JP4401610B2 - 窒化物半導体レーザ素子 - Google Patents

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【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、発光ダイオード素子(LED)、レーザダイオード素子(LD)等の発光素子、スーパーフォトルミネセンスダイオード、太陽電池、光センサ等の受光素子、あるいはトランジスタ、パワーデバイス等の電子デバイスに用いられる窒化物半導体(InXAlYGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いた窒化物半導体素子に関し、特に光の波長が440nm以上であるInを含む窒化物半導体層を活性層に有する窒化物半導体素子、並びに、光閉込めのクラッド層に挟まれた導波路構造を有する端面発光素子、レーザ素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日、窒化物半導体を用いた半導体レーザは、DVDなど、大容量・高密度の情報記録・再生が可能な光ディスクシステムへの利用に対する要求が高まりを見せている。このため、窒化物半導体を用いた半導体レーザ素子は、研究が盛んになされている。また、窒化物半導体を用いた半導体レーザ素子は、紫外域から赤色に至るまで、幅広く可視光域での発振が可能と考えられ、その応用範囲は、上記光ディスクシステムの光源にとどまらず、レーザプリンタ、光ネットワークなどの光源など、多岐にわたるものと期待されている。また、本出願人は、405nm、室温、5mWの連続発振の条件で、1万時間を超えるレーザを発表した。
【0003】
また、窒化物半導体を用いた発光素子、受光素子などには、Inを含む窒化物半導体を用いて活性層とした構造を有しており、活性層におけるより優れた活性領域の形成が、素子特性の向上において重要となる。
【0004】
窒化物半導体のレーザ素子、若しくは発光素子において、長波長の発光を得るには、活性層若しくは発光層のInを含む窒化物半導体におけるIn混晶比を、変化させることで、発光波長を変えることができ、特にIn混晶比を高くすると発光波長を長くすることができる。また、端面発光素子、レーザ素子において、活性層が上部、下部クラッド層に挟まれた構造を有する場合に、両クラッド層の屈折率を小さくし、上部、下部クラッド層に挟まれた導波路内の屈折率を高くすることで、導波路内に効率よく光が閉じこめられ、結果としてレーザ素子においてはしきい値電流密度の低下に寄与する。
【0005】
従来、このようなクラッド層を有する窒化物半導体素子において、440nm以上の長波長の発光を得る構造として、例えば、レーザ素子において、ガイド層にInGaN、クラッド層にAlGaNを用いたSCH構造が提案されている。
【0006】
しかしながら、長波が長くなるに従ってAlGaNとInGaNとの屈折率差が小さくなり、すなわち、導波路内のガイド層で光の吸収による損失が発生し、閾値電流が高くなる。更に、上部クラッド層をp側窒化物半導体、下部クラッド層をn側窒化物半導体とした場合に、上部ガイド層にp側のInGaNを用いるが、p側InGaNを形成すると結晶性が他の層に比べて悪く、素子特性に悪影響を及ぼし、更にその上に形成するAlGaNの上部クラッド層の結晶性も悪化し、これによる、素子特性の低下が問題となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明では、活性層が上部クラッド層、下部クラッド層に挟まれた構造を有する窒化物半導体素子で、光の波長が440nm以上の長波長域の発光素子において、両クラッド層に挟まれた導波路において、光の吸収を低く抑え、活性層を含む導波路内へ効率的に光を閉込め、さらに良好な結晶性で、素子構造を形成することが必要である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、閾値電流密度などの素子特性に優れ、且つ結晶性の良好な窒化物半導体素子を得るものである。
【0009】
すなわち本発明の半導体素子は、下記の構成により本発明の目的を達成することができる。
(1) 活性層を、p型層とn側層とで挟みこむ構造を有し、p型層がp側クラッド層を有し、n側層がn側クラッド層を有する窒化物半導体レーザ素子において、
活性層がInを含む窒化物半導体を有し、該活性層内で、最もn側層側に配置されたn側障壁層(2a)と、最もp型層側に配置されたp側障壁層(2c)と、n側障壁層(2a)とp側障壁層(2c)との間に少なくとも1つのInを含む窒化物半導体からなる井戸層を有し、
前記n側クラッド層と前記活性層との間に、該活性層に接して、該n側クラッド層より屈折率が大きく、In混晶比がz>0である窒化物半導体からなる第1の窒化物半導体層を有し、
前記p側クラッド層と前記活性層との間に、In混晶比uがz>uである第2の窒化物半導体層と、該第2の窒化物半導体層に接して、且つ前記活性層に接して若しくは前記活性層にバッファ層を介して接してAlを含む窒化物半導体からなるp側電子閉込め層を有し、
n側クラッド層と第1の窒化物半導体層との間に、第1の窒化物半導体層よりIn混晶比が小さいInを含む窒化物半導体のn側光ガイド層、若しくは第1の窒化物半導体層よりバンドギャップエネルギーの大きいn側光ガイド層、を有し、
前記p側障壁層の膜厚が200Å以上であり、該p側障壁層のIn混晶比が前記第2の窒化物半導体層のIn混晶比より大きく、前記n側障壁層のIn混晶比vがv<zであることを特徴とする窒化物半導体レーザ素子。
(2)第1の窒化物半導体層の膜厚が300Å以上である上記(1)記載の窒化物半導体レーザ素子。
(3) p側障壁層の膜厚が400Å以上である上記(1)記載の窒化物半導体レーザ素子。
(4)記活性層とp側電子閉込め層との距離が1000Å以下である上記(1)乃至3のいずれか一項に記載の窒化物半導体レーザ素子。
) 前記バッファ層が、p側電子閉込め層よりも低いAl混晶比であるAlを含む窒化物半導体からなること、若しくはGaNであることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の窒化物半導体レーザ素子。
) 前記p側クラッド層、前記n側クラッド層が、それぞれ光閉込めのクラッド層であり、Alを含む窒化物半導体を有するレーザ素子構造であり、発振波長が440nm以上であることを特徴とする上記(1)乃至()のいずれか一項に記載の窒化物半導体レーザ素子。
) 前記p側クラッド層と、前記n側クラッド層との少なくとも一方は、少なくともAlを含む窒化物半導体を有する第1の層と、第1の層とはバンドギャップエネルギーの異なる第2の層とが交互に積層された多層膜クラッド層であることを特徴とする上記()記載の窒化物半導体レーザ素子。
) 前記p型層、前記n側層の少なくとも一方の光ガイド層は、少なくともInを含む窒化物半導体を有する第3の層と、第3の層とはバンドギャップエネルギーの異なる第4の層とが交互に積層された多層膜光ガイド層であることを特徴とする上記()記載の窒化物半導体レーザ素子。
) 前記p側障壁層(2c)のn側不純物濃度が、前記n側障壁層(2a)のn側不純物濃度より小さいことを特徴とする上記(1)乃至()のいずれか一項に記載の窒化物半導体レーザ素子。
10) p側障壁層(2c)のn側不純物濃度が、p側不純物濃度より小さいことを特徴とする上記()記載の窒化物半導体レーザ素子。
【0010】
活性層を、p型層とn側層とで挟みこむ構造を有し、p型層がp側クラッド層を有し、n側層がn側クラッド層を有する窒化物半導体素子において、前記活性層がInを含む窒化物半導体を有し、n側クラッド層と活性層との間にIn混晶比がz>0である窒化物半導体からなる第1の窒化物半導体層を有し、p側クラッド層と活性層との間にIn混晶比uがz>uである第2の窒化物半導体層を有することを特徴とする。この構成により、n側層には、In混晶比z(z>u)の大きな第1の窒化物半導体層が設けられ、p型層には第1の窒化物半導体層よりもIn混晶比u(u=0も含む)が小さい第2の窒化物半導体層が設けられた構造となり、後述する導波路構造において、導波路内の活性層を挟む非対称構造が形成される。また、別の発明としては活性層をp側クラッド層とn側クラッド層とで挟みこむ構造を有する窒化物半導体素子において、前記活性層がInを含む窒化物半導体を有し、n側クラッド層と活性層との間にInを含む窒化物半導体からなる第1の窒化物半導体層を有し、p側クラッド層と活性層との間にIn混晶比が0である第2の窒化物半導体層を有することを特徴とする。この構成により、活性層とp側クラッド層との間に、Inを含まない、若しくはIn混晶比の小さい窒化物半導体(第2の窒化物半導体層)を用いることで、結晶性の悪化を抑制し、活性層とn側クラッド層との間には、Inを含む窒化物半導体(第1の窒化物半導体層)を用いることで、両クラッド層に挟まれる導波路とクラッド層との間に適度な屈折率差を設けることができる。特に活性層内で440nm以上の長波長の発光がある窒化物半導体素子において、閾値電流の低いレーザ素子が得られるなど、素子特性に優れた窒化物半導体素子となる。これは、p側とn側のクラッド層に挟まれた導波路において、440nm以上の長波長の光を適度な広がりでもって導波させるには、活性層に用いられるInを含む窒化物半導体のIn混晶比以下のInを含む窒化物半導体、例えば後述する光ガイド層、を導波路内に設けることが好ましいと考えられていたが、p側不純物であるMgをドープしたInを含む窒化物半導体は、結晶性が大きく悪化するため、素子特性を悪化させることにある。すなわち、本発明では、p側クラッド層とn側クラッド層で挟まれた導波路内に、組成が異なり、活性層を挟む第1の窒化物半導体層と第2の窒化物半導体層とを有することで、非対称な導波路構造とし、長波長において素子特性に優れる窒化物半導体素子が得られる。また、n側、p側クラッド層としては、このような導波路構造を形成するように、光閉込めのクラッド層として設ける他、導波路を有していない素子においては、キャリア閉込め層として機能させた構造とすることもできる。このようなクラッド層としては、活性層よりもバンドギャップエネルギーを大きくすること、活性層が量子井戸構造の場合には、井戸層よりもバンドギャップエネルギーを大きくし、好ましくは、障壁層よりもバンドギャップエネルギーを大きくする。本発明において、第1の窒化物半導体層は、n側障壁層2aとして設けることができ、その場合、図13に示すように、活性層内に、厚膜のn側障壁層が形成された構造となる。また、第2の窒化物半導体層は、p側クラッド層、p側光ガイド層の一部として設けることができ、省略することもできる。
【0011】
さらに、上記n側層中の第1の窒化物半導体層とp型層中の第2の窒化物半導体層との間に活性層が設けられた素子構造において、前記活性層が、活性層内の障壁層の中で、最も前記n側層側に配置されたn側障壁層(2a)と、最も前記p型層側に配置されたp側障壁層(2c)と、n側障壁層(2a)とp側障壁層(2)との間に少なくとも1つのInを含む窒化物半導体からなる井戸層を有すると共に、前記p側障壁層(2c)のn側不純物濃度が、n側障壁層(2a)のn側不純物濃度より小さい構成とすることが好ましい。これは、後述するように、p側障壁層(2c)がキャリアの注入口となり、p側障壁層(2c)にn側不純物が高濃度にドープされていると、ホールの活性層への注入を阻害する傾向にあるため、n側障壁層(2a)よりもn側不純物濃度を小さくして、n側、p側障壁層の機能を異なるものとでき、キャリアの注入が良好なものとできる。一方で、n側障壁層(2a)は、p側障壁層のn側不純物濃度より大きくすることで、n側層からのキャリアの注入を促進させる構造とできる。またp側障壁層(2c)のn側不純物濃度としては、p型層近く、若しくは接して形成されることから、p側不純物の拡散が発生する場合があり、この場合、p側障壁層(2c)をn側不純物ドープして形成すると、n側、p側不純物を有する障壁層となるため、p側障壁層(2c)のキャリア注入機能が低下する傾向にある。そのため、このような場合、好ましくはp側障壁層(2c)のn側不純物濃度をp側不純物濃度より小さくすると、このような機能低下を回避できる。また、p側障壁層には、いずれにおいても、n側不純物濃度を低濃度にすることが好ましく、具体的には、5×1016/cm未満とすることで、p側障壁層(2c)の機能向上を図ることができる。
【0012】
本発明の窒化物半導体素子において、前記p型層が、活性層と第2の窒化物半導体層との間、若しくは活性層とp側クラッド層との間に、Alを含む窒化物半導体からなるp側電子閉じ込め層を有ることが好ましい。また、p側電子閉込め層(キャリア閉込め層)は、この組成に限定されず、活性層よりもバンドギャップエネルギーが大きな組成とすること、好ましくは、活性層中の少なくとも1つの障壁層、更に好ましくは、全ての障壁層よりもバンドギャップエネルギーが大きくなるようにすることが好ましい。また、p側電子閉込め層のキャリア閉込め層は、n側にも同様な位置、組成、膜厚で設けることができる。このp側電子閉込め層は、n側層からのキャリアを活性層内に閉じ込める層として機能し、p側クラッド層が光閉込め層である場合には、p側クラッド層よりも活性層の近くに配置されたp側電子閉込め層により、主にキャリア閉込めとして機能させ、クラッド層において、主に光閉込めとして機能させた構造となり、端面発光素子、レーザ素子に用いることができる。また、p側クラッド層が光閉込めとして機能させる必要がない素子、例えば発光素子においては、p側クラッド層とp側キャリア閉込め層とで、キャリア閉込める構造となる。p側電子閉込め層としては、クラッド層と同様に活性層よりもバンドギャップエネルギーを大きくし、量子井戸構造の活性層においては、井戸層よりもバンドギャップエネルギーを大きくし、好ましくは障壁層よりもバンドギャップエネルギーを大きくすることが好ましい。また、p側クラッド層が光閉込め層である場合においては、実施例に示すようにp側クラッド層よりもバンドギャップエネルギーを大きくすることで障壁を大きくでき、効率的な電子閉込めを可能となり好ましく、一方で、Al混晶比が大きくなると、後述するp側電子閉込め層の抵抗値も大きくなる傾向にあることから、このような場合には、Al混晶比、バンドギャップエネルギーをp側クラッド層よりも小さくして、高抵抗層による発熱を抑えて、活性層の機能を高めた構造とできるため好ましい。
