JP4400043B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
本発明は、改良したモータ駆動制御回路を装填した電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電動パワーステアリング装置に使用されるモータの駆動制御方式、例えばモータの駆動制御方式として、ロータの回転位置に基づいて、制御器からインバータを介して回転磁界を発生させ、ロータの回転を駆動制御させるようにしたベクトル制御が採用される。すなわち、ベクトル制御は、ロータの外周面に所定角度の間隔で配された複数の励磁コイルに、ロータ位置に応じて制御回路によって各励磁コイルの励磁を順次切り換えることにより、ロータの回転駆動を制御するようになっている。
【0003】
この種のベクトル制御は、例えば特許文献1などに開示されている。図6は、モータの駆動制御を示す回路構成である。
【0004】
同図において、モータの制御指令値を決定する指令電流決定部51から、PI制御部52、2相/3相座標変換部53、PWM制御部54、インバータ55を介してモータ56に至る指令信号の主経路が形成されている。また、インバータ55とモータ56との間に電流センサ57が配され、該電流センサ57で検出された信号を、指令電流決定部51とPI制御部52との間に配された減算回路58にフィードバックさせるフィードバック経路が形成されている。このフィードバック経路には、3相/2相座標変換部59が配されている。
【0005】
この制御系により、指令電流決定部51では、トルクセンサで検出されたトルク指令値Trefや、位置検出センサ11で検出されたロータの回転角度θと電気角速度ωを受け、指令電流Idref、Iqrefが決定される。この指令電流Idref、Iqrefは、それぞれ、電流センサ57で検出された後、フィードバック経路の3相/2相座標変換部59で2相に変換されたフィードバック電流によって補正される。すなわち、フィードバック電流Id、Iqと、電流指令値Idref、Iqrefとの誤差が、減算回路58で演算される。その後、PI制御部52で、PWM制御のデューティーを示す信号がd、q成分の形でVd、Vqとして算出され、2相/3相変換部53によって、d、q成分から、各相成分Va、Vb、Vcに逆変換される。そして、インバータ55は、指令値Va、Vb、Vcに基づいてPWM制御され、モータ56にインバータ電流が供給されてモータ56の回転を制御するようになっている。
【0006】
なお、61は車速センサ回路で、62は感応領域判定回路で、63は係数発生回路で、64は基本アシスト力計算回路で、65は戻し力計算回路で、66は電気角変換で、67は角速度変換で、68は非干渉制御補正値計算である。
【0007】
このベクトル制御の場合、トルク指令値Trefおよびω、θに基づいて電流指令値Idref、Iqrefが決定される。また、モータのフィードバック電流Ia、Ib、IcがId、Iqに変換され、その後、IdおよびIqと、IdrefおよびIqrefとの誤差が演算され、その誤差がPI制御による電流制御を実行することによってインバータへの指令値Vd、Vqが求められる。そして、Vd、Vqの指令値が再び3相の指令値Va、Vb、Vcに逆変換されインバータ55が制御され、モータ56の駆動制御を行うようになっている。
【0008】
このようなベクトル制御を用いたモータ駆動装置には、モータ1が低速回転の時もモータの位置を正しく検出するために、特許文献2にも記載があるように位置検出センサ11としてレゾルバやエンコーダを用いる必要がある。正しく位置検出ができない状態でベクトル制御するとモータのトルクリップルが大きくなり、電動パワーステアリング装置としてはハンドルの操舵に振動などの違和感を感じたり、モータ騒音が大きいなどの不具合が発生する。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−18822号公報(第3頁、図1)
【0010】
【特許文献2】
