JP4615440B2 - モータ駆動制御装置及び電動パワーステアリング装置 - Google Patents
モータ駆動制御装置及び電動パワーステアリング装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4615440B2 JP4615440B2 JP2005502372A JP2005502372A JP4615440B2 JP 4615440 B2 JP4615440 B2 JP 4615440B2 JP 2005502372 A JP2005502372 A JP 2005502372A JP 2005502372 A JP2005502372 A JP 2005502372A JP 4615440 B2 JP4615440 B2 JP 4615440B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- motor
- command value
- control unit
- current
- control
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Control Of Motors That Do Not Use Commutators (AREA)
Description
【0001】
本発明は、電動パワーステアリング装置に用いるに最適なモータ駆動制御装置の改良並びにそれを用いた電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動パワーステアリング装置に使用されるモータの駆動制御方式、例えばモータの駆動制御方式として、ロータの回転位置に基づいて、制御器からインバータを介して回転磁界を発生させ、ロータの回転を駆動制御させるようにしたベクトル制御が採用される。即ち、ベクトル制御は、ロータの外周面に所定角度の間隔で配された複数の励磁コイルに、ロータ位置に応じて制御回路によって各励磁コイルの励磁を順次切り替ええることにより、ロータの回転駆動を制御するようになっている。
【0003】
この種のベクトル制御は、例えば特開2001−18822公報などに開示されている。第1図は、ベクトル制御によるモータ56の駆動制御の一例を示すブロック構成である。
【0004】
第1図において、モータ56の制御指令値を決定する指令電流決定部51から、PI制御部52、2相/3相座標変換部53、PWM制御部54、インバータ55を介してモータ56に至る指令信号の主経路が形成されている。また、インバータ55とモータ56との間に電流センサ571,572が配され、これら電流センサ571,572で検出されたモータ電流を3相/2相座標変換部59で2相に変換し、2相電流成分Iq,Idを指令電流決定部51とPI制御部52との間に配された減算部581,582にフィードバックさせるフィードバック経路が形成されている。
【0005】
この制御系により、指令電流決定部51では、トルクセンサで検出されたトルク指令値Trefや、位置検出センサ11で検出されたロータの回転角度θと電気角速度ωを受け、電流指令値Idref、Iqrefが決定される。これらの電流指令値Idref、Iqrefは、フィードバック経路の3相/2相座標変換部59で2相に変換された2相電流成分Id,Iqに変換されたフィードバック電流によって補正される。即ち、2相電流成分Id、Iqと、電流指令値Idref、Iqrefとの誤差が、減算部581,582で演算される。その後、PI制御部521,522で、PWM制御のデューティを示す信号がd、q成分の形でVd、Vqとして算出され、2相/3相変換部53によって、d、q成分から、各相成分Va、Vb、Vcに逆変換される。そして、インバータ55は、3相の指令値Va、Vb、Vcに基づいてPWM制御され、モータ56にインバータ電流が供給されてモータ56の回転を制御するようになっている。
【0006】
なお、61は車速センサ回路で、62は感応領域判定回路で、63は係数発生回路で、64は基本アシスト力計算回路で、65は戻し力計算回路で、66は電気角変換で、67は角速度変換で、68は非干渉制御補正値計算である。
【0007】
上述のようなベクトル制御の場合、トルク指令値Tref及び電気角速度ω、回転角θに基づいて電流指令値Idref、Iqrefが決定される。また、モータ56のフィードバック電流Iu、Iv、IwがId、Iqに変換され、その後、2相電流成分Id及びIqと、電流指令値Idref及びIqrefとの誤差が演算され、その誤差がPI制御による電流制御を実行することによってインバータへの指令値Vd、Vqが求められる。そして、指令値Vd、Vqが2相/3相座標変換部53で再び3相の指令値Va、Vb、Vcに逆変換されインバータ55が制御され、モータ56の駆動制御を行うようになっている。
【0008】
また、電動パワーステアリング装置に使用されるモータは一般的なものは永久磁石同期モータ(PMSM)であり、永久磁石同期モータは3相正弦波電流で駆動されている。また、モータを駆動する制御方式としては、ベクトル制御と称する制御方式が広く使用されている。しかし、電動パワーステアリング装置の小型化の要望が強く、小型化に適したモータとしてブラシレスDCモータを用いる傾向にある。
【0009】
このような状況の下での従来の電動パワーステアリング装置用モータのベクトル制御方式を用いたモータ駆動制御装置について第2図を用いて説明する。
【0010】
その構成はモータ1の電流を制御する電流指令値部200の後段に、指令値Iavref,Ibvref,Icvrefとモータ電流Ia,Ib,Icとの誤差を検出する減算部20−1,20−2,20−3と、減算部20−1,20−2,20−3からの各誤差信号を入力するPI制御部21と、PI制御部21からの3相の指令値Va、Vb、Vcを入力するPWM制御部30と、直流を交流に変換するインバータ31とを介してモータ1に至る主経路が接続されている。インバータ31とモータ1の間には、モータ電流Ia,Ib,Icを検出する電流検出路32−1,32−2,32−3がそれぞれ配置され、検出されたモータ電流が減算部20−1,20−2,20−3へフィードバックされるフィードバック制御の構成となっている。
【0011】
次に、ベクトル電流指令値演算部100について説明する。
先ず、その入力に関して、図示しないトルクセンサで検出されたトルクから算出された指令値Trefとレゾルバなどの位置検出センサ11で検出されたモータのロータ位置を示すロータの回転角度θeと微分部24で演算された電気角速度ωeを入力としている。ここで、モータの機械角速度ωmと電気角速度ωeとはωm=ωe/Pの関係にある。ただし、Pはモータ1の極対数である。よって、この場合、角速度検出回路は位置検出センサ11と微分回路24とで構成されていることになる。そして、電気角速度ωeとロータの回転角度θeを入力とし、換算部101で逆起電圧ea,eb,ecを算出する。次に、3相/2相変換部102でd軸、q軸成分であるed,eqに変換し、このd軸成分電圧eed, q軸成分電圧eqを入力としてq軸指令電流算出部108でq軸の電流指令値Iqrefが算出される。ただし、この場合、d軸の電流指令値Idref=0として演算される。
【0012】
即ち、モータの出力方程式とし下記数1が成り立つ。
(数1)
Tref×ωm=3/2(ed×Id+eq×Iq)
上記数1にId=Idref=0を入力すると、下記数2の電流指令値Iqが得られる。
【0013】
(数2)
Iq=Iqref=2/3(Tref×ωm/eq)
電流指令値Iavref,Ibvref,Icvrefは、q軸指令電流算出部108からの電流指令値Iqrefと後述する進角制御の進角Φに基づいて算出される。即ち、q軸指令電流算出部108は進角算出部107で算出された角度ΦとIqrefを入力し、2相/3相変換部104にて電流指令値Iavref,Ibvref,Icvrefが算出される。
【0014】
なお、Φ=acos(ωb/ωm)或いはΦ=K(1−(ωb/ωm))などの関数が経験的に用いられる(“acos”はcos−1を表わす)。なお、モータのベース角速度ωbとは、弱め界磁制御を用いずにモータを駆動させた際のモータの限界角速度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】
特開2001−18822号公報
【特許文献2】
特開2001−187578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
第1図のようなベクトル制御を用いたモータ駆動装置には、モータ1が低速回転の時もモータの位置を正しく検出するために、特開2001−187578にも記載があるように位置検出センサ11としてレゾルバやエンコーダを用いる必要がある。正しく位置検出ができない状態でベクトル制御するとモータのトルクリップルが大きくなり、電動パワーステアリング装置としてはハンドルの操舵に振動などの違和感を感じたり、モータ騒音が大きいなどの不具合が発生する。言い換えると、ベクトル制御を用いてモータを制御するためには、モータの位置を正しく検出する必要があるが、レゾルバやエンコーダは高価な部品であるために電動パワーステアリング装置を安価に製作するときの障害となる。
