JP4403029B2 - 二重構造エキゾーストマニホールドの内側用オーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents

二重構造エキゾーストマニホールドの内側用オーステナイト系ステンレス鋼 Download PDF

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Description

本発明は、自動車エンジンの排気ガス経路部材である二重構造エキゾーストマニホールドの内側を構成する材料に用いるオーステナイト系ステンレス鋼に関する。
近年、自動車エンジンおよび排気ガス処理システムには、厳しい排ガス規制をクリアする浄化性能が求められている。排ガス浄化手段としては排ガス経路に触媒コンバーターを設けるのが一般的であるが、エンジン始動直後は浄化装置の温度が低く通常運転時よりも浄化効率が低下するため、このときにできるだけ高効率で作動させることが重要となる。その対策として浄化装置をエキゾーストマニホールド直下に追加設置すること、あるいは燃焼ガス温度そのものを上昇させることなどが有効であり、種々検討されてきたが、これらにも限界がある。
その後、エキゾーストマニホールドを二重構造にする方法が提案され、既に一部で実用化されている。これによると従来の単構造パイプよりも部品単価は高くなるものの、燃焼ガスの保温効果が非常に高いので浄化効率が高まり、断熱材,加熱装置,更なる浄化装置等を付加する必要がなく、部品点数削減によるコスト低減メリットが生じる。
単構造のエキゾーストマニホールドでは加熱・冷却の繰り返しによる熱疲労破壊を避けるために、オーステナイト系よりも熱膨張係数の小さいフェライト系鋼種が使用される。一方、二重構造では、外側の管(外管)はやはり拘束された状態で加熱冷却の繰り返しを受けるため単管と同様にフェライト系鋼種を使用することが望ましい。しかし内側の管(内管)は、肉厚が1mm以下と薄いため外管より一層優れた加工性が要求され、また、材料が拘束されないように設計することが可能であることから、オーステナイト系鋼種を使用する方が有利な場合が多くなる。
エキゾーストマニホールドの内管は排ガスに直接曝されるため、材料温度は排ガスと同程度の800〜1000℃に達する。この温度域で酸化増量の少ない鋼種を使用する必要があるが、例えば代表的なオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS304では基本的にこの特性が不十分である。また、一般にオーステナイト系ステンレス鋼は、フェライト系ステンレス鋼よりも酸化スケールの密着性が劣るため、繰り返し加熱冷却における耐スケール剥離性には特に注意を要する。
さらに、エキゾーストマニホールドの内管用材料としては、高温強度,加工性,溶接性に優れることも要求される。すなわち、高温強度については、材料が拘束されないよう設計することで加熱冷却の繰り返しによる熱疲労破壊は回避し得るものの、エンジンの振動による疲労が問題となってくる。このため高温高サイクル疲労特性に優れることが望まれる。加工性については、プレス成形,バルジ成形,フランジ成形など種々の加工が想定されるため、延性に優れることが重要となる。溶接性については、TIG溶接,MIG溶接等における溶接割れ感受性の低い材料が好ましい。
耐熱性オーステナイト系鋼種については従来から種々の鋼種が開発されている(特許文献1〜12)。なかでも特許文献12には、エキゾーストマニホールドの内管に適したオーステナイト系ステンレス鋼が提案されている。
特開昭50−18313号公報 特開昭50−93219号公報 特開昭52−109420号公報 特開昭53−149114号公報 特開昭62−192562号公報 特開昭63−38558号公報 特開平5−98395号公報 特開平7−118810号公報 特開平7−188869号公報 特開平8−239737号公報 特開平9−87809号公報 特開2001−98344号公報
特許文献12のエキゾーストマニホールド内管用オーステナイト系ステンレス鋼は排ガス温度800〜1000℃を想定したものであり、特性としては、1000℃で100サイクルの断続加熱において優れた耐酸化特性を呈するものである。また、成形性や溶接性を配慮した成分設計となっている。
しかしながら、昨今では自動車の長期信頼性を向上させる取り組みが各自動車メーカーで行われ、断続加熱に対する耐久性に関しては特許文献12で行っている100サイクル程度の試験では足りず、1000サイクル以上、好ましくは2000サイクルの耐久試験において優れた耐久性、特に耐スケール剥離性を示す性能が望まれるようになってきた。
