JP4232443B2 - 半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘電率の低い半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
IC、LSI、トランジスター等の半導体素子の封止には金属缶、セラミック、エポキシ樹脂組成物等が用いられている。中でもエポキシ樹脂組成物のトランスファー成形は低コスト且つ大量生産に適しており広く用いられている。また、信頼性の点でもエポキシ樹脂や硬化剤であるフェノール樹脂の改良により、耐湿性の向上や、半田リフローへの対応などが図られてきた。
しかし、近年の電子機器の高速化により、エポキシ樹脂組成物に新たな対応が求められている。つまり電子機器の高速化に伴う、半導体装置が扱う周波数の高周波化への対応である。半導体装置が扱う周波数は年々上昇しており、例えば情報処理分野ではCPUの扱う動作周波数が既に1GHzを越え、更に年々上昇している。情報通信分野では、携帯電話や無線LAN等で既に2.4GHz、5GHz、更に数10GHz等での高周波を利用した通信が実施されようとしており、そこに組み込まれる半導体装置には高周波対応が求められている。
しかし、エポキシ樹脂組成物の高周波デバイスに対する対応は充分ではなく、特に誘電率が高いため、デバイスとして所期の特性を得ることが出来ない。例えば目的とする素子の特性が得られない、ノイズが増大する、或いは携帯電話においては消費電力が上がるため可動時間が短い等の問題が出ている。このため高周波を扱うデバイスにはパッケージとしての誘電率が低いセラミック中空PKGが用いられている。中空パッケージは内部に空洞を持ち半導体チップ上は誘電率の低い空気のため高周波デバイスに適している。しかし、セラミック中空パッケージは構造上小型化が難しく、また生産コストが高い欠点があり、上記高周波半導体装置に措いてもコスト、生産性に優れたエポキシ樹脂組成物のトランスファー成形が強く望まれている。
エポキシ樹脂組成物の誘電率が高い問題に対して、これまでも種々の方策が提案されてきた。例えば誘電率の低いシアネートレジン(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)、或いはエポキシでも低誘電なものが検討されてきた(例えば、特許文献3参照。)。しかし、低誘電化が充分でない、成形性が著しく低下する等の問題があり十分な対応が取られていない。
一方、中空構造を有し内部に誘電率の低い空気を含む中空無機充填材は、硬化物中に空隙を作り、誘電率を大幅に下げることが出来るため、これまで種々検討されてきた。しかし、これまで中空無機充填材を用いた半導体封止用樹脂組成物はその製造工程、特に高圧の掛かるタブレット打錠工程において中空構造が容易に破壊されるため低誘電率を保つことが出来ず、シリカを用いた物と同様のタブレットでの供給が提案されたことは無かった。例えば無機充填材の30〜100重量%が中空充填材からなる樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献4参照。)、が溶融混練、タブレット化が成されていない。さらに中空無機充填材とレジンを溶融混練した低誘電の樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献5参照。)が、溶融混練物をパウダーの状態で用いており、やはりタブレット化は成されていない。しかし、現状での半導体封止用エポキシ樹脂組成物は大半がタブレット状態で供給されており、また、半導体封止工程は殆どがタブレットを用いており、タブレット化が出来なければ大幅に半導体装置の生産性が低下する。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−247922号公報(2〜5頁)
【特許文献2】
特開2001−89654号公報(2〜11頁)
【特許文献3】
特開平7−196768号公報(2〜5頁)
【特許文献4】
特開平5−9270号公報(2〜4頁)
【特許文献5】
特開2001−354754号公報(2〜12頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、タブレット打錠を行っても低誘電率を保持している半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
[1] (A)エポキシ樹脂(B)フェノール樹脂(C)硬化促進剤、及び(D)中空無機充填材を必須成分とするエポキシ樹脂組成物において、前記(D)中空無機充填材をグリセロール中で所定圧力まで加圧し、変化した体積より残存率を算出した際の残存率が90%である時の圧力である耐圧強度が100MPa以上であり、前記(D)中空無機充填材の最大粒径が50μm以下で平均粒径が5μm以上、35μm以下であり、該エポキシ樹脂組成物の硬化物の空隙率が90MPaで加圧したタブレットを用いた場合であっても15〜60体積%であり、周波数1MHzで測定した該エポキシ樹脂組成物の硬化物の誘電率が90MPaで加圧したタブレットを用いた場合であっても3.4以下であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
[2] 前記(D)中空無機充填材のアスペクト比が0.5〜1.0である第[1]項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
[3] 第[1]又は[2]項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置、
