本発明のトナー用外添剤の一実施形態、および本発明のトナーの一実施形態について説明する前に、まずは本実施形態のトナーが使用される画像形成装置について説明する。
〔画像形成装置〕
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の構成を模式的に示した図である。画像形成装置1は、デジタル複合機であって複写モードと印刷モードとを実現する。複写モードとは、スキャナ部29によって原稿の画像を読み取り、且つ、当該原稿の画像を用紙等の記録媒体に印刷するモードである。印刷モードとは、画像形成装置1にネットワークを介して接続される外部機器から伝送されてくる画像情報に示される画像を記録媒体に印刷するモードである。
画像形成装置1は、図1に示されるように、感光体ドラム20と、コロナ帯電器21と、露光装置22と、現像装置10と、転写装置23と、定着装置25と、クリーニング装置24と、給紙トレイ28と、スキャナ部29と、排紙トレイ30とを含む。以下では、これら部材を順に説明する。
このような画像形成装置1において画像の印刷は下記のようにして行われる。まず、コロナ帯電器21が、回転駆動される感光体ドラム20の表面を均一に帯電する。そして、露光装置22が、帯電された感光体ドラム20表面にレーザ光を当てて静電潜像を形成する。つぎに、現像装置10が、感光体ドラム20表面の静電潜像にトナーを静電的に付着させて現像し、感光体ドラム20表面にトナー像を形成する。さらに、転写装置23が、感光体ドラム20表面のトナー像を記録媒体に転写する。この転写後、感光体ドラム20に残留しているトナーはクリーニング装置24によって除去される。そして、定着装置25が、記録媒体に転写されたトナー像を当該記録媒体に定着させることによって画像の印刷が完了する。
以下では、この画像形成装置1に備えられている各部材について、さらに詳細に説明する。
〔感光体ドラム〕
感光体ドラム20は、図示しない駆動手段によって当該ドラムの軸を中心に回転駆動するように支持され、その表面に静電潜像ひいてはトナー像が形成される感光膜を有するローラ状部材である。感光体ドラム20には、たとえば、図示しない導電性基体と、導電性基体表面に形成される図示しない感光膜とを含むローラ状部材を使用できる。導電性基体には、円筒状、円柱状、シート状などの導電性基体を使用でき、その中でも円筒状導電性基体が好ましい。感光膜としては、有機感光膜、無機感光膜などが挙げられる。
なお、有機感光膜としては、電荷発生物質を含む樹脂層である電荷発生層と電荷輸送物質を含む樹脂層である電荷輸送層とが積層されたものや、1つの樹脂層中に電荷発生物質と電荷輸送物質とを含むものが挙げられる。また、無機感光膜としては、酸化亜鉛、セレン、アモルファスシリコンなどから選ばれる1種または2種以上を含む膜が挙げられる。導電性基体と感光膜との間には、下地膜を介在させてもよく、感光膜の表面には感光膜を保護するための表面膜(保護膜)を設けてもよい。
〔現像装置〕
図2は、図1にて示した現像装置10の内部構成を模式的に示した図である。現像装置10は、現像槽2と、現像ローラ3と、第1攪拌部材4と、第2攪拌部材5と、搬送部材6と、規制部材7と、規制部材支持体8と、流し板9と、トナー濃度検知センサ12とを含む。
現像槽2は、内部空間を有するほぼ角柱状の筐体であり、現像ローラ3、第1攪拌部材4、第2攪拌部材5および搬送部材6を回転自在に支持し、規制部材7、流し板9などを直接的または間接的に支持し、現像剤を収容する容器である。なお、現像槽2には、感光体ドラム20を臨む開口2aが形成される。また、現像槽2の鉛直方向上面には、トナー補給口2bが形成されている。
なお、現像槽2の上方(鉛直方向と逆方向)には図示しないトナーカートリッジおよびトナーホッパが設けられる。より詳しくは、上方から下方(鉛直方向)に向けて、トナーカートリッジ、トナーホッパおよび現像槽2の順番で設けられる。トナーカートリッジは、その内部空間にトナーを収容し、画像形成装置1本体に対して着脱可能に設けられる。
