JP4400288B2 - 電子写真感光体、該電子感光体を用いたドラムカートリッジおよび画像形成装置 - Google Patents

電子写真感光体、該電子感光体を用いたドラムカートリッジおよび画像形成装置 Download PDF

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Description

本発明は電子写真感光体に関するものである。より詳しくは、表面特性に優れ、しかも電気特性の良い、高性能な電子写真感光体、該電子感光体を用いたドラムカートリッジおよび画像形成装置に関するものである。
電子写真技術は、即時性、高品質の画像が得られることなどから、従来の複写機だけにとどまらず、各種プリンタ、ファクシミリなどに幅広く使われている。
電子写真技術の中核をなす感光体については、現在一部にアモルファスシリコン、砒素−セレン系などの無機光導電材料が使われているが、主流は有機系感光体である。
有機系感光体としてはいくつかの層構成が考案されているが、電荷発生と電荷輸送の機能を分離し電荷発生層、電荷輸送層を積層したいわゆる積層型感光体が、設計の自由度が高いためより高性能な感光体が得られること、また生産性が高いことなどから、精力的に研究・開発されており、現在では中高速の複写機やプリンタにまで使用範囲が広がっている。
電子写真プロセスにおいては帯電、露光、現像、転写、クリーニング、除電等の作用を反復して受けるため、感光体に対しては物理的、機械的、化学的、電気的等様々な耐久性、安定性が要求される。特に現像材、転写材、コロナ放電生成物、クリーニングブレード等の機械的接触に対する耐久性は無機感光体に比較しまだ劣っているのが現状である。また、近年の高解像度化、高画質化、省エネルギー化の指向により、現像材の微粒子化、球形度の高い化学重合トナーの利用、トナー易転写性の高い感光体、駆動するためのエネルギーが小さい感光体、および、高精度なクリーニング特性に対する要求が高まってきている。
トナーの易転写性、駆動のためのエネルギーの低減、および高精度なクリーニング特性を達成するためには、感光体表面の摩擦力や付着力に関係するエネルギーを低下させる必要があるが、そのための手段としてこれまでに、例えばフッ素系やシリコーン系のレベリング剤の使用、具体的にはシリコーンオイル等を表面層に添加する方法や、テフロン(登録商標)粉末、シリコン粉末等の塗布表面改質剤を表面層に分散させる方法が知られている。
具体的には、感光体の最外層にシリコーンオイルを含有させる技術や(例えば、特許文献3 参照)、フッ素系樹脂粉体を含有させる技術が(例えば、特許文献4 参照)、報告されている
また長鎖アルコキシカルボニル基を置換基として持つポリカーボネート樹脂を電子写真感光体のバインダー樹脂として用いる技術が開示されており(例えば、特許文献5 参照)、長鎖アルコキシカルボニル基を置換基として持つポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂とを混合して用いる電子写真感光体も知られている(例えば、特許文献6 参照)。
特開平11−71506号公報 特開昭56−135844号公報 特開平11−352707号公報 特開2002−40684号公報 特開2001−92161号公報 特開2001−290288号公報
しかしながら、従来知られた何れの技術によっても、感光体表面の摩擦力や付着力に関係するエネルギーを低下させることが可能で、且つ電気特性が良好で、しかも繰り返し使用した場合でも、表面特性、および電気特性ともに優れた性能を維持する、高性能な電子写真感光体を得ることは困難であった。本発明では感光層を有する電子写真感光体において、該感光体を使用した際のトナーの易転写性、駆動のためのエネルギーの低減、および高精度なクリーニング特性等の、感光体表面の摩擦力や付着力に関係するエネルギーを低下させる表面特性に優れ、且つ電気特性が良く、しかも繰り返し使用した際でもそれらの特性を維持することのできる、高性能で長寿命な電子写真感光体、該電子写真感光体を用いた画像形成装置、および該電子写真感光体を用いたカートリッジを提供することを目的とする。
本発明者らは、表面特性を改善する方法について鋭意検討を行った結果、電子写真感 光体の最外層に、25℃における表面張力が30mN/m以下であるオイルを含有させることにより、劇的に表面特性が改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の趣旨は、導電性支持体上に、電荷発生物質、電荷輸送物質およびバインダー樹脂を含む感光層を有し、該感光層が、電荷発生物質を含有する電荷発生層、および電荷輸送物質を含有する電荷輸送層をこの順に積層してなるものであって、該電荷発生層および電荷輸送層が、25℃における表面張力が30mN/m以下であるオイルを含有し、且つ該オイルを、導電性支持体上に形成されるすべての層に含まれる全バインダー樹脂100重量部に対し、該電荷輸送層に1〜30重量部、該電荷発生層に0.01〜0.1重量部含有していることを特徴とする電子写真感光体に存する。
本発明による電子写真感光体は、例えば光感度、残留電位、帯電性、暗減衰特性などの基本的な感光体特性が良好であって、繰り返し使用しても残留電位の蓄積がほとんどなく、該感光体を使用した際のトナーの易転写性、駆動のためのエネルギーの低減、および高精度なクリーニング特性等の、感光体表面の摩擦力や付着力に関係するエネルギーを低下させる表面特性に優れ、しかも繰り返し使用した際でもそれらの特性を維持することのでき耐久性に優れているため、高速の複写機やカラープリンタ等に好適に用いることができる。
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は本発明の実施形態の代表例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変形して実施することができる。
本発明の電子写真感光体は、25℃における表面張力が30mN/m以下であるオイルを、最外層に含有する。この場合の最外層とは感光体の最表面に形成されるものであればどのような層でも構わず、感光層でも構わないし、例えばオーバーコート層のように、感光層上にさらに形成される層であっても構わない。通常、オーバーコート層を形成するのは、感光層を形成/乾燥した後に更に感光層の上に形成する必要があり、生産時の工程数が増えてコスト増となるため、本発明のオイルは、感光層の中で最外に形成される層が含有することが好ましい。
感光層の形式としては、電荷発生物質と電荷輸送物質とが同一層に存在し、バインダ樹脂中に分散された単層型と、電荷発生物質がバインダ樹脂中に分散された電荷発生層及び電荷輸送物質がバインダ樹脂中に分散された電荷輸送層の二層からなる機能分離型(積層型)とが挙げられるが、何れの形式であってもよい。単層型の感光層場合は該感光層が本発明のオイルを含有し、積層型感光体の場合は電荷輸送層が本発明のオイルを含有する。
含有するオイルの量は、導電性支持体上に形成されるすべての層(下引き層、感光層、オーバーコート層など)に含まれる全バインダー樹脂100重量部に対して、通常1〜30重量部であり、含有量が少なすぎると、本発明の効果が十分発揮されないため、3重量部以上であることが好ましく、5重量部以上であることが特に好ましい。また、含有量が多すぎると形成した層の機械的強度が下がったり、繰り返し使用時の電位の上昇が起こったりするおそれがあるため、好ましくは25重量部以下であって、より好ましくは20重量部以下である。
本発明においては、最外層が上記の量のオイルを含有していればよく、その際に最外層以外の層が存在する場合は、最外層以外の層は自由な量のオイルを含有する事ができる。<オイル>
