(実施例1)
本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例1は、第2世代コードレス電話システムの端末装置に対応する。端末装置は、基地局装置とのタイミング同期を確立するために、オープンサーチを実行する。また、端末装置は、複数のアンテナを備えており、複数のアンテナによって、アダプティブアレイ信号処理を実行する。本実施例に係る端末装置は、オープンサーチとアダプティブアレイ信号処理による処理量の増加を抑制するために、以下のように動作する。端末装置は、複数のアンテナのうち、ひとつを有効にして、すなわち無指向性のアンテナ特性を実現しながら、オープンサーチを実行する。オープンサーチによって所定の基地局装置からの信号を受信すれば、端末装置は、それらの信号に対するタイミングを特定する。
端末装置は、特定したタイミングから同期窓を設定し、設定した同期窓の期間において、アダプティブアレイ信号処理を実行しながら、信号を受信する(以下、これを「アレイサーチ」という)。アレイサーチによって所定の基地局装置からの信号を受信すれば、端末装置は、そのうちのひとつの信号に対するタイミングを特定する。また、特定したタイミングに対応した基地局装置との通信を決定する。なお、一般的に、オープンサーチの期間は、所定の値(以下、「第1期間」という)に規定されている。そのため、端末装置は、第1期間よりも短い期間(以下、「第2期間」という)を規定し、端末装置は、第2期間以下の期間において、オープンサーチを実行する。その結果、端末装置は、第1期間の間にオープンサーチとアレイサーチを終了する。このように、通信システムにおいて規定されたオープンサーチの期間に、オープンサーチとアレイサーチを実行するので、処理量の増加を抑えつつ、検出精度を改善できる。
図1は、実施例1に係る通信システム100の構成を示す。通信システム100は、端末装置10、基地局装置14と総称される第1基地局装置14a、第2基地局装置14b、第3基地局装置14c、第4基地局装置14dを含む。また、端末装置10は、アンテナ12と総称される第1アンテナ12a、第2アンテナ12b、第4アンテナ12dを含む。
端末装置10は、複数の基地局装置14のうちのいずれか、あるいはふたつ以上の基地局装置14と通信をするために、基地局装置14のタイミングとの同期をはかる。しかしながら、初期の状態において、端末装置10は、いずれの基地局装置14ともタイミング同期を確立していないので、前述のオープンサーチを実行する。ここでは、説明を明瞭にするために、端末装置10は、複数の基地局装置14のうちのいずれかと通信を行うものとする。前提として、基地局装置14からの信号は、フレームを構成すべき複数のタイムスロット(以下、「スロット」という)のいずれかに割り当てられているものとする。また、複数の基地局装置14の間において、フレーム同期が確立しているものとする。
図2(a)−(b)は、フレームの構成とスロットの構成を示す。図2(a)は、第二世代コードレス電話システムのフレームの構成であって、ひとつのフレームは、8個のスロットを含む。8個のスロットのうちスロット1からスロット4は、下り回線の信号として使用され、一方、スロット5からスロット8は、上り回線の信号として使用される。ここで、下り回線のスロット1からスロット4のうち、スロット1が制御信号を伝送する。図2(b)は、スロット1の構成を示す。ここで、「R」はランプビットを示し、「SS」はスタートシンボルを示し、「PR」はプリアンブルを示し、「UW」はユニークワードを示し、「CAC」は制御信号を示し、「CRC」はCRC符号を示し、「G」はガードビットを示す。
なお、これらの記号の下に記載された数字は、それぞれに割り当てられたビット数を示す。図示の通り、ひとつのスロットは、「240ビット」のデータを含み、これは「120シンボル」のデータに相当する。そのため、AD変換される際の量子化ビット数を8ビットとすれば、1フレームあたりのデータ量は、15360ビットになる。一方、1スロットあたりのデータ量は、1920ビットになる。図1の端末装置10は、オープンサーチ時、およびアレイサーチ時に複数の基地局装置14から送信されるフレームの中から、スロット1に含まれたユニークワードを検出して、当該ユニークワードを含んだスロットを送信した基地局装置14とのタイミング同期を確立する。
図1に戻る。端末装置10は、オープンサーチを実行した後に、アレイサーチを実行する。アレイサーチの結果、端末装置10は、複数の基地局装置14のうちのいずれかとのタイミング同期を確立する。さらに、当該基地局装置14との通信を決定する。ここで、基地局装置14との通信を確立させるための手順は、公知の技術であるので、説明を省略する。なお、複数の基地局装置14は、図示しないネットワークに接続されている。