特開2001−187578号公報(第2頁、図2)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述したようにベクトル制御を用いてモータを制御するためには、モータの位置を正しく検出する必要があるが、レゾルバやエンコーダは高価な部品であるために電動パワーステアリング装置を安価に製作するときの障害となる。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上記諸点に鑑み、安価なモータ位置推定回路を用いるにも関わらず、モータ制御として優れたベクトル制御を利用できるモータ駆動制御装置を提供し、電動パワーステアリング装置にあっては、ハンドル操作が通常のハンドル操作であっても、緊急避難のための高速切替え操舵であっても、ハンドル操舵に違和感のない、またモータ騒音が大きくない電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、モータ駆動制御回路により、3以上の相を有するブラシレスDCモータを駆動してステアリング機構に操舵補助力を付与するようになっている電動パワーステアリング装置に関し、本発明の上記目的は、前記モータ駆動制御回路が、前記ブラシレスDCモータに設けられたホールセンサの出力に基づいて、前記ブラシレスDCモータの回転速度及びロータ位置を算出するモータ位置推定回路と、前記モータ位置推定回路で算出された前記回転速度及びロータ位置に基づいて前記ブラシレスDCモータをベクトル制御するベクトル制御回路と、前記ブラシレスDCモータを矩形波制御する矩形波制御回路と、前記ベクトル制御回路又は矩形波制御回路を切替えるための切替えスイッチと、前記切替えスイッチの切替えの判定基準となる設定回転速度N1及びN2(N1>N2)を有するレベル検出回路とで構成され、前記レベル検出回路は、前記回転速度が上昇過程において前記設定回転速度N1を越えて高速の時は、前記矩形波制御回路から前記ベクトル制御回路で制御するように前記切替えスイッチを切替え、前記モータの回転速度が下降過程において前記設定回転速度N2を越えて低速の時は、前記ベクトル制御回路から前記矩形波制御回路で制御するように前記切替えスイッチを切替えるようなヒステリシス特性を有していることにより達成される。また、前記ブラシレスDCモータの電流が台形波電流であることによって達成される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0015】
本実施形態では、3相ブラシレスDCモータに適用した場合を例として説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、他のモータについても同様に本発明を適用することができる。
【0016】
図1において、本発明の実施例に係る3相ブラシレスDCモータ1は、円筒形のハウジング2と、このハウジング2の軸心に沿って配設され、軸受3a、3bにより回転自在に支持された回転軸4と、この回転軸4に固定されたモータ駆動用の永久磁石5と、この永久磁石5を包囲するようにハウジング2の内周面に固定され、かつ3相の励磁コイル6a、6bおよび6cが巻き付けられた固定子(以下、ステータという)6とを具備し、回転軸4および永久磁石5によって回転子(以下、ロータという)7を構成している。このロータ7の回転軸4の一端近傍には、位相検出用のホールセンサ48−1,48−2,48−3が設置されている。
【0017】
そして、モータ1の駆動制御は、台形波電流を用いて制御する。ここで、台形波電流で制御するのは、正弦波電流と比較すると、電流ピーク値が同じであれば、台形波電流の方が実効値が大きくなるため、大きな出力値(パワー)を得ることができる。その結果、同性能のモータを製作する場合、制御信号として台形波を用いた方が、モータの小型化を図れるという長所がある。その反面、台形波電流による制御は、正弦波電流による制御に比べて、トルクリップルを小さくするのが困難であるという短所もある。
【0018】
このような条件の下での、上述した課題を解決するための本発明の実施例を図2を用いて説明する。
【0019】
本発明のポイントを述べると、エンコーダやレゾルバと比較して分解能の極めて低い安価なホールセンサなどを用い、かつホールセンサの数も少なくて構成していることが一つのポイントである。別のポイントはモータの回転数が高速の時はホールセンサにより構成されたモータ位置推定回路であっても比較的正しくロータの位置を推定できるのでベクトル制御を用い、回転数が低速になり、ホールセンサより得られる時間当たりの信号が少なくなり位置推定の誤差が大きくなった時は、モータの位置推定を必要としない、例えば120度通電制御などの矩形波制御に切り替えて制御するということである。
【0020】
以下、図2を用いて、まず本発明の実施例の構成について説明する。
【0021】
