JP4387352B2 - ペプチドの製造法 - Google Patents
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Description
(Pyr)Glu−His−Trp−Ser−Tyr(またはPhe)−X−Leu(またはIleまたはNle)−Arg−Pro−NH−R
〔式中、アミノ酸は特に明記しないものはL体を示し、XはD−Leu,D−NLe,D−NVa,D−Ser,D−Abu,D−Phg,D−Pheまたはα−Aibuを、Rは水酸基を有してもよいアルキル基を示す〕で表されるペプチドの製造法として、下記の方法が記載されている。
さらに、特許文献3には、グアニジノ基を有するペプチドの製造において、グアニジノ基含有原料化合物のグアニジノ基を低級アルコキシ−またはトリ低級アルキルベンゼンスルフォニル基で保護してペプチド縮合した後、該保護基をハロゲノスルホン酸または低級アルキルスルホン酸またはルイス酸で脱離させることを特徴とするペプチドの分離・製造法が記載されている。
また、一般にペプチドの合成過程においては、多種多様なプロセス、種々の反応手段等が考えられるが、多くの場合は、各製造工程の中間体が無晶形であるために、精製が十分に行えなかったり、煩雑な分離・精製操作が必要な場合が多く、品質および収率の点において再現性が得られない等の問題が生じている。即ち、各製造工程の中間体、とりわけ、各工程において鍵となる中間体について、結晶性、安定性、溶解性などの物性の良し悪しが工業的製造法として実用に足るか否かを左右する場合が多い。
(Pyr)Glu−His−Trp−Ser−Tyr−D−Leu−Leu−Arg(MBS)−Pro−NH−C2H5
〔式中、MBSは、p−メトキシベンゼンスルホニル基を示す〕で表わされるペプチドが製造されるとして、反応が図式されているが、ここには、単にペプチドの構造式が羅列してあるだけであり、実際にどのような反応条件で行なえるかについては、示されていない。
従って、LH−RHのアゴニストとしての作用等を有するペプチドまたはその塩を、安全かつ簡便な操作で、高収率かつ再現性の良い、工業的に有利な製造法の開発が望まれている。
(1)一般式
5−oxo−Pro−R1−Trp−Ser−R2−R3−OH (II)
〔式中、R1はHis,Tyr,Trpまたはp−NH2−Pheを、R2はTyrまたはPheを、R3はそれぞれ置換基を有していてもよいGlyまたはα−D−アミノ酸残基をそれぞれ示す。〕で表わされるペプチドまたはその塩と、一般式
H−R4−R5−Pro−R6 (III)
〔式中、R4はLeu,IleまたはNleを、R5は保護されたArgを、R6は式Gly−NH−R7(式中、R7は水素原子または水酸基を有していてもよいアルキル基を示す)または式NH−R8(式中、R8は水素原子、水酸基を有していてもよいアルキル基またはウレイド基(−NH−CO−NH2)をそれぞれ示す)で表わされる基を示す〕で表わされるペプチドまたはその塩とを反応させ、一般式
5−oxo−Pro−R1−Trp−Ser−R2−R3−R4−R5−Pro−R6 (I')
〔式中の記号は前記と同意義を示す〕で表わされるペプチドまたはその塩を得、ついで、得られたペプチド(I')を脱保護基反応に付すことを特徴とする一般式
5−oxo−Pro−R1−Trp−Ser−R2−R3−R4−Arg−Pro−R6 (I)
〔式中の記号は前記と同意義を示す〕で表わされるペプチドまたはその塩の製造法、
(3)R1がHisを、R2がTyrを、R3がD−Leuを、R4がLeuを、R5がC1−6アルコキシベンゼンスルホニル基で保護されたArgを、R6は式NH−R8''(式中、R8''は水酸基を有していてもよいC1−3アルキル基を示す)で表わされる基をそれぞれ示す上記(1)項記載の製造法、
(4)ペプチド(II)またはその塩とペプチド(III)またはその塩とを、温度約0〜40℃で、約30〜60時間反応させる上記(1)項記載の製造法、
(5)脱保護基反応において酸を用いる上記(1)項記載の製造法、
(6)酸がC1−6アルキルスルホン酸である上記(5)項記載の製造法、
(7)酸をペプチド(I')に対して約5〜25重量倍用いる上記(5)項記載の製造法、
(8)上記(1)記載のペプチド(I')の脱保護基反応を酸の存在下に行ない、得られるペプチド(I)を含有する反応液を塩基で中和し、分離した遊離体の油状物をカラムクロマトグラフィーで精製することを特徴とするペプチド(I)の分離・精製法、
5−oxo−Pro−R1−Trp−Ser−R2−R3−OR9 (IV)
〔式中、R1はHis,Tyr,Trpまたはp−NH2−Pheを、R2はTyrまたはPheを、R3はそれぞれ置換基を有していてもよいGlyまたはα−D−アミノ酸残基を、R9は保護基をそれぞれ示す。〕で表わされるペプチドまたはその塩、
(10)R1がHisを、R2がTyrを、R3がGly,D−Leu,D−Trp,C1−4アルキル基で置換されていてもよいD−Val,D−Ser,C1−4アルコキシ基、ナフチル基もしくは2−メチルインドリルで置換されていてもよいD−AlaまたはC7−10アラルキル基で置換されていてもよいD−Hisを、R9がC1−6アルキル,C6−10アリールまたはC7−12アラルキルをそれぞれ示す上記(9)記載のペプチドまたはその塩、
(11)R1がHisを、R2がTyrを、R3がD−Leuを、R9がC1−6アルキル基をそれぞれ示す上記(9)記載のペプチドまたはその塩、
(12)一般式
5−oxo−Pro−R1−Trp−Ser−R2−R3−OR9 (IV)
〔式中、R1はHis,Tyr,Trpまたはp−NH2−Pheを、R2はTyrまたはPheを、R3はそれぞれ置換基を有していてもよいGlyまたはα−D−アミノ酸残基を、R9は保護基をそれぞれ示す。〕で表わされるペプチドまたはその塩を加水分解反応に付すことを特徴とする一般式