【0013】
また、p側電子閉込め層の位置として好ましくは、活性層に接して、若しくはバッファ層を介して接して設けられていることで、電子閉込め機能を高めた構造とできる。バッファ層については、後述するように、Alを含む窒化物半導体による大きな圧電界と、さらにAlを含む窒化物半導体が、活性層、井戸層に用いられるInを含む窒化物半導体近くに設けられることによる内部応力とによる活性層への悪影響を抑え、成長時においては、下地層として好適な結晶性を得られるように形成される。バッファ層の具体的な組成としては、後述するように、GaN若しくは、Al混晶比がp側電子閉込め層より小さいAlを含む窒化物半導体で構成すると良い。また、このようなp側電子閉込め層が、活性層、特に井戸層に及ぼす悪影響は、両者の距離を大きくすることで回避できることを示したが、バッファ層も、p側障壁層(2c)と同様に、このようなスペーサーとしての機能を持たせることができる。すなわち、活性層内で最もp側電子閉込め層に近くに、前記n側障壁層(2a)とp側障壁層(2)との間に設けられた井戸層(1)を有し、該井戸層(1)とp側電子閉込め層との距離が100Å以上とする構成により、素子特性に優れたものが得られる。この井戸層(1)とp側電子閉込め層との距離を決定するものは、両者の間に介在する層により決定されるものであり、具体的にはp側障壁層、活性層とp側電子閉込め層との間に介在するバッファ層であり、これらの層の膜厚を調節することにより、素子特性の向上を図れる。この距離の上限としては、後述するように、400Å以下とすることである。また、p側障壁層(2c)を、Inを含む窒化物半導体で構成すると、第1の窒化物半導体層と同様に、導波路、特に活性層近傍の屈折率を高めて、光閉込めのクラッド層との間で屈折率差を高めて、長波長域のレーザ素子、端面発光素子に優れた素子構造を形成することができる。第2の窒化物半導体層と、これらバッファ層、p側障壁層(2c)などのp側電子閉込め層と井戸層(1b)との間に介在する層との違いは、素子のバイアス時に、活性層近くに設けられたp側電子閉込め層の近傍において、p−n接合が形成されることにより、p−n接合部よりも活性層近くに配置されたバッファ層、p側障壁層(2c)は、p型層側にInを含む窒化物半導体を設けることによる悪影響を回避できる傾向にあるためである。
【0014】
これら前記n側障壁層(2a)、及び/又は、p側障壁層(2c)は、活性層内で最も外側に配置されている構造とすることが、上述したn側障壁層(2a)、p側障壁層(2c)の機能を高めることができ好ましい。
【0015】
前記p側クラッド層、n側クラッド層が、Alを含む窒化物半導体を有することを特徴とする。この構成により、両クラッド層に挟まれた導波路と、各クラッド層との間に、大きな屈折率差を設けることが可能となり、光の導波に優れた導波路構造が形成され、素子特性に優れる窒化物半導体素子が得られる。ここで、Alを含む窒化物半導体として好ましくは、In混晶比が0でInを含まない窒化物半導体を用いることで、結晶性に優れ、より大きな屈折率差を設けることができ、さらにAlxGa1-xN(0<x≦1)で表される窒化物半導体を用いることがさらに好ましい。
【0016】
前記活性層がInを含む窒化物半導体からなる井戸層を有する量子井戸構造を有し、前記第1の窒化物半導体層のIn混晶比が井戸層のIn混晶比より小さいことを特徴とする。この構成により、量子井戸構造の活性層とすることで、量子井戸構造でない場合に比べて、発光再結合が促進され、閾値電流を低下させ、出力を向上させ、素子特性に優れた窒化物半導体素子が得られる。また、第1の窒化物半導体層に用いられる窒化物半導体のIn混晶比を、井戸層よりも小さくすることで、井戸層とのバンドギャップエネルギー差を大きくでき、キャリアの注入を良好にでき素子特性の向上につながる。それに加えて、Inは光の導波において、光を吸収・散乱させる作用があることから、In混晶比の低い窒化物半導体の第1の窒化物半導体層と、Inを含まない第2の窒化物半導体層を用いることで、光の損失を抑えて、閾値電流、駆動電流を低下させた窒化物半導体素子となる。ここで、活性層が量子井戸構造でない場合にも、活性層に用いられる窒化物半導体のIn混晶比より、第1の窒化物半導体層のIn混晶比を小さくすることで同様な効果が得られる。
【0017】
前記第1の窒化物半導体層が活性層に接して設けられることを特徴とする。この構成により、図5,6に示すように、n側クラッド層から段階的にバンドギャップエネルギー差が小さくなって活性層につながる構造となり、活性層、井戸層内にキャリアが効率的に注入され、素子特性に優れる窒化物半導体素子が得られる。また、上述したように、Inによる光の損失が発生があることから、第1の窒化物半導体層を活性層に接して設けることで、導波路内での光の分布が、活性層に重なったピークを有して、活性層内に多くの光が分布する構造となるものと考えられ、活性層とほぼ同様な層として機能し、導波路内での光の損失を低く抑えることができる。一方で、図8、図10に示すように、第1の窒化物半導体層のIn混晶比zを、前記n側障壁層(2a)のIn混晶比vと、ほぼ同じか、小さくすること、すなわち、z≦vであることによって、In混晶比をn側障壁層よりも大きくでき、このことにより導波路の屈折率を大きくした構造とできる。この場合、p型層からのキャリア閉込めは、主にn側障壁層(2b)が担うこととなるが、ホールの拡散長が電子よりも小さい窒化物半導体においては、p側電子閉込め層のように大きな障壁を設けなくても、活性層内へのキャリア閉込めが可能とできる。すなわち、p型層からのキャリア閉込めにおいては、バンドギャップエネルギーの大きなn側障壁層(2a)が担うように、最小にして、簡略化を実現し、た構造とし、一方で、第1の窒化物半導体層が大きなIn混晶比を有することで、活性層、導波路中心部の屈折率を大きくして、光の導波に優れた素子構造の形成が可能となる。
【0018】
p側クラッド層と活性層との間に前記第2の窒化物半導体層からなるp側光ガイド層と、該p側光ガイド層と活性層との間にAlを含む窒化物半導体からなるp側電子閉込め層を有することを特徴とする。この構成により、導波路内において、活性層とp側クラッド層との間を、p側電子閉込め層と第2の窒化物半導体層からなるp側光ガイド層を有することで、結晶性の悪化、Inによる光の損失を抑えて、素子特性が向上する。このとき、p側電子閉込め層を有することで、電子が活性層に効率的に閉じ込められて、素子特性が良好なものとなり、このように作用させるには、Alを含む窒化物半導体をp側電子閉込め層に用いることが必用であり、特に光の損失を低く抑えるため好ましくは、Inを含まない窒化物半導体を用いることであり、さらに好ましくは、AlzGa1-zN(0<z≦1)で表される窒化物半導体を用いることである。
【0019】
前記活性層と第1の窒化物半導体層との間に、In混晶比が0である窒化物半導体からなるn側光ガイド層を有することを特徴とする。この構成により、導波路内において、n側光ガイド層は、Inを含まないことから光の損失のないガイド層となり、第1の窒化物半導体層は、導波路とクラッド層との間の屈折率差を大きくする層として機能し、素子特性が向上する。
【0020】
前記第1の窒化物半導体層の膜厚が300Å以上であることを特徴とする。この構成により、上述した第1の窒化物半導体層を有することによる導波路内の屈折率を大きくする効果が大きくなり、クラッド層との屈折率差を大きくでき、素子特性が向上する。
【0021】
前記活性層内で最もn側層側の層としてn側障壁層を有し、該n側障壁層と前記第1の窒化物半導体層との膜厚の和が、300Å以上であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の別の形態としては、前記p側クラッド層と、n側クラッド層とが、光閉込めのクラッド層であり、前記p側クラッド層と、n側クラッド層との少なくとも一方は、少なくともAlを含む窒化物半導体を有する第1の層と、第1の層とはバンドギャップエネルギーの異なる第2の層とが交互に積層された多層膜クラッド層を、光閉込め層とすることである。クラッド層を多層膜で形成する場合には、組成の異なる窒化物半導体を複数積層するものであり、具体的にはAl組成比の異なる窒化物半導体を複数積層する。このように多層膜で形成すると、単一膜の場合における結晶性の悪化、クラックの発生を、抑制することが可能となる。具体的には、多層膜として、第1の層と、それと異なる組成の第2の層とを積層し、屈折率、バンドギャップエネルギーの異なる層を複数設ける。例えば、Al組成比x1の第1の層と、Al組成比x2(x1≠x2)の第2の層とを積層した構造の多層膜でも良く、この時Al組成比をx1>x2(0≦x2、x1≦1)とした構成とすると、Al組成比の大きな第1の層で屈折率を小さく、バンドギャップエネルギーを大きくし、Al組成比の小さい第2の層で、第1の層を形成することによる結晶性の悪化を抑えることができる。また、第1の層、第2の層を積層し、第2の層と組成の異なる第5の層を積層するなどして、更に複数の組成の異なる層を積層しても良い。また、第1の層、第2の層を交互に複数積層した構造であっても良く、少なくとも第1の層、第2の層を有する対を、複数対形成した構造としても良い。このような、多層膜構造では、Alを含む窒化物半導体の結晶性悪化を抑えて、膜厚を大きくすることができるため、光閉込めにおいて重要となる膜厚を得ることが可能となる。
【0023】
多層膜構造のクラッド層において、超格子構造とすることで、更に結晶性を良好なものとして、クラッド層を形成することができ好ましい。ここで、超格子構造は、クラッド層の少なくとも一部に設けることであり、好ましくは全てにおいて超格子構造を設けることで、結晶性良くクラッド層を形成できる。この時、超格子構造としては、光ガイド層の場合と同様に、少なくとも第1の層と、第2の層とを交互に複数積層したり、少なくとも第1の層と第2の層とを有する対を、複数対設けた構造とする。超格子構造を構成する各層の膜厚としては、組成及び各層の組み合わせによりその膜厚は異なるが、具体的には、10nm以下とすることであり、好ましくは7.5nm以下とすることで結晶性を良好に保つことができ、更に好ましくは5nm以下とすることで、より良好な結晶性とすることができる。このとき、少なくとも第1、2の層の一方を上記膜厚範囲とし、好ましくは両方の膜厚とも上記膜厚範囲とすることで厚膜でのクラッド層形成が良好な結晶性となる。
【0024】
クラッド層には、少なくとも各導電型の不純物をドープすることが好ましく、光ガイド層と同様に、全体にドープしても、部分的にドープしても良い。また、多層膜の場合にも光ガイド層と同様に、例えば前記第1の層、第2の層を有する多層膜で、両方にドープしても良く、又は第1の層と第2の層とで異なるドープ量とするか、一方にドープして、他方をアンドープとした変調ドープとしても良い。例えば、前記第1の層/第2の層が、Alx1Ga1−x1N(0<x1≦1)/Alx2Ga1−x2N(0≦x2≦1、x1>x2)の超格子多層膜構造である場合に、Al組成比の小さい第2の層に不純物ドープして、第1の層をアンドープとすることで、光ガイド層と同様に結晶性を良くすることができる。
【0025】
クラッド層の膜厚としては特に限定されないが、10nm以上2μm以下、50nm以上1μm以下の範囲で形成する。これは、10nm以上とすることでキャリアの閉込めが可能で、2μm以下とすることで、結晶性の悪化を抑え、更に50nm以上とすることで光閉込めが可能となりレーザ素子、端面発光素子などに用いることができ、1μm以下とすることで、結晶性良くクラッド層を形成することができる。
【0026】
さらに、上記光閉込めのクラッド層に加えて、前記p側クラッド層、n側クラッド層の少なくとも一方と、活性層との間に、光ガイド層を有し、該光ガイド層は、少なくともInを含む窒化物半導体を有する第3の層と、第3の層とはバンドギャップエネルギーの異なる第4の層とが交互に積層された多層膜光ガイド層を設けた構造とすることができる。この多層膜光ガイド層の組成については、上記多層膜クラッド層と同様に、超格子構造の多層膜とすることが好ましい。具体的には、In組成比の異なる窒化物半導体を複数積層する。このように多層膜で形成すると、図10に示すように、n側層側には、活性層近傍に配置された第1の窒化物半導体層と、クラッド層側に配置された多層膜光ガイド層とが設けられる構造とでき、導波路の屈折率を低下できる構造となり、単一膜のInを含む窒化物半導体からなる光ガイド層を設ける場合における結晶性の悪化を、抑制することが可能となる。具体的には、多層膜として、第6の層と、それと異なる組成の第4の層とを積層し、屈折率、バンドギャップエネルギーの異なる層を複数設ける。例えば、In組成比y1の第3の層と、In組成比y2(y1≠y2)の第4の層とを積層した構造の多層膜でも良く、この時In組成比をy1>y2(0≦y2、y1≦1)とした構成とすると、In組成比の大きな第3の層で屈折率を大きく、バンドギャップエネルギーを大きくし、In組成比の小さい第4の層で、第3の層を形成することによる結晶性の悪化を抑えることができる。また、第3の層、第4の層を積層し、第4の層と組成の異なる第6の層を積層するなどして、更に複数の組成の異なる層を積層しても良い。また、第3の層、第4の層を交互に複数積層した構造であっても良く、少なくとも第3の層、第4の層を有する対を、複数対形成した構造としても良い。このような、多層膜構造では、Inを含む窒化物半導体の結晶性悪化を抑えて、導波路の屈折率を大きくした構造とでき、クラッド層との屈折率差を高めることができる。
【0027】
多層膜構造の光ガイド層において、超格子構造とすることで、更に結晶性を良好なものとして、光ガイド層を形成することができ好ましい。ここで、超格子構造は、光ガイド層の少なくとも一部に設けることであり、好ましくは全てにおいて超格子構造を設けることで、結晶性良く光ガイド層を形成できる。この時、超格子構造としては、クラッド層の場合と同様に、少なくとも第3の層と、第4の層とを交互に複数積層したり、少なくとも第3の層と第4の層とを有する対を、複数対設けた構造とする。超格子構造を構成する各層の膜厚としては、組成及び各層の組み合わせによりその膜厚は異なるが、具体的には、10nm以下とすることであり、好ましくは7.5nm以下とすることで結晶性を良好に保つことができ、更に好ましくは5nm以下とすることで、より良好な結晶性とすることができる。このとき、少なくとも第1、2の層の一方を上記膜厚範囲とし、好ましくは両方の膜厚とも上記膜厚範囲とすることで光ガイド層形成が良好な結晶性となる。