また、トナーカートリッジは、円筒状部材であって、画像形成装置に設けられる図示しない駆動手段によって前記円筒の軸を中心として回転駆動する。トナーカートリッジの周面には軸方向に延びる細長い開口が形成され、トナーカートリッジの回転に伴って前記開口からトナーが落下してトナーホッパに供給される。トナーホッパは、トナーカートリッジから落下してくるトナーを受け付けるトナー供給口と現像槽2の上方に形成されるトナー補給口2bとが連通するように設けられる。トナーホッパ内において、トナー補給口2bの上方には、トナー補給ローラ19が設けられる。トナー補給ローラ19は、トナーホッパによって回転自在に支持され、図示しない駆動手段によって当該ローラの軸を中心として回転駆動する。トナー補給ローラ19の動作は、トナー濃度検知センサ12による現像槽2内のトナー濃度の検知結果に応じて、画像形成装置に設けられる図示しない制御手段により制御される。トナー補給ローラ19の回転駆動によって、トナー供給口およびトナー補給口2bを介して、現像槽2内にトナーが補給される。
現像ローラ3は、現像槽2に支持され、図示しない駆動手段によって当該ローラの軸を中心として回転駆動する部材である。また、現像ローラ3は、現像槽2の開口2aを介して感光体ドラム20に対向するように配されている。さらに、現像ローラ3は、感光体ドラム20に対して間隙を有して離隔するように設けられている。なお、現像ローラ3と感光体ドラム20との隙間は現像ニップ部と称される。
現像ニップ部において、現像ローラ3表面の図示しない現像剤層から感光体ドラム20表面の静電潜像にトナーが供給される。現像ニップ部では、現像ローラ3に接続される図示しない電源から現像ローラ3に対して現像バイアス電圧が印加されることによって、現像ローラ3表面の現像剤層から感光体ドラム20表面の静電潜像へのトナーの移行が円滑に進行する。本実施の形態では、現像ローラ3は、図2において反時計回りに回転し、感光体ドラム20は、図2において時計回りに回転する。
第1攪拌部材4および第2攪拌部材5は、いずれもローラ状部材であって、現像槽2によって回転自在に支持され、図示しない駆動手段によってこれら攪拌部材の軸を中心に回転するように設けられている。本実施の形態では、第1攪拌部材4は図2において反時計回りに回転し、第2攪拌部材5は図2において時計回りに回転する。
第1攪拌部材4は、現像ローラ3を介して感光体ドラム20に対向し且つ現像ローラ3よりも下方に設けられる。なお、現像装置10では、現像ローラ3の軸と第1攪拌部材4の軸とを結ぶ直線が水平面に対して54°になるように、現像ローラ3および第1攪拌部材4の各々の配置が決められる。
第2攪拌部材5は、第1攪拌部材4を介して現像ローラ3に対向し且つ現像ローラ3よりも下方に設けられる。第1攪拌部材4および第2攪拌部材5は、現像槽2内に貯留される現像剤を攪拌することによって現像剤に均一な電荷を付与し(摩擦帯電)、帯電状態にある現像剤を汲み上げて現像ローラ3の周囲に供給する。
搬送部材6は、現像槽2によって回転自在に支持されかつ図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられるローラ状部材である。搬送部材6は、第2攪拌部材5を介して第1攪拌部材4に対向し、かつトナー補給口2bの鉛直方向下方に設けられる。搬送部材6は、トナー補給口2bから現像槽2内に補給されてきたトナーを第2攪拌部材5の周囲に搬送する。
規制部材7は、長方形状のブレードであり、現像ローラ3の軸方向と規制部材7の長辺方向とが平行になるように配され、現像ローラ3の上方において現像槽2と規制部材支持体8とによって支持され、かつ現像ローラ3表面に対して隙間を開けて対向するように設けられる。
規制部材7は、薄板状のステンレス鋼からなるものである。但し、規制部材7の材質はステンレス鋼に限定されるものではなく、規制部材7は、アルミニウムなどの非磁性金属または弾性を有する合成樹脂からなるものであってもよい。
規制部材7は、現像ローラ3表面に担持される現像剤層から余分な現像剤を取り除き、現像剤層の層厚を一定に規制することによって、現像ローラ3による現像剤の搬送量を調整するものである。また、規制部材7は、現像剤層と摩擦することによって現像剤層において電荷を発生させ、帯電状態が不十分である現像剤に電荷を補充するためのものでもある。