5−oxo−Pro−R1−Trp−Ser−R2−R3−OH (II)
〔式中の記号は前記と同意義〕で表わされるペプチドまたはその塩の製造法、
5−oxo−Pro−R1−Trp−Ser−R2−R3−OH (II)
〔式中、R1はHis,Tyr,Trpまたはp−NH2−Pheを、R2はTyrまたはPheを、R3はそれぞれ置換基を有していてもよいGlyまたはα−D−アミノ酸残基をそれぞれ示す。〕で表わされるペプチドまたはその塩の結晶、
(14)一般式
5−oxo−Pro−R1−Trp−Ser−R2−R3−OH (II)
〔式中、R1はHis,Tyr,Trpまたはp−NH2−Pheを、R2はTyrまたはPheを、R3はそれぞれ置換基を有していてもよいGlyまたはα−D−アミノ酸残基をそれぞれ示す。〕で表わされるペプチドまたはその塩の溶液を熟成させることを特徴とするペプチド(II)またはその塩の結晶の製造法、および、
(15)ペプチド(II)またはその塩の濃度が約0.01〜0.05モル/Lである溶液を約10〜70℃で約10〜70時間熟成させる上記(14)項記載の結晶の製造法である。
R1はHis,Tyr,Trpまたはp−NH2−Pheを表わすが、なかでもHisが最も好ましい。
R2はTyrまたはPheを示すが、なかでも、Tyrが好ましい。
R3で表わされる置換基を有していてもよいGlyまたはα−D−アミノ酸残基におけるα−D−アミノ酸としては、例えば、D−Leu,D−Ile,D−Nle,D−Val,D−Nva,D−Ser,D−Abu,D−Phe,D−Phg,D−Thr,D−Met,D−Ala,D−Trpまたはα−Aibuが挙げられ、なかでも、D−Leu,D−Val,D−Ser,D−Trp、D−Ala、D−Abuまたはα−Aibuが好ましく、特に、D−Leuが最も好ましい。
R3で表わされる置換基を有していてもよいGlyまたはα−D−アミノ酸残基における置換基としては、例えば、モノC1−4アルキル(例、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル等)、ジC1−4アルキル(例、ジメチル、ジエチル等)、トリC1−4アルキル(例、トリメチル、トリエチル等)、C1−4アルコキシ(例、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、t−ブトキシ等)、C6−10アリール(例、フェニル、ナフチル等)、C7−10アラルキル基(例、ベンジル、フェネチル等)、インドリル、メチルインドリル、ベンジル−イミダゾリルなどが挙げられる。特に、メチル,ジメチル,トリメチル,t−ブチル,t−ブトキシ,ナフチル(特に、2−ナフチル等),インドリル−3−イル,2−メチルインドリルおよびベンジルイミダゾール−2−イルが好ましく、なかでも、トリメチル,t−ブチル,t−ブトキシ,2−ナフチル,インドール−3−イル,2−メチルインドリルおよびベンジルイミダゾール−2−イルが好ましい。
R3としては、さらに、Gly、D−Leu、D−Trp、3−メチル−D−Val、D−Ser、t−ブトキシ−D−Ala、2−ナフチル−D−Ala、2−メチルインドリル−D−Ala、ベンジルイミダゾール−2−イル−D−Ala(=Nim−ベンジル−D−His)が好ましい。
R5で表わされる保護されたArgにおける保護基としては、例えば、アルコキシベンゼンスルホニル基、トリアルキルベンゼンスルホニル基等が挙げられる。
該アルコキシベンゼンスルホニル基としては、C1−6アルコキシで置換されたベンゼンスルホニル基が好ましく、例えば、p−メトキシベンゼンスルホニル基、p−エトキシベンゼンスルホニル基、p−イソプロポキシベンゼンスルホニル基などが挙げられるが、特に好ましくはp−メトキシベンゼンスルホニル基である。
該トリアルキルベンゼンスルホニル基におけるアルキルとしては、同一または異なるC1−6アルキルが好ましい。該C1−6アルキルとしては、例えば、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、t−ペンチルなどが挙げられる。トリアルキルはベンゼンスルホニル基におけるベンゼン環の置換可能な任意の位置に位置していてよいが、スルホニル基に対して2位、4位および6位に位置していることが特に好ましい。具体的には例えば、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニル基、2,4,6−トリエチルベンゼンスルホニル基、2,4,6−トリプロピルベンゼンスルホニル基、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニル基、2,4,6−トリ−t−ブチルベンゼンスルホニル基などが挙げられる。
基R6中の基R7およびR8で表わされる水酸基を有していてもよいアルキル基におけるアルキル基としては、C1−4アルキル基が挙げられ、これらは置換可能な任意の位置に水酸基を有していてもよい。該C1−4アルキル基としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルが挙げられ、最も好ましくはエチルである。
該水酸基を有していてもよいアルキル基の好ましいものとしては、例えば、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシ−n−プロピル、4−ヒドロキシ−n−ブチル等が挙げられ、なかでも2−ヒドロキシエチルが最も好ましい。
R9で表わされる保護基としては、例えば、C1−6アルキル基(例、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等)、C7−10アラルキル基(例、ベンジル、フェネチル)等が挙げられる。