【0028】
クラッド層には、少なくとも各導電型の不純物をドープすることが好ましく、光ガイド層と同様に、全体にドープしても、部分的にドープしても良い。また、多層膜の場合にも光ガイド層と同様に、例えば前記第3の層、第4の層を有する多層膜で、両方にドープしても良く、又は第3の層と第4の層とで異なるドープ量とするか、一方にドープして、他方をアンドープとした変調ドープとしても良い。例えば、前記第3の層/第4の層が、Iny1Ga1−y1N(0<y1≦1)/Iny2Ga1−y2N(0≦y2≦1、y1>y2)の超格子多層膜構造である場合に、In組成比の小さい第4の層に不純物ドープして、第3の層をアンドープとすることで、クラッド層と同様に結晶性を良くすることができる。
【0029】
また、光ガイド層の膜厚としては、特に限定されるものではないが、10nm以上1μm以下、好ましくは50nm以上500nm以下とすることで、上記第1,2の窒化物半導体層とを組み合わせた構造において、優れた導波路構造が形成される。さらに好ましくは、100nm以上300nm以下とすることで、前記第1の窒化物半導体層、第2の窒化物半導体層と光ガイド層とを組み合わせて用いる構成において、好適な光導波路が形成され、効率的に光が閉じ込められて、閾値電流を低減させることができる。
【0030】
n側層が、光ガイド層を有し、該n側層の光ガイド層と活性層との間に、第1の窒化物半導体層を有することで、良好な導波路構造が形成される。
前記p型層が、光ガイド層を有し、該p型層の光ガイド層が、前記第2の窒化物半導体層を有することで、Inを含む窒化物半導体にによる結晶性悪化を抑えると共に、導波路の屈折率を高めた構造とできる。
【0031】
【発明の実施の形態】
本発明の窒化物半導体素子に用いる窒化物半導体としては、GaN、AlN、もしくはInN、又はこれらの混晶である窒化ガリウム系化合物半導体(InxAlyGa1-x-yN、0≦x、0≦y、x+y≦1)がある。その他に前記窒化ガリウム系化合物半導体の一部を、B、Pで置換した、混晶でもよい。また、活性層、井戸層、障壁層などに用いられるInを含む窒化物半導体は、具体的には、InxAlyGa1-x-yN(0<x、0≦y、x+y≦1)で表される窒化物半導体を用いることである。また、Alを含む窒化物半導体として、具体的には、InxAlyGa1-x-yN(0≦x、0<y、x+y≦1)で表される窒化物半導体を用いることである。
【0032】
(活性層)
本発明における活性層としては、少なくともInを含む窒化物半導体を有し、特に波長440nm以上の発光をするものである。ここで、Inを含む窒化物半導体としては、その組成は特に限定されないが、好ましくはInxGa1-xN(0<x≦1)で表される窒化物半導体を用いることである。このとき、Inを含む窒化物半導体には、ノンドープ、n側不純物ドープ、p側不純物ドープのいずれでもよいが、好ましくはノンドープ若しくはアンドープ、又はn側不純物ドープのInを含む窒化物半導体を活性層内に設けることで、レーザ素子、発光素子などの窒化物半導体素子において、高出力化が図れる。また、活性層が、量子井戸構造を有する場合には、このInを含む窒化物半導体が少なくとも井戸層に用いられる。ここで、量子井戸構造としては、多重量子井戸構造、単一量子井戸構造のどちらでも良い。好ましくは、多重量子井戸構造とすることで、出力の向上、発振閾値の低下などが図ることが可能となる。活性層の量子井戸構造としては、後述する井戸層、障壁層を積層したものを用いることができる。この時、量子井戸構造である場合に、井戸層数としては、1以上4以下とすることで、例えばレーザ素子においては、閾値電流を低くすることが可能となり好ましく、更に好ましくは、井戸層数を2又は3とした多重量子井戸構造とすることで、高出力のレーザ素子、発光素子が得られる傾向にある。
【0033】
また、多重量子井戸構造において、井戸層に挟まれた障壁層は、特に1層であること(井戸層/障壁層/井戸層)に限るものではなく、2層若しくはそれ以上の層の障壁層を、「井戸層/障壁層(1)/障壁層(2) /障壁層(3)/・・・/井戸層」というように、組成・不純物量等の異なる障壁層を複数設けても良い。例えば、井戸層の上に、Alを含む窒化物半導体からなる上部障壁層と、その上に上部障壁層よりもエネルギーバンドギャップの小さな下部障壁層を設ける構造などがあげられる。具体的には、井戸層の上に配置されAlを含む窒化物半導体からなる上部障壁層を設けることで、井戸層内に、Inの偏析、In濃度の面内分布を誘発し、量子ドット、量子細線効果が得られる傾向にあるため、これを用いても良い。この時、Alを含む窒化物半導体としては、具体的には、InxAlyGa1-x-yN(0≦x、0<y、x+y≦1)で表される窒化物半導体を用いることであり、好ましくは3元混晶のAlzGa1-zN(0<z≦1)を用いることで、結晶性、制御性良く成長させることが可能となるため好ましい。また、Alを含む窒化物半導体は、上部障壁層に限らず、井戸層の下に配置された下部障壁層としても良く、前記障壁層(1)と(3)に挟まれた障壁層(2)として設けても良い。好ましくは、井戸層の下部に接して設けられる下部障壁層以外に用いることであり、なぜなら良好な結晶性でもって井戸層が形成される傾向にあり、また上述した量子効果が得られやすい傾向にあるからである。井戸層の下に接する下部障壁層としては、Alを含まない窒化物半導体を用いることが好ましく、InxGa1-xN(0≦x≦1)の窒化物半導体を用いることが、井戸層の結晶性の点から好ましく、さらにはIn混晶比xが0より大きいInGaNとする方が、井戸層に対する下地層の効果が得られ好ましい。
【0034】
(井戸層)
本発明における井戸層としては、Inを含む窒化物半導体層を用いることが好ましく、この時具体的な組成としては、InαGa1- αN(0<α≦1)を好ましく用いることができる。このことにより、良好な発光・発振を可能とする井戸層となる。この時、In混晶比により、発光波長を決めることができる。
【0035】
また、井戸層の膜厚及び井戸層の数としては、膜厚及び井戸層の数を任意に決めることが可能である。具体的な膜厚としては、10Å以上300Å以下の範囲、好ましくは20Å以上200Å以下の範囲とすることで、Vf、しきい値電流密度を低減させることができる。また、結晶成長の観点からは、20Å以上であると、膜厚に大きなむらがなく比較的均一な膜質の層が得られ、200Å以下とすることで結晶欠陥の発生を低く抑えて結晶成長が可能となる。活性層内の井戸層数としては特に限定されず、1以上であり、この時、井戸層の数が4以上である場合には、活性層を構成する各層の膜厚が厚くなると、活性層全体の膜厚が厚くなって、Vfの上昇を招くこととなるため、井戸層の膜厚を100Å以下の範囲として、活性層の膜厚を低く抑えることが好ましい。
【0036】
本発明の井戸層には、前記活性層内のInを含む窒化物半導体と同様に、n側不純物がドープされていても、いなくても良い。しかしながら、井戸層はInを含む窒化物半導体が用いられ、n側不純物濃度が大きくなると結晶性が悪化する傾向にあるため、n側不純物濃度を低く抑えて結晶性の良好な井戸層とすることが好ましい。具体的には、結晶性を最大限に良好なものとするために井戸層をアンドープで成長させることであり、この時n側不純物濃度は5×1016/cm3以下と実質的にn側不純物を含まない井戸層とすることである。また、井戸層にn側不純物をドープする場合には、n側不純物濃度が1×1018以下5×1016以上の範囲でドープされていると、結晶性の悪化を低く抑え、なおかつキャリア濃度を高くすることができ、しきい値電流密度、Vfを低下させることができる。この時、井戸層のn側不純物濃度としては、障壁層のn側不純物濃度とほぼ同じか、若しくは小さくすることで、井戸層での発光再結合を促し、発光出力が向上する傾向にあるため好ましい。この時、井戸層、障壁層をアンドープで成長させて、活性層の一部を構成しても良い。
【0037】
特に、大電流で素子を駆動させた場合(高出力のLD、ハイパワーLED、スーパーフォトルミネセンスダイオードなど)では、井戸層がアンドープで、実質的にn側不純物を含有しないことで、井戸層でのキャリアの再結合が促進され、高い効率での発光再結合が実現され、逆にn側不純物が井戸層にドープされると、井戸層でのキャリア濃度が高いため、かえって発光再結合の確率が減少し、一定出力下で駆動電流、駆動電流の上昇を招く悪循環が発生し、素子の信頼性(素子寿命)が大幅に低下する傾向にある。このため、このような高出力の素子では、井戸層のn側不純物濃度を、少なくとも1×1018/cm3以下にすることであり、好ましくはアンドープ若しくは実質的にn側不純物を含有しない濃度とすることで、高出力で安定した駆動が可能な窒化物半導体素子が得られる。また、井戸層にn側不純物をドープしたレーザ素子では、レーザ光のピーク波長のスペクトル幅が広がる傾向にあるため、好ましくなく1×1018/cm3、好ましくは1×1017/cm3以下とすることである。
【0038】
(障壁層)
本発明において、障壁層の組成としては、特に限定されないが、井戸層との間にバンドギャップエネルギー差が設けられる、井戸層よりもバンドギャップエネルギーが大きくなる、ように、井戸層よりIn混晶比の低いInを含む窒化物半導体若しくはGaN、Alを含む窒化物半導体などを用いることができる。具体的な組成としては、InβGa1- βN(0≦β<1,α>β)、GaN、AlγGa1- γN(0<γ≦1)などを用いることができる。ここで、井戸層に接して下地層となる障壁層(下部障壁層)の場合には、Alを含まない窒化物半導体を用いることが好ましい。これは、Inを含む窒化物半導体からなる井戸層をAlGaNなどのAlを含む窒化物半導体の上に直接成長させると、結晶性が低下する傾向にあり、井戸層の機能が悪化する傾向にあるためである。
【0039】
また、障壁層には、p側不純物、n側不純物がドープされていても、ノンドープであっても良いが、好ましくはn側不純物がドープされているかノンドープ若しくはアンドープとされていることである。この時、障壁層中のn側不純物をドープする場合にはその濃度として、少なくとも5×1016/cm3以上ドープされていることである。具体的には、例えばLEDである場合には、5×1016/cm3以上2×1018/cm3以下の範囲でn側不純物を有することであり、また、より高出力のLED及び高出力のLDでは、5×1017/cm3以上1×1020/cm3以下の範囲、好ましくは1×1018/cm3以上5×1019/cm3以下の範囲でドープされていることが好ましく、このように高濃度でドープする場合には、井戸層をn側不純物を実質的に含まないか、アンドープで成長させることが好ましい。
【0040】
一方で、図3、5〜8に示すように、活性層内で、最も外側で、最もp型層13側に位置する障壁層2cは、好ましくはn側不純物を実質的に含まないようにすることで、p型層13からのキャリアの注入が良好となり、素子寿命が向上する傾向にある。これは、最もp側の障壁層2cは、p型層に接して設けられ、p型層からのキャリアの注入口となり、n側不純物を有する場合には、キャリアの注入を妨げていると考えられ、n側不純物を実質的に含まないことで、p型層13からのキャリアがより深部の、p型層から遠くの、井戸層にまで、安定して効率的にキャリアが注入されるためと考えられる。これは、特に、大電流で、多量のキャリアを注入するような、大電流駆動で高出力のLD、LEDなどにおいて、顕著にその素子寿命の向上効果が得られる傾向にある。この時、実質的にn側不純物を含まないとは、最もp側の障壁層2cのn側不純物濃度が、5×1016/cm3未満となるようにすることである。また、この最もp側の障壁層2cは、好ましくは、活性層内で最も外側に形成されることが好ましいが、前記効果は小さくなるものの最も外側にでない場合、例えば・・・井戸層/障壁層/井戸層/p型層13の順に積層された構造、であっても、その効果は期待できる。この最もp側の障壁層2cの位置としては、好ましくは活性層内で最も外側に配置されること、更に好ましくは、後述するp側電子閉込め層に接して設けられることで、電子の閉込めと、p型層からのキャリアの注入が更に効率的なものとなる。さらにまた、最もp側の障壁層2cが、p側不純物を有することで、更に深部の井戸層、p型層13から遠くに位置する井戸層、に対してもp型層13からのキャリアが効率的に注入され、さらに素子寿命が向上する傾向にあるため、n側不純物を実質的に含まず且つp側不純物を含む障壁層とすることが好ましい。この時、p側不純物量としては、5×1016/cm3以上1×1020/cm3以下の範囲、好ましくは、5×1016/cm3以上1×1018/cm3以下の範囲である。これは、1×1020/cm3以上とp側不純物を多くしても、キャリア濃度は殆ど変化しないため、不純物を含有することによる結晶性の悪化、不純物による光の散乱作用による損失が大きくなり、かえって活性層における発光効率を低下させる。更に、1×1018/cm3以下であると、上記不純物の増加による発光効率の低下を低く抑え、なおかつ活性層内へのp型層からのキャリア濃度を安定して高く保つことが可能となる。加えて、p側不純物の下限としては、僅かながらでもp側不純物を有することが好ましく、これは不純物が低濃度である場合には、高濃度である場合に比較して高い確率で、p側不純物がキャリアとして機能するものとなる傾向にあるためである。
【0041】
障壁層の膜厚としては、特に限定されず500Å以下、より具体的には井戸層と同様に10Å以上300Å以下の範囲が適用できる。
【0042】
(導波路構造)
本発明の窒化物半導体素子において、素子構造としては、活性層を、p側窒化物半導体層、n側窒化物半導体層内のn側クラッド層とp側クラッド層とで挟み込む構造を少なくとも有するものとなる。このとき、活性層には、Inを含む窒化物半導体を用いることが好ましく、さらに、活性層内で、波長440nm以上の発光が得られるIn混晶比とすることが好ましい。また、クラッド層と活性層との間に、活性層を挟む光ガイド層を設けても良い。ここで、p側クラッド層とn側クラッド層とで挟まれる領域を、導波路と呼ぶ。
【0043】