【0016】
また、進角制御により弱め界磁制御を開始する判断は、上述した式であるΦ=acos(ωb/ωm)などを利用して、モータ1の検出速度であるモータの角速度ωmがベース角速度ωbより大きくなれば、進角制御の実行を開始するという手順を取っている。しかし、ここで検出された角速度ωmには、ロータの位置検出センサの一例であるレゾルバやエンコーダの検出誤差が含まれている。さらに、最近では、ロータの位置検出を安価にするため、ホールセンサを利用した位置検出センサが利用され、レゾルバなどに比べ、より大きい誤差を含む可能性が大きくなってきている。
【0017】
その結果、本来、既に弱め界磁制御を実行する必要があるのに、ロータの位置検出センサの検出誤差やモータ駆動制御装置の制御処理の途中で発生する計算誤差などにより、弱め界磁制御が実行されない場合がある。そのため、高速回転時に、モータ端子電圧が飽和して電流指令値にモータ電流が追従できず、トルクリップルが大きくなったり、モータ騒音も大きくなり、電動パワーステアリング装置としては、急速なハンドル操舵時に、ハンドルを通して異常な振動を感じたり、モータ騒音を引起こし運転手に不快感を与えたりして好ましくなかった。
【0018】
さらに、ロータの位置検出に、レゾルバやエンコーダと比較して低価格であるホールセンサを用いるとロータの回転が低速になった時に、モータの角速度ωmやロータの回転角度θeが正しく検出できないために、トルクリップルの少ないベクトル制御を用いることができないという問題があった。
【0019】
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、安価な位置検出センサから構成されるモータ位置推定回路を用いるにも関わらず、モータ制御として優れたベクトル制御を利用できるモータ駆動制御装置を提供し、電動パワーステアリング装置にあっては、ハンドル操作が通常のハンドル操作であっても、緊急避難のための高速切替え操舵であっても、ハンドル操舵に違和感のない、またモータ騒音が大きくない電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【0020】
更に本発明の目的は、ロータの位置検出センサの検出誤差やモータ駆動制御装置の制御計算誤差などがあっても、モータの高速回転時にモータ端子電圧が飽和を起こす前に、弱め界磁制御に切替えられ、その結果、トルクリップルが小さく、モータ騒音も小さい、また、電動パワーステアリング装置にあっては、ハンドルの急速な操舵時にも、騒音も小さく、ハンドル操作が滑らかに追随できるモータ駆動制御装置及び電動パワーステアリング装置を提供することにある。また、ロータの位置検出にホールセンサを用いても、ブラシレスDCモータのベクトル制御を可能とするモータ駆動制御装置及び電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明はモータ駆動制御装置に関し、本発明の上記目的は、3以上の相を有するモータに取り付けられてロータ位置を検出する位置検出素子と、前記位置検出素子からの位置信号に基づいて前記モータのモータ回転速度及びロータ位置を算出するモータ位置推定回路と、前記モータ位置推定回路で算出された前記モータ回転速度及びロータ位置と、トルク指令値とに基づいて、前記モータを電流制御部を介して擬似ベクトル制御するベクトル制御部と、前記トルク指令値及び前記位置信号に基づいて、前記モータを前記電流制御部を介して矩形波制御する矩形波制御部と、前記ベクトル制御部及び前記矩形波制御部を切り替える切替えスイッチと、前記切替えスイッチの切替えの判定基準となる設定回転速度N1及びN2(N1>N2)を有するレベル検出部とを具備し、前記ベクトル制御部は、前記モータ回転速度、前記ロータ位置及び前記トルク指令値に基づいて決定したd軸電流指令値及びq軸電流指令値を、前記モータの相に対応した相数の電流指令値に変換して前記切替えスイッチに入力するようになっており、前記レベル検出部は、前記モータの回転速度が上昇過程において前記設定回転速度N1を越えて高速の時は、前記矩形波制御部から前記ベクトル制御部で制御するように前記切替えスイッチを切り替え、前記モータの回転速度が下降過程において前記設定回転速度N2を越えて低速の時は、前記ベクトル制御部から前記矩形波制御部で制御するように前記切替えスイッチを切り替えるように制御することことによって達成される。
【0022】
また、本発明は、3以上の相を有するモータに取り付けられてロータ位置を検出する位置検出素子と、前記位置検出素子からの位置信号に基づいて前記モータのモータ回転速度ωe及びロータ位置θeを算出するモータ位置推定回路と、前記モータ位置推定回路で算出された前記モータ回転速度ωe及びロータ位置θeと、トルク指令値Trefとに基づいて、前記モータを電流制御部を介して擬似ベクトル制御するベクトル制御部と、前記トルク指令値Tref及び前記位置信号に基づいて、前記モータを前記電流制御部を介して矩形波制御する矩形波制御部と、前記ベクトル制御部及び前記矩形波制御部を切り替える切替えスイッチと、設定回転速度に基づいて前記切替えスイッチをヒステリシス特性で切替えるレベル検出部とを具備したモータ駆動制御装置において、本発明の上記目的は、前記ベクトル制御部が、前記トルク指令値Trefを前記モータの機械角速度ωmに換算する第1換算部と、前記機械角速度ωm及び前記モータ回転速度ωeに基づいてd軸電流指令値Idrefを算出するd軸指令電流算出部と、前記モータ回転速度ωe及び前記ロータ位置θeに基づいて各相の逆起電圧を算出する第2換算部と、前記各相の逆起電圧をd軸及びq軸の逆起電圧に変換する各相/2相変換部と、前記d軸及びq軸の逆起電圧、前記モータ回転速度ωe、前記ロータ位置θe及び前記d軸電流指令値Idrefに基づいてq軸電流指令値Iqrefを算出するq軸指令電流算出部と、前記d軸電流指令値Idref及び前記q軸電流指令値Iqrefを入力して前記モータの相に対応した相数の電流指令値に変換する2相/各相変換部とで構成されていることにより達成される。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るモータ駆動制御装置及び電動パワーステアリング装置を用いれば、安価なモータ位置推定回路を用いて、モータの低速回転時のベクトル制御の短所を回避しながら、その他の広範な回転速度領域ではベクトル制御で正しくモータのトルク制御ができるモータ駆動制御装置を提供でき、さらに、ハンドル操作がスムーズで騒音の小さい電動パワーステアリング装置を提供できる効果がある。
【0024】
更に、本発明を用いれば、ロータの位置検出の誤差やモータ駆動制御装置の制御計算誤差があっても、モータの高速回転時にモータ端子電圧が飽和することがなく、弱め界磁制御を開始することによって、トルクリップルが少なく、またモータ騒音が小さい制御ができるモータ駆動制御装置を提供でき、さらに、電動パワーステアリング装置にあっては、ハンドルの急速操舵にも滑らかに追随してハンドル操作に違和感がなく、騒音の少ない電動パワーステアリング装置を提供できる。
【0025】
また、ブラシレスDCモータのロータの位置検出に安価なホールセンサを用いても、モータの低速回転時には矩形波制御を、中速回転時にはPVC制御を、高速回転時にはPVC制御(弱め界磁制御)を選択するハイブリッド構成とすることにより、これまで矩形波モータでは不可能であった高速回転時における低トルクリップルの制御が可能になる安価なモータ駆動制御を装置を提供でき、電動パワーステアリング装置にあっては、ハンドルの急速操舵にも滑らかに追随してハンドル操作に違和感がなく、騒音の少ない安価な電動パワーステアリング装置を提供できるといった優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
第1図は、従来のレゾルバなどを用いた制御ブロック図である。
第2図は、従来の弱め界磁制御を用いた制御ブロック図である。
第3図は、本発明の制御対象であるブラシレスDCモータの一例を示す断面構造図である。
第4図は、本発明に係るモータの回転速度によって制御方式が切り替わる制御系の一例を示すブロック図である。
第5図は、本発明に係る電流指令値の演算の一例を示すブロック図である。
第6図は、本発明に係るモータの回転速度によって制御方式が切り替わる制御系の他の実施例を示すブロック図である。
第7図は、本発明に係るモータの回転速度によってヒステリシス特性をもって切り替わる制御系の一例を示すブロック図である。
第8図は、ブラシレスDCモータのロータ位置検出の原理を示す図である。
