JP4393586B2 - 多成分系材料の設計方法、最適化解析装置及び多成分系材料の最適化解析プログラムを記録した記録媒体 - Google Patents
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Description
本発明は、多成分系材料の設計方法、最適化解析装置及び多成分系材料の最適化解析プログラムを記録した記録媒体にかかり、特に、多成分から構成される多成分系材料の材料設計、例えばタイヤ用ゴム配合設計に用いることが可能な多成分系材料の設計方法、最適化解析装置及び多成分系材料の最適化解析プログラムを記録した記録媒体に関する。
背景技術
材料設計は、目的とする材料の機械的挙動を得るための成分の構成比や製造条件等を求めることである。この機械的挙動は材料自体の物性や大きさ等の物理量がある。
従来の材料設計は、経験的または試行錯誤的に求める場合が多く、特に構成材料が3成分以上になるとその作業は非常に困難となっていた。例えば、タイヤを形成するためのゴム部材の材料設計としては、種々の物性を考慮するために、物性が既知の複数の素材を予め設定し、各素材毎に成分を定めてそのゴム部材を試作・試験し、ヤング率等について目標性能が得られるまで試作・試験を繰り返して、設計開発するのが通常であった。
この材料設計を自動的に行うものとして、階層型ニューラルネットワークを用いて材料特性を指定すると多成分系材料の材料構成比が自動的に求められるような材料設計方法が提案されている(「ニューラルネットワークを用いた多成分系材料の材料設計法」日本機械学会第1回最適化シンポジウム講演論文集,p57−62参照)。
しかしながら、この方法では、現実に存在する材料の材料特性から少し外れた材料特性を入力して材料構成比を求めようとすると、マイナスの材料構成比が出力されて、すなわち実際に構成できない材料構成比が求められて活用が困難な場合や目的性能とした機械的挙動以外の材料物性等の機械的挙動が市場要求から逸脱し、実質上の適用が困難な場合があった。
また、他の方法として、多成分で構成される多成分系材料の各構成材料の構成比率、及び製造条件とその機械的挙動を関係づけるため、多項式を仮定して最小2乗法でその係数を定める計算手段と最適化を組み合わせた方法が知られている(岩崎学著、「混合実験の計画と解析」サイエンティスト社刊)。
しかしながら、この方法では、多項式を仮定する際に任意性が入ったり、3個以上の構成材料から成ったりする場合には、多項式の仮定が困難であり、関連付けが高精度に作成できない。このため、求めた材料設計案も有効なものとはならなかった。
本発明は、上記事実を考慮して、多成分から構成される材料の材料設計を容易にし、制約条件を考慮しながら最適化を行うので、材料の構成比の設計範囲や機械的挙動の所望の範囲を予め設定できる多成分系材料の最適化解析装置及び設計方法を得ることが目的である。
発明の開示
上記目的を達成するために本発明者は種々検討を加えた結果、異分野に利用されている「高等動物の神経回路網を工学的にモデル化された非線形予測技術、例えばニューラル・ネットワーク」及び「最適化設計手法」を材料設計と言う特殊分野に応用することに着目し、検討を試み、具体的にヤング率等の機械的挙動を考慮した設計方法として確立したものである。
具体的には、本発明の多成分系材料の設計方法は、(a)多成分から構成される多成分系材料の構成比率を該多成分系材料の機械的挙動に変換するように学習されかつ、多成分から構成される多成分系材料の構成比率を入力とし、該多成分系材料の機械的挙動を出力とする、非線形な対応を関係付けたニューラルネットワーク用いた変換系を定めるステップ、(b)前記機械的挙動を表す目的関数を定めると共に、前記機械的挙動及び前記多成分系材料の構成比率の少なくとも一方の許容範囲を制約する制約条件を定めるステップ、(c)前記ステップ(a)で定めた変換系を用いて、前記目的関数及び前記制約条件に基づいて目的関数の最適値を与える最適化を行って多成分材料の構成比率を求めて該多成分材料の構成比率に基づいて多成分系ゴム材料を設計するステップの各ステップを含んでいる。
多成分から構成される多成分材料の機械的挙動、例えばゴム部材ではヤング率やtanδ等の値は多成分材料の各構成材料の構成比率で定まる。しかし、構成比率を線形的に変化させても機械的挙動が線形に変化しない場合が多い。そこで、本発明のステップ(a)ではその構成比率と機械的挙動との非線形な対応を含む対応を関連付けた変換系を予め定めている。この変換系は、ニューラルネットワーク等の神経回路網を工学的にモデル化した非線形予測技術を用いて定めることができる。
次のステップ(b)では、機械的挙動を表す目的関数を定めると共に、機械的挙動及び多成分系材料の構成比率の少なくとも一方の許容範囲を制約する制約条件を定める。機械的挙動を表す目的関数としては、例えばゴム部材ではヤング率やtanδ等のゴム部材の優劣を支配する物理量を使用することができる。機械的挙動及び多成分系材料の構成比率の少なくとも一方の許容範囲を制約する制約条件としては、例えばゴム部材ではゴム部材のヤング率及びポアソン比の値の制約、多成分系材料のうちの少なくとも1つの構成材料に関する質量の制約等がある。なお、目的関数、設計変数及び制約条件は、上記の例に限られるものではなく、タイヤ設計目的に応じて種々のものを定めることができる。
そして、次のステップ(c)で、ステップ(a)で定めた変換系を用いて目的関数及び制約条件に基づいて目的関数の最適値を与える多成分材料の構成比率を求めて該多成分材料の構成比率に基づいて多成分系材料を設計する。これにより、多成分から構成される多成分系材料の構成比率と該多成分系材料の機械的挙動との非線形な対応を関係付ける変換系が定められ、この変換系により複数の構成材料の構成比率とその機械的挙動との対応が関連付けられた相互の関係を見出すことのできる。従って、目的関数の最適値を与える多成分材料の構成比率を求めて該多成分材料の構成比率に基づいて多成分系材料を設計することで、精度が高く任意性が少ない多成分系材料の設計が可能となる。このステップ(c)では、制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与える設計変数の値を求めることができる。
このステップ(c)で多成分系材料を設計する場合、多成分系材料の構成比率を設計変数と定め、制約条件を考慮しながらステップ(a)で定めた変換系を用いて目的関数の最適値を与える設計変数の値を求め、目的関数の最適値を与える設計変数に基づいて多成分系材料を設計することができる。このように、制約条件を考慮することにより、機械的挙動及び多成分系材料の構成比率の少なくとも一方の許容範囲を考慮することができ、設計範囲を予め特定したり、所望の範囲を設定できる。
また、ステップ(c)で設計変数の値を求める場合には、設計変数の単位変化量に対する目的関数の変化量の割合である目的関数の感度及び設計変数の単位変化量に対する制約条件の変化量の割合である制約条件の感度に基づいて制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与える設計変数の変化量を予測すると共に、設計変数を予測量に相当する量変化させたときの目的関数の値及び設計変数を予測量に相当する量変化させたときの制約条件の値を演算し、予測値と演算値とに基づいて、制約条件を考慮しながらステップ(a)で定めた変換系を用いて目的関数の最適値を与える設計変数の値を求めると効果的である。これによって、制約条件を考慮し目的関数の値が最適になるときの設計変数の値が求められる。そして、目的関数の最適値を与える設計変数に基づいて多成分材料の構成比率等を変更することにより多成分材料を設計できる。
ここで、一般的な最適化手法において最適解を求めることは、山登りにたとえられることが知られている。このとき、山の高度が性能等に関係するとすると、最適解は山の頂上に相当する。従って、目的関数が単純な場合にはその設計空間(山の形)は図8に示すような山型になるので、数理計画法をベースにした最適化手法で最適解を求めることができる。そこで、最適化を山登りに喩えた模式的な図8をモデルとして多成分材料の設計を概略説明すると、変換系は多成分から構成される多成分系材料の構成比率と該多成分系材料の機械的挙動との非線形な対応が関係付けられるものである。この変換系は、設計空間(山の形)において同一レベル(等高線)により示される。すなわち、多成分系材料の機械的挙動には複数の多成分系材料の構成比率が関係することがあり、機械的挙動が最適になるに従って、等高線のように多成分系材料の構成比率の範囲が狭範囲化することが一般的である。また、多成分系材料の構成比率の範囲には、設計上の制約や実際に取り得る範囲があることが一般的であり、多成分系材料の機械的挙動と多成分系材料の構成比率との関係は、図8に示すように山の稜線に沿った柵(フェンス)によって制限できる。これを制約条件とすれば、等高線に示されたような形の山の上を、変換系内の設計変数を変化させることにより、制約条件のフェンスを越えないように、目的関数が最適解を得る頂上まで数理計画法等の最適化手法の助けを借りて、図8に示すような形の山を登って行くことに相当する。
