JP4400121B2 - 半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置に関するものである。例えば、1GHzを超えるような高周波用の半導体装置、更に低反り性能も要求され、実質的に片面のみが樹脂封止されるエリア実装半導体装置に好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
IC、LSI、トランジスター等の半導体素子の封止には金属缶、セラミック、エポキシ樹脂組成物等が用いられている。中でもエポキシ樹脂組成物のトランスファー成形は、低コスト且つ大量生産に適しており広く用いられている。また、信頼性の点でもエポキシ樹脂や硬化剤であるフェノール樹脂の改良により、耐湿性の向上や、半田リフローへの対応などが図られてきた。
しかし、近年の電子機器の高速化により、エポキシ樹脂組成物に新たな対応が求められている。つまり電子機器の高速化に伴う、半導体装置が扱う周波数の高周波化への対応である。半導体装置が扱う周波数は年々上昇しており、例えば情報処理分野ではCPUの扱う動作周波数が既に1GHzを越え、更に年々上昇している。情報通信分野では、携帯電話や無線LAN等で既に2.4GHz、5GHz、更に数10GHz等での高周波を利用した通信が実施されようとしており、そこに組み込まれる半導体装置には高周波対応が求められている。
高周波対応のICには、パッケージとしてインダクタンスの低いBGAが用いられている。しかしBGA用の封止材には誘電率が高い樹脂が用いられており、ノイズが増大する、或いは携帯電話においては消費電力が上がるため可動時間が短い等の問題が出ている。
【0003】
エポキシ樹脂組成物の誘電率が高い問題に対して、これまでも種々の方策が提案されてきた。誘電率の低いシアネートレジン(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)、或いはエポキシでもOH当量、及びエポキシ当量を上げることで、低誘電率を図ったものが提案されてきた(例えば、特許文献3参照。)。しかし、シアネートレジンは成形性、特に硬化性が悪いため、生産性が著しく低下する。同様に水酸基当量、エポキシ当量を上げたレジンでも当量を上げるに従ってやはり成形性が著しく低下するという問題点があり、十分な対応が取られていない。更に離型性と低誘電率を両立する技術として中空無機充填材の使用が提案されているが(例えば、特許文献4参照。)、いずれもフィラー充填量が低くBGA用途に対し反りの問題が発生する。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−306168号公報(第2〜9頁)
【特許文献2】
特開2001−339130号公報(第2〜26頁)
【特許文献3】
特開2001−72743号公報(第2〜9頁)
【特許文献4】
特開2001−354754号広報(第2〜12頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低誘電率で且つ樹脂基板を用いた片面封止半導体装置における反りが少なく、更に成形性良好な半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
[1](A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、及び(D)中空シリカバルーン、中空ガラスバルーンから選ばれた中空無機充填材を含む無機充填材を必須成分とするエポキキシ樹脂組成物であって、グリセロール法を用いて測定した中空無機充填材の耐圧強度が100MPa以上であり、中空無機充填材の含有量が全組成物に対して50体積%以上であり、全無機充填材の含有量が全組成物に対して68体積%以上であり、且つ硬化物の誘電率が3.5以下であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
[2](A)エポキシ樹脂の150℃における溶融粘度が0.4Pa・s以下である第[1]項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
[3]第[1]又は[2]項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止してなることを特徴とする半導体装置、
[4]基板の片面に半導体素子が搭載され、この半導体素子が搭載された基板面側の片面のみが第[1]又は[2]項記載のエポキシ樹脂組成物を用いて封止されてなることを特徴とするエリア実装半導体装置、
である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、硬化促進剤、及び中空無機充填材を含む無機充填材を必須成分とするエポキキシ樹脂組成物であって、中空無機充填材の含有量が全組成物に対して50体積%以上であり、且つ全無機充填材の含有量が全組成物に対して68体積%以上であることにより、低誘電率で且つ樹脂基板を用いた片面封止半導体装置における反りが少なく、成形性も良好な半導体封止用エポキシ樹脂組成物が得られるものである。更に硬化物の誘電率が3.5以下と低いため1GHz以上の高周波を扱うデバイスにおいてその素子の特性を十分発揮できるものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0008】