R9で表わされる保護基としては、C1−3アルキルが好ましく、特に、エチルが好ましい。
Gly:グリシン
Ala:アラニン
Val:バリン
Leu:ロイシン
Ile:イソロイシン
Ser:セリン
Thr:スレオニン
Arg:アルギニン
Phe:フェニールアラニン
Tyr:チロシン
His:ヒスチジン
Trp:トリプトファン
Pro:プロリン
NLe:ノルロイシン
NVa:ノルバリン
Abu:2−アミノ酪酸
Phg:フェニルグリシン
α−Aibu:α−アミノイソ酪酸
p−NH2−Phe:p−アミノフェニルアラニン
Pd:パラジウム
Pd−C:パラジウム−炭素
Et:エチル
AcOH:酢酸
HF:フッ化水素
HBr:臭化水素
DCHA:ジシクロヘキシルアミン
DMF:ジメチルホルムアミド
DMA:ジメチルアセトアミド
THF:テトラヒドロフラン
MSA:メタンスルフォン酸
MBS:p−メトキシベンゼンスルホニル
DCC:N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド
HONB:N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド
HOSu:N−ヒドロキシスクシンイミド
HOBt:1−ヒドロキシベンツトリアゾール
EDA:エチル−3−(3−ジメチルアミノ)プロピルカルボジイミド塩酸塩
NP:p−ニトロフェニル
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
ペプチド(I)またはその塩の製造には多くの合成経路が考えられ、また、個々の合成経路においては、アミノ基及びカルボキシル基の保護基、アミド結合の形成方法、該保護基の脱離方法、得られるペプチドの分離・精製方法などに関して、極めて多くの組み合わせが可能である。
その中で、〔図1〕に示す合成経路は、本願発明方法に係る製造法であり、ペプチド(I)を製造する好ましい方法である。本発明の製造法において特徴とするところは、(1)8位のArgのグアニジノ基を保護基で保護し、(2)鍵中間体として2つのペプチド(〔図1〕中のペプチド(II)およびペプチド(III))を合成し、(3)それらの縮合で得られる前駆体ペプチド(I')を脱保護基反応に付すことにより8位Argのグアニジノ基の保護基を脱離し、目的とするペプチド(I)またはその塩を得ることにある。
本発明のペプチドの塩としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、グリコール酸、焦性ブドウ酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、酒石酸、クエン酸、p−トルエンスルフォン酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸などの有機酸や、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸などとの塩が挙げられる。
〔図1〕に示される式Z−R2−R3−OR9で表されるペプチド(a)は、例えば、「ペプチド合成の基礎と実験」泉屋信夫他(丸善株式会社)、ザ・ペプチド(The Peptides)Vol.1, 76−136頁,Ebehard Schroeder and Klaus Luebke 著に記載された方法、あるいはこれと同様の方法で製造することができる。
〔図1〕に示される式Z−Ser−R2−R3−OR9で表されるペプチド(b)は、ペプチド(a)にZ−Serを導入することにより製造される。
まず、ペプチド(a)を脱Z化反応に付す。脱Z化反応は、例えば、Pd,Pd−C等の触媒を用いる接触還元あるいはHBr/AcOH処理等の方法を用いることにより行うことができる。
該接触還元反応において用いられる溶媒としては、アルコール類(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール等)、エーテル類(例、THF、ジオキサン等)、アミド類(例、、DMF,DMA等)が挙げられる。なかでも、DMF,DMAまたはTHFを用いると、次工程の縮合反応における濃縮等の操作を省略できるので、有利である。反応温度としては、約0〜50℃、好ましくは約20〜40℃である。反応時間は、約3〜15時間、好ましくは約5〜10時間である。本反応は、常圧下において行うのが好ましい。
また、還元時に副生するジケトピペラジンを抑制するために、還元反応の前に酸を添加し、ペプチド(a)の脱Z化されたペプチドをプロトネーション(protonation)反応に付すのが好ましい。該プロトネーションを行うためには、反応系に酸が添加される。該酸としては、無機酸、有機酸のいずれでもよく、例えば、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸などが挙げられるが、とりわけp−トルエンスルホン酸が好ましい。酸の添加量としては、ペプチド(a)の脱Z化されたペプチドに対して約0.8〜1.5倍(mole/mole)、好ましくは約1.0〜1.1倍(mole/mole)である。
HBr/AcOH処理は、通常、無溶媒で、ペプチド(a)とHBrとを飽和した酢酸とを混合することにより行われる。反応温度としては、約−10〜30℃、好ましくは、約10〜20℃である。反応時間は、約10分〜2時間、好ましくは、約30分〜1時間である。
反応生成物の分離は、例えば、反応液にエーテル、酢酸エチル等を加えて、生じた沈殿をろ取し、乾燥することにより行われる。
