、2−(テトラヒドロピラニロキシ)−エチルエステルなどの不飽和アルコールとのエステル、などが挙げられる。これらの中でも、エステル基としての化学的安定性が高い点で、脂肪族アルコールとのエステル、とりわけ脂肪族アルコールとのエステルが高い化学的安定性を示すので、好ましい。
【0031】
本発明で使用するビピロリノニリデン系化合物は、アリール基Ar1およびAr2の化学構造および、塩を形成する金属原子の種類、またはエステルの化学構造により青から紫までの色域で鮮明な色相を有しており、着色剤として、繊維着色剤、印刷インキ、カラーフィルター、自動車用塗料、あるいはプラスチック着色剤などの用途に広く使用することができる。本発明のビピロリノニリデンジカルボン酸誘導体(A)は、単独で十分な着色力を有しているが、他の着色剤と混合して調色することもできる。
【0032】
本発明で使用するビピロリノニリデン系化合物は、前記一般式(3)で表わされるピロリノン系化合物を酸化することによって得られる。本発明においては、一般式(3)で表わされるピロリノン系化合物を、アントラキノン系触媒の存在下に酸化することによって、前記一般式(4)で表わされるビピロリノニリデン系化合物を製造することができる。
【0033】
本発明のビピロリノニリデン系化合物の製造方法によって、一般式(3)におけるRがカルボキシル基、または炭素数が1〜18のアルコキシカルボニル基であるピロリノン系化合物を出発原料として、一般式(1)で表わされるビピロリノニリデン系化合物を製造することができる。
【0034】
一般式(3)および一般式(4)においてAr3で表わされるアリール基としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ビフェニルなどの芳香環を有する基、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、キノリン、カルバゾール、フラン、チアゾールなどの芳香族ヘテロ環を有する基が挙げられる。アリール基中の芳香環あるいは芳香族ヘテロ環の数が少ないほど、得られるビピロリノニリデン系化合物の有機溶媒に対する溶解性が高くなる傾向にある。アリール基は置換基を有していてもよい。前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシル基、アリール基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、スルホン酸基またはスルホン酸塩基などが挙げられる。置換基がハロゲン原子である場合には、化学的安定性が高く、金属原子と塩を形成していてもよいスルホン酸基である場合には、得られるビピロリノニリデン系化合物の水あるいは有機溶剤への溶解性が高くなる傾向にある。
【0035】
一般式(3)および一般式(4)において、Rは、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、金属原子と塩を形成していてもよいカルボキシル基、金属原子と塩を形成していてもよいスルホン酸基を表わすが、置換基がシアノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基、金属原子と塩を形成していてもよいカルボキシル基である場合は、得られるビピロリノニリデン系化合物の化学的安定性が高くなる傾向にある。
【0036】
本発明のビピロリノニリデン系化合物の製造方法において、アントラキノン系触媒としては、アントラキノン−β−スルホン酸ナトリウムや、アントラキノン−β,β’−ジスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。アントラキノン系触媒の使用量は、一般式(3)で表わされるピロリノン系化合物に対して1〜50モル%使用するのが好ましく、より好ましくは2〜30モル%である。
【0037】
一般式(3)で表わされるピロリノン系化合物の酸化反応には溶剤を使用するのが好ましい。使用できる溶剤としては、例えば、ニトロベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、エチレングリコールモノブチレエーテルなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、2−エトキシエチルアセテートなどのエステル類、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性極性溶剤、水および水溶性有機溶剤と水との混合溶剤など、アントラキノン系触媒の存在下で酸化されにくい溶剤が挙げられる。これらの中でも、一般式(3)で表わされるピロリノン系化合物を溶解する能力が高いニトロベンゼン、あるいはニトロベンゼンとその他の有機溶剤との混合溶剤は、高い収率が得られるので好ましい。