規制部材支持体8は、現像槽2とともに規制部材7を支持するものである。具体的には、規制部材支持体8と現像槽2とによって規制部材7を挟持するようにして支持する。規制部材支持体8は合成樹脂からなるものであるが、金属からなるものであってもよい。
以上の現像装置10によれば、現像槽2に貯留される現像剤は、第1攪拌部材4および第2攪拌部材5が回転することによって第1攪拌部材4の鉛直方向上方に搬送され、さらに、現像ローラ3内部の磁性部材から生じる磁力によって現像ローラ3表面に引き寄せられる。そして、現像ローラ3は、その表面に現像剤層を担持して回転し、規制部材7によって現像剤層の厚みが規制され且つ現像剤に帯電がなされた後、現像ニップ部において感光体ドラム20上の静電潜像にトナーを供給する。これにより現像処理が行われる。
現像処理終了後、現像ローラ3はさらに回転して再度現像剤の供給を受ける。一方、規制部材7によって現像ローラ3表面から取り除かれる現像剤は、現像ローラ3から離反する方向に向けて、流し板9の上面を通過し、第2攪拌部材5と搬送部材6との間に戻され、そこで他の現像剤と再度混合され、現像ローラ3に向けて搬送される。つまり、現像槽2内では現像剤が循環されている。また、搬送部材6は、現像槽2内に補給されたトナーを第2攪拌部材5の周囲に補充するものであるが、トナー濃度検知センサ12による検知結果に応じて前記補充量を調整する。
〔露光装置〕
図1の露光装置22は、半導体レーザを光源として含むレーザスキャニングユニットである。レーザスキャニングユニットは、レーザ光源の他、ポリゴンミラー、fθレンズ、反射ミラーなどを組合せた光学ユニットである。なお、露光装置22は、レーザスキャニングユニットに限定されるものではなく、LED(light emitting diode)アレイまたはEL(emitting diode)素子を光源とした露光ヘッドであってもよい。
露光装置22は、スキャナ部29において読み取られる原稿の画像情報または外部機器から伝送されてくる画像情報が入力されると、この画像情報に応じた光を帯電状態の感光体ドラム20表面に照射する。これによって、感光体ドラム20表面に画像情報に応じた静電潜像が形成される。
〔転写装置〕
転写装置23は、図示しない支持部材によって回転自在に支持され、図示しない駆動手段によって回転可能に設けられ、感光体ドラム20に圧接するように設けられるローラ状部材である。
転写装置23は、直径8〜10mmの金属製芯金と、金属製芯金の表面に形成される導電性弾性層とを含むローラ状部材である。金属製芯金の材質としては、ステンレス鋼、アルミニウムなどが挙げられる。導電性弾性層は、ゴム材料にカーボンブラックなどの導電材を配合したものである。なお、前記ゴム材料としては、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)、発泡EPDM、発泡ウレタンなどが挙げられる。
感光体ドラム20と転写装置23との圧接部(転写ニップ部)に、感光体ドラム20の回転によってトナー像が搬送されるのに同期して、ピックアップローラおよびレジストローラによって給紙トレイ28から記録媒体(用紙)が1枚ずつ供給される。
記録媒体が転写ニップ部を通過することによって、感光体ドラム20表面のトナー像が記録媒体に転写される。転写装置23は図示しない電源と接続されており、トナー像が記録媒体に転写される際に、トナー像を構成するトナーの帯電極性とは逆極性の電圧が転写装置23に印加される。これによってトナー像が記録媒体に円滑に転写される。
〔クリーニング装置〕
図1のクリーニング装置24は、図示しないクリーニングブレードと、図示しないトナー貯留槽とを含む。クリーニングブレードは、長方形形状であって、その長辺が感光体ドラム20の軸と平行になるように設けられ、且つ、感光体ドラム20表面に当接するように設けられる板状部材である。
クリーニングブレードは、トナー像が転写された後に感光体ドラム20表面に残留するトナー、紙粉などを感光体ドラム20表面から取り除くためのものである。トナー貯留槽は、内部空間を有する容器状部材であり、クリーニングブレードによって除去されるトナーを一時的に貯留するものである。以上のクリーニング装置24によって、トナー像が転写された後の感光体ドラム20表面が清浄化される。