該活性エステルとしては、ペプチド合成において通常用いられるものであればいずれでもよく、例えば、活性エステル化剤(例、HONB、HOSu、HOBt)とのエステルなどが挙げられるが、とりわけHONBとのエステルが好ましい。Z−Ser−OHを活性エステル化するには、Z−Ser−OHと活性エステル化剤とを、溶媒〔例、エーテル類(例、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、アミド類(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、アセトニトリル、エステル酸(例、蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル等)〕に溶解し、温度約−5〜20℃、好ましくは約0〜5℃で、約5〜15時間、好ましくは約7〜10時間反応させることにより行なわれる。
脱Z化ペプチド(a)とZ−Ser−OHの活性エステルとの反応は、それ自体が反応しない溶媒の中で行われる。該溶媒としては、還元反応において用いられた溶媒を濃縮することなくそのまま用いることができるが、なかでも、アミド類(例、DMF、DMA等)などが好ましい。反応時の温度としては、低温が好ましく、約−10〜10℃、好ましくは約−5〜5℃である。反応時間は約5〜20時間、好ましくは約7〜12時間である。
〔図1〕に示される式Z−Trp−Ser−R2−R3−OR9で表されるペプチド(c)は、ペプチド(b)を脱Z化して得られたペプチドとZ−Trp−OHとを縮合反応に付すことにより行われる。
ペプチド(b)の脱Z化は、Pd,Pd−C等の触媒を用いる接触還元、あるいはHBr/AcOH処理等の方法を用いることができる。
該Pd,Pd−C等の触媒を用いる接触還元、および、HBr/AcOH処理は、上記のペプチド(a)→ペプチド(b)の製造法において記載した方法と同様にして行うことができる。
該活性エステル化剤としては、とりわけ、HONBが好ましく、縮合剤としては、とりわけ、DCCが好ましい。
Z−Trp−OHを活性エステル化するには、上記と同様の方法で行うことができる。
Z−Trp−OHの活性エステル化物とペプチド(b)とを縮合剤の存在下におこなう反応においては、反応温度としては、約0〜20℃、好ましくは約5〜10℃である。反応時間は約5〜20時間、好ましくは約7〜10時間である。
式Z−5−oxo−Pro−R1−OHで表されるペプチド(d)は、畑中らの方法〔武田研究所報、第35巻、第16頁(1976年);バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochemical and Biophysical Research Communications)、第60巻、第1345頁、(1974年)〕に記載の方法、あるいはこれらと同様の方法で製造することができる。
ペプチド(c)とペプチド(d)とを反応させて、式Z−5−oxo−Pro−R1−Trp−Ser−R2−R3−OR9で表されるペプチド(e)を製造するには、ペプチド(c)とペプチド(d)とを縮合反応に付すことにより行うことができる。
該縮合反応においては、R1残基特にHis残基の異性化に留意しなけばならないが、その方法としては、ペプチドのフラグメント縮合において、異性化を抑制する方法であればいずれも適用することができる。該異性化を抑制する方法としては、通常、縮合剤や、異性化を抑制する添加物が加えられる。該縮合剤としては、DCC、EDAなどが挙げられる。該添加物としては、HONB、HOSu、HOBt、HOSuなどが挙げられる。該縮合剤と該添加物は、これらを自由に組み合わせて用いてよく、その組み合わせとしては、例えば、DCC−HONB、DCC−HOSu、DCC−HOBt、EDA−HOSuなどが挙げられるが、とりわけDCC−HONBの組み合わせが好ましい。異性化を抑制するための大きな要因の一つとして反応温度があるが、反応温度は約0〜20℃、好ましくは約5〜15℃である。反応時間は、約30〜100時間、好ましくは約50〜80時間である。
用いられる溶媒としては、例えば、アミド類(例、DMF、DMA),エーテル類(2−メチルピロリドン、THF,ジオキサン等)が挙げられる。
式Z−5−oxo−Pro−R1−Trp−Ser−R2−R3−OR9で表されるペプチド(e)を脱Z化することにより、ペプチド(IV)を製造することができる。
ペプチド(e)の脱Z化は、Pd,Pd−C等の触媒を用いる接触還元、あるいはHBr/AcOH処理等の公知の方法により行なうことができる。
該Pd,Pd−C等の触媒を用いる接触還元においては、溶媒として、アミド類(例、DMF、DMA),エーテル類(2−メチルピロリドン、THF,ジオキサン等)、t−ブタノールなどがが用いられる。反応温度は、約0〜50℃、好ましくは、約25〜40℃である。反応時間は、約1〜10時間、好ましくは約3〜6時間である。
HBr/AcOH処理は、上記ペプチド(a)→ペプチド(b)の製造において記載した方法と同様にして行うことができる。
ペプチド(IV)を加水分解反応に付し、ついで、所望により、反応液を中和することにより、ペプチド(II)を製造することができる。
該加水分解反応は、アルカリの存在下で、水中において、低温で行うことが好ましい。必要により、水とアルコールとの混液中で行うこともできる。該アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、n−ブチルアルコール等があげられるが、水−アルコール類の混液中でのアルコール類の混在量は、約1〜30%(V/V)、好ましくは約1〜10%(V/V)である。アルコールの量的割合が多くなる程、加水分解の反応速度が遅くなり、一方で、2位R1および4位Serの異性化が有意に増加する(R1がHisの場合)。これらの異性体はカラムクロマトグラフィー等による精製においても効果的に除去することが困難であり、本発明の目的化合物〔ペプチド(I)〕の品質を低下させる要因となる。
