JP4397082B2 - 移植用細胞片及びその作成方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、移植用細胞片及びその作成方法に関し、特に、上皮細胞、より具体的には、角結膜上皮細胞を羊膜上に培養増殖させた移植用細胞片及びその作成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
角膜は、眼球を構成する光学系の最も外層にあり、透明な血管のない組織であって、涙液と共に平滑な表面を形成することにより良好な視力を得ることに貢献している。また、角結膜上皮細胞は常に外界と接し、外界の微生物などの異物、紫外線などの光線などから眼球を守る防御作用を持っている。すなわち、角結膜上皮細胞は、角膜の透明性と眼球全体を防御し恒常性を維持するために極めて重要な役割を果たしている。
【0003】
この角膜は、例えば、角膜炎、角膜潰瘍、穿孔等の病態により濁り、透明性が失われてしまう場合がある。このような角膜の濁りによる永続的な視力の低下に対しては、角膜移植による治療が行われている。この角膜の移植は、患者の透明性が失われた角膜を取り除き、ここに透明な角膜を移植する。この移植により透明性が回復し、再び視力を取り戻すことができる。
【0004】
また、このような角膜の移植だけでは対処できない病気がある。例えば、スティーブンス・ジョンソン症候群、眼類天疱瘡、化学外傷、熱傷などである。通常、角結膜上皮細胞は、毎日分裂を繰り返し、古くなった細胞は、はがれ落ち、幹細胞組織から新たな細胞が再生されるが、これらの病態では、この角膜を再生させる幹細胞組織に障害があることがわかってきている。
【0005】
この角膜上皮を再生させる幹細胞組織は「角膜輪部組織」と呼ばれ、ちょうど黒目と白目の境界部分に限局し、外界に露出された特殊な環境にある。そのため、上述した病態では、この幹細胞組織自体がなんらかの障害を受けて根絶してしまうと考えられている。そして、この幹細胞組織の根絶により、その欠損部分は周りに存在する結膜上皮で覆われ、透明性に欠け、視力の極端な低下がもたらされる。
【0006】
このような病態では、角膜輪部が枯渇しているため、単に角膜を移植するだけでは移植された角膜を長期に維持できない。そのため、恒久的な眼表面再建を図るためには、角膜輪部をも移植する必要がある。この角膜輪部を移植する方法の一つとして、羊膜を用いた移植法が開発されている(メディカル朝日1999年9月号:p62〜65、N Engl J Med340:1697〜1703、1999) 。
【0007】
この移植法に用いられる羊膜は、帝王切開した妊婦等の胎盤から得ることができる。また、この羊膜は、厚い基底膜をもつことから、角結膜上皮細胞が増殖、分化するための基質として作用する。さらに、羊膜は免疫原性がほとんどなく、抗炎症、瘢痕形成抑制などの作用を併せ持つことから、羊膜上に移植される角結膜上皮やこれらの幹細胞組織は移植受容者(レシピエント)の拒絶反応等から保護されることになる。
【0008】
このような性質を有する羊膜を用いた移植法では、図3に示す通り、先ず、結膜化等した角膜組織を切除し、角膜実質及び強膜が露出される。露出された角膜実質及び強膜に、眼表面再建のため羊膜1が張り付けられる。提供された角膜組織からは、中央部角膜(上皮・実皮・内皮を含む)2が切り出され、角膜輪部組織3の周囲が整えられて、露出された羊膜および角膜実質上に移植、逢着される。このように移植された角膜輪部3は、免疫原性のない羊膜1に保護された状態で、この羊膜1を基質として分化、増殖し、羊膜1上で角膜上皮が再生される。そのため、この方法によれば、角膜上皮の長期的な維持、再生が可能となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の羊膜を用いた移植法では、術後、移植された角膜輪部から適切に上皮化が行われず、視力改善が得られない症例も多数存在する。また、スティーブンス・ジョンソン症候群や角膜化学傷などの患者における輪部移植の長期の追跡調査では、眼表面再建の達成率が約50%であった。そして、半数の非成功例の多くは、上皮化が得られなかった。
【0010】
従来、これら疾患は、外科的治療法は不可能とされていたが、羊膜を用いた移植法では移植成功率50%までに向上されてはいるが、さらなる治療成績の向上が望まれている。
