JP4397617B2 - 多出力dc−dcコンバータ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は各種電子機器に用いられ、バッテリ等の直流電圧が入力されて制御された直流電圧を複数の負荷に供給する多出力DC−DCコンバータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、多出力DC−DCコンバータとしては、図8に示すような回路構成の装置が用いられていた。図8に示した従来の多出力DC−DCコンバータには入力直流電源1の入力直流電圧Eiが入力されており、NチャネルMOSFETからなる主スイッチ3、インダクタ2、ダイオード4及び第1の出力コンデンサ5が設けられて昇圧コンバータを構成しており、第1の出力コンデンサ5から第1の負荷6へ第1の出力電圧Vo1が出力される。制御回路7は第1の出力電圧Vo1を制御するように、主スイッチ3のオンオフ期間比を調整している。第1の出力電圧Vo1は、シリーズレギュレータ8により降圧されて、第2の出力コンデンサ9から第2の負荷10へ第2の出力電圧Vo2として出力される。
【0003】
以下、図8に示した昇圧コンバータの動作を簡単に説明する。
まず、主スイッチ3がオン状態の時、入力直流電圧Eiはインダクタ2に印加される。この時、インダクタ2に電流が流れ、磁気エネルギーが蓄えられる。次に、主スイッチ3がオフ状態になると、インダクタ2に蓄えられた磁気エネルギーは、ダイオード4を介して第1の出力コンデンサ5を充電する電流として放出される。主スイッチ3が一定の周期でオンオフ動作しているものとすると、1周期ごとにインダクタ2を介して出力されるエネルギーは、主スイッチ3のオン期間が長いほど大きくなり、第1の出力電圧Vo1は主スイッチ3のオン期間が長いほど高くなる。即ち、第1の出力電圧Vo1は、制御回路7が主スイッチ3のオンオフ期間比を調整することにより制御される。一方、第2の出力電圧Vo2は、第1の出力電圧Vo1からシリーズレギュレータ8を介して出力される。
【0004】
上記のような構成された従来の多出力DC−DCコンバータでは、シリーズレギュレータ8による損失が発生しており、変換効率を悪化させていた。また、多出力の目的で上記の昇圧コンバータのようなスイッチングコンバータを複数構成することは部品点数の増大となり、装置の大型化及び高価格化に繋がっていた。
【0005】
図9は複数の出力を少ない部品点数で制御することを目的として構成された3出力の昇圧コンバータを示す回路図である(例えば、特許文献1参照)。なお、図9において、各構成部品に付与されている符号は特許文献1に開示されている図面と同一のものを用いた。インダクタLは、スイッチS1が接点Aに接する期間に入力V11から磁気エネルギーが蓄積され、スイッチS1が接点Bに接する期間に出力へ磁気エネルギーを放出する。その時、スイッチS2によって磁気エネルギーが各出力に分配される。特許文献1では、スイッチS2が各接点に接する期間を制御して各出力電圧を安定化させるとともに、スイッチS1を全負荷に過不足なく給電するように制御する方法が示されている。
【0006】
特許文献1と同様の技術的思想に基づく構成で、異なる制御方法を用いた発明も提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2は出力数Nの絶縁型フライバックコンバータが開示されており、トランスの1つの出力巻線に図9に示した昇圧コンバータのスイッチS2に相当するスイッチングトランジスタを介してN個の整流平滑回路が接続されている。特許文献2においては、スイッチ1に相当する主スイッチングトランジスタのスイッチング周波数がN分割されて、各出力の制御に割当てられている。即ち、特許文献2におけるスイッチS2に相当するスイッチングトランジスタはN分の1のスイッチング周波数で切換わり、各スイッチング周期ごとにスイッチS1に相当する主スイッチングトランジスタのオン期間が調整されて各出力電圧が制御されている。
【0007】
特許文献2に開示された従来の制御方法を図8に示した従来の多出力コンバータに適用すれば、複数の昇圧コンバータがインダクタを共用した構成となる。このように構成した簡単な適用例として、2出力の昇圧コンバータの回路図を図10に示し、その要部動作波形図を図11に示して、その適用例について詳細に説明する。
図10に示した2出力の昇圧コンバータは、入力直流電源1から入力直流電圧Eiが入力されており、インダクタ2、主スイッチ14、補助スイッチ15、ダイオード11、第1の出力コンデンサ5、補助スイッチ15と直列回路を形成するダイオード12、第2の出力コンデンサ9、及び制御回路16が設けられている。主スイッチ14と補助スイッチ15は、例えばNチャネルMOSFETにより構成されている。制御回路16は主スイッチ14と補助スイッチ15とをそれぞれ所定のオン期間とオフ期間で駆動制御する。
【0008】
上記のように構成された図10の2出力の昇圧コンバータにおいては、第1の出力電圧Vo1を第1の出力コンデンサ5から第1の負荷6へ出力し、第2の出力電圧Vo2を第2の出力コンデンサ9から第2の負荷10へ出力する。入出力条件はVo1>Vo2>Eiである。補助スイッチ15がオフ状態の場合は、インダクタ2と主スイッチ14とダイオード11と第1の出力コンデンサ5が、昇圧コンバータを構成する。一方、補助スイッチ15がオン状態の場合は、インダクタ2と主スイッチ14とダイオード12と第2の出力コンデンサ9が昇圧コンバータを構成する。
【0009】
制御回路16において、出力検出回路17は、第1の出力電圧Vo1と第2の出力電圧Vo2とを検出し、検出された出力電圧Vo1、Vo2とそれぞれの所望値との誤差を増幅した誤差電圧Ve1及び誤差電圧Ve2を出力する。発振回路18は所定の周期Tを有する鋸波電圧Vtとクロック信号Vt1を出力する。PWM回路19は、誤差電圧Ve1と鋸波電圧Vtとの比較結果である信号V1と、誤差電圧Ve2と鋸波電圧Vtとの比較結果である信号V2とを出力する。分周回路20は、信号Vt1が入力され、分周信号Vt2を出力する。駆動回路21は、信号V1と信号V2と分周信号Vt2が入力され、主スイッチ14の駆動信号Vg14と、補助スイッチ15の駆動信号Vg15を出力する。駆動信号Vg15は分周信号Vt2である。また、駆動回路21からの駆動信号Vg14は、分周信号Vt2がローレベルのときには信号V1が選択され、分周信号Vt2がハイレベルのときには信号V2が選択されて出力される。
【0010】
図11は図10に示した2出力の昇圧コンバータにおける各信号及びインダクタ2を流れる電流ILを示す波形図である。
以下、図10と図11を用いて、従来の多出力DC−DCコンバータの通常時の動作を説明する。
【0011】
まず、図11の時刻t0において、クロック信号Vt1によって分周信号Vt2が ローレベルになり、鋸波信号Vtが上昇を開始するものとする。この時、分周信号Vt2、即ち駆動信号Vg15のローレベルにより、補助スイッチ15はオフ状態となる。一方、鋸波信号Vtと誤差電圧Ve1との比較結果である信号V1はハイレベルとなり、これが駆動信号Vg14として出力される。即ち、主スイッチ14はオン状態となり、インダクタ2には入力直流電圧Eiが印加され、磁気エネルギーが蓄えられていく。
【0012】
時刻t1において、信号V1がローレベルとなると、駆動信号Vg14はローレベルとなり、主スイッチ14はオフ状態となる。この時、インダクタ2に蓄えられた磁気エネルギーは、補助スイッチ15がオフ状態であるので、ダイオード11を介してコンデンサ5を充電する電流として放出される。この電流は減少していき、やがてゼロとなる。
【0013】
時刻t2において、クロック信号Vt1によって分周信号Vt2が ハイレベルになり、鋸波信号Vtは急減後再び上昇を開始する。この時、駆動信号Vg15もハイレベルとなり、補助スイッチ15はオン状態となる。一方、鋸波信号Vtと誤差電圧Ve2との比較結果である信号V2はハイレベルとなり、これが駆動信号Vg14として出力される。即ち、主スイッチ14はオン状態となる。この時、インダクタ2には入力直流電圧Eiが印加され、磁気エネルギーが蓄えられていく。
【0014】
時刻t3において、信号V2がローレベルとなると、駆動信号Vg14はローレベルとなり、主スイッチ14はオフ状態となる。この時、インダクタ2に蓄えられた磁気エネルギーは、補助スイッチ15がオン状態であるので、ダイオード12を介してコンデンサ9を充電する電流として放出される。この電流は減少していき、やがてゼロとなる。