第9図は、本発明を適用する矩形波モータに通電する電流波形及び逆起電圧波形の一例を示す図である。
第10図は、本発明に係る弱め界磁制御を適用した制御系の一例を示すブロック図である。
第11図は、本発明の弱め界磁制御のためのd軸電流演算の一例を示すブロック図である。
第12図は、本発明の弱め界磁制御の効果の一例を示す図である。
第13図は、本発明の弱め界磁制御とモータの回転速度によって制御方式が切り替わる制御系の組み合わせの一例を示すブロック図である。。
第14図は、弱め界磁制御と制御方式の切替えの組み合わせた効果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、第1の実施形態を説明する。
本実施形態では、3相ブラシレスDCモータに適用した場合を例として説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、他のモータについても同様に本発明を適用することができる。
【0028】
第3図において、本発明の実施例に係る3相ブラシレスDCモータ1は、円筒形のハウジング2と、このハウジング2の軸心に沿って配設され、軸受3a、3bにより回転自在に支持された回転軸4と、この回転軸4に固定されたモータ駆動用の永久磁石5と、この永久磁石5を包囲するようにハウジング2の内周面に固定され、かつ3相の励磁コイル6a、6b及び6cが巻き付けられた固定子(以下、ステータという)6とを具備し、回転軸4及び永久磁石5によって回転子(以下、ロータという)7を構成している。このロータ7の回転軸4の一端近傍には、位相検出用のホールセンサ48−1,48−2,48−3が設置されている。
【0029】
そして、モータ1の駆動制御は、矩形波電流(或いは台形波電流)を用いて制御する。ここで、矩形波電流で制御するのは、正弦波電流と比較すると、電流ピーク値が同じであれば、矩形波電流の方が実効値が大きくなるため、大きな出力値(パワー)を得ることができる。その結果、同性能のモータを製作する場合、制御信号として矩形波を用いた方が、モータの小型化を図れるという長所がある。その反面、矩形波電流による制御は、正弦波電流による制御に比べて、トルクリップルを小さくするのが困難であるという短所もある。
【0030】
このような条件の下での、上述した課題を解決するための本発明の実施例を第4図を用いて説明する。
本発明のポイントを述べると、エンコーダやレゾルバと比較して分解能の極めて低い安価なホールセンサなどを用い、かつホールセンサの数も少なくて構成していることが一つのポイントである。別のポイントはモータの回転数が高速の時はホールセンサにより構成されたモータ位置推定回路であっても比較的正しくロータの位置を推定できるのでベクトル制御を用い、回転数が低速になり、ホールセンサより得られる時間当たりの信号が少なくなり位置推定の誤差が大きくなった時は、モータの位置推定を必要としない、例えば120度通電制御などの矩形波制御に切り替えて制御するということである。
【0031】
以下、第4図を用いて、先ず本発明の実施例の構成について説明する。
第4図において、モータ1には3個のホールセンサ48−1,48−2,48−3が配されており、該ホールセンサからのホール信号が位置推定回路41に入力される。このホールセンサ48−1,48−2,48−3と位置推定回路41とでモータ位置推定回路を構成している。このモータ位置推定回路は従来種々提案されており、例えば、特開2002−272163などに記載されている。このモータ位置推定回路の性能により後述するモータ1の切替え回転速度が決定される。次に位置推定回路41からの出力信号である、前記モータの回転速度としてのモータ1の電気角速度ωe、及びロータ位置としてのロータ7の回転角度θeがベクトル制御部100に入力される。また、モータ1の電気角速度ωeはローパスフィルタ(以下LPFと記す)49を介してレベル検出部42に入力される。レベル検出部42には検出基準となる設定回転速度Nを示す設定部43の信号も入力される。
【0032】
一方、矩形波制御部45には、ホールセンサ48−1,48−2,48−3より直接信号が入力され、位置推定回路41の出力が使用されていない点に注目すべきである。つまり、モータ1の回転速度が低速になって位置推定回路41の出力誤差が大きくなっても矩形波制御部45は影響を受けないことである。
【0033】
一方、モータ1を制御する電流指令値Iaref,Ibref,Icrefを算出する回路としてはベクトル制御部100の他に、矩形波制御部45が配され、前記レベル検出部42の切替え信号により前記ベクトル制御部100の算出した電流指令値Iavref,Ibvref,Icvrefと矩形波制御部45の算出した電流指令値Iasref,Ibsref,Icsrefを選択する切替えスイッチ44が配され、切替えスイッチ44の出力は電流制御部46に入力されている。電流制御部46の出力がPWM制御部30の入力となり、PWM制御部30の後にインバータ31が、インバータ31の後にモータ1が配されている。なお、モータ1とインバータ31の間に電流検出回路32−1,32−2,32−3が配され、モータ電流Ia,Ib,Icを検出し、電流制御部46にフィードバック制御されている。
【0034】
ここで矩形波制御部45とベクトル制御部100の内部構成であるが、矩形波制御部45は従来良く知られており、例えば特開2002−369569号公報にも記載されている。そして、矩形波制御の特徴としてホールセンサ信号を用い、ロータの位置推定を必要としないので、ホールセンサによる位置推定誤差が大きくなっても矩形波制御に問題はない。
【0035】
一方、ここで用いるベクトル制御部は、上述したブラシレスDCモータを矩形波で制御した時にトルクリップル制御に優れたベクトル制御なので、以下、第5図を用いて詳細に説明する。
【0036】
ベクトル制御部100において、ベクトル制御の優れた特性を利用してベクトル制御d、q成分の電流指令値Idref,Iqrefを決定した後、この電流指令値Idref、Iqrefを各相電流指令値Iaref,Ibref,Icrefに変換するとともに、フィードバック制御部でd、q制御ではなく、全て相制御で閉じるような構成にした。よって、電流指令値Iaref,Ibref,Icrefを算出する段階ではベクトル制御の理論を利用しているので、本制御方式を擬似ベクトル制御(Pseudo Vector Control:以下、「PVC制御」と記す)と呼ぶ。
【0037】
このPVC制御を用いたモータ駆動制御装置は、第5図に示すように、ベクトル制御部からの電流指令値Iavref,Ibvref,Icvrefとモータ相電流Ia,Ib,Icとに基づいて各相電流誤差を求める減算部20−1,20−2,20−3及び比例積分制御を行うPI制御部21とを備え、PWM制御部30のPWM制御によってインバータ31からモータ1に各相指令電流が供給され、モータ1の回転駆動を制御するようになっている。
【0038】
なお、電流制御部46は、前記モータの各相の相電流指令値Iavref,Ibvref,Icvrefとモータ相電流Ia,Ib,Icとから各相電流誤差を求める減算部20−1,20−2,20−3とその各相電流誤差を入力とするPI制御部21から構成されている。また、インバータ31とモータ1との間に、モータ電流検出回路として電流検出回路32−1、32−2、32−3が配され、該電流検出回路32−1、32−2、32−3でそれぞれ検出したモータの各相電流Ia、Ib、Icを減算部20−1、20−2、20−3に入力するフィードバック制御が形成されている。
【0039】
そして、ベクトル制御部100は、各相逆起電圧算出部としての換算部101と、d、q電圧算出部としての3相/2相変換部102と、q軸電流指令値Iqrefを算出するq軸指令電流算出部103と、各相電流指令算出部としての2相/3相変換部104と、d軸電流指令値Idrefを算出するd軸指令電流算出部105とトルク指令値Trefから該モータのベース角速度ωbを換算する換算部106とを備え、位置推定回路41によって算出されたロータ7の回転角度θeと電気角速度ωeとからなるロータ位置検出信号と、図示しないトルクセンサで検出されたトルクに基づいて決定されたトルク指令値Trefとを受け、ベクトル制御によって演算された各相の電流指令値Iaref,Ibref,Icrefが出力されるようになっている。
【0040】
このような制御ブロック構成により、モータ1の駆動制御は以下のように行われる。
先ず、ベクトル制御部100で、位置推定回路41より得られたロータの回転角度θeと電気角速度ωeとを受け、換算部101の換算表に基づいて、各相の逆起電圧ea、eb、ecが算出される。次に、逆起電圧ea、eb、ecは、d−q電圧算出部としての3相/2相変換部102で、数3及び数4に基づいて、d、q成分の逆起電圧ed,eqに変換される。
【数3】
【数4】
【0041】