図2において、モータ1には3個のホールセンサ48−1,48−2,48−3が配されており、該ホールセンサからのホール信号が位置推定回路41に入力される。このホールセンサ48−1,48−2,48−3と位置推定回路41でモータ位置推定回路を構成している。このモータ位置推定回路は従来より色々提案されており、例えば、特開2002−272163などに記載されている。このモータ位置推定回路の性能により後述するモータ1の切替え回転速度が決定される。次に位置推定回路41からの出力信号である、前記モータの回転速度としてのモータ1の電気角速度ωe、およびロータ位置としてのロータ7の回転角度θeがベクトル制御回路100に入力される。また、モータ1の電気角速度ωeはローパスフィルタ(以下LPFと記す)49を介してレベル検出回路42に入力される。レベル検出回路42には検出基準となる設定回転速度Nを示す設定器43の信号も入力される。
【0022】
一方、矩形波制御回路45には、ホールセンサ48−1,48−2,48−3より直接信号が入力され、位置推定回路41の出力が使用されていない点に注目すべきである。つまり、モータ1の回転速度が低速になって位置推定回路41の出力誤差が大きくなっても矩形波制御回路45は影響を受けないことである。
【0023】
一方、モータ1を制御する電流基準値Iaref,Ibref,Icrefを算出する回路としてはベクトル制御回路100の他に、矩形波制御回路45が配され、前記レベル検出回路42の切替え信号により前記ベクトル制御回路100の算出した電流基準値Iavref,Ibvref,Icvrefと矩形波制御回路45の算出した電流基準値Iasref,Ibsref,Icsrefを選択する切替えスイッチ44が配され、切替えスイッチ44の出力は電流制御回路46に入力されている。電流制御回路46の出力がPWM制御回路30の入力となり、PWM制御回路30の後にインバータ31が、インバータ31の後にモータ1が配されている。なお、モータ1とインバータ31の間に電流検出回路32−1,32−2,32−3が配され、モータ電流Ia,Ib,Icを検出し、電流制御回路46にフィードバック制御されている。
【0024】
ここで矩形波制御回路45とベクトル制御回路100の内部構成であるが、矩形波制御回路45は従来より良く知られており、例えば特願2001−168151にも記載されている。そして、矩形波制御の特徴としてホールセンサ信号を用い、ロータの位置推定を必要としないので、ホールセンサによる位置推定誤差が大きくなっても矩形波制御に問題はない。
【0025】
一方、ここで用いるベクトル制御回路は上述したブラシレスDCモータを台形波で制御した時にトルクリップル制御に優れたベクトル制御なので、以下、図3を用いて詳細に説明する。
【0026】
ベクトル制御回路100において、ベクトル制御の優れた特性を利用してベクトル制御d、q成分の電流指令値を決定した後、この電流指令値を各相電流指令値に変換するとともに、フィードバック制御部でd、q制御ではなく、全て相制御で閉じるような構成にした。よって、電流指令値を算出する段階ではベクトル制御の理論を利用しているので、本制御方式を擬似ベクトル制御(PseudoVector Control。以下、PVC制御と記す)と呼ぶ。
【0027】
このPVC制御を用いたモータ駆動制御装置は、図3に示すように、ベクトル制御回路からの電流指令値Iavref,Ibvref,Icvrefとモータ相電流Ia,Ib,Icとに基づいて各相電流誤差を求める減算回路20−1,20−2,20−3および比例積分制御を行うPI制御回路21とを備え、PWM制御部30のPWM制御によってインバータ31からモータ1に各相指令電流が供給され、モータ1の回転駆動を制御するようになっている。
【0028】
なお、電流制御回路46は、前記モータの各相の相電流指令値Iavref,Ibvref,Icvrefとモータ相電流Ia,Ib,Icとから各相電流誤差を求める減算回路20−1,20−2,20−3とその各相電流誤差を入力とするPI制御部21から構成されている。また、インバータ31とモータ1との間に、モータ電流検出回路として電流検出回路32−1、32−2、32−3が配され、該電流検出回路32−1、32−2、32−3で検出したモータの各相電流Ia、Ib、Icを減算回路20−1、20−2、20−3に供給するフィードバック回路Bが形成されている。
【0029】
そして、ベクトル制御回路100は、各相逆起電圧算出回路としての換算回路101と、d、q電圧算出回路としての3相/2相変換回路102と、Iqrefを算出するq軸指令電流算出回路103と、各相電流指令算出回路としての2相/3相変換回路104と、Idrefを算出するd軸指令電流算出回路105とトルク指令値Trefから該モータのベース角速度ωbを換算する換算回路106とを備え、位置推定回路41によって算出されたロータ7の回転角度θeと電気角速度ωeとからなるロータ位置検出信号と、図示しないトルクセンサで検出されたトルクに基づいて決定されたトルク指令値Trefとを受け、ベクトル制御による相指令値信号を算出するようになっている。
