ここで、下部層間絶縁層を形成する際、この下部層間絶縁層に対して熱処理を施して、下部層間絶縁層を溶融させて、この下部層間絶縁層の表面を平坦化させる、リフロー処理が行われることがある。この際、下部層間絶縁層の表面が変質することによって、該表面に、下部層間絶縁層の内部よりエッチャントに対するエッチングレートが小さい硬化層が形成される恐れがある。その結果、たとえ、前述したように、上部層間絶縁層及び下部層間絶縁層におけるエッチャントに対するエッチングレートを夫々調整しても、コンタクトホールの壁面において、該壁面より硬化層の一部が突出した状態となり、ツボ型の形状を有するコンタクトホールが形成される。よって、上述したような断線不良がコンタクトホール内で生じることにより、電気光学装置の製造工程における歩留まりが低下するという問題点が生じる。
本発明は、例えば上記問題点に鑑みなされたものであり、コンタクトホール内における断線不良を防止することが可能な電気光学装置及びその製造方法、並びに各種電子機器を提供することを課題とする。
本発明の電気光学装置の製造方法は上記課題を解決するために、基板上に、(i)画素電極又は該画素電極を駆動するための配線及び電子素子の少なくとも一部を夫々構成する、下部導電層及び該下部導電層より上層側に設けられた上部導電層と、(ii)前記下部導電層及び前記上部導電層間にこれらを層間絶縁するように形成された、下部層間絶縁層及び該下部絶縁層より上層側に設けられた上部層間絶縁層とを備えた電気光学装置を製造する電気光学装置の製造方法であって、前記基板上に、前記下部層間絶縁層の前駆膜を成膜する第1工程と、前記前駆膜を加熱して流動化させることにより前記前駆膜の表面に対して平坦化処理を施す第2工程と、該第2工程の後に、前記前駆膜の表面の少なくとも一部を、第1のエッチング処理を施して後退させることで、前記下部絶縁層を形成する第3工程と、前記下部層間絶縁層上に、前記上部層間絶縁層を形成する第4工程と、前記上部導電層及び前記下部導電層を互いに電気的に接続するためのコンタクトホールを、前記下部層間絶縁層の表面において前記第1のエッチング処理により後退させた部分を通過するように、前記上部層間絶縁層及び前記下部層間絶縁層に、第2のエッチング処理によって開孔する第5工程とを含む。
本発明の電気光学装置の製造方法によれば、基板上に、画素電極又は該画素電極を駆動するための走査線、データ線等の配線や画素スイッチング用のTFT等の電子素子の少なくとも一部を夫々形成する下部導電層及び上部導電層が形成される。上部導電層は、下部導電層の上層側に形成され、下部導電層及び上部導電層間には、これらを層間絶縁する、下部層間絶縁層及び上部層間絶縁層が形成される。このように構成した場合、上部層間絶縁層は、下部導電層より上層側に形成された下部層間絶縁層の上層側であって、上部導電層の下層側に形成される。尚、本発明において「導電層」には、例えばアルミニウム(Al)を含む比較的低抵抗の金属材料により形成される層が含まれるほか、高濃度或いは低濃度にドーピングされた導電性ポリシリコン等の半導体層も含まれる。よって、上部導電層及び下部導電層は夫々、金属材料により形成されるほか、半導体層により形成されることもある。
本発明の電気光学装置の製造方法では、第1工程において、下部導電層の上層側に、下部層間絶縁層の前駆膜を、例えば常圧CVD(Chemical Vapor Deposition)法によりボロンリンガラス(Borophosphosilicateglass:以下適宜“BPSG”と呼ぶ)膜として成膜する。この際、前駆膜は、好ましくは、下部層間絶縁層における、第2のエッチング処理のウエットエッチング法で用いられるエッチャントに対するエッチングレートが、上部層間絶縁層と同等か、それよりも小さくなるように成膜される。このように成膜された前駆膜の表面には、該前駆膜より下層側に形成された下部導電層を含む積層構造の段差形状に応じた凹凸が形成されている。
続いて第2工程では、前駆膜を加熱して流動化させるリフロー処理を行うことにより、前駆膜の表面に対して平坦化処理を施す。これにより、前駆膜の表面に形成された段差が緩和される、即ち該表面の凹凸が均される。本発明において、「平坦化」及び「平坦化処理」はそれぞれ、前述したように前駆膜の表面における段差の勾配を多少なりとも緩和すること、及び、そのような処理を意味し、前駆膜の表面を完全な平坦面とする場合の他、前駆膜の表面の段差が処理前に比べて緩やかになる場合を含んでいる。ここで、例えば液晶装置のように、基板と、該基板と対向して配置される対向基板との間に電気光学物質を挟みこんだ電気光学装置において、駆動時に生じる横電界を低減するために画素同士の境界領域に設ける段差部を、電子素子や配線による段差を利用して形成することが多い。この場合の平坦化処理は、流動化時の加熱温度等により平坦度を調整することにより、前駆膜の表面に段差部形成のための適度の凹凸が残る程度に実施される。
続いて第3工程では、前駆膜において、リフロー処理が施された表面の少なくとも一部に対して第1のエッチング処理を行って、該一部を後退させて、下部層間絶縁層を形成する。例えば、第1のエッチング処理は、ドライエッチング法又はウエットエッチング法により行い、前駆膜の表面全体を後退させる。或いは、前駆膜の表面において、下部層間絶縁層のコンタクトホールが開孔される部分に対応する一部を少なくとも後退させる。これにより、上述したようなリフロー処理において、前駆膜の表面が変質することにより、該表面に形成された硬化層の少なくとも一部を除去することができる。
尚、第3工程の後、下部導電層及び上部導電層の間に、下部導電層、又は下部導電層及び上部導電層とは別の導電層に電気的に接続される中間導電層を、下部層間絶縁層上に形成してもよい。或いは、後述するように、第3工程より前に、中間導電層を予め前駆膜上に形成し、第3工程において第1のエッチング処理を中間導電層に対して行うことにより、中間導電層を所定パターンにパターニングするようにしてもよい。
ここで、前駆膜より形成された下部層間絶縁層の表面は平坦化されているため、その上に、中間導電層をパターン形成する際に、下部層間絶縁層の段差部分に発生するエッチ残り等の不具合を解消することが可能となる。また、このような下部層間絶縁層の表面における緩やかな段差形状が、下部層間絶縁層よりも上層側に形成される上部層間絶縁層の表面形状に伝播されることで、最終的に画素電極の下地の表面形状に反映されることとなる。よって、例えば液晶装置のような電気光学装置では、配向膜の配向処理をその全面に渡って均一に行うことを可能とし、電気光学物質の配向状態をよりよく規制すると共に表示面全面にわたって揃えることができるため、電気光学装置の表示品質を改善することが可能となる。
続いて第4工程では、下部層間絶縁層の上層側に上部層間絶縁層を形成する。上部層間絶縁層は、例えば常圧又は減圧CVD法により、BPSG膜として成膜される。上部層間絶縁層は、第2のエッチング処理におけるウエットエッチング法で用いられるエッチャントに対するエッチングレートが、下部層間絶縁層と同等か、それよりも大きくなるように形成されるのが好ましい。また、成膜した上部層間絶縁層の表面に対して前述したような平坦化処理が行われてもよい。