本発明におけるオイルは、20℃における表面張力が30mN/m以下であり、好ましくは27mN/m以下、より好ましくは25mN/m以下、特に好ましくは22mN/m以下である。表面張力が大きすぎると表面の滑り性が十分でなくなるため好ましくない。
つまり、前記表面張力は、30mN/m以下で低い方が本発明の効果を奏する上で好ましいが、低すぎると感光層からのブリードアウト(漏出)による画像形成装置の汚染や耐久性の低下等が生じて画像劣化の原因になる場合があるため、10mN/m以上であることが好ましい。なお、表面張力は、ウィルヘルミ法(プレート法)、ペンダントドロップ法、バブルプレッシャー法、接触角法等の一般的な測定法の中から、粘度特性およびオイルの性状により適宜選択して測定することができる。
本発明に用いるオイルは、25℃において流動性を有するものであれば限定されないが、25℃における粘度が、好ましくは1mm2/s以上、より好ましくは2mm2/s以上、さらに好ましくは5mm2/s以上であり、好ましくは1000mm2/s以下、より好ましくは500mm2/s以下、さらに好ましくは300mm2/s以下である。粘度が低すぎると、感光体表面の摩擦力や付着力に関係するエネルギーを低下させる効果を充分に得ることがでず、好ましくない場合がある。また、粘度が高すぎると、オイルを含有する層を形成するための塗布液に相溶しないことから、ハジキやへこみ等に代表される層の欠陥を引き起こすため好ましくない場合がある。なお、前記粘度の測定はJIS Z8803に記載されているような液体の粘度測定方法で測定することができる。
前記オイルは、その揮発分が少ないものであるのが好ましく、150℃、24時間での揮発分が、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下、特に好ましくは10重量%以下のものが好ましい。オイルの揮発分が多すぎると、揮発成分による画像形成装置の汚染等が生じて画像劣化の原因になる場合があり、また、長期間繰り返し使用した場合にオイル量が減少して、本発明の特段の効果が小さくなる。なお、150℃、24時間での揮発分の測定は、該条件下に開放静置した前後でのオイルの質量変化を求めることによる。
本発明におけるオイルは、前記の表面張力および粘度を有する化合物である限り、その化学構造は限定されないが、例えば、シリコーンオイル、フッ素系オイル、低分子量ポリオレフィンやパラフィン類等のフッ化物、低分子量ポリエステルや長鎖エステル系可塑剤のフッ化物等が挙げられ、これらを複数組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、シリコーンオイルおよびフッ素系オイルが特に好ましい。
前記シリコーンオイルとは、ケイ素原子を分子の主鎖骨格に含み、25℃において流動性を示す液状オイルであれば限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル、ブチル基等のアルキル基、フェニル基、フェノール基、スチリル基、ベンジル基等のアリール基などを側鎖に有する、オルガノポリシロキサンやオルガノポリメタロシロキサン、
オルガノポリシラザン、オルガノポリシルメチレン、オルガノポリシルフェニレン等が挙げられる。また、これら化合物は、側鎖或いは分子末端が、たとえばアミノ基、エポキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基、カルビノール基、アルコキシ基、アルキル基、アラルキル基、ポリエーテルなどで変性されたものであってもよく、フッ素化、塩素化などハロゲン化変性されていてもよい。さらには、ケイ素原子を分子の主鎖骨格に含む連鎖と、ケイ素原子を分子の主鎖骨格に含まない連鎖とで構成されたブロック共重合体やグラフト共重合体であってもよい。これらの中でも、ジメチルポリシロキサンまたは変性ジメチルポリシロキサンが好ましい。また、本発明におけるシリコーンオイルは、直鎖構造のもののほか、環状や、網目状すなわち部分的に架橋構造のものであってもよい。
前記フッ素系オイルとは、フロロカーボンまたは、ハイドロカーボンの水素の一部がフッ素置換されたものであり、側鎖或いは分子末端が、たとえばアミノ基、エポキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基、カルビノール基、アルコキシ基、アルキル基、アラルキル基、ポリエーテルなどで変性されたものであってもよく、フッ素化、塩素化などハロゲン化変性されていてもよい。さらには、フッ素原子を含む連鎖と、フッ素原子を含まない連鎖とで構成されたブロック共重合体やグラフト共重合体であってもよい。これらの中でも、パーフロロカーボンが好ましい。また、本発明におけるフッ素系オイルは、直鎖構造のもののほか、環状や、網目状すなわち部分的に架橋構造のものであってもよい。
なお、このようなシリコーンオイルやフッ素系オイルは、市販のオイルの中から、前記の表面張力および粘度を有するものを適宜選択することにより使用することができる。
<電子写真感光体>
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体(基体)上に感光層を設けたものであれば、その構造は特に制限されない。
<導電性支持体>
導電性支持体について特に制限は無いが、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫などの導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。導電性支持体の形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状などのものが用いられる。更には、金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性などの制御や欠陥被覆のために、適当な抵抗値を有する導電性材料を塗布したものを用いても良い。
また、導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化被膜を施してから用いても良い。陽極酸化被膜を施した場合には、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。
支持体表面は、平滑であっても良いし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理を施したりすることにより、粗面化されていても良い。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものでも良い。また、安価化のためには、切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。
<下引き層>
導電性支持体と後述する感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けても良い。下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したものなどが用いられる。
下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、
チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子などが挙げられる。これらは一種類の粒子を単独で用いても良いし、複数の種類の粒子を混合して用いても良い。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコン等の有機物による処理を施されていても良い。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルックカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。また、複数の結晶状態のものが含まれていても良い。
