JP4399980B2 - カーテンコータのエアーカット装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は製紙工場において製造される紙を原紙としてその表面に塗工用カラーを塗布するカーテンコータのエアーカット装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
製紙工場で製造された紙はそのままの形で直ちに使用されることはなく、それを原紙として更に加工を施すことにより所望の目的に適合する製品としての加工紙とする場合が多い。加工紙には種々のものがあるが、その1つに、塗被加工紙がある。塗被加工紙は、紙の表面に塗工用カラー(塗工液)を塗布させて製造するもので、塗被加工紙を製造する装置の1つにカーテンコータがある。
【0003】
カーテンコータは、図2(イ)(ロ)に一例の概略を示す如く、コータロール1に巻回された原紙2を下流側へやや上向き角度で走行させてガイドロール7に沿わせるようにして、該コータロール1を通過した原紙2の直上方位置に、塗工用カラー4を一様なカーテン4aとして流下させるようにするカーテンコータヘッド(給液ヘッド)3を設置し、該カーテンコータヘッド3から紙幅より広い範囲でカーテン4aとして流下される塗工用カラー4を、走行する原紙2の表面に直接塗布させるようにしてある。
【0004】
上記カーテンコータでは、塗工用カラー4のカーテン4aは薄い膜状であるため、僅かな風圧でも揺れてしまい、カーテン4aが揺れると、原紙2への塗工面が悪くなってしまうという問題がある。特に、カーテン4aに作用する風は、原紙2が走行するときに同伴されるエアーによるものであり、原紙2の走行速度が、600m/minを越えるような高速になって来ると、原紙2に同伴されるエアーの流速も速くなるため、塗工用カラー4のカーテン4aが揺らされてしまい塗工ができない等の悪影響を及ぼす問題がある。
【0005】
そのため、従来では、上記原紙2に同伴されるエアーが塗工用カラー4のカーテン4aに作用するのを防止するために、上記カーテン4aの上流側位置の原紙2の上方に、エアーカット用ブレード6を原紙2の走行方向に向けて下向きとなるように傾斜させて位置させると共に、先端(下端)を原紙2の表面に接触させて配置し、原紙2の走行により同伴される原紙2表面層のエアー5を、エアーカット用ブレード6により原紙2の表面から掻き落とすようにして遮断し、同伴エアー5によりカーテン4aが揺れることを防止するようにしていた。
【0006】
図中、8は塗工時に原紙2の幅端から流下した塗工用カラー4を回収するためのカラーパンである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来のエアーカット用ブレード6を用いたエアーカット方式では、原紙2の表面にブレード6が接触しているため、走行する原紙2とブレード6との摩擦により紙粉が発生し、この紙粉がブレード6の部分に堆積した後、該堆積した紙粉が時々原紙2上に落ちるため、製品に欠陥を生じるという問題があると共に、ブレード6が摩耗するため、定期的な交換が必要となる、という問題がある。又、上記原紙2の表面にブレード6を接触させてエアーカットする方式の場合、一度塗工した面に上塗りする場合の如き多重塗工の際、ブレード6により塗工面に傷をつけるおそれがあり、多段に連続して塗工する場合は、紙が乾燥していないとブレード6を当てられないため、多段塗工はできない、という問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、紙粉を発生させることがなく、非接触でエアーカットできて、塗工面への多重塗工や連続した多段塗工が可能なカーテンコータのエアーカット装置を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、コータロールに巻回されて走行する原紙の表面に、カーテンコータヘッドから塗工用カラーをカーテン状に流下させて直接塗布するようにしてあるカーテンコータの上記塗工用カラーが流下して原紙表面に塗布される位置の上流側位置に、原紙に同伴して塗工用カラーの流下位置近傍に来るエアーを遮断するよう上流側へ向けて原紙表面に対し所要角度に流路を形成したエアーカット用ノズルを下流側端部に備えたエアーチャンバーを、その内側面を上記コータロールに沿うよう円弧面として該コータロールの全長に亘るように配設すると共に、該エアーチャンバー内側の円弧面と上記コータロールに巻回されて走行する原紙表面との隙間を、上記原紙が走行中にうねりを生じてもエアーチャンバー内側の円弧面が原紙表面に接触することがないように保持するような隙間とし、且つ上記エアーカット用ノズルの上記流路の下端に形成される吹出口の位置を、上記原紙表面に接近させて、該吹出口と原紙表面との隙間を上記エアーチャンバー内側の円弧面と原紙表面との隙間よりも小さくし、該吹出口から上流側に向けて吹出されるエアーが上記エアーチャンバー内側の円弧面と原紙表面との隙間に吹き込まれるようにした構成とする。