【0038】
本発明においては、酸化剤として種々のものを用いることができる。具体的には、例えば、過酸化水素、m−クロロ過安息香酸、過酢酸、過塩素酸、過マンガン酸カリウムなどの過酸化物、酸素、空気などが挙げられる。空気を使用すると、安全性が高く製造コストを低減できるという利点がある。空気を酸化剤とした酸化反応においては、反応系の爆発限界濃度の下限を上げる目的で、窒素などの不活性ガスを空気に混合してもよい。
【0039】
酸化反応は、反応速度を高めるために反応系を加熱してもよく、酸化反応を均一に進行させる目的で、反応系を攪拌することが好ましい。空気を酸化剤とした酸化反応の場合、反応温度を100〜250℃、好ましくは140〜230℃、より好ましくは170〜210℃とし、十分に攪拌して空気を反応系に均一に供給することが好ましい。
【0040】
本発明で使用する前記一般式(1)で表わされるビピロリノニリデン系化合物は、上記一般式(3)で表わされるピロリノニリデン系化合物を原料とする上記一般式(4)で表わされるビピロリノニリデン系化合物の製造方法によって製造することができる。
【0041】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。なお、特に断わりがない限り、「部」および「%」は、それぞれ「質量部」および「質量%」を表わす。
【0042】
(実施例1)
式(5)
【0043】
【化11】
【0044】
で表わされるフェニルピロリノンカルボン酸エチル7.5部、アントラキノン−β−スルホン酸ナトリウム0.75部およびニトロベンゼン275部からなる混合物を、空気気流中、攪拌しながら180℃まで加熱した。同温度で1時間攪拌した後、攪拌しながら室温まで放冷した。濃紺青色の反応混合物から減圧下でニトロベンゼンを留去し、反応容器中に残留した黒紺色固体にヘキサン230部を加えて、攪拌しながら1時間還流後、吸引濾過し、ヘキサンで洗浄した。酢酸エチルから再結晶させて、融点が330℃、ジメチルスルホキシド溶液の可視光最大吸収波長(λmax)が574nmの濃紺色結晶6.0部(収率80%)を得た。得られた濃紺色結晶をIR(赤外分光)分析、NMR(核磁気共鳴スペクトル)分析、およびEI−MS(電子衝撃質量分析スペクトル)分析を行ったところ、下記の結果が得られた。
【0045】
<IR分析結果>
3170cm−1:ピロリノン環アミド-CONH-のN-H伸縮振動
2990cm−1:エチルエステル-COOCH2CH3のC-H伸縮振動
1725cm−1:エチルエステル-COOCH2CH3のC=O伸縮振動
1675cm−1:ピロリノン環アミド-CONH-のC=O伸縮振動
1245cm−1:エチルエステル-COOCH2CH3のCO-OCH2CH3伸縮振動
1105cm−1:エチルエステル-COOCH2CH3のCOO-C伸縮振動
【0046】
<NMR分析結果>
1H−NMR(d6−DMSO)
11.3ppm:2H、s、ピロリノン環アミド-CONH-の水素
8.1〜7.5ppm:10H、m、フェニル基の水素
4.1ppm:4H、q、エチルエステル-COOCH2CH3のメチレン水素
1.2ppm:6H、t、エチルエステル-COOCH2CH3のメチル水素
【0047】
13C−NMR(d6−DMSO)
168ppm:ピロリノン環アミド-CONH-の炭素
164ppm:エチルエステル-COOCH2CH3のカルボニル炭素
152ppm:ピロリノン環の5位炭素(フェニル基隣接炭素C6H5-C)
131〜128ppm:フェニル基の炭素
109ppm:ピロリノン環の4位炭素(エステル結合隣接炭素C-COOC2H5)
60ppm:エチルエステル-COO-CH2-のメチレン炭素
14ppm:エチルエステル-COOCH2-CH3のメチル炭素
【0048】
<EI−MS分析結果>
質量分析の結果、DI温度110〜195℃において、ビピロリノニリデンジカルボン酸ジエチル(分子量458)の分子イオンピーク(M+)が検出された。
【0049】
上記の結果から、この化合物は、式(6)
【0050】
【化12】
【0051】
で表わされる化学構造を有するビピロリノニリデンジカルボン酸ジエチルであることが確認された。
【0052】
得られたビピロリノニリデンジカルボン酸ジエチルは、ジメチルホルムアミドおよびジメチルスルホキシドに可溶で、エタノールに微溶であった。
【0053】
(実施例2)