また、金属酸化物粒子の粒径としては種々のものが利用できるが、中でも特性及び液の安定性の面から、平均一次粒径として通常1nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下のものが望ましい。
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダ樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダ樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロース等のセルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物等の有機ジルコニウム化合物、チタニルキレート化合物、チタニルアルコキシド化合物等の有機チタニル化合物、シランカップリング剤などの公知のバインダ樹脂が挙げられる。これらは単独で用いても良く、或いは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。また、硬化剤とともに硬化した形で使用してもよい。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は、良好な分散性、塗布性を示すことから好ましい。
下引き層に用いられるバインダ樹脂に対する無機粒子の使用比率は任意に選ぶことが可能であるが、分散液の安定性、塗布性の観点から、通常は10重量%以上、500重量%以下の範囲で使用することが好ましい。
下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、感光体特性及び塗布性を向上させる観点から、通常は0.1μm以上、20μm以下の範囲が好ましい。
下引き層には、公知の酸化防止剤等を混合しても良い。画像欠陥防止などを目的として、顔料粒子、樹脂粒子等を含有させ用いても良い。
<感光層>
感光層の形式としては、電荷発生物質と電荷輸送物質とが同一層に存在し、バインダ樹脂中に分散された単層型と、電荷発生物質がバインダ樹脂中に分散された電荷発生層及び電荷輸送物質がバインダ樹脂中に分散された電荷輸送層の二層からなる機能分離型(積層型)とが挙げられるが、何れの形式であってもよい。
また、積層型感光層としては、導電性支持体側から電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層して設ける順積層型感光層と、逆に電荷輸送層、電荷発生層の順に積層して設ける逆積層型感光層とがあり、いずれを採用することも可能であるが、最もバランスの取れた光導電性を発揮できる順積層型感光層が好ましい。
<積層型感光層>
・電荷発生層
積層型感光体(機能分離型感光体)の場合、電荷発生層は、電荷発生物質をバインダ樹
脂で結着することにより形成される。
電荷発生物質としては、セレニウム及びその合金、硫化カドミウム等の無機系光導電材料と、有機顔料等の有機系光導電材料とが挙げられるが、有機系光導電材料の方が好ましく、特に有機顔料が好ましい。有機顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等が挙げられる。これらの中でも、特にフタロシアニン顔料又はアゾ顔料が好ましい。電荷発生物質として有機顔料を使用する場合、通常はこれらの有機顔料の微粒子を、各種のバインダー樹脂で結着した分散層の形で使用する。
電荷発生物質として無金属フタロシアニン化合物、金属含有フタロシアニン化合物を用いた場合は比較的長波長のレーザー光、例えば780nm近辺の波長を有するレーザー光に対して高感度の感光体が得られ、またモノアゾ、ジアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料を用いた場合には、白色光、又は660nm近辺の波長を有するレーザー光、もしくは比較的短波長のレーザー光、例えば450nm、400nm近辺の波長を有するレーザーに対して十分な感度を有する感光体を得ることができる。
電荷発生物質として有機顔料を使用する場合、特にフタロシアニン顔料又はアゾ顔料が好ましい。フタロシアニン顔料は、比較的長波長のレーザー光に対して高感度の感光体が得られる点で、また、アゾ顔料は、白色光及び比較的短波長のレーザー光に対し十分な感度を持つ点で、それぞれ優れている。
電荷発生物質としてフタロシアニン顔料を使用する場合、具体的には無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、スズ、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム、アルミニウムなどの金属又はその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシドなどの配位したフタロシアニン類の各結晶型を持ったもの、酸素原子等を架橋原子として用いたフタロシアニンダイマー類などが使用される。特に、感度の高い結晶型であるX型、τ型無金属フタロシアニン、A型(別称β型)、B型(別称α型)、D型(別称Y型)等のチタニルフタロシアニン(別称:オキシチタニウムフタロシアニン)、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ヒドロキシインジウムフタロシアニン、II型等のクロロガリウムフタロシアニン、V型等のヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型、I型等のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体、II型等のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体が好適である。
また、これらフタロシアニンの中でも、A型(別称β型)、B型(別称α型)、及び粉末X線回折の回折角2θ(±0.2゜)が27.1゜、もしくは27.3゜に明瞭なピークを示すことを特徴とするD型(Y型)チタニルフタロシアニン、II型クロロガリウムフタロシアニン、V型及び28.1゜にもっとも強いピークを有すること、また26.2゜にピークを持たず28.1゜に明瞭なピークを有し、かつ25.9゜の半値幅Wが0.1゜≦W≦0.4゜であることを特徴とするヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体等が特に好ましい。
フタロシアニン化合物は単一の化合物のものを用いてもよいし、幾つかの混合又は混晶状態のものを用いてもよい。ここでのフタロシアニン化合物ないしは結晶状態に置ける混合状態としては、それぞれの構成要素を後から混合したものを用いてもよいし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン化合物の製造・処理工程において混合状態を生じさせたものでもよい。このような処理としては、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が知られている。混晶状態を生じさせるためには、特開平10−48859号公報記載のように、2種類の結晶を混合後に機械的に磨砕、不定形化した後に、溶剤処理によって特定の結晶状態に変換する方法が挙げられる。
電荷発生物質としてアゾ顔料を使用する場合には、各種ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料が好適に用いられる。
電荷発生物質として有機顔料を用いる場合には、1種を単独で用いてもよいが、2種類以上の顔料を混合して用いてもよい。この場合、可視域と近赤域の異なるスペクトル領域で分光感度特性を有する2種類以上の電荷発生物質を組み合わせて用いることが好ましく、中でもジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料とフタロシアニン顔料とを組み合わせて用いることがより好ましい。
