JP4400509B2 - セラミックシート、アンテナ装置、無線通信媒体処理装置、及びセラミックシートの製造方法 - Google Patents

セラミックシート、アンテナ装置、無線通信媒体処理装置、及びセラミックシートの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、RF−ID、即ちICカードやICタグなどの無線通信媒体との通信を行う、セラミックシート、アンテナ装置、無線通信媒体処理装置、及びセラミックシートの製造方法に関し、詳しくは、セラミックシートの柔軟性を確保しながら、耐衝撃性や耐久性を向上させることが出来る、セラミックシート、アンテナ装置、無線通信媒体処理装置、及びセラミックシートの製造方法に関する。
従来、電磁誘導方式などによる無線通信媒体との通信を行う無線通信処理装置や、無線通信媒体そのものに用いられるアンテナは、周囲にある金属の影響を受け、磁界が弱くなり、通信に必要な相互インダクタンスが不十分となって、通信距離が短くなったり、通信ができなくなるという障害があった。そこで、金属の影響を受けないように、アンテナと金属とをスペーサーなどにより離隔させたり、あるいは、フェライトなどによる磁性部材をアンテナに近接、あるいは当接させて設置し、アンテナの発する磁界を強化するなどの工夫がなされていた。
ここで、スペーサーなどを使用する場合は、設置時の調整や、その調整にまつわる作業性などが煩雑になるなど問題があった。また、磁性部材は焼成された硬度のあるフェライトのバルク材料などが用いられていたが、落下時の割れや加工性が劣る問題があった。
このように、磁界を強化することを実現しつつ、破損への耐久性を持たせるために、たとえば、フレキシブル状の磁性体をアンテナの底面や、側面に設置するものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
特開2002−298095号公報
しかしながら、特許文献1に示されるフレキシブル状の磁性体は、金属系磁性粉末のセンダストや、パーマロイなどを使用するために、十分な形状に加工できる加工性を確保するためには、十分な量の有機材料を混合させる必要があり、このような有機材料が多く含まれたフレキシブル磁性体では、アンテナ近傍に配置しても、磁界強化が不十分であり、近年求められている無線通信媒体処理装置の通信距離拡張には不十分である不都合があった。
これに対して、通信距離を拡張するために、有機材料を少なくすると、柔軟性が失われてしまう不都合があった。しかも、磁性部材の脆性が劣化するため、磁性部材が外部応力や衝撃を受けた場合に、磁性部材に局部的に応力が集中して、クラックや欠けが生じる不都合があった。
本発明は、上記課題に鑑み、電磁誘導方式やマイクロ波方式を用いて通信を行うセラミックシートにおいて、セラミックシートの柔軟性を確保しながら、耐衝撃性や耐久性を向上させることが出来る、セラミックシート、アンテナ装置、無線通信媒体処理装置、及びセラミックシートの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、柔軟性を有する2枚のシートと、前記2枚のシートの間に相互に接触して載置された磁性体からなる複数のブロックとを備え、前記各ブロックは、前記2枚のシートに接する対向した2つの接触面と、隣接する他のブロックと接触する対向面と、前記接触面と前記対向面との間に有する隣接する前記他のブロックや前記2枚のシート各々と接しない複数の非接触面とを備えたものである。
本発明は、ブロックは、2枚のシートと接触面で接すると共に、隣接する他のブロックと対向面で接触する一方、接触面と対向面との間で隣接する他のブロックや2枚のシート各々と互い接触しない複数の非接触面を有するので、セラミックシートが曲げられて隣接するブロック同士がぶつかり合う場合に、対向面と接触面との間で応力が集中しないようにすることが出来る。これにより、セラミックシートが外部応力や衝撃を受けた場合であっても、ブロックが受けた応力を分散させることが出来るので、ブロックを容易に破損しないようにすることが出来る。その結果、ブロックのクラックや欠けを防止することが出来るので、セラミックシートの柔軟性を確保しながら、耐衝撃性や耐久性を向上させることが出来る。また、複数のブロックは2枚のシートに挟まれて載置されるので、セラミックシートがいずれの方向に曲げられた場合であっても各ブロックを安定してシート上に載置することが出来る上に、セラミックシートの柔軟性を更に向上させることが出来る。しかも、ブロックが外部に露出されないので、外部応力や衝撃などから複数のブロックを保護することが出来る。さらに、ブロック同士が接触するので、磁性特性を向上させながらブロックを容易に破損しないようにすることが出来る。