図3は、端末装置10の構成を示す。端末装置10は、アンテナ12と総称される第1アンテナ12a、第2アンテナ12b、第4アンテナ12d、無線部20と総称される第1無線部20a、第2無線部20b、第4無線部20d、処理部22、変復調部24、IF部26、同期部28、制御部30を含む。また信号として、無線部側信号200と総称される第1無線部側信号200a、第2無線部側信号200b、第4無線部側信号200d、変復調部側信号202、復調信号220、タイミング情報信号222を含む。
アンテナ12は、受信動作として、図示しない基地局装置14から無線周波数の信号を受信する。また、アンテナ12は、送信動作として、図示しない基地局装置14へ無線周波数の信号を送信する。なお、受信動作と送信動作のタイミングは、後述の制御部30によって制御される。アンテナ12は、アダプティブアレイアンテナ技術に対応しており、アンテナの指向性は、後述の処理部22によって制御される。ここで、アンテナ12の数を「4」とするが、これ以外の数であってもよい。
無線部20は、受信動作として、アンテナ12において受信した無線周波数の信号を周波数変換し、ベースバンドの信号を導出する。無線部20は、ベースバンドの信号を無線部側信号200として処理部22に出力する。一般的に、ベースバンドの信号は、同相成分と直交成分によって形成されるので、ふたつの信号線によって伝送されるべきであるが、ここでは、図を明瞭にするためにひとつの信号線として示すものとする。また、AGCやA/D変換部も含まれる。無線部20は、送信動作として、処理部22からのベースバンドの信号を周波数変換し、無線周波数の信号を導出する。ここで、処理部22からのベースバンドの信号も無線部側信号200として示す。無線部20は、無線周波数の信号をアンテナ12に出力する。また、PA(Power Amplifier)、D/A変換部も含まれる。
処理部22は、オープンサーチの期間において、アダプティブアレイ信号処理を実行せずに、基地局装置14からの信号、ここでは無線部側信号200を連続的に入力する。すなわち、処理部22は、複数の無線部側信号200のうちのいずれかを有効にして、それを変復調部側信号202として、変復調部24に出力する。このような処理は、複数の無線部側信号200に対するウエイトベクトルにおいて、ひとつ以外の無線部側信号200に対する値を「0」とすることに相当する。その結果、オープンサーチの期間において、変復調部側信号202は、無指向性のアンテナによって受信した結果と等価になる。
処理部22は、アレイサーチの期間において、アダプティブアレイ信号処理を実行しつつ、無線部側信号200を入力する。このとき、後述の制御部30によって指定されたタイミングにおいて、無線部側信号200を連続的に入力する。なお、無線部側信号200が入力されるタイミングは、制御信号が割り当てられたスロットのタイミングに相当する。処理部22は、アダプティブアレイ信号処理の結果を変復調部側信号202として出力する。
処理部22は、アレイサーチの期間終了後、通信における受信動作として、複数の無線部側信号200に対して、アダプティブアレイ信号処理を実行する。また、処理部22は、送信動作として、変復調部24から入力した変復調部側信号202に対してアダプティブアレイ信号処理を実行する。さらに、処理部22は、アダプティブアレイ信号処理した信号を無線部側信号200として出力する。
変復調部24は、受信処理として、処理部22からの変復調部側信号202に対して、復調を実行する。変復調部24は、復調した信号を復調信号220として、IF部26に出力する。また、変復調部24は、送信処理として、変調を実行する。変復調部24は、変調した信号を変復調部側信号202として処理部22に出力する。ここで、変調方式には、第二世代コードレス電話システムに対応したπ/4シフトQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)を使用する。一方、復調は、遅延検波あるいは同期検波を行う。
IF部26は、図示しない表示部や図示しない入力部と接続し、受信処理として、復調信号220を図示しない表示部に出力する。また、IF部26は、送信処理として、図示しない入力部からデータを入力し、これを変復調部24に出力する。なお、音声通信の場合、IF部26は、図示しないマイクやスピーカとのインターフェースになる。