第5工程では、上部層間絶縁層及び下部層間絶縁層に対して第2のエッチング処理を施すことにより、上部層間絶縁層の上層側に形成される上部導電層及び下部導電層を互いに電気的に接続するためのコンタクトホールを、上部層間絶縁層及び下部層間絶縁層を貫通させて開孔する。この際、コンタクトホールは、下部層間絶縁層の表面において、第1のエッチング処理が施されることによって硬化層が除去された部分を通過して開孔される。ここで、第2のエッチング処理は、例えばドライエッチング法又はウエットエッチング法により行う。
よって、コンタクトホールを開孔する際、該コンタクトホールの側壁に硬化層の表面は露出しないため、該コンタクトホールがツボ型の形状として形成されるのを防止することができる。また、第1及び第4工程において、上部層間絶縁層及び下部層間絶縁層における、第2のエッチング処理で用いられるエッチャントに対するエッチングレートが、上述したように調整されることにより、コンタクトホールの側壁において、上部層間絶縁層及び下部層間絶縁層の界面に位置する部分にえぐれが生じるのをより確実に防止することが可能となる。よって、このように形成されたコンタクトホールを介して上部導電層及び下部導電層を電気的に接続すれば、コンタクトホール内における断線不良を防止することが可能となる。
従って、以上説明したような、本発明の電気光学装置の製造方法によれば、歩留まりを向上させることが可能となる。
本発明の電気光学装置の製造方法の一態様では、前記第3工程において、前記第1のエッチング処理を、ドライエッチング法又はウエットエッチング法により行う。
この態様によれば、例えば、第3工程において、第1のエッチング処理を、ドライエッチング法又はウエットエッチング法により行い、前駆膜の表面全体を後退させる。これにより、表面より概ね全体的に硬化層が除去された下部層間絶縁層を形成することが可能となる。
本発明の電気光学装置の製造方法の他の態様では、前記下部層間絶縁層及び前記上部層間絶縁層間に、前記コンタクトホールを介して前記下部導電層に電気的に接続されるか、又は前記コンタクトホールと異なるコンタクトホールを介して前記下部導電層又は前記下部導電層とは異なる別の導電層に電気的に接続される中間導電層を形成する工程を更に含み、前記第3工程では、前記中間導電層上に所定パターンのレジストを形成し、該レジストを介して前記中間導電層に対して前記第1のエッチング処理を施すことにより、前記中間導電層をパターニングして、前記中間導電層における前記レジストより露出する部分を除去した後、前記中間導電層における除去された部分から露出した前記前駆膜の表面を後退させて、前記下部層間絶縁層を形成する。
この態様によれば、第3工程より前若しくは後に、下部層間絶縁層の上層側であって、上部層間絶縁層より下層側に中間導電層を形成する。この中間導電層は、例えば、前述したような第5工程において形成されるコンタクトホール内に導電膜を成膜することによって形成されたプラグを介して下部導電層に電気的に接続される。或いは、第5工程において形成されるコンタクトホールとは異なる、別のコンタクトホールを介して下部導電層に電気的に接続されるようにしてもよいし、下部導電層とは別の導電層に電気的に接続されてもよい。
例えば、中間導電層を、第3工程より前であって、且つ前駆膜上に形成する。そして、第3工程において、中間導電層に対して、所定パターンのレジストを介して第1のエッチング処理を行うことにより、中間導電層をパターニングする。この際、パターニングが終了した時点で、中間導電層において、パターニングにより除去された部分より、前駆膜の表面が部分的に露出する。そして、このように部分的に露出した前駆膜の表面に対して、継続して第1のエッチング処理を行ってオーバーエッチングすることにより、該表面に形成された硬化層を除去することが可能となる。
尚、中間導電層が前駆膜上に形成され、第5工程において形成されるコンタクトホールとは異なるコンタクトホールを介して、下部導電層又は別の導電層に電気的に接続される場合、中間導電層と、下部導電層又は別の導電層とを電気的に接続するためのコンタクトホールは、前駆膜の表面に硬化層が形成されているため、ドライエッチング法により前駆膜に開孔されるのが好ましい。ドライエッチング法に代えて若しくは加えてウエットエッチング法を用いる場合には、コンタクトホールの側壁における前駆膜と硬化層との界面に位置する一部はドライエッチング法により形成されるのが好ましい。
よって、このように第3工程より前に前駆膜上に中間導電層を予め形成するようにすれば、第3工程の後に、中間導電層を下部層間絶縁層上にパターン形成する場合と比較して、当該電気光学装置の製造方法に係る工程数を削減することが可能となる。
本発明の電気光学装置の製造方法の他の態様では、前記第5工程において、前記第2のエッチング処理を、ドライエッチング法又はウエットエッチング法により行う。
この態様によれば、第5工程において、第2のエッチング処理を例えば次のようにドライエッチング法及びウエットエッチング法により行う。例えば上部層間絶縁層及び下部層間絶縁層に対してドライエッチング法を施して開孔した小穴を、ウエットエッチング法により掘り進めることによって、上部層間絶縁層及び下部層間絶縁層を貫通するコンタクトホールを形成する。このように製造すれば、コンタクトホールの内部に露出する下部導電層の表面が、第2のエッチング処理によって損傷する事態を防止すると共に、該表面に付着した汚れを除去することが可能となる。
この、第2のエッチング処理を、ドライエッチング法又はウエットエッチング法により行う態様によれば、前記第1及び第4工程において、前記上部層間絶縁層におけるエッチャントに対するエッチングレートが前記下部層間絶縁層より大きくなるように、前記前駆膜及び前記上部層間絶縁層を形成するように製造してもよい。
このように製造すれば、コンタクトホールの壁面を、深さ方向に対して垂直な方向に切断して得られるコンタクトホールの断面のサイズが、上部層間絶縁層から下部層間絶縁層に向かうにつれて小さくなるような、順テーパー形状として形成することが可能となる。この場合、第2のエッチング処理を、上部層間絶縁層及び下部層間絶縁層に対して、ウエットエッチング法、或いはドライエッチング法に加えてウエットエッチング法を施して行うことにより、コンタクトホールの壁面を順テーパ形状として形成することができる。
本発明の電気光学装置の製造方法の他の態様では、前記第1又は第4工程において、前記前駆膜又は前記上部層間絶縁層をボロンリンガラス膜により形成する。
この態様によれば、前駆膜をBPSG膜として形成した場合、BPSG膜は比較的高温で流動化する性質を有しているため、リフロー処理により平坦化を行うことが可能である。
また、前駆膜に代えて若しくは加えて上部層間絶縁層をBPSG膜により形成した場合、該BPSG膜の下地依存性により、前駆膜の表面に形成された硬化層を除去しないで、前駆膜上に上部層間絶縁層を形成すると、硬化層との界面において、上部層間絶縁層におけるエッチャントに対するエッチングレートが大きくなる恐れがある。これにより、第2のエッチング処理をウエットエッチング法を用いて行うと、コンタクトホールの側壁において、硬化層及び上部層間絶縁層の界面に位置する部分にえぐれが生じる。