〔定着装置〕
図1の定着装置25は、定着ローラ26と加圧ローラ27とを含む。定着ローラ26は、図示しない支持部材によって回転自在に支持され、かつ図示しない駆動手段によってこのローラの軸を中心として回転するように設けられている。
定着ローラ26は、その内部に図示しない加熱部材を有し、転写ニップ部から搬送されてくる記録媒体に担持される未定着トナー像を加熱することによって溶融させて、当該未定着トナー像を記録媒体に定着させる。定着ローラ26は、芯金と、弾性層とを含むローラ状部材である。芯金は、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属によってなるものである。弾性層は、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの弾性材料からなるものである。加熱部材は図示しない電源から電圧を受けて発熱する。加熱部材はハロゲンランプまたは赤外線ランプである。
加圧ローラ27は、回転自在に支持されかつ図示しない圧接機構によって定着ローラ26に対して圧接するように設けられるローラ状部材である。加圧ローラ27は、定着ローラ26の回転に対して従動回転する。加圧ローラ27は、定着ローラ26と同じ構成であってもよい。また、加圧ローラ27は、内部に加熱部材が設けられてもよいし設けられなくてもよい。加熱部材には定着ローラ26内部の加熱部材と同様のものを使用できる。
また、定着ローラ26と加圧ローラ27との圧接部は定着ニップ部と称される。加圧ローラ27は、定着ローラ26によって記録媒体上のトナー像が加熱された時、溶融状態にあるトナーを記録媒体に対して押圧することによって、記録媒体へのトナー像の定着を促進する。
定着装置25は、トナー像の転写された記録媒体が定着ニップ部を通過するとき、トナー像を構成するトナーを溶融させるとともに記録媒体に押圧することによって、トナー像を記録媒体に定着させ、画像を印刷する。画像が印刷された記録媒体は、図示しない搬送手段によって、画像形成装置1の側面に設けられる排紙トレイ30に排出され、積載される。
〔給紙トレイ〕
図1の給紙トレイ28は、普通紙、被覆紙、カラーコピー用紙、OHPフィルムなどの記録媒体を収容するトレイである。給紙トレイ28は複数設けられ、給紙トレイ28毎でサイズの異なる記録媒体が収容される。記録媒体のサイズには、A3、A4、B5、B4などがある。また、複数の給紙トレイ28において互いに同じサイズの記録媒体を収容してもよい。
給紙トレイ28内の記録媒体は、ピックアップローラと搬送ローラとレジストローラとによって、感光体ドラム20表面のトナー像が転写ニップ部に到達するタイミングに同期するように、転写ニップ部へ1枚ずつ搬送される。
〔スキャナ部〕
図1のスキャナ部29には、図示しない原稿セットトレイ、自動反転原稿搬送装置(Reversing Automatic Document Feeder)などが設けられるとともに、図示しない原稿読み取り装置が設けられる。
自動反転原稿搬送装置は、原稿セットトレイに載置される原稿を原稿載置台の原稿読み取り位置に搬送するためのものである。原稿読み取り装置は、前記原稿載置台と原稿走査装置とを含み、原稿載置台に載置される原稿の画像を複数ライン毎(たとえば10ライン毎)に読み取るものである。
原稿載置台は、読み取り対象となる原稿を載置するためのガラス製板状部材である。原稿走査装置は、図示しない光源と第1ミラーと第2ミラーと第3ミラーと結像レンズとCCDラインセンサ(Charge Coupled Device,光電変換素子)とを収納するキャリッジであって、原稿載置台よりも下側において原稿載置台に平行に一定速度Vで往復移動するものである。
光源は原稿載置台に載置される原稿に光を照射するランプである。第1ミラーは、原稿から反射される光像を第2ミラーへ反射する部材である。そして、第2および第3ミラーは、原稿走査装置の往復移動に追随してV/2の速度で往復移動しつつ、第1ミラーから反射されてきた光像を結像レンズに導く。結像レンズ(光学レンズ)は、第2および第3ミラーから案内されてきた光像をCCDラインセンサに結像させる。