また、d軸電流Idrefは、角速度ωb、ωe、及びトルク指令値Trefを入力として、Idref算出部105で算出される。ただし、Ktはトルク係数ある。また、ωbはモータのベース角速度であり、このベース角速度ωbはトルク指令値Trefを入力として換算部106で求めている。
【0042】
よって、d軸電流指令値Idrefは、下記数5で算出される。
(数5)
Idref=−|Tref/Kt|・sin(acos(ωb/ωm)))
数5で表わされるように、d軸電流指令値Idrefはモータの回転速度ωmによって変化するため、高速度回転時の制御が可能である。
【0043】
一方、q軸電流Iqrefは、q軸指令電流算出部103によって、逆起電圧ed、eq、ωe及びd軸電流指令値Idrefを入力として、下記数6に基づいて算出される。
(数6)
Iqref=2/3(Tref×ωm−ed×Idref)/eq
ここでωmはモータの機械角速度、ωeは電気角速度、Pはロータの極対数でωe=ωm×Pである。
【0044】
上記数6に表わされるようにq軸電流指令値Iqrefは、モータの出力は電力に相当するというモータの出力方程式から導かれているため、即座に演算ができる。従って、トルクリップルを最小にする制御が可能となる。
【0045】
この電流指令値Idref、Iqrefは、各相電流指令値に変換するための2相/3相変換部104で、数7を用いて、各相の電流指令値Iavref、Ibvref、Icvrefに変換される。この添え字は、例えば、Iavrefのavrefは、ベクトル制御によって決定されたa相の電流指令値が表わされる。
なお、行列式C2は数8に示すようにモータの回転角度θeによって決定される定数である。
【数7】
【数8】
【0046】
そして、電流検出回路32−1,32−2,32−3で検出されたモータの各相電流Ia,Ib,Icと各相電流指令値Iavref,Ibvref,Icvrefを減算部20−1,20−2,20−3で引き算を実施し、各々の誤差を算出する。次に、各相電流の誤差をPI制御部21で制御してインバータ31の指令値、即ちPWM制御部30のデュティーを表わす電圧指令値Va,Vb,Vcが算出され、それらの値に基づいてPWM制御部30がインバータ31をPWM制御し、モータ1は駆動され、所望のトルクが発生する。以上がベクトル制御部100に関する説明である。
【0047】
次に、第1の実施形態に関する作用について、第4図を用いて説明する。
先ず、モータ1の回転速度が設定回転速度N、例えば500rpmより高速である場合、ホールセンサ48−1,48−2,48−3から得られるホール信号は時間当たりの信号の点数が多いので、位置推定回路41は正しくモータ1の電気角速度ωe及びロータ7の回転角度θeを検出できる。ここで、レベル検出部42の入力にLPF49を配している。その理由は、LPF49の作用によって位置推定回路41の出力信号のノイズを除去してレベル検出部42の判定がチャタリングを起こすのを防止するためである。レベル検出回路42は、モータの回転速度が設定部43に示す500rpm以上であるので、切替えスイッチ44をベクトル制御部100と電流制御部46を連結するようにする。上述したようにモータ1の電気角速度ωe及びロータ7の回転角度θeが正しく検出できれば、ベクトル制御部100は正しい電流指令値Iavref,Ibvref,Icvrefを算出する。
【0048】
よって、切替えスイッチ44を通して電流制御部46には電流指令値Iavref,Ibvref,Icvrefが入力され、電流検出回路32−1,32−2,32−3より検出されたモータ電流Ia,Ib,Icのフィードバック電流とを比較してフィードバック制御される。電流制御部46の出力信号である電圧指令値Va,Vb,Vcに基きPWM制御部30はインバータ31のデュティー比を決定し、インバータ31はそのデュティー比に従ってモータ1を制御する。この制御はモータ回転速度が高速の時なのでホールセンサ42からの時間当たりの信号数が十分多く正しく検出できるので、ベクトル制御も正しく制御できている。
【0049】
次に、モータ回転速度が低速になり、例えば500rpmより低速になると、ホールセンサ48より得られる時間当たりのホールセンサ信号がベクトル制御20を正しく制御できるほど数多く得られなくなる。そこで、設定部43が示す500rpmよりホールセンサ48より得られる回転速度が少ないのでレベル検出部43は、電流制御部46と矩形波制御部45を連結するように切替えスイッチ44を切り替え、矩形波制御に切り替える。
【0050】
ここで、注目すべきは、矩形波制御部45は位置推定回路41の出力信号を使用しておらず、ホールセンサ48−1,48−2,48−3のホールセンサ信号が直接、矩形波制御部45に入力されている点である。よって、位置推定回路41の出力が不正確になっても、矩形波制御部45が算出する電流指令値Iasref,Ibsref,Icsrefは位置推定回路41の出力が不正確であることに影響されなく正しい電流指令値を算出できる。
【0051】
さらに、指摘しておくべき点として、矩形波制御はモータが高速回転の時はトルクリップルが小さくなるように制御するのは困難であるが、低速回転のときは、特開2002−369569号公報で開示されている制御を用いれば、トルクリップルを小さく制御できるので、モータ1の回転が500rpm以下のような低速のときはモータのトルク制御になんら問題はない。よって、モータ1は電流制御部46から後の制御は電流指令値Iasref,Ibsref,Icsrefに基づいて正しくトルク制御される。
【0052】
以上説明したように、本実施例を用いれば、モータが高速の時も、低速の時もトルクリップル制御を正しくでき、電動パワーステアリング装置のハンドル操舵はいかなるときも違和感なく操作できる効果が得られる。
【0053】
なお、設定回転速度Nは、ホールセンサの数と位置推定回路41の性能によって決定される。性能が良ければNは小さくなり、性能が悪ければNは大きくなる。ホールセンサの数を多くすれば正しく検出できる範囲は広くなるが、コストが高くなる。
【0054】
第6図は第1の実施形態の変形例である。
第4図の矩形波制御部45とベクトル制御部100の出力である電流指令値を各相の電流指令値Iasref,Ibsref,Icsref、Iavref,Ibvref,Icvrefとした。しかし、一般的なベクトル制御はd、q軸成分を用いた電流指令値Idref,Iqrefを用いるので、この変形例は第6図が示すように矩形波制御部45−2及びベクトル制御部100−2の出力をd、q成分で出力している。またモータ検出電流Ia,Ib,Icも3相/2相変換部47−1でId,Iqに変換してフィードバックしている。そして、電流指令値IdrefとIqrefとフィードバックされたモータ電流Id,Iqを入力とし、電流制御部46−2まではd、q軸による制御をして、最後にPWM制御部30の入力で2相/3相変換部47−2でd、q成分からa、b、c相成分に逆変換してインバータ31を制御しても同じ効果が得られる。
【0055】
第2の実施形態について、以下説明する。
上述した第1の実施形態では切替えスイッチ44の切替えを決めるモータの回転速度をNと一つに設定したが、切替え回転速度が一つの場合、回転速度N付近でベクトル制御と矩形波制御が頻繁に切替り、ハンドル操作に違和感を生じさせる可能性がある。そこで、このような好ましくない現象を避けるために切替えにヒステリシスを利用し、モータ回転速度が低速から高速へ変化する場合の切替え回転速度N1と高速から低速へ変化する切替え回転速度N2の2種類の設定回転速度を設ければ、上記のようなチャタリング現象は避けることができる。
【0056】
第7図を用いて、第2の実施形態を説明する。本実施形態では、回転速度N1を650rpmとし、回転速度N2を500rpmとして説明する。
【0057】
先ず、モータ1が高速回転、例えば2000rpmから低速回転、例えば400rpmへ回転速度を落としていく場合について説明する。この場合、ホールセンサ48−1、48−2,48−3から検出されたホール信号は位置推定回路41に入力され、ヒステリシスを持ったレベル検出部42−2において判定される際に、先ず回転速度が落ちてくる場合には、650rpmを表わす回転速度N1では判定されずに、設定部43−2が示す回転速度N2、つまり500rpmによって判定される。そして、モータ1の回転速度が500rpmより低速になるとレベル検出部42−2は切り返すスイッチ44を切替え、電流制御部46をベクトル制御部100から矩形波制御部45へ切り替える。モータ1の低速回転時は、矩形波制御部で制御しても、上述したようにモータのトルクは正しく制御できる。
【0058】
