JP4399936B2 - 頭部保護エアバッグ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車内側の開口における上縁側の周縁に折り畳んで収納したエアバッグと、収納したエアバッグを突出可能に覆うエアバッグカバーと、を備えて構成される頭部保護エアバッグ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の頭部保護エアバッグ装置では、特開平11−105659号公報に記載されているものが知られている。
【0003】
上記公報記載のエアバッグ装置では、エアバッグが、車内側の開口における上縁側周縁のフロントピラー部からルーフサイドレール部にかけて、折り畳まれて収納されていた。
【0004】
また、エアバッグを覆うエアバッグカバーは、フロントピラー部からルーフサイドレール部にかけて一体的に成形された合成樹脂製として、折り畳まれたエアバッグを覆っていた。このエアバッグカバーの下縁側には、エアバッグの下方への突出時に車内側へ開き可能なドア部が、配設されていた。
【0005】
そして、このエアバッグカバーでは、フロントピラー部からルーフサイドレール部にかけて配置されるように、く字形状に屈曲して形成されており、その下縁側、すなわち、く字形状の内側に配置されるドア部は、車内側に開く際に、フロントピラー部側の前側ドア部とルーフサイドレール部側の後側ドア部とが干渉して、それらの前側・後側ドア部の開き動作が阻害されてしまう。
【0006】
そのため、上記公報のエアバッグカバーでは、前側ドア部と後側ドア部とが、エアバッグの下方への突出時に円滑に開くように、前側ドア部と後側ドア部との間に、下縁側からエアバッグカバーの上下方向の中間部位まで、スリットを形成可能な破断予定部を、設けていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような前側ドア部と後側ドア部とを分割するようなスリットを設ける場合には、スリット形成時の破断面に、下方へ突出するエアバッグが引っ掛かって、エアバッグの展開が遅れてしまう虞れが生ずる。
【0008】
特に、エアバッグが、膨張用ガスの流入時に開口を覆い可能に膨張するエアバッグ本体と、エアバッグ本体の前下縁側とフロントピラー部とを連結して、膨張時のエアバッグ本体の下縁側に前後方向の張力を生じさせるベルト等の連結部材と、を備えて構成される場合には、連結部材が、フロントピラー部からルーフサイドレール部にかけて収納されることとなる。
【0009】
そして、張力発生用のベルト等の連結部材は、それ自体が膨張しない帯状に形成されているため、前側ドア部と後側ドア部とにおけるそれらのスリット形成時の破断した端面に、一層、引っ掛かり易くなって、エアバッグの展開を遅らせてしまう。
【0010】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、フロントピラー部からルーフサイドレール部にかけて配置されるエアバッグカバーが、張力発生用の連結部材を、エアバッグ収納時に覆っていても、エアバッグの展開膨張時、連結部材を円滑に突出させることができる頭部保護エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、エアバッグが、
車内側の開口における上縁側周縁のフロントピラー部からルーフサイドレール部にかけて折り畳まれて収納されるとともに、
膨張用ガスの流入時に前記開口を覆い可能に膨張するエアバッグ本体と、
該エアバッグ本体の前下縁側と前記フロントピラー部とを連結して、膨張時の前記エアバッグ本体の下縁側に前後方向の張力を生じさせる連結部材と、
を備えて構成され、
該連結部材が、前記フロントピラー部から前記ルーフサイドレール部にかけて一体的に成形された合成樹脂製のエアバッグカバーの車外側の部位に、収納され、
前記エアバッグカバーが、フロントピラー部側とルーフサイドレール部側との下縁側に、前記連結部材の下方への突出時に車内側へ開き可能とする前側・後側ドア部を配置させて構成されている頭部保護エアバッグ装置であって、
前記エアバッグカバーにおけるフロントピラー部側とルーフサイドレール部側との境界部位の下縁側に、前記前側・後側ドア部の開きを可能とするための破断することなく伸び可能な薄肉部が、形成され、