【0030】
これにより、モータ1の駆動制御は以下のように行われる。
【0031】
先ず、ベクトル制御回路100で、位置推定回路41より得られたロータの回転角度θeと電気角速度ωeとを受け、換算回路101の換算表に基づいて、各相の逆起電圧ea、eb、ecが算出される。次に、逆起電圧ea、eb、ecは、d−q電圧算出回路としての3相/2相変換回路102で、数1および数2の式に基づいて、d、q成分のed,eqに変換される。
【0032】
【数1】
Figure 0004400043
【数2】
Figure 0004400043
また、d軸電流Idrefは、ωb、ωe、およびTrefを入力として、Idref算出回路105で求められる。ただし、Ktはトルク係数、ωbはモータのベース角速度で、ωbはトルク指令値Trefを入力として換算回路106で求めている。すなわち、
【数3】
Idref=−|Tref/Kt|sin(acos(ωb/ωm))
である。数3の式に表わされるようにIdrefはモータの回転速度によって変化するため、高速度回転時の制御が可能である。
【0033】
一方、q軸電流Iqrefは、q軸指令電流算出回路103によって、ed、eq、ωeおよびIdrefを入力として、数4に基づいて算出される。すなわち、
【数4】
Iqref=2/3(Tref×ωm−ed×Idref)/eq
ここでωmはモータの機械角速度、ωeは電気角速度、Pはロータの極対数でωe=ωm×Pである。
【0034】
上記の式に表わされるようにIqrefは、モータの出力は電力に相当するというモータの出力方程式から導びかれているため、即座に演算ができる。従って、トルクリップルを最小にする制御が可能となる。
【0035】
この電流指令値Idref、Iqrefは、各相電流指令値算出回路としての2相/3相変換回路104で、数5に示すように各相の電流指令値Iavref、Ibvref、Icvrefに変換される。この添え字は、例えばIavrefのavrefは、ベクトル制御によって決定されたa相の電流指令値が表わされる。
【0036】
なお、行列式C2は数6に示すようにモータの回転角度θeによって決定される定数である。
【0037】
【数5】
Figure 0004400043
【数6】
Figure 0004400043
そして、電流検出回路32−1,32−2,32−3で検出されたモータの各相電流Ia,Ib,Icと各相電流指令値Iavref,Ibvref,Icvrefを減算回路20−1,20−2,20−3で引き算を実施し、各々の誤差を算出する。次に、各相電流の誤差をPI制御回路21で制御してインバータ31の指令値、即ちPWM制御回路30のデュティーを表わす電圧値Va,Vb,Vcが算出され、その値に基づいてPWM制御回路30がインバータ31をPWM制御し、モータ1は駆動され、所望のトルクが発生する。以上でベクトル制御回路100に関する説明を終了する。
【0038】
ここから第1の発明の実施例に関する作用について図2を用いて説明する。
【0039】
まず、モータ1の回転速度が設定回転速度N、例えば500rpmより高速である場合、ホールセンサ48−1,48−2,48−3から得られるホール信号は時間当たりの信号の点数が多いので、位置推定回路41は正しくモータ1の電気角速度ωeおよびロータ7の回転角度θeを検出できる。ここで、レベル検出回路42の入力にLPF49を配している。その理由は、LPF49の作用によって位置推定回路41の出力信号のノイズを除去してレベル検出回路42の判定がチャタリングを起こすのを防止するためである。レベル検出回路42は、モータの回転速度が設定器43に示す500rpm以上であるので、切替えスイッチ44をベクトル制御回路100と電流制御回路46を連結するようにする。上述したようにモータ1の電気角速度ωeおよびロータ7の回転角度θeが正しく検出できれば、ベクトル制御回路100は正しい電流基準値Iavref,Ibvref,Icvrefを算出する。よって、切替えスイッチ44を通して電流制御回路46には電流基準値Iavref,Ibvref,Icvrefが入力され、電流検出回路32−1,32−2,32−3より検出されたモータ電流Ia,Ib,Icのフィードバック電流とを比較してフィードバック制御される。電流制御回路46の出力信号によりPWM制御回路30はインバータ31のデュティー比を決定し、インバータ31はそのデュティー比に従ってモータ1を制御する。この制御はモータ回転速度が高速の時なのでホールセンサ42からの時間当たりの信号数が十分多く正しく検出できるので、ベクトル制御も正しく制御できている。