電荷発生層に用いるバインダ樹脂は特に制限されないが、例としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールや、アセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼインや、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の絶縁性樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン等の有機光導電性ポリマーなどが挙げられる。これらのバインダ樹脂は、何れか1種を単独で用いても良く、2種類以上を任意の組み合わせで混合して用いても良い。
電荷発生層は、具体的に、上述のバインダ樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に、本発明のハロゲン置換インジウムフタロシアニン及び場合によって用いられるその他の電荷発生物質を分散させて塗布液を調整し、これを導電性支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)塗布することにより形成される。
塗布液の作製に用いられる溶剤としては、バインダ樹脂を溶解させるものであれば特に制限されないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン等の飽和脂肪族系溶媒、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等の鎖状又は環状ケトン系溶媒、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等の鎖状又は環状エーテル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の含窒素化合物、リグロイン等の鉱油、水などが挙げられる。これらは何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を併用して用いてもよい。なお、上述の下引き層を設ける場合には、この下引き層を溶解しないものが好ましい。
電荷発生層において、バインダ樹脂と電荷発生物質との配合比(重量)は、バインダ樹脂100重量部に対して電荷発生物質が通常10重量部以上、好ましくは30重量部以上
、また、通常1000重量部以下、好ましくは500重量部以下の範囲であり、その膜厚は通常0.1μm以上、好ましくは0.15μm以上、また、通常10μm以下、好ましくは0.6μm以下の範囲である。電荷発生物質の比率が高過ぎると、電荷発生物質の凝集等により塗布液の安定性が低下するおそれがある一方、電荷発生物質の比率が低過ぎると、感光体としての感度の低下を招くおそれがある。
電荷発生物質を分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の公知の分散法を用いることができる。この際、粒子を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.15μm以下の範囲の粒子サイズに微細化することが有効である。
・電荷輸送層
積層型感光体であって、オーバーコート層などの感光層上の層を持たない感光体では、通常、本発明のオイルを含有する最外層は、電荷輸送層である。
積層型感光体の電荷輸送層は、電荷輸送物質を含有するとともに、通常はバインダ樹脂と、必要に応じて使用されるその他の成分とを含有する。このような電荷輸送層は、具体的には、例えば電荷輸送物質等とバインダ樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作製し、これを順積層型感光層の場合には電荷発生層上に、また、逆積層型感光層の場合には導電性支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)塗布、乾燥して得ることができる。
電荷輸送物質としては特に限定されず、任意の物質を用いることが可能である。公知の電荷輸送物質の例としては、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、ジフェノキノン等のキノン化合物等の電子吸引性物質、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体及びこれらの化合物の複数種が結合したもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体等の電子供与性物質等が挙げられる。これらの中でも、カルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、及びこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましい。これらの電荷輸送物質は、何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせで併用しても良い。
バインダ樹脂は膜強度確保のために使用される。電荷輸送層のバインダ樹脂としては、例えばブタジエン樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースエステル樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。特に好ましくは、ポリエステル樹脂を用いることである。これらのバインダ樹脂は、何れか1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせで用いても良い。ポリエステル樹脂としては、エステル結合を複数有するものであれば、脂肪族ポリエステル樹脂、半芳香族ポリエステル樹脂および全芳香族ポリエステル樹脂のいずれも用いることができ、それらは下記一般式(1)で表すことができる。
Figure 0004400288
一般式(1)中、A及びWは、それぞれ独立して二価の有機基を表し、 この構造単位を有するポリエステル樹脂は、一般式HO−A−OHで表されるジヒドロキシ化合物と、一般式HO−CO−W−CO−OHで表されるジカルボン酸、又はその誘導体とを重合させることにより製造することができる。
このうち、A部分が二価の脂肪族により構成される、脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の鎖状ジオール;1,2−シクロヘキサンジオール等の環状ジオールなどが挙げられる。これらの中では鎖状ジオール、特にエチレングリコール、プロピレングリコール、又は1,4−ブタンジオールが好ましい。
A部分が、二価の芳香族により構成される、芳香族ジヒドロキシ化合物としては通常は下記一般式(2)〜(7)で表される基が挙げられる。
Figure 0004400288
(式中、Yは単結合、(シクロ)アルキレン基、−S−、−O−又はスルホニルを表し、R1〜R30はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、(シクロ)アルキル基、置換さ
れてもよいアリール基、アリル基又はアルコキシ基を表す。なお、Yがアルキレン基を表
す場合には、そのアルキレン基にはハロゲン原子、(シクロ)アルキル基、置換されていてもよいアリール基、アラルキル基、アリル基及びアルコキシ基よりなる群から選ばれた置換基が結合していてもよい。)
(シクロ)アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等のアルキレン基;シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、塩素、フッ素、臭素等が挙げられる。