よって、第3工程において、前駆膜の表面において、下部層間絶縁層のコンタクトホールが開孔される部分に対応する一部から、第1のエッチング処理により硬化層を除去すれば、上部層間絶縁層を、該上部層間絶縁層における、第2のエッチング処理で用いられるエッチャントに対するエッチングレートが均一となるように、形成することが可能となる。従って、コンタクトホールの側壁において、前述したようなえぐれが生じるのを防止することができる。
本発明の電気光学装置の製造方法の他の態様では、前記コンタクトホールを介して、前記上部導電層と同一又は異なる中継用導電層により、前記下部導電層及び前記上部導電層を電気的に接続する第6工程を更に備える。
この態様によれば、第6工程において、上部導電層を、コンタクトホール内に露出した下部導電層の表面を覆うように、連続的に形成するか、或いは、コンタクトホール内に、導電材料によりプラグを形成し、このプラグに接続されるように上部導電層を形成する。即ち、コンタクトホール内に形成された上部導電層の一部、又はプラグを形成する導電層により中継用導電層が形成される。よって、この態様によれば、コンタクトホールにおける断線不良を防止して、上部導電層及び下部導電層をコンタクトホールを介して相互に電気的に接続することが可能となる。
本発明の電気光学装置は上記課題を解決するために、基板上に、画素電極又は該画素電極を駆動するための配線及び電子素子の少なくとも一部を夫々構成する、下部導電層及び該下部導電層より上層側に設けられた上部導電層と、前記下部導電層及び前記上部導電層間にこれらを層間絶縁するように形成された、下部層間絶縁層及び該下部絶縁層より上層側に設けられた上部層間絶縁層とを備えており、前記下部絶縁層は、前記基板上に、前記下部層間絶縁層の前駆膜を成膜し、前記前駆膜を加熱して流動化させることにより前記前駆膜の表面に対して平坦化処理を施し、前記前駆膜の表面の少なくとも一部を、第1のエッチング処理を施して後退させることで形成され、前記上部導電層及び前記下部導電層を互いに電気的に接続するためのコンタクトホールが、前記下部層間絶縁層の表面において前記第1のエッチング処理により後退させた部分を通過するように、前記上部層間絶縁層及び前記下部層間絶縁層に、第2のエッチング処理によって開孔されている。
即ち、本発明の電気光学装置は、上述した本発明の電気光学装置の製造方法(但し、その各種態様を含む)によって製造される。よって、配線等の断線不良を防止して、装置の信頼性が高い電気光学装置を実現すると共に、電気光学装置において高品質な画像表示を行うことが可能となる。
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置を具備する。
本発明の電子機器は、上述した本発明の電気光学装置を具備してなるので、装置の信頼性が高く且つ高品質な画像表示を行うことが可能な投射型表示装置、テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。また、本発明の電子機器として、例えば電子ペーパなどの電気泳動装置、電子放出装置(Field Emission Display及びConduction Electron-Emitter Display)、これら電気泳動装置、電子放出装置を用いた装置としてDLP(Digital Light Processing)等を実現することも可能である。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされる。
以下では、本発明の実施の形態について図1から図15を参照して説明する。以下の実施形態は、本発明の電気光学装置を液晶装置に適用したものである。
<1:電気光学装置の全体構成>
まず、本発明の電気光学装置の全体構成について、図1及び図2を参照して説明する。ここに、図1は、TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た電気光学装置の平面図であり、図2は、図1のH−H’断面図である。ここでは、電気光学装置の一例である駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例にとる。
図1及び図2において、本実施形態に係る電気光学装置では、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10と対向基板20との間に液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10と対向基板20とは、画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。また、シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。即ち、本実施形態の電気光学装置は、プロジェクタのライトバルブ用として小型で拡大表示を行うのに適している。
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。なお、本実施形態においては、前記の画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域が存在する。言い換えれば、本実施形態においては特に、TFTアレイ基板10の中心から見て、この額縁遮光膜53より以遠が周辺領域として規定されている。
周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。また、走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、前記額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、前記額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
また、対向基板20の4つのコーナー部には、両基板間の上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、TFTアレイ基板10にはこれらのコーナー部に対向する領域において上下導通端子が設けられている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
図2において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜が形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21の他、格子状又はストライプ状の遮光膜23、更には最上層部分に配向膜が形成されている。また、液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。
なお、図1及び図2に示したTFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
<2:画素部における構成>
以下では、本発明の本実施形態における電気光学装置の画素部における構成について、図3から図6を参照して説明する。