一方で、車種によって最高排ガス温度は多様化しており、それに応じて、エキゾーストマニホールドに用いる材料にも最適レベルの性能を有するものが求められる。つまり、材料側にも最高排ガス温度に応じて性能の多様化が求められており、性能不足の懸念がある材料や過剰性能を有する材料の使用は従来にも増して許容されなくなってきた。
現状においては、最高排ガス温度850〜900℃で使用するエキゾーストマニホールドの需要が多々あるにもかかわらず、その限られた温度域で二重構造の内管として最適な特性を有する鋼は見当たらない。例えば特許文献12の鋼の場合、1000℃での酸化を抑制する性能をもつが、逆に850〜900℃レベルでの長期耐久性、例えば2000サイクルの繰り返し加熱試験に耐え得る「耐スケール剥離性」について見れば、必ずしも十分満足できるレベルにあるとは限らない。また、使用温度が900℃以下の場合、1000℃程度まで昇温される場合に比べσ脆化が生じやすい。さらに、特許文献12の鋼は850〜900℃での使用を前提とした耐σ脆化について十分な配慮がなされていない。
また、特許文献12の鋼は優れた穴拡げ性を呈するように成分設計されているが、複雑形状への曲げ加工性や穴拡げ性を考慮したとき、必ずしも十分な延性を有しているとは言えない。
本発明は、このような現状に鑑み、材料温度が850〜900℃となるような環境で使用される二重構造エキゾーストマニホールドの内側材(内管)に求められる高温強度,耐σ脆化性,長期繰り返しにおける耐スケール剥離性を具備し、かつ延性および溶接性にも優れた鋼を開発し提供しようというものである。
本発明で提供する鋼は、質量%で、C:0.08%以下,Si:1.5〜3%,Mn:2%以下,P:0.04%以下,S:0.01%以下,Ni:8〜10%,Cr:17〜19%,N:0.2%以下,Nb:0.3%以下,Al:0.02〜0.08%未満であり、必要に応じてTi:0.05〜0.5%,Mo:0.05〜0.5%,Cu:0.03〜0.5%,V:0.05〜0.5,W:0.05〜0.5%,Zr:0.05〜0.5%の1種または2種以上を含有し、また必要に応じてREM,Y,Caの合計含有量が0.005〜0.1%であり、残部Feおよび不可避的不純物であり、
ただし、NおよびNbについては、N:0.08超え〜0.2%,Nb:0.05〜0.3%のうちいずれか一方または両方を満たし、
かつ下記(1)〜(3)式を満たす二重構造エキゾーストマニホールドの内側用オーステナイト系ステンレス鋼である。
18≦Cr+0.5Si<20 ……(1)
−80≦551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo<−40 ……(2)
7≦(Cr+1.5Si+0.5Nb+Mo)−(Ni+0.5Mn+0.3Cu+30C+30N)≦10 ……(3)
(1)〜(3)式の元素記号の箇所には質量%で表された当該元素の含有量が代入される。
本発明によれば、850〜900℃の温度域で長期間繰り返し使用したときに優れた耐久性、特に優れた耐スケール剥離性を呈し、かつ耐σ脆化についても十分配慮した鋼が実現された。この鋼は延性,高温強度にも優れ、エキゾーストマニホールドの特に二重構造の内管に好適な特性を有する。したがって本発明は、最高排ガス温度が850〜900℃の自動車において、コストメリットの高い鋼材を提供することで、エキゾーストマニホールドの信頼性向上およびコスト低減に寄与するものである。
本発明の鋼は、850〜900℃の温度に曝される二重構造エキゾーストマニホールドの内管に求められる高温強度,耐σ脆化性,長期繰り返しにおける耐スケール剥離性、および良好な延性を実現すべく、以下のような成分設計を行ったものである。
Cは、オーステナイト系ステンレス鋼の高温強度向上に有効である。しかし、過剰に含有させるとエキゾーストマニホールドとして使用中にCr炭化物を形成して靱性が劣化するとともに、耐高温酸化性の向上に有効な固溶Cr量が減少する。このためC含有量は0.08質量%以下に制限される。好ましいC含有量の範囲は0.02〜0.08質量%である。
Siは、高温酸化特性の改善に非常に有効である。およそ1.5質量%以上の含有により、850〜900℃の温度域でSi濃化皮膜をCr酸化物の内層に形成させ、耐スケール剥離性の向上が可能になる。しかし、Siの多量添加はσ脆化感受性を高め、使用中にσ脆化を誘発する。このためSi含有量の上限は3質量%に制限される。より好ましいSi含有量範囲は2超え〜3質量%である。
Mnは、オーステナイト安定化元素であり、本発明では主として相バランス調整のために添加される。しかし、過剰なMn添加は耐高温酸化性の低下を招くので2質量%以下に制限される。