次に、低速回転から高速回転に向かう場合、例えば400rpmから2000rpmへ回転速度が上昇する場合は、レベル検出部42−2は先ほど用いた回転速度N2、つまり500rpmではなく、設定部43−1が示す回転速度N1である650rpm以上になるレベル検出部42−2は切替えスイッチ44を切り替え、電流制御部46が矩形波制御部45からベクトル制御部100へ入力を切り替えるようにする。650rpm以上であれば、位置推定回路41は充分正しいロータ7の回転角度θeとモータ1の電気角速度ωeを検出できるのでベクトル制御部100の電流指令値Iavref,Ibvref,Icvrefに基づき制御してもモータのトルク制御を正しく制御できる。よって、電動パワー−ステアリング装置は急激なハンドル操舵にも滑らかに追随できハンドル操作に違和感は感じない。また、このように制御の切替えにヒステリシス特性を有したレベル検出部を用いれば、モータの回転速度が500rpm付近で切替えスイッチ44が高速で交互に切り替わって矩形波制御とベクトル制御が頻繁に切り替わり、ハンドル操作に違和感が生じることを防止できる。
【0059】
なお、以上の説明では、モータの回転信号をレゾルバやエンコーダでは低速でも詳細に精度良く出力し、ホールセンサは回転信号を低速では粗くしか出力できないとして説明したが、レゾルバやエンコーダでも回転信号を低速では粗くしか出力できない場合は、低速で粗くしか検出できないレゾルバやエンコーダに対して本発明を適用できることは言うまでもない。
【0060】
第3の実施形態について以下説明する。
本実施形態では、第3図の3相ブラシレスDCモータに適用した場合を例として説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の種類のモータについても同様に本発明を適用することができる。
【0061】
第3図において、本発明の実施例に係る3相ブラシレスDCモータ1は、円筒形のハウジング2と、このハウジング2の軸心に沿って配設され、軸受3a、3bにより回転自在に支持された回転軸4と、この回転軸4に固定されたモータ駆動用の永久磁石5と、この永久磁石5を包囲するようにハウジング2の内周面に固定され、かつ3相の励磁コイル6a、6b及び6cが巻き付けられた固定子(以下、ステータという)6とを具備し、回転軸4及び永久磁石5によって回転子(以下、ロータという)7を構成している。なお、第3図において、ロータ7の回転軸4の一端近傍には、位相検出用のリング状永久磁石8が固定され、この永久磁石は、周方向に等間隔で交互にS極とN極に着磁されている。
【0062】
ハウジング2内の軸受3bが配設された側の端面には、ステ−9を介して、リング状の薄板からなる支持基板10が配設されている。この支持基板10には、永久磁石8に対向するように、レゾルバやエンコーダなどのロータの位置検出センサ11が固定されている。なお、ロータの位置検出センサ11は、第8図に示すように、実際には励磁コイル6a〜6cの駆動タイミングに対応して周方向に適宜離間して複数設けられる。ここで、励磁コイル6a〜6cは、ロータ7の外周面を電気角で120度ずつ離隔して取り囲むように配設され、各励磁コイル6a〜6cのコイル抵抗はすべて等しくなるようになっている。
【0063】
また、ロータの位置検出センサ11は、対向する永久磁石8の磁極に応じて位置検出信号を出力するようになっている。これらのロータ位置検出センサ11の出力は、永久磁石8の磁極によって変化することを利用して、ロータ7の回転位置を検知するようになっている。この回転位置に応じて、後述するベクトル制御部100が、3相励磁コイル6a〜6cに対して2相同時に通電しながら、励磁コイル6a〜6cを1相ずつ順次切り換える2相励磁方式によって、ロータ7を回転駆動させるようになっている。
【0064】
そして、モータ1の駆動制御は、モータ電流として矩形波電流(或いは台形波電流)を用いて制御する。ここで、矩形波電流で制御するのは、正弦波電流と比較すると、電流ピーク値が同じであれば、矩形波電流の方が実効値が大きくなるため、大きな出力値(パワー)を得ることができる。その結果、同性能のモータを製作する場合、モータ電流として矩形波電流を用いた方が、モータの小型化を図れるという長所がある。その反面、矩形波電流による制御は、正弦波電流による制御に比べて、トルクリップルを小さくするのが困難であるという短所がある。しかし、特開2004−201487号公報で開示されている制御方式を用いれば、トルクリップルを小さくできることが知られている。
【0065】
なお、矩形波電流とは、完全に矩形波の形をした電流波形だけではなく、第9図(B),(C)に示すような一部台形を崩したようなピークをもつ形の疑似矩形波電流を含む。矩形波電流も弱め界磁電流制御の影響により波形が変わり、第9図(B)の矩形波電流では、弱め界磁制御を実行しない、即ちd軸電流Id=0の場合の電流波形であり、第9図(C)の矩形波電流は弱め界磁電流制御を実行して、例えば、Id=10Aのような場合の電流波形である。そして、モータに矩形波電流或いは疑似矩形波電流を通電するとモータの逆起電圧として、第9図(A)のようなモータの逆起電圧波形が矩形波(台形波)或いは疑似矩形波が発生する。このような矩形波電流或いは疑似矩形波電流、或いは矩形波逆起電圧或いは疑似矩形波逆起電圧を有するモータも本発明の適用できるモータとする。
【0066】
モータ駆動制御装置は、第10図に示すように、ベクトル制御部100と、ベクトル制御部100からの電流指令値Iavref,Ibvref,Icvrefとモータ相電流Ia,Ib,Icとに基づいて各相電流の誤差を求める減算部20−1,20−2,20−3と、比例積分制御を行うPI制御部21とを備え、PWM制御部30のPWM制御によってインバータ31からモータ1に各相の電流指令値に基く電流が供給され、モータ1の回転駆動を制御するようになっている。
【0067】
なお、実施例では、前記モータの各相の電流指令値Iavref,Ibvref,Icvrefとモータの各相の電流Ia,Ib,Icとから各相電流誤差を求める減算部20−1,20−2,20−3とその各相電流誤差を入力とするPI制御部21から構成されている。また、インバータ31とモータ1との間に、モータ電流検出回路として電流検出器32−1、32−2、32−3が配され、該電流検出器32−1、32−2、32−3で検出したモータの各相電流Ia、Ib、Icを減算部20−1、20−2、20−3に供給するフィードバック制御が形成されている。
【0068】
そして、ベクトル制御部100は、各相逆起電圧ea,eb,ec算出部としての換算部101と、d軸電圧ed、q軸電圧eqの算出部としての3相/2相変換部102と、q軸電流指令値Iqrefを算出するq軸指令電流算出部103と、各相電流指令値Iavref,Ibvref,Icvrefの算出部としての2相/3相変換部104と、d軸電流指令値Idrefを算出するd軸指令電流算出部105と、トルク指令値Trefから該モータのベース角速度ωbを換算する換算部106とを備えている。このような構成の下に、ベクトル制御部100は、レゾルバなどのロータ位置検出センサ11によって検出されたロータ7の回転角度θeと、該回転角度θeを微分部24で算出した電気角速度ωeとからなるロータ位置検出信号と、図示しないトルクセンサで検出されたトルクとに基づいて決定されたトルク指令値Trefと入力とし、ベクトル制御を利用した各相の電流指令値Iavref,Ibvref,Icvrefを算出するようになっている。なお、ロータ7の位置検出センサ11と微分回路11とで構成される角速度検出回路の出力である電気角速度ωeは、機械角速度ωmとはモータの極対数Pを用いて表わされるωm=ωe/Pの関係にある。
【0069】
この構成を基に、モータ1の駆動制御は以下のように行われる。
先ず、ベクトル制御部100で、ロータの回転角度θeと電気角速度ωeとを受け、換算部101の換算表に基づいて、各相の逆起電圧ea、eb、ecが算出される。次に、逆起電圧ea、eb、ecは、d−q電圧算出部としての3相/2相変換部102で、上述した数3及び数4に基づいて、d、q成分の逆起電圧ed,eqに変換される。
【0070】
次に、本発明の重要なポイントである弱め界磁制御に関係するd軸指令電流算出部105で求められるIdrefについては、後で詳細に説明する。ここではd軸指令電流算出部105の中は説明せず、第10図に示すモータ駆動制御装置の全体の基本的な作用を先に説明する。
【0071】
d軸電流指令値Idrefがd軸指令電流算出部105で算出されると、q軸電流指令値Iqrefは、q軸指令電流算出部103によって、逆起電圧ed、eq、電気角速度ωe及びd軸電流指令値Idrefを入力として、数9で示すモータ出力方程式に基づいて算出される。即ち、モータ出力方程式は下記数9である。
(数9)
Tref×ωm=3/2(ed×Id+eq×Iq)
よって、数9に、Id=Idref,Iq=Iqrefを代入すると数10が導かれる。
(数10)
Iqref=2/3(Tref×ωm−ed×Idref)/eq