【0011】
一方、再生医学の分野においては、ヒト皮膚において真皮、上皮の全層が欠損した損傷部位を移植するための移植片の開発が進めれられている。例えば、特開平10−277143号公報には、ヒト皮膚等の全層欠損創を治療するための移植片及びその製造方法が記載されている。
【0012】
この移植片は、ヒトのフィブリンシート内に真皮組織由来の線維芽細胞を包埋し、表皮組織をこのシートの表面に付着して作られる。このような移植片によれば、真皮をも欠損している全層欠損創に移植した場合に優れた生着率が示されている。
【0013】
そこで、本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、羊膜を用いて角結膜上皮細胞などの上皮細胞において、より高い治療成果が図られる移植用細胞片及びその作成方法を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、スポンジ層及び上皮層が除かれた羊膜上に上皮幹細胞組織を付着させ、この幹細胞組織から該羊膜表面を覆うように上皮細胞をインビトロで再生させることを特徴とする。
【0015】
上記発明によれば、移植用細胞片において、予め羊膜上に付着された幹細胞組織から上皮細胞を羊膜表面を覆うように増殖させておくことにより、従来の羊膜を用いた移植法に比して上皮の再建率を向上させ、より高い治療成果が図られる。
【0016】
また、本移植用細胞片では、予め羊膜上に幹細胞組織が付着されているため、従来のように羊膜、角膜輪部を個別に眼表面などに移植する場合に比べ、移植時間を短縮化させることも可能となる。
【0017】
尚、ここで幹細胞組織は、提供された状態により、幹細胞組織以外に幹細胞組織周辺の上皮細胞などを含むものも含まれる。そのため、羊膜状で幹細胞組織を培養し、増殖した上皮細胞には、幹細胞組織から増殖した上皮細胞以外に、提供者からの上皮細胞を存在するものも含まれる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を図面を用いて説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
第1の実施形態における移植用細胞片を図1に示す。
【0020】
図1に模式的に示すように、本移植用細胞片10は、羊膜12と、この羊膜12の上に付着させた上皮幹細胞組織14と、この幹細胞組織から羊膜表面を覆うように増殖した上皮細胞16とから構成される。
【0021】
この羊膜12は、脊椎動物の羊膜類のうち最内側にあって胚を直接覆う膜であり、厚い基底膜を有する。また、この羊膜12は、免疫原性がほとんどなく、抗炎症作用などを有している。このように羊膜12は免疫原性がほとんどないが、移植後の免疫反応の惹起をより確実に防止するためには、ヒトへの移植用細胞片の場合には、同じ動物種であるヒト由来の羊膜を用いることが好ましい。
【0022】
但し、この羊膜は、同種由来、すなわちヒトへの移植の場合にはヒト由来のものであれば、親、子供など血縁関係にあるものに限定されず他人のものでもよい。
【0023】
ヒト由来の羊膜は、例えば、帝王切開した妊婦から得ることができる。この羊膜は、一般に下層側から、スポンジ層、緻密層、基底膜層、上皮層とを有するが、この移植用細胞片における「羊膜」では、スポンジ層と上皮層とは不必要であるため、これらを除去処理したものを用いることが好ましい。
【0024】
上記羊膜12の上に付着される上皮幹細胞組織14は、上皮細胞を再生させる能力がある細胞組織である。ここで上皮細胞は、たとえば、角膜上皮細胞、結膜上皮細胞などが含まれる。
【0025】
上皮幹細胞組織14は、たとえば、角膜上皮細胞の幹細胞組織である角膜輪部組織などが挙げられる。また、上皮細胞が結膜上皮細胞である場合には、この幹細胞組織14は、結膜円縁部等にある結膜上皮細胞の幹細胞組織となる。なお、上記角膜輪部細胞は、眼球の白目と黒目の境に局在し、眼球表面に露出して存在し、角膜提供者などから得ることができる。
【0026】
なお、この上皮幹細胞組織14は、純粋に幹細胞組織のみであっても、その周辺の上皮細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞を含んでいるものであってもよい。