Pは、オーステナイト系ステンレス鋼の熱間加工性を損なう元素であり、可能な限り低減することが望ましい。このためP含有量は0.04質量%以下に制限される。
Sは、Pと同様にオーステナイト系ステンレス鋼の熱間加工性を損なう元素である。鋼の製造歩留りを低下させないため、可能な限り低いことが望ましい。このためS含有量は0.01質量%以下に制限される。
Niは、オーステナイト安定化元素であり、オーステナイトバランス調整のため8〜10質量%含有させる。
Crは、高温でのスケール生成を抑制する基本元素であり、本発明では17質量%以上の含有量が必要である。ただし過剰のCr含有はσ脆化を招くので19質量%以下に制限される。
Nは、固溶強化により高温強度の向上に寄与する。900℃まで昇温されるエキゾーストマニホールド内管としては0.08質量%を超えるN含有量を確保することが望ましい。ただ、後述のNb添加によっても高温強度の改善が可能であるため、Nbを所定量含有させる場合は必ずしもNを含有させなくてもよい。Nの過剰添加はCr窒化物の形成により鋼の靱性を低下させるため、N含有量の上限は0.2質量%に制限される。
Nbは、Cr236型炭化物を微細分散析出させる作用があり、これによって高温強度の向上に寄与する。この効果を十分に発揮させるには0.05質量%以上のNb含有が望まれる。しかし、Nbを過剰に添加すると鋼製造のいずれかの工程または材料昇温時にNb炭窒化物を生成してしまうため、Cr炭化物の微細析出による高温強度向上作用が希釈され、また靱性低下を招くようになる。このため、Nb含有量は0.3質量%以下に制限される。
ただし、前述のようにN添加によって高温強度の向上が可能であるため、Nを0.08質量%を超えて含有させる場合は必ずしもNbを含有させる必要はない。具体的には、N:0.08超え〜0.2質量%を含有させる場合は、Nbは無添加または0.3質量%以下の範囲で含有させればよい。N含有量が0.08質量%以下の場合は、Nbを0.05〜0.3質量%の範囲で含有させる必要がある。
Alは、耐高温酸化性の向上に有効である。ただし多量に含有させると鋼が硬質化し、原料コストも高くなる。このため、Alは0.02〜0.08質量%未満の範囲で含有させる。0.03〜0.07質量%とすることが一層好ましい。
以上の元素に加え、本発明では以下の元素を選択的に含有させることができる。
Ti,VおよびWは、高温強度の向上に有効である。しかし、多量に添加すると鋼が硬質になり、また原料コストも高くなる。このため添加量の上限はいずれも0.5質量%に制限される。好ましい含有量範囲は、Ti:0.05〜0.5質量%,V:0.05〜0.5質量%,W:0.05〜0.5質量%である。これらは単独で添加しても複合で添加しても構わない。
Moは、フェライト生成元素であり、高温強度の改善に有効である。しかし、過剰のMo添加はσ脆化を招き、鋼の靱性を損なう。このため、Moを添加する場合は0.5質量%以下の範囲で行う必要がある。好ましいMo含有量範囲は0.05〜0.5質量%である。
Cuは、オーステナイト生成元素であり、これも高温強度の向上に有効である。このため、オーステナイトバランスの調整を兼ねて積極添加することができる。しかし、Cuの多量添加は耐高温酸化性の低下を招く。したがって、Cuを添加する場合は0.5質量%以下の範囲で行う必要がある。好ましいCu含有量範囲は0.03〜0.5質量%、さらに好ましいCu含有量範囲は0.05〜0.5質量%である。
Zrは、高温強度の向上に有効であるとともに、微量の添加で耐高温酸化性も改善される。しかし、多量のZr添加はσ脆化を招き、鋼の靱性を損なう。このためZrを添加する場合は0.5質量%以下の範囲で行う必要があり、0.05〜0.5質量%の範囲で含有させることが好ましい。
REM,YおよびCaは、耐高温酸化性の向上に有効であり、その効果を十分に発揮させるためにはこれらの元素の1種または2種以上を添加することによりその合計含有量を0.005質量%以上とすることが望ましい。ただし多量に含有させると鋼が硬質化し、原料コストも高くなる。このため、これらの元素の合計含有量は0.1質量%以下に制限される。
本発明では、850〜900℃レベルでの繰り返しの使用に長期間耐え得る優れた耐スケール剥離性を付与することを重要な課題としている。具体的には、後述の実施例で説明する900℃,2000サイクルの高温酸化試験において、板厚0.8mmの材料で減肉率20%未満となるような優れた特性を具備させる。その手法として前述のようにCrおよびSiを含有させる。その一方で、Cr,Si添加のいわば副作用であるσ脆化の問題を解決しなければならない。特に850〜900℃で使用する場合は、900〜1000℃程度の高温で使用する場合と比べ、σ脆化が起こりやすい。このため本発明では、耐スケール剥離性と耐σ脆化の兼ね合いでCrおよびSi含有量を厳しくコントロールする必要がある。発明者らはこの点を考慮して多くの実験を行ってきた。