本発明に用いるエポキシ樹脂は、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造は特に限定するものではない。例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)等を用いることができるが、好ましくはICI粘度計での150℃における溶融粘度が0.4Pa・s以下、より好ましくは0.3Pa・s以下、更に好ましくは0.1Pa・s以下のエポキシレジンを用いる。溶融粘度が上限値を超えると材料混練時又はタブレット打錠時に中空無機充填材の破壊が起こり、BGA成形後にパッケージの反りが大きくなってしまう可能性がある。また、中空無機充填材の破壊が起こると、中空無機充填材の体積比率が低下し、十分な低誘電率化の効果が得られない可能性がある。
また、これらのエポキシ樹脂は単独でも2種類以上混合して用いても良い。混合する全てのエポキシについて溶融粘度0.4Pa・s以下である必要はないが、混合エポキシでの溶融粘度が0.4Pa・sを越えない範囲で使用するのが望ましい。
【0009】
本発明に用いるフェノール樹脂は、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではない。例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても差し支えない。硬化剤の粘度は中空無機充填材の破壊を防ぐためにICI粘度計での150℃における溶融粘度が0.4Pa・s以下が望ましい。
【0010】
エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合量は、全エポキシ樹脂のエポキシ基数と全フェノール樹脂のフェノール性水酸基数の比が0.8〜1.3であることが好ましく、この範囲を外れると、エポキシ樹脂組成物の硬化性の低下、或いは硬化物のガラス転移温度の低下、耐湿信頼性の低下等が生じる可能性がある。
【0011】
本発明に用いる硬化促進剤としては、エポキシ基とフェノール性水酸基との硬化反応を促進させるものであればよく、一般に封止材料に使用するものを使用することができる。例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリフェニルホスフィン、2−メチルイミダゾール、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、ベンゾキノンをアダクトしたトリフェニルホスフィン等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても差し支えない。
【0012】
本発明に用いる無機充填材としては、内部に空隙を含む中空無機充填材を主成分として用いる。内部に空隙を含む中空無機充填材としては、例えば中空シリカバルーン、中空ガラスバルーン等である。更にその中空無機充填材がニーダー、熱ロール等、溶融混練機の剪断力、更にタブレット打錠時の圧力に耐えうる様、その耐圧強度が100MPa以上のものを用いることが好ましい。下限値を下回ると溶融混練時、タブレット打錠時に中空構造が破壊され所期の誘電率が達成されない可能性がある。
【0013】
中空無機充填材の破壊は、エポキシ樹脂組成物の硬化物の断面の顕微鏡観察で確認することができる。さらに簡便には中空無機充填材の破壊が起こった場合、硬化物の比重が上がるため、硬化物の比重の測定でも中空無機充填材の破壊を確認することができる。
ここで言う中空無機充填材の耐圧強度はグリセロール法を用いて測定する。中空無機充填材をグリセロール中で所定圧力まで加圧し、変化した体積より残存率を算出し、残存率が90%時の圧力を耐圧強度とする。
【0014】
中空無機充填材の粒径は、耐圧強度を上げるために、最大粒径が50μm以下であることが好ましい。同様に、平均粒径は5μm以上、35μm以下が好ましく、10μm以上、30μm以下がより好ましい。最大粒径が上限値を超えると、強度の弱い大粒径中空無機充填材の破壊により、所期の誘電率が達成できない可能性がある。同様に、平均粒径が上限値を超えると、耐圧強度が低下し、所期の誘電率が達成できない可能性がある。また、平均粒径が下限値を下回ると、成形時にバリが発生し成形性が大きく損なわれる可能性がある。
中空無機充填材の形状としては、アスペクト比が0.5〜1.0のものを用いるのが好ましい。アスペクト比が下限値を下回ると、耐圧強度が低下する恐れがある。
ここで言うアスペクト比とは、
(アスペクト比)=(粒子の短辺の長さ)/(粒子の長辺の長さ)
である。
実際の測定には、例えば、電子顕微鏡による映像から短辺と長辺の長さを測定し、n数が100の平均値として算出することができる。
【0015】
上記中空無機充填材の配合量は、中空無機充填材を単独で用いる場合、樹脂組成物に対して68体積%以上用いる必要がある。下限値を下回るとBGA成形後に反りが大きくなってしまう。上記中空無機充填材はカップリング材により表面処理されていてもかまわない。
【0016】
また、中空無機充填材に、他種の無機充填材を併用しても差し支えない。併用する無機充填材としては、一般に半導体封止用エポキシ樹脂組成物に使用されているものを用いることができる。例えば、球状溶融シリカ、破砕状溶融シリカ、結晶シリカ、タルク、アルミナ、窒化珪素等が挙げられ、最も好適に使用されるものとしては、球状溶融シリカ、破砕状溶融シリカである。これらの無機充填剤は、単独でも混合して用いても差し支えない。また、これらがカップリング剤により表面処理されていてもかまわない。中空無機充填材に他種の無機充填材を併用する場合、樹脂組成物に対して、中空無機充填材は50体積%以上、且つ無機充填材全体は68体積%以上用いる必要がある。中空無機充填材の配合量が下限値を下回ると十分な低誘電率化の効果が得られない。また、無機充填材全体の配合量が下限値を下回るとBGA成形後に反りが大きくなってしまう。
【0017】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、フェノール硬化剤、硬化促進剤、中空無機充填材を含む無機充填材を必須成分とするが、更にこれ以外に、カーボンブラック等の着色剤、天然ワックス、合成ワックス等の離型剤、ゴム等の低応力添加剤、臭素化エポキシ樹脂や三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の難燃剤等、種々の添加剤を適宜配合しても差し支えない。