数10で表わされるようにq軸電流指令値Iqrefは、モータの出力は電力に相当するというモータの出力方程式から導びかれているため、即座に演算ができる。また、必要なトルクTrefを得るためのIdrefとバランスのとれた最適なIqrefが演算される。従って、モータの高速回転時にも、モータの端子電圧が飽和せず、トルクリップルを最小にする制御が可能となる。
【0072】
この電流指令値Idref、Iqrefは、各相電流指令値算出部としての2相/3相変換部104で、各相の電流指令値Iavref、Ibvref、Icvrefに変換される。即ち、数7のごとく表わされる。なお、行列式C2は数8に示すようにモータの回転角度θeによって決定される定数である。
【0073】
本発明では上述したように電流指令値Idref及びIqrefを入力として2相/3相変換部104で各相の電流指令値Iavref,Ibvref,Icvrefを算出する。つぎに、電流検出器32−1,32−2,32−3で検出されたモータの各相電流Ia,Ib,Icと電流指令値Iavref,Ibvref,Icvrefを減算部20−1,20−2,20−3で引き算を実施し、各相の誤差を算出する。次に、各相電流の誤差をPI制御部21で制御してインバータ31の指令値、即ちPWM制御部30のデュティーを表わす電圧指令値Va,Vb,Vcが算出され、それらの値に基づいてPWM制御部30がインバータ31をPWM制御し、モータ1は駆動され、所望のトルクが発生する。
【0074】
なお、本実施例で用いているモータ駆動制御装置の制御方式は、このベクトル制御部100において、ベクトル制御の優れた特性を利用してベクトル制御d、q成分の電流指令値を決定した後、この電流指令値を各相電流指令値に変換するとともに、フィードバック制御部でd、q制御ではなく、全て相制御で閉じるような構成にした。よって、電流指令値を算出する段階ではベクトル制御の理論を利用しているのでPVC制御と呼ばれる。
以上がモータ駆動制御装置の基本的な動作の説明である。
【0075】
以下、第3の実施形態の重要なポイントであるd軸電流指令値Idrefの算出の特徴について、第11図を用いて詳しく説明する。
先ず、従来の方式による電流指令値Idrefの求め方を表現すると、数11になる。
(数11)
Idref=−|Tref/Kt|sin(acos(ωb/ωm))
そして、電流指令値Idref=0の場合は弱め界磁制御は動作しておらず、Idref≠0つまりIdrefが値をもつと弱め界磁制御が実行される。
【0076】
この弱め界磁制御の開始停止の切替えは数11のacos(ωb/ωm)によって決定される。例えば、モータの回転速度が高速回転でない、つまり、機械角速度ωmがベース角速度ωbより低速時の場合は、ωm<ωbとなるのでacos(ωb/ωm)=0となり、よってd軸電流指令値Idref=0となる。しかし、高速回転時、つまり、機械角速度ωmがベース角速度ωbより高速になると、d軸電流指令値Idrefの値が負になり、弱め界磁制御を実行し始める。
【0077】
そして、数11を用いる場合は、モータ1の機械角速度ωmが、正しく検出され、ベース角速度ωbが正しく算出されていなければ弱め界磁制御の開始、停止の切替えが正しく実行されない。つまり、上述したロータの位置検出センサの検出誤差やモータ駆動制御装置の制御処理の途中で発生する計算誤差などの誤差などにより、弱め界磁制御が必要なのに、弱め界磁制御が実行されずトルクリップルが大きくなって、ハンドル操作に違和感が感じられたりする不具合が発生する。
【0078】
そこで、本発明では、機械角速度ωmやベース角速度ωbに多少誤差があっても、モータの端子電圧が飽和する前に、弱め界磁制御が確実に実行されるように、ベース角速度ωbの値を小さくする新たなベース角速度である角速度(α×ωb)という考えを導入した。ただし、αは0<α<1である。
【0079】
この作用を考慮して、数11を変更した本発明によるIdref算出の式は下記数12のように表わされる。
(数12)
Idref=−|Tref/Kt|sin(acos(α×ωb/ωm))
この数12で表わされる改善されたd軸電流指令値Idrefを算出するための制御ブロック図が第11図である。
【0080】
d軸電流Idrefは、ベース角速度ωb、電気角速度ωe、及びトルク指令値Trefを入力として、d軸指令電流算出部105で求められる。ここで、Ktはトルク係数である。先ず、ωbはモータのベース角速度で、トルク指令値Trefを入力として換算部106で求めている。次に、本発明のポイントである角速度(α×ωb)を掛け算部105gでベース角速度ωbを入力にしてα倍して角速度(α×ωb)として出力している。
【0081】
一方、モータの電気角速度ωeから機械角算出部105aによって、モータの機械角速度ωm(=ωe/P)を算出する。ただし、Pはモータの極対数である。次に角度Φをacos算出部105CでΦ=acos(α×ωb/ωm)として算出する。さらに、sin算出部105cでsinΦを求める。一方、トルク係数部105dで電流Iqb=Tref/Ktを求め、絶対値部105eで電流Iqbを入力し、絶対値|Iqb|を求め、さらに、その絶対値に掛算部105fで(−1)倍する。以上の演算を式で表現すると、数13として表わされる。つまり、改善されたd軸電流指令値Idrefは下記数13の形で、d軸指令電流算出部105の出力として算出される。
(数13)
Idref=―|Iqb|×sin(acos(α×ωb/ωm))
なお、数12と数13は実質的に同一の式である。
【0082】
ここで、数13のacos(α×ωb/ωm)の項に着目すると、角速度(α×ωb)が機械角速度ωmより大きい、つまりモータの回転が低速回転の場合はd軸電流指令値Idref=0なので弱め界磁制御は実行されない。ところが、機械角速度ωmが角速度(α×ωb)より大きい、つまりモータの回転が高速回転の場合はIdref≠0、つまりd軸電流指令値Idrefの値が負になり、弱め界磁制御が実行される。
【0083】
以上説明した本発明の改善されたd軸電流指令値Idref算出の制御による優れた効果を示すために、第12図に本発明である数13のd軸電流指令値Idrefによる弱め界磁制御の領域と従来の方式である数11のd軸電流指令値Idrefによる弱め界磁制御の領域とを示す。本発明の弱め界磁制御の切替えは境界線Bで切り替わる。一方、従来の制御方式の弱め界磁制御は境界線Aで切り替わる。第12図から明らかなように、ベース角速度ωbにαを乗ずる作用によって本発明の弱め界磁制御の開始が従来の方式ではまだ開始されていない領域でも弱め界磁制御が開始されている。
【0084】
この2つの境界線を比較すると、本発明の弱め界磁制御は理想の場合に比べ、早めに弱め界磁制御に切り替わっていることがわかる。よって、ロータの位置検出が多少誤差を含んでいても、又はモータ駆動制御装置の制御計算に多少誤差があっても弱め界磁制御が確実に実行される。
【0085】
ここで、多少の誤差と表現したが、この誤差の度合いにより上述したαの値が変更する。誤差が小さい場合は、αは限りなく1に近くなり、誤差が大きい場合は、αは0に近い値を取るようになる。例えばエンコーダやレゾルバの場合、α=0.95であれば、ホールセンサの場合は、α=0.9のようなことになる。αが0に近い値になるほど弱め界磁制御を含む領域が狭くなるので、なるべく検出誤差や計算誤差を小さくしてαが1に近くなることが好ましい。
【0086】
なお、上記実施例では角速度検出回路の構成部品である位置検出センサ11にレゾルバを用いた実施例について説明したがレゾルバより低価格であるホールセンサを用いても同じ効果が得られる。
【0087】
次に、第4の実施形態であるロータ7の角速度検出回路に安価なホールセンサを用いてモータ1のPVC制御を可能とするモータ駆動制御装置の実施例について説明する。第3の実施形態でロータ7の角速度検出回路に精度の良いレゾルバやエンコーダを用いた場合はロータ7の回転が低速でも電気角速度ωeやロータの回転角度θeを正しく検出できるので低回転速度でもモータをPVC制御も用いて正しく制御できる。しかし、角速度検出回路にホールセンサを用いるとロータ7の回転速度が低速になるとホールセンサの単位時間あたりのサンプリング数が少なくなるので、電気角速度ωeやロータの回転角度θeを正しく検出できなくなり、PVC制御を正しく実行できなくなる。
【0088】
そこで、ロータ7の回転が低速になった時は、PVC制御ではなく、電気角速度ωeやロータの回転角度θeを必要としない矩形波制御に切り替えて制御すれば、ホールセンサを用いても、ロータの低回転速度領域以外では、第3の実施形態の効果を享受しつつ、PVC制御を可能し、低回転速度領域では矩形波制御とするモータ駆動制御装置を提供できる。
【0089】
以下、第13図を用いて、第4の実施形態について説明する。