時刻t4において、駆動信号Vg15はローレベルとなり、時刻t0以降の動作を繰返す。
【0015】
インダクタ2のインダクタンスをL、補助スイッチ15がオフ状態における主スイッチ14のオン期間をTon1、補助スイッチ15がオン状態における主スイッチ14のオン期間をTon2、第1の負荷6への出力電流をIo1、第2の負荷10への出力電流をIo2とすると、下記式(1)及び式(2)が成り立つ。
【0016】
【数1】
Figure 0004397617
【0017】
【数2】
Figure 0004397617
【0018】
上記のように構成された従来の2出力の昇圧コンバータにおいては、誤差電圧Ve1及びVe2がそれぞれ第1及び第2の出力電圧Vo1及びVo2を所望の電圧に安定化するように増減して、主スイッチ31のオン期間が調整される。即ち、主スイッチ14とインダクタ2を共有する2つの昇圧コンバータが、発振回路18の発振周波数の1/2で時分割制御されることによって、第1及び第2の出力電圧Vo1及びVo2をそれぞれ所望の電圧に安定化する。
【0019】
【特許文献1】
特公平7−40785号公報(第4−6頁、第1図)
【特許文献2】
米国特許5,400,239号明細書(第5−7頁、第3図)
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、図8に示した従来の多出力DC−DCコンバータにおいては、シリーズレギュレータによる損失が発生して、変換効率が悪化するという問題があった。また、図8に示した従来の多出力DC−DCコンバータは、多出力の目的で昇圧コンバータのようなスイッチングコンバータを複数構成することが部品点数の増大となり、装置の大型化及び高価格化に繋がっていた。
【0021】
一方、図9に示した従来の多出力DC−DCコンバータのような構成とすることにより、インダクタを共用して部品点数の増加を抑え、高効率に複数の出力を制御することが可能となる。図9に示した従来の多出力DC−DCコンバータのような構成においては、特許文献1で開示された制御方法の場合、スイッチS1が接点Aに接する期間にインダクタLに蓄積された磁気エネルギーを、スイッチS1が接点Bに接する期間にスイッチS2を切り換えることにより、各出力に分配する。しかしながら、例えば、図9に示したような3出力の場合、上記のような制御方法では、スイッチS1の1スイッチング周期において、スイッチS1が接点Aに接する期間、スイッチS1が接点Bに接しスイッチS2が第1の出力に磁気エネルギーを分配する期間、スイッチS1が接点Bに接しスイッチS2が第2の出力に磁気エネルギーを分配する期間、及びスイッチS1が接点Bに接しスイッチS2が第3の出力に磁気エネルギーを分配する期間の4つの期間を制御しなくてはならなかった。スイッチングコンバータはスイッチング周波数を高周波化することにより小型化が可能となるが、前記のような4つの期間を制御する方法ではスイッチング周波数の高周波化は困難であった。また、スイッチS2が各接点に切り換る際のスイッチング損失やスイッチングノイズの発生も問題となっていた。
【0022】
特許文献2で開示されたコンバータのように、具体的には、2出力の昇圧コンバータを例として図10及び図11を用いて説明したように、スイッチング周波数を分割して各出力の制御に割当てる制御方法を適用すれば、上記の高周波化が困難であるという問題は解決可能である。しかしながら、図10に示したように構成された従来のコンバータにおいては、インダクタ2を流れる電流が主スイッチ14のオフ期間にゼロにならない場合があった。コンバータにおいては、以下の理由によりインダクタ2を流れる電流が主スイッチ14のオフ期間の間にゼロになることが望ましい。
【0023】
例えば、図10に示した多出力DC−DCコンバータにおいて、第1の出力電流Io1が大きく、ダイオード11に流れる電流が、主スイッチ14のオフ期間内にゼロにならない場合、インダクタ2に流れる電流ILの波形を図12に示す。この時、各出力電圧Vo1、Vo2は下記の式(3)及び式(4)で表される。
【0024】
【数3】
Figure 0004397617
【0025】
【数4】
Figure 0004397617
【0026】
第1の出力電圧Vo1は出力電流Io1の変化に対し、オン期間Ton1を調整することにより制御できる。しかし、ダイオード11に流れる電流が、主スイッチ14のオフ期間内にゼロにならないため、 Vo1<Ei・T/(T−Ton1) という制約がある。このため、第2の出力電圧Vo2は、Ton2=0であっても、式(4)の第2項の分子はゼロより大きい値となる。このため、出力電流Io2が小さい場合には、第2の出力電圧Vo2が上昇して制御不能となってしまう。出力が充分に立ち上がっていない起動時や、いずれかの出力が過負荷になってその出力電圧が低下する場合、インダクタ2を流れる電流は、主スイッチ14のオフ期間内にゼロにならないといった図12に示した現象が生じるという問題があった。
【0027】
本発明は、スイッチング周波数を分割して複数の出力を制御することにより、高効率なスイッチングコンバータをインダクタを共有した少ない部品点数で構成するとともに、起動時や過負荷時のような場合に、インダクタに残った磁気エネルギーによって出力電圧が上昇して制御不能となることを防止して、信頼性の高い多出力DC−DCコンバータの提供を目的とする。
【0028】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る多出力DC−DCコンバータは、
入力直流電圧が入力され、第1から第nの出力直流電圧を出力する第1から第nの出力回路と、スイッチ回路と、インダクタと、制御回路とを有する多出力DC−DCコンバータであって、
前記スイッチ回路は、前記インダクタに前記入力直流電圧を印加して磁気エネルギーを蓄えるオン状態と、前記磁気エネルギーを前記第1から第nの出力回路のいずれかへ放出する第1から第nのオフ状態とを有し、
前記制御回路は、前記スイッチ回路のスイッチング周期を第1から第nの出力の制御に振り分け、前記第1から第nの出力直流電圧を検出し、前記スイッチ回路の1スイッチング周期が第k(1≦k≦n)の出力の制御を担う場合には、前記第kの出力直流電圧を所定値となるように前記オン状態の期間を調整した後に第kのオフ状態を選択し、前記インダクタに蓄えられた前記磁気エネルギーが前記第kの出力回路への放出の終了を検出し、前記磁気エネルギーの放出が終了するまで前記第kのオフ状態を維持し、前記検出が成されると直ちに前記第kのオフ状態から前記オン状態に移行するよう構成されている。このように構成された本発明の多出力DC−DCコンバータは、スイッチング周波数を分割して複数の出力を制御することにより、高効率なスイッチングコンバータをインダクタを共有した少ない部品点数で構成することが可能となり、起動時や過負荷時のような場合に、インダクタに残った磁気エネルギーによって出力電圧が上昇して制御不能となることを防止している。また、本発明の多出力DC−DCコンバータは、インダクタに流れる電流が1スイッチング周期内でゼロになった後、次の周期に移行するよう構成されているため、1スイッチング周期内で電流がゼロに至らないことに起因する過電圧状態を回避することができる。
【0029】
また、本発明の多出力DC−DCコンバータにおいて、前記スイッチ回路のスイッチング周期、もしくは前記第1から第nのオフ状態の期間が所定値より小さくならないよう構成してもよい。
【0030】
他の観点により本発明の多出力DC−DCコンバータは、入力直流電圧が入力され、第1から第nの出力直流電圧を出力する第1から第nの出力回路と、スイッチ回路と、インダクタと、制御回路とを有する多出力DC−DCコンバータであって、
前記スイッチ回路は、前記インダクタに前記入力直流電圧を印加して磁気エネルギーを蓄えるオン状態と、前記磁気エネルギーを前記第1から第nの出力回路のいずれかへ放出する第1から第nのオフ状態とを有し、
前記制御回路は、前記スイッチ回路のスイッチング周期を第1から第nの出力の制御に振り分け、前記第1から第nの出力直流電圧を検出し、前記スイッチ回路の1スイッチング周期が第k(1≦k≦n)の出力の制御を担う場合には、前記第kの出力直流電圧を所定値となるように前記オン状態の期間を調整した後に第kのオフ状態を選択するとともに、前記第kの出力直流電圧に上限値を設け、前記第kの出力直流電圧が前記上限値を越えたとき、前記kの出力以外の出力の制御を担うスイッチング周期のオフ状態になるよう構成されている。このように構成された本発明の多出力DC−DCコンバータは、スイッチング周波数を分割して複数の出力を制御することにより、高効率なスイッチングコンバータをインダクタを共有した少ない部品点数で構成することが可能となり、起動時や過負荷時のような場合に、インダクタに残った磁気エネルギーによって出力電圧が上昇して制御不能となることを防止している。また、本発明の多出力DC−DCコンバータにおいては、スイッチング周期を固定することにより、過電圧状態を検出して他の出力へ電流を放出するよう構成されているため、過電圧状態を回避することができる。