ここに図3は、電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路であり、図4は、データ線、走査線、画素電極等が形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の平面図である。また、図5は、図4のA−A´断面図である。なお、図5においては、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。
図3において、本実施形態における電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素には、それぞれ、画素電極9aと当該画素電極9aをスイッチング制御するためのTFT30とが形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
また、TFT30のゲートに走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。
画素電極9aを介して電気光学物質の一例としての液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として電気光学装置からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射する。
ここで保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9aと対向電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70を付加する。
次に、図4及び図5を参照して、画素部の具体的な構成について説明する。図4において、電気光学装置のTFTアレイ基板10上には、X方向及びY方向に対してマトリクス状に複数の透明な画素電極9a(点線部9a'により輪郭が示されている)が設けられており、画素電極9aの縦横の境界に各々沿ってデータ線6a及び走査線3aが設けられている。尚、画素電極9aは本発明に係る「上部導電層」の一例に相当する。
また、半導体層1aのうち図4中右上がりの斜線領域で示したチャネル領域1a'に対向するように走査線3aが配置されており、走査線3aはゲート電極を含む。このように、走査線3aとデータ線6aとの交差する個所には夫々、チャネル領域1a'に走査線3aの一部がゲート電極として対向配置された画素スイッチング用のTFT30が設けられている。
データ線6aは本発明に係る「中間導電層」の一例に相当し、その上面が平坦化された、本発明に係る「下部層間絶縁層」の一例である第2層間絶縁膜42を下地として形成されており、コンタクトホール81を介してTFT30の高濃度ソース領域に接続されている。データ線6a及びコンタクトホール81内部は、例えば、Al−Si−Cu、Al−Cu等のAl(アルミニウム)含有材料、又はAl単体、若しくはAl層とTiN層等との多層膜からなる。また、このデータ線6aは、TFT30に対する遮光膜としても機能するようになっている。尚、本実施形態では特に、電気光学装置は後述するような本発明独自の製造方法により製造されるため、データ線6aの下地は、第2層間絶縁層42の形成時、第2層間絶縁膜42上に残る硬化層42aaにより形成される。
蓄積容量70は、TFT30の高濃度ドレイン領域1e及び画素電極9aに接続された画素電位側容量電極としての下部容量電極71と、固定電位側容量電極としての上部容量電極300の一部とが、誘電体膜75を介して対向配置されることにより形成されている。
図4及び図5に示すように、上部容量電極300は、例えば金属又は合金を含む導電性の遮光膜からなり、上側遮光膜(内蔵遮光膜)としてTFT30の上側に設けられている。また、この上部容量電極300は、固定電位側容量電極としても機能する。上部容量電極300は、例えば、Ti(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)、Pd(パラジウム)等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等からなる。或いは、上部容量電極300は、Al(アルミニウム)、Ag(銀)等の他の金属を含んでもよい。但し、上部容量電極300は、例えば導電性のポリシリコン膜等からなる第1膜と高融点金属を含む金属シリサイド膜等からなる第2膜とが積層された多層構造を持ってもよい。
他方、下部容量電極71は本発明に係る「下部導電層」の一例に相当し、例えば導電性のポリシリコン膜からなり画素電位側容量電極として機能する。下部容量電極71は、画素電位側容量電極としての機能の他、上側遮光膜としての上部容量電極300とTFT30との間に配置される、光吸収層或いは上側遮光膜の他の例としての機能を持ち、更に、画素電極9aとTFT30の高濃度ドレイン領域1eとを中継接続する機能を持つ。但し、下部容量電極71も、上部容量電極300と同様に、金属又は合金を含む単一層膜若しくは多層膜から構成してもよい。
容量電極としての下部容量電極71と上部容量電極300との間に配置される誘電体膜75は、例えばHTO(High Temperature Oxide)膜、LTO(Low Temperature Oxide)膜等の酸化シリコン膜、あるいは窒化シリコン膜等から構成される。蓄積容量70を増大させる観点からは、膜の信頼性が十分に得られる限りにおいて、誘電体膜75は薄い程良い。
また上部容量電極300は、画素電極9aが配置された画像表示領域10aからその周囲に延設され、定電位源と電気的に接続されて、固定電位とされる。係る定電位源としては、走査線駆動回路104やデータ線駆動回路101に供給される正電源や負電源の定電位源でもよいし、対向基板20の対向電極21に供給される定電位でも構わない。
一方、TFT30の下側には、下地絶縁膜12を介して下側遮光膜11aが格子状に設けられている。
下側遮光膜11aは、TFTアレイ基板10側から装置内に入射する戻り光からTFT30のチャネル領域1a´及びその周辺を遮光するために設けられている。この下側遮光膜11aは、上側遮光膜の一例を構成する上部容量電極300と同様に、例えば、Ti、Cr、W、Ta、Mo、Pd等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等からなる。更に、下側遮光膜11aについても、その電位変動がTFT30に対して悪影響を及ぼすことを避けるために、上部容量電極300と同様に、画像表示領域10aからその周囲に延設して定電位源に接続するとよい。
下地絶縁層12は、下側遮光膜11aからTFT30を層間絶縁する機能の他、TFTアレイ基板10の全面に形成されることにより、TFTアレイ基板10の表面の研磨時における荒れや、洗浄後に残る汚れ等で画素スイッチング用TFT30の特性の劣化を防止する機能を有する。
画素電極9aは、下部容量電極71を中継することにより、コンタクトホール83及び85を介して半導体層1aのうち高濃度ドレイン領域1eに電気的に接続されている。即ち、本実施形態では、下部容量電極71は、蓄積容量70の画素電位側容量電極としての機能及び光吸収層としての機能に加えて、画素電極9aをTFT30へ中継接続する機能を果たす。このように下部容量電極71を利用すれば、層間距離が例えば2000nm程度に長くても、両者間を一つのコンタクトホールで接続する技術的困難性を回避しつつコンタクトホール及び溝で両者間を良好に接続でき、画素開口率を高めること可能となり、コンタクトホール開孔時におけるエッチングの突き抜け防止にも役立つ。