その実験結果を図1に例示する。図1は板厚0.8mmまたは2.0mmのCr−6〜11%Niオーステナイト系ステンレス鋼板について、耐スケール剥離性と耐σ脆化に及ぼすSi含有量,Cr含有量の影響を示してある。横軸がSi含有量、縦軸がCr含有量である。耐スケール剥離性は、後述実施例に示す900℃,2000サイクルの試験(板厚0.8mm材使用)において減肉率が20%未満のものを良好(○または□)、それ以上のものを不良(●または■)とした。耐σ脆化は、板厚2.0mm材を用いて900℃,300時間の加熱を行ったのち、JIS Z 2242のVノッチシャルピー衝撃試験を室温にて行い、シャルピー衝撃値が100J/cm2以上のものを良好(○または●)、100J/cm2未満のものを不良(□または■)とした。
図1からわかるように、上記の優れた耐スケール剥離性を付与するためにはSi≧1.5,Cr≧17,かつCr+0.5Si≧18を満たす必要がある。一方、良好な耐σ脆性を確保するにはCr≦19,Si≦3,かつCr+1.5Si<20を満たす必要がある。したがって本発明では、CrおよびSiの含有量に関し、それぞれ前記の含有量範囲であって、かつ下記(1)式を満足することを要件とする。
18≦Cr+0.5Si<20 ……(1)
本発明では、複雑形状のエキゾーストマニホールドへの加工を行いやすくするため、良好な延性を付与する。種々検討の結果、昨今の自動車で要求される複雑形状のエキゾーストマニホールド内管への加工性を満足させるためには、造管前の素材鋼板において、圧延方向に直角方向の常温での伸びが50%以上という良好な延性を付与する必要があると判断された。この延性をこの成分系において実現するには、加工時に加工誘起マルテンサイト相が誘起されない組成域にコントロールする必要があることがわかった。二重構造エキゾーストマニホールドの内管の加工度を考慮すると、下記M値が−40より小さい値になるように組成コントロールする必要がある。
M=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo
M値が−40以上になると加工誘起マルテンサイトの多量生成に起因して厳しい曲げ加工時に割れが生じる恐れがある。M値が小さくなるほど加工誘起マルテンサイト相が生成し難くなり、若干の加工誘起マルテンサイトの生成により延性は向上するが、あまりM値が小さくなると加工誘起マルテンサイトが常温加工で全く生成しなくなり、かえって延性が低下するので、M値の下限は−80とする。したがって本発明では前記(2)式を満たすことが要件となるのである。
さらに本発明では、溶接性にも十分配慮する。エキゾーストマニホールドを製造する際には、造管時に溶接を行うか、プレス成形後に溶接を行う。発明者らはオーステナイト系ステンレス鋼の溶接高温割れ感受性を抑制する成分組成について多くの実験結果を有しており、本発明では下記D値が7以上に調整された鋼を用いる必要があると判断された。
D=(Cr+1.5Si+0.5Nb+Mo)−(Ni+0.5Mn+0.3Cu+30C+30N)
なお、D値が10を超えると溶接高温割れ感受性が高くなるとともに、加工性の低下が問題となる場合がある。したがって本発明では前記(3)式を満たすことが要件となるのである。
以上のように成分調整した鋼は、通常のステンレス鋼板製造設備を用いて例えば板厚0.8mm程度の鋼板とし、溶接造管によりエキゾーストマニホールド用の管に成形される。
表1に示す鋼を溶製し、通常のステンレス鋼板製造条件にしたがって、熱間圧延→焼鈍酸洗→冷間圧延→焼鈍酸洗の工程により板厚2.0mmの鋼板を作り、さらに冷間圧延と焼鈍酸洗を行って板厚0.8mmの鋼板を得た。
Figure 0004403029
板厚0.8mmの各鋼板から圧延方向に直角方向の引張試験片(JIS 13B号)を切り出し、JIS Z 2241に準拠して常温での引張試験を行い、延性を評価するために伸びを測定した。また、板厚2.0mmの各鋼板から圧延方向に平行方向の高温引張試験片を切り出し、JIS G 0567に準拠して高温引張試験を900℃で行い、高温強度の指標として900℃における0.2%耐力を求めた。
