JP4394297B2 - 膨張容器の漏洩検出方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は膨張容器の漏洩の証拠を検査する方法に関し、特に、膨張容器内のピンホール漏洩の証拠を検査する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
成形製品に対する多くのキュアリング装置は(硬化装置)、キュアリングブラダとしても知られる、膨張容器を使用する。キュアリング装置では、通常の膨張容器は水蒸気等の流体熱源により加圧される。流体熱源により膨張容器は膨張して、製品を型にぴったり押し付ける。さらに、流体熱源からの熱は成形された製品を少なくとも部分的に硬化させるのを助ける。
【0003】
膨張容器内に、ピンホール漏洩等の欠陥が形成される時に問題が生じる。タイヤ産業においては、キュアリング装置上の膨張容器内のピンホール漏洩は、タイヤのスクラップの最大原因の1つである。膨張容器内のピンホール漏洩は年間数百万ドルのコストをタイヤメーカに課している。ピンホール漏洩リークにより高温蒸気がタイヤのインナーライナに接触する。この接触により考えられる1つの結果としてはインナーライナ内の硬化不足領域である。考えられるもう1つの結果はタイヤのプライ領域に蒸気が浸透してブリスタが生じ、プライが分離することがあることである。現在、ピンホール漏洩の影響に対するタイヤの最初の検査は、タイヤがキュアリング装置を出た数分後に、タイヤプラントの最終仕上げエリアで行われる。最終仕上げにおいてタイヤがピンホールリーク(ピンホール漏洩)の結果不完全であることが判明すると、問題が発見される前にさらに10個までのタイヤが同じ欠陥のある膨張容器により硬化されていることがある。一般的に、これらのタイヤは全てスクラップ化しなければならない。
【0004】
欠陥のある膨張容器によるスクラップを低減するために、膨張容器は設定サイクル数後に交換される。しかしながら、この設定サイクル数の前にピンホールリークが生じることがあるため、この防止策は常にスクラップを防止するわけではない。さらに、この防止策は有効寿命内にまだ多くのサイクルを有するいくつかの膨張容器も交換してしまうことがある。したがって、やはりスクラップタイヤが生じ、膨張容器の全寿命を利用しないため無駄な費用が生じ、より頻繁な膨張容器の交換により付加的労務費が生じる。
【0005】
キュアリング装置メーカはキュアリング装置内に監視システムを内蔵することにより、膨張容器内のピンホールリークにより生じるスクラップ製品を制限する試みを行ってきている。硬化される製品がキュアリング装置内に配置される前に、キュアリング装置の膨張容器が加圧される。加圧された膨張容器は供給および排出ライン内のバルブを閉じることにより隔離される。監視システムは膨張容器内の圧力を監視して漏れが存在するかどうかを確認する。
【0006】
米国特許第5,417,900号タイヤ硬化プレス用真空漏洩検知器(VACUUM LEAK DETECTOR FOR A TIRE CURING PRESS)にはキュアリングプレスの膨張可能なエラストマ硬化装置内の漏れを検出する装置および方法が開示されている。使用済み硬化用流体はベンチュリエジェクタが配置されている排出ラインを通って汲み上げられる。ベンチュリエジェクタは流体が除去されるに従い真空を作り出す。真空センサがこの真空を監視する。所定の時間内に所定の真空強度に達しなければ、漏れが存在するものと推定される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
これらの従来技術のシステムは膨張容器をキュアリング装置に取り付けるカップリングにおいて漏れが生じる場合にはうまく機能する。しかしながら、これらのシステムは膨張容器内のピンホール漏れを検出するのには適切ではない。ピンホール漏れにより失われる流体の量はカップリングの漏れに比べて少量であるため、圧力および/もしくは真空センサを使用してこのような漏れの存在を検出するのは非常に困難である。また、これらの装置は硬化装置シール内の漏れも知らせて、偽の応答を生じることがあるため有効ではない。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、膨張した状態において、エラストマ製品のキャビティ(空洞)の少なくとも一部を占有している膨張容器の漏れを検出する方法を提供する。この方法は加圧流体にトレーサガスを加えるステップを含んでおり、加圧流体は膨張容器を膨張させるのに使用される。トレーサガスは、エラストマ製品のキャビティから膨張容器を引き出す前に加えられる。
【0009】