【0027】
上皮幹細胞組織14は、患者であるレシピエント以外のものから提供されたものが用いられるが、提供者は、レシピエントの親、兄弟など、また、レシピエントとは血縁関係のない全く他人であってもよい。
【0028】
他人から提供された上皮幹細胞組織14は、免疫による拒絶反応が生じるおそれを回避するためには、HLAタイプの適合した提供者由来のものが好ましい。しかし、HLAタイプが適合した提供者由来の上皮管細胞組織が得られない場合には、HLAタイプが適合していない提供者由来のものであってもよい。
【0029】
また、移植による感染などを防止するために、提供された組織は予め感染などのおそれがないことが確認されたものを用いることがよい。
【0030】
さらに、この上皮幹細胞組織14は、状態がよく、上皮細胞を増殖し得るものが好ましい。また幹細胞組織14のサイズは、細胞の状態により異なるが、例えば、幹細胞組織14の状態がよい場合には、羊膜が2cm平方のサイズに対して、例えば1mm平方程度でもよい。
【0031】
また、ここで用いる上皮幹細胞組織14は、一組織片を用いても、複数の組織片を用いてもよい。また、これら上皮細胞組織14を、羊膜上に載せる場合には、
生体内で本来配置しているように形状に整えて羊膜上に置くことが望ましい。
【0032】
図1では、上皮幹細胞組織14として角膜輪部組織を用いた場合に望ましい配置状態を示している。すなわち、通常、角膜輪部組織は、黒目と白目の境界部分に局在していることから、この境界部分に相当する位置に上皮幹細胞組織14を配置させた場合を示している。
【0033】
羊膜12上に増殖させた上皮細胞16は、羊膜12の上に付着させた上記幹細胞組織14をインビトロ(in vitro)で培養して増殖させたもの、また、提供された幹細胞組織にその周辺の上皮細胞が結合している状態のものについては、上記幹細胞組織から増殖した上皮細胞のほかに提供者の上皮細胞を含むものも含まれる。
【0034】
また、羊膜上で増殖させた上皮細胞16は、移植の際に状態のよいものであることが望ましく、例えば、増殖曲線を描いたときに右肩上がりの一次直線を示すような増殖期にある細胞であることが好ましい。
【0035】
上記の通り、羊膜12の表面に上皮幹細胞組織を備え、上皮細胞16で覆われた移植用細胞片10は、上皮細胞とともにその幹細胞組織までも根絶又は損傷したような患部に移植される。そして、本移植用細胞片10では、予め羊膜12の表面を覆うように幹細胞組織14から上皮細胞16が増殖しているため、従来のように患部に移植された後に上皮細胞を増殖させる方法に比較して、上皮組織の再建率を向上させることが可能となる。
【0036】
[第2の実施形態]
本実施形態では、上記移植用細胞片10の作成方法について説明する。
【0037】
(1)羊膜の調整
羊膜の調整の各工程については、図2に示す。
【0038】
図2に示すように、移植用細胞片の基質となる羊膜は、ヒトの場合には帝王切開した妊婦などから羊膜が採取される(S200)。
【0039】
羊膜は採取後すぐに使用しない場合には(S201)、保存することもできる(S202)。この保存方法としては、上記保存のための処理を行った後、保存液などに浸して−80℃で保存することもできる。
【0040】
羊膜を保存するための処理は、例えば、4.2,8.5,15.0%の濃度でDMSO(ジメチルスルホキシド)を含有した生理食塩水を準備し、次いで、DMSO濃度の低い溶液から順に羊膜を30分程度浸すことにより行うことができる。
【0041】
また羊膜の保存液としては、上記15%DMSO含有生理食塩水などを用いることができる。
【0042】
上記採取された羊膜又は保存から戻された羊膜は、羊膜を構成する不必要な上皮層及びスポンジ層を剥がし易くするために、羊膜が前処理される(S203)。この前処理の方法は、特に限定はないが、例えば、10%アンモニア水で処理することができる。
【0043】
上記前処理が終了した羊膜は、必要に応じて、適切なサイズに切断される(S204)。この適切なサイズとは、例えば、眼表面再建の場合には、露出している眼表面を十分に覆うことが可能な2cm平方程度のサイズなど、移植部位の面積に対応して決定することができる。
【0044】
