JP4405844B2 - 油圧緩衝器 - Google Patents

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Description

この発明は、油圧緩衝器に関し、特に、二輪車の前輪側に架装されて路面振動を吸収するフロントフォークとされる油圧緩衝器の改良に関する。
二輪車の前輪側に架装されて路面振動を吸収するフロントフォークとされる油圧緩衝器としては、従来から種々の提案があるが、たとえば、特許文献1には、内蔵されるダンパ部における内圧を一定状態に維持してダンパ部における減衰作用を安定させるとする提案が開示されている。
すなわち、この特許文献1に開示の提案にあって、油圧緩衝器は、上方側部材とされるシリンダ体内に下方側部材とされるロッド体を出没可能に挿通する倒立型のダンパ部を軸芯部に内蔵してなる。
そして、ダンパ部にあっては、シリンダ体におけるボトム端部たる上端部内にシリンダ体内を一定の圧力状態に維持する内圧保障手段を有してなるとし、この内圧保障手段は、上下方向たるシリンダ体の軸線方向に摺動するフリーピストン状の隔壁部材を有してなるとしている。
このとき、シリンダ体内にはロッド体に保持されたピストン部が摺動可能に収装されると共に、このピストン部に配在の減衰バルブでいわゆる伸側作動時における所定の減衰作用が具現化されるとしている。
また、同じくシリンダ体内であるが、上記した隔壁部材の受圧面側にベースバルブ部を有していて、このベースバルブ部に配在の減衰バルブでいわゆる圧側作動時の所定の減衰作用が具現化されるとしている。
ところで、上記の隔壁部材は、シリンダ体の上端を閉塞する封止部材の軸芯部に垂設されて下端部に上記したベースバルブ部を保持するシャフトの外周にいわゆる液密状態に介装される環状に形成されながら外周をシリンダ体のボトム端部の内周に同じく液密状態に摺接させるとしている。
そして、この隔壁部材は、いわゆる背後側に配在された加圧手段、すなわち、コイルバネのバネ力で前進方向たる下降方向に附勢されてなると共に、シリンダ体内の圧力によってコイルバネのバネ力に抗して後退、すなわち、上昇し得るとしている。
そしてまた、この隔壁部材は、その下降時およびその近傍時にシリンダ体内における圧力のいわゆる背後側への抜けを阻止する一方で、その最上昇時に、内周が上記のシャフトの外周に形成された環状溝に照準されることで、シリンダ体内における圧力の背後側への抜けを許容するとしている。
それゆえ、この特許文献1に開示の油圧緩衝器にあっては、その伸縮作動時に軸芯部に内蔵のダンパ部におけるシリンダ体内の圧力が一定状態に維持され、したがって、ピストン部やベースバルブ部における適正な減衰作用の具現化が可能になり、たとえば、この油圧緩衝器をフロントフォークとして前輪側に架装する二輪車における乗り心地を良好に維持することが可能になる。
特開平6‐147248号公報(特許請求の範囲 請求項1,段落0005,同0015,同0016,図2)
しかしながら、上記した特許文献1に開示の油圧緩衝器にあっては、内蔵されるダンパ部にあって、ベースバルブ部における減衰作用に自由度を要求し辛いと指摘される可能性がある。
すなわち、上記の油圧緩衝器に内蔵されるダンパ部において、ベースバルブ部は、シリンダ体のボトム端たる上端から垂設されるシャフトの下端部に保持されてなるとするが、このとき、このシャフトには内圧保障手段を構成する隔壁部材が介装されてなるとしている。
それゆえ、いわゆる分解作業でベースバルブ部をシリンダ体内から抜き出すとしても、隔壁部材までもシリンダ体内から抜き出すことになり、その分、作業が容易でなく、作業を面倒にする危惧がある。
のみならず、上記の提案にあって、ベースバルブ部は、隔壁部材の言わば受圧面側となるシリンダ体内に配在されているから、このベースバルブ部における減衰作用は、シリンダ体内に貯留されている油の特性に依存することになる。
このことからすると、いわゆるライダーの好みによるチューニングをベースバルブ部で具現化しようとしても、油の特性に依存するチューニングを具現化できず、したがって、チューニングできるいわゆる幅が狭くなり、その分、チューニングにおける自由度が低くなると指摘されることになる。