である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に用いるエポキシ樹脂は、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造は特に限定するものではない。例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)等を用いることが出来るが、硬化物の誘電率が低いビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)を用いることが好ましい。これらは単独でも混合して用いても差し支えない。
【0007】
本発明に用いるフェノール樹脂は、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではない。例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても差し支えない。これらの内では、特にテルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂が好ましい。
【0008】
エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合量は、全エポキシ樹脂のエポキシ基数と全フェノール樹脂のフェノール性水酸基数の比が0.8〜1.3であることが好ましく、この範囲を外れると、エポキシ樹脂組成物の硬化性の低下、或いは硬化物のガラス転移温度の低下、耐湿信頼性の低下等が生じる可能性がある。
【0009】
本発明に用いる硬化促進剤としては、エポキシ基とフェノール性水酸基との硬化反応を促進させるものであればよく、一般に封止材料に使用するものを使用することができる。例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリフェニルホスフィン、2−メチルイミダゾール、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、ベンゾキノンをアダクトしたトリフェニルホスフィン等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても差し支えない。
【0010】
本発明に用いる無機充填材としては、内部に空隙を含む中空無機充填材を用いる。例えば中空シリカバルーン、中空ガラスバルーン等である。更にその無機充填材がニーダー、熱ロール等、溶融混練機の剪断力、更にタブレット打錠時の圧力に耐えうる様、その耐圧強度が100MPa以上のものを用いる。下限値を下回ると溶融混練時、タブレット打錠時に中空構造が破壊され所期の誘電率が達成されない。
中空無機充填材は、混練時にニーダーや熱ロールによる剪断力でも破壊されるが、特にタブレット打錠時での破壊が著しい。タブレット打錠工程では、エポキシ樹脂組成物のパウダーを押し固めるために所定の圧力が必要であるが、タブレット輸送時の割れ欠けを防ぐために、通常90MPa以上の圧力で打錠することが望ましい。このため本発明では、中空無機充填材の耐圧強度は100MPa以上のものを用いる。中空無機充填材の破壊は、エポキシ樹脂組成物の硬化物の断面の顕微鏡観察で確認することが出来る。さらに簡便には中空無機充填材の破壊が起こった場合、硬化物の比重が上がるため、硬化物の比重の上昇でも中空無機充填材の破壊を確認できる。
ここで言う中空無機充填材の耐圧強度はグリセロール法を用いて測定する。中空無機充填材をグリセロール中で所定圧力まで加圧し、変化した体積より残存率を算出し、残存率が90%時の圧力を耐圧強度とする。
中空無機充填材の粒径は、耐圧強度を上げるために、最大粒径が50μm以下であることが好ましい。同様に、平均粒径は5μm以上、35μm以下が好ましく、10μm以上、30μm以下がより好ましい。最大粒径が上限値を超えると、強度の弱い大粒径中空無機充填材の破壊により耐圧強度が低下し、所期の誘電率が達成できない可能性がある。同様に、平均粒径が上限値を超えると、耐圧強度が低下し、所期の誘電率が達成できない可能性がある。また、平均粒径が下限値を下回ると、成形時にバリが発生し成形性が大きく損なわれる。
中空無機充填材の形状としては、アスペクト比が0.5〜1.0のものを用いるのが好ましい。アスペクト比が下限値を下回ると、耐圧強度が低下する恐れがある。
ここで言うアスペクト比とは、
(アスペクト比)=(粒子の短径の長さ)/(粒子の長径の長さ)
実際の測定には、電子顕微鏡による映像から短径と長径の長さを測定し、n数が100の平均値として算出した。
上記中空無機充填材の配合量は、樹脂組成物に対して20〜88重量%であることが好ましい。中空無機充填材の配合量が下限値を下回ると、空隙率が低くなり、所期の誘電率が達成できない可能性がある。一方、中空無機充填材の配合量が上限値を超えると、流動性の低下により、ワイヤー流れ、未充填等の成形性の問題が発生する恐れがある。また、中空無機充填材の充填量が多い場合には中空構造の破壊が起こりやすくなる恐れがある。
上記中空無機充填材はカップリング材により表面処理されていてもかまわない。
また、中空無機充填材に、他種の無機充填材を併用しても差し支えない。併用する無機充填材としては、一般に半導体封止用エポキシ樹脂組成物に使用されているものを用いることができる。例えば、球状溶融シリカ、破砕状溶融シリカ、結晶シリカ、タルク、アルミナ、窒化珪素等が挙げられ、最も好適に使用されるものとしては、球状溶融シリカ、破砕状溶融シリカである。これらの無機充填剤は、単独でも混合して用いても差し支えない。またこれらがカップリング剤により表面処理されていてもかまわない。
【0011】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、フェノール硬化剤、硬化促進剤、中空無機充填材を必須成分とするが、更にこれ以外に、カーボンブラック等の着色剤、天然ワックス、合成ワックス等の離型剤、ゴム等の低応力添加剤、臭素化エポキシ樹脂や三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の難燃剤等、種々の添加剤を適宜配合しても差し支えない。