【0031】
また、本発明の多出力DC−DCコンバータにおいて、前記nは2であって(n=2)、前記第kの出力直流電圧が前記上限値を越えたとき、ひとつ前のスイッチング周期のオフ状態に戻すよう構成してもよい。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の多出力DC−DCコンバータに係る好適な実施の形態について添付の図面を参照しつつ説明する。
【0033】
《実施の形態1》
図1は本発明に係る実施の形態1の多出力DC−DCコンバータの構成を示す回路図である。図1に示すように、本発明に係る実施の形態1の多出力DC−DCコンバータには、入力直流電源1から入力直流電圧Eiが入力されており、インダクタ2、スイッチ回路30、ダイオード41、ダイオード42、第1の出力コンデンサ51、第2の出力コンデンサ52、及び制御回路80が設けられている。
スイッチ回路30は主スイッチ31と補助スイッチ32とで構成され、それぞれが、例えばNチャネルMOSFETにより構成される。ダイオード42は、補助スイッチ32と直列回路を形成する。制御回路80は、主スイッチ31と補助スイッチ32をそれぞれ所定のオン期間とオフ期間で駆動制御する。
【0034】
実施の形態1の多出力DC−DCコンバータにおいては、第1の出力電圧Vo1を第1の出力コンデンサ51から第1の負荷6へ出力し、第2の出力電圧Vo2を第2の出力コンデンサ52から第2の負荷10へ出力する。入出力条件はVo1>Vo2>Eiである。
主スイッチ31と補助スイッチ32とで構成されたスイッチ回路30のオン状態とは、主スイッチ31がオン状態で、インダクタ2に入力直流電圧Eiが印加されている状態である。この時、補助スイッチ32のオンオフ状態は考慮しない。スイッチ回路30の第1のオフ状態とは、主スイッチ31がオフ状態で、補助スイッチ32がオフ状態である。このように補助スイッチ32がオフ状態の場合は、インダクタ2と主スイッチ31とダイオード41とコンデンサ51が、昇圧コンバータを構成する。スイッチ回路30の第2のオフ状態とは、主スイッチ31がオフ状態で、補助スイッチ32がオン状態である。このように補助スイッチ32がオン状態の場合は、インダクタ2と主スイッチ31とダイオード42とコンデンサ52が昇圧コンバータを構成する。
【0035】
図1に示すように、実施の形態1の制御回路80は、出力検出回路81、発振回路82、パルス幅変調回路(以後、PWM回路と記述する)83、分周回路84、及び駆動回路85により構成されている。
制御回路80において、出力検出回路81は、第1の出力電圧Vo1を検出する抵抗811と抵抗812と、第2の出力電圧Vo2を検出する抵抗813と抵抗814と、基準電圧源815と、第1の出力電圧Vo1の検出電圧と基準電圧源815の電圧との誤差を増幅するエラーアンプ816と、第2の出力電圧Vo2の検出電圧と基準電圧源815の電圧との誤差を増幅するエラーアンプ817から構成されている。出力検出回路81は、エラーアンプ816から誤差電圧Ve1を、エラーアンプ817から誤差電圧Ve2を出力する。
【0036】
制御回路80において、発振回路82は、発振電圧Vtを出力する発振コンデンサ820と、発振コンデンサ820を充電する定電流源821と、電圧E1を出力する電圧源822と、発振コンデンサ820と電圧源822との間に接続されたトランジスタ823と、電圧E2を出力する電圧源824と、発振電圧Vtと電圧E2を比較するコンパレータ825と、インダクタ2の両端電圧VLが入力されるコンパレータ826と、コンパレータ825の出力とコンパレータ826の出力とが入力されるANDゲート827と、ANDゲート827の出力とこの出力が入力されたインバータ828の出力が入力されるANDゲート829とから構成される。ANDゲート829は、ANDゲート827の出力がハイレベルになると、ワンショットパルスであるクロック信号Vt1を出力する。クロック信号Vt1はトランジスタ823を短時間だけオン状態にし、発振コンデンサ820を電圧E1まで短絡放電する。トランジスタ823がオフ状態になると、発振コンデンサ820は定電流源821によって定電流充電される。クロック信号Vt1が発生するのは、発振コンデンサ820が電圧E2以上に充電され、且つインダクタ2の電圧VLがゼロ以下になった場合である。尚、コンパレータ825はヒステリシス特性を有し、発振電圧Vtが電圧E2以上になってハイレベルを出力した後は、発振電圧Vtが電圧E2より低い電圧にならないとローレベルにならないものとする。即ち、発振電圧Vtは、クロック信号Vt1が発生すると電圧E1に急減したのち、直線的に上昇していく鋸波状の波形となる。
【0037】
制御回路80において、PWM回路83は、誤差電圧Ve1と発振電圧Vtとを比較して信号V1を出力するコンパレータ831と、誤差電圧Ve2と発振電圧Vtとを比較して信号V2を出力するコンパレータ832とから構成される。信号V1は発振電圧Vtが誤差電圧Ve1以下の場合にハイレベルとなり、信号V2は発振電圧Vtが誤差電圧Ve2以下の場合にハイレベルとなる。
制御回路80において、分周回路84は、クロック信号Vt1が入力され、分周信号Vt2を出力する。駆動回路85は、信号V1と分周信号Vt2の反転信号が入力されるANDゲート851と、信号V2と分周信号Vt2が入力されるANDゲート852と、ANDゲート851の出力とANDゲート852の出力が入力されるORゲート853から構成される。ORゲート853は主スイッチ31の駆動信号Vg31を出力する。分周信号Vt2は補助スイッチ32の駆動信号Vg32として出力される。したがって、駆動信号Vg31として、分周信号Vt2がローレベルの場合は信号V1が選択され、分周信号Vt2がハイレベルの場合は信号V2が選択されて出力される。
【0038】
図2は上記のように構成された実施の形態1における各信号、インダクタ2を流れる電流IL、及びインダクタ2の両端電圧VLを示す波形図である。
以下、図1と図2を用いて、本発明の実施の形態1の多出力DC−DCコンバータの動作について説明する。
まず、図2の時刻t0において、クロック信号Vt1によって分周信号Vt2、即ち駆動信号Vg32が ローレベルになり、補助スイッチ32はオフ状態となるとともに発振電圧Vtが上昇を開始するものとする。駆動信号Vg31には、発振電圧Vtと誤差電圧Ve1との比較結果である信号V1が選択される。駆動信号Vg31のハイレベルにより、主スイッチ31はオン状態(スイッチ回路30がオン状態)となり、インダクタ2には入力直流電圧Eiが印加されて、磁気エネルギーが蓄えられていく。
【0039】
時刻t1において、上昇してきた発振電圧Vtと誤差信号Ve1が交差すると、信号V1と駆動信号Vg31はローレベルとなり、主スイッチ31はオフ状態となる。この時、インダクタ2に蓄えられた磁気エネルギーは、補助スイッチ32がオフ状態(スイッチ回路30が第1のオフ状態)であるので、ダイオード41を介してコンデンサ51を充電する電流として放出される。この時、ダイオード41の順方向電圧降下を無視すると、インダクタ2の電圧VLには第1の出力電圧Vo1と入力直流電圧Eiとの差の電圧(Vo1−Ei)が印加される。この後、発振電圧Vtは上昇を続け、電圧E2を越え、やがて定電流源821が飽和して上昇は止まる。
一方、インダクタ2の電流ILは減少していき、やがて時刻t2においてゼロとなる。この時、インダクタ2の電圧VLは自由振動を開始して、電圧(Vo1−Ei)から低下していく。
【0040】
時刻t3において、インダクタ2の電圧VLがゼロ電圧になると、クロック信号Vt1が発生し、分周信号Vt2がハイレベルになり、発振電圧Vtは電圧E1に急減後再び上昇を開始する。この時、駆動信号Vg32もハイレベルとなり、補助スイッチ32はオン状態となる。一方、発振電圧Vtと誤差電圧Ve2との比較結果である信号V2はハイレベルとなり、この信号V2が駆動信号Vg31として選択出力される。これにより、主スイッチ31はオン状態(スイッチ回路30がオン状態)となり、インダクタ2には入力直流電圧Eiが印加され、磁気エネルギーが蓄えられていく。