【0010】
エアーカット用ノズルの吹出口から原紙表面にエアーが吹き出されると、原紙に同伴したエアーの層がやぶられて、非接触状態でエアーカット効果が得られることになる。これにより、紙粉の発生はなく、ブレードは省略できるほか、多重塗工、連続した多段塗工が可能となる。又、エアーカット用ノズルの吹出口と原紙表面との隙間がエアーチャンバー内側の円弧面と原紙表面との隙間より小さくしてあるので、より確実にエアーカット効果が得られる。
【0011】
又、エアーカット用ノズルの下流側にガイド板を設け、該ガイド板の下面を原紙表面に接近させて、該ガイド板の下面と原紙表面との隙間を、エアーチャンバー内側の円弧面と原紙表面との隙間より小さくし、上記エアーカット用ノズルの流路下端に形成される吹出口から上流側へ向けてエアーが吹出されることに伴うエゼクター効果により上記ガイド板下面と原紙表面との間を静圧域とするようにしたり、下流側端部にエアーカット用ノズルを備えているエアーチャンバーより上流側の位置に、上記エアーカット用ノズルの吹出口から吹出されて該エアーチャンバー内側の円弧面と原紙表面との隙間を上流側へ流されるエアーを回収するためのサクションボックスを、原紙表面と所要間隔を保持するように設置した構成とすることにより、エアーカット用ノズルと塗工用カラーのカーテンとの間で静圧にできて、エアーカット用ノズルから吹出されるエアーとは別のエアーの乱れをなくすことができ、又、エアーチャンバーの上流側でエアーを回収できるので、エアーカット用ノズルから吹出したエアーがエアーチャンバーの周囲に滞留することを防止できて、カーテンに影響を及ぼすことを未然に防止できることになる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0013】
図1(イ)(ロ)は本発明の実施の一形態を示すもので、図2(イ)(ロ)に示した従来のエアーカット方式を採用したカーテンコータと同様に、コータロール1に巻回されガイドロール7にガイドされて走行する原紙2の表面に、カーテンコータヘッド3から塗工用カラー4をカーテン4aとして流下させて直接塗布させるようにしてあるカーテンコータにおいて、図2(イ)に示すエアーカット用ブレード6を原紙2の表面に接触させて設けるようにした構成に代えて、内側をコータロール1の曲率に合わせて円弧面とし且つ全長をコータロール1のほぼ全長に達する長さとしたエアーチャンバー10を用い、該エアーチャンバー10を図示しないエアー供給源に接続して、コータロール1に巻回された原紙2が走行中にうねりを生じても内側の円弧面が原紙2の表面に接触することがないような隙間(たとえば、10mm程度)11を保持してコータロール1の上方に配設し、更に、該エアーチャンバー10の下流側となる一端部に、エアーカット用ノズル12とガイド板16をエアーチャンバー10の全長にわたり設ける。
【0014】
上記エアーカット用ノズル12は、エアーチャンバー10の下流側端部に、下流側へ向けて斜め下向きに傾斜させて形成されたスリット状の流路13と、該流路13の下端より上流側へ向けて斜め下向きに傾斜させて下端を吹出口15とするように形成されたスリット状の流路14とからなる構成とすると共に、吹出口15の位置を、原紙2の表面に接近させて、該吹出口15と原紙2表面との隙間δを小さくするようにし、又、流路14は原紙2の表面に対し或る角度をもたせて、エアーチャンバー10と原紙2との隙間11にカウンターフローとしてエアー18が吹き込まれるようにする。なお、流路14と原紙2表面とのなす角度としては、原紙2に同伴するエアー5をカットすることができるような吹出し角度とする必要上、或る一定値以上の角度が必要であり、たとえば、3〜30度位とする。
【0015】
