JP4398085B2 - 血液浄化装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、患者の血液を採り出して処理した後に再び患者に戻す血液浄化装置に関し、さらに具体的には、血液を血液成分吸着器に導入して血液中の不要物質あるいは病因物質を取り除く吸着式血液浄化法または血球成分除去療法に好適な装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
血液中の病因物質を取り除く血液浄化法として、血液中の不要物質を除去する分離手段と、該分離手段と患者の体とを結ぶ採血ラインおよび返血ラインと、該分離手段に血液を循環させる血液ポンプと、該分離手段の上流と下流での血液流圧を測定するセンサとからなる装置を使用する方法が知られている。このような装置を用いた血液浄化法の1つとして、吸着式血液浄化法がある。これは、前記分離手段として吸着器を用い、患者の血液を該吸着器に通し、吸着器内の活性炭、陰イオン交換樹脂、PET不織布などの吸着材料に病因物質を吸着させた後、浄化した血液を患者の体内に戻すものである。
【0003】
図2は、吸着式血液浄化法による血液浄化装置の従来例を示す概略構成図である。この血液浄化装置20は、血液成分吸着器3と、患者の体内から採り出した血液を吸着器3へ送る採血ライン1と、吸着器3から出てきた血液を患者の体内に戻す返血ライン5とで血液循環路を形成している。採血ライン1には吸着器3に血液を循環させる血液ポンプ6が備えられ、該血液ポンプ6は血液ポンプ用モータ7によって駆動される。血液ポンプ6の形態は任意であるが、例えば回転式のチューブポンプとされ、円弧状に配置された複数のローラが、該円弧の中心を軸として回転しながら採血ライン1を形成する弾性チューブをしごいて送液動作をする構成とする。
【0004】
採血ライン1および返血ライン5にはそれぞれ血液流圧を測定する動脈圧センサ2および静脈圧センサ4が備えられており、該センサ2、4により吸着器3の状態を監視することができる。例えば、センサ2、4によって測定された採血ライン1の流圧と返血ライン5の流圧の差(圧力損失)が大きくなってきたら、それは吸着器3の内部で血液凝固などにより通血の妨げが進行しているということである。
【0005】
図示しないが、採血ライン1および返血ライン5はそれぞれ、血液中の空気をトラップするドリップチャンバを備え、さらに返血ライン5は、ドリップチャンバだけでは気泡を除去しきれないときのために、気泡の有無を検出するための気泡検知器と、気泡を検出した時に血液ラインのチューブを閉塞するための気泡用クランプを備える。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような装置では、血液成分吸着器内で血液凝固などが起こった場合には、治療を中断して血液成分吸着器を洗浄するか、あるいは治療そのものを中止することになる。通常は、血液の凝固を防止するために付属回路から抗凝固剤を補注しているが、それにも拘わらず様々な要因によって吸着器内部で血液凝固が進むことがある。特に近年は、メシル酸ナファモスタットに代表される半減期の短い抗凝固剤が汎用されており、吸着器内部の血液凝固によって治療を一時中断、あるいは中止すると、数分で回路も含めた全ラインで血液凝固が亢進してしまい、貴重な血液を患者に戻すことができなくなる。従って、血液凝固により治療を中断、あるいは中止する場合、血液ライン中の血液を速やかに患者に戻す必要があった。
【0007】
本発明の目的は、吸着器等の血液成分分離手段の内部での血液凝固などによる通血の妨げの進行具合を検知し、治療トラブルを回避して治療を継続するとともに、凝固がさらに進行する場合には治療を中止して血液ライン中の血液を速やかに患者に戻すことを可能とする、血液浄化装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明による血液浄化装置は、血液中の不要物質を除去する分離手段と、該分離手段と患者の体とを結ぶ採血ラインおよび返血ラインと、該分離手段に血液を循環させる血液ポンプと、該分離手段の上流と下流での血液流圧を測定するセンサと、前記センサの測定結果に応じて前記ポンプの血液流量を調整する制御部と、前記採血ラインから分岐して前記返血ラインに合流する少なくとも1つの開閉可能なバイパスラインを備え