加えて、前記制約条件(フェンス)は、材料の構成比の設計範囲や機械的挙動の所望の範囲を予め設定する以外にも、山登りの際のガイドとして最適化手法に有効である。つまり、制約条件なしでは、計算時間の増加のみならず、計算が収束しなかったり、所望の材料の構成比の設計範囲や機械的挙動の所望の範囲から逸脱してしまうのである。
そこで、本発明では、上記ステップ(a)〜(c)によって最適解を求めるとき、以下の(d)〜(f)の各ステップが実行されて初めて最適解を得ることができる。詳細には、ステップ(c)は、ステップ(a)で定めた変換系に含まれる多成分系材料の1つの構成比率を設計変数として選択するステップ(d)と、前記制約条件を考慮しながら前記ステップ(a)で定めた変換系を用いて目的関数の最適値を与えるまで前記ステップ(a)で定めた変換系内から選択する設計変数の値を変化させるステップ(e)と、目的関数の最適値を与える設計変数による多成分系材料の構成比率に基づいて多成分系材料を設計するステップ(f)とを含んで構成することができる。ステップ(d)では、ステップ(a)で定めた変換系に含まれる多成分系材料の1つの構成比率を設計変数として選択する。次のステップ(e)では、制約条件を考慮しながらステップ(a)で定めた変換系を用いて目的関数の最適値を与えるまで変換系内から、選択する設計変数の値を変化させる。これにより、設計変数の値は微妙に変化または徐々に変化し、目的関数の最適値が与えられる。そして、次のステップ(f)において目的関数の最適値を与える設計変数による多成分系材料の構成比率に基づいて多成分系材料を設計する。このように、変換系に含まれる多成分系材料の1つの構成比率を設計変数として選択して制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与えるまで変換系内から選択する設計変数の値を変化させているので、目的関数の最適値を与える設計変数の値そのものを準備することなく、近傍の値を変換系内から選択すればよく、より精度が高く任意性が少ない多成分系材料の設計が可能となる。
この場合、ステップ(b)においては、定めた目的関数以外の機械的挙動及び前記多成分系材料の構成比率の少なくとも一方の許容範囲を制約する制約条件を定めることができる。このように、定めた目的関数以外の機械的挙動及び多成分系材料の構成比率の少なくとも一方の許容範囲を制約する制約条件を定めることにより、制約する許容範囲のうち機械的挙動としては目的関数と異なる機械的挙動が用いられる。
また、ステップ(e)では、設計変数の単位変化量に対する目的関数の変化量の割合である目的関数の感度及び設計変数の単位変化量に対する制約条件の変化量の割合である制約条件の感度に基づいて制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与える設計変数の変化量を予測すると共に、設計変数を予測量に相当する量変化させたときの目的関数の値及び設計変数を予測量に相当する量変化させたときの制約条件の値を演算し、予測値と演算値とに基づいて、前記制約条件を考慮しながらステップ(a)の変換系を用いて目的関数の最適値を与えるまで、選択する設計変数の値を変化させることができる。このように、設計変数を予測量に相当する量変化させたときの目的関数の値及び設計変数を予測量に相当する量変化させたときの制約条件の値を演算することで、目的関数の最適値を与えるまでの設計変数の値を容易に求めることができる。
また、本発明者等は種々検討を加えた結果、異分野に利用されている「遺伝的アルゴリズム手法」を材料設計と言う特殊分野に応用することに着目し、あらゆる検討を試み、具体的にそれを多成分系材料の設計方法として確立した。
具体的には、本発明の多成分系材料の設計方法において、ステップ(c)では、前記ステップ(a)において定めた変換系における多成分系材料の構成比率を材料基本モデルとして複数個の材料基本モデルからなる選択対象集団を定め、該選択対象集団の各材料基本モデルについて、前記目的関数、設計変数、制約条件、及び目的関数から評価できる適応関数を定め、前記選択対象集団から2つの材料基本モデルを選択し、所定の確率で各材料基本モデルの設計変数を交叉させて新規の材料基本モデルを生成すること及び少なくとも一方の材料基本モデルの設計変数の一部を変更させて新規の材料基本モデルを生成することの少なくとも一方を行い、設計変数を変化させ、前記ステップ(a)で定めた変換系を用いて材料基本モデルの目的関数、制約条件及び適応関数を求めて該材料基本モデル及び設計変数を変化させなかった材料基本モデルを保存しかつ保存した材料基本モデルが所定数になるまで繰り返し、保存した所定数の材料基本モデルからなる新規集団が所定の収束条件を満たすか否かを判断し、収束条件を満たさないときには該新規集団を前記選択対象集団として該選択対象集団が所定の収束条件を満たすまで繰り返すと共に、該所定の収束条件を満たしたときに保存した所定数の材料基本モデルのなかで制約条件を考慮しながら前記ステップ(a)で定めた変換系を用いて目的関数の最適値を与える設計変数による多成分材料の構成比率を求めて該多成分材料の構成比率に基づいて多成分系材料を設計する。
このステップ(a)においては、多成分系材料の構成比率を前記多成分系材料の機械的挙動に変換するように学習された多層フィードフォワード型ニューラルネットワークのデータで変換系を構成することができる。
すなわち、上記で説明したように、一般的な最適化手法としては、数理計画法や、遺伝的アルゴリズム等があり、最適解を求めることは山登りにたとえられる。この時、山の高度は性能等に関係しているので、最適解は山の頂上に相当する。目的関数が単純な場合にはその設計空間(山の形)は図1のような富士山型(ピークは一つ)であるので、数理計画法をベースにした最適化手法で最適解を求めることができる。しかし、目的関数が複雑になってくると設計空間は図9に示すように数多くのピークを有するので、数理計画法をベースにした最適化手法で最適解を求めることができない。なぜなら、数理計画法をベースにした最適化手法では、たまたま最初に到達したピークを最適解と認識するからである。この問題点を解決するために遺伝的アルゴリズムが提案されてきたが、遺伝的アルゴリズムでは膨大な実験回数や計算時間を要し、場合によっては計算が収束しないこともあった。また、ステップ(a)で用いることが可能なニューラルネットワークは、豊田秀樹著の「非線形多変量解析 −ニューラルネットワークによるアプローチ−」(朝倉書店・1996発行)のP.11〜13、P.162〜166にもあるように、線形変換の多変量解析より予測や判別の高い精度が期待でき、入力したデータ相互間の関係付けも学習することができるために、中間層のユニットの数さえ増やせば任意の関数を任意の精度で近似変換でき、併せて外挿性に優れるという利点がある。この変換系は、ニューラルネットワーク等の神経回路網を工学的にモデル化した非線形予測技術を用いて定めることができる。
そこで、ニューラルネットワークを応用し、前記最適化手法を組み合わせることによって、目的関数が複雑になった場合においても、限られた期間内に最適解を得ることが可能となった。
本発明の設計方法に基づき設計・開発した場合、従来の試行錯誤を基本とした設計・開発と異なり、コンピューター計算を主体にして機械的挙動が最良の多成分材料の設計から性能評価までが可能となり、著しい効率化を達成でき、開発にかかる費用が削減可能となる。
なお、上記の多成分系材料の設計方法により設計された多成分系材料の構成比率の配合によってゴム組成物を形成することにより、形成されたゴム組成物は、機械的挙動が最良の多成分材料の各々から構成されることになり、製造条件やコスト等の適用条件により最適な多成分材料の配合内容、例えば、カーボンの量(重量%)、ゴム薬の量(重量%)等を直接的に決定することができる。
上記多成分系材料の設計方法は、多成分から構成される多成分系材料の構成比率を該多成分系材料の機械的挙動に変換するように学習されかつ、多成分から構成される多成分系材料の構成比率を入力とし、該多成分系材料の機械的挙動を出力とする、非線形な対応を関係付けたニューラルネットワーク用いた変換系により、多成分から構成される多成分系材料の構成比率と該多成分系材料の機械的挙動との非線形な対応関係を求める変換系計算手段と、前記機械的挙動を表す目的関数を定めると共に、前記機械的挙動及び前記多成分系材料の構成比率の少なくとも一方の許容範囲を制約する制約条件を定めて、最適化項目として入力する入力手段と、前記変換系計算手段を用いて前記入力手段により入力された最適化項目に基づいて目的関数の最適値を与える最適化を行って多成分材料の構成比率を求めて求めた多成分材料の構成比率に基づいて多成分系ゴム材料を設計する最適化計算手段と、を備えた多成分系材料の最適化解析装置により実現できる。
この変換系計算手段は、前記多成分系材料の構成比率及び該多成分系材料に対する適用条件と、前記多成分系材料の機械的挙動との非線形な対応関係を求めることができる。
また、前記最適化計算手段は、前記変換系計算手段に含まれる多成分系材料の1つの構成比率を設計変数として選択する選択手段と、前記制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与えるまで前記変換系計算手段内から選択する設計変数の値を変化させる変化手段と、前記変換系計算手段を用いて目的関数の最適値が与えるまで設計変数の値を計算する最適値計算手段と、目的関数の最適値を与える設計変数による多成分系材料の構成比率に基づいて多成分系材料を設計する設計手段とから構成することができる。
