JP4403086B2 - 厚鋼板の圧下矯正方法 - Google Patents
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Description
一般に鋼材には規格があり、降伏点の下限が規定されている。このため、その規定を満足するためには、例えば、厚鋼板の成分として合金元素を添加したり、また厚鋼板の圧延条件を制御して、予め降伏点を高めておくことが考えられるが、厚鋼板の製造コストの上昇及び生産性の阻害を引き起こす。
前記圧下矯正により前記厚鋼板の降伏点を低下させない場合には、時効が生じる温度以上でAr1変態点未満の温度範囲で前記厚鋼板を圧下矯正し、前記圧下矯正により前記厚鋼板の降伏点を低下させる場合には、該厚鋼板に前記時効が生じる温度未満で該厚鋼板を圧下矯正する。
ここで、厚鋼板の降伏点を低下させない方法としては、例えば、圧延機で圧延した厚鋼板をその冷却過程で圧下矯正したり、また一旦冷却した厚鋼板を再加熱して圧下矯正する方法がある。
ここで、加熱手段としては、例えば、誘導加熱又は加熱炉を使用できる。
ここで、図1は本発明の第1、第2の実施の形態に係る厚鋼板の圧下矯正方法の説明図である。
まず、本発明の第1の実施の形態に係る厚鋼板の圧下矯正方法を適用する厚鋼板製造設備について説明した後、厚鋼板の圧下矯正方法について詳しく説明する。
この厚鋼板製造設備を使用して、降伏点が異なる厚鋼板を製造する方法について説明する。
C:0.01質量%以上0.20質量%以下、Si:0.02質量%以上1.0質量%以下、Mn:0.2質量%以上2.5質量%以下、P:0.025質量%以下、S:0.020質量%以下、Al:0.002質量%以上0.10質量%以下、N:0.0010質量%以上0.0080質量%以下、Cu:0.05質量%以上1.5質量%以下、Cr:0.05質量%以上1.0質量%以下、Mo:0.05質量%以上0.50質量%以下、W:0.05質量%以上0.50質量%以下、Ta:0.05質量%以上0.50質量%以下、Ni:0.05質量%以上3.5質量%以下、Nb:0.003質量%以上0.05質量%以下、Ti:0.002質量%以上0.10質量%以下、V:0.005質量%以上0.10質量%以下、B:0.0003質量%以上0.0030質量%以下、Ca:0.0003質量%以上0.0050質量%以下、Mg:0.0005質量%以上0.0060質量%以下、希土類元素:0.0005質量%以上0.0060質量%以下である。
ここで、軽圧下矯正機12の圧下矯正により、厚鋼板11の降伏点を低下させない場合には、時効が生じる温度以上でAr1変態点未満の温度範囲で、厚鋼板11を圧下矯正する必要がある。従って、冷却床15の降伏点を低下させない方の系列により、厚鋼板11の搬送速度を速くして、厚鋼板11を軽圧下矯正機12まで搬送し圧下矯正を行う。
このため、圧下矯正を行う厚鋼板の温度を、時効が生じる温度以上でAr1変態点未満の温度範囲としている。
また、軽圧下矯正機12の圧下率が0.1%未満の場合、厚鋼板の形状を矯正できない。一方、圧下率が1.0%を超える場合、厚鋼板の転位密度が過剰に多くなるため、強度が上昇し過ぎて、厚鋼板の延性及び靱性が低下する。
このため、圧下率を0.1%以上1.0%以下としている。
T=250−26000×{(N質量%)−(Ti質量%)/3.4−(Al質量%)/29}
但し、{(N質量%)−(Ti質量%)/3.4−(Al質量%)/29}<0の場合は0とする。
図1に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る厚鋼板の圧下矯正方法は、圧延機10で圧延した厚鋼板11を、圧下率が0.1%以上1.0%以下で圧下矯正を行う方法において、圧延機10で圧延した後に温度が低下してしまった厚鋼板11を加熱手段16により加熱昇温して、軽圧下矯正機12による圧下矯正を行うことで、その厚鋼板11の降伏点を低下させることなく使用可能にする方法である。