切断された羊膜は、それぞれ細胞培養用のディッシュプレート(例えば、35mmφなど)に入れられる。このプレート内に入れられた羊膜はスポンジ層と上皮層とが剥がされ、緻密層と、基底膜とが残される(S205)。そして、基底膜を上向きにした状態で、羊膜はプレート底部に固定される(S206)。
【0045】
羊膜のプレートへの固定は、特に、羊膜に大きな損傷を与えない方法であれば特に限定はないが、例えば、以下のように凍結と乾燥を組み合わせた方法で実施することができる。
【0046】
すなわち、緻密層及び基底膜が残された羊膜を、−80℃で完全に凍結させ、凍結後、室温に再度戻され、プレート内の水分が吸引除去される。羊膜は、上皮側が上向きにされて皺が広げられた状態で、無菌的に羊膜表面を完全に乾燥させることが好ましい。
【0047】
乾燥後は、そのまま使用することもできるが、再度−80℃に凍結してもよい。凍結させた場合には、使用前に羊膜は室温に戻され、ディッシュプレートについた水分が除去されて使用可能となる。
【0048】
(2)羊膜上での上皮細胞の培養増殖
提供者から採取した上皮幹細胞組織を羊膜上に付着させ、上皮細胞を培養増殖させる。
【0049】
具体的には、ここで用いる幹細胞組織は、状態がよいものが好ましく、例えば、提供者から提供された状態のよい幹細胞を提供直後に使用することが好適である。このような状態のよい幹細胞組織が得られたら、上記プレートに固定された羊膜表面に付着させ、幹細胞組織が浮遊しない程度の培地を注入し、培養を開始する。但し、幹細胞組織が羊膜に接着した後は、培地の液量を幹細胞組織や増殖を開始した上皮細胞が十分に培地に浸る程度まで増やすことが好ましい。
【0050】
羊膜に付着させる幹細胞組織のサイズは、大きめであることが好ましく、例えば、角膜輪部組織の場合には、2cm平方の羊膜に対して1mm平方程度のサイズであることが好ましい。しかし、このサイズは、細胞組織の状態などから大小変更させることは可能である。
【0051】
また、上記幹細胞組織の培養において用いられる培地は、幹細胞組織から上皮細胞を適切に増殖させ得る培地であれば、特に限定はない。例えば、幹細胞組織の培養開始時には、SHEM培地などを用いることができる。また、上皮細胞増殖開始後は、上皮細胞培養用の基礎培地、例えば、Medium165培地などを用いることができる。なお、SHEM培地及びMediumu165培地の組成については、後に詳述する。
【0052】
これら培地には、細胞培養に必要な血清が添加される。この血清は、ウシ胎児血清(FCS)などを用いることもできるが、好ましくは、幹細胞組織の提供者(ドナー)又はレシピエント自身の血清を用いることがよい。
【0053】
なお、FCSなどを用いる場合には、市販品を遠心分離し、さらに、フィルターを通したものを用いることが好ましい。また、ヒト血清を用いる場合には、熱処理(例えば、56℃、30分間程度)したものや0.22μmフィルター等により白血球などの免疫拒絶反応を惹起するおそれのある細胞などが除去されたものを用いることが好ましい。
【0054】
また血清の添加量は、幹細胞組織の培養開始時には、高濃度、例えば15%程度とすることができる。一方、上皮細胞増殖開始後は、比較的低濃度でもよく、例えば、3%程度とすることができる。なお、これら培地の切り替え時期は、顕微鏡下で上皮細胞の増殖が確認された段階又は、培地にpHインディケータなどが添加されている場合には、細胞増殖によりインディケータが酸性を呈した段階で行うことができる。
【0055】
培養は、細胞の増殖に好ましい環境、例えば、37℃に設定されたCOインキュベーターなどを用いて行う。また、培養期間は、短くとも羊膜表面を覆うために必要な期間とし、最長でも上皮細胞の増殖が盛んな段階、例えば、細胞の増殖をグラフにプロットした際に一次直線を描く増殖期の範囲内とすることが好ましい。
【0056】
例えば、培養用のプレート底面が増殖された上皮細胞でちょうど埋まる程度、すなわち、コンフルエントに達する程度の期間とすることができる。より具体的には、状態のよい角膜輪部組織(1mm平方)を、ディッシュプレート(直径3.5cm)に固定された羊膜(2cm平方)上で培養した場合には、培養期間は、およそ10〜14日程度とすることができる。
【0057】
(3)移植用細胞片の回収