同期部28は、復調信号220を入力する。オープンサーチの期間において、同期部28は、連続的に入力した復調信号220から、少なくともひとつの基地局装置14からの制御信号を検出する。制御信号の検出のために、同期部28は、ユニークワードを予め保持しており、保持したユニークワードと入力した復調信号220との相関を計算する。さらに、同期部28は、相関値のピークをしきい値と比較し、しきい値を超えた場合に、制御信号を検出したとする。なお、制御信号の「CAC」には、当該制御信号を送信した基地局装置14の識別番号(以下、「ID」という)が含まれており、同期部28は、制御信号を検出する際にIDも検出する。同期部28は、予め定めた数だけ制御信号を検出するまで以上の処理を実行し、予め定めた数だけ制御信号を検出すると、オープンサーチを終了する。また、同期部28は、予め定めた数だけ制御信号を検出しない場合であっても、第2期間になれば、オープンサーチを終了する。なお、同期部28は、検出した信号の強度を測定し、これを記憶する。ただし、同期部28は、オープンサーチによって制御信号をひとつも検出できないとき、第1期間まで、オープンサーチを継続する。
さらに、オープンサーチの期間において、同期部28は、検出した制御信号のタイミングを特定する。タイミングは、前述の相関値のピークに対応したタイミングを検出することによって、特定される。さらに、同期部28は、特定したタイミングから、複数のスロットのそれぞれに対するタイミングも特定する。すなわち、相関値のピークに対応したタイミングは、図2(b)のUWのタイミングに相当するので、これをスロットに対するタイミングに変換する。例えば、UWのタイミングを前方にシフトすることによって、スロットに対するタイミングを特定する。
図4は、同期部28に記憶された情報のデータ構造を示す。データは、No.欄150、タイミング欄152、ID欄154、受信レベル欄156によって構成される。No.欄150は、検出した制御信号に対して付与した番号を示す。タイミング欄152は、制御信号を割り当てたスロットのタイミングを示す。なお、タイミングは、「A」から「F」と示されているが、実際はタイミングを示す数値が入るものとする。ID欄154は、当該制御信号を送信した基地局装置14のIDを示す。同期部28は、タイミング欄152に含まれたタイミングでのサーチを決定し、その旨をタイミング情報信号222として出力する。すなわち、タイミング欄152に含まれたタイミングに対応したスロットが、アレイサーチの対象となる。また、受信レベル欄156は、同期部28において検出された信号の強度を示す。
図3に戻る。アレイサーチの期間においても、同期部28は、復調信号220を入力する。また、同期部28は、復調信号220から、少なくともひとつの基地局装置14からの制御信号を検出する。検出は、スロットの先頭部分(以下、「同期窓」ともいう))においてなされる。このようなスロットの先頭部分は、特定したタイミングをもとにした期間といえる。オープンサーチによってスロットのタイミング同期がある程度なされているので、アレイサーチの期間を限定できる。アレイサーチの期間において、制御信号を検出するタイミングが、オープンサーチの期間でのタイミングと異なるが、検出方法等は、オープンサーチの場合と同一である。同期部28は、アレイサーチの結果、検出した制御信号のうちのひとつを選択し、選択した制御信号に対するタイミングを再び特定する。選択は、例えば、制御信号の信号強度にもとづいて行う。そのとき、同期部28は、信号強度が最大となる制御信号を選択する。その際、前述の記憶した信号の強度を使用する。
タイミングの特定は、オープンサーチの場合と同様に実行される。なお、端末装置10が複数の基地局装置14と通信する場合、同期部28は、複数の制御信号を選択し、それらに対するタイミングを特定する。同期部28は、タイミングを特定する際に、IDを使用しながら、当該タイミングに対応した基地局装置14も特定する。同期部28は、特定したタイミングおよび基地局装置14をタイミング情報信号222として出力する。なお、アレイサーチは、少なくとも第1期間になれば、終了する。
制御部30は、端末装置10に含まれた構成要素の動作を制御する。オープンサーチが終了するときに、制御部30は、タイミング情報信号222を介して、タイミングを取得する。さらに、制御部30は、当該タイミング、特にスロットの先頭部分での動作を処理部22に指示する。また、制御部30は、処理部22にアダプティブアレイ信号処理の実行を指示する。一方、アレイサーチが終了するときに、制御部30は、タイミング情報信号222を介して、通信対象にすべき基地局装置14と当該基地局装置14に対するタイミングを取得する。制御部30は、当該基地局装置14との通信を決定し、当該基地局装置14との通信を実行するように、端末装置10に含まれた構成要素の動作を制御する。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリのロードされたタイミング同期機能のあるプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