【0041】
時刻t4において、上昇してきた発振電圧Vtが誤差信号Ve2と交差すると、信号V2と駆動信号Vg31はローレベルとなり、主スイッチ31はオフ状態となる。この時、インダクタ2に蓄えられた磁気エネルギーは、補助スイッチ32がオン状態(スイッチ回路30が第2のオフ状態)であるので、ダイオード42を介してコンデンサ52を充電する電流として放出される。この時、ダイオード42の順方向電圧降下を無視すると、インダクタ2の電圧VLには第2の出力電圧Vo2と入力直流電圧Eiとの差の電圧(Vo2−Ei)が印加される。この後、発振電圧Vtは上昇を続け、電圧E2を越える。
【0042】
一方、インダクタ2の電流ILは減少していき、やがて時刻t5においてゼロとなる。この時、インダクタ2の電圧VLは自由振動を開始して、電圧(Vo2−Ei)から低下していく。そして、電圧VLは減少していき、やがてゼロとなる。
時刻t6において、インダクタ2の電圧VLがゼロ電圧になると、クロック信号Vt1が発生し、分周信号Vt2がローレベルになり、発振電圧Vtは電圧E1に急減後再び上昇を開始する。即ち、時刻6以降は時刻t0以降の動作を繰返す。
【0043】
インダクタ2のインダクタンスをL、補助スイッチ32がオフ状態における主スイッチ31のオン期間をTon1、補助スイッチ32がオフ状態における主スイッチ31のオフ期間をToff1、補助スイッチ32がオン状態における主スイッチ31のオン期間をTon2、補助スイッチ32がオン状態における主スイッチ31のオフ期間をToff2とする。また、第1の負荷6への出力電流をIo1とし、第2の負荷10への出力電流をIo2とする。ダイオード41及びダイオード42の順方向電圧降下を無視し、時刻t2〜t3及び時刻t5〜t6の過渡期間を他の期間に比べて短時間であるものとして無視すると、下記の式(5)及び式(6)が成り立つ。
【0044】
【数5】
Figure 0004397617
【0045】
【数6】
Figure 0004397617
【0046】
誤差電圧Ve1及びVe2は、それぞれ第1の出力電圧Vo1及び第2の出力電圧Vo2が所望の電圧に安定化するよう増減して、主スイッチ31のオン期間が調整される。即ち、実施の形態1の多出力DC−DCコンバータにおいては、主スイッチ31とインダクタ2を共有する2つの昇圧コンバータが時分割制御することによって、第1の出力電圧Vo1及び第2の出力電圧Vo2のそれぞれを所望の電圧に安定化させている。
【0047】
実施の形態1の多出力DC−DCコンバータにおいて、クロック信号Vt1が発生する場合は、インダクタ2の電圧VLがゼロ電圧以下になったときに限定されている。これは、インダクタ2に蓄えられた磁気エネルギーが電流として放出されて無くなった後にクロック信号Vt1が発生することを示すものであり、起動時や過負荷時のような場合であってもインダクタ2に磁気エネルギーが残ることは無い。したがって、実施の形態1の多出力DC−DCコンバータによれば出力電圧が上昇して制御不能となることが確実に回避されている。
【0048】
尚、実施の形態1においては、例えば、第2の負荷10が軽くなった場合、第2の出力電流Io2が減少し、この第2の出力電流Io2の減少にともない、この出力制御に割当てられたスイッチング周期は短くなる。図3はそのような第2の負荷10が軽負荷である時の動作を示す各部の信号波形図である。図3においては、図2に示した各部の動作波形に加えて、コンパレータ825とコンパレータ826のそれぞれの出力波形を示している。
【0049】
以下、第2の負荷10が軽負荷である時の動作を図1及び図3を用いて説明する。
時刻t0から時刻t3における各部の動作は前述の図2に示した動作と同じであるので省略する。時刻t4において、上昇してきた発振電圧Vtが誤差信号Ve2と交差すると、主スイッチ31はオフ状態となり、インダクタ2に蓄えられた磁気エネルギーは、ダイオード42を介してコンデンサ52を充電する電流として放出される。
一方、インダクタ2の電流は減少していき、やがて時刻t5においてゼロとなる。インダクタ2の電流がゼロになった時、インダクタ2の両端電圧VLは自由振動を開始する。この両端電圧VLは、電圧(Vo2−Ei)から低下していき、やがてゼロとなり、コンパレータ826の出力がハイレベルとなる。しかし、このとき発振電圧Vtは電圧E2には至っていないので、コンパレータ825の出力はローレベルであり、クロック信号Vt1はローレベルのままである。電圧VLの自由振動によってコンパレータ826の出力はハイレベル・ローレベルを繰り返す。
【0050】
時刻t6において、発振電圧Vtは電圧E2に至り、コンパレータ825の出力はハイレベルとなり、その後のコンパレータ826の出力がハイレベルになった時点でクロック信号Vt1がワンショットパルスとして発生する。時刻t7において、分周信号Vt2がローレベルになり、発振電圧Vtは電圧E1に急減後再び上昇を開始する。即ち、時刻t7以降は時刻t0以降の動作を繰返す。
【0051】
本発明に係る実施の形態1の多出力DC−DCコンバータでは、例えば第2の負荷10が軽くなって第2の出力電流Io2が減少するのに従い、この出力制御に割当てられたスイッチング周期は短くなる。しかし、上記において説明したように、実施の形態1の多出力DC−DCコンバータにおいて、発振コンデンサ820が電圧E1から電圧E2までの充電期間は、次のスイッチング周期が開始されるためのクロック信号Vt1は発生しないよう構成されている。即ち、実施の形態1の多出力DC−DCコンバータにおいては、スイッチング周期に最小期間が設定される。
【0052】
《実施の形態2》
以下、本発明に係る実施の形態2の多出力DC−DCコンバータについて図4及び図5を参照して説明する。
図4は本発明に係る実施の形態2の多出力DC−DCコンバータの構成を示す回路図である。実施の形態2において、前述の実施の形態1において説明した入力直流電源1、インダクタ2、主スイッチ31と補助スイッチ32とからなるスイッチ回路30、ダイオード41、第1の出力コンデンサ51、補助スイッチ32、ダイオード42、及び第2の出力コンデンサ52は、実質的に同じ機能、構成を有するため、同じ符号を付与して、その詳細な説明は省略する。実施の形態2の多出力DC−DCコンバータにおいて、実施の形態1の構成と異なる点は、主スイッチ31と補助スイッチ32をそれぞれ所定のオン期間とオフ期間で駆動制御する制御回路90の構成及びその動作である。
【0053】
制御回路90において、出力検出回路81、PWM回路83、及び分周回路84は、図1に示した実施の形態1の多出力DC−DCコンバータにおけるものと同じ機能、構成を有しているので、同じ符号を付与して、その詳細な説明は省略する。制御回路90において実施の形態1の制御回路80と異なるのは、過電圧保護回路91が追加されていることと、発振回路92と駆動回路95の構成である。
【0054】
制御回路90において、過電圧保護回路91は、第1の出力電圧Vo1を検出する2つの抵抗911と912、第2の出力電圧Vo2を検出する2つの抵抗913と914、電圧源915、第1の出力電圧Vo1の検出電圧と電圧源915の電圧とを比較するコンパレータ916、及び第2の出力電圧Vo2の検出電圧と電圧源915の電圧とを比較するコンパレータ917を有する。一方のコンパレータ916からは信号Vx1を出力し、他方のコンパレータ917からは信号Vx2を出力する。さらに、過電圧保護回路91は、信号Vx1と信号Vx2が入力されるNORゲート918と、このNORゲート918の出力が入力されるシャットダウン回路919を有している。第1の出力電圧Vo1が過電圧状態になると信号Vx1がローレベルとなり、第2の出力電圧Vo2が過電圧状態になると信号Vx2がローレベルとなる。また、第1の出力電圧Vo1と第2の出力電圧Vo2がともに過電圧状態になると、NORゲート918の出力がハイレベルとなってシャットダウン回路919が動作する。シャットダウン回路919が動作すると、制御回路90は動作を停止し、入力直流電圧Eiが充分低下しなければ復帰しないよう構成されている。
【0055】
発振回路92は、所定の周期Tを持つクロック信号Vt1を発生させる信号源920を有し、発振コンデンサ820を定電流源821で定電流充電しながら、クロック信号Vt1によってオンオフ動作するトランジスタ823により放電するよう構成されている。トランジスタ823は発振コンデンサ820に充電されたものを直流電圧源822の電圧E1に短絡放電している。即ち、発振回路92は、クロック信号Vt1と、このクロック信号Vt1に同期した鋸波状の発振波形を有する発振電圧Vtとを出力するよう構成されている。