また、前記最適化計算手段は、前記変換系計算手段において定めた変換系における多成分系材料の構成比率を材料基本モデルとして複数個の材料基本モデルからなる選択対象集団を定め、該選択対象集団の各材料基本モデルについて、前記目的関数、設計変数、制約条件、及び目的関数から評価できる適応関数を定め、前記選択対象集団から2つの材料基本モデルを選択し、所定の確率で各材料基本モデルの設計変数を交叉させて新規の材料基本モデルを生成すること及び少なくとも一方の材料基本モデルの設計変数の一部を変更させて新規の材料基本モデルを生成することの少なくとも一方を行い、設計変数を変化させ、前記変換系計算手段において定めた変換系を用いて材料基本モデルの目的関数、制約条件及び適応関数を求めて該材料基本モデル及び設計変数を変化させなかった材料基本モデルを保存しかつ保存した材料基本モデルが所定数になるまで繰り返し、保存した所定数の材料基本モデルからなる新規集団が所定の収束条件を満たすか否かを判断し、収束条件を満たさないときには該新規集団を前記選択対象集団として該選択対象集団が所定の収束条件を満たすまで繰り返すと共に、該所定の収束条件を満たしたときに保存した所定数の材料基本モデルのなかで制約条件を考慮しながら前記変換系計算手段において定めた変換系を用いて目的関数の最適値を与える設計変数による多成分材料の構成比率を求めて該多成分材料の構成比率に基づいて多成分系材料を設計することができる。
また、前記変換系計算手段は、前記多成分系材料の構成比率を、前記多成分系材料の機械的挙動に変換するように学習された多層フィードフォワード型ニューラルネットワークで構成することができる。
上記多成分系材料の設計方法は、以下の手順によるプログラムを含んだ記憶媒体により容易に持ち運びが可能な多成分系材料の最適化解析プログラムを記憶した記憶媒体を提供できる。
すなわち、多成分系材料の最適化解析プログラムを記録した記録媒体は、コンピュータによって多成分系材料を設計するための多成分系材料の最適化解析プログラムを記憶した記憶媒体であって、その最適化解析プログラムは、多成分から構成される多成分系材料の構成比率を該多成分系材料の機械的挙動に変換するように学習されかつ、多成分から構成される多成分系材料の構成比率を入力とし、該多成分系材料の機械的挙動を出力とする、非線形な対応を関係付けたニューラルネットワーク用いた変換系により、多成分から構成される多成分系材料の構成比率と該多成分系材料の機械的挙動との非線形な対応関係を定め、前記機械的挙動を表す目的関数を定めると共に、前記機械的挙動及び前記多成分系材料の構成比率の少なくとも一方の許容範囲を制約する制約条件を定め、前記定めた対応関係、前記目的関数及び前記制約条件に基づいて目的関数の最適値を与える最適化を行って多成分材料の構成比率を求めて該多成分材料の構成比率に基づいて多成分系ゴム材料を設計する。
この多成分材料の構成比率に基づく多成分系材料の設計は、前記定めた対応関係、前記目的関数及び前記制約条件に基づいて、前記定めた対応関係に含まれる多成分系材料の1つの構成比率を設計変数として選択し、前記制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与えるまで前記定めた対応関係内から選択する設計変数の値を変化させ、目的関数の最適値を与える設計変数による多成分系材料の構成比率に基づいて多成分系材料を設計することができる。
また、制約条件は、前記定めた目的関数以外の機械的挙動及び前記多成分系材料の構成比率の少なくとも一方の許容範囲を制約することができる。
また、設計変数の変化は、設計変数の単位変化量に対する目的関数の変化量の割合である目的関数の感度及び設計変数の単位変化量に対する制約条件の変化量の割合である制約条件の感度に基づいて制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与える設計変数の変化量を予測すると共に、設計変数を予測量に相当する量変化させたときの目的関数の値及び設計変数を予測量に相当する量変化させたときの制約条件の値を演算し、予測値と演算値とに基づいて、前記制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与えるまで、選択する設計変数の値を変化させることができる。
また、多成分材料の構成比率に基づく多成分系材料の設計は、前記定めた対応関係における多成分系材料の構成比率を材料基本モデルとして複数個の材料基本モデルからなる選択対象集団を定め、該選択対象集団の各材料基本モデルについて、前記目的関数、設計変数、制約条件、及び目的関数から評価できる適応関数を定め、前記選択対象集団から2つの材料基本モデルを選択し、所定の確率で各材料基本モデルの設計変数を交叉させて新規の材料基本モデルを生成すること及び少なくとも一方の材料基本モデルの設計変数の一部を変更させて新規の材料基本モデルを生成することの少なくとも一方を行い、設計変数を変化させた材料基本モデルの目的関数、制約条件及び適応関数を求めて該材料基本モデル及び設計変数を変化させなかった材料基本モデルを保存しかつ保存した材料基本モデルが所定数になるまで繰り返し、保存した所定数の材料基本モデルからなる新規集団が所定の収束条件を満たすか否かを判断し、収束条件を満たさないときには該新規集団を前記選択対象集団として該選択対象集団が所定の収束条件を満たすまで繰り返すと共に、該所定の収束条件を満たしたときに保存した所定数の材料基本モデルのなかで制約条件を考慮しながら前記対応関係を用いて目的関数の最適値を与える設計変数による多成分材料の構成比率を求めて該多成分材料の構成比率に基づいて多成分系材料を設計することができる。
以上説明したように本発明によれば、多成分から構成される多成分系材料の構成比率と該多成分系材料の機械的挙動との非線形な対応を関係付ける変換系を定めているので、複数の構成材料の構成比率と、その機械的挙動との対応が関連付けられた相互の関係を見出すことのできる変換系を、精度が高く任意性の少なく作成することができる、という効果がある。
また、変換系を用いて目的関数の最適値を与える多成分材料の構成比率を求めているので、有効性のある多成分材料の構成比率による最適設計案を得ることができる、という効果がある。
さらに、製造条件やコスト等の適用条件により最適な多成分材料の配合内容、例えば、カーボンの量(重量%)、ゴム薬の量(重量%)等を直接的に決定することができる。また、入力する最適化項目として、例えば、カーボンの粒子径・粒径比等の抽象的な技術情報を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本実施の形態にかかる最適化装置の外観図である。
図2は、本実施の形態にかかる最適化装置の概略構成図である。
図3は、本実施の形態にかかる最適化装置の機能別概略ブロック図である。
図4は、ニューラルネットワークの概念構成図である。
図5は、本実施の形態にかかる最適化装置の作動の流れを示すフローチャートである。
図6は、ニューラルネットワークの学習処理の流れを示すフローチャートである。
図7は、第1実施の形態の最適化処理の流れを示すフローチャートである。
図8は、本発明の最適化を説明するためのイメージ概念図である。
図9は、本発明の最適化を説明するための他のイメージ概念図である。
図10は、第2実施の形態の最適化処理の流れを示すフローチャートである。
図11は、交叉処理の流れを示すフローチャートである。
図12は、山型写像関数を示す線図であり、(a)は連続的な山型写像関数を示す線図、(b)は線型的な山型写像関数を示す線図である。
図13は、谷型写像関数を示す線図であり、(a)は連続的な谷型写像関数を示す線図、(b)は線型的な谷型写像関数を示す線図である。
図14は、突然変異処理の流れを示すフローチャートである。
発明を実施するための最良の形態
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態は、最適なゴム配合を求める最適化装置に本発明を適用したものである。第1実施の形態の最適化装置では、高等動物の神経回路網が工学的にモデル化された非線形予測技術である学習後のニューラル・ネットワークを変換系として最適化計算によって多成分材料の最適な配合を求めている。
図1には、本発明である材料最適化の実施をするための最適化装置30の概略を示した。この最適化装置30は、データ等を入力するためのキーボード10、予め記憶されたプログラムに従って非線形化予測手法によるニューラルネットワークを用いて多成分から構成される多成分系材料の構成材料の構成比率等からその機械的挙動を予測すると共に制約条件を満たしかつ目的関数を最適(例えば、最大または最小)にする設計変数を演算するコンピュータ本体12、及びコンピュータ本体12の演算結果等を表示するCRT14から構成されている。