図5は、処理部22の構成を示す。処理部22は、合成部42、参照信号生成部44、受信ウエイトベクトル計算部54、分離部46、送信ウエイトベクトル計算部52を含む。また、合成部42は、乗算部56と総称される第1乗算部56a、第2乗算部56b、第4乗算部56d、加算部60を含む。また、分離部46は、乗算部58と総称される第1乗算部58a、第2乗算部58b、第4乗算部58dを含む。
乗算部56は、受信ウエイトベクトル計算部54からの受信ウエイトベクトルによって、無線部側信号200のそれぞれを重み付けし、加算部60は乗算部56の出力を加算する。ここで、加算された信号が、変復調部側信号202として示される。なお、乗算部56と加算部60の処理が、重み付けを行いながらの合成に相当する。なお、前述のごとく、オープンサーチの期間においては、受信ウエイトベクトルのうちのひとつだけが有効であるので、第1乗算部56aだけが、無線部側信号200を出力する。また、加算部60は、入力した無線部側信号200をそのまま出力する。その結果、オープンサーチの期間において、変復調部側信号202は、第1無線部側信号200aに等しくなる。
参照信号生成部44は、トレーニング信号の期間中において予め記憶したトレーニング信号を参照信号として出力する。またこれらの期間以外は、予め規定しているしきい値によって、変復調部側信号202を判定し、その結果を参照信号として出力する。なお、判定は硬判定でなく、軟判定でもよい。ここで、図2(b)のごとく、端末装置との通信は、所定のスロットにおいてなされる。第二世代コードレス電話システムでは、スロットの先頭部分にプリアンブルが配置される。プリアンブルは、既知の信号であるので、トレーニング信号に相当する。
受信ウエイトベクトル計算部54は、無線部側信号200、変復調部側信号202、参照信号にもとづいて、受信ウエイトベクトルを導出する。受信ウエイトベクトルの導出方法は、任意のものでよく、そのひとつはLMS(Least Mean Squeare)アルゴリズムによる導出である。
送信ウエイトベクトル計算部52は、受信ウエイトベクトルから、変復調部側信号202の重み付けに必要な送信ウエイトベクトルを推定する。送信ウエイトベクトルの推定方法は、任意とするが、最も簡易な方法として、受信ウエイトベクトルをそのまま使用すればよい。あるいは、受信処理と送信処理との時間差によって生じる伝搬環境のドップラー周波数変動を考慮し、従来の技術によって、受信ウエイトベクトルを補正してもよい。なお、ここでは、受信ウエイトベクトルをそのまま送信ウエイトベクトルに使用するものとする。なお、オープンサーチとアレイサーチの期間においては信号を送信しないので、送信ウエイトベクトル計算部52は、通信が開始されてから動作する。乗算部58は、送信ウエイトベクトルによって、変復調部側信号202を重み付けし、その結果を無線部20に出力する。
図6は、同期部28の構成を示す。同期部28は、信号検出部110、ID取得部112、カウンタ114、特定部116を含む。信号検出部110は、復調信号220から制御信号、特にユニークワードを検出する。前述のごとく、信号検出部110は、相関によって、制御信号の検出を実行する。信号検出部110は、制御信号を検出したとき、その旨を特定部116に通知する。以上の処理は、オープンサーチの期間において、連続して実行されるが、アレイサーチの期間において、スロットの先頭部分にて実行される。
カウンタ114は、復調信号220のサンプリングレートに対応したタイミングにおいて、カウントアップを実行する。カウンタ114は、所定の周期でカウントアップした値をリセットするが、所定の周期を整数倍した期間が、ひとつのフレームの期間に相当する方が望ましい。以上の処理は、オープンサーチとアレイサーチに関係なく、実行される。
ID取得部112は、復調信号220から、基地局装置14のIDを取得する。すなわち、ID取得部112は、前述のごとく、図2(b)の「CAC」からIDを取得する。そのために、信号検出部110から制御信号の検出を取得し、「CAC」のタイミングを特定する。