又、上記ガイド板16は、上記エアーカット用ノズル12の下流側にあって整流板として機能させるようにするもので、下流側の端部を、カーテンコータヘッド3から流下する塗工用カラー4のカーテン4aの近傍位置(カーテン4aから20〜50mm以下の位置)まで延ばし、且つガイド板16の下面と原紙2の表面との隙間を小さくして、エアーカット用ノズル12から上流側へ向けてエアー18が吹出されることに伴い生じるエゼクター効果によりガイド板16と原紙2との間を静圧域とするようにしてある。
【0016】
更に、コータロール1に巻回された原紙2に沿うエアーチャンバー10の上流側位置には、サクションボックス17を、原紙2の表面とは所要の間隔を保持するように設置し、エアーチャンバー10の内側円弧面と原紙2の表面との間を上流側へ流されたエアー18や原紙2に同伴するエアー5の一部を吸引して除去するようにする。
【0017】
コータロール1を駆動して原紙2を高速で走行させながら該原紙2の表面にカーテンコータヘッド3から塗工用カラー4をカーテン4a状にして流下させることにより、塗工用カラー4は原紙2の表面に直接塗布されて塗工作業が行われるが、かかる塗工作業中に、走行する原紙2に引かれて運ばれて来る原紙表面層のエアー5がエアーチャンバー10と原紙2との間を通ってカーテン4aに達するのを遮断するため、エアーチャンバー10からエアーカット用ノズル12に導いたエアー18を、吹出口15より原紙2の表面に斜め上方より上流側へ向けて吹出させるようにする。
【0018】
この際、上記エアーチャンバー10からエアーカット用ノズル12を経て吹出口15より原紙2の表面に沿うよう吹き出されるエアー18の流速を、原紙2の走行に同伴されるエアー5の流速より大とするようにし、具体的には、原紙2の速度の20〜50%増となるようにすることにより、原紙2に同伴したエアー5がエアーチャンバー10と原紙2との間を通りエアーカット用ノズル12の位置に来たときに該エアーカット用ノズル12の吹出口15から上流側へ向けて吹出されるエアー18によって押し戻されるようになり、エアーチャンバー10と原紙2との間を上流側へ逆流させられることになる。これにより、エアーカット用ノズル12の吹出口15位置で原紙表面層のエアー5はカットされると同時に、吹出口15から吹出されるエアー18によって該吹出口15の下流側に位置するガイド板16と原紙2との間では、エゼクター効果により静圧となり、同伴エアー5とは別のエアーの乱れはなく風速は零となるため、塗工用カラー4のカーテン4aに揺れが生じることをなくすことができる。
【0019】
一方、エアーカット用ノズル12より吹出されたエアー18と該エアー18により上流側へ押し戻されるエアー5は、エアーチャンバー10とコータロール1に巻回される原紙2との隙間11を上流側へ流れた後、サクションボックス17に吸引されて回収される。これによりエアーカット用ノズル12から吹出されてエアーチャンバー10の上流側へ達したエアー18が、エアーチャンバー10の周囲に滞留してカーテン4aに影響を与えるようなおそれを未然に防止することができる。
【0020】
【発明の効果】
以上述べた如く、本発明のカーテンコータのエアーカット装置によれば、コータロールに巻回されて走行する原紙の表面に、カーテンコータヘッドから塗工用カラーをカーテン状に流下させて直接塗布するようにしてあるカーテンコータの上記塗工用カラーが流下して原紙表面に塗布される位置の上流側位置に、原紙に同伴して塗工用カラーの流下位置近傍に来るエアーを遮断するよう上流側へ向けて原紙表面に対し所要角度に流路を形成したエアーカット用ノズルを下流側端部に備えたエアーチャンバーを、その内側面を上記コータロールに沿うよう円弧面として該コータロールの全長に亘るように配設すると共に、該エアーチャンバー内側の円弧面と上記コータロールに巻回されて走行する原紙表面との隙間を、上記原紙が走行中にうねりを生じてもエアーチャンバー内側の円弧面が原紙表面に接触することがないように保持するような隙間とし、且つ上記エアーカット用ノズルの上記流路の下端に形成される吹出口の位置を、上記原紙表面に接近させて、該吹出口と原紙表面との隙間を上記エアーチャンバー内側の円弧面と原紙表面との隙間よりも小さくし、該吹出口から上流側に向けて吹出されるエアーが上記エアーチャンバー内側の円弧面と原紙表面との隙間に吹き込まれるようにした構成としてあるので、原紙の表面に非接触でエアーカット効果が得られて、塗工面への多重塗工又は連続した多段塗工が可能となること、従来方式の如きブレード