また、板厚0.8mmの各鋼板から25×35mmの高温酸化試験片を切り出し、JIS Z 2282に準拠して「大気中900℃×5分→5分間の空冷」を1サイクルとする2000サイクル繰り返しの高温酸化試験に供した。高温酸化試験前後の重量変化、および試験後最も板厚が減少した箇所の減肉率を求めた。減肉率は次式により算出される。
減肉率=(試験前板厚−試験後板厚)/試験前板厚×100
また、板厚2.0mmの各鋼板を用いて900℃,300時間の加熱を行った後、JIS Z 2242のVノッチシャルピー衝撃試験を室温にて実施し、シャルピー衝撃値によって耐σ脆化を評価した。シャルピー衝撃値が100J/cm2以上のものを耐σ脆性が良好であると判定した。
さらに、各鋼板について溶接高温割れ感受性の指標となる「臨界ひずみ(%)」を以下のようにして求めた。すなわち、板厚0.8mm,幅40mm,長さ200mmの試験片を用意し、この試験片の長手方向に最大300N/mm2までの範囲で一定の引張荷重を加え、この状態で試験片長手方向にTIGのなめづけ溶接をビード長さが100mmとなるように施した後、予め設定した標点間50mm内に生じた割れ個数を測定する。また、溶接後の試験片の標点間距離を測定し、「溶接時に付与されるひずみ」を求める。このような試験を引張荷重を段階的に変えて行い、割れが発生し始めるときのひずみ値をその材料の臨界ひずみとする。臨界ひずみが8%以上のものを、耐溶接高温割れ性が良好であると判定した。
これらの結果を表2に示す。
Figure 0004403029
表2からわかるように、本発明で規定の化学組成を満たす材料は、2000サイクルの高温酸化試験後の減肉率が20%未満であり、900℃での繰り返し加熱において優れた耐スケール剥離性を呈した。つまり、本発明鋼は850〜900℃域での繰り返し加熱に曝した場合に優れた耐久性を安定して呈することが確認された。加えて、酸化試験前後の重量変化も少なく、耐σ脆化にも優れていた。延性(常温での伸び),高温強度(900℃での0.2%耐力),耐溶接高温割れ性(臨界ひずみ)も十分であった。
これに対し、鋼No.16はCr+0.5Siが低すぎ前記(1)式を満たさないため、また鋼No.17はSi含有量が低すぎるため、また鋼No.18はCr含有量が低すぎるため、これらは耐スケール剥離性に劣った。鋼No.19はCr+0.5Siが高すぎ前記(1)式を満たさないため、また鋼No.20はSi含有量が高すぎるため、また鋼No.21はCr含有量が高すぎるためいずれも耐σ脆化に劣った。鋼No.22はN含有量およびNb含有量がともに低すぎるため、高温強度が低かった。鋼No.23はM値が高く、鋼No.24はM値が低く、いずれも(2)式を満たさないため、延性(常温での伸び)が低かった。鋼No.25はD値が高く(3)式を満たさないため、耐溶接高温割れ性(臨界ひずみ)に劣った。
なお、鋼No.26は特許文献12の発明鋼に相当する比較鋼であるが、M値が高く(2)式を満たさないため、常温での伸びに劣った。
耐スケール剥離性および耐σ脆化に及ぼすSi含有量およびCr含有量の影響を示すグラフ。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.08%以下,Si:1.5〜3%,Mn:2%以下,P:0.04%以下,S:0.01%以下,Ni:8〜10%,Cr:17〜19%,N:0.2%以下,Nb:0.3%以下,Al:0.02〜0.08%未満,残部Feおよび不可避的不純物であり、
    ただし、NおよびNbについては、N:0.08超え〜0.2%,Nb:0.05〜0.3%のうちいずれか一方または両方を満たし、
    かつ下記(1)〜(3)式を満たす二重構造エキゾーストマニホールドの内側用オーステナイト系ステンレス鋼。
    18≦Cr+0.5Si<20 ……(1)
    −80≦551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo<−40 ……(2)
    7≦(Cr+1.5Si+0.5Nb+Mo)−(Ni+0.5Mn+0.3Cu+30C+30N)≦10 ……(3)
  2. さらに質量%で、Ti:0.05〜0.5%,Mo:0.05〜0.5%,Cu:0.03〜0.5%,V:0.05〜0.5,W:0.05〜0.5%,Zr:0.05〜0.5%の1種または2種以上を含有する請求項1に記載の二重構造エキゾーストマニホールドの内側用オーステナイト系ステンレス鋼。
  3. さらに質量%で、REM,Y,Caの合計:0.005〜0.1%である請求項1または2に記載の二重構造エキゾーストマニホールドの内側用オーステナイト系ステンレス鋼。
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