本発明に係る第1の発明は、柔軟性を有する2枚のシートと、前記2枚のシートの間に相互に接触して載置された磁性体からなる複数のブロックとを備え、前記各ブロックは、前記2枚のシートに接する対向した2つの接触面と、隣接する他のブロックと接触する対向面と、前記接触面と前記対向面との間に有する隣接する前記他のブロックや前記2枚のシート各々と接しない複数の非接触面とを備えたものである。
本発明は、ブロックは、2枚のシートと接触面で接すると共に、隣接する他のブロックと対向面で接触する一方、接触面と対向面との間で隣接する他のブロックや2枚のシート各々と互い接触しない複数の非接触面を有するので、セラミックシートが曲げられて隣接するブロック同士がぶつかり合う場合に、対向面と接触面との間で応力が集中しないようにすることが出来る。これにより、セラミックシートが外部応力や衝撃を受けた場合であっても、ブロックが受けた応力を分散させることが出来るので、ブロックを容易に破損しないようにすることが出来る。その結果、ブロックのクラックや欠けを防止することが出来るので、セラミックシートの柔軟性を確保しながら、耐衝撃性や耐久性を向上させることが出来る。また、複数のブロックは2枚のシートに挟まれて載置されるので、セラミックシートがいずれの方向に曲げられた場合であっても各ブロックを安定してシート上に載置することが出来る上に、セラミックシートの柔軟性を更に向上させることが出来る。しかも、ブロックが外部に露出されないので、外部応力や衝撃などから複数のブロックを保護することが出来る。さらに、ブロック同士が接触するので、磁性特性を向上させながらブロックを容易に破損しないようにすることが出来る。
本発明に係る第2の発明は、上記第1の発明に係るセラミックシートであって、非接触面は、テーパ形状である。
この構成によれば、非接触面が簡単な形状で構成されるので、加工性を向上することが出来、製造コストの低減を図ることが出来る。
本発明に係る第3の発明は、請求項2記載のセラミックシートであって、テーパ形状である非接触面が、厚み方向の面に対して15〜90%を占有するように構成する
この構成によれば、外部応力や衝撃に対してクラックや割れや欠けなどの発生を防止するのに十分であり、かつ、スリットを形成するカッターの両刃を深く切り込む必要がないので焼成体へのダメージを抑えることが出来る。
本発明に係る第4の発明は、請求項1記載のセラミックシートであって、対向面から連続した曲面である。
この構成によれば、非接触面は、第1の接触面と滑らかに続く形状で形成されるので、セラミックシートが曲げられた場合に、ブロックが受ける応力を更に分散させることが出来る。
本発明に係る第の発明は、上記第の発明に係るセラミックシートであって、磁性体はフェライトである。
この構成によれば、磁気特性を向上することが出来るので、通信距離を更に拡張することが出来る。
本発明に係る第の発明は、上記第1の発明に係るセラミックシートであって、シートはプラスチックからなり、複数のブロックはシート上に粘着剤を介して載置されたものである。
この構成によれば、粘着材及びプラスチックからなるシートは柔軟性を有するので、セラミックシートを曲げた場合に、ブロックが受けた応力を、粘着材を介してシートに逃がすことが出来る。これにより、セラミックシートの柔軟性を更に向上させながら、同時に、耐衝撃性や耐久性を、更に向上させることが出来る。
本発明に係る第の発明は、上記第1ないしいずれかの発明に係るセラミックシートと、複数のブロックに当接または近接されたアンテナとを備え、アンテナはデータが格納された無線通信媒体と通信を行うアンテナ装置である。
この構成によれば、複数のブロックにアンテナを当接または近接させた場合であっても、セラミックシートの製造時、使用時、運搬時における耐衝撃性や耐久性を更に向上させることが出来る。
本発明に係る第の発明は、上記第の発明に係るアンテナ装置と、無線通信媒体との間で、前記アンテナ装置が備えたアンテナを介してデータの読み及びデータの書きの少なくとも一方を行う読み書き部とを備えたものである。
この構成によれば、箱や棚などに無線通信媒体処理装置が存在する場合に、精度と確実性の高い通信が可能にできる。
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る実施の形態におけるセラミックシート10の断面図である。セラミックシート10は、シート13a、13b、及び磁性部材11を有している。磁性部材11は、後述するフェライトなどのセラミック系材料からなる。