図4及び図5に示すように、電気光学装置は、透明なTFTアレイ基板10と、これに対向配置される透明な対向基板20とを備えている。TFTアレイ基板10は、例えば石英基板、ガラス基板、シリコン基板からなり、対向基板20は、例えばガラス基板や石英基板からなる。
TFTアレイ基板10には、画素電極9aが設けられており、その上側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜16が設けられている。画素電極9aは例えば、ITO(Indium Tin Oxide)膜などの透明導電性膜からなる。また配向膜16は例えば、ポリイミド膜などの有機膜からなる。
他方、対向基板20には、その全面に渡って対向電極21が設けられており、その下側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜22が設けられている。対向電極21は例えば、ITO膜などの透明導電性膜からなる。また配向膜22は、ポリイミド膜などの有機膜からなる。
対向基板20には、格子状又はストライプ状の遮光膜を設けるようにしてもよい。このような構成を採ることで、上部容量電極300として設けられた上側遮光膜と併せ、TFTアレイ基板10側からの入射光のチャネル領域1a'ないしその周辺への侵入を阻止するのをより確実に阻止することができる。尚、対向基板20上の遮光膜は、少なくとも外光が照射される面において反射率が高くなるように形成することにより、電気光学装置の温度上昇を防ぐ働きをする。
このように構成され、画素電極9aと対向電極21とが対面するように配置されたTFTアレイ基板10と対向基板20との間には、液晶層50が形成される。液晶層50は、画素電極9aからの電界が印加されていない状態で配向膜16及び22により所定の配向状態をとる。
図5において、画素スイッチング用TFT30は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、走査線3a、当該走査線3aからの電界によりチャネルが形成される半導体層1aのチャネル領域1a'、走査線3aと半導体層1aとを絶縁するゲート絶縁膜を含む絶縁膜2、半導体層1aの低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c、半導体層1aの高濃度ソース領域1d並びに高濃度ドレイン領域1eを備えている。
走査線3a上には、高濃度ソース領域1dへ通じるコンタクトホール81及び高濃度ドレイン領域1eへ通じるコンタクトホール83が各々開孔された第1層間絶縁膜41が形成されている。
第1層間絶縁膜41上には下部容量電極71及び上部容量電極300が形成されており、これらの上には、コンタクトホール81及び85が各々開孔された第2層間絶縁膜42が形成されている。
本実施形態における第2層間絶縁膜42は、例えばBPSG膜からなり、加熱による流動化状態を経ることによって上面が平坦化されている。即ち、その成膜時の上面には、下層側の蓄積容量70やTFT30、走査線3a、更には下地遮光膜11aの存在によって段差が生じているが、一旦流動化されることで、上面は段差による凹凸が均された状態となっている。この平坦化処理については、後述する。この平坦化処理により、第2層間絶縁膜42の上面における平坦性は高くなっており、この上面に設けられたデータ線6a及び画素電極9aは、形成時にエッチ残りが発生しにくく、良好な状態でパターン形成されている。また、基板表面の段差が軽減されることから、配向膜16も概ね良好に配向処理を施すことができる。特に、近年ではTFTの光リーク電流の防止等の目的で装置の構造が複雑化しており、基板上に積層される層数が多くなっている。そのような場合、従来では上層になるほど層面における段差が大きくなり、段差が上記パターン形成に及ぼす影響が顕著であったが、このようにして第2層間絶縁膜42を平坦化すれば、基板上におけるエッチ残りを全般的に軽減することができる。
ここでは、第2層間絶縁膜42の上面は完全な平坦面ではなく、走査線3a等に起因する段差部17aが残されている。段差部17aは、横電界防止用として意図的に残存され、配向膜16上にまで伝播し、画素同士の境界にあたる遮光領域に所定高さの段差部17となって現れることで、駆動時に発生する画素間の横電界を低減するように機能する。
更に、データ線6aの上から第2層間絶縁膜42の全面を覆うように、コンタクトホール85が形成された第3層間絶縁膜43が、例えばBPSG膜により形成されている。この第3層間絶縁膜43は本発明に係る「上部層間絶縁層」の一例に相当し、下にAlを含有するデータ線6aが存在するため、加熱による平坦化処理は施されていない。画素電極9a及び配向膜16は、この第3層間絶縁膜43の上面に設けられている。
ここで、図6は、図5に示す画素電極9aと下部容量電極71との接続部分の構成をより詳細に示す断面図である。画素電極9aと下部容量電極71とを接続するためのコンタクトホール85は、第3層間絶縁膜43及び第2層間絶縁膜42並びに誘電体膜75に、第3層間絶縁膜43の表面から、第3層間絶縁膜43及び第2層間絶縁膜42並びに誘電体膜75を貫通して、下部容量電極71の表面に至るように、開孔されている。図6に示すように、コンタクトホール85の壁面は、深さ方向に対して垂直な方向に切断して得られる、このコンタクトホール85の断面のサイズが、第3層間絶縁膜43から第2層間絶縁膜42に向かうにつれて小さくなるような、順テーパー形状として形成されている。そして、画素電極9aを形成する導電膜は、第3層間絶縁膜43の表面からコンタクトホール85内に連続的に、該コンタクトホール85内に露出した下部容量電極71の一部を覆うように形成されている。
<3:電気光学装置の製造方法>
以下では、上述した実施形態の電気光学装置の製造プロセスについて、図9から図13を参照して説明する。図7から図10は、製造プロセスの各工程における図5に示す断面の構成を、順を追って示す工程図である。
尚、以下においては、画素部において、TFTアレイ基板10上に形成される、データ線6a、走査線3a、TFT30や蓄積容量70等の製造工程について特に詳しく説明することとし、対向基板20上に形成される配向膜22や対向電極21等の製造工程に関しては省略することとする。
先ず図7(a)の工程では、例えばシリコン基板、石英基板、ガラス基板等の基板10を用意する。ここで、好ましくはN2(窒素)等の不活性ガス雰囲気下、約850〜1300℃、より好ましくは1000℃の高温で熱処理し、後に実施される高温プロセスにおいて基板10に生じる歪みが少なくなるように前処理しておく。
続いて、このように処理された基板10の全面に、例えば、Ti、Cr、W、Ta、Mo及びPd等の金属や金属シリサイド等の金属合金膜を、スパッタリング法などにより、100〜500nm程度の膜厚、好ましくは約200nmの膜厚の遮光層を形成した後、例えばフォトリソグラフィ法及びエッチング処理により、図4に示したようなパターンの下側遮光膜11aを形成する。
