以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
先ず本発明の第1実施形態について説明する。図1は本発明の一実施形態を示す可変動弁エンジンのシステム図である。燃焼室4は、エンジン各気筒のピストン3冠面部と、点火栓5を囲むように、吸気弁1および排気弁6によって構成される。7は吸気通路、8は排気通路である。吸気通路7には、各気筒毎の吸気ポート部分に、電磁式の燃料噴射弁9が設けられている。吸気弁1、排気弁6、燃料噴射弁9および点火栓5の作動はコントロールユニット(ECU)50により制御されている。尚、吸気弁1は、後述する可変動弁機構40を介してコントロールユニット50により制御されている。
このコントロールユニット50には、エンジン回転に同期してクランク角信号を出力し、これによりエンジン回転数Neを検出可能なクランク角センサ53、アクセル開度APOを検出するアクセルペダルセンサ55、吸気通路7にて吸入空気量Qaを計測するエアフローメータ51、排気通路8には、排気触媒56の上流入口位置に排気中の酸素濃度を介して空燃比のリッチ・リーンを検出する酸素センサ60、及び排気側カムシャフト(カムプーリ)に配設され、点火する気筒を判別する気筒判別センサ54から信号が入力されている。
また、エアフローメータ51の下流には、電子制御式のスロットル弁80が配置され、アクセル開度APO検出結果、機関回転数など機関の運転状況に応じてエンジンコントロールユニット50により、駆動制御されている。
前記電子制御スロットル80の下流部には、吸気コレクタ81が配設され、本コレクタ81の下流には、前述した吸気通路7が配置されている。吸気コレクタ81には、内部の圧力を検知する圧力センサ90が配置されており、検出されたコレクタ81内部の圧力はコントロールユニット50に入力されている。この他、冷却水温Twを検出する水温センサ等からも信号が入力されるが、図示は省略した。尚、吸気コレクタ81の内部圧力、すなわち吸入負圧は、実質的に、上述したスロットル弁80の弁開度によって決定される。
ここで、吸気弁1は、バルブリフタ2の上部に取り付けられた可変動弁機構40により、吸気弁1のバルブリフト特性が連続的に変更可能となっている。
この可変動弁機構40は、図2に示すように、吸気弁1のバルブリフト量及び作動角を同時に、かつ連続的に変更可能なリフト作動角変更機構10と、吸気弁1の作動角の位相を変更可能な位相変更機構20と、から構成されている。
リフト作動角変更機構10は、互いに並行に気筒列方向へ延びる駆動軸11および制御軸12を有している。駆動軸11は、クランクシャフト(図示せず)から伝達される回転動力により軸周りに回転する。この駆動軸11には、吸気弁1のバルブリフタ2に接触可能な揺動カム13が回転自在に外嵌されているとともに、各気筒毎に偏心カム14が固定又は一体形成されている。この偏心カム14の外周面の軸心は駆動軸11の軸心に対して偏心しており、この偏心カム14の外周面にリング状の第一リンク15が回転自在に外嵌している。
制御軸12には、各気筒毎に制御カム16が固定又は一体形成されている。この制御カム16の外周面の軸心は制御軸12の軸心に対して偏心しており、この制御カム16の外周面に、ロッカーアーム17の中央部が回転自在に連結されており、ロッカーアーム17の他端はロッド状の第二リンク18の一端部と回転自在に連結されている。この第二リンク18の他端は揺動カム13の先端部と回転自在に連結されている。
従って、クランクシャフトの回転に連動して駆動軸11が軸周りに回転すると、偏心カム14に外嵌する第一リンク15がほぼ並進方向に作動し、この第一リンク15の並進運動がロッカーアーム17の揺動運動に変換されて、第二リンク18を介して揺動カム13が揺動する。この揺動する揺動カム13が吸気弁1のバルブリフタ2に当接してこれを押圧することにより、吸気弁1が図外のバルブスプリングの反力に抗して開閉駆動される。
また、コントロールユニット50からの指令に基づいて作動する電動式のアクチュエータ30により、制御軸12を回転駆動すると、ロッカーアーム17の揺動中心となる制御カム16の中心位置が変化して、このロッカーアーム17及びリンク15、18の姿勢が変化し、揺動カム13の揺動特性が変化する。これにより、吸気弁1の作動角およびバルブリフト量の双方が、同時にかつ連続的に変更可能となっている。