上記培養の結果、ディッシュプレート内には、羊膜を基質として、その表面に幹細胞組織が接着され、また、その羊膜表面を覆うように幹細胞組織から増殖した上皮細胞が広がった移植用細胞片が生成される。ここで生成された移植用細胞片は、羊膜をディッシュプレートから剥がすことにより回収される。ここで回収された移植用細胞片は、回収後速やかにレシピエントの患部に移植される。
【0058】
[第3の実施形態]
本実施形態では、移植用細胞片作成用キットについて説明する。
【0059】
上記第2の実施形態に示した一連の方法により、上記移植用細胞片を作成することができるが、この作成を容易に実施し得るように移植用細胞片を作成するために、必要な培養液、試薬等及び作成方法を記載した説明書などとともにキットとして提供してもよい。
【0060】
例えば、このキットには、プレートに固定された羊膜、幹細胞組織を培養するために必要な培地などを含めることができる。また、必要に応じて、羊膜なども含めてもよい。このように羊膜や培地などがキットとして提供されることにより、幹細胞組織などを準備すれば、上記作成方法に従って比較的簡便に移植用細胞片を作成することが可能となる。
【0061】
【実施例】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0062】
[実施例1] 羊膜の調整
移植用細胞片の基質となる羊膜を調整する。帝王切開した妊婦などから羊膜を採取する。採取した羊膜を保存する場合には保存用の処理溶液を調整する。この処理溶液は、滅菌済みPBS(−)又は滅菌済み生理食塩水に最終濃度4.2,8.5,15.0%となるようにDMSOを添加した、4.2,8.5,15.0%溶液として調整される。ここで調整された溶液をそれぞれ複数の容器に入れて準備する。
【0063】
採取した羊膜の前処理は、上記4.2,8.5,15.0%溶液という濃度の低い順でそれぞれ30分ずつ羊膜を浸すことにより行う。処理後、すぐに使用する場合は次の羊膜上皮の除去を行う。一方、保存する場合には、上記15%溶液を含む保存容器に入れて、−80℃で保存する。
【0064】
細胞培養用のディッシュプレート(例えば、100mmφ)に上記15%溶液を注ぎ、そこに羊膜を移す。羊膜は、使用する大きさに切断され、それぞれ個別のディッシュプレート(例えば、35mmφ)に移される。採取された羊膜には、下層から順にスポンジ層、緻密層、基底膜、上皮を備えるが、このうち最下層のスポンジ層をピンセットを用いて剥がす。スポンジ層が剥がされた後、この羊膜を10%アンモニア水に浸し、室温で30分間静置する。
【0065】
次に、羊膜から最上層の上皮をスクレーパーを用いて剥がす。上皮の除去が終了後、10%アンモニア水を吸引し除去する。その後、ディッシュプレートに滅菌済みPBSを注入し、羊膜を洗浄する。
【0066】
洗浄後の羊膜を基質として上皮細胞を増殖培養させるために、この羊膜をディッシュプレートの底に張り付けて、固定する。この張付け固定は、後に培養液を添加したときに羊膜が浮上しない程度に行う。
【0067】
羊膜をプレート底部に張り付けるためには、羊膜を凍結及び乾燥させる。具体的には、2回の凍結を経る方法では、先ず、上記PBS洗浄後の羊膜を−80℃に置き、完全に凍結させる。
【0068】
その後、上皮細胞の培養前日に凍結した羊膜を室温に戻し、プレート内の水分をアスピレータで吸い取る。水分をアスピレータで除去した後、羊膜を上層を上向きにして、ピンセットで広げて羊膜の皺を取る。その状態で、クリーンベンチ内でディッシュプレートの蓋を開いたまま、ファンをつけて1時間以上風乾させる。羊膜の上層面が完全に乾いた事を確認したら、再度−80℃に凍結させる。使用する1時間位前に室温に戻し、ディッシュプレートについた水分を取り除いた後、使用する。
【0069】
なお、上記羊膜をプレート底面に固定する場合、2度目の凍結工程を省略することもできる。
【0070】
[実施例2] 移植受容者の親、兄弟などから提供された角膜輪部組織を用いた移植用細胞片の作成
角膜輪部組織の提供者から採血し、血清を分離する。分離された血清を、56℃、30分間、熱処理して不活性化する。この血清をSHEM培地に添加し、15%血清入りSHEM培地を調整する。ここで調整された培地の一部を予め容器に入れ、提供者から角膜輪部組織を採取する。採取した角膜輪部組織を前記培地入りの容器に速やかに投入する。
【0071】