(シクロ)アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、ネオペンチル基、2−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等のアリール基が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
アラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基等が挙げられる。
1〜R30としては、水素原子又はアルキル基、特に水素原子又はメチル基が好ましい
一般式(6)のa及び一般式(7)のbは、それぞれ1以上の整数を表し、1〜6が好ましい。
ジヒドロキシ化合物骨格を示す一般式(2)〜(7)の基のうち、一般式(2)の基が好ましい。なかでも、Yが置換されていてもよいメチレン基、特にメチレン基であるものを構造単位とする芳香族ポリエステルが、機械的強度、塗布溶媒に対する溶解性及び電気特性がよいので、更に好ましい。
芳香族ポリエステルの製造に用いられる芳香族ジヒドロキシ化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシノール等のジヒドロキシベンゼン化合物;1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン化合物;1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシフェニル−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ
−3,5−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジベンジルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、フェノールフタルレイン、4,4’−[1,4−フェニレンビス
(1−メチルビニリデン)]ビスフェノール、及び4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルビニリデン)]ビス[2−メチルフェノール]等のビスフェノール化合物などが
挙げられる。
上記ジヒドロキシ化合物のうち、塗布溶媒に対する溶解性、得られる感光体の機械的強度、電気特性の点から、Aに二価の芳香族を用いたポリエステル樹脂が特に好ましい。
これらのジヒドロキシ化合物は、単独で用いてもよいが、複数を併用するのが好ましい。
一般式HO−CO−W−CO−OHで表されるジカルボン酸、又はその誘導体のWとしては、置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、ビフェニレン基等のアリーレン基;メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等のアルキレン基;及びビニレン基などが挙げられ、これらの中でアリーレン基、特にフェニレン基が好ましい。
具体的に、芳香族ポリエステルの製造に用いるジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2−メチル−1,4−ベンゼンジカルボン酸、5−メチル−1,4−ベンゼンジカルボン酸、2,5−ジメチル−1,4−ベンゼンジカルボン酸、2,6−ジメチル−1,4−ベンゼンジカルボン酸、2−メチル−1,3−ベンゼンジカルボン酸、4−メチル−1,3−ベンゼンジカルボン酸、2,4−ジメチル−1,3−ベンゼンジカルボン酸、4,5−ジメチル−1,3−ベンゼンジカルボン酸等のベンゼンジカルボン酸;3,6−ジメチル−2,7−ナフタレンジカルボン酸、3,7−ジメチル−2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸;アントラセンジカルボン酸;ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸:並びにマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等の脂肪族飽和ジカルボン酸;及びフマル酸、マレイン酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
これらの中で、テレフタル酸、イソフタル酸、2−メチル−1,4−ベンゼンジカルボン酸、又は2,5−ジメチル−1,4−ベンゼンジカルボン酸が好ましい。特に好ましいのは、テレフタル酸又はイソフタル酸である。
これらのジカルボン酸は、単独で用いてもよいが、複数を併用するのが好ましい。なかでも、イソフタル酸は単独で用いずに、テレフタル酸と併用するのが好ましい。なお、テレフタル酸とイソフタル酸とを併用する場合には、通常テレフタル酸に由来する基が75モル%以上となるようにする。この基が75モル%未満では電気特性が悪化することがある。この基が90モル%以上、特に95モル%以上となるようにするのが好ましい。
ジカルボン酸誘導体としては、ジカルボン酸の酸ハロゲン化物が挙げられる。酸ハロゲン化物としては、酸塩化物が好ましい。
ポリエステル樹脂は、界面重合法、溶融重合法、溶液重合法等の公知の重合方法により製造すればよい。
バインダ樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダ樹脂100重量部に対して電荷輸送物質を20重量部以上の比率で使用する。中でも、残留電位低減の観点から30重量部以
上が好ましく、更には、繰り返し使用した際の安定性や電荷移動度の観点から40重量部以上がより好ましい。一方、感光層の熱安定性の観点から、電荷輸送物質を通常は150重量部以下の比率で使用する。中でも、電荷輸送材料とバインダ樹脂との相溶性の観点から110重量部以下が好ましく、耐刷性の観点から80重量部以下がより好ましく、耐傷性の観点から70重量部以下が最も好ましい。
電荷輸送層の膜厚は特に制限されないが、長寿命、画像安定性の観点、更には高解像度の観点から、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常50μm以下、好ましくは45μm以下、更には30μm以下の範囲とする。
<単層型感光層>
単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質に加えて、積層型感光体の電荷輸送層と同様に、膜強度確保のためにバインダ樹脂を使用して形成する。具体的には、電荷発生物質と電荷輸送物質と各種バインダ樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作製し、導電性支持体上(下引き層を設ける場合は下引き層上)に塗布、乾燥して得ることができる。
電荷輸送物質及びバインダ樹脂の種類並びにこれらの使用比率は、積層型感光体の電荷輸送層について説明したものと同様である。これらの電荷輸送物質及びバインダ樹脂からなる電荷輸送媒体中に、さらに電荷発生物質が分散される。
電荷発生物質は、積層型感光体の電荷発生層について説明したものと同様のものが使用できる。但し、単層型感光体の感光層の場合、電荷発生物質の粒子径を充分に小さくする必要がある。具体的には、通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下の範囲とする。
単層型感光層内に分散される電荷発生物質の量は、少な過ぎると充分な感度が得られない一方で、多過ぎると帯電性の低下、感度の低下などの弊害があることから、単層型感光層全体に対して通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下の範囲で使用される。