この方法はトレーサガスの一部が膨張容器から漏れていることを示す証拠を、膨張容器内ではない、エラストマ製品のキャビティ内の雰囲気を調べるステップにより特徴づけられる。
【0010】
本開示の理解を容易にするために、下記の用語が定義される。
【0011】
“ビード”はタイヤの環状の引張部材からなる部分を意味し、プライコードにより被覆されており、フリッパ、チッパ、エイペックス、トウガードおよびチェーファーのような他の補強部材を有することもあれば、有しないこともあり、設計リムに適合する形状とされている。ビードはタイヤをホイールリムに保持することに関連している。
【0012】
“キュアリング”はゴムもしくはプラスチック配合物を加熱その他の処理をして配合物を架橋させることにより、熱可塑性もしくは流動性材料から固体の比較的耐熱性の状態へ変換する工程を意味する。加熱が利用される場合には、この工程は加硫と呼ばれる。
【0013】
“エラストマ”は変形後にサイズおよび形状を回復することができる弾性材料を意味する。
【0014】
“エラストマ物品”は少なくとも部分的にエラストマから作られる物品である。
【0015】
“インナーライナ”はチューブレスタイヤの内面を形成しタイヤ内に膨張流体を含むエラストマその他の材料の層を意味する。
【0016】
“空気入りタイヤ”はビードおよびトレッドを有しゴム、ケミカル、布およびスチールその他の材料から作られる、一般的に環状で、通常は開放された円環状の積層された機械的装置を意味する。自動車のホイールに搭載されると、タイヤはそのトレッドを介してけん引力を発生し、また車両荷重に耐える流体を含んでいる。
【0017】
半径方向の、と半径方向に、はタイヤの回転軸に近接又は離れる方向を意味する。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1はキュアリング装置12内の、ここではタイヤ10である、エラストマ物品を示す。キュアリング装置12はその内部に加圧流体が導入される時に膨張する膨張容器14を有する。図1は膨張した形状における膨張容器を示す。典型的なキュアリング装置12では、膨張した膨張容器14はエラストマ物品を型に対して密着させる。加圧した膨張容器14がエラストマ物品を型16に対して保持している間に、エラストマ物品は加熱されて硬化する。熱は型16もしくは加圧流体を介して導入される。通常蒸気が、加圧流体と硬化時間の少なくとも一部の間だけの熱源として使用される。
【0019】
図1に示す型16は、硬化したエラストマ物品の取り外し、および未硬化エラストマ物品の挿入のために分離される上型と下型とからなる。加圧流体は入口チャネル18を介して膨張容器14内へ導入され、出口チャネル20を介して出てゆく。入口チャネル18と出口チャネル20は、膨張容器14内の圧力を調整するバルブを備えている。
【0020】
タイヤ10の硬化において、未硬化タイヤ10が膨張容器14を有するキュアリング装置12内に配置される。未膨張膨張容器14がタイヤ10のビード22の半径方向内側に配置される。型16が閉じられた後で、加圧流体、通常は水蒸気、が膨張容器14内へ導入されて膨張容器14は膨張する。膨張容器14が膨張すると、少なくともその一部がタイヤ10内のキャビティ24内へ入る。理想的には、膨張容器14がキャビティ24全体を占めてキャビティ24内の表面に接触し、タイヤ10をモールド16に押し付ける。一般的に、膨張容器14と接触するキャビティ24内の表面はタイヤ10のインナーライナである。加圧流体は所定時間膨張容器14内に入れられ、タイヤ10が少なくとも部分的に硬化するようにされる。通常、膨張容器14が収縮する前に熱源が取り除かれる。水蒸気が使用される時にこれが行われると、熱源および加圧流体として作用する水蒸気は膨張容器14から緩やかに放出され、窒素等の、他の加圧流体と置換される。所定時間が経過した後で、加圧流体は膨張容器14から出口チャネル20へ放出される。その結果、膨張容器14は収縮されキャビティ24から引き出される。最後に、型16が開かれ少なくとも部分的に硬化したタイヤ10がキュアリング装置から取り外される。
【0021】
本発明の方法において、膨張容器14を膨張させるために使用される加圧流体にトレーサガスが加えられる。膨張状態における膨張容器14はエラストマ物品のキャビティ24の少なくとも一部を占有する。トレーサガスはエラストマ物品のキャビティ24から膨張容器を引き出す前に加えられる。トレーサガスはその存在を閉じた雰囲気内で検出することができるヘリウム、二酸化炭素もしくは類似のガスとすることができる。トレーサガスが加えられる時は、膨張容器14内の圧力は維持したり変化させることができる。トレーサガスが加えられる時に出口チャネル20を通って加圧流体が放出されない場合には、容器内の圧力が増加する。トレーサガスが加えられる間に膨張容器14から幾分加圧流体が流出する場合には、放出される加圧流体の量に応じて圧力を維持したり変化させることができる。キャビティ24から膨張容器14を引き出した後で、エラストマ物品のキャビティ24の雰囲気は膨張容器14からトレーサガスの一部が漏れたことを示す証拠がないか調べられる。