前記薄肉部が、車内側から見て下広がりの三角形状として、車内側に凹むように形成されるとともに、上端を、前記前側・後側ドア部の開き時のヒンジ部を越えた上方位置に配置させて、形成されていることを特徴とする。
【0012】
前記連結部材は、前記エアバッグ本体と別体として、前記エアバッグ本体に結合されるベルトから構成することが望ましい。
【0013】
【発明の効果】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグ本体に膨張用ガスが流入されて、連結部材が、エアバッグ本体とともに、下方へ突出する際、エアバッグカバーにおけるフロントピラー部側の前側ドア部とルーフサイドレール部側の後側ドア部とを、それぞれ、開くこととなる。
【0014】
その際、エアバッグカバーにおけるフロントピラー部側とルーフサイドレール部側との境界部位の下縁側に、前側・後側ドア部の開きを可能とするための、伸び可能な薄肉部が、形成されていることから、前側ドア部と後側ドア部とが、薄肉部を伸ばして、それぞれ、円滑に開く。
【0015】
そして、薄肉部は、破断することなく、単に、伸びるだけであるため、連結部材が、伸びた薄肉部の車外側の面に接触しても、引っ掛かることなく、円滑に、下方へ突出することとなる。
【0016】
したがって、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、フロントピラー部からルーフサイドレール部にかけて配置されるエアバッグカバーが、張力発生用の連結部材をエアバッグ収納時に覆っていても、エアバッグの展開膨張時、円滑に、連結部材を突出させることができる。
【0017】
そして、連結部材を、エアバッグ本体と別体として、エアバッグ本体に結合されるベルトから構成すれば、ベルトの長さの変更で、エアバッグ本体の下縁側に生じさせる前後方向の張力を、エアバッグ本体を変更することなく、容易に調整することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、図1に示すように、エアバッグ29が、車内側のドアや窓部の開口Wの上縁側におけるフロントピラー部FP、ルーフサイドレール部RR、及び、リヤピラー部RPにわたって、折り畳まれて収納されている。
【0020】
頭部保護エアバッグ装置Mは、エアバッグ29と、インフレーター25と、取付ブラケット26・47と、エアバッグカバー8と、を備えて構成されている。なお、折り畳まれたエアバッグ29は、エアバッグカバー8の後部側では、ルーフガーニッシュ21とリヤピラーガーニッシュ23とに覆われている。
【0021】
インフレーター25は、折り畳まれたエアバッグ29に膨張用ガスを供給するシリンダタイプとしており、エアバッグ29の後述するガス流入部36が外装されることとなる。
【0022】
取付ブラケット26は、板金製として、エアバッグ29のガス流入部36を外装させたインフレーター25を、ガス流入部36ごと外周側から挟持し、2本の取付ボルト27を利用して、リヤピラー部RPのリヤピラー本体6であるインナパネル3に取り付けている。
【0023】
エアバッグ29は、図1・9に示すように、可撓性を共に有したエアバッグ本体30と連結部材としてのベルト44とを備えて構成されている。エアバッグ本体30は、ポリアミド糸等を使用した袋織りによって形成され、ベルト44は、ポリアミド糸等を使用した織布から形成されている。
【0024】
エアバッグ本体30は、インフレーター25からの膨張用ガスGを流入させて、折り畳み状態から展開し、車内側と車外側との壁部相互を離して、厚さを増すように膨張する膨張部31と、膨張用ガスGを流入させることなく、厚さを増さない非膨張部38と、から構成されている。
【0025】
膨張部31は、車両の前席と後席との側方に配置される前膨張部32と後膨張部34とを備え、さらに、前・後膨張部32・34相互を連通する連通部33を備えて、構成されている。後膨張部34の後上端には、インフレーター25を挿入させる円筒状のガス流入部36が連通されている。
【0026】