第4の実施形態では角速度検出回路がホールセンサ48−1,48−2,48−3及び位置推定回路41とから構成されている。位置推定回路41の出力として、モータの回転速度としての電気角速度ωeやモータのロータ位置としての回転角度θeが出力される。なお、位置推定回路41は従来種々色々提案されており、その回路の詳細については、例えば、特開2002−272163などに記載されている。
【0090】
次に、ロータの回転が低速になり、位置推定回路41の出力である電気角速度ωeや回転角度θeの精度が悪くなりベクトル制御部100が正しく作用しなくなった時に、替わりの制御部として用いる矩形波制御部45がトルク指令値Trefとホールセンサ48−1,48−2,48−3からのホールセンサ信号を入力として配されている。矩形波制御部45は従来良く知られており、例えば特願2001−168151にも記載されている。そして、矩形波制御の特徴として、第13図に示すようにホールセンサ信号を直接用い、ロータの位置推定を必要としないので、ホールセンサ48−1,48−2,48−3及び位置推定回路41の検出誤差が大きくなっても矩形波制御に問題はない。
【0091】
最後に、PVC制御と矩形波制御を切り替えるための切替えスイッチ44と切替えの角速度を判定するヒステリシス特性付きのレベル検出部42及びヒステリシスの角速度を設定する設定部43−1,43−2が配されている。
【0092】
なお、レベル検出部42にヒステリシス特性を持たせた理由は、切替え角速度が一つの場合、その角速度付近でベクトル制御と矩形波制御が頻繁に切替り、ハンドル操作に違和感を生じさせる可能性がある。そこで、このような好ましくない現象を避けるために切替えにヒステリシスを利用し、モータ回転速度が低速から高速へ変化する場合の切替え角速度N1と高速から低速へ変化する切替え角速度N2の2種類の設定角速度を設ければ、上記のようなチャタリング現象は避けることができる。
【0093】
一例として、設定部43−1の設定角速度N1=500rpm、及び設定部43−2の設定角速度N2=650rpmと設定する。なお、位置推定回路41の出力にはリップルが含まれているので、リップルを除去するためのローパスフィルタ(以下、LPFと記す。)49が位置推定回路41とレベル検出部42との間に配されている。そして、レベル検出部42の判断によって切り替わる切替えスイッチ44が電流制御部46への入力としてベクトル制御部100と矩形波制御部45を選択する位置に配されている。
【0094】
このような構成におけるベクトル制御部100と矩形波制御部45の切替え制御の動作について説明する。
先ず、モータ1が高速回転、例えば2000rpmから400rpmへ回転速度を落としていく場合について説明する。この場合、ホールセンサ48−1、48−2,48−3から検出されたホール信号は位置推定回路41に入力され、ヒステリシスを持ったレベル検出部42において判定される際に、先ず、回転速度が落ちてくる場合には、650rpmを表わす回転速度N1では判定されずに、設定部43−2が示す回転速度N2、つまり500rpmより低速になるとレベル検出部42−2は切り返えスイッチ44を切替え、電流制御部46をベクトル制御部100から矩形波制御部45へ切り替える。モータ1の低速回転時は、矩形波制御部45で制御しても、上述したようにモータのトルクは正しく制御できる。
【0095】
次に、低速回転から高速回転に向かう場合、例えば400rpmから2000rpmへ回転速度が上昇する場合は、レベル検出部42は先ほど用いた回転速度N2、つまり500rpmではなく、設定部43−1が示す回転速度N1である650rpm以上になるレベル検出部42−2は切替えスイッチ44を切り替え、電流制御部46が矩形波制御部45からベクトル制御部100へ入力を切り替えるようにする。650rpm以上であれば、位置推定回路41は充分正しい回転角度θeと電気角速度ωeを検出できるのでベクトル制御部100の電流指令値Iavref,Ibvref,Icvrefに基づき制御してもモータのトルク制御を正しく制御できる。
【0096】
以上説明した第4の実施形態と第3の実施形態とを組み合わせた場合のモータの回転速度及び出力トルクに対するモータの制御方式の関係を、第14図に示して説明する。第14図において、第4の発明の効果により、モータが高速回転から低速回転になると境界C2(N2=500rpm)でPVC制御から矩形波制御に切り替わり、再び低速回転から高速回転になると境界線C1(N1=650rpm)で矩形波制御からPVC制御に切り替わる。さらに高速回転になると第3の実施形態の効果で、境界線BでPVC制御(弱め界磁制御無し)からPVC制御(弱め界磁制御有り)へと切り替わり高速回転でもトルクリップルの少ないPVC制御を実現できる。
【0097】
つまり、第3の実施形態と第4の実施形態とを組み合わせることにより、ブラシレスDCモータ(矩形波モータ)とホールセンサの組み合わせであっても、モータの低速回転時には矩形波制御を、中速回転時にはPVC制御を、高速回転時にはPVC制御(弱め界磁制御)を選択するハイブリッド構成とすることにより、これまで矩形波モータでは不可能であった高速回転時における低トルクリップルの制御が可能になった。
【0098】
なお、上記の実施例で切替えスイッチの切替えに設定角速度を2つにしてヒステリシス特性を用いたが、切替えのための設定角速度を1つにしても、ベクトル制御と矩形波制御の頻繁な切替えを除けば、同様な効果を得られることは言うまでもない。
なお、第1、第2、第3、第4の実施形態では逆起電圧として相電圧ea,eb,ecを用いたが、線間電圧eab,ebc,ecaなどに換算して制御しても同じ効果を得られる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明によれば、モータの位置検出センサとして、ホールセンサのような安価だがモータの低速回転時に正確で詳細な回転角度信号を出力できないモータ位置検出センサを用いてもブラシレスDCモータをベクトル制御できるので、電動パワーステアリング装置に適用すれば、安価でトルクリップルの少なくフィーリングの良いハンドル操作のできる電動パワーステアリング装置を適用できる。
【0100】
また、本発明によれば、モータ位置検出センサなどの検出誤差が存在しても確実に弱め界磁制御ができ、トルクリップルの少ないモータ出力を期待できるので、それを電動パワーステアリング装置に適用すれば、トルクリップルの少ないフィーリングの良いハンドル操作を期待できる電動パワーステアリング装置を提供できる。
【符号の説明】
【0101】
1 ブラシレスDCモータ
41 位置推定回路
42 レベル検出部
43 設定部
42−2 ヒステリシスレベル検出回路
44 切替えスイッチ
45 矩形波制御部
100 ベクトル制御部
Claims (7)
- 3以上の相を有するモータに取り付けられてロータ位置を検出する位置検出素子と、
前記位置検出素子からの位置信号に基づいて前記モータのモータ回転速度及びロータ位置を算出するモータ位置推定回路と、
前記モータ位置推定回路で算出された前記モータ回転速度及びロータ位置と、トルク指令値とに基づいて、前記モータを電流制御部を介して擬似ベクトル制御するベクトル制御部と、
前記トルク指令値及び前記位置信号に基づいて、前記モータを前記電流制御部を介して矩形波制御する矩形波制御部と、
前記ベクトル制御部及び前記矩形波制御部を切り替える切替えスイッチと、
前記切替えスイッチの切替えの判定基準となる設定回転速度N1及びN2(N1>N2)を有するレベル検出部とを具備し、
前記ベクトル制御部は、前記モータ回転速度、前記ロータ位置及び前記トルク指令値に基づいて決定したd軸電流指令値及びq軸電流指令値を、前記モータの相に対応した相数の電流指令値に変換して前記切替えスイッチに入力するようになっており、
前記レベル検出部は、前記モータの回転速度が上昇過程において前記設定回転速度N1を越えて高速の時は、前記矩形波制御部から前記ベクトル制御部で制御するように前記切替えスイッチを切り替え、前記モータの回転速度が下降過程において前記設定回転速度N2を越えて低速の時は、前記ベクトル制御部から前記矩形波制御部で制御するように前記切替えスイッチを切り替えるように制御することを特徴とするモータ駆動制御装置。 - 前記モータがブラシレスDCモータであり、前記位置検出素子がホールセンサである請求項1に記載のモータ駆動制御装置。
- 請求項1又は2に記載のモータ駆動制御装置が用いられる電動パワーステアリング装置。
- 3以上の相を有するモータに取り付けられてロータ位置を検出する位置検出素子と、
前記位置検出素子からの位置信号に基づいて前記モータのモータ回転速度ωe及びロータ位置θeを算出するモータ位置推定回路と、
前記モータ位置推定回路で算出された前記モータ回転速度ωe及びロータ位置θeと、トルク指令値Trefとに基づいて、前記モータを電流制御部を介して擬似ベクトル制御するベクトル制御部と、
前記トルク指令値Tref及び前記位置信号に基づいて、前記モータを前記電流制御部を介して矩形波制御する矩形波制御部と、