シート13a、13bは、柔軟性を有する材料で形成され、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)などのプラスチックからなる。PET系のシート材は、取り扱いが容易で、環境負荷物質などが含まれておらず環境汚染防止として有効な素材である。また、シート13a、13bは、透明性もしくは遮光性のプラスチック、または、それらの組み合わせで構成することも可能である。こうすることで、紫外線などから磁性部材11や、磁性部材11上に形成した導電性部材(後述)を保護し、長期信頼性を向上させることが出来る。
磁性部材11は、複数のブロック(以下「磁性ブロック」と称す。)15を有しており、直方体に形成されている。磁性ブロック15は上述したとおりセラミック系材料からなるが、必ずしもセラミック材料のみで構成されていなくてもよく、例えば、磁性ブロック15を所定材料でコーティングしてもよい。各磁性ブロック15は、上位シート13aと下位シート13bとの間に挟まれており、相互に隣接して下位シート13b上に載置されている。各磁性ブロック15は、その外周面として、下位シート13bと接する底面(接触面)11aと、隣接する他の磁性ブロック15と接する側面(対向面)11bと、上位シート13aと接する天面(他の接触面)11cとを有している。磁性ブロック15は、アクリル系の粘着材を介して、シート13a、13bに貼り付けられている。アクリル系の粘着材は、上記シート材と同様に、環境負荷物質などが含まれておらず環境汚染防止として有効な素材である。
各磁性ブロック15は、底面11aと側面11bとの間に、隣接する他の磁性ブロック15と接しないテーパ面(非接触面)12を有している。また、各磁性ブロック15は、天面11cと側面11bとの間に、隣接する他の磁性ブロック15と接しないテーパ面(他の非接触面)12を有している。なお、図1では、全ての磁性ブロック15が同じ形状である場合を示したが、一部の磁性ブロック15のみが上述したテーパ面12を有していてもよい。
このような構成において、セラミックシート10を、図1に示す矢印A方向にが曲げた場合、隣接する磁性ブロック15同士が、底面11aと側面11bとの間で応力が生じるが、底面11aと側面11bとの間には、上述したように、テーパ面12が設けられているので、磁性ブロック15のコーナに上記応力を集中させないようにすることが出来る。これにより、セラミックシート10が外部応力や衝撃を受けた場合であっても、磁性ブロック15が受けた応力を分散させることが出来るので、磁性ブロック15を容易に破損しないようにすることが出来る。その結果、磁性ブロック15のクラックや欠けを防止することが出来るので、セラミックシート10の柔軟性を確保しながら、耐衝撃性や耐久性を向上させることが出来る。また、磁性ブロック15が割れにくくなることで、加工性が向上して、製造コストの低廉化を図ることが出来る。
一方、セラミックシート10を、図1に示す矢印B方向にが曲げた場合、隣接する磁性ブロック15同士が、上述と同様に、天面11cと側面11bとの間で応力が生じるが、天面11cと側面11bとの間には、上述したように、テーパ面12が設けられているので、磁性ブロック15のコーナに上記応力を集中させないようにすることが出来る。
このように、複数の磁性ブロック15は2枚のシート13a、13bに挟まれて載置されるので、セラミックシート10が曲げられた場合であっても、各磁性ブロック15を安定してシート13b上に載置することが出来、セラミックシート10の柔軟性を向上させることが出来る。しかも、磁性ブロック15が外部に露出されないので、外部応力や衝撃などから、複数の磁性ブロック15を保護することが出来る。
また、粘着材及びプラスチックからなるシートは柔軟性を有するので、セラミックシートを曲げた場合に、ブロックが受けた応力を、粘着材を介してシートに逃がすことが出来る。これにより、セラミックシートの柔軟性を更に向上させながら、同時に、耐衝撃性や耐久性を、更に向上させることが出来る。
なお、テーパ面12は、厚み方向の面に対して15〜90%を占有することが望ましい。15%以下では、外部応力や衝撃に対してクラックや割れや欠けなどの発生を防止するのに不十分であり、90%以上では、スリット(後述)を形成するカッターの両刃を深く切り込む必要があり、焼成体へのダメージが大きく好ましくない。
なお、磁性ブロック15の形状として、直方体の場合について示したが、特にこれに限る必要はない。例えば、底面が略三角、略四角などの角柱や、略円柱、略球などで構成してもよい。また、図1では、磁性ブロック15が側面11bを介して接している場合を示したが、必ずしも接している必要はない。例えば、磁性ブロック15が所定間隙を介して側面11b間で対向している場合であっても、セラミックシート10が曲げられた際に、上述と同様、磁性ブロック15のコーナに応力を集中させないようにすることが出来る。
図2は、本発明の他の変形例におけるセラミックシート20の断面図である。セラミックシート20は、シート13c、及び磁性部材21を有している。図2のセラミックシート20は、図1のものと、磁性ブロック15の形状と、上位シート13aを有さない点で相違するが、他の構成は同一である。従って、既に説明した構成について、その説明を省略する。
磁性部材21は、複数の磁性ブロック25を有しており、相互に隣接して下位シート13c上に載置されている。各磁性ブロック25は、図1の磁性ブロック15と同様に、底面(接触面)25aと側面(対向面)25bとの間で、隣接する他の磁性ブロック25と接触しないカーブ面(非接触面)22を有しているが、カーブ面22は、直線的なテーパ面ではなく、底面25aから連続した曲面23である。即ち、図2の破線で示す領域24では、磁性部材21とシート13cとの密着強度が、当該領域24以外の部分より小さいことになる。
このように、下位シート13cに接する各磁性ブロック25に曲面23を設けることにより、非接触面22は、底面25aと滑らかに続く形状で形成されるので、セラミックシート10が曲げられた場合に、磁性ブロック25が受ける応力を更に分散させることが出来る。
なお、磁性ブロック25の底面25aにおいて、密着強度が小さい部分の面積は、底面25aの面積の10%〜60%であることが望ましい。10%以下では、柔軟性が不十分であり好ましくない。60%以上では、密着強度が小さい部分の面積が大きくなりすぎて、信頼性が低くなり好ましくない。
次いで、磁性部材11、21について詳細に説明する。
磁性部材11、21は、フェライトからなる。フェライトとしては、Ni−Zn(ニッケル−亜鉛)系フェライトや、Mn−Zn(マンガン−亜鉛)系フェライトなどがある。このようなフェライトを用いることで、安定した磁気特性を得ることが出来る。
Ni−Zn系フェライトには、例えば、Fe23・ZnO・NiO・CuOがあり、Mn−Zn系フェライトには、例えば、Fe23・ZnO・MnO・CuOがある。このようなフェライトを用いることで、後述するように、アンテナのQ値を向上させることが出来、通信距離を拡張することが出来る。Ni−Zn系フェライトでは、具体的には、Fe23を48.5mol%、ZnOを20.55mol%、NiOを20.55mol%、CuOを10.40mol%の組成比率で配合し、750℃〜900℃−4時間で焼成する。
なお、セラミックシートを構成する複数のブロックとして、磁性部材11、21について説明したが、必ずしも磁性体である必要はない。このような磁性体は、例えば13.56MHzの周波数帯域を用いる電磁誘導方式の通信方式に用いられる。通信方式が、例えば800MHz以上の周波数帯域(例えば900MHz帯)を用いるマイクロ波方式の場合は、複数のブロックとして、誘電体が用いられる。
誘電体としては、例えば、Ti(チタン)酸化物が用いられる。このような誘電体を用いることで、マイクロ波特性を向上させることができ、比較的誘電率が大きくなるのでアンテナ形状を小さくすることが出来る。Ti酸化物には、例えば、Ba―Ti系セラミック、Ca―Ti系セラミック、Mg―Ti系セラミックがある。このようなTi酸化物を用いることで、マイクロ波特性をさらに向上させることが出来る。また、他のTi酸化物として、Ba―Zn−Ti系セラミック、Ba―Nb−Ti系セラミック、Ba―Sm−Ti系セラミック、Ba―Mg−Ti系セラミックがある。このようなTi酸化物を用いることで、誘電率の温度特性の安定化や、アンテナ損失が小さくなるなどのマイクロ波特性を向上させることが出来る。
このような磁性部材11、21は、例えば、次のようにして作製される。
まず、上述した組成比率のセラミック系磁性仮焼粉体3、000gと、水溶性結合材としてメトローズ135g(例えば、商品名:60SH4000、信越化学工業[登録商標]製)と、油性可塑材としてセラミゾール270g(例えば、商品名:C−08、日本油脂製)と、蒸留水340gとを、ミキサーにて20分混合する。次いで、3本ロールを3回パスさせて、はい土を生成する。このはい土を、5℃−96時間で保存することで、熟成した後、真空押し出し成型装置にて約3mmの厚みのグリーンシートを作製する。