なお、加熱手段16は、冷却床15と軽圧下圧延機12との間に配置されており、この加熱手段16として、誘導加熱を使用し、厚鋼板11を搬送しながら加熱しているが、加熱炉などの加熱手段を使用し、厚鋼板を装入して加熱昇温することも可能である。
そこで、軽圧下矯正機12の圧下矯正により、厚鋼板11の降伏点を低下させない場合、即ち厚鋼板11の降伏点が低下することを救済する場合には、加熱手段16により、時効が生じる温度以上でAc1変態点未満の温度範囲に加熱昇温した後、厚鋼板11を圧下矯正する。ここで、加熱温度がAc1変態点以上の場合、オーステナイトへの変態が開始するために、熱間圧延で造り込んだ組織及び材質が大きく変化してしまう。一方、圧下矯正により、厚鋼板11の降伏点を低下させる場合には、加熱手段16を稼働させることなく、厚鋼板11をそのままの状態で圧下矯正する。
なお、使用する軽圧下矯正機12のワークロールの直径は300mm、胴長は5500mmであり、バックアップロールは分割型のものであり、その直径は750mm、胴長は300mmである。また、加熱手段としては、最高温度が600℃の誘導加熱装置を使用した。
ここで、厚鋼板として、前記実施の形態で示した化学成分を含む4種類の厚鋼板A〜Dを使用した。この各厚鋼板A〜Dの化学成分、及びその各成分量を表1に示し、それぞれのAr1変態点、Ac1変態点、及び板厚を表2に示す。
ここで、実施例を1〜6、及び比較例を1〜8として、圧下矯正前の鋼板温度、加熱装置での加熱温度、及び圧下率を表3に示し、各引張特性の結果を表4に示す。なお、引張特性は、JIS 1A号 C方向引っ張り試験に基づいて測定した。
以上のことから、本願発明の圧下矯正方法を適用することにより、厚鋼板の製造コストの上昇及び生産性の阻害を引き起こすことなく、降伏点を低下させない厚鋼板を製造できることを確認できた。
ここで、実施例を1〜4、及び比較例を1〜8として、圧下矯正前の鋼板温度、加熱装置での加熱温度、及び圧下率を表5に示し、その結果を表6に示す。
一方、比較例1〜6の各厚鋼板は、鋼板温度が時効を生じる温度以上で圧下矯正を行ったものである。なお、比較例3、4の各厚鋼板は、加熱装置の加熱により、鋼板温度を時効が生じる温度以上にしている。また、比較例7の厚鋼板は、圧下矯正時の圧下率が0.1%未満であり、比較例8の厚鋼板は、圧下矯正時の圧下率が1.0%を超えている。
以上のことから、本願発明の圧下矯正方法を適用することにより、厚鋼板の製造コストの上昇及び生産性の阻害を引き起こすことなく、降伏点を低下させた厚鋼板を製造できることを確認できた。
Claims (2)
- 厚鋼板を、圧下率が0.1%以上1.0%以下で圧下矯正を行う方法において、
前記圧下矯正により前記厚鋼板の降伏点を低下させない場合には、時効が生じる温度以上でAr1変態点未満の温度範囲で前記厚鋼板を圧下矯正し、前記圧下矯正により前記厚鋼板の降伏点を低下させる場合には、該厚鋼板に前記時効が生じる温度未満で該厚鋼板を圧下矯正することを特徴とする厚鋼板の圧下矯正方法。 - 請求項1記載の厚鋼板の圧下矯正方法において、前記圧下矯正により前記厚鋼板の降伏点を低下させない場合に、前記厚鋼板の温度が前記圧下矯正前に前記時効を生じる温度未満に低下した際には、この厚鋼板を加熱手段により前記時効が生じる温度以上でAc1変態点未満の温度範囲に加熱昇温した後、前記圧下矯正を行うことを特徴とする厚鋼板の圧下矯正方法。
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