位相変更機構20は、クランクシャフトに対する駆動軸11の位相を変化させることにより、吸気弁1のリフト作動角の中心位相を連続的に変更するもので、駆動軸11の前端部に設けられたスプロケット21と、このスプロケット21と駆動軸11とを、所定の角度範囲内において相対的に回転させる位相制御用油圧アクチュエータ22と、から構成されている。スプロケット21は、図示せぬタイミングチェーンもしくはタイミングベルトを介して、クランクシャフトに連動している。位相制御用油圧アクチュエータ22への油圧供給は、コントロールユニット50からの制御信号に基づき、油圧制御部23によって制御されている。この位相制御用油圧アクチュエータ22への油圧制御によって、スプロケット21と駆動軸11とが相対的に回転し、リフト中心角が遅進する。つまり、リフト特性の曲線自体は変わらずに、全体が進角もしくは遅角する。また、この変化も、連続的に得ることができる。
尚、図2中の26は吸気弁のバルブリフト量及び作動角を検出するリフト作動角検出センサ、27は吸気弁のリフト中心角の位相を検出する位相検出センサである。
図3は本実施形態で用いる定常状態での吸気弁1の作動角、リフト中心角及び設定吸入負圧のマップである。
本実施形態では、機関の回転数、アクセルペダル開度に応じて、設定する吸気弁1の作動角、リフト中心角及び設定吸入負圧をこのマップ参照し、設定する。設定される吸気弁1のリフト中心角及び作動角は、燃焼安定性のよい中負荷以上では、バルブオーバラップが大となる設定とし、燃焼安定性が比較的余裕のない低負荷領域では、バルブオーバラップを小とする設定としておく。また、極低負荷領域では、要求される作動角が小さくなるため、ポンプ損失を低下させる設定とすると、点火時の圧縮圧力が低下してしまうため、吸入負圧を発達させて、燃焼安定性を改善する設定となっている。
このような設定で、機関運転が自動車運転上、一定速の状態、あるいは緩加速状態から減速状態に移行する場合を想定する。設定MAPの移行イメージを図4に、減速過渡時残留ガス変化概念図を図5に示す。図5では、吸入負圧の発達に対し、可変動弁機構40の応答性が遅い場合を記載している。この場合、バルブオーバラップが大きい状態で、吸入負圧が先に発達することになり、残留ガス量はマップでの設定値よりも多くなってしまう。尚、図5中の実線は実際値(実測値)を示し、点線は目標値を示している。
そこで、この残留ガスの過渡的増加を抑止するため、第1実施形態では、実際の可変動弁機構40の制御状態に応じてスロットル弁80の開度に規制を設けることで、運転性悪化を回避する。
図6のフローチャートを用いて、残留ガスの過渡的増加を抑止するための制御について説明する。
ステップ(以下単にSと記す)101では、アクセル開度APO(アクセルペダルセンサ55からの出力値)、エンジン回転数Ne(クランク角センサ53からの出力値)、現在のリフト作動角rVEL(リフト作動角センサ26からの出力値)、現在のリフト中心角rVTC(位相検出センサ27からの出力値)、設定吸入負圧rB(圧力センサ90からの出力値)、を読み込む。
S102では、アクセル開度APOとエンジン回転数Neとから、目標エンジントルクtTeを算出する。
S103では、エンジン回転数Neと目標エンジントルクtTeから、目標リフト作動角tVEL、目標リフト中心角tVTC及び目標吸入負圧tB0を算出する。
S104では、現在のリフト作動角rVEL及び現在のリフト中心角rVTCから吸気弁1の現在のバルブオーバラップ量rOLを算出する。
S105では、現在のバルブオーバラップ量rOLから吸入負圧しきい値Bthを算出する。吸入負圧しきい値Bthは、例えば、図7に示すテーブルデータを用いて算出される。
S106では、目標吸入負圧tB0と吸入負圧しきい値Bthとの大小を比較し、目標吸入負圧tB0が吸入負圧しきい値Bthよりも低負圧側、すなわち目標吸入負圧tB0が吸入負圧しきい値Bth以下の場合には、S107に進み、目標吸入負圧tB0が吸入負圧しきい値Bthよりも大きい場合には、S108に進む。
ここで、本明細書において、吸入負圧の大小は、大気圧を基準とするものであって、吸入負圧は、大気圧よりも低圧になるほど大きくなると定義する。つまり、吸入負圧が小さいとは相対的に大気圧に近いことを意味し、吸入負圧が大きいとは相対的に大気圧から離れること、換言すれば吸入負圧が発達する(吸入負圧の圧力が0に近づく)ことを意味するものとする。