、前記制御部は、前記バイパスラインを閉じた状態で前記分離手段に血液を循環させ、前記血液流圧の上流と下流での圧力差が増加して第1の設定値に達すると前記血液ポンプの血液流量を所定量または所定割合だけ低下させることにより該圧力差を減少させ、その後、該圧力差が再び増加して前記第1の設定値に達するごとに血液流量を前記所定量または所定割合だけさらに低下させる工程を繰り返し、血液流量を予め決められた値以下に調整してもなお前記圧力差が増加して前記第1の設定値に達するときは、前記バイパスラインを開放する手段を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明は上記の構成とすることにより、通血の妨げが進行して分離手段の処理能力が低下しても、制御部が自動的に該分離手段に送られる血液の量を調整するので、該分離手段には負担がかからず、血液浄化処理を続行することができる。
【0012】
さらに、制御部が血液流量を減らしていってもなお通血の妨げが進行し、ついには血液浄化処理の続行が不可能となった場合、前記分離手段をバイパスする前記バイパスラインに血液を通すことにより、血液を速やかに患者の体に戻すことができ、返血ロスを最小限に食い止めることができる。
【0013】
好ましくは、上記血液浄化装置において、前記制御部は、前記圧力差が前記第1の設定値を超えて第2の設定値に達したときは、血液流量に関わらず前記バイパスラインを開放する手段を備える。この態様では、前記分離手段内で通血の妨げが急激に進行するなどして、血液流量の調整では対処しきれないような状態になったとしても、前記バイパスラインを通すことにより血液を速やかに患者の体に戻すことができる。
【0014】
なお、前記バイパスラインの非使用時に採血ラインや返血ラインから該バイパスラインに血液が混入し、滞留血が凝固を引き起こす可能性がある。従って、前記バイパス用クランプは、前記採血ラインからの分岐部直後および前記返血ラインへの合流部直前に各々取りつけることが望ましい。
【0015】
【発明の実施形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の血液浄化装置の概略構成図であり、本実施例の血液浄化装置10は、図2とともに説明した従来例による血液浄化装置20と同じく、吸着式血液浄化法を実施するための装置としての適用例であり、血液成分分離手段として吸着器が用いられている。その他、図2の血液浄化装置20と共通の部分については同じ参照符号を付すことにより説明は省略し、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0016】
本実施例の血液浄化装置10は、血液成分吸着器3の手前で採血ライン1から分岐して該吸着器3の直後で返血ライン5に合流するバイパスライン13を備える。バイパスライン13は、該バイパスライン13の閉塞・開放を行う少なくとも一つのバイパス用クランプ14を備えており、平常時は該バイパス用クランプ14によって閉塞されている。
【0017】
このバイパス用クランプ14は種々の形態をとりうる。例えば、図示しないが、バイパスライン13を形成する弾性チューブを間に挟んで向かい合った固定部および可動部を有する形態とする。該可動部がチューブを圧迫しながら固定部の方へ直動することで、チューブを閉塞する。チューブの開放時には、可動部が逆方向に直動する。可動部の駆動は、直動する電磁式ソレノイドあるいは回転モータとカムの組み合わせによって行われる。
【0018】
血液浄化装置10はさらに、動脈圧センサ2および静脈圧センサ4の測定結果に応じて血液ポンプ用モータ7およびバイパス用クランプ14を駆動制御する制御部11を備える。センサ2、4で測定された測定値は、それぞれ動脈圧ライン15および静脈圧ライン16を通って圧力変換器12に送られ、電気信号に変換された後、制御部11に伝達される。制御部11はこの電気信号に基づいて、血液ポンプ6の血液流量を調整するとともに、バイパスライン13の開閉を行う。
【0019】
制御部11が行う制御について、以下に詳しく説明する。血液ポンプ6によって吸着器3に送られる血液ポンプ流量をQ0[ml/min]、動脈圧センサ11にて測定された動脈圧をPa[mmHg]、静脈圧センサ12にて測定された静脈圧をPv[mmHg]、動脈圧Paと静脈圧Pvとの圧力差(Pa−Pv)をPe[mmHg]とする。