【0056】
駆動回路95において、ANDゲート851とANDゲート852とORゲート853は、実施の形態1の多出力DC−DCコンバータの制御回路80の駆動回路85と同じ構成である。したがって、駆動信号Vg31として、分周信号Vt2がローレベルの場合は信号V1が選択出力され、分周信号Vt2がハイレベルの場合は信号V2が選択出力される。このように選択出力される点は実施の形態1の多出力DC−DCコンバータの場合と同様である。
実施の形態2における駆動回路95において、実施の形態1と異なるのは、信号Vx1の反転信号と信号Vx2が入力されるANDゲート951と、信号Vx2と信号Vt2が入力されるANDゲート952と、ANDゲート951の出力とANDゲート952の出力が入力されるORゲート953が追加されている点である。そして、実施の形態2においては、ORゲート953の出力が補助スイッチ32の駆動信号Vg32として出力されている。
【0057】
以下に、本発明の実施の形態2の多出力DC−DCコンバータの動作を説明する。
まず、第1の出力電圧Vo1と第2の出力電圧Vo2がともに過電圧状態でない通常時の動作について説明する。この通常時の動作の場合、信号Vx1及び信号Vx2はともにハイレベルである。このため駆動回路95において、ANDゲート951の出力はローレベル、ANDゲート952の出力は分周信号Vt2となり、これらの論理和である駆動信号Vg32は分周信号Vt2となる。したがって、クロック信号Vt1が所定の周期Tに設定されている点を除き、制御回路90の動作は前述の実施の形態1の多出力DC−DCコンバータの制御回路80の動作と同様となる。即ち、実施の形態2の多出力DC−DCコンバータの通常時の動作は、スイッチング周期がTに設定されているだけで、それ以外の基本的な動作は前述の実施の形態1の多出力DC−DCコンバータと同様である。
【0058】
次に、例えば第1の負荷6が重くなって、第1の出力電流Io1が過電流状態の場合の動作について説明する。
この場合、第1の出力電圧Vo1の制御に割当てられたスイッチング周期内において、インダクタ2を流れる電流がゼロにならなくなるといった現象が発生する。放出されずに残ったインダクタ2の磁気エネルギーは、次のスイッチング周期の第2のオフ状態において、コンデンサ52を充電する電流として放出される。この放出電流の平均値が第2の負荷10での消費電流より大きいと、第2の出力電圧Vo2は制御不能になって上昇し、第2の出力電圧Vo2が過電圧状態になる。
【0059】
第2の出力電圧Vo2が過電圧状態になるとコンパレータ917が反転し、信号Vx2がローレベルとなる。一方、このときの信号Vx1はハイレベルのままである。駆動回路95において、ANDゲート951及びANDゲート952はともにローレベルを出力するので、その論理和である駆動信号Vg32はローレベルを出力する。即ち、分周信号Vt2の状態と無関係に補助スイッチ32はオフ状態(スイッチ回路30の第1のオフ状態)となる。インダクタ2を流れる電流は過電流状態にある第1の出力電流Io1が流れる回路へ放出されるようになり、第2の出力電圧Vo2の過電圧状態は回避される。
【0060】
次に、第2の負荷10が重くなって、第2の出力電流Io2が過電流状態の場合の動作について説明する。
この場合、第2の出力電圧Vo2の制御に割当てられたスイッチング周期内において、インダクタ2を流れる電流がゼロにならなくなるといった現象が発生する。放出されずに残ったインダクタ2の磁気エネルギーは、次のスイッチング周期の第1のオフ状態において、コンデンサ51を充電する電流として放出される。この放出電流の平均値が第1の負荷6での消費電流より大きいと、第1の出力電圧Vo1は制御不能になって上昇し、第1の出力電圧Vo1が過電圧状態になる。
【0061】
第1の出力電圧Vo1が過電圧状態になるとコンパレータ916が反転し、信号Vx1がローレベルとなる。一方、このときの信号Vx2はハイレベルのままである。駆動回路95において、ANDゲート951がハイレベルを出力するので、駆動信号Vg32もハイレベルを出力する。即ち、分周信号Vt2の状態と無関係に補助スイッチ32はオン状態(スイッチ回路30の第2のオフ状態)となる。インダクタ2を流れる電流は過電流状態にある第2の出力電流Io2が流れる回路へ放出されるようになり、第1の出力電圧Vo1の過電圧状態は回避される。
【0062】
図5は、第1の出力電圧Vo1が過電圧状態になって、その状態を回避する様子を示した波形図である。第1の出力電圧Vo1が信号Vx1をローレベルとする上限値に至る毎に、スイッチ回路30が第1のオフ状態から第2のオフ状態へと移行する。このようにスイッチ回路30が動作することにより、第1の出力電圧Vo1が上限値を越えることなく、過電圧状態が回避されている。
【0063】
以上のように、実施の形態2の多出力DC−DCコンバータにおいては、起動時や過負荷時のような場合、1スイッチング周期内でインダクタ2に流れる電流がゼロにならず、出力電圧が上昇して制御不能となっても、その過電圧状態を検出して別の出力へインダクタ2に残った磁気エネルギーを放出するよう構成されている。このように構成された実施の形態2の多出力DC−DCコンバータは、起動時や過負荷時のような場合における過電圧状態を確実に回避することができる。
【0064】
尚、出力電圧が上昇して制御不能となる原因には、例えば制御回路90における出力検出回路81での断線といったことがある。このため、図4に示したように、同じ出力電圧を検出する回路であっても、出力検出回路81と過電圧保護回路91はそれぞれ独自の検出ラインを設けるように構成している。さらに、上記のような制御回路90の異常による制御不能状態では、全出力が過電圧状態となるので、過電圧保護回路91のNORゲート918はハイレベルを出力する。これにより、シャットダウン回路919が動作して、コンバータの動作そのものを停止し、安全性が図られている。
【0065】
《実施の形態3》
以下、本発明に係る実施の形態3の多出力DC−DCコンバータについて図6及び図7を参照して説明する。
図6は本発明に係る実施の形態3の多出力DC−DCコンバータの構成を示す回路図である。前述の実施の形態1及び実施の形態2では2つの昇圧出力の場合について説明した。実施の形態3の多出力DC−DCコンバータにおいては、2つの昇圧出力と1つの反転出力の場合について説明する。
【0066】
図6に示すように、実施の形態3の多出力DC−DCコンバータは、入力直流電源1から入力直流電圧Eiが入力されており、インダクタ2、スイッチ回路30A、ダイオード41、ダイオード42、ダイオード43、第1の出力コンデンサ51、第2の出力コンデンサ52、第3の出力コンデンサ53、及び制御回路100を具備している。スイッチ回路30Aは第1の主スイッチ31と補助スイッチ32と第2の主スイッチ33とにより構成されており、それぞれが例えばNチャネルMOSFETからなる。制御回路100は第1の主スイッチ31と補助スイッチ32と第2の主スイッチ33とをそれぞれ所定のオン期間とオフ期間で駆動制御する。ダイオード42は補助スイッチ32と直列回路を形成している。
【0067】
実施の形態3の多出力DC−DCコンバータにおいては、第1の出力電圧Vo1を第1の出力コンデンサ51から第1の負荷6へ出力し、第2の出力電圧Vo2を第2の出力コンデンサ52から第2の負荷10へ出力し、第3の出力電圧Vo3を第3の出力コンデンサ53から第3の負荷63へ出力する。入出力条件はVo1>Vo2>Ei>0>Vo3である。
【0068】
スイッチ回路30Aのオン状態とは、第1の主スイッチ31と第2の主スイッチ33がともにオン状態で、インダクタ2に入力直流電圧Eiが印加されている状態である。この時、補助スイッチ32のオンオフ状態は考慮しない。スイッチ回路30Aの第1のオフ状態とは、第1の主スイッチ31がオフ状態、第2の主スイッチ33がオン状態、そして補助スイッチ32がオフ状態である。第2の主スイッチ33がオン状態、及び補助スイッチ32がオフ状態の時、インダクタ2と第1の主スイッチ31とダイオード41とコンデンサ51が、昇圧コンバータを構成する。スイッチ回路30Aの第2のオフ状態とは、第1の主スイッチ31がオフ状態、第2の主スイッチ33がオン状態、そして補助スイッチ32がオン状態である。第2の主スイッチ33がオン状態、及び補助スイッチ32がオン状態の時、インダクタ2と第1の主スイッチ31とダイオード42とコンデンサ52が昇圧コンバータを構成する。スイッチ回路30Aの第3のオフ状態とは、第1の主スイッチ31がオン状態、そして第2の主スイッチ33がオフ状態である。この時、補助スイッチ32のオンオフ状態は考慮しない。第1の主スイッチ31がオン状態の時、第2の主スイッチ33とインダクタ2とダイオード43とコンデンサ53が反転コンバータを構成する。