【0012】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、ミキサー等を用いて原料を充分に均一に混合した後、更に熱ロール又はニーダー等の混練機で溶融混練し、冷却、粉砕しパウダー状にする。更に得られたパウダーを加圧してタブレット化する。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子等の各種の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の従来からの成形方法で硬化成形すればよい。
【0013】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。配合割合は重量部とする。
【0014】
実施例1
クレゾールノボラックエポキシ樹脂[エポキシ当量200g/eq、軟化点55℃、] 37.1重量部
フェノールノボラック樹脂[水酸基当量104g/eq、軟化点80℃]
18.6重量部
トリフェニルホスフィン(以下、TPPという) 0.6重量部
中空無機充填材a[ソーダ石灰ホウ珪酸ガラス質、平均粒径27μm、最大粒径45μm、平均殻厚み1μm、アスペクト比0.85、耐圧強度110MP]
43.0重量部
カルナバワックス 0.5重量部
カーボンブラック 0.2重量部
をミキサーにて混合した。
実施例2
実施例1で混合したエポキシ樹脂組成物を、熱ロールを用いて、95℃で8分間混練して冷却後粉砕した。
実施例3
実施例2で得られたエポキシ樹脂組成物のパウダーを、径40φの金型にて90MPaの圧力にて加圧しタブレットを得た。
実施例1で得られたエポキシ樹脂組成物、実施例2で得られたエポキシ樹脂組成物のパウダー、及び実施例3で得られたエポキシ樹脂組成物のタブレットを、以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0015】
評価方法
スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、金型温度175℃、圧力6.9MPa、硬化時間120秒で測定した。単位はcm。
誘電率:低圧トランスファー成形機を用いて、成形温度175℃、圧力9.8MPa、硬化時間120秒で50φ−3mmのテストピースを成形した。テストピースは175℃/4hrにてポストキュアー後、横川ヒューレットパッカード株式会社製Qメータmodel4342Aにて誘電率を測定した。測定周波数は1MHz。
比重:上記誘電率測定に用いた円盤と同様のテストピースを用いて比重を求めた。
空隙率:空隙率は樹脂組成物の硬化物の比重(数値A)より算出する。つまり組成物構成する各原料の体積分率における配合割合と比重の積の総和を求める(数値B)。但し中空の原料を用いる場合は内部に含む空間を差し引いた体積分率及び、空間が無い場合の比重の値を用いる。上記数値A及び数値Bより空隙率は下記の式より求める。
空隙率=(A−B)/B×100
【0016】
実施例4〜7、比較例1〜5
実施例1以外で用いた成分について、下記に示す。
ビフェニルエポキシ樹脂[エポキシ当量195g/eq、融点105℃]
フェノールアラルキル樹脂[水酸基当量175g/eq、軟化点62℃]
中空無機充填材b[ソーダ石灰ホウ珪酸ガラス質、平均粒径30μm、最大粒径60μm、平均殻厚み1μm、アスペクト比0.81、耐圧強度70MPa]
中空無機充填材c[ソーダ石灰ホウ珪酸ガラス質、平均粒径40μm、最大粒径80μm、平均殻厚み1μm、アスペクト比0.77、耐圧強度28MPa]
溶融球状シリカ[平均粒径27μm、最大粒径75μm]
表1の配合、及び工程に従い、実施例1〜3と同様にしてエポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物のパウダー、及びエポキシ樹脂組成物のタブレットを得て、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
【発明の効果】
本発明に従うと、硬化後の誘電率が低く且つタブレット打錠可能なため、半導体封止工程において生産性の高い、半導体封止用エポキシ樹脂組成物を得ることが出来る。
Claims (3)
- (A)エポキシ樹脂(B)フェノール樹脂(C)硬化促進剤、及び(D)中空無機充填材を必須成分とするエポキシ樹脂組成物において、前記(D)中空無機充填材をグリセロール中で所定圧力まで加圧し、変化した体積より残存率を算出した際の残存率が90%である時の圧力である耐圧強度が100MPa以上であり、前記(D)中空無機充填材の最大粒径が50μm以下で平均粒径が5μm以上、35μm以下であり、該エポキシ樹脂組成物の硬化物の空隙率が90MPaで加圧したタブレットを用いた場合であっても15〜60体積%であり、周波数1MHzで測定した該エポキシ樹脂組成物の硬化物の誘電率が90MPaで加圧したタブレットを用いた場合であっても3.4以下であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 前記(D)中空無機充填材のアスペクト比が0.5〜1.0である請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 請求項1又は請求項2に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。
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