前記ベクトル制御部及び前記矩形波制御部を切り替える切替えスイッチと、
設定回転速度に基づいて前記切替えスイッチをヒステリシス特性で切替えるレベル検出部とを具備したモータ駆動制御装置において、
前記ベクトル制御部が、
前記トルク指令値Trefを前記モータの機械角速度ωmに換算する第1換算部と、
前記機械角速度ωm及び前記モータ回転速度ωeに基づいてd軸電流指令値Idrefを算出するd軸指令電流算出部と、
前記モータ回転速度ωe及び前記ロータ位置θeに基づいて各相の逆起電圧を算出する第2換算部と、
前記各相の逆起電圧をd軸及びq軸の逆起電圧に変換する各相/2相変換部と、
前記d軸及びq軸の逆起電圧、前記モータ回転速度ωe、前記ロータ位置θe及び前記d軸電流指令値Idrefに基づいてq軸電流指令値Iqrefを算出するq軸指令電流算出部と、
前記d軸電流指令値Idref及び前記q軸電流指令値Iqrefを入力して前記モータの相に対応した相数の電流指令値に変換する2相/各相変換部と、
で構成されていることを特徴とするモータ駆動制御装置。 - 前記d軸指令電流算出部が、
前記トルク指令値Trefに基づいて換算されたベース角速度ωbに定数α(0<α<1)を乗じる第1掛算部と、
前記モータ回転速度ωeに基づいて前記モータの機械角速度ωmを算出する機械角算出部と、
前記第1掛算部の出力α・ωb及び前記機械角速度ωmより、角度Φ=acos(α・ωb/ωm)を算出するacos算出部と、
前記角度ΦからsinΦを求めるsin算出部と、
前記トルク指令値Trefから求められたトルク係数の絶対値に前記sinΦを乗算し、(−1)倍して前記d軸電流指令値Idrefを出力する第2掛算部と、
で成る請求項4に記載のモータ駆動制御装置。 - 前記位置検出素子がホールセンサであり、前記モータがブラシレスDCモータであり、前記モータの電流波形又は逆起電圧波形が矩形波若しくは疑似矩形波である請求項4又は5に記載のモータ駆動制御装置。
- 請求項4乃至6のいずれかに記載のモータ駆動制御装置が用いられた電動パワーステアリング装置。
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003015740 | 2003-01-24 | ||
JP2003015740 | 2003-01-24 | ||
PCT/JP2003/015900 WO2004054086A1 (ja) | 2002-12-12 | 2003-12-11 | モータ駆動制御装置および電動パワーステアリング装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPWO2004054086A1 JPWO2004054086A1 (ja) | 2006-04-13 |
JP4615440B2 true JP4615440B2 (ja) | 2011-01-19 |
Family
ID=43596836
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2005502372A Expired - Fee Related JP4615440B2 (ja) | 2003-01-24 | 2003-12-11 | モータ駆動制御装置及び電動パワーステアリング装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4615440B2 (ja) |
Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2000232797A (ja) * | 1999-02-10 | 2000-08-22 | Toshiba Corp | ブラシレスモータの駆動装置 |
JP2001018822A (ja) * | 1999-07-08 | 2001-01-23 | Toyota Motor Corp | 車両の電動パワーステアリング装置 |
JP2001186799A (ja) * | 1999-12-24 | 2001-07-06 | Honda Motor Co Ltd | 交流モータの制御装置 |
-
2003
- 2003-12-11 JP JP2005502372A patent/JP4615440B2/ja not_active Expired - Fee Related
Patent Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2000232797A (ja) * | 1999-02-10 | 2000-08-22 | Toshiba Corp | ブラシレスモータの駆動装置 |
JP2001018822A (ja) * | 1999-07-08 | 2001-01-23 | Toyota Motor Corp | 車両の電動パワーステアリング装置 |
JP2001186799A (ja) * | 1999-12-24 | 2001-07-06 | Honda Motor Co Ltd | 交流モータの制御装置 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPWO2004054086A1 (ja) | 2006-04-13 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5130716B2 (ja) | モータ制御装置および電気式動力舵取装置 | |
US7463006B2 (en) | Motor and drive control device therefor | |
EP1583217B1 (en) | Motor drive-controlling device and electric power-steering device | |
JP3661642B2 (ja) | モータの制御装置及びその制御方法 | |
JPWO2005035333A1 (ja) | 電動パワーステアリング装置 | |
JP2004328814A (ja) | 電動パワーステアリング装置 | |
JP2002359996A (ja) | 交流電動機の駆動制御装置 | |
JP2004312834A (ja) | モータ駆動制御装置および電動パワーステアリング装置 | |
JP5330652B2 (ja) | 永久磁石モータ制御装置 | |
CN100369375C (zh) | 电机及其驱动控制装置 | |
WO2006090774A1 (ja) | Ipmモータシステムとその制御方法 | |
JP3804686B2 (ja) | モータ駆動制御装置及び電動パワーステアリング装置 | |
JP5136839B2 (ja) | モータ制御装置 | |
JP5397664B2 (ja) | モータ制御装置 | |
JP4400043B2 (ja) | 電動パワーステアリング装置 | |
JP3692929B2 (ja) | モータ制御装置 | |
JP4615440B2 (ja) | モータ駆動制御装置及び電動パワーステアリング装置 | |
WO2021054033A1 (ja) | モータ制御装置およびモータ制御方法 | |
JP5141955B2 (ja) | モータ制御装置 | |
JP4119183B2 (ja) | Dcブラシレスモータのロータ角度検出装置 | |
JP4455960B2 (ja) | Dcブラシレスモータの制御装置 | |
JP2006217795A (ja) | モータ及びその駆動制御装置 | |
JP2005059777A (ja) | 電動パワーステアリング装置 | |
JP2002191198A (ja) | モータ駆動装置の直流電圧検出値補正方法、モータ駆動制御装置 | |
JP5459564B2 (ja) | モータ制御装置 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20060727 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20091027 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20091224 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20101005 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20101020 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 4615440 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131029 Year of fee payment: 3 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |