JP4399688B2 - 軟弱地盤の改良工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、改良地盤中に真空圧を利用して減圧領域を造り出す軟弱地盤の改良工法に関する。特には改良地盤の表層部分を効率よく改良することができる軟弱地盤の改良工法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、軟弱地盤の改良工法としては、サンドドレーン工法やペーパードレーン工法が代表的なものとして挙げられるバーチカルドレーン工法がある。サンドドレーン工法は、軟弱地盤中に適当な間隔で鉛直方向に数多くのサンドパイル(人工的に設けた砂柱)を設置し、このサンドパイルを通して地盤中の水を抜き取って地盤の圧密と強度増加を促進し、硬質地盤へと改良する方法である。
【0003】
一方、ペーパードレン工法は、軟弱な地盤の圧密を促進するためのものであり、厚さ3mm、幅100mm程度の帯状原紙の中に縦方向に連続した通水孔を設けたカードボードをマンドレルによって適当な間隔に打ち込み設置し、このカードボードを通して地盤中の水を抜き取るようにしたものである。
【0004】
ところが、これらサンドドレーン工法やペーパードレーン工法などのバーチカルドレーン工法にあっては、処理を開始した当初はよいが、水の抜き取りが進行するにつれて、地盤中に水の通路となるべき間隙が潰れ、排水機能が低下するという不具合が生じていた。
【0005】
そこで、排水効率をさらに高める目的で提案されたのが図5に示す改良工法である。この工法は、プラスチックドレーンを打設した後、カードボード1の上端部1aにこれと接触するように水平状に真空ポンプ3に連結した有孔管2を配置し、これらカードボード1及び有孔管2を砂層4で覆い、さらにその砂層4上面を気密シート5で覆うようにしたものであり、有孔管2を通してこれに連結した真空ポンプ3からの真空圧を負荷することで、地盤A上面を減圧状態とし、これにより地盤A中における間隙水圧との差を大きくし、地盤A中の水をカードボード1及び有孔管2を介して排水するようにしたものである。
【0006】
しかしながらこの工法の場合、改良地盤の表面及び深部の排水効率(改良)は頗る良いのであるが、表層部分、特に改良地盤上面下2〜3mの範囲の層については十分な改良ができなかった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、改良地盤の表面及び深部のみならず、表層部分についても効率よく改良することができる軟弱地盤の改良工法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、改良地盤中に所定の間隔をおいて設置した鉛直ドレーン材とこれに繋がる水平排水材とを通じて、前記改良地盤に前記水平排水材と接続する真空ポンプからの真空圧を負荷することで、改良地盤中に減圧領域を造り出すようにした軟弱地盤の改良工法において、
前記鉛直ドレーン材及び水平排水材が熱伝導性材料を含んでおり、前記水平排水材に前記改良地盤上面を覆う黒色の気密シートが真空圧の作用で密着状態となることにより、前記気密シートが太陽光を受けて吸収した熱が前記水平排水材及び鉛直ドレーン材を通じて前記気密シート内の減圧状態の表層部分に伝播し、これにより、前記表層部分における間隙水温が上昇して該間隙水の蒸発を促進するようにしたことを特徴とする軟弱地盤の改良工法(以下単に改良工法という)をその要旨とした。
【0009】
請求項2記載の発明は、改良地盤の表層部分が、改良地盤上面下2〜3mの範囲の層であることを特徴とする改良工法をその要旨とした。
【0010】
(削除)
【0011】
(削除)
【0012】
請求項3記載の発明は、熱伝導性材料が金属ネットであることを特徴とする改良工法をその要旨とした。
【0013】
【発明の実施の形態】
(作用)