S107では、最終目標吸入負圧tBを目標吸入負圧tB0と設定し、S109へ進む。
一方。S108では、最終目標吸入負圧tBを吸入負圧しきい値Bthと設定し、S109へ進む。尚、このS108では、目標リフト作動角tVELと現在のリフト作動角rVELとの差、目標リフト中心角tVTCと現在のリフト中心角rVTCとの差、をそれぞれ算出し、算出されたこれらの値を基に最終目標吸入負圧tBを算出することも可能である。
S109では、目標リフト作動角tVEL、現在のリフト作動角rVELに基づき、吸気弁1のバルブリフト量及び作動角を制御する。つまり、吸気弁1のリフト作動角が、現在のリフト作動角rVELから目標リフト作動角tVELに向かって変化するようリフト作動角変更機構10を制御する。
S110では、目標リフト中心角tVTC、現在のリフト中心角rVTCに基づき、吸気弁1のリフト中心角の位相を制御する。つまり、吸気弁1のリフト中心角が、現在のリフト中心角rVTCから目標リフト中心角tVTCに向かって変化するよう位相変更機構20を制御する。
S111では、最終目標吸入負圧tB、設定吸入負圧rBに基づき、スロットル弁80の弁開度を制御する。
このように、吸入負圧を制御することで、減速過渡時でも、燃焼安定性が確保できることとなる。
尚、空気量を所望な量に調整しようとした場合には、可変動弁の応答速度が遅い分をスロットル速度を高めて対応することになる。したがって過渡時に負荷、あるいは空気量を所望の量にコントロールするものとはスロットルの動作は逆方向となる。つまり、空気量を合わせ込むために行う制御と、上述した本実施形態のように、筒内の残留ガスを合わせ込むためにする制御とでは、制御の方向性が異なっている。
次に本発明の第2実施形態について説明する。
この第2実施形態は、上述した第1実施形態に対し、図1に示した構成のなかで、吸気コレクタ81が大容量な場合、あるいは、位相変更機構20、リフト作動角変更機構10の応答速度を速めた構成である。これにより、スロットル弁80による空気応答性よりも、可変動弁機構40の変化による空気応答性が勝る構成となっている。そのため、加速過渡時の残留ガスコントロールは、位相変更機構20、リフト作動角変更機構10を補正して行う。
図8のフローチャートを用いて詳述すると、S201では、アクセル開度APO(アクセルペダルセンサ55からの出力値)、エンジン回転数Ne(クランク角センサ53からの出力値)、現在のリフト作動角rVEL(リフト作動角センサ26からの出力値)、現在のリフト中心角rVTC(位相検出センサ27からの出力値)、設定吸入負圧rB(圧力センサ90からの出力値)、を読み込む。
S202では、アクセル開度APOとエンジン回転数Neとから、目標エンジントルクtTeを算出する。
S203では、エンジン回転数Neと目標エンジントルクtTeから、目標リフト作動角tVEL0、目標リフト中心角tVTC0及び目標吸入負圧tBを算出する。
S204では、目標リフト作動角tVEL0及び目標リフト中心角tVTC0から吸気弁1の目標バルブオーバラップ量tOLを算出する。
S205では、設定吸入負圧rBからバルブオーバラップ量しきい値OLthを算出する。バルブオーバラップ量しきい値OLthは、例えば、図9に示すテーブルデータを用いて算出される。
S206では、目標バルブオーバラップ量tOLとバルブオーバラップ量しきい値OLthの大小を比較し、目標バルブオーバラップ量tOLがバルブオーバラップ量しきい値OLth未満の場合にはS207へ進み、目標バルブオーバラップ量tOLがバルブオーバラップ量しきい値OLth以上の場合にはS208へ進む。
S207では、最終目標リフト作動角tVELを目標リフト作動角tVEL0と設定し、最終目標リフト中心角tVTCを目標リフト中心角tVTC0と設定して、S209へ進む。一方、S208では、バルブオーバラップ量しきい値OLthを実現する最終目標リフト作動角tVEL及び最終目標リフト中心角tVTCを算出し、S209へ進む。
S209では、最終目標リフト作動角tVEL、現在のリフト作動角rVELに基づき、吸気弁1のバルブリフト量及び作動角を制御する。つまり、吸気弁1のリフト作動角が、現在のリフト作動角rVELから最終目標リフト作動角tVELに向かって変化するようリフト作動角変更機構10を制御する。