【0022】
当業者にとっては、ヘリウム等のトレーサガスは長時間膨張容器14と接触するとゴム膨張容器14を飽和させることがあることは明白であるように、使用するトレーサガスに応じて、膨張容器に対するトレーサガスの露呈時間を飽和時間よりも短い時間に制限することができる。エラストマ製品のキャビティ24の雰囲気の検査は膨張容器14がまだキャビティ24の一部を占有している間、あるいはキャビティ24から膨張容器14が引き出された後で行うことができる。したがって、この検査はエラストマ物品がキュアリング装置12内にある間、あるいは物品がキュアリング装置12から引き出された後で行うことができる。膨張容器14の一部がまだキャビティ24の一部を占有している間に検査が行われる場合には、膨張容器14はキャビティ24からのトレーサガスの流出を制限してその検出をより有望にすることができる。膨張容器14がまだキャビティ24の一部を占有している場合には、検査はキャビティ24の雰囲気に限定され、膨張容器14内のいかなる空間も含まない。
【0023】
図2はエラストマ製品のキャビティを調べるために使用する装置を示し、図3はキャビティ24を有するエラストマ物品を検査中の装置の断面を示す。タイヤ10として示されているエラストマ製品は検査装置26の上に配置される。検査装置26は質量分析計、熱伝導率検出器、二酸化炭素検出器、ガイガーカウンター、もしくは使用するトレーサガスの存在を検出することができる他の装置とすることができる。検査装置26は伸縮自在管30上の検査装置26から延びるプローブ28を有する。エラストマ製品が適切に配置された後、伸縮自在管30はプローブ28をエラストマ製品のキャビティ24内へ延ばしてその雰囲気を検査できるようにする。伸縮自在管30は検査装置26上に搭載されたタレット32から延びる。タレット32はプローブ28がキャビティ24の雰囲気の相当な部分をくまなく移動できるようにする。検査装置26の少なくとも一部、この場合プローブ28、がキャビティを通って移動される間に、検査装置26はトレーサガスの存在を感知する。膨張容器14がリークを有する場合には、膨張した時の膨張容器内の加圧流体によりトレーサガスは幾分リークを通ってキャビティ24内へ押しやられるため、エラストマ製品のキャビティ24の雰囲気内でトレーサガスの証拠が見つけられる。
【0024】
好ましい実施の形態では、エラストマ製品内のトレーサガスの量が決定されて標準物品のキャビティの雰囲気内で見つかったトレーサガスの量と比較される。標準物品はそのキャビティの少なくとも一部が、膨張された既知の非欠陥膨張容器により占有されたエラストマ物品である。この標準物品をテストすることにより、トレーサガスに対する基準線が決定される。トレーサガスが、ヘリウムや二酸化炭素等の、通常空気中で見つかるガスである場合には、トレーサガスの基準量を求めるだけでよい。
【0025】
図2に示す検査装置26は図1に示すキュアリング装置12と接続されて、漏れたトレーサガスの証拠が発見され次第キュアリング装置12を停止することができる。したがって、基準物品のキャビティの雰囲気内よりエラストマ物品のキャビティ24の雰囲気内のトレーサガスの量が多いことが判れば、キュアリング装置12は停止される。
【0026】
表1および表2は本発明の方法に従って集められた実験データを示す。各実験について、膨張容器14の中間高さ近くに3.175mm(1/8インチ)の錐によりピンホールリークが慎重に作られた。2つホールが存在する所では、ホールは非膨張の膨張容器14側で数インチ離されている。各実験において、エラストマ製品はP205/75R14タイヤであった。
【0027】
トレーサガスはタイヤ10のインナーライナーにより吸収されることが理論化されている。圧力が解除されると、トレーサガスはインナーライナーから脱着してタイヤ10のキャビティ24内に捕捉される。
【0028】