本発明の改良工法にあっては、改良地盤上面を覆う黒色の気密シートが、当該気密シートに降り注ぐ太陽光を受けて吸熱し、この気密シートで覆われた減圧状態の改良地盤上面を暖める。これにより改良地盤上面の地温が上昇し、改良地盤表面における水分の蒸発が盛んになり、この結果、改良地盤表面の土が乾燥して、土の材質が向上し、強い土(不飽和土)となる。
【0014】
また気密シートが吸収した熱の一部は、真空圧の作用で気密シートと密着状態となる水平排水材及び鉛直ドレーン材を通じて前記気密シート内の減圧状態の表層部分に伝播し、その熱で減圧状態の表層部分における間隙水温も上がり蒸発することになる。
【0015】
以下、本発明の改良工法を図面に示した実施に形態に従って詳しく説明する。この改良工法は、真空圧を利用して改良地盤中に減圧領域を造り出すことで、軟弱地盤を硬質地盤へと改良するものである。
【0016】
真空圧を利用して改良地盤中に減圧領域を造り出す方法として種々考えられるが、図1〜図3に示す形態では、改良地盤A中に所定の間隔(例えば減圧伝播可能な範囲である約1mの間隔)をおいて鉛直ドレーン材11を設置し、この鉛直ドレーン材11の上端部と接触するように水平排水材14を配し、さらに気密シート13で改良地盤A上面を前記鉛直ドレーン材11及び水平排水材14とともに覆い、次いで、この鉛直ドレーン材11とこれに繋がる水平排水材14とを通じて、前記水平排水材14と接続する真空ポンプ12からの真空圧を前記改良地盤A中に負荷することで、前記改良地盤A中に減圧状態の領域(以下減圧領域という)を造り出している。
【0017】
すなわち図1〜図3に示すように、真空ポンプ12を作動させて真空圧を負荷したとき、まず、鉛直ドレーン材11とその周りの地盤A1との間に圧力差(鉛直ドレーン材内部の圧力(−)、鉛直ドレーン材周りの地盤A1の圧力(0))が生じ、鉛直ドレーン材11周りの地盤A1には、減圧状態の鉛直ドレーン材11に向かう地盤加圧(水圧、土圧)が発生する。
【0018】
この地盤加圧に従って、鉛直ドレーン材11周りの地盤A1に含まれる間隙水が鉛直ドレーン材11に向かって吸い出され、鉛直ドレーン材11とこれに繋がる水平排水材14を排水経路として排水され、これに伴って鉛直ドレーン材11周りの地盤A1は減圧領域となる。
【0019】
真空圧は、減圧領域となった鉛直ドレーン材11周りの地盤A1から、さらにその周囲の地盤A2へと伝播していく。図3に示すように、鉛直ドレーン材11周りの地盤A1が減圧領域となったとき、その周囲の地盤A2との間には、鉛直ドレーン材11周りの地盤A1へと向かう地盤加圧(水圧、土圧)が発生する。
【0020】
この地盤加圧に従って、鉛直ドレーン材11周囲の地盤A2に含まれる間隙水が鉛直ドレーン材11に向かって吸い出され、鉛直ドレーン材11周りの地盤A1、鉛直ドレーン材11及び水平排水材14を排水経路として排水され、これに伴って鉛直ドレーン材11の周囲の地盤A2も減圧領域となる。
【0021】
こうして、図2及び図3に示すように、鉛直ドレーン材11を中心にしてその周囲の地盤A1、A2・・・Anと次第に減圧領域が広がり、やがて改良地盤A全域が減圧領域となる。同時に鉛直ドレーン材11を中心にして圧密、強度増加が進行し、改良地盤A全域の圧密、強度増加が行われることになる。
【0022】
一方、鉛直ドレーン材11とこれに繋がる水平排水材14を配置していない改良地盤A周辺の地盤(以下非改良地盤という)Bには、真空ポンプ12からの真空圧が負荷されず、排水経路もないことから、この非改良地盤Bが減圧領域となることはなく、非改良地盤Bの圧密、強度増加が進行することもない。
【0023】
そして、真空圧の負荷をさらに続けることで、図1に示すように、改良地盤Aの減圧状態はさらに(−)方向へ進み、かつこれに伴い改良地盤Aの圧密、強度増加も進行し、遂には非改良地盤Bのうち、改良地盤Aからの真空圧(減圧)の影響を受ける改良地盤A周辺の境界部分B1が変形し、ここに真空圧(減圧)の影響を受けない非改良地盤Bとの間にクラックC(Vゾーン)が発生し、この結果、改良地盤A中に改良地盤A周辺部と隔離された減圧領域が造り出されることになる。
【0024】