非膨張部38は、膨張部31の外周縁で気密性を確保できるように密に織成される周縁部39と、膨張時の膨張部31を区画して膨張部31の厚さを各部で略均等に規制する規制部41と、板状部42と、を備えて構成されている。
【0027】
周縁部39の上縁側には、複数の取付部40が形成されている。各取付部40には、それぞれ、中央に、取付ボルト48(図1・5参照)を挿通させる取付孔40aが、袋織り後の孔明け加工により形成されている。
【0028】
各取付部40には、図1・5に示すように、折り畳まれたエアバッグ29をルーフサイドレール本体5としてのインナパネル3に取り付けるための板金製の取付ブラケット47が、固定されている。各取付ブラケット47は、取付部40を挟持する二枚のプレートから構成されるとともに、取付ボルト48を挿通させる取付孔47aを備えて構成されている。そして、取付ボルト48を、取付孔47a・40aに挿通させて、ルーフサイドレール本体5の取付孔5a周縁に固着されたナット5bに螺合させることにより、折り畳まれたエアバッグ29がボディ1に取り付けられることとなる。
【0029】
規制部41は、前膨張部32と後膨張部34との領域内に、周縁部39から延びて配設されたり、周壁部39から離れて配設されている。
【0030】
また、板状部42は、連通部33の下方における前膨張部32と後膨張部34との間に配置され、膨張部31の容積を小さくするために配設されている。
【0031】
ベルト44は、周壁部39の前縁下部に連結されている。実施形態の場合には、ベルト44は、周壁部39における前縁側の上部に、元部44aを縫着させ、周壁部前縁側の下部のスリット39aを挿通させて、先端部44b側を前方に延ばすように、配設されている。先端部44bには、フロントピラー部FPの下方のサイドパネル2にボルト45(図1・7参照)止めするための取付孔44cが形成されている。なお、ベルト44の元部44a側を、周壁部39の前縁下部に直接縫着させずに、スリット39aを挿通させて、周壁部39の前縁上部に縫着させている理由は、エアバッグ29の折り畳み時に、ベルト44を、先端部44b側に繰り出させて長くし、先端部44bをボルト45止めし易くするためである。そして、ベルト44は、先端部44bがサイドパネル2に固定されていれば、エアバッグ本体30の展開膨張時、エアバッグ本体30の前縁下部におけるスリット39aの周縁を引っ張って、エアバッグ本体30の下縁30b側に、前後方向に作用する張力を生じさせることとなる。
【0032】
エアバッグカバー8は、図1・7に示すように、オレフィン系熱可塑性エラストマー等の合成樹脂製として、車内側のフロントピラー部FPからルーフサイドレール部RRにかけて配設されるように、車内側から見てく字形状として、かつ、断面を略U字形状として、一体的に成形されている。
【0033】
そして、このエアバッグカバー8は、下端に、ブラケット部12を備え、このブラケット部12は、ボディ1のサイドパネル2と図示しないインストルメントパネルとの間に差し込まれる。エアバッグカバー8は、ブラケット部12の上方側では、上縁側の基部9と下縁側のドア部14と、から構成されている。基部9は、フロントピラー部FPに配置されるフロントピラー部側8aの裏面側(車外側)に、2つのクリップ部10と1つのクリップ部11とを備え、ルーフサイドレール部RRに配置されるルーフサイドレール部側8bの裏面側に、2つのクリップ部11を備えて構成されている。
【0034】
クリップ部10は、図2に示すように、フロントピラー本体4としてのインナパネル3に設けられた係止孔4aに挿入係止される係止脚13aから、構成されている。クリップ部11は、図4に示すように、基部9の裏面側に埋設される金属製のピン11aと、ピン11aに外装されて、ポリアミドやオレフィン系熱可塑性エラストマー等の弾性変形可能な合成樹脂やゴム等から形成される略円筒状の係止キャップ11bと、を備えて構成されている。このクリップ部11は、ルーフサイドレール本体5やフロントピラー本体4に設けられた係止孔5c・4bに挿入係止され、エアバッグ29の展開膨張時、係止孔5c・4bから離脱しない状態で、係止キャップ11bが弾性変形して、エアバッグカバー8のルーフサイドレール部側8bとフロントピラー部8a側におけるルーフサイドレール部8b側近傍とを車内側へ移動可能としている。
【0035】