この発明は、このような現状を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、内蔵されるダンパ部にあって、ベースバルブ部における減衰作用に自由度を要求することを可能にして、二輪車の前輪側に架装されて路面振動を吸収するフロントフォークとしての汎用性の向上を期待するのに最適となる油圧緩衝器を提供することである。
上記の目的を達成するため、本発明の手段は、アウターチューブと、上記アウターチューブに摺動自在に嵌合するインナーチューブと、上記インナーチューブの上端から垂設したシリンダ体と、上記アウターチューブの下端から起立してピストン部を介して上記シリンダ体に摺動自在に挿入したロッド体と、上記シリンダ体のボトム端部内に摺動自在に挿入した有底円筒状の隔壁部材と、上記シリンダ体内に上記隔壁部材で隔成された圧側室と、上記圧側室と反対側に配在されて上記隔壁部材を上記圧側室方向に附勢するコイルバネとを備えている油圧緩衝器において、上記シリンダ体に上記隔壁部材で開閉されて上記圧側室と上記シリンダ体外部とを連通又は遮断させる連通孔を形成し、上記インナーチューブの上端から垂設したシャフトの端部に設けたベースバルブ部を上記隔壁部材内に挿入したことを特徴とするものである。
この場合、上記シリンダ体内に上記隔壁部材で上記圧側室と対向する背後側に油と、この油の油面より上方の気室とからなるアキュムレータを隔成し、上記気室が収縮した時上記隔壁部材が上記コイルバネのバネ力と上記気室のエアバネ力の作用を受けるようにしているのが好ましい。
同じく、上記ベースバルブ部は隔壁部材内に挿入したバルブボディと、上記バルブボディ)に形成されて上記アキュムレータと上記隔壁部材内の油室とを連通する二つのポートと、上記ポート内にそれぞれ開閉自在に設けた減衰バルブおよび伸側チェック弁とで構成されているのが好ましい。
それゆえ、請求項1の発明によれば、ベースバルブ部が隔壁部材の内側に収装されてなるから、いわゆる分解作業でベースバルブ部をシリンダ体内から抜き出すときに、隔壁部材までもシリンダ体内から抜き出す必要がなく、その分、作業を容易にする。
そして、ベースバルブ部は、隔壁部材の内側に収装されるから、シリンダ体内に貯留されている油と絶縁でき、したがって、隔壁部材の内側に異なる特性の油を貯留するとき、ベースバルブ部における減衰作用がその油の特性に依存させることが可能になる。
したがって、たとえば、いわゆるライダーの好みによるチューニングをベースバルブ部で具現化し得ることになり、チューニングできるいわゆる幅が広がり、その分、チューニングにおける自由度が高くなる。
その結果、内蔵されるダンパ部にあって、ベースバルブ部における減衰作用に自由度を要求することを可能にして、二輪車の前輪側に架装されて路面振動を吸収するフロントフォークとしての利用に最適となる。
以下本発明の実施の一例を図に基づいて説明する。
本発明の油圧緩衝器は、図1に示すように、アウターチューブ1と、上記アウターチューブ1に摺動自在に嵌合するインナーチューブ2と、上記インナーチューブ2の上端から垂設したシリンダ体3と、上記アウターチューブ1の下端から起立してピストン部6を介して上記シリンダ体3に摺動自在に挿入したロッド体4と、上記シリンダ体3のボトム端部3a内に摺動自在に挿入した有底円筒状の隔壁部材7と、上記シリンダ体3内に上記隔壁部材7で上下に隔成されたアキュムレータ及び圧側室R2と、上記隔壁部材7を上記アキュムレータと協働して上記圧側室R2方向に附勢するコイルバネ8を備えているものである。
そして、図2に示すように、上記シリンダ体3に上記隔壁部材7で開閉されて上記圧側室R2と上記シリンダ体3外部とを連通又は遮断させる連通孔3cを形成し、上記インナーチューブ2の上端から垂設したシャフト5cの端部に設けたベースバルブ部5を上記隔壁部材7内に挿入している。
更に、上記シリンダ体3内に上記隔壁部材7で上記圧側室R2と対向する背後側に油と、この油の油面Oより上方の気室AとからなるアキュムレータQを隔成し、上記気室Aが収縮した時上記隔壁部材7が上記コイルバネ8のバネ力と上記気室Aのエアバネ力の作用を受けるようにしている
上記ベースバルブ部5は隔壁部材7内に挿入したバルブボディ10と、上記バルブボディ10に形成されて上記アキュムレータQと上記隔壁部材7内の油室12とを連通する二つのポート13、14と、上記ポート13、14内にそれぞれ開閉自在に設けた減衰バルブ5aおよび伸側チェック弁5bとで構成されている。
以下更に詳しく説明する。