特定部116は、信号検出部110から制御信号の検出を通知されたときに、カウンタ114からカウントアップの値を取得する。すなわち、制御信号の検出時におけるカウントアップの値を前述のタイミングとして特定する。さらに、特定部116は、特定したタイミングから、スロットのタイミングを特定する。また、特定部116は、特定したタイミングに対応した基地局装置14のIDをID取得部112から受けつける。以上の処理は、オープンサーチとアレイサーチに関係なく、実行される。オープンサーチの場合に、これらの情報にもとづいて、特定部116は、図4に示したデータを記憶する。
また、検出された制御信号の数、あるいはオープンサーチの期間から、特定部116は、オープンサーチの終了を決定する。さらに、オープンサーチの終了を決定したときに、特定部116は、オープンサーチの終了、すなわちアレイサーチの開始をタイミング情報信号222として出力する。一方、アレイサーチの場合に、前述のごとく、ひとつのタイミングおよび基地局装置14を選択する。さらに、特定部116は、ひとつのタイミングおよび基地局装置14をタイミング情報信号222として出力する。これは、当該基地局装置14との通信の指示に対応する。
図7は、端末装置10が動作すべきタイミングの概要を示す。最上段に図2(a)と同様のフレームを示す。ここでは、基地局装置14との通信を開始する前の処理に対応するので、スロット1からスロット8は、上り回線あるいは下り回線に区別されない。そのため、便宜上、フレームに相当した期間に含まれた8つのスロットに対して、単にスロット1からスロット8の番号を付与している。オープンサーチの場合、8つのスロットのすべての期間において、端末装置10が動作する。すなわち、前述のごとく、制御信号の検出が、連続的に実行される。オープンサーチの結果、スロットに対応したタイミングが検出される。ここで、スロットの先頭のタイミングが検出される。
そのため、アレイサーチの場合、図示のごとく、スロットの先頭部分の期間において、端末装置10が動作する。なお、スロットの先頭部分の期間は、オープンサーチによって検出されたタイミングにもとづいて決定される。アレイサーチの結果、端末装置10は、スロット1、スロット2、スロット6、スロット7のいずれかに対応した基地局装置14での通信を決定したとする。また、当該基地局装置14によって割り当てられた通信用のスロットがスロット4とスロット8である。スロット4とスロット8のうちの一方が、上り回線のスロットに相当し、他方が、下り回線のスロットに相当する。その結果、通信の場合、スロット4、スロット8において、端末装置10が動作する。そのため、フレーム全体に対する制御信号の検出とアダプティブアレイ信号処理を別々のタイミングで実行しつつ、両方とも実行できる。
以上の構成による端末装置10の動作を説明する。図8は、端末装置10において、タイミング同期の確立手順を示すフローチャートである。処理部22は、アンテナ12の特性を無指向性に設定し、同期部28は、オープンサーチを実行する(S10)。信号検出部110が制御信号を検出すれば(S12のY)、特定部116は、当該制御信号に対応したタイミングとIDとを記録する(S14)。信号検出部110が制御信号を検出しなければ(S12のN)、ステップ14をスキップする。特定部116は、所定数のタイミングを検出した場合(S16のY)、あるいは所定数のタイミングを検出しなくても(S16のN)、第2期間を経過した場合(S18のY)、特定部116は、アレイサーチのための同期窓を開くタイミングを設定する(S20)。一方、第2期間を経過していなければ(S18のN)、ステップ10に戻る。設定された同期窓の期間において、処理部22と同期部28は、アレイサーチを実行する(S22)。特定部116は、通信対象となる基地局装置14とタイミングを特定する(S24)。なお、アレイサーチは、遅くとも第1期間の終了まで実行される。端末装置10は、当該基地局装置14と通信する(S26)。
図9は、オープンサーチの手順を示すフローチャートである。これは、図8のステップ10に相当する。変復調部24は、変復調部側信号202を復調し(S30)、復調信号220を出力する。信号検出部110は、変復調部側信号202に対してユニークワードサーチを実行する(S32)。また、信号検出部110は、ユニークワードサーチを実行した変復調部側信号202に対してCRC(Cyclic Redundancy Check)チェックを実行する(S34)。ユニークワードを検出し、かつCRCチェックにおいて誤りを検出しなかった場合が、ユニークワードを検出した場合に相当する。信号検出部110がユニークワードを検出した場合(S36のY)、特定部116は、当該ユニークワードを含んだ制御信号のタイミングとIDを取得する(S38)。一方、信号検出部110がユニークワードを検出しなかった場合(S36のN)、ステップ30に戻る。
本発明の実施例によれば、第1段階として、アダプティブアレイ信号処理を実行せずに連続的に受信した信号からタイミングを特定し、第2段階として、第1段階において特定したタイミングをもとに、アダプティブアレイ信号処理を一部の期間において実行しながらタイミングを特定するので、連続的な制御信号の検出とアダプティブアレイ処理の実行とのタイミングをずらすことができる。また、連続的な制御信号の検出とアダプティブアレイ処理を実行するので、処理量の増加を抑えつつ、検出精度を改善できる。また、アダプティブアレイ信号処理を実行すべき期間は、タイムスロットの一部の期間であるので、当該期間以外の期間においてアダプティブアレイ信号処理を停止できる。また、最初に無指向性のアンテナ特性によって、連続的に信号を受信するので、ある程度の信号強度を有した信号を検出できる。
また、オープンサーチとアレイサーチを第1期間の間に終了するので、通信システムに与える影響を小さくできる。また、オープンサーチから、アレイサーチへの切替は、検出した制御信号の数によって行われるので、アレイサーチにおいて制御信号が検出できないという状況を低減できる。また、オープンサーチにおいて検出できた制御信号の数が小さくても、第2期間を経過すれば、オープンサーチからアレイサーチに切りかわるので、切替を実行できる。また、基地局装置が所定のスロットに信号を割り当ててから送信を実行する場合であっても、スロットに対するタイミングを特定できる。また、アダプティブアレイ信号処理の実行を停止する期間も存在するので、処理量の増加を抑えることができる。また、タイミングの特定を行いつつ、当該タイミングに対応した基地局装置も特定できる。また、タイミング同期を確立した後の通信の段階に進行できる。
(実施例2)
本発明の実施例2は、実施例1と同様に、オープンサーチを実行してから、アレイサーチを実行する端末装置に関する。実施例2では、オープンサーチをリアルタイムに実行せずに、復調された信号をメモリに記憶してから、メモリに記憶された信号に対して、オープンサーチを実行する。このような処理によれば、ユニークワードの検出に要する期間が、信号を受信するために要する期間よりも短い場合に、検出処理の間欠的な動作が可能であるので、処理の停止期間を長くできる。その結果、消費電力の低減も可能である。さらに、一旦記憶した信号を処理するので、より高度な処理も可能になり、ユニークワードの検出精度も向上できる。しかしながら、オープンサーチにおいて、すべてのスロットを記憶する必要があるので、処理に必要なメモリの記憶容量が大きくなってしまう。
実施例2では、以下のように処理することによって、メモリの記憶容量を小さくする。端末装置は、1スロットに相当したデータ量を記憶可能なメモリを備え、受信したデータを当該メモリに巡回的に上書きしながら記憶する。一方、ユニークワード検出は、1/2スロットに相当したデータ単位(以下、「検出単位」という)で行い、さらに検出単位に相当したデータのメモリへの記憶処理よりも高速に処理される。その結果、メモリに記憶したデータがフルになる前に、ユニークワード検出を実行したデータが削除されるので、メモリの記憶容量が、1スロットに対応したデータ量であっても、受信したデータを欠落させることなくユニークワード検出の処理が可能になる。
図10は、実施例2に係る同期部28の構成を示す。ここでは、処理部22、変復調部24も示す。同期部28は、BBコントローラ部120、OSC122、記憶部124、UW検出部126、基地局情報格納部128を含む。また信号として、サンプルカウンタ値204、スロットカウンタ値206、サンプリングクロック208を含む。なお、説明を明瞭にするために、以下の処理はオープンサーチの場合を対象にするが、アレイサーチの場合においても、同様の処理が実行される。
OSC122は、一定間隔のタイミングを示したサンプリングクロック208を出力する。BBコントローラ部120は、サンプリングクロック208によって、変復調部側信号202に含まれたデータに番号を割り当て、当該番号が与えれられた変復調部側信号202を出力する。最終的には、当該番号にもとづいて、所定の基地局装置14からのスロットに対するタイミングを記憶する。具体的には、データの番号を示すためにサンプルカウンタ値204とスロットカウンタ値206を出力する。スロットカウンタ値206はスロットの番号nを示し、サンプルカウンタ値204はスロット内のデータの番号mを示す。スロット開始位置をfとすれば、受信した信号のタイミング番号xは、次の通り示される。
(数1)
x = f+n×m
記憶部124は、サンプルカウンタ値204で示された番号mに対応したアドレスに変復調部側信号202を記憶する。記憶部124の記憶容量は、1スロット分のデータ量であり、これは、前述の番号mの最大値に相当する。1スロットの期間が終了すれば、番号mはリセットされるため、変復調部側信号202は巡回的に上書きされる。
UW検出部126は、記憶部124に記憶された信号に対して、検出単位でユニークワード検出を実行する。ユニークワードが検出された場合、対応するSSのタイミング番号を変復調部24に報告する。また、ひとつの基地局装置14に対するタイミングが、無線伝搬環境の影響で複数検出される場合もあるが、UW検出部126は受信電力値等にもとづいてひとつのタイミングを選択する。UW検出部126は、ひとつのスロットの期間より短い期間をひとつの検出単位としながら、記憶された信号からユニークワードを間欠的に検出する。なお、UW検出部126は、記憶部124のうち、複数の検出単位にわたってユニークワードが記憶されている場合に、これを検出するために、複数の検出単位に含まれたユニークワードを検出する
変復調部24は、前述のごとく、変復調部側信号202を遅延検波する。UW検出部126からSSのタイミング番号の報告を受けた場合、それに対応したCRCのタイミング番号にもとづいてCRCチェックを行う。CRCチェックの結果、CRCエラーがなければタイミングを検出できたとする。そのとき、UW検出部126は、SSのタイミング番号をスロットの先頭のタイミングに決定する。なお、実施例1のように、CRCチェックが、同期部28においてなされてもよい。基地局情報格納部128は、オープンサーチの際に検出した基地局装置14のタイミング番号やその他の情報を記憶する。記憶内容の詳細については、後述する。
図11は、BBコントローラ部120の構成を示す。BBコントローラ部120は、サンプルカウンタ70、スロットカウンタ72、バッファ74を含む。サンプルカウンタ70は、サンプリングクロック208のタイミングにおいて、サンプルカウンタ値204を生成する。ひとつのスロットは前述のごとく120シンボルであり、ひとつのシンボルを100倍サンプリングしているので、サンプルカウンタ値204によって示される番号mは、0から11999の値になる。スロットカウンタ72は、スロットカウンタ値206を示す。バッファ74は、サンプルカウンタ値204とスロットカウンタ値206に変復調部側信号202を対応づける。
図12は、UW検出部126の動作概要を示す。ここでは、x番目のスロットxとx+1番目のスロットx+1を処理の対象として、スロットx+1に含まれたユニークワードを検出する場合を説明する。記憶部124には、1スロットに対応したデータが記憶されるので、図中の「書き込み対象データ」と示した期間のデータが、左端をスタートアドレスとして書き込まれる。UW検出部126はユニークワード検出のために、図中の「読み出し対象データ」と示した区間のデータを2回に分けて読み出す。さらに、読み出したデータの期間の先頭や最後尾にユニークワードの一部が含まれている場合を考慮して、その前後のデータを含めた形で、図中の「UW検出対象データ」と示した期間においてユニークワード検出が実行される。ユニークワードがふたつの検出単位にまたがっている場合を考慮して、UW検出対象データは、検出単位に対して、ユニークワードの長さからひとつのシンボル長を減じたデータ量だけシフトされている。ここでは、ふたつ目の「読み出し対象データ」に対してユニークワード検出を行った場合に、ユニークワードが検出される。
図13は、基地局情報格納部128に記憶された情報のデータ構造を示す。図13のデータ構造は、図4のデータ構造と同様に、No.欄150、タイミング欄152、ID欄154を有する。ここで、タイミング欄152には、スロットの先頭に対応したタイミング番号が入力される。ここでは、5つの基地局装置14が検出されている。スロットの先頭に対応したタイミングTssは、ユニークワードに対応したタイミングTuwをもとに、次の計算によって導出される。
(数2)
Tss=Tuw−Cpr−Css
ここで、Cprは、プリアンブルの期間に対応したカウント値、Cssは、スタートシンボルの期間に対応したカウント値を示す。すなわち、プリアンブルの期間とスタートシンボルの期間によって、ユニークワードに対応したタイミングを前方にシフトさせることによって、スロットの先頭に対応したタイミングが導出される。UW検出部126は、複数のスロットの先頭に対応したタイミングに対して、数1を適用し、数1のf、すなわちスロット開始位置を導出する。
以上の構成による端末装置10の動作を説明する。図14は、タイミングを取得する処理を示すフローチャートである。記憶部124は、受信した変復調部側信号202を記憶する(S60)。変復調部側信号202が記憶部124に検出単位分記憶されていなければ(S62のN)、UW検出部126はユニークワード検出を行わずに、変復調部側信号202が記憶されるのを待つ。一方、変復調部側信号202が記憶部124に検出単位分記憶されれば(S62のY)、UW検出部126は間欠的にユニークワード検出を行う。ユニークワードを検出できなければ(S64のN)、ステップ60からの処理を繰り返す。
一方、ユニークワードを検出できれば(S64のY)、ユニークワードに対応したスロットの先頭のタイミングを基地局情報格納部128に記憶する(S66)。また、変復調部24が変復調部側信号202を復調し、復調信号220を基地局情報格納部128に記憶する(S68)。さらに、変復調部24がCRCチェックを行って(S70)、CRCエラーがなければ(S72のY)、スロットの先頭のタイミングを取得する(S74)。一方、CRCエラーがあれば(S72のN)、ステップ60からの処理を繰り返す。
図15は、受信したデータを記憶する処理を示すフローチャートである。サンプルカウンタ70は、sample_countを0に設定する(S80)。なお、sample_countは前述のスロット内のデータの番号mと同一である。sample_countが12000以上でなければ(S82のN)、BBコントローラ部120は、sample_countをデータ格納アドレスとして、記憶部124に変復調部側信号202を出力する(S84)。一方、sample_countが12000以上になれば(S82のY)、sample_countをリセットする。変復調部側信号202が終了しなければ(S86のN)、sample_countに1を加算する(S88)。以上の処理は、変復調部側信号202が終了するまで(S86のY)実行する。
以上の構成による端末装置10の動作を説明する。処理部22は、無線部側信号200を受けつけ、アダプティブアレイ信号処理を実行せずに、変復調部側信号202として出力する。BBコントローラ部120は、タイミングを示す番号を割り当てながら、変復調部側信号202を記憶部124に1スロット単位で記憶する。UW検出部126は、検出単位によって、記憶部124に記憶されたデータに対してユニークワード検出を実行する。ユニークワードが検出されれば、変復調部24は復調した後にCRCチェックを実行する。CRCエラーがなければ、スロットの先頭に対応した番号をタイミングとして、基地局情報格納部128に記憶する。以上の動作を複数の基地局装置14に対して行い、所定の条件になれば、オープンサーチを終了する。オープンサーチ終了後、アレイサーチが実行される。
本発明の実施例によれば、受信したデータを記憶する容量が、1スロットに相当したデータ量ですむために、記憶容量を削減できる。また、記憶部に受信した信号を記憶するための処理期間よりも短い期間で、ユニークワードの検出処理を実行できるため、ユニークワードの検出処理を間欠的に実行でき、処理効率を向上できる。また、一旦データを記憶するため、複雑な処理も可能になり、ユニークワードの検出確率を向上できる。
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
本発明の実施例1と2において、通信システム100は簡易型携帯電話システムとして説明した。しかしながらこれに限らず、通信システム100は携帯電話システムであってもよい。つまり、所定のスロットに含まれたユニークワードを検出して、基地局装置14と端末装置10との間のタイミング同期を確立するシステムであれば、本発明を適用可能である。本変形例によれば、様々なシステムに適用できる。
本発明の実施例2において、UW検出部126は、検出単位として、1/2スロットに相当したデータ単位でユニークワード検出している。しかしこれに限らず例えば、1/3や1/4であればよい。本変形例によれば、回路規模を小さくできる。つまり、検出単位は、記憶部124での記憶容量より小さいデータ量であればよい。
10 端末装置、 12 アンテナ、 14 基地局装置、 20 無線部、 22 処理部、 24 変復調部、 26 IF部、 28 同期部、 30 制御部、 100 通信システム、 110 信号検出部、 112 ID取得部、 114 カウンタ、 116 特定部。