ここで、n側クラッド層、p側クラッド層としては、Alを含む窒化物半導体が好ましく用いられ、このことにより、導波路と両クラッド層との間で、屈折率差を大きくとることができる。このとき、クラッド層の窒化物半導体には、Inを含まないことが好ましく、なぜなら、Inを含む窒化物半導体は、Inを含まない場合に比べて、結晶性が悪化する傾向にあり、特に、活性層の上にp側クラッド層を有する構造では、そのp側クラッド層にInを含む窒化物半導体を用いると、結晶性の悪化が大きく、素子特性を大きく悪化させるものとなる。このとき、クラッド層に用いる窒化物半導体として具体的には、AlbGa1-bN(0<b<1)が好ましく用いられる。
【0044】
本発明において、図2に示す光ガイド層のように、クラッド層と活性層との間の層が、導波路の形成において、重要なものとなる。これは、導波路内に光を閉じ込めるためには、導波路に比べて相対的にクラッド層の屈折率を下げて、屈折率差を大きくするか、導波路内の屈折率を大きくすることであるが、活性層からの光の波長が長くなると、困難な問題が発生する。それは、AlGaNとInGaNとの屈折率差では、波長が短い領域、例えば400nm付近で、大きな屈折率差を有しているが、波長が長くなるに従って、その屈折率差が小さくなるからである。このため、クラッド層に用いられる窒化物半導体のAl混晶比を大きくして、クラッド層の屈折率を小さくするか、若しくは光ガイド層にInを含む窒化物半導体を用いて、導波路内の屈折率を小さくして、導波路とクラッド層との屈折率差を大きくすることが必要になる。しかしながら、クラッド層のAl混晶比を大きくすると、結晶性の悪化が大きく、またクラックなどの発生もあり、リーク電流の原因になるなど、素子特性を悪化させるため、クラッド層のように、厚膜で高いAl混晶比の窒化物半導体を素子構造内に設けることが困難である。さらに、活性層を除く導波路内の窒化物半導体層、例えば光ガイド層、に、Inを含む窒化物半導体を用いて、導波路の屈折率を大きくする構造では、Inを含む窒化物半導体による光の吸収が起こり、このため、導波路内で光の損失が発生し、閾値電流の増大など素子特性の悪化が起こる。また、上述したように、p側窒化物半導体として、例えば、図2に示すp側光ガイド層に、Inを含む窒化物半導体を用いると、p側不純物として好ましく用いられるMgを含むことでの結晶性の悪化が大きく、結果として素子特性を悪化させる。
【0045】
本発明では、両クラッド層に挟まれた導波路として、活性層を挟む第1の窒化物半導体層、第2の窒化物半導体層を有することで、長波長における導波路、及び結晶性の問題を解決している。すなわち、n側クラッド層と活性層との間に、Inを含む窒化物半導体からなる第1の窒化物半導体層を設けることで、導波路内の屈折率をクラッド層に比して、相対的に大きくし、一方で、p側クラッド層と活性層との間に、Inを含まない(In混晶比が0の)窒化物半導体からなる第2の窒化物半導体層を設けて、p型層側の結晶性悪化の問題を解決した構造を有するものである。このため、導波路内は、Inを含む第1の窒化物半導体層とInを含まない第2の窒化物半導体層とで活性層を挟む構造で、組成が非対称な構造を有している。
【0046】
従来、活性層の発光波長が長波長になる導波路構造としては、上述した長波長域におけるInGaNとAlGaNとの屈折率差の低下の問題と、Al高混晶による結晶性の悪化の問題から、導波路内にInGaNなどのInを含む窒化物半導体を光ガイド層に用いた構造、例えばInGaN単一膜、InGaN/GaN多層膜(超格子層)などが考えられていた。しかしながら、p側光ガイド層をInGaN/GaNの超格子多層膜として結晶性の悪化を低く抑えてもなお素子特性に影響を及ぼさない程度までの結晶性を得ることが困難であり、また、上述したInによる光の損失も素子特性悪化の大きな原因となる。これは、活性層の発光波長が長くなるほど、前記InGaNとAlGaNとの屈折率差が小さくなり、導波路内の屈折率を大きくするために光ガイド層などに用いる窒化物半導体のIn混晶比を大きくしなければならないが、In混晶比が大きくなれば結晶性、光の損失などによる素子特性の悪化も大きくなることにある。
【0047】
しかしながら、本発明では、導波路内において、n側クラッド層側にInを含む第1の窒化物半導体層を用いて導波路全体の屈折率をクラッド層に比して大きくし、クラッド層との屈折率差を大きくし、p側クラッド層側に第2の窒化物半導体層を設けることで、Inを含む窒化物半導体による結晶性の悪化と、光の損失を回避し、素子特性に優れる窒化物半導体素子が得られるものである。以下、各層について、説明する。
【0048】
(第1の窒化物半導体層)
本発明における第1の窒化物半導体層は、導波路内において、活性層とn側クラッド層との間に配置され、Inを含む窒化物半導体からなるものである。ここで、第1の窒化物半導体層の組成としては、好ましくは、Alを含まない窒化物半導体とすることであり、これにより、Alを含む窒化物半導体を用いたクラッド層との屈折率差を大きくすること、すなわち、クラッド層とそれに挟まれた導波路において、導波路内を相対的に屈折率を大きくすることが可能となり、またInzGa1-zN(0<z≦1)で表される窒化物半導体を形成することで、結晶性も良い第1の窒化物半導体層を得ることができる。また、第1の窒化物半導体層と活性層若しくはn側クラッド層との間に、別の層を設けても良く、設けなくても良く、すなわち、第1の窒化物半導体層を活性層若しくはn側クラッド層、又は両方に接して設けても良く、どちらか一方若しくは両方に離れて設けても良い。また、第1の窒化物半導体層を、それとは組成の異なる層と交互に積層するなどして、複数積層した多層膜構造を用いても良い。本発明の第1の窒化物半導体層は、活性層とn側クラッド層との間にあって、導波路内にあることから、光ガイド層として機能する一方、Inを含むことで導波路全体の屈折率を大きくして、導波路内への光の閉込めに寄与することから、p型層側の第2の窒化物半導体層に比して、第2の光閉込め層としても機能していると考えられる。
【0049】
また、第1の窒化物半導体層のIn混晶比zは、活性層中のInを含む窒化物半導体のIn混晶比、若しくは量子井戸構造の活性層の場合には井戸層のIn混晶比、をwとすると、好ましくはz≦wとすることであり、更に好ましくはz<wとすることである。例えば、図5、6などに示すように、活性層12中の井戸層1の混晶比wに比べて、第1の窒化物半導体層31のIn混晶比zを、z≦wとなるようにすることで、図に示すように、段階的なバンドギャップエネルギー構造を形成でき、導波路内の活性層へのキャリアの効率的な注入、特にn側層11側からのキャリアの注入に寄与するものとなる。この時、z<wであることで、井戸層内のInを含む窒化物半導体層、若しくは井戸層、と第1の窒化物半導体層との間に、大きなバッドギャップエネルギー差を設けることができ、前記キャリアの注入効率を向上させることができる。更に、第1の窒化物半導体層31が活性層12に隣接して設けられ、活性層中で最も外側で、最もn側層11側に配置され、第1の窒化物半導体層31に隣接する障壁層2aが設けられる場合には、第1の窒化物半導体層31のIn混晶比zは、この障壁層2aのIn混晶比vに比べて、z≦vとなるようにすると更に好ましく、更にz<vとなるようにすると好ましい。これは、図5,6に示すように、z≦vであると活性層12とn側層11との接合部付近で、n側層11から活性層12に近づくに従って段階的に、バンドギャップエネルギーが小さくなる構造とでき、n側層11から活性層へのキャリアの注入を効率的にし、図5に示すように更に段階的なバンドギャップ構造とすることができ、更に効果的なものとなるからである。
【0050】
また、一方で、図10に示すように、第1の窒化物半導体層のIn混晶比zを、障壁層のIn混晶比vとほぼ同じか、それよりも大きくすると(z≧v)、好ましくは大きくすること(z>v)であり、バンドギャップエネルギーが障壁層よりも小さくなるが、In混晶比が大きく、障壁層(n側障壁層)よりも大きな膜厚で形成される第1の窒化物半導体層により、導波路の屈折率が大きくなり、光閉込めのクラッド層との屈折率差を大きくすることができる。この場合、n側層からのキャリアが注入される際に、第1の窒化物半導体層とn側障壁層との間に障壁が設けられる構造となるが、バイアス地においては、その障壁が小さくなり、その影響は少なくなる。一方で、n側障壁層2aが、主にp型層からのキャリアの閉込め層となるが、窒化物半導体ではホールの拡散長が小さいため、障壁が小さく、膜厚が薄くなることによる影響は比較的低く抑えられる。また、光ガイド層と第1の窒化物半導体層とのIn混晶比については、図8に示すように、光ガイド層よりもバンドギャップエネルギーを小さくして、In混晶比を大きくすることが好ましい。これは、第1の窒化物半導体層が屈折率を高めるために設け、導波路構造の中心部に当たる活性層近傍の屈折率を高めることが好ましいことから、In混晶比を光ガイド層よりも大きくした第1の窒化物半導体層を、光ガイド層よりも活性層の近くに設けることで、より優れた導波路構造を形成することができる。ここで、本発明において、クラッド層、光ガイド層が多層膜で構成される場合、特に超格子多層膜で構成される場合において、各層のIn混晶比、Al混晶比、バンドギャップエネルギーは、平均組成、平均エネルギーで、他の層と比較する者であり、この平均組成、平均エネルギーは、多層膜を構成する第1の層(第3の層)、第2の層(第4の層)の各膜厚で、Al、In組成、エネルギーを、加重平均した値となる。例えば、光ガイド層が、In混晶比y1、膜厚dの第3の層、In混晶比y2、膜厚dの第4の層とが交互に積層された超格子構造にあっては、Inの平均混晶比yは、y=[(d×y1)+(d×y2)]/(d+d)で求められる。
【0051】
また、図5,6,10に示すように、クラッド層25,30と活性層12との間に、光ガイド層26,29が設けられ、さらにn側層11側にあっては、光ガイド層26と活性層との第1の窒化物半導体層を有する場合、図10に示すように、光ガイド層のIn混晶比若しくは平均組成よりも、活性層内で外側に配置されたn側障壁層2aのIn組成zを大きくすることが好ましい。これは、上述した第1の窒化物半導体層による屈折率増加の機能を好適に引き出すものであり、具体的には、光ガイド層26よりも活性層側に設けられる第1の窒化物半導体層のIn混晶比を大きくし、活性層近傍の屈折率を高めることで、導波路中央付近に位置する活性層を中心に屈折率の大きな層が設けられることで、良好な光分布を実現できる。一方、p型層側にあっては、p側障壁層がこの役割を担い、すなわち、p側障壁層2cのIn組成比を、p型層の光ガイド層29のIn組成比より大きくすることで、第1の窒化物半導体層と同様な機能が得られる。
【0052】
ここで、第1の窒化物半導体層の位置における前記各形態について言及すると、活性層及びn側クラッド層に接して第1の窒化物半導体層を設ける形態では、Inを含む窒化物半導体を結晶性良く厚膜で形成することが困難な傾向にあることから、導波路として十分な膜厚で形成すると結晶性の悪化による素子特性の悪化が現れ、逆に結晶性が素子特性を悪化しない程度の膜厚で形成すると、導波路として機能するのに不十分な膜厚となり、クラッド層外への光の漏れによる損失により素子特性の悪化が起こる傾向にある。第1の窒化物半導体層を活性層とn側クラッド層との間に、複数積層した多層膜とする場合には、例えば超格子構造として、Inを含まない窒化物半導体と共に多数積層して、結晶性の悪化を抑えて厚膜を形成することができる。例えば、InGaN/GaNの多層膜層、若しくは、n側クラッド層から活性層に近づくにつれてIn混晶比が大きくなるように組成傾斜させた構造とすることができる。一方で、導波路の屈折率を単一膜と同等とするには、多層膜の膜厚が厚くなり、その多層膜内において、Inを含む第1の窒化物半導体層が散在する構造となることから、単一膜よりも厚膜の多層膜でもってInによる光の損失が発生することから、単一膜よりもその損失が大きくなる傾向にある。また、第1の窒化物半導体層の位置としては、具体的にはn側クラッド層と活性層との間であり、n側クラッド層と活性層との間に光ガイド層が設けられる場合には、図5,6,10に示すように光ガイド層と活性層との間、又は図6,7に示すように光ガイド層内部、若しくは光ガイド層内部に第1の窒化物半導体層を設けることができる。本発明において上記様々な形態を適用しうるが、好ましくは活性層に近づけて、更に好ましくは活性層に接して配置することが良い傾向にある。これは、詳しいことは不明であるが、図5,6等に示すように、n側クラッド層から活性層に至る領域で、バンドギャップ構造を段階的なものとし、n側層側11からのキャリアの注入を促進させることが影響していると考えられる。
【0053】
第1の窒化物半導体層の膜厚としては、特に限定されるものではないが、上述したようにInによる光の損失の発生を考慮して、少なくとも1500Å以下とすることであり、好ましくは300Å以上とすることで導波路全体の屈折率を上昇させ、n側クラッド層との間に大きな屈折率差を形成することができ、損失が少なく、閾値電流を低減させた優れた導波路が形成される。この時、後述するように、導波路としての機能は、クラッド層と活性層とで挟まれる領域の膜厚の総和に作用されることから、n側クラッド層と活性層とで挟まれる領域の膜厚の総和を考慮して、第1の窒化物半導体層を決定すると良い。また、図5,6などに示すように、第1の窒化物半導体層が最もn側層側の障壁層2aに隣接して配置される場合には、第1の窒化物半導体層は、障壁層として寄与すると考えられることから、この場合の第1の窒化物半導体層の膜厚は、障壁層2aとの膜厚の総和が300Å以上となるようにすることで、障壁層、光の閉込めとして良好に寄与するものとなり好ましく、この時の膜厚の上限としては前記の1500Å以下とすることが好ましい。
【0054】
第1の窒化物半導体層には、n側不純物がドープされていても、ドープされていなくても良いが、好ましくはn側不純物をドープして、良好なn側導電性を有することである。この時、第1の窒化物半導体層は、Inを含む窒化物半導体であるため、上述したようにp側不純物ほどではないものの、n側不純物をドープすることによる結晶性の悪化があるため、好ましくはドープ量を1×1019/cm3以下の範囲とすることで、Inを含む窒化物半導体における結晶性の悪化を抑制できる。
【0055】
(第2の窒化物半導体層)