このグリーンシートの表面を、95℃のドラム式乾燥機にパスさせることにより、乾燥させて、所定の寸法に切断して、厚さ2.8mmのグリーンシートを作製する。作製したグリーンシートを、900℃−3時間で焼成して、厚み2.5mmの焼成体を作製した。ここで、焼成体のQ値をインピーダンスアナライザー(商品名:4191ARF、HP[登録商標]製)にて測定した。焼成体を直径2.5cm、内径1.3cmの円板状に加工して、直径0.5mmの導線を円板に通して、周波数13.56MHzにおけるQ値を測定した。(表1)は、周波数13.56MHzにおけるQ値の測定結果である。
Figure 0004400509
上記焼成体のQ値(160)は、(表1)に示すように、従来の技術の一例である比較例のQ値(90)より大きいことから、比較例よりも優れていることがわかる。この比較例である磁性部材を、図7に示す。図7は、従来の技術である磁性部材の内部拡大図。この磁性部材は、センダストやパーマロイなどの金属系磁性体粉末71を有機結合材72で練り固めたものである。
この焼成体の表面抵抗値、かさ密度、表面粗さを測定するとは、5×1011Ω、5.1g/cm3、2.6μmであつた。焼成体の表面抵抗値が、5×1011Ωであり、1×108Ω以上であることから、焼成体上に整合回路などの種々の回路パターンを組み込むことが出来ることが分かった。焼成体の表面抵抗値が1×108Ω以下の場合は、回路パターンの線間が狭い場合などでは、短絡するという問題があり好ましくない。
また、焼成体のかさ密度が、5.1g/cm3であり、4.0g/cm3以上であることから、セラミック特性を安定、向上させることが出来る。焼成体のかさ密度は、4.0g/cm3以上が好ましい。かさ密度が4.0g/cm3以下では、セラミック特性が安定せず、また、焼成体自体が、吸湿しやすくなり、回路パターンを内部に形成した場合など、パターン間で短絡するという問題が生じ、好ましくない。
また、焼成体の表面粗さが、2.6μmであり、10μm以下であることから、整合回路などの種々の回路などを精度良く組み込むことができる。焼成体の表面粗さは、10μm以下であることが望ましい。表面粗さが、10μm以上では、導体が断線したり、グリーンシートと導体間に空隙が生じ、精度良く回路パターンを形成できないので好ましくない。
従って、測定された焼成体の表面抵抗値、かさ密度、表面粗さの値から、焼成体上に整合回路や回路パターンなどを組み込むことが出来ることが分かる。
そこで、この焼成体上に、導電性部材として、回路パターンを形成した。
0.3mmのグリーンシートを押し出し成形にて作製し、900℃−4時間で焼成する。次に、この焼成体上に、スクリーン印刷法により、導電性部材として、長さ100mm、幅3mm、厚み0.04mmの銀導体パターンを印刷し、600℃−15分で焼き付けた。そして、この焼成体上の銀導電体の抵抗値を測定すると、0.03Ωと低抵抗値を示した。なお、導電性部材は、スクリーン印刷法で印刷する以外に、メッキ転写方法または金属箔圧着方法で形成してもよい。これらの方法を用いることで、低コストで、精度良く回路を形成することが可能となる。
次に、無線通信媒体処理用アンテナ装置を用いて、本実施の形態に係るセラミックシートと従来の技術との比較を行った。
まず、100mm×100mm×0.3mm厚みのグリーンシートを押し出し成形にて作製した。次に、縦2.5mm、横2.5mmピッチで、金型または、両刃形状のカッター刃で、厚み方向の面にテーパ面が形成できるように、深さ0.15mmのスリットを入れる。スリットは、外部応力や衝撃に対してクラックや割れや欠けなどの発生を防止するためにグリーンシートの両面に入れても良い。スリットを入れたグリーンシートを900℃−4時間で焼成し、アクリル系粘着材を有したPET系のシートに貼り付けた。スリットの形状は、溝状に形成するものであれば、いずれの形状であってもよく、例えば、V字状やU字状であってもよい。
このようにして作製した、セラミックシートを、無線通信媒体処理用のアンテナ装置に用いて、通信距離を測定した。リーダーライターは、KU−G5423AMDA(ISO1569)、アンテナは、ガラエポ基板に形成したスパイラル形状を用い、40mm×27mmのセラミックシートをガラエポ基板上に載せて、さらにセラミックスシート上に金属板を載せて通信距離を測定した。(表2)は、周波数13.56MHzにおける通信距離の測定結果である。
Figure 0004400509