詳細には図2に示すように、最適化装置30は、マイクロコンピュータを含んで構成されたコンピュータ本体12、データ入出力装置28、データやコマンドを入力するためのキーボード10、及びモニター14から構成されている。コンピュータ本体12は、CPU16、ROM18、RAM20、変換系等(詳細は後述)を記憶するためのメモリ22、本体と他の装置との間でデータ等をやりとりするための入出力装置(以下、I/Oという)26及びこれらをデータやコマンドが入出力可能なように接続されたバス24から構成されている。なお、ROM18には、後述する処理プログラムが記憶されている。なお、データ入出力装置28は、数値表現された多成分材料の構成比率、製造条件、機械的挙動(本実施の形態ではヤング率等)が外部記憶手段に記憶されている場合に、外部記憶手段から読み込むための装置であり、キーボード10を入力装置として用いる場合には不要である。
図3は本実施の形態の最適化装置30の機能別概略構成を示すブロック図である。本実施の形態の最適化装置30では、最大化もしくは最小化すべき機械的挙動(これを目的関数という)を最適化してその最適化した機械的挙動に対する多成分材料の構成比率を出力する。
この最適化装置30は、機能別に、非線形演算部32、最適化演算部34、実験データ入力部40、最適化項目入力部42及び最適化結果出力部44に分類される。非線形演算部32は、ニューラルネットワークで構成された変換系(詳細後述)の計算部として機能し、実験データ入力部40から入力されたデータに基づいて、多成分系材料の構成材料の構成比率、製造条件とその機械的挙動とが関連付けられた変換系を求めるためのものである。なお、ここでいう変換系とは、多成分材料の構成比率及び製造条件等とその機械的挙動とが1対1に対応するように変換及び逆変換が可能な変換系そのものをいい、学習後のニューラルネットワークを数式で表現するときは数式及びその係数を含めたものをいう。実験データ入力部40は、多成分から構成される多成分系材料の構成比率及び製造条件と、それらに対応する機械的挙動との各データを入力するためのものである。
最適化項目入力部42は、▲1▼最大化もしくは最小化すべきヤング率やtanδ等の機械的挙動(後述の目的関数)、▲2▼最大化、もしくは最小化する時に制約を設ける機械的挙動、及び多成分系材料の構成材料の構成比率並びに加硫温度や周囲温度、湿度等の製造条件、▲3▼多成分系材料の構成材料の構成比率及び製造条件のとりうる範囲、▲4▼最適化に関する方法の選択及びその時のパラメータ等を入力するためのものである。上記の最適化に関する方法は、数理計画法及び遺伝的アルゴリズム等の最適化手法があるが、本実施の形態では数理計画法による最適化手法を選択するものとする。
最適化演算部34は、目的関数を収束するまで最適化するためのものであり、目的関数・制約条件演算部36及び目的関数最適化演算部38から構成される。目的関数・制約条件演算部36は非線形演算部32による変換系を用いて多成分から構成される多成分系材料の構成比率及び製造条件からその機械的挙動を予測するためのものであり、目的関数最適化演算部38は最適化項目入力部42で入力した目的関数を制約条件を満たしつつ収束するまで最適化するためのものである。
最適化結果出力部44は、最適化演算部34による最適化の結果として、入力された最適化項目を満足するように最適化された、多成分系材料の構成材料の構成比率と製造条件を出力するためのものである。
なお、本実施の形態では、非線形演算部32は、図2に示すハードウェア資源及び後述するソフトウェア資源を用いて構成され、後述するように概念的なニューラルネットワークで構成された変換機能を有すると共に、それを学習する学習機能を有している。また、非線形演算部32は、学習機能を有さない変換機能のみを有する構成とすることも可能である。すなわち、後述するように、非線形演算部32は、多成分系材料の構成比率及び製造条件とその機械的挙動とが関連付けられた変換系を求めるものであるが、多成分系材料の構成比率及び製造条件とその機械的挙動との間で変換できればよい。従って、多成分系材料の構成比率及び製造条件とその機械的挙動との対応を予め他のニューラルネットワークで学習し、学習された他のニューラルネットワークの変換係数を入力するようにして、この変換係数を用いて多成分系材料の構成比率及び製造条件とその機械的挙動とが関連付けられた変換系を求めてもよい。つまり、変換係数が入力される構成であれば、変換係数を用いて多成分系材料の構成比率及び製造条件とその機械的挙動との間で変換する変換のみの機能でよい。また、これらの対応をルックアップテーブルとして記憶して、記憶されたルックアップテーブルを参照することによって、変換してもよい。
上記の非線形演算部32は、多成分系材料の構成比率及び製造条件の各値毎の入力を可能とするために入力層として多成分系材料の構成比率及び製造条件の数に応じたニューロンを有し、中間層を介して出力層として機械的挙動の数に応じたニューロンを有して各々のニューロンがシナプスによって結合されたニューラルネットワークを構成している。この非線形演算部32は、後述する学習後に、多成分系材料の構成比率及び製造条件の各値が入力されると、それに対応する機械的挙動が出力される。学習時には、多成分系材料の構成比率及び製造条件に対応する既知の機械的挙動が教師として入力され、出力の機械的挙動と既知の機械的挙動との誤差差分等の大小により、多成分系材料の構成比率及び製造条件の各値と、その機械的挙動とが対応されるように設定される。
この非線形演算部32に用いられているニューラルネットワークの一例としては、図4に示すように、ニューロンに対応する所定数のユニットI1、I2、・・・、Ip(p>1)から成る入力層、多数のユニットM1、M2、・・・、Mq(q>1)から成る中間層、及び所定数の出力ユニットU1、U2、・・・、Ur(r>1)から成る出力層から構成されている。なお、入力層のユニット数、及び出力層のユニット数は多成分系材料の構成比率及び製造条件の個数、機械的挙動の個数に応じて設定すればよい。また、中間層の各ユニット及び出力層の各ユニットには出力値を所定値だけオフセットさせるためのオフセットユニット46、48に接続されている。上記入力層のユニットには例えば、カーボンブラック、Si、ポリマ、及びゴム薬の量(重量%)やカーブンブラックの粒子径・粒径比、そしてコストを入力値として用いることができる。出力層のユニットには例えば、ヤング率、ポアソン比、tanδ、コストを出力値として用いることができる。
なお、本実施の形態では、中間層のユニット及び出力層のユニットは入出力関係がシグモイド関数によって表されるシグモイド特性を有する神経回路素子により構成され、入力層のユニットは入出力関係が線形の神経回路素子で構成されている。このシグモイド特性を有するように構成することによって、出力値は実値(正の数)となる。
非線形演算部32における、中間層のユニット及び出力層のユニットの各々の出力は、次の(1)、(2)式で表すことができる。すなわち、或るユニットについて、入力側のシナプスの個数をpとし、各シナプス結合の強さに相当する重み(ユニットの結合係数)をwji(1≦j≦N,1≦i≦p)とし、各入力信号をxjとするとき、ニューロンの膜電位の平均値に相当する仮想的な内部状態変数uは次の(1)で表すことができ、出力yはニューロンの特性を表す非線形関数fにより次の(2)式で表すことができる。
従って、入力層のユニットへ多成分系材料の構成比率及び製造条件の各値を入力することによって、出力層のユニットから、機械的挙動の個数に応じた各値が出力される。
なお、上記の入力層の各ユニットの特性は入力をそのまま出力する特性でよい。また、非線形演算部32(ニューラルネットワーク)の各ユニットの重み(結合係数)は、後述する学習処理により、既知である実験データについて誤差が最小となるように学習・修正される。
次に、非線形演算部32におけるニューラルネットワークの学習の処理の詳細を図6を参照して説明する。本実施の形態では、多成分系材料の構成比率及び製造条件の各値によってゴム部材を形成すると共に、形成されたゴム部材の機械的挙動を表す各値を予め測定する。このゴム部材を異なる構成比率及び製造条件の複数について形成し測定することによって、これらの多成分系材料の構成比率及び製造条件の各値と、その機械的挙動を表す各値との対応を実験データとし、学習時に用いる複数の教師データとしている。なお、複数の教師データのうち所定数(例えば、全体の90%)の実験データを学習データとすると共に、それ以外(例えば、残り10%)の実験データをテストデータとしている。これは実験データを、ニューラルネットワークの学習時に用いるデータと、学習が終了したニューラルネットワークが最適に学習がなされたかを確認するデータとに用いるためである。また、これら構成比率及び製造条件の各値を入力教師データとすると共に、ゴム部材の機械的挙動を表す各値を出力教師データとしている。
まず、ステップ200では、予め求めた、学習データ及びテストデータを読み取る。次のステップ202では、ニューラルネットワークにおける各ユニットのの結合係数(重み)及びオフセット値を予め定めた値に設定することによって初期化する。次のステップ204では、構成比率及び製造条件が既知の複数の学習データを用いてニューラルネットワークを学習させるため、中間層及び出力層の各々のユニットの誤差を求める。
出力層の誤差は学習データの機械的挙動に対する差を誤差とすることができる。各結合係数及びオフセット値の少なくとも1つを僅かづつ変化させることによって出力層の誤差、すなわちユニットの誤差が最小になるようにすることができる。また、中間層の誤差は、出力層の誤差を用いて誤差逆伝搬法等の逆計算により求めることができる。