本発明において、第2の窒化物半導体層としては、In混晶比が0の窒化物半導体を用いることであり、この第2の窒化物半導体層をp側クラッド層と活性層との間に設けることで、結晶性に優れ、導波路として機能する層となる。これは、前記第1の窒化物半導体層とこの第2の窒化物半導体層とで活性層を挟む構造を導波路内に設けること、すなわちn側層側の第1の窒化物半導体層とp型層側の第2の窒化物半導体層とし、両方の層を活性層を介して対向して配置し、組成が異なることにより、導波路内で異なる機能を有する非対称な導波路構造とするものである。第2の窒化物半導体層に用いられる窒化物半導体のIn混晶比uを、u=0とすることで、結晶性に優れた層を形成でき、結晶性悪化によるVf、閾値電流の上昇を回避できる。これは、Inを含む窒化物半導体は、Inを含まないものに比べて、結晶性が悪化する傾向にあるからである。また、第2の窒化物半導体層は、第1の窒化物半導体層と異なり、p側不純物をドープしてp側導電性を持たせる必要があり、不純物ドープによる結晶性の悪化が起こり、更にp側不純物として好ましく用いられるMgでは大幅な結晶性の悪化が起こり、これは、Inを含む窒化物半導体において、Inを含まないものに比べて、その結晶性の悪化は顕著なものである。
【0056】
また、図2〜4に示すように、通常、LED、LDなどの窒化物半導体素子では、基板上に、n側層11/活性層12/p型層13の順に積層された構造が多く採用されているが、このような場合には、Inを含む窒化物半導体を用いた活性層12の下部に配置されたn側層11と、上部に配置されたp型層13とでは、通常成長条件が異なり、活性層よりも上部に配置されたp型層13では、通常活性層中のInが分解するなどして結晶性を悪化させないような温度条件で成長させる必要があり、n側層11はそのような制限がない。このことから、低い温度で成長させるp型層13では、良好な結晶成長条件で、成長させることが困難な場合がある。
【0057】
具体的には、図2に示すように、n側層11,p型層13との間に活性層11が設けられた構造を、基板(図示せず)の上などに有し、本発明の基本的な構成として、n側層11には、n側クラッド層26が設けられ、p型層13には、p側クラッド層30が設けられた構造がある。更に、各導電型層には、これらクラッド層26,30よりも活性層から離れた位置に、n側コンタクト層25、p側コンタクト層が形成し、電極をその表面に設けても良く、基板の上に、n側層11、活性層12、p型層13が順に積層された構造において、基板のn側層に対向する面側に電極を設けて、n側コンタクト層25を電荷注入層として、n側クラッド層26よりも高濃度でn側不純物ドープをドープした層を設けることもできる。また、これらクラッド層がコンタクト層を兼ねる構成であってもよい。このような基本的な構造において、図3に示すように、第1の窒化物半導体層31、第2の窒化物半導体層32を、それぞれn側クラッド層26、p側クラッド層30と活性層12との間に、設ける構造となる。また、図3,4に示すように、光ガイド層26、29が、活性層とクラッド層との間に設けられる場合には、光ガイド層と活性層との間に、第1、2の窒化物半導体層が設けられても良く、光ガイド層が、第1の窒化物半導体層若しくは、第2の窒化物半導体層を有する構造とすることもできる。このため、光ガイド層が、多層膜構造を有する場合には、第1の窒化物半導体層、若しくは第2の窒化物半導体層を有する多層膜構造とできる。図13は、バイアス時におけるエネルギーバンド図41を模式的に示すもので、内部障壁層3,3の異なる形態を説明するものであり、図13(a)は、内部障壁層3が、n側障壁層2a、p側障壁層2cよりもバンドギャップエネルギーが大きく、In混晶比が小さい例を示すものであり、図13(b)は、内部障壁層3が、n側障壁層2a、p側障壁層2cよりもバンドギャップエネルギーが小さく、In混晶比が大きい例を示すものである。ここで、内部障壁層は、n側障壁層2a、p側障壁層2bとの間に設けられた障壁層で、井戸層と井戸層とに挟まれた障壁層を内部障壁層とする者であり、図5〜8、10における障壁層2bも内部障壁層3となる。
【0058】
第2の窒化物半導体層の組成としては、Inを含まない窒化物半導体をもちいることであり、好ましくはAltGa1-tN(0≦t<1)で表される窒化物半導体を用いることである。また、この時、p側クラッド層との屈折率差を設けるため、p側クラッド層のAl混晶比より第2の窒化物半導体のAl混晶比tを小さくすることが好ましい。更にまた、クラッド層と導波路との屈折率差を考慮して、t≦0.5として、低いAl混晶比で形成するか、導波路内の屈折率を最大限に大きくするために、t=0のGaNを用いることが最も好ましい。また、第2の窒化物半導体層は、p側不純物を有することが好ましく、p側不純物を含有して、p側導電性を有することで良好な導電性のp型層として機能させることができる。この時、p側不純物のドープ量としては特に限定されないが、Inを含まない窒化物半導体であってもInを含む場合に比べて結晶性の悪化は小さいものの、ドープ量が小さいほど結晶性が良好になる傾向にあるため、好ましくは1×1018/cm3以下の範囲とすることで良好な結晶性の第2の窒化物半導体層が得られる。後述する実施例では、第2の窒化物半導体層をアンドープで成長させて、隣接層からの拡散によりp側不純物がドープされるが、特にこの方法に限定されず、他の層についても同様であるが、成長後の拡散でも、ドープしながら成長させる方法でも、どちらでも良い。
【0059】
第2の窒化物半導体層は、単一膜で形成されても良く、多層膜で形成されても良い。多層膜としては、AlGaN/GaNを複数積層した多層膜でも良く、Al混晶比を活性層から離れるに従って大きくするような組成傾斜させた層であっても良い。
【0060】
第2の窒化物半導体層をp側光ガイド層に用いる場合には、第2の窒化物半導体層だけでp型光ガイド層を構成しても良く、第2の窒化物半導体層とは組成の異なる層と組み合わせて構成しても良い。この時、好ましくはInを含まない第2の窒化物半導体層だけで構成すると、導波路内のInによる光の損失が回避でき好ましい。この時、p側光ガイド層の膜厚としては、特に限定されるものではないが、少なくとも200Å以上の膜厚で形成することで、導波路として良好で、損失の少ない光の導波が実現され、閾値電流の低下につながり、この時膜厚の上限としては4000Å以下とすることで、閾値電流、Vfの上昇を抑えることができ、好ましくは500Å以上2000Å以下とすることで、閾値電流、Vfを低くし、光の導波に適した膜厚の導波路が形成できる。この膜厚については、クラッド層と活性層に挟まれる領域のn側層側、すなわちn側クラッド層と活性層とで挟まれる領域の膜厚にも適用できる。具体的には、n側クラッド層と活性層との間に、第1の窒化物半導体層を有する場合にはその膜厚、第1の窒化物半導体層とn側光ガイド層などの別の層を有する場合にはそれらの層の膜厚の総和について、適用できる。このように、クラッド層と活性層に挟まれた領域の膜厚を、p型層側、n側層側共にほぼ同等な膜厚として膜厚が活性層を介して対称な導波路構造としても良く、両者の膜厚を異ならしめて、膜厚が非対称な導波路構造としても良く、得られる窒化物半導体素子の特性を考慮して適宜選択すればよい。
【0061】
また、本発明の別の態様によっては、第2の窒化物半導体層のIn混晶比uが、第1の窒化物半導体層のIn混晶比zより小さくする構成(u<z)では、p型層側に、Inを含む窒化物半導体が設けられることによる結晶性低下を抑えて、p型層側にも導波路の屈折率を大きくする層を形成でき、導波路の光分布が、n側層側にシフトすることを抑えた構造とできる。
【0062】
(p側電子閉込め層[キャリア閉込め層])
本発明において、p側窒化物半導体層として、特にレーザ素子、端面発光素子において、p側電子閉込め層を設けることが好ましい。このp側電子閉込め層としては、Alを含む窒化物半導体を用いるものであり、具体的にはAlγGa1- γN(0<γ<1)を用いる。この時、Al混晶比γとしては、電子閉込め層として機能するように、活性層より十分に大きなバンドギャップエネルギーを有する(オフセットをとる)必要があり、少なくとも0.1≦γ<1の範囲とすることであり、好ましくは0.2≦a<0.5の範囲とすることである。なぜなら、γが0.1以下であるとレーザ素子において、十分な電子閉込め層として機能せず、0.2以上であると十分に電子閉込め(キャリアの閉込め)がなされ、キャリアのオーバーフローを抑え、加えて0.5以下であるとクラックの発生を低く抑えて成長させることができ、更に好ましくはγを0.35以下とすることで良好な結晶性で成長できる。この時、Al混晶比は、p側クラッド層よりも大きくすることが好ましく、これはキャリアの閉込めには光の閉込めとなるクラッド層より高い混晶比の窒化物半導体が必要となるからである。このp側電子閉込め層は、本発明の窒化物半導体素子に用いることができ、特にレーザ素子のように、大電流で駆動させ、多量のキャリアを活性層内に注入する場合において、p側電子閉込め層を有していない場合に比べて、効果的なキャリアの閉込めを可能とし、レーザ素子だけでなく、高出力のLEDにも用いることができる。また、キャリア閉込め層は、p側だけでなく、n型層内のn側にも設けることができる。
【0063】
本発明のp側電子閉込め層の膜厚としては、少なくとも1000Å以下とすることであり、好ましくは400Å以下とすることである。これは、Alを含む窒化物半導体は、他の窒化物半導体(Alを含まない)に比べて、バルク抵抗が大きく、更にp側電子閉込め層のAl混晶比は上述したように高く設定されるため、1000Åを超えて素子内に設けると、極めて高抵抗な層となり、順方向電圧Vfの大幅な増加を招くこととなるためであり、400Å以下であるとVfの上昇を低く抑えることが可能で、更に好ましくは200Å以下とすることで更に低く抑えることが可能となる。ここで、p側電子閉込め層の膜厚の下限としては、少なくとも10Å以上、好ましくは50Å以上とすることで、電子閉込めとして良好に機能する。
【0064】
また、レーザ素子において、このp側電子閉込め層は、図3,4に示すように、電子閉込め層として機能させるため、活性層とクラッド層との間に設けるものであり、更に第2の窒化物半導体層と活性層との間に設けることである。また、窒化物半導体素子が導波路構造を有し、クラッド層と活性層との間に光ガイド層を有する場合において、p側電子閉込め層は、光ガイド層29と活性層27との間に設けることで、活性層に近接してp側電子閉込め層が設けられた構造とできるため好適なキャリア閉込め構造を実現でき、また別の形態としては、光ガイド層内部にp側電子閉込め層を設ける構成とすることもでき、これによりp側電子閉込め層と活性層とが離間した構造とでき、p側電子閉込め層が活性層に近接することによる内部応力、圧電界、発熱作用を回避でき好ましい。この時、活性層とp側電子閉込め層との距離は、少なくとも1000Å以下とすることでキャリアの閉込めとして機能し、好ましくは500Å以下とすることで良好なキャリアの閉込めが可能となる。すなわち、p側電子閉込め層は活性層に近いほどキャリアの閉込めが効果的に機能し、その上レーザ素子、発光素子において活性層とp側電子閉込め層との間には、殆どの場合、特に他の層を必要とすることがないため、通常は活性層に接してp側電子閉込め層を設けうることが最も好ましい。この時、量子井戸構造の活性層内で最もp側窒化物半導体層側に位置する層と、p側電子閉込め層と、を接して設けると結晶性が悪化する場合に、それを避けるため結晶成長におけるバッファ層を両者の間に設けることも可能である。例えば、活性層の最もp側の層をInGaN、AlGaNのp側電子閉込め層との間に、GaNからなるバッファ層を設けること、又はp側電子閉込め層よりも低いAl混晶比のAlを含む窒化物半導体からなるバッファ層、などがある。
【0065】
ここで、p側電子閉込め層として、具体的には、p側電子閉込め層が活性層に近いほどしきい値電流密度を低下させるが、近くなるほど素子寿命が低下させるものとなる。これは、上述したように、p側電子閉込め層が他の層に比べて極めて高い抵抗を有する層であるため、素子駆動時において発熱量の大きなものとなり、すなわち素子内において高温を呈しているものと考えられ、これが熱に弱い活性層、井戸層に悪影響を及ぼし素子寿命を大きく低下させているものと考えられる。一方で、上述したように、キャリアの閉込めを担うp側電子閉込め層は、活性層、特に井戸層に近づくほどキャリアの閉込めが効果的になるため、活性層から離れるとその効果が弱まる。このため、p側電子閉込め層は、キャリア閉込めとして好適に機能するように、活性層よりもバンドギャップエネルギーを大きく、好ましくは活性層内の少なくとも1つの障壁層よりもバンドギャップエネルギーより大きくし、更に好ましくは活性層内の全ての障壁層よりもバンドギャップエネルギーが大きくなるような組成が選択される。また、導波路構造を有する端面発光素子、レーザ素子においては、p側電子閉込め層を、光ガイド層の一部、好ましくは全部よりもバンドギャップエネルギーを大きくすることがガイド層によるキャリア閉込めが不十分な場合に、ガイド層よりも活性層の近くに配置されたp側電子閉込め層により好適な活性層内へのキャリア閉込めが実現でき好ましく、さらには、光閉込めのクラッド層の一部、若しくは全部よりもバンドギャップエネルギーを大きくすると大きな障壁が、活性層近傍に配置された構造となり好適なキャリア閉込めを実現し、また、p側電子閉込め層の膜厚を小さくしてもその機能を維持することが可能となり好ましい。
【0066】
従って、素子寿命の低下を抑えるために、図5,6において、活性層内で最もp側電子閉込め層に近い井戸層1bからp側電子閉込め層28の距離を少なくとも100Å以上とすることであり、好ましくは120Å以上とすることであり、更に好ましくは140Å以上とすることである。なぜなら、井戸層とp側電子閉込め層との距離が100Åより短いと、素子寿命が急激に低下する傾向が観られるためであり、120Å以上であると素子寿命の大幅な向上が可能であり、150Å以上であると更に素子寿命が向上する傾向にあるが、しきい値電流密度は徐々に高くなる傾向が観られ始める。更に、その距離が200Åより大きくなると、しきい値電流密度の明らかな上昇傾向が観られ、400Åより大きいとしきい値電流密度の急激な上昇が起こる傾向にあるため、上記距離の上限としては、400Å以下、好ましくは200Å以下とすることである。これは、p側電子閉込め層が井戸層から離れることで、キャリア閉込めの効率が低下し、これが主な原因となってしきい値電流密度が上昇し、また発光効率の低下を招くものと考えられる。