該加水分解反応は、アルカリの存在下で行われる。該アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどが挙げられる。加水分解反応速度並びに2位Hisおよび4位のSerの異性化は、用いるアルカリの量および反応液中での濃度によって大きな影響を受ける。そこで、アルカリの量は、ペプチド(IV)の約2.5〜5倍mole/mole、好ましくは、約3〜4倍mole/moleが用いられる。特に、反応液中での初期アルカリ濃度としては、好ましくは約0.05〜0.3mole/literで、さらに好ましくは約0.1〜0.2mole/literである。
該反応温度は、後処理、即ち、中和が完了するまでは約−10〜10℃、好ましくは、約−5℃〜5℃に維持する。均一な反応温度を維持するために、反応液を、攪拌することが好ましい。該反応は、通常約1.5〜3時間で終了する。
好ましくない異性化を最小限に抑制するために、反応終了後直ちに低温下において中和処理を行うことが望ましい。該中和処理の温度は、約−5〜5℃、好ましくは約−2〜2℃である。該中和処理は、反応液に酸(例、塩酸、硫酸など)を加えることにより行われる。
すなわち、前述したペプチド(IV)の加水分解液を中和する際に析出するゲル状物を、加熱溶解し、ついで徐冷して、ペプチド(II)を晶出させる。
該加熱溶解は、約60〜80℃、このましくは、約65〜75℃で撹拌下に行うのが好ましい。
該徐冷の際には種晶を加えることによって晶出が容易になる。該種晶の添加時期は、種晶が溶解せず、加熱溶解液が再びゲル状に変化しない温度範囲であればいつでもよいが、好ましくは加熱溶解液が約35〜45℃の時点である。該徐冷は、約1〜3時間を要して、約15〜30℃となるようにする。
熟成温度は約10〜35℃、好ましくは約10〜30℃であるが、より好ましくは約15〜25℃である。
熟成を開始する時点におけるペプチド(II)の溶液の濃度を、約0.01〜0.05mole/liter、好ましくは約0.02〜0.04mole/literとすると、晶出に好都合である。
具体的には例えば、熟成時間が60時間の場合、晶出開始時より40時間までは5時間毎に1分間33rpmで撹拌し、40時間後は0.5時間毎に1分間33rpmで撹拌するのが好ましい。
上記したペプチド(II)の結晶化法により、ペプチド(c)→ペプチド(e)の縮合反応時及びペプチド(IV)→ペプチド(II)の加水分解反応時に副生するHis異性体、ペプチド(IV)→ペプチド(II)の加水分解反応時に副生するSer異性体などの最終製品の品質を左右する混在物の繁雑な除去操作、並びにペプチド(IV)の単離操作の省略が可能となる。
このようにして得られたペプチド(II)の結晶は、Li、Na、K、Ca、Baなどのアルカリ金属との塩、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどとの塩として得られる。
ペプチド(III)またはその塩の製造は、例えば 藤野らの方法〔M.Fujinoら:アーカイブス・オブ・バイオケミストリー・アンド・バイオフィジックス(Archives of Biochemistry and Biophysics, 154, 488(1973);ケミカル・アンド・ファーマシューティカル・ブレティン(Chemical and Pharmaceutical Bulletin, 23, 229 (1975)〕 に記載の方法またはそれと同様の方法によって製造することができる。
ペプチド(III)は塩酸、臭化水素酸、硫酸、p−トルエンスルフォン酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルフォン酸などとの塩として、結晶化等の通常の手段により分離・採取して、あるいは溶液状態のまま次工程で用いることもできる。溶液状態のまま次工程で用いる場合には、アミド結合形成反応に先立って、塩基による中和あるいはイオン交換樹脂などによる塩基の除去などが必要になる。
ペプチド(II)とペプチド(III)とから、縮合反応によって、ペプチド(I')を製造する方法は、反応に悪影響を及ぼさない溶媒中で行われる。該反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、DMF、DMA、N−メチルピロリドン、ジクロルメタン、ジクロロエタン、THF、ジオキサンなどが挙げられ、これらの溶媒は、適宜混合して用いることもできる。該溶媒としては、好ましくはジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドである。
ペプチド(III)の使用量は、ペプチド(II)に対して約0.5ないし2モル当量、好ましくは約1ないし1.5モル当量である。
反応温度は、通常約0〜40℃、好ましくは約5〜25℃である。なお、反応温度がこれからはずれると、R3の異性化(ラセミ化)が起こりやすくなり、不都合である。反応時間は、通常約30〜60時間、好ましくは約40〜50時間である。
該縮合反応においては、R3残基の異性化に留意しなけばならないが、その方法としては、ペプチドのフラグメント縮合において、異性化を抑制する方法であればいずれも適用することができる。該異性化を抑制する方法としては、通常、縮合剤や、異性化を抑制する添加物が加えられる。該縮合剤としては、DCC、EDAなどが挙げられる。該添加物としては、HONB、HOSu、HOBtなどが挙げられる。該縮合剤と該添加物は、これらを自由に組み合わせて用いてよく、その組み合わせとしては、例えば、DCC−HONB、DCC−HOSu、DCC−HOBt、EDA−HOSuなどが挙げられるが、とりわけDCC−HONBの組み合わせが好ましい。