ちなみに、この油圧緩衝器は、図示しないが、二輪車における前輪側に架装されて路面振動を吸収するフロントフォークとされるもので、図示する実施形態では、図1に示すように、車輪側部材たるアウターチューブ1内に車体側部材たるインナーチューブ2が出没可能に挿通される正立型の伸縮筒からなり、上記のダンパ部が軸芯部に内蔵されてなるとしている。
このとき、ダンパ部は、この発明では、上方側部材とされるシリンダ体3内に下方側部材とされるロッド体4が出没可能に挿通される倒立型に設定されてなるとしており、それゆえ、この発明による油圧緩衝器にあっては、ベースバルブ部5を上記のシリンダ体3の図1中で上端部となるボトム端部3a内に有するとしている。
そして、このダンパ部にあっては、シリンダ体3がインナーチューブ2の軸芯部に垂設されると共に、ロッド体4がアウターチューブ1の軸芯部に起立し、両者間に配在された懸架バネSによって、伸長方向に附勢されてなるとしている。
ちなみに、この発明が意図するところからすれば、ダンパ部が倒立型に設定される限りには、上記した伸縮筒は、アウターチューブ1を車輪側チューブにする正立型とすることに代えて、図示しないが、アウターチューブ1を車体側チューブにする倒立型としても良いことはもちろんである。
一方、ダンパ部において、シリンダ体3内には、ロッド体4の図1中で上端となる先端に保持されたピストン部6が摺動可能に収装されていて、このピストン部6によってシリンダ体3内を図1中でピストン部6の下方側となる伸側室R1と同じく図1中でピストン部6の上方側となる圧側室R2に画成すると共に、減衰バルブ(図示せず)の配在下に伸側室R1と圧側室R2との連通を許容している。
それゆえ、上記のダンパ部にあっては、シリンダ体3に対してロッド体4が出没する伸縮作動時に、ピストン部6に配在の減衰バルブで所定の減衰力が発生されることになる。
ところで、上記した内圧保障手段は、図2にも示すように、シリンダ体3のボトム端部3a内に摺動可能に収装される隔壁部材7を有してなり、この隔壁部材7がシリンダ体3のボトム端部3a内をシリンダ体3内のピストン部6側たる受圧面側、すなわち、圧側室R2側と、反対側たる背後側に画成するとしている。
このとき、この隔壁部材7の上下端部の外周には、上記のシリンダ体3におけるボトム端部3aの内周に液密状態に摺接するシール部材7a,7bが介装されてなるとしている。
ちなみに、この発明にあっては、後述するところであるが、ベースバルブ部5が隔壁部材7の内側に配在されるから、このベースバルブ部5を保持するためのロッド類が隔壁部材7の軸芯部を貫通しない。
そして、この隔壁部材7は、図2中で上昇するように後退して、下端位置が同じく図2中に符号Hで示す位置まで最後退するときに、この隔壁部材7の受圧面側、すなわち、シリンダ体3内に収装されるピストン部6側となる圧側室R2内の圧力をシリンダ体3外に解放してシリンダ体3内の圧力を一定状態に維持するとしている。
このとき、図示するところでは、上記した符号Hで示す位置より背後側となる、すなわち、図2中で上方側となるシリンダ体3におけるボトム端部3aの内周が上記の符号Hで示す位置より上方となる部位において拡径されていて、隔壁部材7の下端がこの拡径された内周部3bに照準されるとき、隔壁部材7の受圧面側の圧力が拡径された内周部3bおよびこの内周部3bに穿設された連通孔3cを介してシリンダ体3外に解放されるとしている。
一方、この隔壁部材7は、図2中でこの隔壁部材7の上方側となる背後側に配在の加圧手段によって、すなわち、図示するところでは、コイルバネ8のバネ力によって図2中で下降するように前進されると共に、シリンダ体3内たる圧側室R2の圧力によって上記の加圧手段たるコイルバネ8のバネ力に抗して図2中で上昇するように後退されるとしている。
そして、このとき、図示するところでは、この隔壁部材7の背後側が油面Oを境にする気室Aを有するアキュムレータ構造に形成されてなるとして、隔壁部材7が図2中で上昇するように後退するとき、気室Aの収縮によるエアバネ力が発生されるとしている。
それゆえ、上記した内圧保障手段にあっては、隔壁部材7の背後側に配在される加圧手段がコイルバネ8および気室Aとからなり、したがって、隔壁部材7は、コイルバネ8におけるバネ力と気室Aにおけるエアバネ力の作用を受けることになる。
その結果、この発明における内圧保障手段にあっては、隔壁部材7の背後側における加圧を確実なものにし得る一方で、前記した特許文献1に開示されている隔壁部材に比較して、部品構成を簡単にして、部品コストの低減を可能にすることになる。