S210では、最終目標リフト中心角tVTC、現在のリフト中心角rVTCに基づき、吸気弁1のリフト中心角の位相を制御する。つまり、吸気弁1のリフト中心角が、現在のリフト中心角rVTCから最終目標リフト中心角tVTCに向かって変化するよう位相変更機構20を制御する。
S211では、目標吸入負圧tB、設定吸入負圧rBに基づき、スロットル弁80を弁開度を制御する。
このように、加速側空気応答性が遅い構成であっても、位相変更機構20、リフト作動角変更機構10をコントロールして、バルブオーバラップ量を制御することで、加速時の燃焼安定性が確保できることとなる。
次に、本発明の第3実施形態について説明する。この第3実施形態は、上述した第1実施形態に対し、図1に示した構成と同様で、位相変更機構20、リフト作動角変更機構10の応答速度が、スロットル変化(スロットル弁80の弁開度の変化)による空気応答性よりも、遅い構成である。
従って、可変動弁機構40の変化が遅く、バルブオーバラップが大きい状態で、スロットル弁80を絞り、残留ガス増加を防ぐため、スロットル変化に遅れ処理を施すものである。
図10のフローチャートを用いて詳述すると、S301では、アクセル開度APO(アクセルペダルセンサ55からの出力値)、エンジン回転数Ne(クランク角センサ53からの出力値)、現在のリフト作動角rVEL(リフト作動角センサ26からの出力値)、現在のリフト中心角rVTC(位相検出センサ27からの出力値)、現在のスロットル弁開度rTVO、を読み込む。
S302では、アクセル開度APOとエンジン回転数Neとから、目標エンジントルクtTeを算出する。
S303では、エンジン回転数Neと目標エンジントルクtTeから、目標リフト作動角tVEL、目標リフト中心角tVTC及び目標スロットル弁開度tTVO0を算出する。
S304では、現在のリフト作動角rVEL及び現在のリフト中心角rVTCから吸気弁1の現在のバルブオーバラップ量rOLを算出する。
S305では、現在のバルブオーバラップ量rOLからスロットル弁開度しきい値TVOthを算出する。スロットル弁開度しきい値TVOthは、例えば、図11に示すテーブルデータを用いて算出される。
S306では、目標スロットル弁開度tTVO0とスロットル弁開度しきい値TVOthとの大小を比較し、目標スロットル弁開度tTVO0がスロットル弁開度しきい値TVOth以上の場合にはS307へ進み、目標スロットル弁開度tTVO0がスロットル弁開度しきい値TVOth未満の場合にはS308へ進む。
S307では、最終目標スロットル弁開度tTVOを目標スロットル弁開度tTVO0と設定し、S309へ進む。一方、S308では、最終目標スロットル弁開度tTVOをスロットル弁開度しきい値TVOthと設定し、S309へ進む。
S309では、目標リフト作動角tVEL、現在のリフト作動角rVELに基づき、吸気弁1のバルブリフト量及び作動角を制御する。つまり、吸気弁1のリフト作動角が、現在のリフト作動角rVELから目標リフト作動角tVELに向かって変化するようリフト作動角変更機構10を制御する。
S310では、目標リフト中心角tVTC、現在のリフト中心角rVTCに基づき、吸気弁1のリフト中心角の位相を制御する。つまり、吸気弁1のリフト中心角が、現在のリフト中心角rVTCから目標リフト中心角tVTCに向かって変化するよう位相変更機構20を制御する。
S311では、最終目標スロットル弁開度tTVO、現在のスロットル弁開度rTVOに基づきスロットル弁80を弁開度を制御する。つまり、スロットル弁80の弁開度が、現在のスロットル弁開度rTVOから最終目標スロットル弁開度tTVOとなるよう制御する。
このように減速時、スロットル開口面積の閉方向変化に遅れを持たせることとしたので、比較的簡単な制御で適切な運転性悪化抑止ができる。
次に、本発明の第4実施形態について説明する。この第4実施形態は、上述した第1実施形態と同様の構成であるが、吸気弁1の応答性、すなわち可変動弁機構40の応答性が吸入負圧の発達(スロットル弁80の応答性)に対して速くなっていると共に、減速時には残留ガス量が目標値となるように、吸入負圧に応じて吸気弁開弁時期、あるいはバルブオーバラップ量を規制するものである。
この第4実施形態においても、上述した第1実施形態と同様に、機関の回転数、アクセルペダル開度に応じて、設定する吸気弁1の作動角、リフト中心角及び設定吸入負圧をこのマップ参照し、設定する(既出の図4を参照)。設定される吸気弁1のリフト中心角及び作動角は、燃焼安定性のよい中負荷以上では、バルブオーバラップが大となる設定とし、燃焼安定性が比較的余裕のない低負荷領域では、バルブオーバラップを小とする設定としておく。また、極低負荷領域では、要求される作動角が小さくなるため、ポンプ損失を低下させる設定とすると、点火時の圧縮圧力が低下してしまうため、吸入負圧を発達させて、燃焼安定性を改善する設定となっている。