この表から、本実施の形態のセラミックシートでは、65cmまで通信距離が拡張しており、比較例に比べ優れていることがわかる。比較例は、センダストやパーマロイなどの金属系磁性体粉末を有機結合材で練り固めたセラミックシートであり。これはセラミック系焼成体のセラミック特性が良く、緻密質なセラミック部材で形成されているためである。
次いで、本実施の形態のセラミックシートと、同上の比較例との柔軟性について比較した。比較方法は、各比較片を90度に折り曲げ、その繰り返しでの性状変化を調べた。(表3)は、90度折り曲げ試験回数の比較結果である。
Figure 0004400509
この表から、本実施の形態に係るセラミックシートは、比較例に比べ耐久性が優れていることが分かる。これは、磁性ブロックにテーパ面を設け、隣接する焼成体とのぶつかりを防ぎ、あるいは、シートに接する磁性ブロックに曲面を設けることにより、柔軟性が向上したためである。
さらに、無線通信媒体処理用アンテナ装置を用いて、本実施の形態に係るセラミックシートと、従来の技術である比較例との通信距離について比較した。
図3は、無線通信媒体処理用のアンテナ装置41の断面図である。なお、図3では、シート13a、13b、13cは省略している。31は樹脂ケース、32はアンテナパターン、33はアンテナ基板、34はGNDパターン、35は整合回路などの回路パターン、11、21はセラミック系材料の磁性部材、37は樹脂スペーサーである。アンテナパターン32は、開口部を有しており(つまりループアンテナを形成しており)、図3に示すように磁性部材11、21上に設けられている。即ち、アンテナパターン32は、複数の磁性ブロックに近接されている。なお、アンテナパターン32を、複数の磁性ブロックに当接することも可能である。
図4は、アンテナ装置41を備えた無線通信媒体処理装置1の斜視図である。無線通信媒体処理装置1は、図4に示すように、アンテナ装置41、リーダーライター(R/W)装置43、及びRF(Radio Frequency)ユニット44を有している。アンテナ装置41は、ケーブル42を介して、リーダーライター装置43に接続されている。リーダーライター装置43は、ケーブル45を介して、RFユニット44に接続されている。
リーダーライター(R/W)装置43は、読み書き部に対応しており、無線通信媒体との間で、アンテナ装置41を介して、無線通信媒体に格納されているデータの、読み及び書きの少なくとも一方を行う。無線通信媒体とは、近接した距離(例えば数cmから数m)で無線通信を行うことが出来る媒体であって、例えば、RF−ID(Radio Frequency−IDentification)タグ、ICタグ、電子タグ、ICカードなどがある。
通信方式としては、例えば13.56MHzの周波数帯域を用いる電磁誘導方式や、例えば800MHz以上の周波数帯域(例えば900MHz帯)を用いるマイクロ波方式がある。電磁誘導方式の場合、セラミック系材料の磁性部材11、21は、磁性体で構成される。マイクロ波方式の場合、セラミック系材料の磁性部材11、21は、誘電体で構成される。
ここで、セラミック系材料の磁性部材11、21の形状は、180mm×210mm×3mmとして、縦6mm、横6mmピッチで金型または、両刃形状のカッター刃で、非接触面12、22が形成できるように、深さ1.5mmのスリットを入れる。スリットは、外部応力や衝撃に対してクラックや割れや欠けなどの発生を防止するために、グリーンシートの両面に入れ、900℃にて4時間焼成した。また、アンテナパターン32は、厚み2mmのアルミニウム製ループアンテナで、上記磁性部材の上に基板を介して設置した。
アンテナパターン32は、ループアンテナを形成しているので、無線通信媒体の位置、向きに関わらず、通信することが出来る。なお、アンテナの形状は、必ずしもループ状である必要はなく、スパイラル状に形成してもよい。
次いで、アンテナ装置からの磁束の発生と、アンテナ装置の底部に金属が存在する場合の磁性部材の効果とについて説明する。
図5(a)は、本発明に係るアンテナ装置41で発生する磁束分布の説明図、図5(b)は、従来の技術のアンテナ装置51で発生する磁束分布の説明図である。アンテナ装置41、51は、いずれも金属材52上に搭載されているが、アンテナ装置41には、図5(a)に示すように、従来の技術のアンテナ装置51と異なり、内部にセラミックシート10が設置されている。なお、アンテナ装置41、51は、セラミックシート10以外の構成については同一であるとする。