続いて、下側遮光膜11aの上に、例えば、常圧又は減圧CVD法等によりTEOS(テトラ・エチル・オルソ・シリケート)ガス、TEB(テトラ・エチル・ボートレート)ガス、TMOP(テトラ・メチル・オキシ・フォスレート)ガス等を用いて、NSG(ノンシリケートガラス)や、燐(P)又は硼素(B)がドープされてなる、PSG、BSG、BPSG等のシリケートガラス膜、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜等からなる下地絶縁層12を形成する。
続いて、下地絶縁層12の上に、減圧CVD等によりアモルファスシリコン膜を形成し熱処理を施すことにより、ポリシリコン膜を固相成長させる。或いは、アモルファスシリコン膜を経ないで、減圧CVD法等によりポリシリコン膜を直接形成する。次に、このポリシリコン膜に対し、例えばフォトリソグラフィ法及びエッチング処理を施すことにより、図4に示した所定パターンを有する半導体層1aを形成する。更に、熱酸化すること等により、ゲート絶縁膜となる絶縁膜2を形成する。この結果、半導体層1aの厚さは、約30〜150nmの厚さ、好ましくは約35〜50nmの厚さとなり、絶縁膜2の厚さは、約20〜150nmの厚さ、好ましくは約30〜100nmの厚さとなる。
続いて、例えば、減圧CVD法等によりポリシリコン膜を約100〜500nmの厚さに堆積し、更に燐(P)を熱拡散して、このポリシリコン膜を導電化した後、フォトリソグラフィ法及びエッチング処理により、図4に示した所定パターンを有する走査線3aを形成する。次に、低濃度及び高濃度の2段階で不純物イオンをドープすることにより、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c、高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを含む、LDD構造の画素スイッチング用TFT30の半導体層1aを形成する。
次に図7(b)の工程では、例えば下地絶縁層12と同様にして、第1層間絶縁膜41を形成する。得られた第1層間絶縁膜41の上面には、図示したように、その下のTFT30や走査線3aの形状に応じた凹凸が生じている。
次に図7(c)の工程では、蓄積容量70を形成する。先ず、例えばドライエッチング法又はウエットエッチング法若しくはこれらの組み合わせにより、第1層間絶縁膜41にコンタクトホール83を開孔する。次いで、例えば、減圧CVD法等によりポリシリコン膜を堆積し、更に燐(P)を熱拡散し、このポリシリコン膜を導電化して下部容量電極71を形成する。更に、例えば、減圧CVD法、プラズマCVD法等により高温酸化シリコン膜(HTO膜)や窒化シリコン膜からなる誘電体膜75を膜厚50nm程度の比較的薄い厚さに堆積した後、Ti、Cr、W、Ta、Mo及びPd等の金属や金属シリサイド等の金属合金膜を、スパッタリングにより上部容量電極300を形成する。こうして、蓄積容量70を形成する。
次に図8(a)の工程では、例えば常圧CVD法を用いて、第2層間絶縁層膜42の前駆膜をBPSG膜421として成膜する。前駆膜421は、例えばBPSG膜421におけるP(燐)及びB(砒素)の濃度(重量%)の比P:B=5:4となるように形成される。また、前駆膜421は、膜厚が例えば800nmとなるように形成される。更に、この際、前駆膜421は、好ましくは、第2層間絶縁膜42における、後述する第2のエッチング処理のウエットエッチング法で用いられるエッチャントに対するエッチングレートが、第3層間絶縁膜43と同等か、それよりも小さくなるように成膜される。このようにして成膜された前駆膜421の表面には、下層側の走査線3a等の配線の存在に起因した段差部171aや、蓄積容量70の形状に応じた段差が生じている。
こうして得られたBPSG膜421の上面には、下層側の走査線3a等の配線の存在に起因した段差部171aや、蓄積容量70の形状に応じた段差が生じている。
次に図8(b)の工程では、前駆膜421を加熱により流動化させ、平坦化処理を施す。具体的には、例えば850℃程度で30〜40分間、基板10を加熱し、前駆膜421を溶融させる、即ち、リフローさせる。その結果、前駆膜421の表面における段差が緩和される。ここでは、電気光学装置の駆動時に画素間に生じる横電界を低減するために、画素同士の境界における走査線3a等に起因する段差部17が配向膜16上に所定の高さで現れるように、前駆膜421の表面に段差部17aが適度の大きさに残される。
尚、前述したようなリフロー処理において、前駆膜421の表面が変質することにより、該表面には硬化層42aaが、例えば50〜100nmの膜厚dで形成される。上述したように、図8(a)の工程で、前駆膜421を成膜する際に、第2層間絶縁膜42における、第2のエッチング処理のウエットエッチング法で用いられるエッチャントに対するエッチングレートが調整されるが、このようにして調整されたエッチングレートと比較して、硬化層42aaにおける、第2のエッチング処理で用いられるエッチャントに対するエッチングレートは、例えば1/3〜1/2程度の大きさとなる。
次に図9(a)の工程では、このように形成された硬化層42aaの上にデータ線6aを形成するための導電膜6aaを形成する。
先ず、硬化層42aaが形成された前駆膜421及び第1層間絶縁膜41に対する反応性イオンエッチング、反応性イオンビームエッチング等のドライエッチング法により、コンタクトホール81を開孔する。尚、コンタクトホール81は、ドライエッチング法に代えて又は加えてウエットエッチング法により形成してもよい。このようにウエットエッチング法を用いる場合には、コンタクトホール81の側壁における、前駆膜421と硬化層42aaとの界面に位置する一部をドライエッチング法により形成し、該一部を例えばレジスト等の保護膜で覆って、ウエットエッチング法によりコンタクトホール81を開孔すればよい。ウエットエッチング法のみでコンタクトホール81を形成する場合には、コンタクトホール81の側壁における、前駆膜421と硬化層42aaとの界面に位置する一部を例えばレジスト等の保護膜で覆って、該一部がエッチャントに曝されないように保護するとよい。
その後、前駆膜421の硬化層42aa上の概ね全面に、例えば、スパッタリング法等によりAlないしAl合金等のAlを含有した配線材料を堆積して、導電膜6aaを形成する。
続いて、図9(b)の工程では、導電層6aaに対して、所定パターンのレジストを介して第1のエッチング処理を行い、導電層6aaをパターニングしてデータ線6aを形成する。この際、パターニングが終了してデータ線6aが形成された時点において、導電層6aaのパターニングにより除去された部分より、前駆膜421の表面が部分的に露出する。そして、このように部分的に露出した前駆膜421の表面に対して、継続して第1のエッチング処理を行って、該表面を例えば厚さd1=50〜100nm程度、オーバーエッチングすることで、硬化層42aaを除去することが可能となる。これにより下部層間絶縁層42が形成され、データ線6aの下地として硬化層42aaが残存することとなる。ここで、第1のエッチング処理は、ドライエッチング法又はウエットエッチング法により行う。