また、単層型感光層におけるバインダ樹脂と電荷発生物質との使用比率は、バインダ樹脂100重量部に対して電荷発生物質が通常0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上、また、通常30重量部以下、好ましくは10重量部以下の範囲とする。
単層型感光層の膜厚は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下の範囲である。
<その他の機能層>
積層型感光体、単層型感光体ともに、感光層又はそれを構成する各層には、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性などを向上させる目的で、周知の酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、可視光遮光剤などの添加物を含有させても良い。
また、積層型感光体、単層型感光体ともに、上記手順により形成された感光層を最上層、即ち最外層としてもよいが、その上に更に別の層を設け、これを表面層としてもよい。
例えば、感光層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電生成物等による感光層の劣化を防止・軽減する目的で、保護層を設けても良い。
保護層は、導電性材料を適当なバインダ樹脂中に含有させて形成するか、特開平9−190004号、特開平10−252377号各公報に記載のトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する化合物を用いた共重合体を用いることができる。
保護層に用いる導電性材料としては、TPD(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(m−トリル)ベンジジン)等の芳香族アミノ化合物、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン、酸化アルミ、酸化亜鉛等の金属酸化物などを用いることが可能であるが、これに限定されるものではない。
保護層に用いるバインダ樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、シロキサン樹脂等の公知の樹脂を用いることができ、また、特開平9−190004号公報、特開平10−252377号公報の記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する骨格と上記樹脂の共重合体を用いることもできる。
保護層の電気抵抗は、通常109Ω・cm以上、1014Ω・cm以下の範囲とする。電
気抵抗が前記範囲より高くなると、残留電位が上昇しカブリの多い画像となってしまう一方、前記範囲より低くなると、画像のボケ、解像度の低下が生じてしまう。また、保護層は像露光の際に照射される光の透過を実質上妨げないように構成されなければならない。
また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を低減、トナーの感光体から転写ベルト、紙への転写効率を高める等の目的で、表面層にフッ素系樹脂、シリコン樹脂、ポリエチレン樹脂等、又はこれらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を、表面層に含有させても良い。或いは、これらの樹脂や粒子を含む層を新たに表面層として形成しても良い。
<各層の形成方法>
これらの感光体を構成する各層は、含有させる物質を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗布液を、支持体上に浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、バーコート、ロールコート、ブレード塗布等の公知の方法により、各層ごとに順次塗布・乾燥工程を繰り返すことにより形成される。
塗布液の作製に用いられる溶媒又は分散媒に特に制限は無いが、具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ギ酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素類、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素化合物類、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤類等が挙げられる。また、これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び種類で併用してもよい。
溶媒又は分散媒の使用量は特に制限されないが、各層の目的や選択した溶媒・分散媒の性質を考慮して、塗布液の固形分濃度や粘度等の物性が所望の範囲となるように適宜調整するのが好ましい。
例えば、単層型感光体、及び機能分離型感光体の電荷輸送層層の場合には、塗布液の固形分濃度を通常5重量%以上、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、また、通常40重量%以下、好ましくは35重量%以下の範囲とする。また、塗布液の粘度を通常10cps以上、好ましくは50cps以上、また、通常500cps以下、好ましくは400cps以下の範囲とする。
また、積層型感光体の電荷発生層の場合には、塗布液の固形分濃度は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常15重量%以下、好ましくは10重量%以下の範囲とする。また、塗布液の粘度は、通常0.01cps以上、好ましくは0.1cps以上、また、通常20cps以下、好ましくは10cps以下の範囲とする。
塗布液の塗布方法としては、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティン
グ法等が挙げられるが、他の公知のコーティング法を用いることも可能である。
塗布液の乾燥は、室温における指触乾燥後、通常30℃以上、200℃以下の温度範囲で、1分から2時間の間、静止又は送風下で加熱乾燥させることが好ましい。また、加熱温度は一定であってもよく、乾燥時に温度を変更させながら加熱を行なっても良い。
<画像形成装置>
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置(本発明の画像形成装置)の実施の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1,帯電装置2,露光装置3及び現像装置4を備えて構成され、更に、必要に応じて転写装置5,クリーニング装置6及び定着装置7が設けられる。
電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2,露光装置3,現像装置4,転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。帯電装置としては、コロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、電圧印加された直接帯電部材を感光体表面に接触させて帯電させる直接帯電装置(接触型帯電装置)帯電ブラシ等の接触型帯電装置などがよく用いられる。直接帯電手段の例としては、帯電ローラ、帯電ブラシ等の接触帯電器などが挙げられる。なお、図1では、帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示している。直接帯電手段として、気中放電を伴う帯電、あるいは気中放電を伴わない注入帯電いずれも可能である。また、帯電時に印可する電圧としては、直流電圧だけの場合、及び直流に交流を重畳させて用いることもできる。