従来の技術のアンテナ装置51に信号が入力すると、金属内を通過する磁束90の周りに渦電流が発生し、熱に変換されるので、磁束90が縮小する。一方、アンテナ装置41に信号が入力すると、アンテナ装置51と同様に、アンテナ近傍に磁束90が発生するが、内部にセラミックシート10が設置されているので、磁束90の多くはセラミックシート10の磁性部材を通過する。その結果、金属材52内で渦電流がほとんど発生しないので、金属材52の影響を受けることなく、磁束90が拡張して、通信距離が伸びる。なお、セラミックシート20であっても、上記と同様の効果が得られる。
次いで、このアンテナ装置41の出力を2.5Wとして、無線通信媒体の例としてのICタグを用いて、上記磁性部材での通信距離を測定した。(表4)は、周波数13.56MHzにおける通信距離の測定結果である。
Figure 0004400509
この表から、本実施の形態のセラミックシートでは、35cmまで通信距離が拡張しており、比較例に比べ優れていることが分かる。これはセラミック系材料の緻密質な磁性部材で形成されているためである。
以上より、無線通信媒体処理用のアンテナ装置41を、商品棚や、商品籠として利用した場合に、適切に商品管理を行うことが可能となる。
例えば、商品が医薬品などの場合には、これらの商品に付するICタグなどに、予めその名称、有効期限、納入日などを設定しておき、箱状体を医薬品収納棚として利用する場合には、医薬品の在庫管理が容易になり、例えば有効期限直前の薬をあらかじめ廃棄し、どの薬がどの程度残っているかを収納しているだけで確認できるようになる。同様に、商品を書籍や食料品などとした場合であっても同じである。このため、棚卸などの効率が非常に向上するメリットがある。
このように、セラミック系材料のセラミックシートを、板状やシート状などに加工して、ICタグなどを始めとする無線通信媒体に組み込まれるアンテナや、この無線通信媒体との通信を行うアンテナの背面や底面、側面などの位置に近接、又は当接させた形態とすることで、従来の金属系磁性粉体を用いた磁性部材よりも、周囲の金属の影響を回避して、その磁界強度を強めることができ、通信距離を伸ばすことが可能となる。更にその上、フェライトや金属系磁性粉体を用いた場合に比べて、柔軟性の高いセラミック部材とすることができるため、製造時や運搬時、あるいは使用時に損傷などが生じにくく、耐久性の高いアンテナ装置を形成することができる。これにより、無線通信媒体、および無線通信媒体処理装置の性能と耐久性の同時向上を実現することが可能となるものである。
なお、磁性部材の外側(アンテナと共に磁性部材を挟む位置に)金属部材を設けることで、シールドの役割を有し、外側にアンテナから発せられる磁界の漏洩を防止できるメリットがある。これにより。例えばアンテナの内側のみに存在する無線通信媒体のみとのやり取りを行いたい場合に好適である。
次に、図2のセラミックシート20の製造方法について、詳細に説明する。
まず、第1の工程では、ブチラールなどの樹脂とフタール酸系の可塑剤などと、酢酸ブチルなどの溶剤とを溶解させたビークルと、セラミック粉末であるNi、Zn、Cu系などのフェライト粉末とを混練してなる磁性体スラリーを、PETなどのキャリアフィルムの上面に、ドクターブレード法などのシート成形方法により塗布する。その後、連続して乾燥を行い、厚み0.1mmのキャリアフィルム上に幅500mm、厚み0.3mmのフェライトグリーンシートを形成する。なお、セラミックシートを誘電体のブロックで構成する場合は、フェライトグリーンシートを、例えばTi酸化物で形成しても良い。
第2の工程では、縦200mm、横150mm、厚み0.3mmのフェライトグリーンシートの上面に縦2.5mm、横2.5mmピッチで、非接触面22が形成できるように、両刃のカッター刃にて、0.15mmのスリットを設ける。
第3の工程では、スリットを設けたセラミックグリーンシートを、平滑なアルミナ質基板上にて900℃−3時間で焼成し、図6に示す焼成体を生成する。図6は、スリット66を設けて焼成させた焼成体61からなるセラミックシート20の示す断面図である。グリーンシートは、焼成反応により、スリット66を設けた部分近傍が、他の部分より収縮するので、スリット66を設けた面と反対の面に曲面23が形成される。焼成条件として、900℃−3時間の場合を示したが、750℃〜1、100℃−5時間以下であれば、特にこれに限る必要はない。焼成温度が、750℃以下の場合、完全に焼成しなくなる一方、焼成温度が、1100℃以上の場合、焼成体の脆性が劣化するからである。