このような設定で、機関運転が自動車運転上、一定速の状態、あるいは緩加速状態から減速状態に移行する場合を想定する。減速過渡時残留ガス変化概念図を図12に示す。図12では、吸入負圧の発達に対し、可変動弁機構40の応答性が速い場合を記載している。
この場合、吸入負圧がゆっくりと発達するのに対して、バルブオーバラップ量は速やかに小さくなるので、適切な量の残留ガスを確保できなくなる可能性がある(図12中の一点鎖線)。
そこで、吸入負圧に対するバルブオーバラップ量が適切な範囲となるように可変動弁機構40の動作を制限し、減速過渡時であっても適切な量の残留ガスが得られるように制御する。尚、図12は、可変動弁機構40のうちリフト作動角変更機構10のみをバルブオーバラップがバルブオーバラップ量最小値OLminに達したところから吸入負圧の発達に同期させるように緩やかにした例である。
図13に示すフローチャートを用いて詳述すると、S401では、アクセル開度APO(アクセルペダルセンサ55からの出力値)、エンジン回転数Ne(クランク角センサ53からの出力値)、現在のリフト作動角rVEL(リフト作動角センサ26からの出力値)、現在のリフト中心角rVTC(位相検出センサ27からの出力値)、設定吸入負圧rB(圧力センサ90からの出力値)、を読み込む。
S402では、アクセル開度APOとエンジン回転数Neとから、目標エンジントルクtTeを算出する。
S403では、エンジン回転数Neと目標エンジントルクtTeから、目標リフト作動角tVEL0、目標リフト中心角tVTC0及び目標吸入負圧tBを算出する。
S404では、目標リフト作動角tVEL0及び目標リフト中心角tVTC0から吸気弁1の目標バルブオーバラップ量tOLを算出する。
S405では、設定吸入負圧rBからバルブオーバラップ量しきい値OLth及びバルブオーバラップ量最小値OLminを算出する。バルブオーバラップ量しきい値OLth及びバルブオーバラップ量最小値OLminは、例えば、図14に示すテーブルデータを用いて算出される。
S406では、目標バルブオーバラップ量tOLとバルブオーバラップ量しきい値OLthの大小を比較し、目標バルブオーバラップ量tOLがバルブオーバラップ量しきい値OLth未満の場合にはS407へ進み、目標バルブオーバラップ量tOLがバルブオーバラップ量しきい値OLth以上の場合にはS408へ進む。
S407では、目標バルブオーバラップ量tOLとバルブオーバラップ量最小値OLminの大小を比較し、目標バルブオーバラップ量tOLがバルブオーバラップ量最小値OLminより大きい場合にはS409へ進み、目標バルブオーバラップ量tOLがバルブオーバラップ量最小値OLmin以下の場合にはS410へ進む。尚、図12におけるP点のタイミングで、S407の判断がYESからNOへ変化する。
S408では、バルブオーバラップ量しきい値OLthを実現する最終目標リフト作動角tVEL及び最終目標リフト中心角tVTCを算出しS411へ進む。尚、S406からS408へ進む場合は、車両が加速時であり、残留ガスが多くなりすぎて燃焼が不安定にならないようにする場合である。
S409では、最終目標リフト作動角tVELを目標リフト作動角tVEL0と設定し、最終目標リフト中心角tVTCを目標リフト中心角tVTC0と設定して、S411へ進む。
S410では、バルブオーバラップ量最小値OLminを実現する最終目標リフト作動角tVEL及び最終目標リフト中心角tVTCを算出しS411へ進む。尚、S407からS410へ進む場合は、車両が減速時であり、適切な量の残留ガスを確保する場合である。
S411では、最終目標リフト作動角tVEL、現在のリフト作動角rVELに基づき、吸気弁1のバルブリフト量及び作動角を制御する。つまり、吸気弁1のリフト作動角が、現在のリフト作動角rVELから最終目標リフト作動角tVELに向かって変化するようリフト作動角変更機構10を制御する。
S412では、最終目標リフト中心角tVTC、現在のリフト中心角rVTCに基づき、吸気弁1のリフト中心角の位相を制御する。つまり、吸気弁1のリフト中心角が、現在のリフト中心角rVTCから最終目標リフト中心角tVTCに向かって変化するよう位相変更機構20を制御する。