上記式(5)で表わされるフェニルピロリノンカルボン酸エチル7.5部、アントラキノン−1,5−ジスルホン酸ナトリウム0.75部、ニトロベンゼン275部およびキシレン20部からなる混合物を、空気気流中、攪拌しながら190℃まで加熱した。反応に伴って生成する水を、ディーンシュタークトラップを用いて反応系外に除去した。同温度で1時間攪拌した後、攪拌しながら室温まで放冷し、黒紺色沈殿を含有する反応混合物をヘキサン1000部に加え、室温で30分攪拌した後、沈殿を濾過した。濾過物をヘキサン、酢酸エチルの順で洗浄して得られた濃紺色の反応生成物を、水1500部に分散し室温で2時間攪拌した。濾過、水洗後、再度反応生成物を水1700部に分散し、室温で1時間攪拌した。濾過、水洗後、さらに湯でよく洗浄した後、乾燥して、濃紺色の固体5.6部(収率75%)を得た。この濃紺色固体を赤外分光分析、NMR分析、およびEI−MS分析した結果から、実施例1で得られた式(6)で表わされるビピロリノニリデンジカルボン酸ジエチルと同一の化学構造を有することを確認した。
【0054】
(実施例3)
実施例2で得た式(6)で示される化学構造を有するビピロリノニリデンジカルボン酸ジエチル4.6部を、14%水酸化ナトリウム水溶液350部に加え、攪拌しながら50℃で1時間加水分解した。得られた赤褐色溶液を氷冷後、濾過して得た黒紫色沈殿を水1Lに溶解し、氷冷攪拌しながら35%塩酸約13部を加えて中和後、さらに塩酸を加えて溶液のpHを1に調整した。酸析した黒茶色沈殿を吸引濾過、水洗し、アセトン洗浄後、乾燥して、ジメチルスルホキシド溶液の可視光最大吸収波長(λmax)が567nmの鮮やかな紺青色の固体0.8部(収率20%)を得た。この紺青色固体をIR(赤外分光)分析およびNMR(核磁気共鳴スペクトル)を行ったところ、下記の結果が得られた。
<IR分析結果>
3420cm−1:ピロリノン環アミド-CONH-のN-H伸縮振動
3150cm−1:カルボキシル基-COOHのO-H伸縮振動
3060cm−1:フェニル基-C6H5のC-H伸縮振動
1765cm−1:カルボキシル基-COOHのC=O伸縮振動
1680cm−1:ピロリノン環アミド-CONH-のC=O伸縮振動
1255cm−1:カルボキシル基-COOHのCO-OH伸縮振動
<NMR分析結果>
1H−NMR(d6−DMSO)
13.5ppm:2H、s、カルボキシル基-COOHの水素
10.8ppm:2H、s、ピロリノン環アミド-CONH-の水素
8.3〜6.9ppm:10H、m、フェニル基の水素
上記の結果から、この化合物は、式(7)で表わされるビピロリノニリデンジカルボン酸の化学構造を有することを確認した。
【0055】
【化13】
【0056】
で表わされるビピロリノニリデンジカルボン酸の化学構造を有することを確認した。
【0057】
(実施例4)
実施例3で得た式(7)で示される化学構造を有するビピロリノニリデンジカルボン酸0.8部を、20%水酸化ナトリウム水溶液100部に加えて撹拌し、さらにメタノール95部を加えた。得られた赤色溶液に塩酸を加えて、pHを9に調整した後、硫酸アルミニウム・14〜18水和物4部を加え、析出した黒紺色沈殿を吸引濾過、水洗し、アセトン洗浄し、乾燥して、濃紺青色の固体を得た
。
【0058】
実施例4で得た紺青色固体は、ヘキサン、トルエン、イソプロパノール、水に不溶であり、鮮やかな濃青紫色を呈し、印刷インキ用顔料として適していた。
【0059】
この紺青色固体をIR(赤外分光)分析及び熱分析し、熱分析で得られた残査を蛍光X線分析及び粉末X線分析したところ、下記の結果が得られた。
【0060】
<IR分析結果>
3430cm−1:ピロリノン環アミド-CONH-のN-H伸縮振動
1680cm−1:ピロリノン環アミド-CONH-のC=O伸縮振動
1055cm−1:カルボキシレート基-COOAlのCO-OAl伸縮振動
【0061】
<熱分析結果>
有機成分95.4%、無機成分4.6%
【0062】
<蛍光X線分析結果>
主な検出元素と割合
Al(47%)、Na(22%)、Si(12%)、Ca(6%)
蛍光X線分析の結果から、Al塩とNa塩とが47%:22%=12.7モル%:5.1モル%≒2モル:1モルで存在することが判る。
【0063】
<粉末X線分析結果>
θ/2θ=21゜、30゜、33゜、35゜に回折ピークを確認した。
これらのピークは、すべて、NaAlO2の主回折ピークに一致している。
以上の結果から、実施例4の紺青色固体には、Al塩構造の他に、ナトリウム塩構造が存在することが判る。
【0064】