表1はヘリウムをトレーサガスとして使用する実験の結果である。実験に使用したタイヤの標準硬化時間は1,380kPa(200psi)の水蒸気の174秒とそれに続く2,069kPa(300psi)の窒素の360秒である。ヘリウムは硬化時間の最後の60秒間導入された。硬化の窒素相の300秒マークの近くで、窒素圧力は1,380kPa(200psi)に低減され、次にヘリウムを加えて膨張容器14内の圧力が1,724と2,069kPa(250と300psi)の間まで高められた。各キャビティ24の雰囲気について、キュアリング装置12から取り外してから2分以内にヘリウムの証拠が調べられた。使用した2つの検査装置26はヘリウムの存在を標準cm3/秒で測定した質量分析計、およびヘリウムの存在をppm(parts per million)で測定した熱伝導率検出器であった。表1に示すように、キャビティ24内に存在するヘリウムの量は、膨張容器14内にピンホールが存在すると著しく増加した。
【0029】
【表1】
Figure 0004394297
【0030】
表2は二酸化炭素をトレースガスとして使用する実験の結果を示す。この実験では、第1の実験について説明したのと同じ手順が使用された。使用した検査装置26は周囲空気でゼロとされ、二酸化炭素の存在をppmで測定した二酸化炭素検出器であった。この手順を使用して、2つのピンホールを有する膨張容器14内で二酸化炭素は見つからなかった。
【0031】
実験の手順が修正され、1,380kPa(200psi)の蒸気を174秒加えた直ぐ後で、膨張容器14内の圧力が2,069kPa(300psi)に達するまで二酸化炭素が加えられた。窒素を加えることにより2,069kPa(300psi)は360秒にわたって維持された。各キャビティ24の雰囲気について、キュアリング装置12からタイヤ10を取り出してから2分以内に二酸化炭素の証拠が調べられた。表2に示すように、キャビティ24内に存在する二酸化炭素の量は膨張容器14内にピンホールが存在すると非常に増加した。
【0032】
【表2】
Figure 0004394297
【0033】
本発明はキュアリング装置の各サイクルの直後に膨張容器内の欠陥を検出するものである。本発明はピンホールリークによるスクラップ製品の数を欠陥膨張容器当たり1成形製品に制限し、各膨張容器は欠陥が生じるまで使用することができる。したがって、本発明によりスクラップ製品の数が減少され、有効寿命が終わる前に膨張容器を交換することによるコストが低減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】膨張容器を有するキュアリング装置内のエラストマ製品を示す図である。
【図2】エラストマ製品内のキャビティ内の雰囲気を調べるのに使用することができる装置を示す図である。
【図3】図2の3−3線に沿った断面図である。
【符号の説明】
10 タイヤ
12 キュアリング装置
14 膨張容器
16 型
18 入口チャネル
20 出口チャネル
22 ビード
24 キャビティ
26 検査装置
28 プローブ
30 伸縮自在管
32 タレット

Claims (3)

  1. ラストマ物品のキャビティの少なくとも一部を膨張状態で占有、もしくは占有してい膨張容器(14)の漏洩を検出する方法であって、
    (i)前記膨張容器(14)を前記キャビティから引き出す前に、前記膨張容器(14)を膨張させるために使用され加圧流体にトレーサガスを加えるステップと、
    (ii)前記膨張容器(14)内ではなく、前記エラストマ物品の前記キャビティ(24)内の雰囲気を検査して、前記膨張容器(14)から漏洩した前記トレーサガスの一部を示す証拠を検知するステップと
    を有することを特徴とする、膨張容器の漏洩を検出する方法。
  2. 前記エラストマ物品の前記キャビティ(24)内の雰囲気を検査して前記膨張容器(14)から漏洩した前記トレーサガスの一部を示す証拠を検知するステップは、さらに、
    (i)検査装置(26)の少なくとも一部を前記キャビティ(24)の雰囲気の相当な部分にわたってくまなく移動させるステップと、
    (ii)前記トレーサガスの存在を検知するステップと、
    を有する請求項1記載の膨張容器の漏洩を検出する方法。
  3. 前記エラストマ物品の前記キャビティ(24)内の雰囲気を検査して前記膨張容器(14)から漏洩した前記トレーサガスの一部を示す証拠を検知するステップ、さらに、
    (i)前記エラストマ物品の前記キャビティの雰囲気内に存在する前記トレーサガスの量を決定するステップと、
    (ii)検出された前記トレーサガスの量を、欠のない既知の膨張容器が膨張態において少なくとも一部を占有している標準物品のキャビティの雰囲気内に存在するトレーサガスの量と比較するステップと、
    を有する請求項1記載の膨張容器の漏洩を検出する方法。
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