次のステップ206では、上記求めた各結合係数及びオフセット値を更新(書換え)して、次のステップ208においてその更新された各結合係数及びオフセット値によるニューラルネットワークによってテストデータの各々をテストしてテスト結果の値としてゴム部材の機械的挙動を表すデータを得る。次のステップ210では、上記ステップ208で求めたテスト結果の値が収束判定の基準である所定範囲内の値か否かを判別することにより収束したか否かを判断するか、または上記の処理を所定回数繰り返ししたか否かを判断し、肯定判断の場合には本ルーチンを終了する。一方、否定判断の場合にはステップ204へ戻り、上記処理を繰り返す。これによって、学習データを入力した場合に、中間層及び出力層の各々のユニットの誤差が最小になるように各結合係数及びオフセット値が定まる。
このようにして、構成比率及び製造条件が既知の複数の実験データを用いてニューラルネットワークを学習させる。すなわち、教師信号に対するニューラルネットワークの出力層からの出力値の誤差が最小となるように学習される。このように、学習することによって非線形演算部32では、構成比率及び製造条件の値が入力されると、ゴム部材の機械的挙動を表す値を出力することになる。
なお、以上の処理が終了し、ニューラルネットワークの学習が十分に行われた後に、ネットワークの構造、すなわち結合係数やオフセット値をメモリ18に記憶し、変換系を構築するようにしてもよい。
上記では非線形演算部32としてニューラルネットワークを用いた場合を説明したが、次の(3)式に示すように、多項式による応答曲面法を利用した変換系を用いることもできる。
次に、本実施の形態の最適化装置30の作動を図5のフローチャートを参照してさらに説明する。最適化装置30の電源が投入または実行開始の指示がキーボードよりなされると、図5のステップ100へ進み、多成分材料の各構成材料の量や比率、コストを表す配合パラメータxi(i=1〜p)、ヤング率等の目標物性・特性(機械的挙動)、最大実験回数を設定する。すなわち、何れの構成材料の量や比率及びコスト(配合パラメータ)を変化させて、何れの目標物性・特性を改良するか、またその場合、何回程度の実験回数までに最適な配合パラメータを決定したいかを設定する。
次のステップ102では、ステップ100で設定した配合パラメータxiの許容範囲を設定し(xi L≦xi≦xi U:xi Lは下限値、xi Uは上限値)、次のステップ104では実験回数M及び配合パラメータの位置を表す変数eを初期化する(M=0、e=1)。
次のステップ106では、ステップ100で設定した配合パラメータxi、目標物性・特性に関して、過去の実験データを利用できるか否かを判定し、肯定判定で利用できるときはステップ108へ進み、否定判定で新規に求めなければならないときはステップ120へ進む。
ステップ120では、直交表または最適実験計画等を用いて、何れの配合パラメータxiを変化させて実験を行うかを決定することによって配合パラメータを決定する。この配合パラメータの決定は、「Box and Draper;“Empirical Model Builing and Response Surfaces”,John Wiley & Sons,New York」に記載の方法を利用することができる。
次のステップ122では、ステップ120で決定した実験計画に従った多成分材料の各構成材料の量や比率によりゴムを配合することにより多成分材料を形成し、その物性・特性を測定する実験を行い、実験データを得る。なお、このときの全実験数をneとする。
次のステップ124では、上記で説明したようにしてニューラルネットワークを学習する。すなわち、入力層へ入力する値をゴム配合パラメータの各値、出力層から出力される値をゴム物性・特性の各値としてニューラルネットワークを学習する。
次のステップ126では、目標物性・特性に対して寄与が少ない配合パラメータの有無を判断する。例えば、入力層の少なくとも1つのユニットへ入力した配合パラメータxiを僅か変化させたときに対する出力層のゴム物性・特性の変化傾向を示す感度、及び入力層の少なくとも1つのユニットからの出力を零にしたときに対する、出力層のゴム物性・特性の予測精度の低下度合を計算し、寄与が少ない配合パラメータを決定する。これは感度が小さくその入力を無視しても予測精度が低下しない配合パラメータは寄与が少ないと考えられるためである。
寄与が少ない配合パラメータが有るときは、ステップ126で肯定判断され、次のステップ128において寄与が少ない配合パラメータxiを削除し、その削除された後の配合パラメータによって再度学習する(ステップ124)。一方、寄与が少ない配合パラメータが無のときはステップ126で否定判断され、次のステップ130において上記学習されたニューラルネットワークの入力層(配合パラメータ)と出力層(ゴム物性・特性)の関係を記憶する。すなわち、各結合係数及びオフセット値を記憶する。
次のステップ132では、記憶された入力層(配合パラメータ)と出力層(ゴム物性・特性)の関係を用いて後述するようにして目的関数を最適化することによって最良の配合パラメータxiを求める(図7)。
最適化が終了すると、次のステップ134で実験回数Mが増加され(M=M+ne)、次のステップ136において、M<(設定された最大の実験回数)か否かが判断され、小さい場合には、ステップ138へ進む。
ステップ138では変数eをインクリメントし、次のステップ140で、以下の(4)〜(6)式に示すように配合パラメータの許容範囲を再設定してステップ120へ戻る。この処理を繰り返すことで、最適な配合パラメータxi OPTの精度を向上することができる。なお、ステップ140の許容範囲の再設定は、ステップ102で定めた配合パラメータの許容範囲を狭め設定を行い、ステップ120ではこの狭めた領域について再実験点の計画を行う。
ここで、NNは、配合パラメータの許容範囲を狭める程度を定めるための係数であり、1.5から5程度の値を設定することが望ましい。
一方、ステップ136で否定判断、すなわち予め定めた最大の実験回数より多く実験した場合には、次のステップ142で最後に得られた配合パラメータを最適配合として出力する。次のステップ144では、過去の実験データ内に同様な配合があるか否かを判断し、否定判断の場合には次のステップ146で最適配合のゴムの物性・特性をメモリ22またはデータ入出力装置28を介して外部記憶装置等のデータベースへ登録する。なお、再度実験してゴムの物性・特性を求めてもよい。
なお、最大の実験回数は、実験にかかる費用及び最適配合を求めるのに用する時間等によって定められた定数である。
次に、上記ステップ106で肯定判断された場合には、ステップ108において、予め用意されたデータベースからステップ100で設定した各項目に関連した過去の配合パラメータ、ゴム物性・特性を読み取り、次のステップ110において、その読み取ったデータCi(i=1〜p)を以下の(7)〜(10)式を用いて尖度、歪度が小さくなるように変換する。
次のステップ112では、上記ステップ124と同様にニューラルネットワークを学習し、次のステップ114で上記ステップ130と同様に学習結果を記憶する。次のステップ116では実験データに戻すために、ステップ110による変換の逆変換を行い、次のステップ118で全実験数neをリセットし(=0)、ステップ132へ進む。
次に、図5のステップ132の最適化処理の詳細を説明する。図7のステップ300では、改良したいゴム物性・特性を表す目的関数、或るゴム物性・特性を改良するときに悪化してはならないゴム物性・特性等を制約する制約条件及びゴム配合内容に関する配合パラメータを決定する設計変数を定め、次のステップ302で配合パラメータの数を表す変数jをリセット(=0)する。
次のステップ304では、最適化するときの初期値として用いる配合パラメータを設定する。多成分材料の配合の最適化問題は、入力値(例えばカーボンブラック量とゴム薬量)を2次元平面にプロットして目的関数の値を高さ方向にプロットしたイメージによる3次元的に捉えると多成分材料の配合を表す形状が多峰性を有するために、異なった初期値から最適化を行って最適解の解空間を知る必要がある。初期値としては、例えば、以下に示す(11)式を用いることができる。
次のステップ306では、ステップ304で設定した初期配合パラメータを入力としてニューラルネットワークによる出力を実行し、入力した配合パラメータに対応したゴム物性・特性を予測する。その結果を用いて、目的関数、制約条件の初期値を演算する。
次のステップ308では、配合パラメータを変化させるためにステップ304で設定された配合パラメータxiを各々Δxiづつ変化させて、次のステップ310で、設計変数をΔxi変化させた後の目的関数の値OBJi及び制約条件の値Giを演算し、ステップ312で以下の式(12)、(13)に従って、設計変数の単位変化量に対する目的関数の変化量の割合である目的関数の感度dOBJ/dxi及び設計変数の単位変化量に対する制約条件の変化量の割合である制約条件の感度dG/dxiを各設計変数毎に演算する。
この感度によって、設計変数をΔxi変化させたときに目的関数の値がどの程度変化するか予測することができる。この予測、すなわち、多成分材料の配合の最適化の過程は、登山に例えることができ、目的関数の値の変化を予測することは登山の方向を指示することに相当する。