実施例4で得た紺青色固体の蛍光X線分析結果によるAlとNaの割合が2:1であることを前提に、ビピロリノニリデンジカルボン酸の2価のアニオン[分子式=(C22H12O6N2)2−]とAlとNaとの割合が、熱分析の結果に一致する割合を模索した。その結果、紺青色固体は、1分子中に、(C22H12O6N2)2−が7個、Alが4個、Naが2個存在することが判った。即ち、実施例4で得た紺青色固体は、組成式
[(C22H12O6N2)2−]7(Al3+)4(Na+)2
で表わされるレーキ顔料であった。
【0065】
【発明の効果】
本発明の前記一般式(1)で表わされるビピロリノニリデンジカルボン酸系化合物は、鮮やかな紺系色を呈するので、そのまま染料として、あるいはビピロリノニリデンジカルボン酸の金属塩は、顔料として使用することができる。
【0066】
また、本発明の製造方法によれば、ピロリノン化合物をアントラキノン系触媒存在下に空気酸化するという簡便な方法で、前記一般式(4)で表わされるビピロリノニリデン系化合物を製造することができる。本発明の製造方法によって得られる前記一般式(4)で表わされるビピロリノニリデン系化合物は、カルボキシル基あるいはエステル結合を有しているので、従来知られているビピロリノニリデンと比べて、多くの有機溶剤に可溶であり、染料、顔料、もしくはその他の有機化学品あるいはこれらの中間体として有用である。
Claims (13)
- 前記一般式(2)において、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9およびX10がそれぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子であり、かつ、R1およびR2がそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜18のアルキル基である請求項2記載のビピロリノニリデン系化合物。
- 前記一般式(2)において、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9およびX10がすべて水素原子であり、かつ、R1およびR2がそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜8のアルキル基である請求項2記載のビピロリノニリデン系化合物。
- 請求項1記載の一般式(1)で表わされるビピロリノニリデン系化合物と、請求項1記載の一般式(1)においてR1およびR2が水素原子であるビピロリノニリデン系化合物の金属塩とから選ばれるビピロリノニリデン系化合物を含有することを特徴とする着色剤。
- 請求項2記載の一般式(2)で表わされるビピロリノニリデン系化合物と、請求項2記載の一般式(2)においてR1およびR2が水素原子であるビピロリノニリデン系化合物の金属塩とから選ばれるビピロリノニリデン系化合物を含有する請求項5記載の着色剤。
- X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9および
X10がそれぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子であり、かつ、R1およびR2がそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜18のアルキル基である請求項6記載の着色剤。 - X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9および
X10がすべて水素原子であり、かつ、R1およびR2がそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜8のアルキル基である請求項6記載の着色剤。 - 前記ビピロリノニリデン系化合物の金属塩が、アルカリ金属塩である請求項5〜8のいずれか1項記載の着色剤。
- 前記ビピロリノニリデン系化合物の金属塩が、ナトリウム塩またはカリウム塩である請求項5〜8のいずれか1項記載の着色剤。
- 前記ビピロリノニリデン系化合物の金属塩が、多価金属塩である請求項5〜8のいずれか1項記載の着色剤。
- 前記ビピロリノニリデン系化合物の金属塩が、カルシウム塩、バリウム塩またはアルミニウム塩である請求項5〜8のいずれか1項記載の着色剤。
- 一般式(3)
で表わされるピロリノン系化合物を、アントラキノン系触媒存在下で酸化することを特徴とする一般式(4)
で表わされるビピロリノニリデン系化合物の製造方法。
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