【0067】
本発明のp側電子閉込め層には、通常p側不純物がドープされ、レーザ素子、ハイパワーLEDなどの大電流で駆動させる場合には、キャリアの移動度を高めるため、高濃度でドープする。具体的なドープ量としては、少なくとも5×1016/cm3以上ドープすることで、好ましくは1×1018/cm3以上ドープすることであり、前記大電流駆動の素子にあっては、1×1018/cm3以上、好ましくは1×1019/cm3以上ドープすることである。p側不純物量の上限は特に限定されないが、1×1021/cm3以下とすることである。但し、p側不純物量が多くなると、バルク抵抗が大きくなる傾向にあり、結果としてVfが上昇することになるため、これを回避する場合に好ましくは、必要なキャリア移動度を確保しうる最低限のp側不純物濃度とすることである。また、p側電子閉込め層を低濃度でドープすること、例えば、ガイド層、クラッド層などのp側電子閉込め層近傍の層よりも低濃度でドープすることも可能であり、またノンドープ層とすることもできる。
【0068】
本発明の窒化物半導体素子では、実施例に示すように、ストライプ状の導波路として、リッジを設けた後、リッジ側面に埋込層となる絶縁膜を形成する。この時、埋込層としては、ここで、第2の保護膜の材料としてはSiO2以外の材料、好ましくはTi、V、Zr、Nb、Hf、Taよりなる群から選択された少なくとも一種の元素を含む酸化物、SiN、BN、SiC、AlNの内の少なくとも一種で形成することが望ましく、その中でもZr、Hfの酸化物、BN、SiCを用いることが特に好ましい。更に、埋込層として、半絶縁性、i型の窒化物半導体、リッジ部とは逆の導電型、実施例においてはn側の窒化物半導体、電流狭窄層とするにはAlGaNなどのAlを含む窒化物半導体、等を用いることができる。また、エッチングなどによりリッジを設けずに、B、Alなどのイオンを注入して、非注入領域をストライプ状として、電流が流れる領域とする構造をとることもできる。この時用いられる窒化物半導体としては、InxAl1-yGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y=1)で表される窒化物半導体を好ましく用いることができる。
【0069】
また、リッジ幅としては、1μm以上3μm以下、好ましくは1.5μm以上2μm以下とすることで、光ディスクシステムの光源として、優れたスポット形状、ビーム形状のレーザ光が得られる。
【0070】
ここで、各図について以下に説明する。図2、3は、本発明の一実施形態に係る模式断面図であり、特にレーザ素子構造、発光素子構造において、活性層12がn側層11とp型層13とで挟み込まれる構造を示すものである。図2は、活性層12が上部クラッド層30と下部クラッド層25で挟まれ、活性層12と上部クラッド層30との間に電子閉込め層であるp側電子閉込め層28を有する素子構造を説明するものである。図3,4は、本発明の特徴として、上部、下部クラッド層に挟まれた領域の導波路内に、前記第1の窒化物半導体層、第2の窒化物半導体層が設けられ、第1の窒化物半導体層は、n側クラッド層内(図示せず)、n側光ガイド層26と活性層12との間(図3,4に示す)、n側光ガイド層26とn側クラッド層25との間(図示せず)、に設けられ、第2の窒化物半導体層は、p側光ガイド層29に用いられる。また、図3は、活性層12の量子井戸構造について図示するもので、障壁層2a/井戸層1aを一対として繰り返し積層され、最後に障壁層2cが設けられた構造を有している。図5〜8は、本発明の一実施形態における活性層12、上部、下部クラッド層26,30で挟まれる領域の導波路構造、及び活性層周辺についての積層構造20と、その積層構造20の下に、それに対応したエネルギーバンドギャップ21を示すものである。図10についても図5〜8と同様に積層構造20とその積層構造に対応してエネルギーバンド図21を示し、それらに加えて各層におけるAl組成比41、In組成比42の一実施形態を示す模式図が示されている。
【0071】
本発明の窒化物半導体素子における各層のドープ量について、図11を用いて以下説明する。本発明の光ガイド層の不純物ドープについて、図11に、ドープ量変化43として示すように、第1,2の光ガイド層226,229において、不純物ドープ量を、活性層に近づくに従ってドープ量を小さくする、若しくは、活性層から遠い領域に比べて活性層に近い領域のドープ量を小さくすると、導波路、特に光ガイド層内において、光の損失を更に減少させて、良好な光の導波を実現でき、閾値電流密度の低減、駆動電流の低減化を図ることができる。これは、不純物ドープした領域を光が導波すると、不純物により光の吸収が発生しするために光の損失が起こるからである。これに加えて、導波路は上述したように、第1の光ガイド層226と第2の光ガイド層229とで活性層227を挟む構造を少なくとも有しており、さらにそのガイド層の外側若しくは導波路を、ガイド層より屈折率の小さい上部・下部クラッド層225,230とで挟む構造でもって光が導波路内に閉じこめられた構造となり、導波路内の活性層27及び活性層近傍に多くの光が分布するため、その活性層近傍の領域において不純物ドープ量を少なくすることで、光が多く分布する領域での光の損失が減少することとなり、光の損失の少ない導波路となる。具体的には、第1の光ガイド層226、第2の光ガイド層229において、各層の膜厚の半分で領域を区切り活性層に近い領域と遠い領域を考えた場合、活性層に近い領域の導電型不純物濃度を、活性層に遠い領域の不純物濃度よりも小さくすることである。光ガイド層の不純物濃度としては、特に限定されないが、具体的には活性層に近い領域において5×1017/cm以下とすることである。ここで、上記不純物ドープとは、第1の光ガイド層に第1導電型の不純物ドープ、第2の光ガイド層に第2導電型の不純物ドープ、することを指すものである。
【0072】
光ガイド層内でドープ量を変化させる形態としては、具体例として、各光ガイド層内において、活性層に近づくに従ってなだらかに、連続的にドープ量を小さくする形態(43a)、不連続で段階的にドープ量を小さくする形態(43b)、またその段階的なドープ量変化を細かくし、光ガイド層内で部分的にドープ量変化を設ける形態(43c)、のいずれかでも良く、またこれらを組み合わせて用いても良い。好ましくは、光ガイド層内において、活性層側からの距離が、50nm以下の領域を低濃度ドープ領域(226b,229a)、好ましくはアンドープとすることで光の損失低減が可能となり、好ましくは100nm以下の領域を低濃度ドープ領域(226b,229a)とすることで良好な光損失の低減、閾値電流密度、駆動電流の低減が可能となる。この時、光ガイド層の膜厚は、低濃度ドープ領域(226b,229a)を50nm以下の領域とする場合には、50nm以上の膜厚とし、100nm以下の領域とする場合には、100nm以上の膜厚とすることはいうまでもない。この時、上記低濃度ドープ領域(226b,229a)を光ガイド層内に設ける場合、好ましくは、上述した組成傾斜構造の光ガイド層と組み合わせて用いることであり、これは図11に示すように、バンドギャップエネルギーが、活性層に近づくに従って小さくなるバンド構造であることにより、不純部ドープされない領域が活性層近傍に設けられても、キャリアの注入効率の低下を抑えた光ガイド層が形成されるためである。この時、組成傾斜の光ガイド層は、上述したようにGRIN構造が好ましく、また上記多層膜構造で、バンドギャップエネルギーが活性層に近づくに従って小さくなる構造であっても、低濃度ドープ領域の形成に効果がある。ここで、各光ガイド層内において、成長時に不純物ドープしなくても、すなわち低濃度ドープで光ガイド層を成長させても、隣接層から不純物が拡散する場合があり、その場合には低濃度ドープで成長させた上記領域においても、不純物がドープされたものとなる。具体的には、p側不純物として好ましく用いられるMgは、このような拡散現象が起こりやすく、43aは、拡散によりp側電子閉込め層228から隣接層へ不純物が拡散する形態を模式的に示すものであり、高濃度ドープのp側電子閉込め層229に隣接する光ガイド層(229aの領域)、活性層(p側障壁層付近)では、濃度傾斜が発生して、拡散する形態が観測される。また、実施例1で示すように、低濃度ドープでp側光ガイド層を形成しても、隣接層の電子閉込め層とクラッド層からの拡散により、p側不純物がドープされる。このように、拡散により不純物ドープが成される場合には、上述したように活性層に近い領域の不純物濃度を、遠い領域よりも小さくすることである。このようなドープ領域は、少なくとも一方の光ガイド層に設けることが好ましく、更に好ましくは両方の光ガイド層に設けることで光の損失を低減させた導波路となる。なお、図中の51、52は、各光ガイド層におけるドープ量変化を示している。
【0073】
また、上記光ガイド層における層構成、不純物ドープの形態、組成、膜厚などは、第1の光ガイド層、第2の光ガイド層とで同様なものとしても良く、異なるようにしても良い。例えば、第1の光ガイド層を単一膜とし、第2の光ガイド層を多層膜として、両光ガイド層の層構成を異なるようにした形態などがある。
本発明では、クラッド層225,230と、活性層227との間に、クラッド層側に配置された高濃度ドープ領域(226a,229b)と、その高濃度ドープ領域よりも低濃度でドープされ、活性層側に配置された低濃度ドープ領域(226b,229a)とが設けられることで、導波路内における光損失を低減させた構造とできる。更に好ましくは、低濃度ドープ領域(226b,229a)と活性層との間、すなわち、光ガイド層よりも活性層側に、高濃度ドープ層(231,228)を設けることが好ましい。ここで、高濃度ドープ層は、活性層近傍に位置するp側電子閉込め層228、第1の窒化物半導体層231の一部、若しくは全部として設けることができ、高濃度ドープ層231と228のドープ量は、それぞれ、それよりも各クラッド層側に位置する低濃度ドープ領域226b,229aよりも、高濃度でドープされることであり、好ましくは、p型層内の高濃度ドープ層228のドープ量を、p型層内の高濃度ドープ領域229bよりも大きくすることで、高濃度ドープ層において、pn接合部が形成され、p型層側からのキャリアの注入に優れ、不純物ドープ量変化、キャリア濃度変化を設けることができ、好ましい。ここで、図1の225〜230は、図10における積層構造20における各層25〜30に対応している。
【0074】
【実施例】
【0075】
[実施例1]
以下、実施例として、図1に示すようなレーザ素子構造、また図6に示す導波路構造について、窒化物半導体を用いたレーザ素子について、説明する。
【0076】
ここで、本実施例では、GaN基板を用いているが、基板として窒化物半導体と異なる異種基板を用いても良い。異種基板としては、例えば、C面、R面、及びA面のいずれかを主面とするサファイア、スピネル(MgA124のような絶縁性基板、SiC(6H、4H、3Cを含む)、ZnS、ZnO、GaAs、Si、及び窒化物半導体と格子整合する酸化物基板等、窒化物半導体を成長させることが可能で従来から知られており、窒化物半導体と異なる基板材料を用いることができる。好ましい異種基板としては、サファイア、スピネルが挙げられる。また、異種基板は、オフアングルしていてもよく、この場合ステップ状にオフアングルしたものを用いると窒化ガリウムからなる下地層の成長が結晶性よく成長させるため好ましい。更に、異種基板を用いる場合には、異種基板上に素子構造形成前の下地層となる窒化物半導体を成長させた後、異種基板を研磨などの方法により除去して、窒化物半導体の単体基板として素子構造を形成してもよく、また、素子構造形成後に、異種基板を除去する方法でも良い。
【0077】
異種基板を用いる場合には、バッファ層(低温成長層)、窒化物半導体(好ましくはGaN)からなる下地層を介して、素子構造を形成すること、窒化物半導体の成長が良好なものとなる。また、異種基板上に設ける下地層(成長基板)として、その他に、ELOG(Epitaxially Laterally Overgrowth)成長させた窒化物半導体を用いると結晶性が良好な成長基板が得られる。ELOG層の具体例としては、異種基板上に、窒化物半導体層を成長させ、その表面に窒化物半導体の成長が困難な保護膜を設けるなどして形成したマスク領域と、窒化物半導体を成長させる非マスク領域を、ストライプ状に設け、その非マスク領域から窒化物半導体を成長させることで、膜厚方向への成長に加えて、横方向への成長が成されることにより、マスク領域にも窒化物半導体が成長して成膜された層などがある。その他の形態では、異種基板上に成長させた窒化物半導体層に開口部を設け、その開口部側面から横方向への成長がなされて、成膜される層でもよい。
【0078】
(基板101) 基板として、異種基板に成長させた窒化物半導体、本実施例ではGaN、を厚膜(100μm)で成長させた後、異種基板を除去して、80μmのGaNからなる窒化物半導体基板を用いる。基板の詳しい形成方法は、以下の通りである。2インチφ、C面を主面とするサファイアよりなる異種基板をMOVPE反応容器内にセットし、温度を500℃にして、トリメチルガリウム(TMG)、アンモニア(NH3)を用い、GaNよりなるバッファ層を200Åの膜厚で成長させ、その後、温度を上げて、アンドープのGaNを1.5μmの膜厚で成長させて、下地層とする。次に、下地層表面にストライプ状のマスクを複数形成して、マスク開口部(窓部)から窒化物半導体、本実施例ではGaNを選択成長させて、横方向の成長を伴った成長(ELOG)により成膜された窒化物半導体層を、さらに厚膜で成長させて、異種基板、バッファ層、下地層を除去して、窒化物半導体基板を得る。この時、選択成長時のマスクは、SiO2からなり、マスク幅15μm、開口部(窓部)幅5μmとする。
【0079】
(バッファ層102) 窒化物半導体基板の上に、温度を1050℃にして、TMG(トリメチルガリウム)、TMA(トリメチルアルミニウム)、アンモニアを用い、Al0.05Ga0.95Nよりなるバッファ層102を4μmの膜厚で成長させる。この層は、AlGaNのn側コンタクト層と、GaNからなる窒化物半導体基板との間で、バッファ層として機能する。次に、窒化物半導体からなる下地層の上に、素子構造となる各層を積層する。
【0080】
(n側コンタクト層103)