CCDラインセンサは、結像レンズによって結像される反射光像を電気信号に光電変換するデバイスであり、画像情報である電気信号を制御手段の中の画像処理部に出力する。画像処理部は、原稿読み取り装置またはパーソナルコンピュータなどの外部装置から入力される画像情報を電気信号に変換し、露光装置22に出力する。
〔コロナ帯電器〕
図1のコロナ帯電器21は、コロナ放電により、感光体ドラム20の表面を所定の極性および電位に帯電させるものである。本実施形態のコロナ帯電器21は鋸歯方式の放電電極を備える帯電器である。なお、コロナ帯電器21は、鋸歯方式に限定されるものではなく、タングステンワイヤを放電電極としたスコロトロン帯電器であっても構わない。但し、鋸歯方式のコロナ帯電器の方が、タングステンワイヤを放電電極とした帯電器よりも、オゾン発生量を抑制できる。
図3は、コロナ帯電器21の構造を示した分解斜視図である。コロナ帯電器21は、導電性のシールドケース31、鋸歯状電極32、グリッド電極33、各電極を保持する絶縁性の電極保持部材34とから構成されている。
シールドケース31は、感光体ドラム20の軸にほぼ一致した長さの導電性シールド板であって、感光体ドラム20表面と対向する側が開口されている。
鋸歯状電極32は、放電用の複数の先鋭突起が形成されている電極であり、ステンレス(鉄・クロム・ニッケルの合金であり、例えばJIS規格のSUS304などがある)製の短冊状の薄板からなる。なお、先鋭突起間の間隔はほぼ一定(例えば2mm)になるように設計されている。また、鋸歯状電極32はエッチング加工により形成される。
また、鋸歯状電極32には複数個の固定用の開口が形成されている。これらの各開口は、絶縁性の電極保持部材34の平面形状部34a上の突起部34bに嵌入される。これにより、電極保持部材34の平面形状部34aによって、鋸歯状電極32とシールドケース31とが電気的に絶縁された状態で位置決め保持(固定)される。
さらに、電極保持部材34には、グリッド電極33とシールドケース31及び鋸歯状電極32とを電気的に絶縁した状態でグリッド電極33を保持するグリッド電極保持部35が形成されている。
グリッド電極保持部35には、グリッド電極33の両端に形成された開口部33aに対応して形成された係止用の返しを有する係止部35aが形成されている。このグリッド電極保持部35を弾性変形させてからグリッド電極33の開口部33aに係止部35aを挿通させ、その後グリッド電極保持部35を復元させることで、グリッド電極33は張力が付加された状態で保持されることになる。
グリッド電極33は、鋸歯状電極32と同様、ステンレス製の短冊状の薄板にエッチング加工を施して得られ、メッシュ状の開口を均一に形成したものである。そして、電極保持部材34に一体成型されているグリッド電極保持部35の係止部35aを弾性変形させてから、グリッド電極33に形成された開口に係止部35aを挿入して係合させ、係止部35aによってグリッド電極33を張架する。
位置決め部材36は、シールドケース31の端部に配置されるものであり、シールドケース31内において電極保持部材34の位置決めを行うために電極保持部材34に一体成型されている。バネ端子37は、鋸歯状電極32に電気的に弾性接触することによって鋸歯状電極32に電力を供給するためのバネ端子である。
次に、図3に示した各部材を用いてコロナ帯電器21を組み立てる際の組み立て手順を説明する。まず電極保持部材34の平面形状部34aの突起部34bに鋸歯状電極32に形成された開口を嵌入する。これにより、電極保持部材34は鋸歯状電極32を保持することになる。
そして、電極保持部材34の位置決め部材36をシールドケース31の端縁に嵌めこむことによって、電極保持部材34をシールドケース31内に収容させる。さらに、グリッド電極保持部35の係止部35aにグリッド電極33の開口部33aを挿入することによって、グリッド電極33をグリッド電極保持部35に張架する。
つぎに、図4に基づいて、帯電器21に電圧供給を行う電源供給回路について説明する。図4に示すように、コロナ帯電器21の鋸歯状電極32およびシールドケース31には電源供給回路40より所定の電圧が供給される。
