JP4393243B2 - 増築建築物 - Google Patents
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Description
この特許文献1に記載の発明は、既存の建物の周囲を囲うように新たな基礎を設け、新たな基礎の上部に鉄骨柱を立設して既設建物の上方に新規建物を構築するという斬新な発想に基づいたものであり、従来の増築方法に関わる問題点の多くを解決することができる非常に斬新で優れたものである。しかもこの発明に開示された方法は、戸建て住宅等だけではなく中高層建築物にも応用可能であり、応用範囲の広さという点でも非常に優れたものであった。
すなわち、在来の工法では、柱と梁の接合部は、短い角形鋼管と薄板状のダイアフラムとの間で溶接を施すことにより直方体(サイコロ)を形成し、この直方体とH形鋼からなる梁のフランジを溶接接合し、更に該直方体と角形鋼管柱とを裏当金やエンドタブ等を介して溶接接合することにより形成されているのが一般的である。
ところが、このような方法では、溶接量が多いために残留応力が大きく、しかも裏当金を用いると切欠部ができるために応力集中が発生し、その結果として、柱と梁の接合強度が大きく低下するという問題があった。
先の阪神淡路大震災においても、柱と梁の接合部の破壊を原因とする建築物の倒壊が多く見られており、柱と梁の接合強度の低下は建物の耐震性を大きく低下させる原因となる。
図1乃至図4は本発明に係る建築物の増築方法の第一実施形態を示す概略図であって、施工の工程順に示している。尚、これらの図においては建物の骨組みのみを示している。
この第一実施形態に係る方法は、木造住宅等の低層建築物を増築する方法であり、図示例では2階建ての既存建物を3階建てに増築する場合が示されている。
第一実施形態に係る方法では、先ず図2に示すように、既設建物(1)の柱を支持する既設基礎(2)の外側近傍に増築用の新規基礎(3)を設ける。
このとき、新規基礎(3)と既設基礎(2)とを一体化することが好ましい。一体化の方法としては、例えば、既設基礎(2)のコンクリートをはつって鉄筋を露出させた後、露出した鉄筋を新規基礎(3)用の鉄筋と接続し、最後に露出した既設基礎(2)の鉄筋と新規基礎用の鉄筋を一緒にコンクリートで被覆する方法を例示することができる。
このように、既設建物(1)の屋根を撤去することで、既設建物(1)の積載荷重が減少し、既設建物(1)部分の耐震性を大きく向上させることができる。また、既設建物の屋根の撤去を新規屋根(6)の構築後に行うことにより、既設建物内の居住者は工事中もそのまま住み続けることができる。
これにより、既設建物(1)の上方において、新規床(7)と新規屋根(6)との間に新たな階(8)が形成される。図示例では、新たな階(8)が3階の居住空間となっている。
そして、既設建物(1)の周囲を囲うように増築用柱(5)の外側に新たな壁を設けることにより、3階に増築された増築建築物が完成する。
この第二実施形態は、中高層建築物を増築する方法であり、図示例では5階建ての既存建物を7階建てに増築する場合が示されている。
第二実施形態に係る方法では、先ず図6に示すように、既設建物(1)の柱を支持する既設基礎(2)の外側近傍に増築用の新規基礎(3)を設ける。
このとき、新規基礎(3)と既設基礎(2)とを一体化することが好ましい。一体化の方法としては、例えば、既設基礎(2)のコンクリートをはつって鉄筋を露出させた後、露出した鉄筋を新規基礎(3)用の鉄筋と接続し、最後に露出した既設基礎(2)の鉄筋と新規基礎用の鉄筋を一緒にコンクリートで被覆する方法を例示することができる。
これにより、既設建物(1)の上方において、新規床(7)と新規屋根(6)との間に新たな階(8)が形成される。図示例では、新たな階(8)が6階及び7階の居住空間となっている。
そして、既設建物(1)の周囲の全体又は一部を囲うように増築用柱(5)の外側に新たな壁を設けることにより、7階に増築された増築建築物が完成する。