等の消耗品を不要にすることができること、エアーカット時に紙粉を発生させることもなくすことができること、等の優れた効果を奏し得られると共に、エアーカット用ノズルの吹出口と原紙表面との隙間をエアーチャンバー内側の円弧面と原紙表面との隙間より小さくしてあるため、確実に同伴エアーを上流側へ流すことができ、又、エアーチャンバーの内側円弧面と原紙表面との隙間は上記エアーカット用ノズルの吹出口と原紙表面との隙間よりやや広くしてあるため、原紙にうねりがあってもエアーチャンバーと接触することがなく、しかもエアーを上流側へ流すことができる、という優れた効果を奏し得られ、更に、エアーカット用ノズルの下流側にガイド板を設け、該ガイド板の下面を原紙表面に接近させて、該ガイド板の下面と原紙表面との隙間を、エアーチャンバー内側の円弧面と原紙表面との隙間より小さくし、上記エアーカット用ノズルの流路下端に形成される吹出口から上流側へ向けてエアーが吹出されることに伴うエゼクター効果により上記ガイド板下面と原紙表面との間を静圧域とするようにして、この領域の風圧を零にしたり、下流側端部にエアーカット用ノズルを備えているエアーチャンバーより上流側の位置に、上記エアーカット用ノズルの吹出口から吹出されて該エアーチャンバー内側の円弧面と原紙表面との隙間を上流側へ流されるエアーを回収するためのサクションボックスを、原紙表面と所要間隔を保持するように設置して、吹出したエアーを回収するようにすることにより、更に安定したエアーカットの状態を実現することができる、という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカーテンコータのエアーカット装置の実施の一形態の概略を示すもので、(イ)は側面図、(ロ)はエアーカット用ノズル部の拡大図である。
【図2】従来のカーテンコータの一例の概略を示すもので、(イ)は側面図、(ロ)はA−A矢視図である。
【符号の説明】
1 コータロール
2 原紙
3 カーテンコータヘッド
4 塗工用カラー
4a カーテン
5 同伴エアー
10 エアーチャンバー
11 隙間
12 エアーカット用ノズル
15 吹出口
16 ガイド板
17 サクションボックス
18 エアー
Claims (3)
- コータロールに巻回されて走行する原紙の表面に、カーテンコータヘッドから塗工用カラーをカーテン状に流下させて直接塗布するようにしてあるカーテンコータの上記塗工用カラーが流下して原紙表面に塗布される位置の上流側位置に、原紙に同伴して塗工用カラーの流下位置近傍に来るエアーを遮断するよう上流側へ向けて原紙表面に対し所要角度に流路を形成したエアーカット用ノズルを下流側端部に備えたエアーチャンバーを、その内側面を上記コータロールに沿うよう円弧面として該コータロールの全長に亘るように配設すると共に、該エアーチャンバー内側の円弧面と上記コータロールに巻回されて走行する原紙表面との隙間を、上記原紙が走行中にうねりを生じてもエアーチャンバー内側の円弧面が原紙表面に接触することがないように保持するような隙間とし、且つ上記エアーカット用ノズルの上記流路の下端に形成される吹出口の位置を、上記原紙表面に接近させて、該吹出口と原紙表面との隙間を上記エアーチャンバー内側の円弧面と原紙表面との隙間よりも小さくし、該吹出口から上流側に向けて吹出されるエアーが上記エアーチャンバー内側の円弧面と原紙表面との隙間に吹き込まれるようにしたことを特徴とするカーテンコータのエアーカット装置。
- エアーカット用ノズルの下流側にガイド板を設け、該ガイド板の下面を原紙表面に接近させて、該ガイド板の下面と原紙表面との隙間を、エアーチャンバー内側の円弧面と原紙表面との隙間より小さくし、上記エアーカット用ノズルの流路下端に形成される吹出口から上流側へ向けてエアーが吹出されることに伴うエゼクター効果により上記ガイド板下面と原紙表面との間を静圧域とするようにした請求項1記載のカーテンコータのエアーカット装置。
- 下流側端部にエアーカット用ノズルを備えているエアーチャンバーより上流側の位置に、上記エアーカット用ノズルの吹出口から吹出されて該エアーチャンバー内側の円弧面と原紙表面との隙間を上流側へ流されるエアーを回収するためのサクションボックスを、原紙表面と所要間隔を保持するように設置した請求項1又は2記載のカーテンコータのエアーカット装置。
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