次のステップ314では、全配合パラメータについて演算が終了したか否かを判断し、全ての配合パラメータについて演算が終了していない場合には、ステップ308からステップ312を繰り返し実行する。
次のステップ316では、目的関数、制約条件の設計変数に関する感度を用いて、数理計画法により制約条件を満たしながら目的関数を最小(又は最大)にする設計変数の変化量を予測する。この設計変数の予測値を用いて、ステップ318で各配合パラメータを修正すると共に、修正された各配合パラメータによる目的関数値を演算する。次のステップ320では、ステップ318で演算した目的関数値OBJとステップ306で演算した目的関数の初期値OBJoとの差と、予め入力されたしきい値とを比較することで目的関数の値が収束したか否かを判断し、目的関数の値が収束していない場合にはステップ316で求められた設計変数値を初期値として、ステップ306からステップ320を繰り返し実行する。目的関数の値が収束したと判断されたときには、このときの設計変数の値をもって制約条件を満たしながら目的関数を最良にする設計変数の値とし、ステップ322においてこの設計変数の値を用いて配合パラメータを決定し、次のステップ324で変数jをインクリメントしてステップ326へ進む。
ステップ326ではjが初期配合パラメータの許容数:(1+Munit)pを越えるか否かを判断し、越えない場合には、ステップ304へ戻り初期配合パラメータの値を変更して上記ステップ304からステップ326を繰り返し実行する。
一方、ステップ326で肯定判断の場合には次のステップ328で最適配合点を決定し、本ルーチンを終了する。本実施の形態のステップ328における最適配合点の決定は、次の2つの条件を考慮して求めるものであり、条件に対する一致度が大きいものを最適配合とする。
[条件]
▲1▼目的関数OBJが小さい値を有する。
(目的関数に選んだ物性・特性値が小さい方が良いように設定する。
大きい方が良い場合にはマイナス符号を付与して対応する。)
▲2▼求められた最適解の周りで配合パラメータを少し変更しても目的関数、制約条件が余り変化しない。
以上説明したように、本実施の形態では、変換系を定めるために、ニューラルネットワークによる非線形演算部において、複数の構成材料の構成比率、製造条件と材料の機械的挙動との対応関係を実験データにより学習しているので、変換系を計算する手段として関数型を仮定する必要がなく、複数の構成材料の構成比率及び製造条件と、材料の機械的挙動との対応が関連付けられた相互の関係を見出すことのできる変換系を、精度が高く任意性の少なく作成することができる。また、その変換系と最適化演算部を組み合わせることによって、有効性のある材料最適設計案を出力することができる。
次に、第2実施の形態を説明する。本実施の形態は、上記実施形態における感度解析(図7)に代えて遺伝的アルゴリズムの手法によって、最適化するものである。なお、本実施例は、上記実施例と略同様の構成であるため、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図10は、本実施の形態の最適化処理プログラムの処理ルーチンを示すものである。上記図5のステップ132が実行されると、図10に示す処理ルーチンが実行され、ステップ400では、N個のタイヤについてモデル化がなされる。つまり多成分材料の各構成材料の量や比率、コストを表す配合パラメータrij(i=1〜p,j=1〜N)と、ヤング率等の目標物性・特性(機械的挙動)との対応関係を材料モデルとしてモデル化する。なお、N個のモデル化は、図4に示したニューラルネットワークの入力層へ入力されるべきインプットI1〜Ipを乱数に基づいてN個生成することを言う。なお、Nは予め使用者がインプットする。
次のステップ402では、目的関数、制約条件を決定する。すなわち、改良したいまたは新規に望まれるゴム物性・特性を表す目的関数、或るゴム物性・特性を改良するときに悪化してはならないゴム物性・特性等を制約する制約条件を定める(目的関数OBJ、制約条件Gを決定)。次のステップ404では、N個の材料モデルの各々の設計変数riJの各々の目的関数OBJJ及び制約条件GJを演算する。
次のステップ406では、ステップ404で求めたN個の材料モデルの各々の目的関数OBJJ及び制約条件GJを用いて、N個の材料モデルの各々の適応関数FJを以下の式(14)に従って演算する。本実施の形態では、例えばヤング率,ポアソン比、tanδやコストを最適にするため、適応関数による値(適応度)は、目的関数OBJJの値が大きくなり制約条件GJの値が小さくなると大きくなる。
次のステップ408では、N個の材料モデルの中から交叉させる材料モデルを2個選択する。選択方法としては、一般に知られている適応度比例戦略を用い、N個の材料モデルのある個体lが各々選択で選ばれる確率PLは以下の式で表わされる。
本実施の形態では、選択方法として適応度比例戦略を用いたが、この他、遺伝的アルゴリズム(北野宏明 編)に示されている様な、期待値戦略、ランク戦略、エリート保存戦略、トーナメント選択戦略、あるいはGENITORアルゴリズム等を用いてもよい。
次のステップ410では、選択された2個の材料モデルを、使用者が予め入力した確率Tによって交叉させるか否かを決定する。ここでいう、交叉とは、後述するように、2個の材料モデルの要素の一部を交換することをいう。否定判定で交叉させない場合は、ステップ412において現在の2個の材料モデルをそのままの状態でステップ416へ進む。一方、肯定判定で交叉させる場合には、ステップ414において後述するように2個の材料モデルを交叉させる。
2個の材料モデルの交叉は、図11に示す交叉ルーチンによって行われる。先ず、図10のステップ408において選択された2個の材料モデルを材料モデルa及び材料モデルbとすると共に、各々の材料モデルa,bの設計変数について並びを含む設計変数ベクトルで表し、材料モデルaの設計変数ベクトルをVra=(r1 a、r2 a、・・・、ri a、・・・、rn-1 a)、材料モデルbの設計変数ベクトルをVrb=(r1 b,r2 b、・・・ri b、・・・rn-1 b)とする。図11のステップ450では、予め定めた乱数を生成し、この乱数に応じて材料モデルa,bの設計変数ベクトルに関する交叉場所iを決定する。
次のステップ452では、交叉すると決定された材料モデルa,bの設計変数ri a,ri bに対して、以下の式に従って距離dを求める。
d=|ri a−ri b|
次のステップ454では、ri a、ri bの取り得る範囲の最小値BL及び最大値Buを用いて、以下の式に従って正規化距離d’を求める。
ステップ456では、正規化距離d’の値を適度に分散させるために、図12(a),(b)に示すような山型の写像関数Z(x)(0≦x≦1,0≦Z(x)≦0.5)を用いて、以下の式に従って関数値Zabを求める。
Zab=Z(d’)
このようにして、関数値Zabを求めた後、ステップ458において新しい設計変数ri’a、ri’bを次の式に従って求める。
このようにして、ri’a、ri’bを求めた後、ステップ460で新しい設計変数の並びである設計変数ベクトルVr’a、Vr’bは以下のように求められる。
Vr’a=(r1 a、r2 a、・・・ri’a、ri+1 b、・・・、rn-1 b)
Vr’b=(r1 b、r2 b、・・・ri’b、ri+1 a、・・・、rn-1 a)
なお、riの取り得る範囲の最小値BL及び最大値Buは、使用者が予め入力しておく。また、写像関数Z(x)は図13(a),(b)に示すような、谷型の関数でもよい。また、上記では交叉場所iは1ヶ所であるが、この他に遺伝的アルゴリズム(北野 宏明 編)に示されているような、複数点交叉または一様交叉等を用いてもよい。
このような交叉によって新規な2個の材料モデルを生成した後、図10のステップ416では、使用者が予め入力した確率Sで、突然変異させるか否かを決定する。この突然変異は、後述するように、設計変数の一部を微小に変更することをいい、最適な設計変数となりうる母集団を含む確度を高くするためである。ステップ416で、否定判定で突然変異させない場合には、ステップ426では現在の2個の材料モデルのまま、次のステップ422へ進む。肯定判定で突然変異させる場合には、次のステップ420で以下のようにして突然変異処理を行う。
この突然変異は、図14に示す突然変異ルーチンによって行われる。先ず、ステップ462では乱数を生成し、乱数によって突然変異の場所iを決定する。次のステップ464では、距離d’を
0≦d’≦1
の範囲で乱数により決定する。
次のステップ466では、図12(a),(b)に示すような山型の写像関数Z(x)(0≦x≦1で、0≦Z(x)≦0.5)あるいは図13(a),(b)に示すような谷型の写像関数Z(x)を用いて、以下の式に従って、関数値Zdを求める。
Zd=Z(d’)
このようにして、関数値Zdを求めた後、ステップ468において新しい設計変数ri’を以下の式に従って求める。
このようにして、設計変数ri’を求めた後、ステップ470で求められる、新しい設計変数の並びである設計変数ベクトルVr’は以下のようになる。
Vr’=(r1、r2、・・・ri’、ri+1、・・・、rn-1)