図8は接合方法の一例を示す図であって、柱(4)の中途部に鋼製の中実直方体(23)を介在させ、この中実直方体(23)の側面に梁(4)を、上下面に柱(5)をそれぞれ溶接接合するものである。尚、図中(20)、(21)、(25)は溶接部である。
この方法では、中実直方体(23)の高さ(23A)を該直方体(23)に接合する梁の高さ(4A)と同等にすると共に、該直方体(23)の上端及び下端の外形寸法(23B)を該直方体(23)に接合する柱(5)の外形寸法(5A)と同等にして、図9又は図10に示すように該直方体(23)に接合する柱(5)と梁(4)のそれぞれの溶接部(24)、(25)が一体化するように、該梁(4)と該直方体側面及び該柱(5)と該直方体鉛直方向端面とを溶接接合する。
この方法は、圧延鋼を熱加工又は機械加工することにより製作された中実の直方体(23)、又は、鍛造により製作された中実の直方体(23)、又は、鋳造により製作された中実の直方体(23)に、H形鋼からなる梁(4)のフランジ(41)を裏当金付きの従来公知の方法で溶接(25)した後に、この溶接部(25)に重ねて角形鋼管からなる柱(5)を溶接接合(24)したものである。
図9から分かるように、柱(5)の溶接熱影響部と梁(4)の溶接熱影響部とは直方体(23)の外表面では重なっていない。このような施工方法は、図10に示すように、柱(5)の端部裏面に肉盛溶接(14)したり、梁(4)のフランジ(41)の端部裏面及び側面に肉盛溶接(14)した後にそれぞれ継手溶接(24)、(25)をする場合にも適用できる。このように、柱(5)及び梁(4)の端部の裏面に肉盛溶接した後に、本発明に係る施工を実施した場合の状況を断面図で図13に示している。
この実施例では、中実直方体(23)に標準高さの梁(4)の他に、高さの低い梁(4A)を接合している。
図14から分かるように、本発明によれば、高さの低い梁(4A)を直方体(23)の任意の高さ位置に直方体の強度上問題なく溶接接合出来るので、鉄骨構造物の設計及び施工の自由度が増加する。
ずれ(a、b)がこれらの値以上になる場合は、一体化のため溶接部が大きくなりすぎて溶接残留応力が大きくなると共に溶着量が増加し製作コスト増加の要因となる。従って、図8に示す直方体(23)の上下方向の全長(23A)は、該直方体(23)に接合する梁(4)のせい即ち高さ(4A)にフランジ板厚の50%+14mmを加えた長さ以下が望ましい。また、直方体(23)の上端及び下端の外形寸法即ち直方体の辺の長さ(23B)は、柱(5)の辺の長さ(5A)に柱板厚の50%+14mmを加えた長さ以下が望ましい。
このように、柱や梁が既定寸法であれば、溶接部を一体化することにより、該直方体の水平と垂直の辺の長さを最小にできるので、該直方体の製作コストの低減と鉄骨構造物の製作の容易性が増加する。
また、図18に示すように、中実の直方体は、圧延により長い棒又は帯を製作し切断線(28)に従ってガス切断、レーザ切断、鋸切断等により切断することによっても得られる。このようにすれば、直方体は圧延鋼から大量生産で容易に安価に入手できる。
また、該直方体は、圧延鋼から採取した直方体から鍛造により所定の形状に成型した鍛鋼からも得られる。
この方法は、中心軸位置で鉛直方向に貫通した筒状の空間(26)を設けた中実直方体(23)に梁(4)及び柱(5)を接合したものである。
図19の方法においては、直方体(23)を、圧延鋼を熱加工又は機械加工することにより製作される中実の直方体、又は、鍛造により製作される中実の直方体、又は、鋳造により製作される中実の直方体とする。
そして、該直方体の上下方向の全長(23A)を該直方体に接合する梁の高さ(4A)と同等にすると共に、該直方体(23)の上端及び下端の外形寸法即ち辺の長さ(23B)を該直方体(23)に接合する柱(5)の外形寸法即ち辺の長さ(5A)と同等にして、該直方体(23)の鉛直中心軸に鉛直方向に貫通する筒状の空間(26)を設ける。