そして、エアバッグカバー8は、ブラケット部12がサイドパネル2とインストルメントパネルとの間に差し込まれ、クリップ部10・11がフロントピラー本体4とルーフサイドレール本体5との係止孔4a・4b・5cに挿入係止されることにより、ボディ1のインナパネル3に取付固定されることとなる。
【0036】
また、エアバッグカバー8の下縁側のドア部14は、フロントピラー部側8aの前側ドア部15と、ルーフサイドレール部側8bの後側ドア部16と、から構成されている。前側・後側ドア部15・16は、エアバッグ29の展開膨張時に、押されて開き易いように、基部9との間に、適宜、薄肉等としたヒンジ部13を配設させている。そして、前側ドア部15は、図1・2に示すように、フロントピラー部FPに沿うヒンジ部13の前斜め下向きの軸を回転中心として、車内側に開き、後側ドア部16は、図1・4に示すように、ルーフサイドレール部RRに沿うヒンジ部13の略水平方向の軸を回転中心として、車内側に開く構成としている。
【0037】
そして、開き時の前側・後側ドア部15・16の動作を阻害しないように、エアバッグカバー8におけるフロントピラー部側8aとルーフサイドレール部側8bとの境界部位8cの下縁側には、図7の斜線で示すエリアに、伸び可能な薄肉部17が、形成されている(図3・8参照)。この薄肉部17は、実施形態の場合、車内側から見て下広がりの三角形状として、車内側に凹むように形成されている。また、薄肉部17の上端17aは、前側・後側ドア部15・16のヒンジ部13を越えた上方位置に配置されている。
【0038】
なお、リヤピラーガーニッシュ23は、図1・6に示すように、前部側に配置される前パネル部23aと、後部側に配置される後パネル部23bと、を備えて構成されている。これらのパネル部23a・23bは、図示しない取付手段によって、板金製のリヤピラー本体6としてのインナパネル3に取付固定されている。そして、このリヤピラーガーニッシュ23では、エアバッグ29の膨張時、折り畳まれて収納されたエアバッグ29を覆っている後パネル部23bが、その前縁側のドア部23cを、エアバッグ29によって押されて開かせるように、構成されている。
【0039】
ルーフガーニッシュ21は、図1・5に示すように、クリップ部11と同様なクリップ部21aを係止孔5cに挿入させて板金製のルーフサイドレール本体5としてのインナパネル3に係止させることにより、インナパネル3に取付固定されている。そして、このルーフガーニッシュ21も、エアバッグ29の膨張時にエアバッグ29を突出可能に、下縁側のドア部21bが押されて開くように、構成されている。
【0040】
そして、頭部保護エアバッグ装置Mの車両への搭載について述べると、まず、エアバッグ29を折り畳む。その際、図9に示すように、平らに展開した状態で、エアバッグ本体30の上縁30aと平行な折目Cを付けて、ベルト44をスリット39aから引っ張り出しつつ、エアバッグ本体30を、下縁30b側から上縁30a側へ蛇腹折りする。さらに、折り畳んだ後には、折り崩れしないように、所定間隔で破断可能なテープ材を巻き付けておく。
【0041】
また、折り畳んだ後には、各取付部40に取付ブラケット47を取り付けるとともに、ガス流入部36の折りを解消して、インフレーター25をガス流入部36に挿入し、ガス流入部36の外周に取付ブラケット26を取り付けて、エアバッグ組立体を形成しておき、車両への取付待機状態としておく。
【0042】
その後、取付ブラケット26をリヤピラー本体6の所定位置に配置させて、ボルト27止めし、また、各取付ブラケット47をルーフサイドレール本体5の所定位置に配置させてボルト48止めするとともに、ベルト44の先端部44bをサイドパネル2にボルト45止めする。そして、ルーフガーニッシュ21・リヤピラーガーニッシュ23をボディ1に取り付け、さらに、ブラケット部12をサイドパネル2とインストルメントパネルとの間に差し込みつつ、クリップ部10・11を係止孔4a・4b・5cに挿入係止させて、エアバッグカバー8をフロントピラー部FPとルーフサイドレール部RRの前部側とのインナパネル3に取り付ければ、頭部保護エアバッグ装置Mを車両に搭載することができる。
【0043】