このようにして、新たに生成された2個の材料モデルについて、目的関数の値と制約条件の値を図10のステップ422で演算する。次のステップ424では、得られた目的関数の値と制約条件の値から上記と同様に式(14)を用いて適応関数を演算する。
次のステップ426では、上記2個の材料モデルを保存する。次のステップ428では、ステップ426で保存した材料モデルの数が、N個に達したか否かを判断し、N個に達していない場合は、N個になるまでステップ408からステップ428を繰り返し実行する。一方、材料モデルの数がN個に達した場合には、ステップ430で収束判定をし、収束していない場合には、N個の材料モデルをステップ426で保存された材料モデルに更新し、ステップ408からステップ430を繰り返し実行する。一方、ステップ430で収束したと判断された場合には、N個の材料モデルの中で制約条件を略満たしながら目的関数の値が最大となる材料モデルの設計変数の値をもって制約条件を略満たしながら目的関数を最大にする設計変数の値とし、ステップ432においてこの設計変数の値を用いて上記実施の形態と同様にして最適配合点を決定し、本ルーチンを終了する。
なお、ステップ430の収束判定は以下の条件のいずれかを満足したら収束とみなす。
1)世代数がM個に達した
2)一番目的関数の値が大きい線列の数が全体のq%以上になった
3)最大の目的関数の値が、続くs回の世代で更新されない。
なお、M、q、sは使用者が予め入力しておく。
上記実施の形態により求めた多成分系材料の構成比率の配合(ゴム配合)によって形成されるべきゴム組成物をタイヤとして、実際にタイヤを作成し、作成したタイヤについて各種試験を行った。以下の表1には、最適化するための多成分系材料の構成材料を示した。表2には、上記実施の形態により求めた結果の多成分系材料の構成比率の配合(ゴム配合)を示した。
なお、上記の他の成分(加流剤、加流促進剤、老防等)は適宜配合されているものとする。
また、上記実施の形態による、材料最適化をするにあたり、目的関数及び制約条件は以下のように定めている。
〔目的関数〕
配合1:DRYμ+Wetμを最大にする。
配合2:Wetμ+発熱性を最大にする。
〔制約条件〕
目的関数に関与していない特性値が95より大きいこと。
上記多成分系材料の構成比率の配合(ゴム配合)によって形成されたタイヤを実際に作成し、作成したタイヤについて各種試験を行った結果を以下の表3に示した。
上記表2の各試験は以下のようにして求めたものである。
破壊は、JIS K 6251に従い、室温(25℃)にて引っ張り試験を行う、切断時の引っ張り強度を測定し、コントロールを100として、配合1及び配合2の各々の指数を求めたものである。なお、表では数値が大きい程性能が高いことを示している。
発熱は、JIS K 6255に従い、室温(25℃)にて反発弾性試験を行い、反発弾性を測定し、その逆数を求め、コントロールを100として、配合1及び配合2の各々の指数を求めたものである。なお、表では数値が大きい程性能が高いことを示している。
摩耗は、JIS K 6264のランボーン試験に従い、室温(25℃)にて摩耗抵抗指数を測定し、コントロールを100として、配合1及び配合2の各々の指数を求めたものである。なお、表では数値が大きい程性能が高いことを示している。
Wetμは、Wet時ブレーキ試験の値を示し、試験タイヤを実車に装着して、ウェット路面(テストコース)を走行させ、時速20km/hの時点でブレーキを踏み(強制動させ)、タイヤをロックさせ、停止するまでの距離を測定したものである。表では、コントロールを100として、配合1及び配合2の各々の指数を求めたものである。なお、表では数値が大きい程性能が高いことを示している。
Iceμは、Ice時ブレーキ試験の値を示し、試験タイヤを実車に装着して、氷上路面(テストコース)を走行させ、時速40km/hの時点でブレーキを踏み(強制動させ)、タイヤをロックさせ、停止するまでの距離を測定したものである。表では、コントロールを100として、配合1及び配合2の各々の指数を求めたものである。なお、表では数値が大きい程性能が高いことを示している。
DRYμは、DRY時ブレーキ試験の値を示し、試験タイヤを実車に装着して、DRY路面(テストコース)を走行させ、時速60km/hの時にブレーキを踏み(強制動させ)、タイヤをロックさせ、停止するまでの距離を測定したものである。表では、コントロールを100として、配合1及び配合2の各々の指数を求めたものである。なお、表では数値が大きい程性能が高いことを示している。
産業上の利用可能性
以上のように、本発明にかかる多成分系材料の設計方法、最適化解析装置及び多成分系材料の最適化解析プログラムを記録した記録媒体は、多成分から構成される多成分系材料の材料設計、例えば配合設計に用いることが可能な多成分系材料の設計方法、最適化解析装置及び多成分系材料の最適化解析プログラムを記録した記録媒体に関する。多成分からなる組成物等の多成分系材料、例えば、タイヤ用のゴム等のゴム組成物の配合設計に用いて好適であり、特に、多成分系材料の構成比率と性能に寄与する機械的挙動との関係が非線形であるときの設計に用いるのに適している。
Claims (18)
- 次の各ステップを含む多成分系ゴム材料の設計方法。
(a)多成分から構成される多成分系材料の構成比率を該多成分系材料の機械的挙動に変換するように学習されかつ、多成分から構成される多成分系材料の構成比率を入力とし、該多成分系材料の機械的挙動を出力とする、非線形な対応を関係付けたニューラルネットワーク用いた変換系を定めるステップ、
(b)前記機械的挙動を表す目的関数を定めると共に、前記機械的挙動及び前記多成分系材料の構成比率の少なくとも一方の許容範囲を制約する制約条件を定めるステップ、
(c)前記ステップ(a)で定めた変換系を用いて、前記目的関数及び前記制約条件に基づいて目的関数の最適値を与える最適化を行って多成分材料の構成比率を求めて該多成分材料の構成比率に基づいて多成分系ゴム材料を設計するステップ。 - 前記ステップ(c)では、前記多成分系材料の構成比率を設計変数と定め、制約条件を考慮しながら前記ステップ(a)で定めた変換系を用いて目的関数の最適値を与える設計変数の値を求め、目的関数の最適値を与える設計変数に基づいて多成分系ゴム材料を設計することを特徴とする請求項1に記載の多成分系ゴム材料の設計方法。
- 前記ステップ(c)では、設計変数の単位変化量に対する目的関数の変化量の割合である目的関数の感度及び設計変数の単位変化量に対する制約条件の変化量の割合である制約条件の感度に基づいて制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与える設計変数の変化量を予測すると共に、設計変数を予測量に相当する量変化させたときの目的関数の値及び設計変数を予測量に相当する量変化させたときの制約条件の値を演算し、予測値と演算値とに基づいて、制約条件を考慮しながら前記ステップ(a)で定めた変換系を用いて目的関数の最適値を与える設計変数の値を求める請求項2に記載の多成分系ゴム材料の設計方法。
- 前記ステップ(c)は、前記ステップ(a)で定めた変換系に含まれる多成分系材料の1つの構成比率を設計変数として選択するステップ(d)と、前記制約条件を考慮しながら前記ステップ(a)で定めた変換系を用いて目的関数の最適値を与えるまで前記ステップ(a)で定めた変換系内から選択する設計変数の値を変化させるステップ(e)と、目的関数の最適値を与える設計変数による多成分系材料の構成比率に基づいて多成分系ゴム材料を設計するステップ(f)とを含むことを特徴とする請求項1に記載の多成分系ゴム材料の設計方法。
- 前記ステップ(b)は、前記定めた目的関数以外の機械的挙動及び前記多成分系材料の構成比率の少なくとも一方の許容範囲を制約する制約条件を定めることを特徴とする請求項4に記載の多成分系ゴム材料の設計方法。
- 前記ステップ(e)は、設計変数の単位変化量に対する目的関数の変化量の割合である目的関数の感度及び設計変数の単位変化量に対する制約条件の変化量の割合である制約条件の感度に基づいて制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与える設計変数の変化量を予測すると共に、設計変数を予測量に相当する量変化させたときの目的関数の値及び設計変数を予測量に相当する量変化させたときの制約条件の値を演算し、予測値と演算値とに基づいて、前記制約条件を考慮しながら前記ステップ(a)で定めた変換系を用いて目的関数の最適値を与えるまで、選択する設計変数の値を変化させることを特徴とする請求項4または5に記載の多成分系ゴム材料の設計方法。
- 前記ステップ(c)では、前記ステップ(a)において定めた変換系における多成分系材料の構成比率を材料基本モデルとして複数個の材料基本モデルからなる選択対象集団を定め、該選択対象集団の各材料基本モデルについて、前記目的関数、設計変数、制約条件、及び目的関数から評価できる適応関数を定め、前記選択対象集団から2つの材料基本モデルを選択し、所定の確率で各材料基本モデルの設計変数を交叉させて新規の材料基本モデルを生成すること及び少なくとも一方の材料基本モデルの設計変数の一部を変更させて新規の材料基本モデルを生成することの少なくとも一方を行い、設計変数を変化させ、前記ステップ(a)で定めた変換系を用いて材料基本モデルの目的関数、制約条件及び適応関数を求めて該材料基本モデル及び設計変数を変化させなかった材料基本モデルを保存しかつ保存した材料基本モデルが所定数になるまで繰り返し、保存した所定数の材料基本モデルからなる新規集団が所定の収束条件を満たすか否かを判断し、収束条件を満たさないときには該新規集団を前記選択対象集団として該選択対象集団が所定の収束条件を満たすまで繰り返すと共に、該所定の収束条件を満たしたときに保存した所定数の材料基本モデルのなかで制約条件を考慮しながら前記ステップ(a)で定めた変換系を用いて目的関数の最適値を与える設計変数による多成分材料の構成比率を求めて該多成分材料の構成比率に基づいて多成分系ゴム材料を設計することを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の多成分系ゴム材料の設計方法。