更に、図20に示すように、該直方体(23)の上端面又は下端面の中実部分断面最小幅(c,d)を、それぞれ梁フランジ幅(e)の25%以上、即ち(c)0.25e、(d)0.25eとして、図9及び図15に示すように、該直方体(23)に接合する梁(4)のフランジ(41)と柱(5)の溶接部が重なるようにし、該梁フランジ(4)と該直方体側面、及び該柱(5)と該直方体上下端を溶接接合させて図21に示す接合構造を得る。
同様に、図10及び図16に示すように、柱端部裏面に肉盛溶接した場合及び梁フランジ端部裏面と側面に肉盛溶接した場合は、該直方体(23)に接合する梁と柱の溶接部が重なるようにし、該梁と該直方体側面及び該柱と該直方体上下端を溶接接合させて図22に示す接合構造を得ることもできる。
図23及び図24において、直方体(23)は、圧延鋼を熱加工又は機械加工することにより製作する中実の直方体、又は、鍛造により製作する中実の直方体、又は、鋳造により製作する中実の直方体とする。
そして、該直方体(23)の上下方向の全長(23A)を該直方体(23)に接合する梁の高さ(4A)と同等にすると共に、該直方体(23)の上端及び下端の外形寸法即ち辺の長さ(23B)を該直方体(23)に接合する柱(5)の外形寸法即ち辺の長さ(5A)と同等にする。
さらに、中実直方体(23)の鉛直方向中間部(30)を上下部よりも細くして、該中間部(30)の断面2次モーメントを、該中実直方体(23)に接合する上部柱(5)又は下部柱(5)の断面2次モーメント以上になるようにして、更に、図9又は図15に示すように、該直方体(23)に接合する梁フランジ(41)と柱(5)の溶接部が重なるように一体化する。
同様に、図25に示すように、柱端部裏面に肉盛溶接(14)した場合及び梁(4)のフランジ端部(41)の裏面と側面に肉盛溶接(14)した場合も、本発明に係る方法が適用できる。このように、肉盛溶接した場合は、溶接部の断面積が増大するので、一体化溶接部の強度が更に向上するという利点がある。なお、梁フランジ(41)の裏面と側面への肉盛の有無に拘わらす、梁フランジ(41)を直方体(23)に溶接で取り付ける場合、溶接(25)の実施前にウエブ(9)を直方体(23)と溶接接合又はボルト接合することで柱梁組立が容易になる。
先ず、図26に示すように、鋳造により製作される直方体(36)の鉛直中心軸に上下鉛直方向に貫通した空間(26)を設けて、図20に示したように、該直方体(23)の上端面又は下端面の中実部分断面最小幅(c又はd)がそれぞれ接合する梁フランジ幅(e)の25%以上になるようにする。
そして、図26の直方体(36)の側面部に水平方向に貫通した空間(37A)を設けて、該直方体中間部(37)の断面2次モーメントを該直方体(36)に接合する上部柱又は下部柱の断面2次モーメント以上になるように該直方体(36)を製作する。
直方体(36)の上下方向の全長は、該直方体に接合する梁の高さと同等にすると共に、該直方体の上端及び下端の外形寸法即ち水平辺の長さを該直方体に接合する柱の外形寸法即ち水平辺の長さと同等にして、図9及び図15に示すように該直方体(23)に接合する梁フランジ(41)と柱(5)の溶接部を重ねて一体化する。
このように、梁(4)のフランジ(41)と直方体(36)の側面、及び柱(5)と直方体(36)の上下端を溶接接合する。
同様に、図27に示すように、柱端部裏面に肉盛溶接(14)した場合及び梁フランジ端部(41)の裏面と側面に肉盛溶接(14)した場合にも、この方法が適用できる。なお、図27で、梁フランジ(41)の裏面と側面への肉盛の有無に拘わらず、梁フランジ(41)を直方体(23)に溶接で取り付ける場合、溶接(25)の実施前にウエブ(9)を直方体(23又は36)と溶接接合又はボルト接合することで柱梁の接合を容易にすることができる。
工場において、図28に示すように、先ず梁を仮組みするためのボルト締め用の穴(39)を有する小板(38)を直方体(23)に溶接で取り付け、図29に示すように、直方体(23)と柱(5)を溶接接合(24)して柱直方体構造物(44)を製作する。そして、該小板(38)付きの柱直方体構造物(44)を建設現場へ運んで図30に示すように直立させた後、図31に示すように梁のH形鋼ウエブ(9)を小板(38)にボルト(40)等で仮止めして柱直方体構造物(44)とH形鋼梁(4)の仮組を行い、最終的に直方体(23)と梁(4)とを溶接接合し、図30に示すように鉄骨構造物を建設する。