露光装置3は、電子写真感光体1に露光を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LEDなどが挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。露光を行なう際の光は任意であるが、例えば波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長380nm〜500nmの短波長の単色光などで露光を行なえばよい。
現像装置4は、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分絶縁トナー現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像などの乾式現像方式や、湿式現像方式などの任意の装置を用いることができる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジなどの容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄,ステンレス鋼,アルミニウム,ニッケルなどの金属ロール、又はこうした金属ロールにシリコン樹脂,ウレタン樹脂,フッ素樹脂などを被覆した樹脂ロールなどからなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感
光体1及び供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
規制部材45は、シリコン樹脂やウレタン樹脂などの樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅などの金属ブレード、又はこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写などの静電転写法、圧力転写法、粘着転写法など、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー,転写ローラ,転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙,媒体)Pに転写するものである。
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナーなど、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。なお、残留トナーが少ないか、ほとんど無い場合、クリーニング装置6は無くてもかまわない。
定着装置7は、上部定着部材(定着ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73が備えられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71,72は、ステンレス,アルミニウムなどの金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にフッ素樹脂で被覆した定着ロール、定着シートなどが公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着など、任意の方式による定着装置を設けることができる。
以上のように構成された電子写真装置では、次のようにして画像の記録が行なわれる。即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜
像の現像を、現像装置4で行なう。
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としても良い。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程などの工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
なお、電子写真感光体1を、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6、及び定着装置7のうち1つ又は2つ以上と組み合わせて、一体型のカートリッジ(以下適宜「電子写真感光体カートリッジ」という)として構成し、この電子写真感光体カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。この場合、例えば電子写真感光体1やその他の部材が劣化した場合に、この電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
以下本発明を実施例および比較例により更に詳細に説明するが、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその趣旨に反しない限りこれらに限定されるものではない。
実施例1
<感光体の作製>
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(厚み75μm)の表面にアルミニウム蒸着層(厚み70nm)を形成した導電性支持体を用い、その支持体の蒸着層上に、下記の下引き層用分散液をバーコーターにより、乾燥後の膜厚が1.25μmとなるように塗布し、乾燥させ下引き層を形成した。
下引き層を形成するための塗布液は、以下のような手順で作製した。平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と該酸化チタンに対して3重量%のメチルジメトキシシランをボールミルにて混合して得られたスラリーを乾燥後、更にメタノールで洗浄、乾燥して得られた疎水性処理酸化チタンを、メタノール/1−プロパノールの混合溶媒中でボールミルにより分散させることにより、疎水化処理酸化チタンの分散スラリーとし、該分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール/トルエン(重量比7/1/2)の混合溶媒、及び、ε−カプロラクタム/ビス(4−アミノ−3−
メチルシクロヘキシル)メタン/ヘキサメチレンジアミン/デカメチレンジカルボン酸/オクタデカメチレンジカルボン酸(組成モル%75/9.5/3/9.5/3)からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行うことにより、疎水性処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比3/1で含有する固形分濃度18.0%の分散液とした。
電荷発生物質として、CuKα特性X線に対する粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラック角2θ(±0.2゜)27.3゜に強いピークを有するD型オキシチタニウムフタロシアニン10重量部に、4−メチル−4−メトキシ−ペンタノン−2を150重量部加え、サンドグラインドミルで1時間粉砕し、微粒化処理を行った後、バインダー樹脂としてポリビニルブチラール(電気化学工業社製「デンカブチラール #6000C」)10重量%、および、表面張力が20.1mN/m、25℃での粘度が10mm2/sである
ジメチルポリシロキサンオイル(信越化学株式会社製 シリコーンオイル、商品名:信越シリコーン KF96)0.03重量部を1,2−ジメトキシエタン溶液100重量部と混合し、電荷発生層形成用塗布液を調製し、この塗布液を、前記導電性支持体上の下引き層上にバーコーターにより、乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように塗布し、乾燥させて電荷発生層を形成した。
この電荷発生層の上に、前記ジメチルポリシロキサンオイル10重量部、下記に表されるポリアリレート樹脂100重量部、
Figure 0004400288
下記に表される電荷輸送物質50重量部、