次に得られたバッファ層102上にTMG、TMA、アンモニア、不純物ガスとしてシランガスを用い、1050℃でSiドープしたAl0.05Ga0.95Nよりなるn側コンタクト層103を4μmの膜厚で成長させる。n側コンタクト層、若しくはバッファ層などの下地層に、Alを含む窒化物半導体、具体的にはAlxGa1-xN(0<x≦1)、を用いることで、GaNなどのAlを含まない窒化物半導体に比べて、ELOGを用いたことによる結晶性の悪化、特にピットの発生を抑えて、良好な下地層表面を提供できる傾向にあり、Alを含む窒化物半導体を用いることが好ましい。
【0081】
(クラック防止層104) 次に、TMG、TMI(トリメチルインジウム)、アンモニアを用い、温度を800℃にしてIn0.06Ga0.94Nよりなるクラック防止層104を0.15μmの膜厚で成長させる。なお、このクラック防止層は省略可能である。
【0082】
(n側クラッド層105) 次に、温度を1050℃にして、原料ガスにTMA、TMG及びアンモニアを用い、アンドープのAl0.05Ga0.95NよりなるA層を25Åの膜厚で成長させ、続いて、TMAを止め、不純物ガスとしてシランガスを用い、Siを5×1018/cm3ドープしたGaNよりなるB層を25Åの膜厚で成長させる。そして、この操作をそれぞれ200回繰り返してA層とB層の積層し、総膜厚1μmの多層膜(超格子構造)よりなるn側クラッド層106を成長させる。この時、アンドープAlGaNのAl混晶比としては、0.05以上0.3以下の範囲であれば、十分にクラッド層として機能する屈折率差を設けることができる。
【0083】
(n側光ガイド層106) 次に、同様の温度で、原料ガスにTMG及びアンモニアを用い、アンドープのGaNよりなるn側光ガイド層106を0.1μmの膜厚で成長させる。また、n側不純物をドープしてもよい。
【0084】
(第1の窒化物半導体131) 次に、図6に示すように、温度を800℃にして、原料ガスにTMI(トリメチルインジウム)、TMGを用い、SiドープのIn0.05Ga0.95N、膜厚500Åよりなる第1の窒化物半導体層を形成する。
【0085】
(活性層107) 次に、温度を800℃にして、図6に示すように、原料ガスにTMI(トリメチルインジウム)、TMGを用い、アンドープのIn0.05Ga0.95Nよりなる障壁層、その上に、アンドープのIn0.32Ga0.68Nよりなる井戸層を、障壁層2a/井戸層1a/障壁層2b/井戸層1b/障壁層2cの順に積層する。この時、図6に示すように、障壁層2a、2b、2cを130Åの膜厚で、井戸層1a、1bを25Åの膜厚で形成する。活性層107は、総膜厚約440Åの多重量子井戸構造(MQW)となる。
【0086】
(p側電子閉込め層108) 次に、同様の温度で、原料ガスにTMA、TMG及びアンモニアを用い、不純物ガスとしてCp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を用い、Mgを1×1019/cm3ドープしたAl0.3Ga0.7Nよりなるp側電子閉込層108を100Åの膜厚で成長させる。この層は、特に設けられていなくても良いが、設けることで電子閉込めとして機能し、閾値の低下に寄与するものとなる。
【0087】
(p側光ガイド層109:第2の窒化物半導体層) 次に、温度を1050℃にして、原料ガスにTMG及びアンモニアを用い、アンドープのGaNよりなるp側光ガイド層109を0.15μmの膜厚で成長させる。
【0088】
このp側光ガイド層109は、アンドープとして成長させるが、p側電子閉込め層108、p側クラッド層109等の隣接層からのMgの拡散により、Mg濃度が5×1016/cm3となりp側を示す。またこの層は成長時に意図的にMgをドープしても良い。
【0089】
(p側クラッド層110) 続いて、1050℃でアンドープAl0.05Ga0.95Nよりなる層を25Åの膜厚で成長させ、続いてTMAを止め、Cp2Mgを用いて、MgドープGaNよりなる層を25Åの膜厚で成長させ、それを90回繰り返して総膜厚0.45μmの超格子層よりなるp側クラッド層110を成長させる。p側クラッド層は少なくとも一方がAlを含む窒化物半導体層を含み、互いにバンドギャップエネルギーが異なる窒化物半導体層を積層した超格子で作製した場合、不純物はいずれか一方の層に多くドープして、いわゆる変調ドープを行うと結晶性が良くなる傾向にあるが、両方に同じようにドープしても良い。クラッド層110は、Alを含む窒化物半導体層、好ましくはAlXGa1-XN(0<X≦1)を含む超格子構造とすることが望ましく、さらに好ましくはGaNとAlGaNとを積層した超格子構造とする。p側クラッド層110を超格子構造とすることによって、クラッド層全体のAl混晶比を上げることができるので、クラッド層自体の屈折率が小さくなり、さらにバンドギャップエネルギーが大きくなるので、閾値を低下させる上で非常に有効である。さらに、超格子としたことにより、クラッド層自体に発生するピットが超格子にしないものよりも少なくなるので、ショートの発生も低くなる。
【0090】
(p側コンタクト層111) 最後に、1050℃で、p側クラッド層110の上に、Mgを1×1020/cm3ドープしたp側GaNよりなるp側コンタクト層111を150Åの膜厚で成長させる。p側コンタクト層111はp側のInXAlYGa1-X-YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)で構成することができ、好ましくはMgをドープしたGaNとすれば、p電極120と最も好ましいオーミック接触が得られる。コンタクト層111は電極を形成する層であるので、1×1017/cm3以上の高キャリア濃度とすることが望ましい。1×1017/cm3よりも低いと電極と好ましいオーミックを得るのが難しくなる傾向にある。さらにコンタクト層の組成をGaNとすると、電極材料と好ましいオーミックが得られやすくなる。反応終了後、反応容器内において、ウエハを窒素雰囲気中、700℃でアニーリングを行い、p型層を更に低抵抗化する。
【0091】
以上のようにして窒化物半導体を成長させ各層を積層した後、ウエハを反応容器から取り出し、最上層のp側コンタクト層の表面にSiO2よりなる保護膜を形成して、RIE(反応性イオンエッチング)を用いSiCl4ガスによりエッチングし、図1に示すように、n電極を形成すべきn側コンタクト層103の表面を露出させる。このように窒化物半導体を深くエッチングするには保護膜としてSiO2が最適である。
【0092】
次に上述したストライプ状の導波路領域として、リッジストライプを形成する。まず、最上層のp側コンタクト層(上部コンタクト層)のほぼ全面に、PVD装置により、Si酸化物(主として、SiO2)よりなる第1の保護膜161を0.5μmの膜厚で形成した後、第1の保護膜の上に所定の形状のマスクをかけ、RIE(反応性イオンエッチング)装置により、CF4ガスを用い、フォトリソグラフィー技術によりストライプ幅1.6μmの第1の保護膜161とする。この時、リッジストライプの高さ(エッチング深さ)は、p側コンタクト層111、およびp側クラッド層109、p側光ガイド層110の一部をエッチングして、p側光ガイド層109の膜厚が0.1μmとなる深さまでエッチングして、形成する。
【0093】
次に、リッジストライプ形成後、第1の保護膜161の上から、Zr酸化物(主としてZrO2)よりなる第2の保護膜162を、第1の保護膜の上と、エッチングにより露出されたp側光ガイド層109の上に0.5μmの膜厚で連続して形成する。
【0094】
第2の保護膜162形成後、ウエハを600℃で熱処理する。このようにSiO2以外の材料を第2の保護膜として形成した場合、第2の保護膜成膜後に、300℃以上、好ましくは400℃以上、窒化物半導体の分解温度以下(1200℃)で熱処理することにより、第2の保護膜が第1の保護膜の溶解材料(フッ酸)に対して溶解しにくくなるため、この工程を加えることがさらに望ましい。
【0095】
次に、ウエハをフッ酸に浸漬し、第1の保護膜161をリフトオフ法により除去する。このことにより、p側コンタクト層111の上に設けられていた第1の保護膜161が除去されて、p側コンタクト層が露出される。以上のようにして、図1に示すように、リッジストライプの側面、及びそれに連続する平面(p側光ガイド層109の露出面)に第2の保護膜162が形成される。
【0096】
このように、p側コンタクト層112の上に設けられた第1の保護膜161が、除去された後、図1に示すように、その露出したp側コンタクト層111の表面にNi/Auよりなるp電極120を形成する。但しp電極120は100μmのストライプ幅として、図1に示すように、第2の保護膜162の上に渡って形成する。第2の保護膜162形成後、既に露出させたn側コンタクト層103の表面にはTi/Alよりなるストライプ状のn電極121をストライプと平行な方向で形成する。
【0097】
次に、n電極を形成するためにエッチングして露出された面でp,n電極に、取り出し電極を設けるため所望の領域にマスクし、SiO2とTiO2よりなる誘電体多層膜164を設けた後、p,n電極上にNi−Ti−Au(1000Å−1000Å−8000Å)よりなる取り出し(パット)電極122,123をそれぞれ設けた。この時、活性層107の幅は、200μmの幅(共振器方向に垂直な方向の幅)であり、共振器面(反射面側)にもSiO2とTiO2よりなる誘電体多層膜が設けられる。
【0098】
以上のようにして、n電極とp電極とを形成した後、ストライプ状の電極に垂直な方向で、窒化物半導体のM面(GaNのM面、(1 1- 0 0)など)でバー状に分割して、更にバー状のウエハを分割してレーザ素子を得る。この時、共振器長は、650μmである。このようにして得られるレーザ素子は、図6に示す積層構造20、及びバンドギャップエネルギー図となるものである。
【0099】
得られるレーザ素子は、しきい値電流密度2.8kA/cm2、波長448nmの窒化物半導体素子が得られ、参考例1の光ガイド層をInGaNとした場合に比べて、長波長域において、低いしきい値電流密度のレーザが得られる。
【0100】
は、実施例1において、井戸層1のIn混晶比を変化させて、波長425〜450nmのレーザ素子を作製し、閾値電流密度Jthを測定して、しきい値電流密度の波長依存性を示すものである。図から明らかなように、430nm以下の短波長域では、参考例1のようにInを含む窒化物半導体を有する上部、下部光ガイド層で活性層を挟む構造を導波路構造に用いる方が、閾値電流密度が低い傾向にあり、440nm付近(435nm〜445nm)で、参考例1と実施例1の閾値電流密度が逆転し、440nm以上の長波長の領域では、実施例1がなだらかな上昇傾向を示すのに対し、参考例1は、急激な上昇傾向が観られることがわかる。実施例1のように、本発明の特徴である第1の窒化物半導体層、第2の窒化物半導体層とで活性層を挟み込む構造を、導波路内に設けることで、上述したようなInによる光の損失、p側光ガイド層の結晶性の問題を改善でき、長波長域において優れた素子特性の窒化物半導体素子が得られることがわかる。
【0101】
[実施例2]
実施例1において、図5に示すように、障壁層2のIn混晶比より低い混晶比のアンドープIn0.025Ga0.975Nからなる第1の窒化物半導体層を500Åの膜厚で形成する。得られるレーザ素子は、第1の窒化物半導体層31のIn混晶比が実施例1よりも小さいことから、上部、下部クラッド層に挟まれた導波路、本実施例ではn側光ガイド層、p側光ガイド層で挟まれる領域、とクラッド層との屈折率差が、実施例1に比べて小さくなるため、閾値電流が大きくなるものの、長波長域のレーザ素子としてなお優れた特性のものが得られる。
【0102】
[実施例3]
実施例2において、図8に示すように、第1の窒化物半導体層31を、活性層から200Å離れたところに設ける。このとき、n側クラッド層と活性層とで挟まれた積層構造が、n側クラッド層25/第1のn側光ガイド層26a/第1の窒化物半導体層31/第2のn側光ガイド層26b/活性層12の順に積層された構造となり、第1のn側光ガイド層26aをアンドープGaNで800Åとし、第2のn側光ガイド層26bをアンドープGaNで200Åとする。得られるレーザ素子は、実施例2に比べて、第1の窒化物半導体層が活性層から離れていることから、第1の窒化物半導体層による光の閉じ込め、キャリアの注入効果が弱まり、また導波路内での光の分布が実施例1よりもn側クラッド層側に多く分布するものとなり、活性層での誘導放出が減少し、また第1の窒化物半導体による光の損失も発生し、実施例2よりも閾値電流が大きくなる傾向にある。
【0103】
[実施例4]
実施例1において、図7に示すように、n側光ガイド層としてアンドープIn0.05Ga0.95N、膜厚0.15μmからなる第1の窒化物半導体を用い、実施例1と同様にしてレーザ素子を得る。得られるレーザ素子は、実施例1に比べて、InGaNからなるn側光ガイド層により、導波路とクラッド層との屈折率差が大きくなるが、厚膜のn側光ガイド層による光の吸収が大きくなり、また導波路内での光分布も、活性層からn側クラッド層に至る領域にブロードに広がって分布しているものと思われ、活性層での誘導放出が減少し、実施例1に比べて、閾値電流が大きくなる。この時、n側光ガイド層(第1の窒化物半導体層)をInGaN/GaNからなる超格子多層膜で形成しても、単一膜で形成する場合に比べて、膜の結晶性は良くなるものの、光の分布、導波路の屈折率、の問題は、単一膜の場合と同等なもので、得られるレーザ素子も同様な傾向の特性のものとなる。
【0104】
[参考例1]
実施例4において、p側光ガイド層を、n側光ガイド層と同じアンドープIn0.05Ga0.95Nとして、その他は実施例4と同様にして、レーザ素子を得る。得られるレーザ素子は、実施例1の導波路構造に比較して、第1の窒化物半導体を設けずに、n側光ガイド層をp側光ガイド層と同じ膜厚にして、両方の光ガイド層ともInを含む窒化物半導体を用いた構造となる。このようにして得られるレーザ素子は、p側光ガイド層にInを含む窒化物半導体を用いていることにより、大きく結晶性が悪化し、さらに、光ガイド層による光の吸収が発生し、実施例1に比べて閾値電流が大きくなる。図9は、参考例1で、井戸層のIn混晶比を変化させて、425nm〜450nmの波長のレーザ素子を作製し、しきい値電流密度Jthを測定して、閾値電流密度の波長依存性を示すものである。図9から明らかなように、上部、下部光ガイド層にInを含む窒化物半導体を用いた構造では、430nm付近から波長が長くなるに従って急激な閾値電流密度の上昇傾向を示し、440nm以上の長波長域では、実施例1に比べて、閾値電流密度が大きくなり、そしてそれより波長が長くなるに従って、その差が大きくなることがわかる。