縮合剤は、ペプチド(II)に対して、約1〜3倍(mole/mole)、好ましくは、約1〜2倍(mole/mole)の量が用いられる。添加物は、ペプチド(II)に対し、約1〜4倍(mole/mole)、好ましくは約1.5〜2.5倍(mole/mole)が用いられる。また、ペプチド(II)の反応溶媒中での初期濃度は、約0.05〜0.2mole/L、好ましくは、約0.08〜1.5mole/Lである。ペプチド(III)は、ペプチド(II)に対し、約0.8〜2倍(mole/mole)、好ましくは約1〜1.3倍(mole/mole)である。
ペプチド(I')のArg残基の保護基を脱離し、ペプチド(I)を得る脱保護反応は、例えば,ペプチド(I')を、反応に悪影響を及ぼさない溶媒中または無溶媒下で、酸で処理することにより行われる。
該反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、ジクロルメタン、ジクロルエタン、ジオキサン、トリフルオロ酢酸などが挙げられ、これらの溶媒は、適宜混合して用いることもできる。
該脱保護反応において、用いられる酸としては、例えば、C1−6アルキルスルホン酸(例、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸など)、ハロゲノスルホン酸(例、クロルスルホン酸、フルオロスルホン酸、ブロモスルホン酸)、ルイス酸(例、ボロン・トリス・トリフルオロアセテートなど)などが挙げられ、なかでもC1−6アルキルスルホン酸が好ましい。さらに好ましくはC1−3アルキルスルホン酸であり、メタンスルホン酸が特に好ましい。
該脱保護反応において、処理に用いられる酸の使用量は、ペプチド(I')に対し、約5〜25(W/W)倍、好ましくは約10〜20(W/W)倍である。
該脱保護反応における反応温度は、通常約0〜20℃、好ましくは約5〜15℃である。反応時間は、通常約2〜8時間、好ましくは約4〜6時間である。
該脱保護反応は、好ましくは、無溶媒下で、メタンスルホン酸を用いて行われる。
また、該脱保護反応の際、ラジカル捕捉剤(ラジカルスカベンジャー)(例、フェノール、アニソールなど)または酸化防止剤(例、チオグリコール酸など)を適宜添加して用いてもよい。これらの使用量は、上記反応生成物に対し、それぞれ約0.8〜2.0(W/W)倍、約0.05〜2.0(W/W)倍である。
従って、これらの問題がなく工業的に有利な方法としては、例えば、塩基性水溶液を用いる直接的な中和による、反応液から該アルキルスルホン酸を除去する方法が挙げられる。しかし、大量の強酸を中和する本中和反応においては、大量処理が可能である一方、当然激しい中和熱の発生が予想され、大量に発生する中和液の処理という問題に加え、塩基性水溶液中での目的ペプチドにおけるペプチド結合の開裂、アミノ酸残基の異性化など目的化合物の品質に及ぼす悪影響が当初予想され、ペプチド化合物の常識的な取扱いの範囲を越えたものであると考えられた。
該無機塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムなどが、また、該有機塩基としてはピリジン、トリエチルアミンなどが用いられるが、炭酸カリウムがとりわけ好ましい。塩基として炭酸塩を用いる場合は、炭酸ガス発生に伴う発泡が著しいが、酢酸エチル、ベンゼン等の有機溶媒を適量混在させてこれを防ぐことができる。無機又は有機塩基の必要量は、アルキルスルホン酸を中和するのに十分な量があれば目的を達成することが出来るが、好ましくはアルキルスルホン酸に対し、約1〜1.3倍当量を用いる。
該中和反応後、目的化合物は、通常、中和液から固体もしくは油状物として分離するので、濾過あるいは分液など公知の方法で適宜分離回収することができる。
該中和反応後、分離回収された目的化合物は、所望により自体公知の方法により、分離・精製操作を行うことができる。比較的少量の目的化合物を精製する場合には、クロマトグラィーなどの手段を用いればよく、大量の目的化合物を精製する場合には、その化合物特有のイオン的性質、極性などの溶液物性、芳香族性、分子量などを利用して、例えばカラムクロマトグラフィー(例、液体カラムクロマトグラフィー、好ましくは、高速液体カラムクロマトグラフィー)を数種組み合わせる手段を用いればよい。
分離・回収法としては、上記の反応液において分離した遊離体の油状物をカラムクロマトグラフィーで精製することが好ましい。
カラムクロマトグラフィーの組み合わせとしては、例えば以下に詳述するダイヤイオンHP−20(前述)(第1回目)→ CM−23(前述)→ ダイヤイオンHP−20(第2回目)→ セファデックスLH−20(前述)の順の組み合わせが挙げられる。
ペプチド含有水溶液は、一般に、濃縮時に激しい発泡を伴うために、濃縮を必要とする場合には凍結乾燥機などの特殊な装置や消泡剤の添加等が必要となる。上記カラムクロマトグラフィーの組み合わせは、各カラムクロマトグラフィーで得られる有効画分の濃縮、特にCM−23で得られる大量の有効画分水溶液の濃縮操作の省略を可能にしたものであり、操作性、経済性の観点から有利であるばかりでなく、濃縮に伴うペプチドの分解を抑えて品質の向上にも寄与している。
CM−23カラムクロマトグラフィーは、目的化合物とイオン的に異なる副生物の除去が主目的であるが、CM−23の量は、通常、目的化合物に対して約35〜60倍(V/W)、好ましくは約40〜55倍(V/W)が用いられる。ダイヤイオンHP−20(第1回目)カラムクロマトグラフィーで溶出された所望の画分からエタノールを留去した溶液をCM−23のカラムに付し、水洗後、目的化合物を0.015モル酢酸アンモニウム水、0.03モル酢酸アンモニウム水で順次溶出し、予め設定した所望の画分を集める。