【0069】
図6に示す制御回路100において、出力検出回路110は、第1の出力電圧Vo1と第2の出力電圧Vo2と第3の出力電圧Vo3を検出して、それぞれの出力電圧と所望値との誤差を求め、それぞれの誤差を増幅して誤差電圧Ve1、誤差電圧Ve2及び誤差電圧Ve3を出力する。実施の形態3の出力検出回路110は、前述の実施の形態1や実施の形態2の出力検出回路81に対して、反転出力が一つ増えているだけであり、基本的な動作は同様である。したがって、出力検出回路110の詳細な構成は省略する。
PWM回路130は、誤差電圧Ve1と鋸波電圧Vtとの比較結果である信号V1と、誤差電圧Ve2と鋸波電圧Vtとの比較結果である信号V2と、誤差電圧Ve3と鋸波電圧Vtとの比較結果である信号V3を出力する。実施の形態3においては、前述の実施の形態1や実施の形態2のPWM回路83に対して、反転出力を制御するための回路が増えているだけであり、基本的な動作は同様であるため、PWM回路130の詳細な構成は省略する。
【0070】
制御回路100において、過電圧保護回路111は、第1の出力電圧Vo1と第2の出力電圧Vo2と第3の出力電圧Vo3を検出し、それぞれの絶対値と最大設定値との比較結果である信号Vx1、信号Vx2及び信号Vx3を出力する過電圧検出回路112を有する。第1の出力電圧Vo1が過電圧状態になると信号Vx1がローレベルとなり、第2の出力電圧Vo2が過電圧状態になると信号Vx2がローレベルとなり、第3の出力電圧Vo3が過電圧状態になると信号Vx3がローレベルとなる。また、過電圧保護回路111は、信号Vx1、信号Vx2及び信号Vx3が入力されるNORゲート118を有し、全出力が過電圧状態になった場合にハイレベルの信号を出力してシャットダウン回路119を動作させる。即ち、第1の出力電圧Vo1と第2の出力電圧Vo2と第3の出力電圧Vo3がともに過電圧状態になると、シャットダウン回路119が動作する。シャットダウン回路119が動作すると、制御回路100はその動作を停止し、入力直流電圧Eiが充分低下しなければ復帰しないよう構成されている。
【0071】
発振回路92は、前述の実施の形態2で示した図4の発振回路92と同じ構成であり、所定の周期Tを有する鋸波電圧Vtと、クロック信号Vt1を出力する。
実施の形態3においては、2つの分周回路84及び140が設けられている。分周回路84は、クロック信号Vt1が入力され、分周信号Vt2を出力する。分周回路140は、分周信号Vt2が入力され、分周信号Vt3を出力する。
駆動回路150は、分周信号Vt2と分周信号Vt3が入力されるANDゲート151と、このANDゲート151の出力V32と信号V2が入力されるANDゲート152と、分周信号Vt2と分周信号Vt3の反転信号が入力されるANDゲート153と、信号V1と分周信号Vt2の反転信号が入力されるANDゲート154と、ANDゲート152とANDゲート153とANDゲート154の各出力の論理和である信号V31を出力するORゲート155と、信号V3と分周信号Vt2の反転信号と分周信号Vt3との論理和である信号V33を出力するORゲート156とを有する。また、駆動回路150は、信号Vx1と信号Vx2とが入力されるNORゲート161と、このNORゲート161の出力と信号V31が入力されるORゲート162と、このORゲート162の出力と信号Vx3が入力されるANDゲート163と、信号Vx1の反転信号と信号V32が入力されるORゲート164と、ORゲート164の出力と信号Vx3が入力されるANDゲート165と、信号Vx1と信号Vx2が入力されるORゲート166と、ORゲート166の出力と信号V33が入力されるANDゲート167と、ANDゲート167の出力と信号Vx3の反転信号が入力されるORゲート168とを有する。ANDゲート163は第1の主スイッチ31の駆動信号Vg31を出力し、ANDゲート165が補助スイッチ32の駆動信号Vg32を出力し、ORゲート168が第2の主スイッチ33の駆動信号Vg33を出力する。
【0072】
通常の動作時において、過電圧保護回路111からの信号Vx1、Vx2、及びVx3が全てハイレベルであるので、NORゲート161はローレベルの信号を出力し、ORゲート162は信号V31を出力し、ANDゲート163は信号V31を駆動信号Vg31として出力する。また、ORゲート164は信号V32を出力し、ANDゲート165は信号V32を駆動信号Vg32として出力する。また、ORゲート166はハイレベルの信号を出力し、ANDゲート167は信号V33を出力し、ORゲート168は信号V33を駆動信号Vg33として出力する。
【0073】
図7の(a)は、実施の形態3の多出力DC−DCコンバータにおける通常動作時の各信号及びインダクタ2を流れる電流ILを示す波形図である。以下に、図6と図7を用いて、本発明に係る実施の形態3の多出力DC−DCコンバータの通常時の動作について説明する。
まず、図7の(a)の時刻t0において、クロック信号Vt1によって分周信号Vt2はローレベルになるが、分周信号Vt3はローレベルのままであったとする。このとき、ANDゲート151の出力、即ち信号V32はローレベルであるので、駆動信号Vg32もローレベルとなり、補助スイッチ32はオフ状態となる。ANDゲート152及び153はいずれもローレベルの信号を出力し、ANDゲート154の出力する信号V1がORゲート155を介して、信号V31として出力される。即ち、駆動信号Vg31には、発振電圧Vtと誤差電圧Ve1との比較結果である信号V1が選択される。信号V1、即ち駆動信号Vg31のハイレベルにより、第1の主スイッチ31はオン状態となる。また、ORゲート156の出力、即ち信号V33はハイレベルであるので、駆動信号Vg33もハイレベルとなり、第2の主スイッチ33はオン状態となる。第1の主スイッチ31と第2の主スイッチ33はともにオン状態(スイッチ回路30Aはオン状態)なので、インダクタ2には入力直流電圧Eiが印加され、磁気エネルギーが蓄えられていく。
【0074】
時刻t1において、上昇してきた発振電圧Vtと誤差信号Ve1が交差すると、信号V1と駆動信号Vg31はローレベルとなり、主スイッチ31はオフ状態となる。この時、インダクタ2に蓄えられた磁気エネルギーは、補助スイッチ32がオフ状態(スイッチ回路30Aは第1のオフ状態)であるので、ダイオード41を介してコンデンサ51を充電する電流として放出される。これにより、インダクタ2の電流は減少していき、やがてゼロとなる。
【0075】
時刻t2において、クロック信号Vt1によって分周信号Vt2及び分周信号Vt3ともにハイレベルになり、発振電圧Vtは急減後上昇を開始する。ANDゲート151の出力、即ち信号V32はハイレベルとなり、駆動信号Vg32もハイレベルとなって補助スイッチ32はオン状態となる。ANDゲート152は信号V2を出力し、ANDゲート153及び154はいずれもローレベルを出力するので、信号V2がORゲート155を介して信号V31として出力される。即ち、駆動信号Vg31には、発振電圧Vtと誤差電圧Ve2との比較結果である信号V2が選択される。信号V2、即ち駆動信号Vg31のハイレベルにより、第1の主スイッチ31はオン状態となる。また、ORゲート156の出力、即ち信号V33はハイレベルであるので、駆動信号Vg33もハイレベルとなり、第2の主スイッチ33はオン状態となる。このとき、スイッチ回路30Aはオン状態となり、インダクタ2には入力直流電圧Eiが印加され、磁気エネルギーが蓄えられていく。
【0076】
時刻t3において、上昇してきた発振電圧Vtが誤差信号Ve2と交差すると、信号V2と駆動信号Vg31はローレベルとなり、第1の主スイッチ31はオフ状態となる。この時、インダクタ2に蓄えられた磁気エネルギーは、補助スイッチ32がオン状態(スイッチ回路30Aは第2のオフ状態)であるので、ダイオード42を介してコンデンサ52を充電する電流として放出される。これにより、インダクタ2の電流は減少していき、やがてゼロとなる。
【0077】