- 前記ステップ(a)において、前記多成分系材料の構成比率を前記多成分系材料の機械的挙動に変換するように学習された多層フィードフォワード型ニューラルネットワークのデータで前記変換系を構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の多成分系ゴム材料の設計方法。
- 多成分から構成される多成分系材料の構成比率を該多成分系材料の機械的挙動に変換するように学習されかつ、多成分から構成される多成分系材料の構成比率を入力とし、該多成分系材料の機械的挙動を出力とする、非線形な対応を関係付けたニューラルネットワーク用いた変換系により、多成分から構成される多成分系材料の構成比率と該多成分系材料の機械的挙動との非線形な対応関係を求める変換系計算手段と、
前記機械的挙動を表す目的関数を定めると共に、前記機械的挙動及び前記多成分系材料の構成比率の少なくとも一方の許容範囲を制約する制約条件を定めて、最適化項目として入力する入力手段と、
前記変換系計算手段を用いて前記入力手段により入力された最適化項目に基づいて目的関数の最適値を与える最適化を行って多成分材料の構成比率を求めて求めた多成分材料の構成比率に基づいて多成分系ゴム材料を設計する最適化計算手段と、
を備えた多成分系ゴム材料の最適化解析装置。 - 前記変換系計算手段は、前記多成分系材料の構成比率及び該多成分系材料に対する適用条件と、前記多成分系材料の機械的挙動との非線形な対応関係を求めることを特徴とする請求項9に記載の多成分系ゴム材料の最適化解析装置。
- 前記最適化計算手段は、前記変換系計算手段に含まれる多成分系材料の1つの構成比率を設計変数として選択する選択手段と、前記制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与えるまで前記変換系計算手段内から選択する設計変数の値を変化させる変化手段と、前記変換系計算手段を用いて目的関数の最適値が与えるまで設計変数の値を計算する最適値計算手段と、目的関数の最適値を与える設計変数による多成分材料の構成比率に基づいて多成分系ゴム材料を設計する設計手段とから構成されたことを特徴とする請求項9または請求項10に記載の多成分系ゴム材料の最適化解析装置。
- 前記最適化計算手段は、前記変換系計算手段において定めた変換系における多成分系材料の構成比率を材料基本モデルとして複数個の材料基本モデルからなる選択対象集団を定め、該選択対象集団の各材料基本モデルについて、前記目的関数、設計変数、制約条件、及び目的関数から評価できる適応関数を定め、前記選択対象集団から2つの材料基本モデルを選択し、所定の確率で各材料基本モデルの設計変数を交叉させて新規の材料基本モデルを生成すること及び少なくとも一方の材料基本モデルの設計変数の一部を変更させて新規の材料基本モデルを生成することの少なくとも一方を行い、設計変数を変化させ、前記変換系計算手段において定めた変換系を用いて材料基本モデルの目的関数、制約条件及び適応関数を求めて該材料基本モデル及び設計変数を変化させなかった材料基本モデルを保存しかつ保存した材料基本モデルが所定数になるまで繰り返し、保存した所定数の材料基本モデルからなる新規集団が所定の収束条件を満たすか否かを判断し、収束条件を満たさないときには該新規集団を前記選択対象集団として該選択対象集団が所定の収束条件を満たすまで繰り返すと共に、該所定の収束条件を満たしたときに保存した所定数の材料基本モデルのなかで制約条件を考慮しながら前記変換系計算手段において定めた変換系を用いて目的関数の最適値を与える設計変数による多成分材料の構成比率を求めて該多成分材料の構成比率に基づいて多成分系ゴム材料を設計することを特徴とすることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の多成分系ゴム材料の最適化解析装置。
- 前記変換系計算手段は、前記多成分系材料の構成比率を、前記多成分系材料の機械的挙動に変換するように学習された多層フィードフォワード型ニューラルネットワークであることを特徴とする請求項9乃至請求項12の何れか1項に記載の多成分系ゴム材料の最適化解析装置。
- コンピュータによって多成分系材料を設計するための多成分系ゴム材料の最適化解析プログラムを記憶した記憶媒体であって、
最適化解析プログラムは、
多成分から構成される多成分系材料の構成比率を該多成分系材料の機械的挙動に変換するように学習されかつ、多成分から構成される多成分系材料の構成比率を入力とし、該多成分系材料の機械的挙動を出力とする、非線形な対応を関係付けたニューラルネットワーク用いた変換系により、多成分から構成される多成分系材料の構成比率と該多成分系材料の機械的挙動との非線形な対応関係を定め、
前記機械的挙動を表す目的関数を定めると共に、前記機械的挙動及び前記多成分系材料の構成比率の少なくとも一方の許容範囲を制約する制約条件を定め、
前記定めた対応関係、前記目的関数及び前記制約条件に基づいて目的関数の最適値を与える最適化を行って多成分材料の構成比率を求めて該多成分材料の構成比率に基づいて多成分系ゴム材料を設計する
ことを特徴とする多成分系ゴム材料の最適化解析プログラムを記録した記録媒体。 - 前記多成分材料の構成比率に基づく多成分系ゴム材料の設計は、
前記定めた対応関係、前記目的関数及び前記制約条件に基づいて、前記定めた対応関係に含まれる多成分系材料の1つの構成比率を設計変数として選択し、前記制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与えるまで前記定めた対応関係内から選択する設計変数の値を変化させ、目的関数の最適値を与える設計変数による多成分材料の構成比率に基づいて多成分系ゴム材料を設計することを特徴とする請求項14に記載の多成分系ゴム材料の最適化解析プログラムを記録した記録媒体。 - 前記制約条件は、前記定めた目的関数以外の機械的挙動及び前記多成分系材料の構成比率の少なくとも一方の許容範囲を制約することを特徴とする請求項15に記載の多成分系ゴム材料の最適化解析プログラムを記録した記録媒体。
- 前記設計変数の変化は、設計変数の単位変化量に対する目的関数の変化量の割合である目的関数の感度及び設計変数の単位変化量に対する制約条件の変化量の割合である制約条件の感度に基づいて制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与える設計変数の変化量を予測すると共に、設計変数を予測量に相当する量変化させたときの目的関数の値及び設計変数を予測量に相当する量変化させたときの制約条件の値を演算し、予測値と演算値とに基づいて、前記制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与えるまで、選択する設計変数の値を変化させることを特徴とする請求項15または請求項16に記載の多成分系ゴム材料の最適化解析プログラムを記録した記録媒体。
- 前記多成分材料の構成比率に基づく多成分系ゴム材料の設計は、前記定めた対応関係における多成分系材料の構成比率を材料基本モデルとして複数個の材料基本モデルからなる選択対象集団を定め、該選択対象集団の各材料基本モデルについて、前記目的関数、設計変数、制約条件、及び目的関数から評価できる適応関数を定め、前記選択対象集団から2つの材料基本モデルを選択し、所定の確率で各材料基本モデルの設計変数を交叉させて新規の材料基本モデルを生成すること及び少なくとも一方の材料基本モデルの設計変数の一部を変更させて新規の材料基本モデルを生成することの少なくとも一方を行い、設計変数を変化させた材料基本モデルの目的関数、制約条件及び適応関数を求めて該材料基本モデル及び設計変数を変化させなかった材料基本モデルを保存しかつ保存した材料基本モデルが所定数になるまで繰り返し、保存した所定数の材料基本モデルからなる新規集団が所定の収束条件を満たすか否かを判断し、収束条件を満たさないときには該新規集団を前記選択対象集団として該選択対象集団が所定の収束条件を満たすまで繰り返すと共に、該所定の収束条件を満たしたときに保存した所定数の材料基本モデルのなかで制約条件を考慮しながら前記対応関係を用いて目的関数の最適値を与える設計変数による多成分材料の構成比率を求めて該多成分材料の構成比率に基づいて多成分系ゴム材料を設計することを特徴とする請求項15乃至請求項17の何れか1項に記載の多成分系ゴム材料の最適化解析プログラムを記録した記録媒体。
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