このように、データ線6aをパターン形成する際、下地である前駆膜421の段差はかなり平坦化されているので、エッチ残りが発生し難く、パターニング後の表面状態が良好となる。
次に図10の工程では、第3層間絶縁膜43、及び画素電極9a、配向膜16を形成する。第3層間絶縁膜43は、例えば常圧又は減圧CVD法により、BPSG膜として形成される。或いは、第3層間絶縁膜43は、例えば常圧又は減圧CVD法により、PSGやBSGなどのシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等として形成される。下層にAlを含有するデータ線6aが存在するため、第3層間絶縁膜43は、例えば400℃以下の比較的低温で形成する必要がある。尚、第3層間絶縁膜43は、後述する第2のエッチング処理におけるウエットエッチング法で用いられるエッチャントに対するエッチングレートが、第2層間絶縁膜42と同等か、それよりも大きくなるように形成されるのが好ましい。また、第3層間絶縁膜43の表面は、その下層の第2層間絶縁膜42に施された平坦化処理の影響によって、何ら処理を施されずとも比較的凹凸が少ない面となっている。
続いて、第2層間絶縁膜42及び第3層間絶縁膜43に、コンタクトホール85を、次のようにして、第2のエッチング処理を行って開孔する。コンタクトホール85の開孔について図10に加えて、図11を参照して説明する。図11には、コンタクトホール85の開孔に係る各工程における図6に示す断面の構成を、順を追って示す工程図である。
図11(a)の工程では、第3層間絶縁膜43上に、例えばレジスト700を形成し、該レジスト700をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングして、コンタクトホール85の形成位置に対応する個所に、開口部を形成する。その後、レジスト700の開口部を介して、第3層間絶縁膜43及び第2層間絶縁膜42に対して、反応性イオンエッチング、反応性イオンビームエッチング等のドライエッチング法を行って、小穴85aを開孔する。尚、例えば、この小穴85aの初期穴を、レジスト700の開口部を介して、ウエットエッチング法を第3層間絶縁膜43に行い、第3層間絶縁膜43に開孔する。そして、更に、開孔した初期穴をドライエッチング法により掘り進めて小穴85aを開孔するようにしてもよい。
続いて、図11(b)の工程では、例えば、レジスト700の開口部を介して、第3層間絶縁膜43及び第2層間絶縁膜42に対して、ウエットエッチング法を行って、小穴85aを掘り進めることにより、コンタクトホール85を開孔する。
以上、図11を参照して説明したように、第2のエッチング処理は、ドライエッチング法及びウエットエッチング法により行われる。このように第2のエッチング処理を行えば、コンタクトホール85の内部に露出する下部容量電極71の表面が、第2のエッチング処理によって損傷する事態を防止すると共に、該表面に付着した汚れを除去することが可能となる。尚、第2のエッチング処理は、ドライエッチング法及びウエットエッチング法のいずれかにより行われてもよい。
また、上述したように、硬化層42aaはデータ線6aの下地として残存しているが、第3層間絶縁膜43及び第2層間絶縁膜42の界面において、少なくともコンタクトホール85が開孔される部分では、硬化層42aaは除去されている。これに対して、第3層間絶縁膜43及び第2層間絶縁膜42の界面に硬化層42aaが残存していると、第3層間絶縁膜43を例えばBPSG膜により形成した場合、この第3層間絶縁膜43における下地依存性により、硬化層42aaとの界面において、第3層間絶縁まく43における第2のエッチング処理で用いられるエッチャントに対するエッチングレートが大きくなる恐れがある。本実施形態では、このような事態を防止して、第3層間絶縁膜43を、該第3層間絶縁膜43における、エッチャントに対するエッチングレートが均一となるように形成することができる。
図10に戻り、コンタクトホール85を開孔した後、例えば、スパッタ処理等によりITO膜を形成し、更にフォトリソグラフィ法及びエッチングを行なうことにより、画素電極9aを形成する。
その後、この上にポリイミド系の配向膜の塗布液を塗布し、更に所定のプレティルト角を持つように所定方向にラビング処理等の配向処理を施すことにより、配向膜16が形成される。このとき、配向膜16の下地となる第3層間絶縁膜43の上面が概ね平坦であることから、配向処理を十分に行うことができ、液晶の配向状態がよりよく規制された装置を製造することができる。また、ここでは、第2層間絶縁膜42の平坦化の際に残存された、走査線3a等に起因する段差部17aが、この配向膜16上にまで伝播されて、画素同士の境界に所定の高さの段差部17として現れる。液晶層50における液晶の配向状態は、基板間距離と対応しており、基板間距離が概ね均一化されると共に、画素同士の境界に凸状の段差部17が形成されたことで横電界の影響が緩和されるために、その配向状態が表示面全面にわたって揃い、装置の表示品質が改善される。
ここで、図11を参照して説明したコンタクトホール85の開孔に係る比較例について、図12を参照して説明する。図12には、コンタクトホール85の開孔に係る比較例の各工程における図6に示す断面の構成を、順を追って示す工程図である。尚、図11と同様の構成要素には同一の符号を付して示すと共に、重複する説明を省略する。
図12(a)において、第2層間絶縁膜42の表面において、コンタクトホール85が開孔される部分に、硬化層42aaが形成されている。そして、図11(a)と同様に、例えばドライエッチング法により小穴85aが形成されている。この小穴85aの側壁の一部には、硬化層42aaの表面が露出している。
図12(b)において、図11(b)と同様に、ウエットエッチング法により、コンタクトホール85が開孔される。この際、第2層間絶縁膜42及び第3層間絶縁膜43よりエッチャントに対するエッチングレートが小さい硬化層42aaの一部が、コンタクトホール85の側壁に突出して、コンタクトホール85はツボ形の形状となる。
他方、図11を参照して説明したように、本実施形態では、コンタクトホール85を開孔する際、このコンタクトホール85の側壁に硬化層42aaの表面は露出しないため、当該コンタクトホール85がツボ型の形状として形成されるのを防止することができる。ここで、図8(a)の工程及び図10の工程で説明したように、第2層間絶縁膜42及び第3層間絶縁膜43の、第2のエッチング処理におけるエッチャントに対するエッチングレートが調整されると共に、このエッチングレートが第3層間絶縁膜43において均一となるように、第3層間絶縁膜43は形成されている。よって、コンタクトホール85は順テーパー形状として形成されると共に、コンタクトホール85の側壁において、第2層間絶縁膜42及び第3層間絶縁膜43の界面に位置する部分にえぐれが生じるのをより確実に防止することが可能となる。従って、このように形成されたコンタクトホール85を介して、画素電極9a及び下部容量電極71を電気的に接続することにより、コンタクトホール85内における断線不良を防止することが可能となる。