S413では、目標吸入負圧tB、設定吸入負圧rBに基づき、スロットル弁80を弁開度を制御する。
このような第4実施形態によれば、吸気弁1の応答性、すなわち可変動弁機構40の応答性が吸入負圧に対し速い場合に、加速時の残留ガス増加と減速時の残留ガス減少を適度に抑止することができる。
次に本発明の第5実施形態について説明する。この第5実施形態は、上述した第1実施形態と同様の構成である。
制御的には、機関の減速時に、可変動弁機構40(本実施形態においては位相変更機構20)の作動油圧が所定の油圧以下の場合、あるいは機関の運転回転数が所定の回転数以下の場合には、実際のリフト、中心角に応じて、機関の吸入負圧を所定の負圧以上(大気圧側)、あるいは機関のスロットル制御を所定のスロットル開度以上とするとともに、油圧が所定の油圧以上の場合、あるいは機関の運転回転数が所定の回転数以上の場合には、残留ガスが目標値以下となるように、吸入負圧に応じて吸気弁開弁時期、あるいはバルブオーバラップ量を規制することとするものである。
図15のフローチャートを用いて詳述すると、S501では、アクセル開度APO(アクセルペダルセンサ55からの出力値)、エンジン回転数Ne(クランク角センサ53からの出力値)、現在のリフト作動角rVEL(リフト作動角センサ26からの出力値)、現在のリフト中心角rVTC(位相検出センサ27からの出力値)、設定吸入負圧rB(圧力センサ90からの出力値)、を読み込む。
S502では、アクセル開度APOとエンジン回転数Neとから、目標エンジントルクtTeを算出する。
S503では、エンジン回転数Neと目標エンジントルクtTeから、目標リフト作動角tVEL0、目標リフト中心角tVTC0及び目標吸入負圧tB0を算出する。
S504では、エンジン回転数Neと基準エンジン回転数Neminの大小を比較する。エンジン回転数Neが基準エンジン回転数Nemin未満の場合にはS505へ進み、エンジン回転数Neが基準エンジン回転数Nemin以上の場合にはS510へ進む。
S505では、現在のリフト作動角rVEL及び現在のリフト中心角rVTCから吸気弁1の現在のバルブオーバラップ量rOLを算出する。
S506では、現在のバルブオーバラップ量rOLから吸入負圧しきい値Bthを算出する。吸入負圧しきい値Bthは、例えば、既出の図7に示すようなテーブルデータを用いて算出される。
S507では、目標吸入負圧tB0と吸入負圧しきい値Bthとの大小を比較し、目標吸入負圧tB0が吸入負圧しきい値Bthよりも低負圧側、すなわち目標吸入負圧tB0が吸入負圧しきい値Bth以下の場合には、S508に進み、目標吸入負圧tB0が吸入負圧しきい値Bthよりも大きい場合には、S509に進む。
S508では、最終目標リフト作動角tVELを目標リフト作動角tVEL0と設定し、最終目標リフト中心角tVTCを目標リフト中心角tVTC0と設定し、最終目標吸入負圧tBを目標吸入負圧tB0と設定して、S515へ進む。
S509では、最終目標リフト作動角tVELを目標リフト作動角tVEL0と設定し、最終目標リフト中心角tVTCを目標リフト中心角tVTC0と設定し、最終目標吸入負圧tBを吸入負圧しきい値Bthと設定して、S515へ進む。
一方、S504からS510へ進んだ場合、S510では、目標リフト作動角tVEL0及び目標リフト中心角tVTC0から目標バルブオーバラップ量tOLを算出する。
S511では、設定吸入負圧rBからバルブオーバラップ量しきい値OLthを算出する。
S512では、目標バルブオーバラップ量tOLとバルブオーバラップ量しきい値OLthの大小を比較し、目標バルブオーバラップ量tOLがバルブオーバラップ量しきい値OLth未満の場合にはS513へ進み、目標バルブオーバラップ量tOLがバルブオーバラップ量しきい値OLth以上の場合にはS514へ進む。
S513では、最終目標リフト作動角tVELを目標リフト作動角tVEL0と設定し、最終目標リフト中心角tVTCを目標リフト中心角tVTC0と設定し、最終目標吸入負圧tBを目標吸入負圧tB0と設定して、S515へ進む。
S514では、バルブオーバラップ量しきい値OLthを実現する最終目標リフト作動角tVEL及び最終目標リフト中心角tVTCを算出しS515へ進む。