セファデックスLH−20カラムクロマトグラフィーは、発熱性物質、無機物、その他の微量混在物の除去を目的としている。セファデックスLH−20は目的化合物の20〜60倍(V/W)、好ましくは30〜50倍(V/W)が用いられる。LH−20カラムは0.005N酢酸水で展開し、所望の画分を集める。所望画分は必要に応じて、濃縮、活性炭処理、膜濾過を行ったのち凍結乾燥することにより、目的化合物(酢酸塩)を得ることができる。
(参考例1)Z−Tyr−D−Leu−OEtの製造:
Z−Tyr−OH・DCHA 58.8gを酢酸エチル約300ml、0〜10℃で1規定硫酸を用いて脱塩した。有機層を分離し、無水芒硝で乾燥した。無水芒硝をろ去し、ろ液にD−Leu−OEt 24.3g、トリエチルアミン12.6g、DCC 26.8gを加え、約5℃で約2時間、約10℃で5時間攪拌した。反応液に1規定塩酸60mlを加えてろ過した。ろ液を分液し、有機層を食塩水、重曹水で洗浄した後に酢酸エチルを留去した。残渣にイソプロピルエーテルを加え、析出した結晶をろ取し、酢酸エチル−イソプロピルエーテルから再結晶し、乾燥し、標記ペプチドを得た。
収量:41.6g(77%)。
融点:116〜118℃。
比旋光度〔α〕D 25=−3.4°(c=1,DMF)。
Z−Tyr−D−Leu−OEt 40.5g、p−トルエンスルホン酸・1水和物16.9gをDMF約300mlに溶解して、5%Pd−Cを約5gの存在下で20〜35℃で水添し、反応終了後触媒をろ去した。
別途、Z−Ser−OH 23.3g、HONB 19.2gをDMF 300mlに溶かし、DCC 22.1gを加えて、0〜5℃で約7時間攪拌し、これに先の還元反応液を加えた。混合液を約0℃に冷却し、トリエチルアミン9gを滴下した後、−5〜5℃で約10時間攪拌、室温で一夜放置した。
析出結晶をろ去し、ろ液を減圧濃縮し、濃縮残渣を酢酸エチルに溶解した。酢酸エチル溶液を1規定塩酸、食塩水、重曹水で洗浄した後、無水芒硝で乾燥した。芒硝をろ去し、ろ液を減圧濃縮し、濃縮残渣にイソプロピルエーテルを加え、析出した結晶をろ取し、粗結晶を酢酸エチルから再結晶し、乾燥し、標記ペプチドを得た。
収量:37.6g(77%)。
融点:134〜136℃。
比旋光度〔α〕D 25=−4.8°(c=1,DMF)。
Z−Ser−Tyr−D−Leu−OEt 36.2gをDMF 300mlに溶解して5%Pd−C約5gの存在下で25〜35℃で水素添加し、反応終了後触媒をろ去した。
別途、Z−Trp−OH 21.4g、HONB 11.9g、をDMF約300mlに溶かし、DCC 13.7gを加え、5〜10℃で約7時間攪拌し、これに先の還元反応液を加えた。混合液を10〜15℃約7時間攪拌し、室温で一夜放置した。
析出結晶をろ去し、ろ液を減圧濃縮し、濃縮残渣を酢酸エチルに溶解した。酢酸エチル溶液を1規定塩酸、食塩水、重曹水で洗浄した後、無水芒硝で乾燥した。芒硝をろ去し、ろ液を減圧濃縮し、濃縮残渣にイソプロピルエーテルを加え、析出した結晶をろ取し、粗結晶を酢酸エチル−イソプロピルエーテルから再結晶し、乾燥し、標記ペプチドを得た。
収量:41.3g(85%)。
比旋光度〔α〕D 25=−10.0°(c=1,EtOH)。
Z−Trp−Ser−Tyr−D−Leu−OEt(ZTSTLE)55.7gをDMF約350mlに溶解して5%Pd−C(wet)約12gの存在下、約30℃で水添し、反応終了後触媒をろ去した。
ろ液にZ−5−oxo−Pro−His−OH・1.5H2O 32.6gとHONB 27.4gを加えて溶解した。溶解液を2〜8℃に冷却してDCC 20.5gを加え、約8℃で約60時間攪拌した。
反応液を約40℃で約2時間攪拌後、不溶物をろ去し、ろ液を減圧濃縮した。濃縮液に酢酸エチル約1Lを約60℃で加えた後、20〜25℃で攪拌した。析出した結晶をろ取し、得られた粗結晶をDMF約230mlと酢酸エチル約530mlの混液中で懸濁攪拌した後、ろ取した。得られた標記ペプチドの精結晶(ZPGLE)は乾燥することなしに、次工程の還元反応に供した。
参考例4で得られたZPGLEをDMF約900mlに溶解し、5%Pd−C(wet)15gの存在下、約30℃で水添し、反応終了後触媒をろ去した。標記ペプチドを含有するろ液を約180mlまで濃縮して,次工程の加水分解反応に供した。
Z−Leu−OH 125gおよびp−ニトロフェノール65.5gを酢酸エチル1.2Lに溶解し、0〜5℃でDCC 107gの酢酸エチル溶液を滴下し、10〜25℃で攪拌した。反応終了後、析出結晶をろ去し、ろ液を減圧濃縮した。濃縮残渣をエタノールに溶解し、晶出した結晶をろ取し、真空乾燥し,標記ペプチドを得た。
収量:142g(78%)。
融点:92〜94℃。
比旋光度〔α〕D 25=−42.5°(c=1,CH3OH)。
Z−Arg(MBS)OH・DCHA 34.1gを酢酸エチル400mlに懸濁し、0〜10℃で1規定硫酸57mlを加え、攪拌、分液し、有機層を芒硝水で洗浄し、減圧濃縮した。一方、Z−Pro−NHC2H5 15.7gをジメチルアセトアミド30mlに溶解し、5%Pd−C 2.3gの存在下で水添し、反応終了後触媒をろ去した。ろ液でZ−Arg(MBS)OHを含んだ濃縮残渣、HONB 9.4gを溶解した。これにDCC 12.8gのジメチルアセトアミド溶液を滴下して、10〜20℃で攪拌した。反応終了後析出した結晶をろ去し、ろ液を減圧濃縮した。濃縮液を酢酸エチル450mlに溶解し、1規定塩酸、食塩水、重曹水で洗浄した後、酢酸エチルを減圧で留去した。濃縮残渣を酢酸エチルとエタノールの混液で処理して粗結晶を得、これをエタノールから再結晶し、真空乾燥し,標記ペプチドを得た。
収量:22.4g(72%)。
比旋光度〔α〕D 25=−33.0°(c=1,CH3OH)。