【0105】
[実施例5]
実施例1において、n側層、p型層のクラッド層、ガイド層、活性層を以下のように形成し、図10に示す構造のレーザ素子を作製する。
【0106】
(n側クラッド層105) n側コンタクト層103、クラック防止層104(省略可)の上に、n側クラッド層として、アンドープのAl0.1Ga0.9Nよりなる第1の層を25Åの膜厚で成長させ、続いて、TMAを止め、不純物ガスとしてシランガスを用い、Siを5×10 18 /cm ドープしたAl0.05Ga0.95Nよりなる第2の層を25Åの膜厚で成長させる。そして、この操作をそれぞれ200回繰り返して第1の層と第2の層とを交互に積層し、総膜厚1μmの多層膜(超格子構造)よりなるn側クラッド層106を成長させる。このn側クラッド層は、活性層の下に設けられた下部クラッド層となる場合、超格子多層膜で構成しなくても、単一膜、若しくは膜厚100Å以上の層を有する多層膜でもクラッド層を形成することができる。
【0107】
(n側光ガイド層106) SiドープのGaNよりなる第3の層を膜厚15Åで成長させ、続いて、アンドープのIn0.05Ga0.95Nよりなる第4の層を膜厚15Åで成長させる。そして、この操作をそれぞれ60回繰り返して第3の層と第4の層とを交互に積層し、総膜厚0.18μmの多層膜(超格子構造)よりなるn側光ガイド層106を、n側クラッド層の上に、成長させる。
【0108】
(第1の窒化物半導体131) 次に、SiドープのIn0.05Ga0.95N、膜厚530Åよりなる第1の窒化物半導体層を、n側光ガイド層の上に形成する。
【0109】
(活性層107) 図10に示すように、膜厚130ÅのアンドープのGaNよりなるn側障壁層2a、膜厚25ÅのアンドープのIn0.25Ga0.75Nよりなる井戸層1a、膜厚100ÅのアンドープGaNよりなる障壁層2b、その上に、井戸層1aと同じ井戸層1b、膜厚530ÅのアンドープIn0.05Ga0.95Nよりなるp側障壁層2cを、障壁層2a/井戸層1a/障壁層2b/井戸層1b/障壁層2cの順に積層する。活性層107は、総膜厚約810Åの多重量子井戸構造(MQW)となり、第1の窒化物半導体層の上に形成される。また、n側障壁層2aと第1の窒化物半導体層が接する場合には、第1の窒化物半導体層がn側障壁層2aを兼ねることができ、この場合には、n側障壁層2aを省略でき、活性層に接する第1の窒化物半導体層がn側障壁層2aとしても機能する。
【0110】
(p側電子閉込め層108) 次に、同様の温度で、原料ガスにTMA、TMG及びアンモニアを用い、不純物ガスとしてCp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を用い、Mgを1×1019/cm3ドープしたAl0.3Ga0.7Nよりなるp側電子閉込層108を100Åの膜厚で成長させる。この層は、特に設けられていなくても良いが、設けることで電子閉込めとして機能し、閾値の低下に寄与するものとなる。
【0111】
(p側光ガイド層109) MgドープのGaNよりなる第3の層を膜厚15Åで成長させ、続いて、アンドープのIn0.05Ga0.95Nよりなる第4の層を膜厚5Åで成長させる。そして、この操作をそれぞれ90回繰り返して第3の層と第4の層とを交互に積層し、総膜厚0.18μmの多層膜(超格子構造)よりなるp側光ガイド層109を、p側電子閉込め層の上に成長させる。この時、本発明の第2の窒化物半導体層は、第3の層として形成される。
【0112】
(p側クラッド層110) アンドープのAl0.1Ga0.9Nよりなる第1の層を25Åの膜厚で成長させ、続いて、MgをドープしたAl0.05Ga0.95Nよりなる第2の層を25Åの膜厚で成長させる。そして、この操作をそれぞれ90回繰り返して第1の層と第2の層とを交互に積層し、総膜厚0.45μmの多層膜(超格子構造)よりなるp側クラッド層110を、p側光ガイド層の上に成長させる。
【0113】
このように、n側クラッド層25、n側光ガイド層27、第1の窒化物半導体層31、活性層27、p側電子閉込め層28、p側光ガイド層29、p側クラッド層30が、図10に示すように積層された構造となり、その時の各層におけるIn組成、Al組成は、41、42に示すような構造となる。また、この実施例では、光ガイド層において、多層膜n側光ガイド層を構成する第4の層が、p側光ガイド層の第4の層よりも膜厚が厚く形成されており、すなわち、n側光ガイド層のIn混晶比(平均組成)が、p側光ガイド層に比べて大きくした構造となっていることで、p型層側にInを含む窒化物半導体層を設けることの結晶性悪化を低減した構造となっている。また、In混晶比が、n側光ガイド層よりもp側光ガイド層を小さくする構成としては、膜厚を小さくするほかに、多層膜を構成する第3,4の層のIn混晶比を小さくすることでも可能である。
このようにして得られるレーザ素子は、しきい値電流密度1.9kA/cm2、波長453nm、室温での連続発振が可能で、60℃、5mWの連続発振における素子寿命1万時間に達する窒化物半導体レーザ素子が得られる。
【0114】
[実施例6]
実施例5において、n側クラッド層、p側クラッド層の多層膜を構成する第1の層を、アンドープAl0.05Ga0.95Nとし、第2の層を、それぞれSi、MgドープGaNとする他は、実施例5と同様にしてレーザ素子を得る。
【0115】
これら実施例1,5,6の素子構造において、井戸層のIn混晶比を変化させて、波長変化させた場合における閾値電流変化を図12に、実施例1を黒丸●、実施例5を白抜き三角△、実施例6を白抜き四角□で示す。図12からわかるように、波長440nm以上の長波長域において、実施例5、6が閾値電流が低減したレーザ素子が得られ、また、実施例5と6との比較において、実施例5が優れた特性のレーザ素子が得られることがわかる。
実施例1と、実施例5,6とでは、p側障壁層、n側障壁層の膜厚が大きく異なり、両方の障壁層とも200Å以上、好ましくは、300Å以上、更に好ましくは400Å以上とすることで、閾値電流の低減傾向が観られ、特にp側障壁層、若しくはp側電子閉込め層と活性層内で最もp型層側の井戸層1bとの距離を大きくすること、すなわち、200Å以上、好ましくは300Å以上、更に好ましくは400Å以上とすることで良好な長波長域での導波路構造が形成され、図12に示すような閾値電流特性となると考えられる。また、その他の構成の違いとして、光ガイド層が、Inを含む窒化物半導体層を有する多層膜構造を有することであり、実施例5,6では、このことによる導波路内の屈折率向上が図られ、素子特性向上につながったと考えられる。
また、実施例5と実施例6とでは、クラッド層のAl混晶比(平均組成)が異なる構造であり、クラッド層のAl混晶比(平均組成)を0.05以上とすることで、長波長域において、優れた導波路構造が形成されたことにより特性向上が得られたと考えられ、この時クラッド層のAl混晶比(平均組成)の上限としては、結晶性を考慮して、0.5以下とすることであり、多層膜のクラッド層とする場合には、Alを含む窒化物半導体層(第1の層)と、第1の層よりAl混晶比の小さいAlを含む窒化物半導体層(第2の層)とが少なくとも交互に積層された多層膜構造とすること、が好ましく、第1の層のAl混晶比x1は、第2の層のAl混晶比x2より大きく、x1>x2(x2>0)とすることが長波長域のレーザ素子、端面発光素子において優れた素子特性が得られることがわかる。また、実施例5において、発振波長465,470における素子寿命は、実施例5と同等な条件において、1万時間、3千時間に達するレーザ素子が得られる。
【0116】
【発明の効果】
本発明の窒化物半導体素子は、長波長域において、閾値電流を低く抑えたレーザ素子、および素子特性に優れる端面発光素子が得られる。特に、図9に示すように、ガイド層にInを含む窒化物半導体を用いた参考例の構造に比べて、本発明のように導波路内の構造を非対称な構造とすることで、440nmの長波長域で優れた素子特性の窒化物半導体素子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を説明する模式断面図。
【図2】本発明の一実施形態を説明する模式断面図。
【図3】本発明の一実施形態を説明する模式断面図。
【図4】本発明の一実施形態を説明する模式図。
【図5】本発明の一実施形態に係る積層構造20と、その積層構造に対応するバンド構造21を説明する模式図。
【図6】本発明の一実施形態に係る積層構造20と、その積層構造に対応するバンド構造21を説明する模式図。
【図7】本発明の一実施形態に係る積層構造20と、その積層構造に対応するバンド構造21を説明する模式図。
【図8】本発明の一実施形態に係る積層構造20と、その積層構造に対応するバンド構造21を説明する模式図。
【図9】本発明の一実施形態と参考例1の実施形態における閾値電流密度の波長依存性を示す図。
【図10】本発明の一実施形態に係る積層構造20と、その積層構造に対応するバンド構造21、Al組成比41、In組成比42とを説明する模式図。
【図11】本発明の一実施形態に係る図10の積層構造20に対応する不純物濃度変化(51,52)を説明する模式図。
【図12】本発明の各実施形態(実施例1,5,6)における閾値電流の波長依存性を示す図。
【図13】本発明の一実施形態に係るバンド構造(バイアス時)を説明する模式図。
【符号の簡単な説明】
1・・・井戸層、 2(2b)・・・障壁層、 2a・・・n側障壁層、 2c・・・p側障壁層、 3・・・内部障壁層 11・・・n側窒化物半導体層、 12・・・活性層、 13・・・p側窒化物半導体層、 20・・・積層構造、 101・・・基板(GaN基板) 102・・・バッファ層、 103・・・n側コンタクト層、 104・・・クラック防止層、105,25,225・・・n側クラッド層(下部クラッド層)、 106,26,226・・・n側光ガイド層(下部光ガイド層)、 107,27,227・・・活性層、 108,28,228・・・p側電子閉込め層、 109,29,229・・・p側光ガイド層(上部光ガイド層)、 110,30,230・・・p側クラッド層(上部クラッド層)、 111・・・p側コンタクト層、 120・・・p電極、 121・・・n電極、 122・・・pパッド電極、 123・・・nパッド電極、 131,31,231・・・第1の窒化物半導体層、 32,232・・・第2の窒化物半導体層、 163・・・第3の保護膜、 164・・・絶縁膜

Claims (10)

  1. 活性層を、p型層とn側層とで挟みこむ構造を有し、p型層がp側クラッド層を有し、n側層がn側クラッド層を有する窒化物半導体レーザ素子において、
    前記活性層がInを含む窒化物半導体を有し、該活性層内で、最も前記n側層側に配置されたn側障壁層(2a)と、最も前記p型層側に配置されたp側障壁層(2c)と、n側障壁層(2a)とp側障壁層(2c)との間に少なくとも1つのInを含む窒化物半導体からなる井戸層を有し、
    前記n側クラッド層と前記活性層との間に、該活性層に接して、該n側クラッド層より屈折率が大きく、In混晶比がz>0である窒化物半導体からなる第1の窒化物半導体層を有し、
    前記p側クラッド層と前記活性層との間に、In混晶比uがz>uである第2の窒化物半導体層と、該第2の窒化物半導体層に接して、且つ前記活性層に接して若しくは前記活性層にバッファ層を介して接してAlを含む窒化物半導体からなるp側電子閉込め層を有し、
    前記n側クラッド層と前記第1の窒化物半導体層との間に、前記第1の窒化物半導体層よりIn混晶比が小さいInを含む窒化物半導体のn側光ガイド層、若しくは前記第1の窒化物半導体層よりバンドギャップエネルギーの大きいn側光ガイド層、を有し、
    前記p側障壁層の膜厚が200Å以上であり、該p側障壁層のIn混晶比が前記第2の窒化物半導体層のIn混晶比より大きく、前記n側障壁層のIn混晶比vがv<zであることを特徴とする窒化物半導体レーザ素子。
  2. 前記第1の窒化物半導体層の膜厚が300Å以上である請求項1記載の窒化物半導体レーザ素子。
  3. 前記p側障壁層の膜厚が400Å以上である請求項1記載の窒化物半導体レーザ素子。
  4. 記活性層と前記p側電子閉込め層との距離が1000Å以下である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  5. 記バッファ層が、前記p側電子閉込め層よりも低いAl混晶比であるAlを含む窒化物半導体からなること、若しくはGaNであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  6. 前記p側クラッド層、前記n側クラッド層が、それぞれ光閉込めのクラッド層であり、Alを含む窒化物半導体を有するレーザ素子構造であり、発振波長が440nm以上であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  7. 前記p側クラッド層と、前記n側クラッド層との少なくとも一方は、少なくともAlを含む窒化物半導体を有する第1の層と、第1の層とはバンドギャップエネルギーの異なる第2の層とが交互に積層された多層膜クラッド層であることを特徴とする請求項記載の窒化物半導体レーザ素子。
  8. 前記p型層、前記n側層の少なくとも一方の光ガイド層は、少なくともInを含む窒化物半導体を有する第3の層と、第3の層とはバンドギャップエネルギーの異なる第4の層とが交互に積層された多層膜光ガイド層であることを特徴とする請求項記載の窒化物半導体レーザ素子。
  9. 前記p側障壁層(2c)のn側不純物濃度が、前記n側障壁層(2a)のn側不純物濃度より小さいことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  10. 前記p側障壁層(2c)のn側不純物濃度が、p側不純物濃度より小さいことを特徴とする請求項記載の窒化物半導体レーザ素子。
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