ちなみに、上記した加圧手段を構成するアキュムレータ構造にあっては、容室たる気室Aにおける内圧を外部操作で高低調整し得るとすることで、エアバネ力を高低調整し得ることになるのはもちろんであり、その限りでは、ライダーの好みでエアバネ力を調整するチューニングが可能になる。
ところで、この発明においては、ベースバルブ部5が上記した隔壁部材7内に配在されてなるとし、このとき、隔壁部材7は、有底円筒状にされながら前記したようにシリンダ体3のボトム端部3aの内側に収装されてなるとしている。
そして、このベースバルブ部5は、隔壁部材7の内側をいわゆる受圧面側となる隔壁部材7内と、反対側となる背後側、すなわち、前記したアキュムレータ構造における容室側とに画成すると共に、減衰バルブ5aおよび伸側チェック弁5bの配在下に上記の受圧面側と背後側との連通を許容している。
このとき、ベースバルブ部5は、隔壁部材7の内側に固定状態に臨在されるシャフト、すなわち、図示するところでは、車体側チューブたるインナーチューブ2の軸芯部に垂設されたシャフト5cの図中で下端部となる先端部に連設されてなるとし、言わばシリンダ体3側に固定状態に連繋されて隔壁部材7との間における相対移動を許容するとしている。
それゆえ、この隔壁部材7の内側に配在されたベースバルブ部5にあっては、上記の受圧面側および背後側に貯留される油を、シリンダ体3内に貯留される油と特性が異なるものにすることで、ライダーの好みによるチューニングをこのベースバルブ部5で具現化することが可能になり、その分、チューニングできるいわゆる幅が広くなり、チューニングにおける自由度が高くなると言い得ることになる。
以上のように、形成された油圧緩衝器にあっては、ダンパ部を構成するシリンダ体3内における内圧が異常に高くなるとき、これがシリンダ体3外に解放されるが、この解放された油圧、すなわち、油は、ダンパ部の伸縮作動が繰り返されることで、シリンダ体3におけるヘッド端部、すなわち、ロッド体4を出没させる開口端部を介してシリンダ体3内に戻り、シリンダ体3内における油不足を危惧させないことになる。
この発明による油圧緩衝器を原理的に示す図である。 図1の油圧緩衝器における要部を拡大して示す部分縦断面図である。
符号の説明
3 シリンダ体
4 ロッド体
5 ベースバルブ部
5a シャフト
6 ピストン部
7 隔壁部材
8 加圧手段たるコイルバネ
A 容室を構成する気室
O 油面

Claims (3)

  1. アウターチューブ(1)と、上記アウターチューブ(1)に摺動自在に嵌合するインナーチューブ(2)と、上記インナーチューブ(2)の上端から垂設したシリンダ体(3)と、上記アウターチューブ(1)の下端から起立してピストン部(6)を介して上記シリンダ体(3)に摺動自在に挿入したロッド体(4)と、上記シリンダ体(3)のボトム端部(3a)内に摺動自在に挿入した有底円筒状の隔壁部材(7)と、上記シリンダ体(3)内に上記隔壁部材(7)で隔成された圧側室(R2)と、上記圧側室(R2)と反対側に配在されて上記隔壁部材(7)を上記圧側室(R2)方向に附勢するコイルバネ(8)とを備えている油圧緩衝器において、上記シリンダ体(3)に上記隔壁部材(7)で開閉されて上記圧側室(R2)と上記シリンダ体(3)外部とを連通又は遮断させる連通孔(3c)を形成し、上記インナーチューブ(2)の上端から垂設したシャフト(5c)の端部に設けたベースバルブ部(5)を上記隔壁部材(7)内に挿入したことを特徴とする油圧緩衝器。
  2. 上記シリンダ体(3)内に上記隔壁部材(7)で上記圧側室(R2)と対向する背後側に油と、この油の油面(O)より上方の気室(A)とからなるアキュムレータ(Q)を隔成し、上記気室(A)が収縮した時上記隔壁部材(7)が上記コイルバネ(8)のバネ力と上記気室(A)のエアバネ力の作用を受けるようにしている請求項1に記載の油圧緩衝器。
  3. 上記ベースバルブ部(5)は隔壁部材(7)内に挿入したバルブボディ(10)と、上記バルブボディ(10)に形成されて上記アキュムレータ(Q)と上記隔壁部材(7)内の油室(12)とを連通する二つのポート(13)(14)と、上記ポート(13)(14)内にそれぞれ開閉自在に設けた減衰バルブ(5a)およびと伸側チェック弁(5b)とで構成されている請求項2に記載されている油圧緩衝器。
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