よって、以上説明したような本実施形態によれば、歩留まりを向上させることが可能となる。その結果、装置の信頼性が高い電気光学装置を実現すると共に、電気光学装置において高品質な画像表示を行うことが可能となる。
<4;変形例>
上述した電気光学装置の製造方法に係る変形例について、図13から図15を参照して、以下に説明する。図13及び図14は、本変形例の製造プロセスの各工程における図5に対応する断面の構成を、順を追って示す工程図である。また、図15には、コンタクトホール85における断線不良に起因する歩留まりの値を表にまとめて示してある。
図13(a)の工程では、図8(b)の工程と同様に、前駆膜421に対して平坦化処理を行う。これにより、前駆膜421の表面に硬化層42aaが形成される。
続いて、図13(b)の工程では、例えば、硬化層42aaが形成された前駆膜421及び第1層間絶縁膜41に、コンタクトホール81を形成するための小穴81aを開孔する。この小穴81aは、例えば、図9(a)の工程と同様に、ドライエッチング法又はウエットエッチング法を、前駆膜421及び第1層間絶縁膜41に対して行うことにより、前駆膜421及び第1層間絶縁膜41を貫通して、絶縁膜2の表面に至るように開孔される。
その後、図14(a)の工程では、第1のエッチング処理を、ドライエッチング法又はウエットエッチング法により、硬化層42aaが形成された前駆膜421の概ね表面全体に対して行い、該表面全体を後退させる。これにより、表面より概ね全体的に硬化層42aaが除去された第2層間絶縁膜42を形成することが可能となる。この際、図13(b)の工程において開孔された小穴81aが、第1のエッチング処理により掘り進められて、コンタクトホール81が開孔される。
続いて、図14(b)の工程では、例えば、図9(a)の工程と同様に、第2層間絶縁膜42の表面上に、配線材料を堆積して導電膜6aaを形成した後、この導電膜6aaに例えばフォトリソグラフィ法及びエッチング処理を施してパターニングを行い、データ線6aを形成する。
そして、図14(b)の工程の後、第3層間絶縁膜43を形成し、第2層間絶縁膜42及び第3層間絶縁膜43にコンタクトホール85を開孔する。この際、第2層間絶縁膜42及び第3層間絶縁膜43の界面には硬化層42aaは形成されていないため、コンタクトホール85がツボ型の形状として形成されるのを防止することができる。
図15には、本変形例において、図14(b)の工程より前に、図14(a)の工程を行った場合と行わない場合とで、コンタクトホール85における断線不良に起因する歩留まりを、第1のエッチング処理の処理時間との関係でまとめた表が示してある。図15に示す表は、本発明の発明者らの実験データに基づくものである。
図15に示す表によれば、コンタクトホール85における歩留まりは、第1のエッチング処理の処理時間にも影響されるが、図14(b)の工程より前に、図14(a)の工程を行って、第2層間絶縁膜42の表面より硬化層42aaが除去されている場合では、歩留まりが99%程度となる。
これに対して、図14(a)の工程を行わないが、図13(b)の工程で形成した小穴81aを掘り進めてコンタクトホール81を開孔するための第1のエッチング処理を行い、第2層間絶縁膜42の表面に硬化層42aaを残存させた場合、第1のエッチング処理の処理時間にも影響されるが、歩留まりは87%程度の値に留まる。即ち、本変形例に係る製造工程により製造された電気光学装置において、コンタクトホール85内における断線不良をより確実に防止することができる。
<5;電子機器>
次に、上述した液晶装置を各種の電子機器に適用される場合について説明する。
<5−1:プロジェクタ>
まず、この液晶装置をライトバルブとして用いたプロジェクタについて説明する。図16は、プロジェクタの構成例を示す平面図である。この図に示されるように、プロジェクタ1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から射出された投射光は、ライトガイド1104内に配置された4枚のミラー1106および2枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応するライトバルブとしての液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gに入射される。
液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gの構成は、上述した液晶装置と同等であり、外部回路(図示省略)から外部接続用端子102に供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるものである。そして、これらの液晶パネルによって変調された光は、ダイクロイックプリズム1112に3方向から入射される。このダイクロイックプリズム1112においては、RおよびBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。したがって、各色の画像が合成される結果、投射レンズ1114を介して、スクリーン等にカラー画像が投写されることとなる。
ここで、各液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gによる表示像について着目すると、液晶パネル1110Gによる表示像は、液晶パネル1110R、1110Bによる表示像に対して左右反転することが必要となる。
なお、液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gには、ダイクロイックミラー1108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルタを設ける必要はない。
<5−2:モバイル型コンピュータ>
次に、液晶装置を、モバイル型のパーソナルコンピュータに適用した例について説明する。図17は、このパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。図において、コンピュータ1200は、キーボード1202を備えた本体部1204と、液晶表示ユニット1206とから構成されている。この液晶表示ユニット1206は、先に述べた液晶装置1005の背面にバックライトを付加することにより構成されている。
<5−3;携帯電話>
さらに、この液晶パネルを、携帯電話に適用した例について説明する。図18は、この携帯電話の構成を示す斜視図である。図において、携帯電話1300は、複数の操作ボタン1302とともに、反射型の液晶装置1005を備えるものである。この反射型の液晶装置1005にあっては、必要に応じてその前面にフロントライトが設けられる。
尚、図16から図18を参照して説明した電子機器の他にも、液晶テレビや、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等などが挙げられる。そして、これらの各種電子機器に適用可能なのは言うまでもない。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置及びその製造方法、並びにこれを備えた電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。