本発明は高周波デバイスの特性を充分引き出すため硬化物の誘電率は3.5以下、望ましくは3.0以下、更に望ましくは2.5以下である。3.5以上では殆どのデバイスでノイズ低減の効果がなく、3.5〜3.0では一部のデバイスのみに充分の効果を発現する。また、中空フィラーの誘電率は1.2であり、従って、中空フィラーを高充填したとしても樹脂組成物の硬化物の誘電率を1.2以下とすることは実質的に不可能である。
【0018】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、ミキサー等を用いて原料を充分に均一に混合した後、更に熱ロール又はニーダー等の混練機で溶融混練し、冷却、粉砕しパウダー状にする。更に得られたパウダーを加圧してタブレット化する。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子等の各種の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の従来からの成形方法で硬化成形すればよい。
【0019】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。配合割合は重量部とする。
実施例1
をミキサーにて混合し後、熱ロールを用いて、95℃で8分間混練して冷却後粉砕し、エポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を、以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0020】
評価方法
スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、金型温度175℃、圧力6.9MPa、硬化時間120秒で測定した。単位はcm。
比重:低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力7.9MPa、硬化時間120秒で、直径50mm、厚さ3mmの試験片を成形し、JIS K 6911に準じて比重を求めた。
誘電率:低圧トランスファー成形機を用いて、成形温度175℃、圧力9.8MPa、硬化時間180秒で50φ−3mmのテストピースを成形した。テストピースは175℃/4hrにてポストキュアー後、横川ヒューレットパッカード株式会社製Qメータmodel4342Aにて誘電率を測定した。測定周波数は1MHz。
パッケージ反り量:トランスファー成形機を用い、金型温度175℃、注入圧力7.8MPa、硬化時間2分で352pBGA(基板は厚さ0.56mmのビスマレイミド・トリアジン樹脂/ガラスクロス基板、半導体装置のサイズは35mm×35mm、厚さ1.17mm、半導体素子のサイズは10mm×10mm、厚さ0.35mm、半導体素子と回路基板のボンディングパッドを25μm径の金線でボンディングしている)を成形し、175℃、8時間で後硬化した。冷却後、半導体装置のゲートから対角線方向に表面粗さ計を用いて高さ方向の変位を測定し、変位量の最も大きい値を反り量とした。単位はμm。
【0021】
実施例2〜7、比較例1〜3
表1の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得て、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
実施例1以外で用いた成分について、以下に示す。
クレゾールノボラックエポキシ樹脂A[水酸基当量200g/eq、軟化点62℃、溶融粘度(150℃)0.2Pa・s]
クレゾールノボラックエポキシ樹脂B[水酸基当量200g/eq、軟化点75℃、溶融粘度(150℃)0.42Pa・s]
フェノールノボラック樹脂B[水酸基当量104g/eq、軟化点100℃、溶融粘度(150℃)1Pa・s]
溶融球状シリカ(平均粒径23μm)
【0022】
【表1】
【0023】
【発明の効果】
本発明に従うと、低誘電率で且つ樹脂基板を用いた片面封止半導体装置における反りが少なく、更に成形性も良好な半導体封止用エポキシ樹脂組成物を得ることができる。
Claims (4)
- (A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、及び(D)中空シリカバルーン、中空ガラスバルーンから選ばれた中空無機充填材を含む無機充填材を必須成分とするエポキキシ樹脂組成物であって、グリセロール法を用いて測定した中空無機充填材の耐圧強度が100MPa以上であり、中空無機充填材の含有量が全組成物に対して50体積%以上であり、全無機充填材の含有量が全組成物に対して68体積%以上であり、且つ硬化物の誘電率が3.5以下であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- (A)エポキシ樹脂の150℃における溶融粘度が0.4Pa・s以下である請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 請求項1又は2記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止してなることを特徴とする半導体装置。
- 基板の片面に半導体素子が搭載され、この半導体素子が搭載された基板面側の片面のみが請求項1又は2記載のエポキシ樹脂組成物を用いて封止されてなることを特徴とするエリア実装半導体装置。
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