【0040】
次に、モータ回転速度が低速になり、500rpmより低速になると、ホールセンサ48より得られる時間当たりのホールセンサ信号がベクトル制御20を正しく制御できるほど数多く得られなくなる。しかし、設定器43が示す500rpmよりホールセンサ48より得られる回転速度が少ないのでレベル検出回路43は、電流制御回路46と矩形波制御回路45を連結するように切替えスイッチ44を切替え制御する。ここで、注目すべきは、矩形波制御回路45は位置推定回路41の出力信号を使用しておらず、ホールセンサ48−1,48−2,48−3のホールセンサ信号が直接、矩形波制御回路45に入力されている点である。よって、位置推定回路41の出力が不正確になっても矩形波制御回路45が算出する電流指令値Iasref,Ibsref,Icsrefは影響されることなく正しい電流指令値を算出できる。また、指摘しておくべき点として、矩形波制御はモータが高速回転の時はトルクリップルが小さくなるように制御するのは困難であるが、低速回転のときは、特願2001−168151で開示した制御を用いれば、トルクリップルを小さく制御できるので、モータ1の回転が500rpm以下のようなときはモータのトルク制御に何ら問題はない。電流制御回路46から後の制御は電流指令値Iasref,Ibsref,Icsrefに基づいて正しくトルク制御される。
【0041】
以上説明したように、本実施例を用いれば、モータが高速の時も、低速の時もトルクリップル制御を正しくでき、電動パワーステアリング装置のハンドル操舵はいかなるときも違和感なく操作できる効果が得られる。
【0042】
なお、設定回転速度Nは、ホールセンサの数と位置推定回路41の性能によって決定される。性能が良ければNは小さくなり、性能が悪ければNは大きくなる。ホールセンサの数を多くすれば正しく検出できる範囲は広くなるがコストが高くなる。
【0043】
図4は第1の発明の変形例である。図2の矩形波制御回路45とベクトル制御回路100の出力である電流指令値を各相電流Ia,Ib,Icとしたが、一般的なベクトル制御はd、q軸成分を用いた電流指令値Idref,Iqrefを用いるが、この変形例は図5が示すように矩形波制御回路45−2およびベクトル制御回路100−2の出力をd、q成分で出力している。またモータ検出電流Ia,Ib,Icも3相/2相変換回路47−1でId,Iqに変換してフィードバックしている。そして、電流指令値IdrefとIqrefとフィードバック電流Id,Iqを入力とし、電流制御回路46−1まではd、q軸による制御をして、最後にPWM制御回路30の入力で2相/3相変換回路47−2でd、q成分からa、b、c相成分に逆変換してインバータ31を制御しても同じ効果が得られる。
【0044】
第2の発明について、以下説明する。
【0045】
上述した第1の発明では切替えスイッチ44の切替えを決めるモータの回転速度をNと一つに設定したが、切替え回転速度が一つの場合、回転速度N付近でベクトル制御と矩形波制御が頻繁に切替り、ハンドル操作に違和感を生じさせる可能性がある。そこで、このような好ましくない現象を避けるために切替えにヒステリシスを利用し、モータ回転速度が低速から高速へ変化する場合の切替え回転速度N1と高速から低速へ変化する切替え回転速度N2の2種類の設定回転速度を設ければ、上記のようなチャタリング現象は避けることができる。
【0046】
図5を用いて、第2の発明の実施例を説明する。
【0047】
本実施例では、N1を650rpmとし、N2を500rpmとして説明する。
【0048】
まず、モータ1が高速回転、例えば2000rpmから400rpmへ回転速度を落としていく場合について説明する。この場合、ホールセンサ48−1、48−2,48−3から検出されたホール信号は位置推定回路41に入力され、ヒステリシスを持ったレベル検出回路42−2において判定される際に、まず、回転速度が落ちてくる場合には、650rpmを表わすN1では判定されずに、設定回路43−2が示すN2、つまり500rpmより低速になるとレベル検出回路42−2は切り返すスイッチ44を切替え、電流制御回路46をベクトル制御回路100から矩形波制御回路45へ切り替える。モータ1の低速回転時は、矩形波制御回路で制御しても、上述したようにモータのトルクは正しく制御できる。
【0049】