Figure 0004400288
テトラヒドロフラン800重量部、およびトルエン200重量部を混合した溶液をフィルムアプリケータにより塗布し、乾燥後の膜厚が25μmとなるように電荷輸送層を設け、
感光体を作製した。
実施例2
実施例1において用いた電荷発生物質を、A型オキシチタニウムフタロシアニンに変えた以外は実施例1と同様にして感光体を作製した。
比較例1
実施例1において用いた電荷輸送層のジメチルポリシロキサンオイルを使用しないこと
以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
比較例2
実施例1において用いた電荷輸送層のジメチルポリシロキサンオイルを使用しないこと以外は実施例2と同様にして感光体を作製した。
比較例3
実施例1において用いた電荷輸送層のジメチルポリシロキサンオイルを0.5重量部使用した以外は実施例1と同様にして感光体を作製した。
比較例4
実施例1において用いた電荷輸送層のジメチルポリシロキサンオイルを0.5重量部使用した以外は実施例2と同様にして感光体を作製した。
比較例5
実施例1において用いた電荷輸送層のジメチルポリシロキサンオイルを1重量部使用した以外は実施例1と同様にして感光体を作製した。
比較例6
実施例1において用いた電荷輸送層のジメチルポリシロキサンオイルを1重量部使用した以外は実施例2と同様にして感光体を作製した。
<滑り性試験>
実施例1、2、および比較例1〜6で作製した電子写真感光体表面の動摩擦係数の測定は、感光層表面にトナーを0.1mg/cm2になるように均一に振りかけたのち、肉厚
2mmのウレタンゴムを1cm幅に切断したものを感光体表面に対して45度の角度で押し当て、該ゴムを動かすことにより動摩擦係数を測定した。ウレタンゴムへの荷重は200g、移動速度は5mm/秒、移動距離20mmの条件で協和界面化学(株)社製自動摩擦係数摩耗試験機DFPM−SSを使用して、移動繰り返し回数100回まで行った。動摩擦係数は、数値が小さいほど滑り性が優れることを示している。動摩擦係数は、初期、25回、50回、75回、100回の繰り返し毎に測定した。結果を表1に示す。
Figure 0004400288
本発明の感光体では滑り性が向上していることがわかる。ジメチルポリシロキサンオイルを含有していない比較例1,2では感光体表面に柚肌が発生した。
<電子写真感光体ドラムの作製>
実施例3
表面を陽極酸化し、ニッケル封孔処理を施した直径30mm、長さ235.8mmのアルミニウムチューブ上に、実施例1で作製した電荷発生層用塗布液を浸漬塗布により塗布
して、膜厚0.4μmの電荷発生層を形成した。
この電荷発生層の上に、実施例1で使用した電荷輸送層用塗布液を、浸漬塗布により塗布し、乾燥後の膜厚が25μmとなるように電荷輸送層を設け、電子写真感光体ドラムを
作製した。
実施例4
表面を陽極酸化し、ニッケル封孔処理を施した直径30mm、長さ250mmのアルミニウムチューブ上に、実施例2で作製した電荷発生層用塗布液を浸漬塗布により塗布して、膜厚0.4μmの電荷発生層を形成した。
この電荷発生層の上に、実施例1で使用した電荷輸送層用塗布液を、浸漬塗布により塗布し、乾燥後の膜厚が25μmとなるように電荷輸送層を設け、電子写真感光体ドラムを
作製した。
比較例7
実施例1で使用した電荷発生層においてジメチルポリシロキサンを添加していない以外は、実施例3と同様にして感光体を作製した。
比較例8
実施例2で使用した電荷発生層においてジメチルポリシロキサンを添加していない以外は、実施例4と同様にして感光体を作製した。
<画像評価>
実施例3および比較例7で作製した感光体を、沖データ社製レーザープリンター MICROLINE 18に装着し、気温35℃、相対湿度85%の環境下(以下、この環境をHH環境ということがある)において10000枚の画像を形成し耐久性評価を行った。画像の評価は初期、2000枚、4000枚、6000枚、8000枚、10000枚の画像形成毎に、それぞれ黒ベタ画像を形成しMacbeth社製 RD920を使用して濃度を測定した。
実施例4および比較例8で作製した感光体を、エプソン社製レーザープリンター LP−1800に装着し、HH環境下において10000枚の画像を形成し耐久性評価を行った。画像の評価は初期、2000枚、4000枚、6000枚、8000枚、10000枚の画像形成毎に後に黒ベタ画像を形成しMacbeth社製 RD920を使用して濃度を測定した。画像濃度は黒基準が1.80、白基準が0.04を示す基準サンプルにより校正した後に測定を行った。これらの結果を表2に示す。
Figure 0004400288
*実施例3,比較例7は沖データ社製レーザープリンター MICROLINE 18 を使用。
*実施例4,比較例8はエプソン社製レーザープリンター LP1800を使用。
<電気特性評価>
次に実施例3、4及び比較例7、8で作製した感光体を感光体特性測定機(続電子写真
技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404〜405頁記載)に装着して、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を行った。
初期表面電位(以下、V0ということがある)を−700Vとし、露光はハロゲンランプの光を干渉フィルターで780nmの単色光にしたものを用いた。1.0μJ/cm2
を照射した時の表面電位をVL(露光から電位測定までの時間は75msとした。)とし、除電光には660nmLED光を用いた。除電光照射後の残留電位をVrとする。このプロセスをHH環境下で30000回転繰り返し、5000回転毎にV0、VL、Vrの測定を行った。結果を表3に示す。(表において、Kは1000を表す。)
Figure 0004400288
本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置の一実施例を示す概念図である。
符号の説明
1 感光体
2 帯電装置(帯電ローラ)
3 露光装置
4 現像装置
5 転写装置
6 クリーニング装置
7 定着装置
41 現像槽
42 アジテータ
43 供給ローラ
44 現像ローラ
45 規制部材
71 上部定着部材(定着ローラ)
72 下部定着部材(定着ローラ)
73 加熱装置
T トナー
P 記録紙

Claims (6)

  1. 導電性支持体上に、電荷発生物質、電荷輸送物質およびバインダー樹脂を含む感光層を有し、該感光層が電荷発生物質を含有する電荷発生層、および電荷輸送物質を含有する電荷輸送層をこの順に積層してなるものであって、該電荷発生層および該電荷輸送層が、25℃における表面張力が30mN/m以下であるオイルを含有し、且つ該オイルを、導電性支持体上に形成されるすべての層に含まれる全バインダー樹脂100重量部に対し、該電荷輸送層に1〜30重量部、該電荷発生層に0.01〜0.1重量部含有していることを特徴とする電子写真感光体。
  2. 25℃における表面張力が30mN/m以下であるオイルとして、シリコーンオイルを用いることを特徴とする、請求項に記載の電子写真感光体。
  3. バインダー樹脂として、ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の電子写真感光体。
  4. 導電性支持体が陽極酸化被膜を施した金属材料であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の電子写真感光体を用いることを特徴とする、電子写真装置。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の電子写真感光体を用いることを特徴とする、電子写真装置用ドラムカートリッジ。
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