角膜輪部組織を上記ディッシュプレートに固定された羊膜上に載置し、組織が浮かないように上記血清含有SHEM培地を注入して、37℃でインキュベートする。このインキュベートにより組織が羊膜に接着したら、さらに培地を追加して培養する。
【0072】
培養により、組織の周囲に上皮細胞の増殖が観察されたところで、培養液を3%血清含有165培地に変更する。なお、上皮細胞増殖の観察は、例えば培地に含まれるpHインディケータが酸性を示していることにより検知することもできる。
【0073】
上記3%血清含有165培地に変更後、この培地を定期的に交換しながら、培養を継続する。培養は、およそ10〜14日間で、ディッシュプレートの底部がコンフルエントになるまで行う。
【0074】
上記培養の結果、羊膜上に付着させた角膜輪部組織から上皮細胞が増殖して、羊膜を基底膜としこの表面を角膜上皮細胞で覆われ、かつ角膜輪部組織を有する移植用細胞片が作成される。
【0075】
なお、本実施例で用いた培地の組成を表1に示す。
【0076】
【表1】
Figure 0004397082
Figure 0004397082
【0077】
[実施例3] 他人から提供された角膜輪部組織を用いた移植用細胞片の作成
移植用細胞片の作成における各工程は、上述の一連の工程により行われる。ここでは、培養液に添加される血清をドナー由来ではなく、レシピエント由来の血清を用いている。
【0078】
すなわち、15%血清添加SHEM培地及び3%血清添加165培地において、添加される血清はレシピエントから採取した血清を用いる。なお、この血清は、上記と同様に、レシピエントから採取した血液から分離し得られ、この血清分離後、56℃、30分間、熱処理を行うことにより不活性化されて使用される。
【0079】
このように提供者からの血清が得られない場合であっても、レシピエントの血清により、移植用細胞片を作成することができる。
【0080】
[実施例4] 移植用細胞片の移植
患者の眼表面から結膜化等した角膜上皮を除去し、角膜実質を露出させる。一方、上記の通り作成された移植用細胞片は、ピンセットなどでプレートから羊膜を剥がして回収する。
【0081】
回収した移植用細胞片は、露出した角膜実質上に羊膜が接触するように移植する。また羊膜上の角膜輪部組織は、白目と黒目との境界である本来の角膜輪部の位置に当たるように配置する。配置後、眼表面に移植された細胞片を生理食塩水などで洗浄し、洗浄後、縫着する。
【0082】
なお、上記移植を8名程度のレシピエントに対して実施したところ、早期に上皮細胞の定着が観察された。
【0083】
【発明の効果】
以上の通り、本発明の移植用細胞片によれば、上皮組織の再建率を向上させることができ、より高い治療効果が期待できる。また、角膜上皮などの上皮組織の提供が不足している場合でも、幹細胞組織が得られれば、この一部を用いて羊膜上で増殖させることにより、複数の角膜上皮などの上皮組織を再生させることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施形態の移植用細胞片の全体構成を示す図である。
【図2】 羊膜調整の各工程を示すフローチャートである。
【図3】 従来の羊膜移植方法における各工程を示す図である。
【符号の説明】
10 移植用細胞片、12 羊膜、14 幹細胞組織、16 上皮細胞。

Claims (5)

  1. スポンジ層と上皮層とが取り除かれた羊膜と、
    前記羊膜の表面に付着された上皮幹細胞組織と、
    前記幹細胞組織より該羊膜表面を覆うようにインビトロで増殖させた上皮細胞と、を含む移植用細胞片。
  2. 前記上皮細胞が、角膜上皮細胞又は結膜上皮細胞であることを特徴とする請求項1に記載の移植用細胞片。
  3. スポンジ層と上皮層とが除去された羊膜を調整する工程と、
    前記羊膜に上皮幹細胞組織を付着させる工程と、
    前記羊膜上に該上皮細胞を増殖させる工程と、を有する移植用細胞片の作成方法。
  4. 前記上皮細胞が、角膜上皮細胞又は結膜上皮細胞であることを特徴とする請求項3に記載の移植用細胞片の作成方法。
  5. 前記幹細胞組織が、角膜輪部細胞であることを特徴とする請求項3に記載の移植用細胞片の作成方法。
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