Z−Arg(MBS)−ProNHC2H5 20.3g及びp−トルエンスルホン酸・一水和物6.4gをDMF 160mlに溶解し、5%Pd−C 2.3gの存在下で水添し、反応終了後触媒をろ去した。ろ液にトリエチルアミン3.4gを冷却下に加え、これにZ−Leu−ONP 13.6gを加えて10〜15℃で攪拌した。反応終了後減圧濃縮し、濃縮残渣を酢酸エチル120mlに溶解し、希塩酸、重曹、水で順次洗浄した。酢酸エチルを留去し、濃縮残渣をシリカゲルカラムに付し、カラムを酢酸エチル−イソプロピルエーテルの混液(1:1)、酢酸エチル−メタノールの混液(3:2)で順次展開し、有効画分を集めて減圧濃縮した。濃縮残渣を酢酸エチルに溶解し、イソプロピルエーテルを加えて、生じた沈殿をろ取し、真空乾燥し、標記ペプチドを得た。
収量:22.2g(92%)。
比旋光度〔α〕D 25=−39.0°(c=1,CH3CH2OH)。
参考例5で得られた濃縮液に、水酸化ナトリウム8.3gを水1Lに溶解した液を−3〜0℃で滴下し、約0℃で約2時間攪拌した。反応終了を確認後、1規定塩酸210mlを約0℃で滴下して中和し、結晶を析出させた。析出した結晶を加熱溶解し、加熱下に活性炭1.5gを加えて攪拌後、活性炭をろ去した。ろ液を徐冷し、15〜25℃で35時間攪拌した。晶出結晶をろ取し、約60℃で真空乾燥し、標記ペプチドを得た。
収量:39.9g(59.2%、参考例3のZTSTLE基準)。
比旋光度〔α〕D 25=−21.5°(c=0.5,DMF)。
なお、本溶媒系での20℃での反応における1時間後の2位Hisおよび4位Serにおける好ましくない異性化は、それぞれ1.3%、4.8%であるのに対し、0℃での反応ではそれぞれ0.2%, 0.44%であった。
また、本発明方法による結晶化法は、諸々の類縁物質を効果的に除去するが、最も注目すべき類縁物質であるHis異性体及びSer異性体に焦点を当ててその除去効果の一例を〔表1〕に示す。
参考例5で得られた濃縮液に、水酸化ナトリウム8.3gを水1Lに溶解した液を0〜3℃で滴下し、約0℃で約2時間攪拌した。反応終了を確認後、1規定塩酸210mlを約0℃で滴下して中和し、結晶を析出させた。析出した結晶を加熱溶解し、加熱下に活性炭1.5gを加えて攪拌後、活性炭をろ去した。ろ液を徐冷し、18〜22℃で80時間熟成した。晶出結晶をろ取し、約60℃で真空乾燥し、標記ペプチドを得た。
収量:42.9g(63.6%、参考例3のZTSTLE基準)。
比旋光度〔α〕D 25=−21.8°(c=0.5,DMF)。
ZLAP 35.6gをDMF 350mlに溶解し、5%Pd−C 7.3gの存在下で水添し、反応終了後触媒をろ去した。ろ液にPGLOH 36.9gとHONB 16.2gを加えて溶解し、4〜8℃でDCC 14gのDMF溶液を滴下し、約8℃で15時間、約20℃で約30時間攪拌した。反応終了後析出した結晶をろ去し、ろ液を減圧濃縮した。濃縮残渣をエタノール約200mlに溶解し、これに酢酸エチル約2.3Lを加えて、生じた結晶性固体をろ取した。粗体をエタノール約220mlに溶解し、これに酢酸エチル約900mlを加え、生じた固体をろ取し、ジクロルメタンで洗浄してMBSTAPの湿体を得た。乾燥操作を省略して次工程の脱MBS反応に供した。HPLCで定量し、MBSTAPが51.1g(82%)得られていることを確認した。
(1)脱MBS化:
フェノール60gをメタンスルホン酸800gに溶解し、冷却下に、実施例10で得られたMBSTAPの湿体(MBSTAP 51.1g相当)を加え、約10℃で5時間攪拌した。
別途、水2Lに炭酸カリウム690gを溶解し、酢酸エチル約400mlを混ぜて、−2〜0℃に冷却したアルカリ液を調製した。アルカリ液に脱MBS反応液を約0℃を保ちながら滴下した。滴下後分液し、上層(油状物と酢酸エチル層)に pH4緩衝液(約0.1規定酢酸ナトリウム約3Lと酢酸約58mlの混液)を加えて油状物を溶解、分液し、水層を酢酸エチルで洗浄した。
水層に20%(w/w)炭酸カリウム溶液を加えて pHを約6とし、析出した油状物を取り除き、TAP−144を含有する水溶液を得た。
DAIAION・HP−20(商品名)のカラム(約1.2L)に、上記(1)項で得たTAP−144を含有する水溶液を通液した。通液後、0.3M酢酸ナトリウム溶液(酢酸で pH6.2に調節)約2.5L、0.025M酢酸アンモニウム水約3L、10%エタノール4.3Lで順次洗浄した。次に15%エタノール9.5L、35%エタノール9.5Lを通液し、有効画分を集め、エタノールを減圧留去した。(S1−TAP)
ここで得られたS1−TAPをCM−23(商品名)のカラム(約1.7L)に通液し、水2Lで洗浄後、0.015M酢酸アンモニウム水15L、次に0.03M酢酸アンモニウム水15Lで目的化合物を溶出するカラムクロマトグラフィーを行い、有効画分を集めた(S2−TAP)。
S2−TAPをDAIAION・HP−20(商品名)のカラム(約0.7L)に通液し、0.3M酢酸ナトリウム溶液(酢酸で pH6.2に調節)約2.1L、0.01M酢酸アンモニウム水3.2L、水0.7Lで順次洗浄した後、15%エタノール4.3L、35%エタノール5.4Lで溶出するカラムクロマトグラフィーを行い、有効画分を集めて約200mlに減圧濃縮した。濃縮液を Sephadex LH−20(商品名)カラム(約10L)に付し、0.005N酢酸水で展開し、有効画分を集めた。有効画分を活性炭処理、限外ろ過、濃縮、凍結乾燥を行ってTAP−144を31.8g(収率:67.6%)得た。
含量:99.8%(HPLC,内標基準)。
旋光度〔α〕D 20=−39.0°(c=1,1%酢酸)。
吸光度:57(281nm)、55(289nm)。
Claims (1)
- 一般式
5−oxo−Pro−R1’−Trp−Ser−R2’−R3’−OR9’ (IV’)
〔式中、R1’はHisを、R2’はTyrを、R3’はD−Leuを、R9’はC1−6アルキル基をそれぞれ示す。〕で表わされるペプチドまたはその塩。
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