なお、ベルト44は、エアバッグ本体30の折り畳み時に、元部44aの縫着部位とスリット39aとの間が接近するように折り畳まれることから、先端部44b側に繰り出し可能となっている。そのため、ベルト44が、エアバッグ29の展開膨張時に、エアバッグ本体30の下縁30b側に前後方向の張力を発揮させるように、短くとも、その先端部44bを、容易に、サイドパネル2に連結することができる。
【0044】
また、エアバッグ29の車両への搭載時には、エアバッグカバー8のドア部14の裏面側(車外側)で、エアバッグ本体30の前端部位が、エアバッグカバー8におけるフロントピラー部側8aとルーフサイドレール部側8bとの境界部位8c付近に配置され、ベルト44が、その境界部位8cの後方側付近からサイドパネル2付近まで配置されることとなる。
【0045】
頭部保護エアバッグ装置Mの車両への搭載後、インフレーター25が作動されれば、インフレーター25からの膨張用ガスGが、図9に示すように、ガス流入部36から膨張部31の後膨張部34・連通部33・前膨張部32に流れて、折りを解消させつつ、エアバッグ本体30を展開膨張させることとなる。その際、エアバッグ本体30に巻き付けていた図示しないテープ材が破断し、さらに、エアバッグカバー8・ルーフガーニッシュ21・リヤピラーガーニッシュ23における後パネル部23bの各ドア部14・21a・23cが押されて開き、図1〜6の二点鎖線で示すように、ベルト44が突出するとともに、エアバッグ本体30が、開口Wを覆うように、大きく膨張することとなる。
【0046】
そして、ベルト44は、エアバッグ本体30とともに、ドア部14を開いて下方へ突出する際、ドア部14におけるフロントピラー部側8aの前側ドア部15とルーフサイドレール部側8bの後側ドア部16とを、それぞれ、開くこととなる。
【0047】
その際、エアバッグカバー8には、フロントピラー部側8aとルーフサイドレール部側8bとの境界部位8cの下縁側に、前側・後側ドア部15・16の開きを可能とするように、伸び可能な薄肉部17が、形成されていることから、エアバッグ本体30の前膨張部32の膨張にともなって、後側ドア部16が開き、さらに、薄肉部17が伸びつつ、後側ドア部16の開きに引っ張られるように、前側ドア部15も開くこととなって、前側ドア部15と後側ドア部16とが、薄肉部17を伸ばして、それぞれ、円滑に開くこととなる。
【0048】
さらに、この薄肉部17は、破断することなく、単に、伸びるだけであるため、膨張しないベルト44が、伸びた薄肉部17の車外側の面に接触しても、引っ掛かることなく、円滑に、下方へ突出することとなる。
【0049】
したがって、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、フロントピラー部FPからルーフサイドレール部RRにかけて配置されるエアバッグカバー8が、張力発生用のベルト44を、エアバッグ29の収納時に覆っていても、エアバッグ29の展開膨張時、円滑に、ベルト44を突出させることができる。
【0050】
なお、実施形態では、エアバッグカバー8を、ピン11aをインサートとして、オレフィン系熱可塑性エラストマー等の一種類の合成樹脂で、一体的に成形したものを示したが、薄肉部17、折り畳まれた前膨張部32を覆って開く角度の大きくなる後側ドア部16、及び、その後側ドア部16近傍や境界部位8c近傍のクリップ部11付近等の部位を、伸びのある合成樹脂材料で成形し、その他の部位を剛性のある合成樹脂材料で成形するように、エアバッグカバー8を、二種類の合成樹脂材料で、一体的に成形(二色成形)しても良い。
【0051】
また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、折り畳んだエアバッグ29の車両への搭載時に、エアバッグ本体30の膨張部31(前膨張部32)を、エアバッグカバー8における前方側のフロントピラー部側8aに収納させず、後方側のルーフサイドレール部側8bの部位に収納させるように構成している。すなわち、エアバッグ本体30の膨張部31をエアバッグカバー8のフロントピラー部側8aより後方側に配置させて、膨張部31のエリアを小さくさせていることから、膨張部31の容積を小さくすることができ、膨張完了までの時間を短縮させることに寄与できる。