なお、ボルト締め用の穴(39)を有する小板(38)を直方体(23)の側面に溶接で取り付ける工程と、該直方体(23)と柱(5)とを溶接接合する工程はどちらが先でも良い。
また、従来の柱梁接合構造に比べて、柱や梁を小さくすることができ、部品点数や溶接量も減らすことができるため、作業性の向上、工期の短縮、コストの削減という効果も得ることができる。
図42乃至図46に示す増築方法は、増築用柱(5)の立設方法のみが前述の工程と異なっているため、異なる工程である増築用柱(5)の立設方法について図33乃至図41を参照しつつ説明する。
杭(33)が鋼管杭である場合には、図34に示すように、該打設された杭(33)の内部にコンクリート(35)を充填する。
管状カバー(46)としては、杭(33)よりも大きい肉厚(例えば3〜5倍程度)を有する四角鋼管が好適に用いられる。
杭(33)の上端部は地面よりもやや下方位置となるようにし、管状カバー(46)は杭(33)の上端部から所定深さ(例えば杭の外径の1〜3倍程度)まで達するように地中に打ち込み、その後で管状カバー(46)の周囲に土を埋め戻す(図36参照)。このとき、管状カバー(46)の上端部は地面からやや露出するようにするとよい。
そして、上部の管状カバー(46)からコンクリート又は高強度樹脂モルタル(48)を管状カバー内全体に充填することにより、杭(33)と柱(5)が強固に一体化固定される(図40参照)。
また、増築用の新たな基礎を設ける必要がないので、敷地に基礎を設けるスペースが無い場合であっても該スペースに柱を立設することが可能となる。
図41は基礎梁(51)を設けた状態を示す図であって、図示の如く、角形管状カバー(46)の側面に基礎梁(51)が固定され、これにより隣り合う角形管状カバー(46)同士、即ち隣り合う柱(5)同士が基礎梁(51)により接続される。尚、この基礎梁(51)は、実線で示すように地上に設けてもよいし、破線で示すように地中梁としてもよい。
また、例えば敷地の一方側のスペースが狭くて新たな基礎や柱を設けられないが、該スペースに地中梁程度は入る幅がある場合に、そのスペースに地中梁(基礎梁)(51)を設けて該スペース外にある柱同士を接合することで、耐震性を高めることが可能となる。
2 既設基礎(既設建物の基礎)
3 新規基礎
4 梁
5 増築用柱
6 新規屋根(屋根部材)
7 新規床(床部材)
8 新たな階
23,36 中実直方体
33 杭
34 支持層
35 コンクリート
36 管状カバー
37 アンカー
38 コンクリート又は高強度樹脂モルタル
41 基礎梁
Claims (1)
- 既存建物の基礎の外側近傍に夫々該既存建物の上方にまで至るように柱が立設され、前記既存建物の上方において前記柱に梁が接合されて隣り合う柱同士が梁で接続され、該梁の上部に床部材及び屋根部材を設けて既存建物の上方に新たな階が増築されてなる建築物であって、
前記柱と梁の接合部が、該梁の高さと同等の高さを有すると共に上端及び下端の外形寸法が該柱の外形寸法と同等である中実直方体を使用し、該直方体に接合される前記柱と梁の溶接部が一体化するように、該梁と該直方体側面及び該柱と該直方体鉛直方向側面とが溶接により接合されてなり、
前記既存建物の基礎の外側近傍に夫々内部にコンクリートが充填された鋼管杭が支持層に達する深さまで打設され、該打設された杭の断面よりも大きく且つ該杭よりも大きい肉厚を有する中空四角形断面を有し地中の下部管状カバーと地上の上部管状カバーを接合一体化してなる管状カバーのうちの下部管状カバーの下方部が前記杭の上端部に被せて立設され、前記下部管状カバーの上方部に前記柱の下端部が配置されるとともに、前記上部と下部の管状カバーの内部にコンクリート又は高強度樹脂モルタルが打設されて前記杭と柱とが一体化されてなることを特徴とする増築建築物。
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