時刻t4において、クロック信号Vt1によって分周信号Vt2はローレベルになるが、分周信号Vt3はハイレベルのままであり、発振電圧Vtは急減後再び上昇を開始する。ANDゲート151の出力はローレベルであるので、駆動信号Vg32もローレベルとなって補助スイッチ32はオフ状態となる。ANDゲート152及び153はいずれもローレベルを出力し、ANDゲート154の出力する信号V1がV31として出力される。即ち、駆動信号Vg31には信号V1が選択され、信号V1、即ち駆動信号Vg31のハイレベルにより、第1の主スイッチ31はオン状態となる。また、ORゲート156の出力、即ち信号V33はハイレベルであるので、駆動信号Vg33もハイレベルとなり、第2の主スイッチ33はオン状態となる。第1の主スイッチ31と第2の主スイッチ33はともにオン状態(スイッチ回路30Aはオン状態)となるので、インダクタ2には入力直流電圧Eiが印加され、磁気エネルギーが蓄えられていく。
【0078】
時刻t5において、信号V1と駆動信号Vg31はローレベルとなり、主スイッチ31はオフ状態となる。このとき、補助スイッチ32がオフ状態(スイッチ回路30Aは第1のオフ状態)であるので、インダクタ2の電流はダイオード41を介してコンデンサ51を充電する。そして、インダクタ2の電流は減少していき、やがてゼロとなる。時刻t4と時刻t5における動作は時刻t0と時刻t1における動作と同様である。
【0079】
時刻t6において、クロック信号Vt1によって分周信号Vt2がハイレベルになり、分周信号Vt3がローレベルになり、発振電圧Vtは急減後上昇を開始する。ANDゲート151の出力、即ち信号V32はローレベルとなり、駆動信号Vg32もローレベルとなって補助スイッチ32はオフ状態となる。ANDゲート152及び154はいずれもローレベルの信号を出力するが、ANDゲート153はハイレベルの信号を出力する。これにより、ORゲート155を介して出力される信号V31、即ち駆動信号Vg31はハイレベルになり、第1の主スイッチ31はオン状態となる。また、ORゲート156の出力、即ち信号V33は信号V3が選択される。信号V3、即ち駆動信号Vg33もハイレベルとなり、第2の主スイッチ33はオン状態となる。スイッチ回路30Aはオン状態となり、インダクタ2には入力直流電圧Eiが印加され、磁気エネルギーが蓄えられていく。
【0080】
時刻t7において、上昇してきた発振電圧Vtが誤差信号Ve3と交差すると、信号V3と駆動信号Vg33はローレベルとなり、第2の主スイッチ33はオフ状態となる。このとき、インダクタ2に蓄えられた磁気エネルギーは、第1の主スイッチ31がオン状態(スイッチ回路30Aは第3のオフ状態)であるので、ダイオード43を介してコンデンサ53を充電する電流として放出される。これにより、インダクタ2の電流は減少していき、やがてゼロとなる。
【0081】
時刻t8において、クロック信号Vt1によって分周信号Vt2はローレベルになるが、分周信号Vt3はローレベルのままである。スイッチ回路30Aは再びオン状態となり、時刻t8以降の動作は時刻t0以降の動作を繰り返す。
【0082】
インダクタ2のインダクタンスをL、スイッチング周期をT、スイッチ回路30Aが第1のオフ状態になる前のオン状態の期間をTon1、スイッチ回路30Aが第2のオフ状態になる前のオン状態の期間をTon2、スイッチ回路30Aが第3のオフ状態になる前のオン状態の期間をTon3とする。また、第1の負荷6への出力電流をIo1、第2の負荷10への出力電流をIo2、第3の負荷63への出力電流をIo3とする。ダイオード41、ダイオード42及びダイオード43の順方向電圧降下を無視すると、第1の出力電圧Vo1、第2の出力電圧Vo2、及び第3の出力電圧Vo3のそれぞれは、下記の式(7)、式(8)及び式(9)に示す関係が成り立つ。
【0083】
【数7】
Figure 0004397617
【0084】
【数8】
Figure 0004397617
【0085】
【数9】
Figure 0004397617
【0086】
実施の形態3の多出力DC−DCコンバータにおいて、誤差電圧Ve1、Ve2及びVe3のそれぞれは、第1、第2及び第3の出力電圧Vo1、Vo2及びVo3が所望の電圧に安定化するよう増減し、スイッチ回路30Aの各オン状態の期間が調整される。即ち、実施の形態3の多出力DC−DCコンバータにおいては、インダクタ2を共有する2つの昇圧コンバータと1つの反転コンバータが、時分割制御されることによって、第1、第2及び第3の出力電圧Vo1、Vo2及びVo3のそれぞれを所望の電圧に安定化させている。なお、上記の実施の形態3において、第1の出力電圧Vo1の制御にはスイッチング周波数の2分の1が割当てられ、第2の出力電圧Vo2の制御にはスイッチング周波数の4分の1が割当てられ、第3の出力電圧Vo3の制御にはスイッチング周波数の4分の1が割当てられた例を示した。本発明の多出力DC−DCコンバータにおいては、それぞれの出力電力の制御にスイッチング周波数の割当は適宜好ましい割合に決められる。
【0087】
図7の(b)は、信号Vx1、Vx2及びVx3のハイ・ロー状態のそれぞれの状態に対する、ORゲート161、162とANDゲート163による駆動信号Vg31の状態、ORゲート164とANDゲート165による駆動信号Vg32の状態、ORゲート166、168とANDゲート167による駆動信号Vg33の状態を示したものである。
図7の(b)において、状態▲1▼は信号Vx1、Vx2及びVx3が全てハイレベルである通常動作状態である。また、状態▲8▼は信号Vx1、Vx2及びVx3が全てローレベルである異常状態であり、この場合にはNORゲート118がハイレベルを出力してシャットダウン回路119が動作する。
【0088】
以下、起動時や過負荷時のような状況において、いずれかの出力電圧が過電圧状態となった状態▲2▼〜▲7▼における動作について説明する。
図7の(b)において、状態▲2▼〜▲4▼は、例えば第1の負荷6が重くなって第1の出力電流Io1が過電流状態の場合である。この場合には、第1の出力電圧Vo1の制御に割当てられたスイッチング周期内において、インダクタ2を流れる電流がゼロにならなくなるといった現象が発生する。
【0089】
放出されずに残ったインダクタ2の磁気エネルギーが、次のスイッチング周期の第3のオフ状態(第1の主スイッチ31がオン状態、補助スイッチ32がオフ状態、第2の主スイッチ33がオフ状態)において、コンデンサ53を充電する電流として放出される。この放出電流の平均値が第3の負荷63での消費電流より大きいと、第3の出力電圧Vo3は過電圧状態となり、信号Vx3がローレベルとなる。状態▲2▼は、以上のような状態であり、信号Vx1及び信号Vx2がハイレベル、信号Vx3がローレベルである。この時、駆動信号Vg31がローレベルとなり、駆動信号Vg32が信号V32となるが、第3のオフ状態の継続であり、実施の形態3の回路構成では駆動信号Vg32がローレベルとなる。そして駆動信号Vg33がハイレベルとなり、スイッチ回路30Aは第1のオフ状態(第1の主スイッチ31がオフ状態、補助スイッチ32がオフ状態、第2の主スイッチ33がオン状態)となる。これにより、インダクタ2の磁気エネルギーの放出は第3の出力から第1の出力に移行し、第3の出力電圧Vo3の過電圧状態は回避される。
【0090】
状態▲3▼の場合、放出されずに残ったインダクタ2の磁気エネルギーは、次のスイッチング周期の第2のオフ状態(第1の主スイッチ31がオフ状態、第2の主スイッチ33がオン状態、そして補助スイッチ32がオン状態)において、コンデンサ52を充電する電流として放出される。この放出電流の平均値が第2の負荷10での消費電流より大きいと、第2の出力電圧Vo2は過電圧状態になり、信号Vx2がローレベルとなる。この時、駆動信号Vg31は信号V31であるが、第2のオフ状態からの継続でローレベルとなる。駆動信号Vg32はローレベル、駆動信号Vg33はV33となるが、第2のオフ状態からの継続でハイレベルとなる。即ち、スイッチ回路30Aは第1のオフ状態となる。これにより、インダクタ2の磁気エネルギーの放出は第2の出力から第1の出力に移行し、第2の出力電圧Vo2の過電圧状態は回避される。
【0091】
状態▲4▼の場合、第2の出力電圧Vo2と第3の出力電圧Vo3がともに過電圧状態になり、信号Vx2及び信号Vx3がローレベルとなる。この時、駆動信号Vg31はローレベル、駆動信号Vg32はローレベル、駆動信号Vg33はハイレベルとなる。即ち、スイッチ回路30Aは第1のオフ状態となる。インダクタ2の磁気エネルギーの放出は第1の出力に移行し、第2の出力電圧Vo2及び第3の出力電圧Vo3の過電圧状態は回避される。
【0092】