また、改良地盤A中に改良地盤A周辺部と隔離された減圧領域が造り出されるのと同時に、改良地盤Aの下側、すなわち深部D側にも真空圧(減圧)が伝播し、また地盤面上に盛土すれば荷重の分散も少なく深部D側に効率よく盛土荷重が伝わり、改良地盤Aの深部Dにおける圧密、強度増加が進行し、改良がなされていくことになる。
【0025】
尚、この形態では、真空圧の負荷に先立って前記改良地盤A周辺部に止水壁15を設けている。このため、真空圧の負荷による圧密、強度増加は、改良地盤A周辺部側方ではなく縦方向、すなわち改良地盤A及び改良地盤Aの深部Dに集中的に進行することになり、より効果的な地盤改良がなされるようになる。
【0026】
本発明の改良工法は、上述のような真空圧を利用して減圧領域を造り出す工法において、前記真空圧の負荷に先立って前記改良地盤A上面を黒色の気密シート13で覆うとともに、前記黒色の気密シート13と改良地盤Aの表層部分とを熱伝達手段で接続することを特徴としている。
【0027】
図1〜図4に示す形態では、熱伝導性材料を含む鉛直ドレーン材11と同じく熱伝導性材料を含む水平排水材14とからなるものを熱伝達手段として採用し、これに黒色の気密シート13を接触させている。
【0028】
この形態では、図4に示すように、熱伝導性材料として金属ネット20を用い、これを不織布21で内包したものを鉛直ドレーン材11、同じく水平排水材14として用いた。鉛直ドレーン材11にあっては、改良地盤A中に所定の間隔をおいて打設することで、改良地盤A中には所定の間隔をおいて鉛直状の排水柱が造成されることになり、水平排水材14からの真空圧が、金属ネット20と不織布21との隙間、及び不織布21の構成繊維相互間を伝播経路として改良地盤A内へと伝播されるようになっている。そしてこの作用により各排水柱間の改良地盤A中に含まれる水及び空気は、図1中矢印で示すように、鉛直ドレーン材11を構成する不織布21側から侵入し、金属ネット20と不織布21との隙間、及び不織布21の構成繊維相互間を排水経路として改良地盤A上面へと吸い上げられるようになっている。
【0029】
またこの鉛直ドレーン材11にあっては、折れたり曲がったりしても、金属ネット20と不織布21とによって形成されている真空圧(減圧)の伝播経路、通水経路が確保されており、しかも金属ネット20全体が不織布21で覆われていて、目詰まりを生じ難いというメリットがある。
【0030】
またこの鉛直ドレーン材11にあっては、不織布21に内包されているネット20が熱伝導性を有する金属であることから、後述する水平排水材14及び気密シート13からの熱を改良地盤A(表層部分)内へと効率よく導くようになっている。
【0031】
水平排水材14は、改良地盤Aの上面に突出する鉛直ドレーン材11の突出部分に接触するように平行状に配置することで、当該水平排水材14の一端側に排水タンク(図示しない)を介して接続されている真空ポンプ12からの真空圧が排水タンク(図示しない)を介して水平排水材14へと伝達されるようになっている。そしてこの作用により鉛直ドレーン材11からの水及び空気が、金属製ネットを覆う不織布21側から侵入し、金属ネット20と不織布21との隙間、及び不織布21の構成繊維相互間を排水経路として排水されるようになっている。またこの水平排水材14を通して気密シート13からの熱が前述の鉛直ドレーン材11へと伝播するようになっている。
【0032】
これらドレーン材11及び水平排水材14とともに改良地盤Aの上面を黒色の気密シート13で覆うのである。この形態で用いた気密シート13は、当該気密シート13の気密性とともに破損防止、ピンホールの発生防止という観点から、織物、不織布などの繊維基材表面に合成樹脂フィルムをラミネートしたものを用いた。このため、気密シート13で改良地盤A上を覆い、この状態で真空ポンプ12を作動させると、真空ポンプ12からの真空圧が、排水タンク(図示しない)を介して水平排水材14、鉛直ドレーン材11へと伝達される過程で漏気し難くなり、当該真空圧は改良地盤A中に確実に負荷されるようになっている。