次に、低速回転から高速回転に向かう場合、例えば400rpmから2000rpmへ回転速度が上昇する場合は、レベル検出回路42−2は先ほど用いた回転速度N2、つまり500rpmではなく、設定回路43−1が示すN1である650rpm以上になるレベル検出回路42−2は切替えスイッチ44を切り替え、電流制御回路46が矩形波制御回路45からベクトル制御回路100へ入力を切り替えるようにする。650rpm以上であれば、位置推定回路41は充分正しいロータ7の回転角度θeとモータ1の電気角速度ωeを検出できるのでベクトル制御回路100の電流指令値Iavref,Ibvref,Icvrefに基づき制御してもモータのトルク制御を正しく制御でき、電動パワー−ステアリング装置は急激なハンドル操舵にも滑らかに追随できハンドル操作に違和感は感じない。また、このように制御の切替えにヒステリシス特性を有したレベル検出回路を用いれば、モータの回転速度が500rpm付近で切替えスイッチ44が交互に入り替わって矩形波制御とベクトル制御が頻繁に切り替わり、ハンドル操作に違和感が生じることを防止できる。
【0050】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係るモータ駆動制御装置および電動パワーステアリング装置を用いれば、安価なモータ位置推定回路を用いて、モータの低速回転時のベクトル制御の短所を回避しながら、その他の広範な回転速度領域ではベクトル制御で正しくモータのトルク制御ができるモータ駆動制御装置を提供でき、さらに、ハンドル操作がスムーズで騒音の小さい電動パワーステアリング装置を提供できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の制御対象であるブラシレスDCモータを示す図である。
【図2】第1の発明の実施例の制御ブロック図である。
【図3】本発明のベクトル制御回路が疑似ベクトル制御である場合の制御ブロック図である。
【図4】第1の本発明の変形例の制御ブロック図である。
【図5】第2の発明の実施例の制御ブロック図である。
【図6】従来のエンコーダまたはレゾルバを用いたベクトル制御の制御ブロック図である。
【符号の説明】
100 ベクトル制御回路
41 位置推定回路
42、42−2 レベル検出回路
43、43−1,43−2 設定器
44 切替えスイッチ
45 矩形波制御回路
46 電流制御回路
47−2 2相/3相変換回路
47−1 3相/2相変換回路
48−1,48−2,48−3 ホールセンサ
49 ローパスフィルタ(LPF)
101 換算回路
102 3相/2相変換回路
103 q軸指令電流算出回路
104 2相/3相変換回路
105 q軸指令電流算出回路
20−1,20−2,20−3 減算回路
21 PI制御回路
30 PWM制御回路
31 インバータ
32−1,32−2,32−3 電流検出器
1 モータ
2 ハウジング
3a,3b 軸受
4 回転軸
5 永久磁石
6 固定子
7 回転子

Claims (2)

  1. モータ駆動制御回路により、3以上の相を有するブラシレスDCモータを駆動してステアリング機構に操舵補助力を付与するようになっている電動パワーステアリング装置において、
    前記モータ駆動制御回路が、
    前記ブラシレスDCモータに設けられたホールセンサの出力に基づいて、前記ブラシレスDCモータの回転速度及びロータ位置を算出するモータ位置推定回路と、前記モータ位置推定回路で算出された前記回転速度及びロータ位置に基づいて前記ブラシレスDCモータをベクトル制御するベクトル制御回路と、前記ブラシレスDCモータを矩形波制御する矩形波制御回路と、前記ベクトル制御回路又は矩形波制御回路を切替えるための切替えスイッチと、前記切替えスイッチの切替えの判定基準となる設定回転速度N1及びN2(N1>N2)を有するレベル検出回路とで構成され、
    前記レベル検出回路は、前記回転速度が上昇過程において前記設定回転速度N1を越えて高速の時は、前記矩形波制御回路から前記ベクトル制御回路で制御するように前記切替えスイッチを切替え、前記モータの回転速度が下降過程において前記設定回転速度N2を越えて低速の時は、前記ベクトル制御回路から前記矩形波制御回路で制御するように前記切替えスイッチを切替えるようなヒステリシス特性を有していることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 前記ブラシレスDCモータの電流が台形波電流である請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
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