S515では、最終目標リフト作動角tVEL、現在のリフト作動角rVELに基づき、吸気弁1のバルブリフト量及び作動角を制御する。つまり、吸気弁1のリフト作動角が、現在のリフト作動角rVELから最終目標リフト作動角tVELに向かって変化するようリフト作動角変更機構10を制御する。
S516では、最終目標リフト中心角tVTC、現在のリフト中心角rVTCに基づき、吸気弁1のリフト中心角の位相を制御する。つまり、吸気弁1のリフト中心角が、現在のリフト中心角rVTCから最終目標リフト中心角tVTCに向かって変化するよう位相変更機構20を制御する。
S517では、目標吸入負圧tB、設定吸入負圧rBに基づき、スロットル弁80を弁開度を制御する。
可変動弁機構40の応答速度は、油圧駆動の場合、供給される油量に左右される。一方、オイルの吐出量は、クランクの回転数、すなわちエンジン回転数に依存する。従って、可変動弁機構40が油圧駆動の場合、機関の回転数によりその応答速度が変化することによる。この第5実施形態では、機関の回転数としたが、暖気後であれば、油圧でも、同様なことが言える。この場合、油温により、粘度が変わるため、油温も同時に計測、判断基準とする必要がある。
また、エンジン回転数Neが基準エンジン回転数Nemin未満の場合、油圧駆動式の可変動弁機構40の応答速度は遅いため、過渡の状態でバルブオーバラップが所定の値よりも大となってしまう。そこで、このときの残留ガス量の増加を抑止するため、この第5実施形態においては、スロットル開度変化速度を遅くして、コレクタ内負圧上昇を抑止するようにしているのである。
このような第5実施形態においては、吸気弁1の制御(可変動弁機構40の制御)とスロットル弁80の制御のうち、応答性の速いほうで、もう一方を補うことができ、機関が低回転時(油圧が低油圧時)には、残留ガスの抑止がはかれ、高回転時(油圧が高油圧時)には、空気量の制御が適正化され、適正な減速感が得られる。
次に本発明の第6実施形態について説明する。この第6実施形態は、上述した第1実施形態と同様の構成である。
制御的には、機関の運転条件が、吸入負圧の発達する方向に変化する場合(既出の図4を参照)には、吸気弁1のリフト・作動角変化をスロットル変化(スロットル弁80の弁開度変化)に先立ち、変化させる。また、図16に示すように、機関の運転条件が、吸入負圧が減少する方向に変化する場合には、スロットル変化を吸気弁1のリフト・作動角変化に先立ち、変化させる。
これにより、機関の運転条件に応じて、設定する吸入負圧が変化する場合であって、負圧変化に対して、吸気弁1のリフト・作動角変化が遅い場合であっても、運転性悪化の抑止と所望のトルク応答性の両立が図れるようにする。
図17のフローチャートを用いて詳述すると、S601では、アクセル開度APO(アクセルペダルセンサ55からの出力値)、エンジン回転数Ne(クランク角センサ53からの出力値)、現在のリフト作動角rVEL(リフト作動角センサ26からの出力値)、現在のリフト中心角rVTC(位相検出センサ27からの出力値)、設定吸入負圧rB(圧力センサ90からの出力値)、を読み込み、目標リフト作動角tVEL、目標リフト中心角tVTC及び目標吸入負圧tBを算出する。
S602では、設定吸入負圧rBと目標吸入負圧tBを比較し、tB>rBの場合はS603へ進み、可変動弁機構40によるバルブリフト特性の変化に先立ち、スロットル弁80の弁開度を変化させる。こうすることにより、既出の図4に示すような設定MAPの場合には、バルブオーバラップを大とすることなく、負荷の上昇が図れる。tBr≦rBの場合には、S604へ進み、スロットル弁80の弁開度の変化に先立ち、可変動弁機構40によるバルブリフト特性の変化を開始する。これは、可変動弁機構40による吸気弁1のバルブリフト特性の変化速度とスロットル弁80の弁開度の変化速度との差異によって、バルブオーバラップが過渡的に大となり、運転性悪化が生じないようにするためである。
このような第6実施形態においては、機関の運転条件が、吸入負圧の発達する方向に変化する場合には、吸気弁1のリフト・作動角変化をスロットル変化に先立ち、変化させるとともに、吸入負圧が減少する方向に変化する場合には、スロットル変化を吸気弁1のリフト・作動角変化に先立ち、変化させることとしたため、機関の運転条件に応じて、設定する吸入負圧が変化する場合であって、吸入負圧変化に対して、吸気弁1のリフト・作動角変化が遅い場合であっても、運転性悪化の抑止と所望のトルク応答性の両立を図ることができる。