次に状態▲5▼の場合、例えば第2の出力電流Io2又は第3の出力電流Io3が過電流状態の場合である。第2の出力電圧Vo2又は第3の出力電圧Vo3の制御に割当てられたスイッチング周期内において、インダクタ2を流れる電流がゼロにならなくなるといった現象が発生する。放出されずに残ったインダクタ2の磁気エネルギーは、次のスイッチング周期の第1のオフ状態において、コンデンサ51を充電する電流として放出される。この放出電流の平均値が第1の負荷6での消費電流より大きいと、第1の出力電圧Vo1は過電圧状態となり、信号Vx1がローレベルとなる。この時、駆動信号Vg31は信号V31であるが、第1のオフ状態からの継続でローレベルとなる。駆動信号Vg33は信号V33となるが、第1のオフ状態からの継続でハイレベルとなる。そして駆動信号Vg32がハイレベルとなり、スイッチ回路30Aは第2のオフ状態となる。インダクタ2の磁気エネルギーの放出は第1の出力から第2の出力に移行し、第1の出力電圧Vo1の過電圧状態は回避される。
【0093】
状態▲6▼の場合、例えば第2の出力電流Io2が過電流状態で、他の出力電流が非常に少ない場合である。第2の出力電圧Vo2の制御に割当てられたスイッチング周期内において、放出されずに残ったインダクタ2の磁気エネルギーは、次のスイッチング周期の第1のオフ状態において、第1の出力電圧Vo1を過電圧状態にするとともに、さらに次のスイッチング周期の第3のオフ状態において、第3の出力電圧Vo3を過電圧状態にする。そして信号Vx1と信号Vx3がローレベルとなる。この時、駆動信号Vg31はローレベル、駆動信号Vg32はハイレベル、駆動信号Vg33はハイレベルとなる。即ち、スイッチ回路30Aは第2のオフ状態となる。インダクタ2の磁気エネルギーの放出は第2の出力に移行し、第1の出力電圧Vo1の過電圧状態及び第3の出力電圧Vo3の過電圧状態は回避される。
【0094】
状態▲7▼の場合、例えば第3の出力電流Io3が過電流状態で、他の出力電流が非常に少ない場合である。第3の出力電圧Vo3の制御に割当てられたスイッチング周期内において、放出されずに残ったインダクタ2の磁気エネルギーは、次のスイッチング周期の第1のオフ状態において、第1の出力電圧Vo1を過電圧状態にするとともに、さらに次のスイッチング周期の第2のオフ状態において、第2の出力電圧Vo2を過電圧状態にする。そして信号Vx1と信号Vx2がローレベルとなる。この時、駆動信号Vg31はハイレベル、駆動信号Vg32はローレベル、駆動信号Vg33はローレベルとなる。即ち、スイッチ回路30Aは第3のオフ状態となる。インダクタ2の磁気エネルギーの放出は第3の出力に移行し、第1の出力電圧Vo1の過電圧状態及び第2の出力電圧Vo2の過電圧状態は回避される。
【0095】
以上のように、本発明に係る上記の実施の形態3によれば、起動時や過負荷時のような場合に、1スイッチング周期内でインダクタ2に流れる電流がゼロにならず、出力電圧が上昇して制御不能となっても、その過電圧状態を検出して別の出力へインダクタ2に残った磁気エネルギーを放出させることにより、過電圧状態を回避することが可能となる。
【0096】
【発明の効果】
以上、実施の形態について詳細に説明したところから明らかなように、本発明は次の効果を有する。
本発明の多出力DC−DCコンバータは、主スイッチとインダクタを共有することによる少ない部品点数で、複数且つ任意の出力を高効率に制御できるという優れた効果を有する。
また、起動時や過負荷等の通常状態ではない場合においても、本発明の多出力DC−DCコンバータは、例えば実施の形態1に示したように、インダクタに流れる電流が1スイッチング周期内でゼロになった後、次の周期に移行するよう構成されているため、1スイッチング周期内で電流がゼロに至らないことに起因する過電圧状態を回避することができる。
さらに、本発明の多出力DC−DCコンバータにおいては、例えば実施の形態2及び実施の形態3に示したように、スイッチング周期を固定することにより、1スイッチング周期内で電流がゼロに至らない場合が発生するが、過電圧状態を検出して他の出力へ電流を放出するよう構成することにより、過電圧状態を回避することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る実施の形態1の多出力DC−DCコンバータの構成を示す回路図である。
【図2】本発明に係る実施の形態1の多出力DC−DCコンバータの動作を示す波形図である。
【図3】本発明に係る実施の形態1の多出力DC−DCコンバータの動作を示す波形図である。
【図4】本発明に係る実施の形態2の多出力DC−DCコンバータの構成を示す回路図である。
【図5】本発明に係る実施の形態2の多出力DC−DCコンバータの動作を示す波形図である。
【図6】本発明に係る実施の形態3の多出力DC−DCコンバータの構成を示す回路図である。
【図7】(a)は本発明に係る実施の形態3の多出力DC−DCコンバータの通常時の動作を示す波形図であり、(b)は本発明に係る実施の形態3の多出力DC−DCコンバータの過電圧状態における各信号の状態図である。
【図8】従来の多出力DC−DCコンバータの構成を示す回路図である。
【図9】従来の多出力DC−DCコンバータの構成を示す回路図である。
【図10】従来の多出力DC−DCコンバータの構成を示す回路図である。
【図11】従来の多出力DC−DCコンバータの動作を示す波形図である。
【図12】従来の多出力DC−DCコンバータにおける出力電流を示す波形図である。
【符号の説明】
1 入力直流電源
2 インダクタ
6 第1の負荷
10 第2の負荷
30 スイッチ回路
31 主スイッチ
32 補助スイッチ
41 ダイオード
42 ダイオード
51 第1の出力コンデンサ
52 第2の出力コンデンサ
80 制御回路
81 出力検出回路
82 発振回路
83 パルス幅変調回路
84 分周回路
85 駆動回路

Claims (4)

  1. 入力直流電圧が入力され、第1から第nの出力直流電圧を出力する第1から第nの出力回路と、スイッチ回路と、インダクタと、制御回路とを有する多出力DC−DCコンバータであって、
    前記スイッチ回路は、前記インダクタに前記入力直流電圧を印加して磁気エネルギーを蓄えるオン状態と、前記磁気エネルギーを前記第1から第nの出力回路のいずれかへ放出する第1から第nのオフ状態とを有し、
    前記制御回路は、前記スイッチ回路のスイッチング周期を第1から第nの出力の制御に振り分け、前記第1から第nの出力直流電圧を検出し、前記スイッチ回路の1スイッチング周期が第k(1≦k≦n)の出力の制御を担う場合には、前記第kの出力直流電圧を所定値となるように前記オン状態の期間を調整した後に第kのオフ状態を選択し、前記インダクタに蓄えられた前記磁気エネルギーが前記第kの出力回路への放出の終了を検出し、前記磁気エネルギーの放出が終了するまで前記第kのオフ状態を維持し、前記検出が成されると直ちに前記第kのオフ状態から前記オン状態に移行するよう構成されたことを特徴とする多出力DC−DCコンバータ。
  2. 前記スイッチ回路のスイッチング周期、もしくは前記第1から第nのオフ状態の期間が所定値より小さくならないよう構成されたことを特徴とする請求項1記載の多出力DC−DCコンバータ。
  3. 入力直流電圧が入力され、第1から第nの出力直流電圧を出力する第1から第nの出力回路と、スイッチ回路と、インダクタと、制御回路とを有する多出力DC−DCコンバータであって、
    前記スイッチ回路は、前記インダクタに前記入力直流電圧を印加して磁気エネルギーを蓄えるオン状態と、前記磁気エネルギーを前記第1から第nの出力回路のいずれかへ放出する第1から第nのオフ状態とを有し、
    前記制御回路は、前記スイッチ回路のスイッチング周期を第1から第nの出力の制御に振り分け、前記第1から第nの出力直流電圧を検出し、前記スイッチ回路の1スイッチング周期が第k(1≦k≦n)の出力の制御を担う場合には、前記第kの出力直流電圧を所定値となるように前記オン状態の期間を調整した後に第kのオフ状態を選択するとともに、前記第kの出力直流電圧に上限値を設け、前記第kの出力直流電圧が前記上限値を越えたとき、前記kの出力以外の出力の制御を担うスイッチング周期のオフ状態になるよう構成されたことを特徴とする多出力DC−DCコンバータ。
  4. 前記nは2であって(n=2)、前記第kの出力直流電圧が前記上限値を越えたとき、ひとつ前のスイッチング周期のオフ状態に戻すよう構成されたことを特徴とする請求項3記載の多出力DC−DCコンバータ。
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