【0052】
さらに、実施形態のエアバッグ29では、エアバッグ本体30の下縁30b側に前後方向の張力を生じさせる連結部材として、エアバッグ本体30と別体として、エアバッグ本体30に結合される帯状で長尺状のベルト44から構成しており、ベルト44の長さの変更で、エアバッグ本体30の下縁30b側に生じさせる前後方向の張力を、エアバッグ本体30を変更することなく、容易に調整することができる。
【0053】
勿論、連結部材としては、エアバッグ本体30の下縁30b側に前後方向の張力を生じさせることができれば、エアバッグ本体30と別体のベルトでなく、エアバッグ本体30の前下縁側の周縁部39から延びるような、エアバッグ本体30と一体的なベルトとしても良い。
【0054】
さらに、エアバッグ本体30の前下縁側とフロントピラー部FPとを連結して、エアバッグ本体30の下縁30b側に前後方向の張力を生じさせることができれば、ベルト形状でなくとも、図10に示すエアバッグ49のような、三角板状の連結部材54としても良い。この連結部材54は、周縁部39の部位が延長されて形成されている。連結部位54の前部には、取付ブラケット47を使用して、フロントピラー本体4にボルト48止めされるように、取付孔40aを備えた取付部40が形成されている。なお、図10では、エアバッグ29と同様な部位には、同一符号を付してある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る一実施形態の頭部保護エアバッグ装置を、車内側から見た正面図である。
【図2】図1のII−II部位の概略拡大断面図である。
【図3】図1の III− III部位の概略拡大断面図である。
【図4】図1のIV−IV部位の概略拡大断面図である。
【図5】図1のV−V部位の概略拡大断面図である。
【図6】図1のVI−VI部位の概略拡大断面図である。
【図7】同実施形態のエアバッグカバーの前部側の部分拡大正面図である。
【図8】図7のVIII−VIII部位の拡大断面図である。
【図9】同実施形態で使用するエアバッグを平らに展開した状態の正面図である。
【図10】他の実施形態のエアバッグを平らに展開した状態の正面図である。
【符号の説明】
8…エアバッグカバー、
8a…フロントピラー部側、
8b…ルーフサイドレール部側、
8c…境界部位、
15…前側ドア部、
16…後側ドア部、
17…薄肉部、
29・49…エアバッグ、
30…エアバッグ本体、
44…(連結部材)ベルト、
54…連結部材、
FP…フロントピラー部、
RR…ルーフサイドレール部、
RP…リヤピラー部、
W…開口、
M…頭部保護エアバッグ装置。
Claims (2)
- エアバッグが、
車内側の開口における上縁側周縁のフロントピラー部からルーフサイドレール部にかけて折り畳まれて収納されるとともに、
膨張用ガスの流入時に前記開口を覆い可能に膨張するエアバッグ本体と、
該エアバッグ本体の前下縁側と前記フロントピラー部とを連結して、膨張時の前記エアバッグ本体の下縁側に前後方向の張力を生じさせる連結部材と、
を備えて構成され、
該連結部材が、前記フロントピラー部から前記ルーフサイドレール部にかけて一体的に成形された合成樹脂製のエアバッグカバーの車外側の部位に、収納され、
前記エアバッグカバーが、フロントピラー部側とルーフサイドレール部側との下縁側に、前記連結部材の下方への突出時に車内側へ開き可能とする前側・後側ドア部を配置させて構成されている頭部保護エアバッグ装置であって、
前記エアバッグカバーにおけるフロントピラー部側とルーフサイドレール部側との境界部位の下縁側に、前記前側・後側ドア部の開きを可能とするための破断することなく伸び可能な薄肉部が、形成され、
前記薄肉部が、車内側から見て下広がりの三角形状として、車内側に凹むように形成されるとともに、上端を、前記前側・後側ドア部の開き時のヒンジ部を越えた上方位置に配置させて、形成されていることを特徴とする頭部保護エアバッグ装置。 - 前記連結部材が、前記エアバッグ本体と別体として、前記エアバッグ本体に結合されるベルトとしていることを特徴とする請求項1に記載の頭部保護エアバッグ装置。
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