【0020】
まず、バイパスライン13を閉じた状態で血液ポンプ6を作動させ、血液浄化処理を開始する。血液成分吸着器3内での血液凝固などによる通血の妨げが生じ始めると、動脈圧Paが増加し、静脈圧Pvとの圧力差Peも増加し始める。そして、圧力差Peが第一の設定値Pdに達すると、制御部11は血液ポンプ流量Q0を設定した割合X[%]あるいは設定した一定流量Lだけ減少させ、Q1に調整する。これにより、処理能力の低下している吸着器3に対して過多の血液が流れ込むことが防がれ、血液浄化処理を続行することが可能となる。なお、上記のように血液ポンプ流量Q0を減少させたとき動脈圧Paは急激に低下し、それに応じて圧力差Peも急激に減少する。このPeの急激な減少の間は監視を中断し、減少が緩やかになったところで監視を再開する。
【0021】
その後、通血の妨げがさらに進行し、圧力差Peが増加して再び第一の設定値Pdに達した場合、制御部11は前記調整後の血液ポンプ流量Q1を設定した割合Xあるいは設定した一定流量Lだけ再び減少させ、Q2に調整する。この一連の工程を、圧力差Peが第一の設定値Pdを越える毎に繰り返す。
【0022】
そして、上記の調整を繰り返した後の任意の血液ポンプ流量Qnが最低流量QL以下に達してもなお、圧力差Peが第一の設定値Pd以上に達する場合は、バイパス用クランプ14を開放する。それにより血液はバイパスライン13を通って速やかに患者の体内に戻される。
【0023】
一方、血液ポンプ流量に関わらず、圧力差Peが第一の設定値Pdを超えて第二の設定圧力Poに達した場合にもバイパス用クランプ14を開放する。これにより、吸着器3内で通血の妨げが急激に進行するなどして、血液ポンプ流量の調整では対処しきれないような状態になったとしても、バイパスライン13を通すことにより血液を速やかに患者の体に戻すことができる。
以上、本発明の最適な実施形態を説明したが、本発明の機能、動作を満たすものであれば、ここに説明した以外の部品を用いてもなんら差し支えない。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の血液浄化装置によれば、血液成分吸着器の上流と下流の圧力差(圧損)に基づいて、吸着器内の血液凝固具合を検知して自動的に血液流量を減少させることができ、さらに血液凝固が進行した場合でも、バイパスラインを通すことにより速やかに患者体内に返血することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による血液浄化装置の一実施形態の概略構成図。
【図2】従来例による血液浄化装置の概略構成図。
【符号の説明】
10 血液浄化装置
1 採血ライン
2 動脈圧センサ
3 血液成分吸着器
4 静脈圧センサ
5 返血ライン
6 血液ポンプ
11 制御部
13 バイパスライン
Claims (3)
- 血液中の不要物質を除去する分離手段と、
該分離手段と患者の体とを結ぶ採血ラインおよび返血ラインと、
該分離手段に血液を循環させる血液ポンプと、
該分離手段の上流と下流での血液流圧を測定するセンサと、
前記センサの測定結果に応じて前記ポンプの血液流量を調整する制御部と、
前記採血ラインから分岐して前記返血ラインに合流する少なくとも1つの開閉可能なバイパスラインと、を備え、
前記制御部は、
前記バイパスラインを閉じた状態で前記分離手段に血液を循環させ、
前記血液流圧の上流と下流での圧力差が増加して第1の設定値に達すると前記血液ポンプの血液流量を所定量または所定割合だけ低下させることにより該圧力差を減少させ、
その後、該圧力差が再び増加して前記第1の設定値に達するごとに血液流量を前記所定量または所定割合だけさらに低下させる工程を繰り返し、
血液流量を予め決められた値以下に調整してもなお前記圧力差が増加して前記第1の設定値に達するときは、前記バイパスラインを開放する手段を備える、ことを特徴とする血液浄化装置。 - 前記制御部は、前記圧力差が前記第1の設定値を超えて第2の設定値に達したときは、血液流量に関わらず前記バイパスラインを開放する手段を備えることを特徴とする請求項1記載の血液浄化装置。
- 前記分離手段は、血液成分吸着器であることを特徴とする請求項1または2記載の血液浄化装置。
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