【0033】
またこの気密シート13は、黒、紫、紺、青、灰色などの黒色を呈していて、その熱吸収率は頗る良い。このため、当該気密シート13で改良地盤A上を覆ったとき、この気密シート13は、当該気密シート13上面に降り注ぐ太陽光を受けてその熱を効率よく吸収し、その熱は改良地盤Aの表面を暖めて、地温が上昇し、これに前述の真空圧(減圧)が負荷されることから、改良地盤Aの表面(A0)における水分の蒸発が盛んになり、表面の土が乾燥して、土の材質が向上し、強い土(不飽和土)となる。
【0034】
また気密シート13で覆って真空圧を負荷したとき、気密シート13は、真空圧の作用で前述の水平排水材14及び鉛直ドレーン材11と密着状態となり、気密シート13が吸収した熱の一部は、これら水平排水材14及び鉛直ドレーン材11を介して改良地盤Aの表層部分へと伝播される。そして、その熱で減圧状態の表層部分における間隙水温も上がり、やがて表層部分における間隙水は蒸発し、これに伴って表層部分の圧密、強度増加も進行することになる。
【0035】
(削除)
【0036】
尚、上記実施の形態に示した例は、単なる説明例に過ぎず、例えば地盤中に負荷する真空圧を、改良当初は高くし、その後は低い状態に維持したり、高い状態と低い状態とを交互に繰り返したりするなど、特許請求の範囲の欄に記載された範囲内で自由に変更することができる。
【0037】
【発明の効果】
本発明の改良工法にあっては、改良地盤上面を覆う黒色の気密シートが、当該気密シートに降り注ぐ太陽光を受けて吸熱し、この気密シートで覆われた減圧状態の改良地盤上面を暖め、これにより改良地盤上面の地温が上昇し、改良地盤表面における水分の蒸発が盛んになり、この結果、改良地盤表面の土が乾燥して、土の材質が向上し、強い土(不飽和土)となる。
【0038】
また気密シートが吸収した熱の一部は、真空圧の作用で気密シートと密着状態となる水平排水材及び鉛直ドレーン材を通じて前記気密シート内の減圧状態の表層部分に伝播し、その熱で減圧状態の表層部分における間隙水温も上がり蒸発することになる。
【0039】
この結果、改良地盤の表面及び深部のみならず、表層部分についても効率よく改良することができるという効果が導き出される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の改良工法の一形態を示した模式図。
【図2】 本発明の改良工法の一過程を示した模式図。
【図3】 本発明の改良工法の別の過程を示した模式図。
【図4】 本発明の改良工法に用いる鉛直ドレーン材を示した拡大斜視図。
【図5】 従来の改良工法を示した模式図。
【符号の説明】
11・・・鉛直ドレーン材
12・・・真空ポンプ
13・・・気密シート
14・・・水平排水材
20・・・金属ネット
21・・・不織布
A・・・改良地盤
B・・・非改良地盤
C・・・クラック(Vゾーン)
Claims (3)
- 改良する軟弱地盤(以下改良地盤という)中に所定の間隔をおいて設置した鉛直ドレーン材とこれに繋がる水平排水材とを通じて、前記改良地盤に前記水平排水材と接続する真空ポンプからの真空圧を負荷することで、改良地盤中に減圧領域を造り出すようにした軟弱地盤の改良工法において、
前記鉛直ドレーン材及び水平排水材が熱伝導性材料を含んでおり、前記水平排水材に前記改良地盤上面を覆う黒色の気密シートが真空圧の作用で密着状態となることにより、前記気密シートが太陽光を受けて吸収した熱が前記水平排水材及び鉛直ドレーン材を通じて前記気密シート内の減圧状態の表層部分に伝播し、これにより、前記表層部分における間隙水温が上昇して該間隙水の蒸発を促進するようにしたことを特徴とする軟弱地盤の改良工法。 - 改良地盤の表層部分が、改良地盤上面下2〜3mの範囲の層であることを特徴とする請求項1記載の軟弱地盤の改良工法。
- 熱伝導性材料が金属ネットであることを特徴とする請求項1記載の軟弱地盤の改良工法。
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