第4の工程では、図6に示す焼成体61に、スリット面の反対面または両面に、厚み0.06mmのアクリル系粘着材(商品名:9313B、住友3M[登録商標]製)を有する、PET系のシート13cを接着して保持する。焼成された焼成体61には、アクリル系粘着材を有したPET系のシート13cを接着する面が曲面23を有しているので、図6の破線で示す領域24では、磁性部材61とシート13cとの密着強度が、当該領域24以外の部分より小さいことになる。
第5の工程では、焼成体61をシート13c上に載置した状態で分割して、図1、図2に示すセラミックシート10、20を作製し、柔軟性が形成できるようにする。分割した焼成体61上にアクリル系粘着材を有したPET系のシート13cを接着して焼成体が脱落しないように保持する。なお、このアクリル系粘着材を有したPET系のシート13cは、焼成体61を分割する前に接着してもよく、所望のセラミックシートが得られる。
以上より、セラミックシート20を上述した方法で製造することで、グリーンシートは、焼成反応により、スリット66が設けられた部分近傍が、他の部分より収縮するので、隣接する磁性ブロック25同士が接触しない非接触面22を容易に形成することが出来る。また、焼成体61をシート13c上に載置したまま分割するので、焼成体61を分割した磁性ブロック25を1つずつシート上に載置する必要がなくなり、セラミックシート20を容易に製造することが出来る。
本発明に係るセラミックシートは、柔軟性を確保しながら、成形加工性に優れ、RF−IDのリーダー/ライターや、タグ用のループ状アンテナ背面や側面に配置して用いられ、アンテナの背面における磁界の影響物体(渦電流発生)に対し影響を遮断するための用途に適用できる。
本発明に係る実施の形態におけるセラミックシートの断面図 本発明の他の変形例におけるセラミックシートの断面図 無線通信媒体処理用のアンテナ装置の断面図 アンテナ装置を備えた無線通信媒体処理装置の斜視図 (a)本発明に係るアンテナ装置で発生する磁束分布の説明図、(b)従来の技術のアンテナ装置で発生する磁束分布の説明図 スリットを設けて焼成させた焼成体からなるセラミックシートの示す断面図 従来の技術である磁性部材の内部拡大図
符号の説明
1 無線通信媒体処理装置
10、20 セラミックシート
11a、25a 接触面(底面)
11b、25b 対向面(側面)
11c 他の接触面(天面)
12 非接触面、他の接触面(テーパ面)
13a 他のシート(上位シート)
13b、13c シート(下位シート)
15、25 ブロック(磁性ブロック)
22 非接触面(カーブ面)
23 曲面
32 アンテナ(アンテナパターン)
41 アンテナ装置
43 読み書き部(リーダーライター装置)
61 焼成体
66 スリット

Claims (8)

  1. 柔軟性を有する2枚のシートと、
    前記2枚のシートの間に相互に接触して載置された磁性体からなる複数のブロックとを備え、
    前記各ブロックは、前記2枚のシートに接する対向した2つの接触面と、
    隣接する他のブロックと接触する対向面と、
    前記接触面と前記対向面との間に有する隣接する前記他のブロックや前記2枚のシート各々と接しない複数の非接触面とを備えたことを特徴とするセラミックシート。
  2. 前記非接触面はテーパ形状であることを特徴とする請求項1記載のセラミックシート。
  3. テーパ形状である前記非接触面が、厚み方向の面に対して15〜90%を占有するように構成したことを特徴とする請求項2記載のセラミックシート。
  4. 前記非接触面は前記対向面から連続した曲面であることを特徴とする請求項1記載のセラミックシート。
  5. 前記磁性体はフェライトであることを特徴とする請求項1記載のセラミックシート。
  6. 前記シートはプラスチックからなり、
    前記複数のブロックは前記シート上に粘着材を介して載置されたことを特徴とする請求項1記載のセラミックシート。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載のセラミックシートと、
    前記複数のブロックに当接または近接されたアンテナと備え、
    前記アンテナはデータが格納された無線通信媒体と通信を行うことを特徴とするアンテナ装置。
  8. 請求項7に記載のアンテナ装置と、
    前記無線通信媒体との間で前記アンテナ装置が備えたアンテナを介して前記データの読み及び前記データの書きの少なくとも一方を行う読み書き部とを備えたことを特徴とする無線通信媒体処理装置。
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