上記各実施形態から把握し得る本発明の技術的思想について、その効果とともに列記する。
(1) 車両用内燃機関の制御装置は、吸気弁のリフト・作動角を連続的に変更可能な可変動弁機構と、スロットル弁とを備え、内燃機関の吸気量を可変動弁機構とスロットル弁の双方により制御し、車両減速時に、可変動弁機構によってリフト・作動角を車両減速前よりも小さくして、バルブオーバーラップ量を車両減速前よりも小さくし、スロットル弁の弁開度を車両減速前よりも小さくするものであって、車両減速時には、実際のバルブオーバーラップ量に応じて、スロットル弁の弁開度を所定の弁開度以上にして、内燃機関の吸入負圧を規制する。これによって、吸気弁の応答性が遅い場合でも、残留ガス増加が抑止でき、減速時の運転性悪化を抑止できる。
上記(1)に記載の車両用内燃機関の制御装置において、車両減速時には、吸気弁の実際のリフト・作動角と、目標とする吸気弁のリフト・作動角との乖離度に応じて、内燃機関の吸入負圧を調整する。これによって、減速時に吸気弁の応答性が遅い場合でも、乖離状態から、残留ガス量との相関が高いバルブオーバラップを算出でき、適切に運転性悪化を抑止ができる。
上記(1)または(2)に記載の車両用内燃機関の制御装置において、車両減速時においてスロットル弁の弁開度を閉方向に変化させる場合には、スロットル弁の閉方向への動きを遅らせる。これによって、比較的簡単な制御で適切な運転性悪化を抑止ができる。
(4) 車両用内燃機関の制御装置は、吸気弁のリフト・作動角を連続的に変更可能な可変動弁機構と、スロットル弁とを備え、内燃機関の吸気量を可変動弁機構とスロットル弁の双方により制御し、車両減速時に、可変動弁機構によってリフト・作動角を車両減速前よりも小さくして、バルブオーバーラップ量を車両減速前よりも小さくし、スロットル弁の弁開度を車両減速前よりも小さくするものであって、車両減速時には、筒内の残留ガス量が目標値となるように、内燃機関の吸入負圧に応じて、可変動弁機構によってバルブオーバラップ量を規制することを特長とする車両用内燃機関の制御装置。これによって、吸気弁の応答性が吸気管内圧力に対し、速い場合には、残留ガス増加の抑止と過渡空気量変化の両立が可能とできる。
(5) 車両用内燃機関の制御装置は、吸気弁のリフト・作動角を連続的に変更可能な可変動弁機構と、スロットル弁とを備え、内燃機関の吸気量を可変動弁機構とスロットル弁の双方により制御し、車両減速時に、可変動弁機構によってリフト・作動角を車両減速前よりも小さくして、バルブオーバーラップ量を車両減速前よりも小さくし、スロットル弁の弁開度を車両減速前よりも小さくするものであって、内燃機関の回転数が減少中の時に、内燃機関の回転数が所定値以下の場合には、実際のバルブオーバーラップ量に応じて、スロットル弁の弁開度を所定の弁開度以上にして、内燃機関の吸入負圧を規制すると共に、機関の運転回転数が所定値より大きい場合には、筒内の残留ガス量が目標値となるように、内燃機関の吸入負圧に応じて、可変動弁機構によってバルブオーバラップ量を規制する。これによって、吸気弁制御とスロットル制御のうち、応答性の速いほうで、もう一方を補うことができ、機関が低回転時には、残留ガスの抑止を図ることができ、高回転時には、空気量の制御が適正化され、適正な減速感が得られる。
(6) 車両用内燃機関の制御装置は、吸気弁のリフト・作動角を連続的に変更可能な可変動弁機構と、スロットル弁とを備え、内燃機関の吸気量を可変動弁機構とスロットル弁の双方により制御し、車両減速時に、可変動弁機構によってリフト・作動角を車両減速前よりも小さくして、バルブオーバーラップ量を車両減速前よりも小さくし、スロットル弁の弁開度を車両減速前よりも小さくするものであって、内燃機関の運転条件が内燃機関の吸入負圧を発達させる方向に変化する場合には、吸気弁のリフト・作動角変化をスロットル弁の弁開度変化に先立ち変化させる。これによって、機関の運転条件に応じて、設定する負圧が変化する場合であって、負圧変化に対して、吸気弁のリフト・作動角変化が遅い場合であっても、運転性悪化の抑止と所望のトルク応答性の両立を図ることができる。
(7) 上記(1)〜(6)のいずれかに記載の車両用内燃機関の制御装置は、より具体的には、可変動弁機構が、吸気弁のリフト・作動角を同時に、かつ連続的に変更可能なリフト作動角変更機構と、吸気弁の作動角の位相を変更可能な位相変更機構と、により構成されている。