図4において、電源供給回路40には電圧変換回路41が備えられており、電圧変換回路41には+24Vを示す第1電圧が電源から印加されている。電圧変換回路41は、印加される第1電圧を第2電圧に変換して出力する。なお、ここで得られる第2電圧はハイレベルの電圧(高電圧)である。
電圧変換回路41から出力される電圧は、シールドケース31に接続されている出力端子CASE,鋸歯状電極32に接続されている出力端子MC,グリッド電極33に接続されている出力端子GRIDの夫々に印加される。つまり、電圧変換回路41から出力され且つ出力端子CASEから出力される電圧がシールドケース31に印加され、電圧変換回路41から出力され且つ出力端子MCから出力される電圧が鋸歯状電極32に印加され、電圧変換回路41から出力され且つ出力端子GRIDから出力される電圧がグリッド電極33に印加されることとなる。
但し、電源供給回路40には電圧調整回路42が備えられている。そして、電圧変換回路41から出力される電圧のうち、出力端子CASE,出力端子GRIDへ印加される電圧については電圧調整回路42によって電圧値が調整可能になっている。この電圧調整回路42は、電圧変換回路41と出力端子CASEとに接続されている可変抵抗器VR1と、電圧変換回路41と出力端子GRIDとに接続されている可変抵抗器VR2とを含む構成である。したがって、可変抵抗器VR1の抵抗値を調整することによって出力端子CASEから出力される電圧の値を調整できるようになっており、可変抵抗器VR2の抵抗値を調整することによって出力端子GRIDから出力される電圧の値を調整できるようになっている。
以上のような構成により、鋸歯状電極32には出力端子MCから高電圧Vが供給され、シールドケース31には出力端子CASEから高電圧Vcが供給され、グリッド電極33には出力端子GRIDから高電圧Vgが供給される。
電源供給回路40によってコロナ帯電器21に対して各電圧が供給されることで、鋸歯状電極32の先鋭突起部にてコロナ放電が生じ、このコロナ放電によってトータル電流Itが鋸歯状電極32に流れる。ここで、グリッド電極33に流れるグリッド電流Igは、電圧調整回路42の可変抵抗器VR2の抵抗値を変更することによって適宜調整できる。また同様に、コロナ放電によりシールドケース31にもケース電流Icが流れるが、このケース電流Icも、調整回路42の可変抵抗器VR1の抵抗値を変更することによって調整可能となっている。
鋸歯状電極32に流れる電流Itはケース電流Icとグリッド電流Igとの和に等しくなる。つまり、電流(トータル電流)Itは、シールドケース31とグリッド電極33とへ分配して流れるようになっている。それゆえ、トータル電流Itは以下の式(1)で表される。
It=Ic+Ig 式(1)
また、トータル電流Itを一定にすることで鋸歯状電極32に流れる電流を一定に制御できるため、電源供給回路40の電圧変換回路41は定電流制御を行っていることになる。
〔実施の形態〕
以上にて説明したコロナ帯電器21においては、鋸歯状電極32に異物が付着すると、異物が付着した部分のみ放電機能が低下し、感光体ドラム20を均一に帯電させることができなくなり帯電ムラが生じる。そして帯電ムラが発生すると、得られる画像に黒筋が入るなどの画像欠陥が発生するという問題が生じる。それゆえ、前記の画像欠陥を抑制するためには、鋸歯状電極32へ異物が付着する原因を精査し、この原因を抑制することによって異物の発生量を低下させればよい。そこで、本願発明者は、鋸歯状電極32へ異物が付着する原因を鋭意検討し、本願発明を完成するに至った。
鋸歯状電極32へ異物が付着する原因は以下のように推測される。画像形成プロセスにおいて使用されるトナーに含まれる外添剤(シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタンなどの酸化物微粒子を主成分とした外添剤)においては、その表面にヒドロキシル基が多量に存在するため、高湿条件下において外添剤には吸着水が多くなる。そして、多量の吸着水を有する外添剤をそのままトナーに添加すると、高湿条件下でトナーの帯電量が下がり、カブリなどの不具合が発生する。この不具合を抑制するためには、通常、シランカップリング剤を用いて、外添剤の表面(酸化物微粒子の表面)に存在する親水性のヒドロキシル基を疎水性の官能基に変換する処理(疎水化処理)を行う。
ここで、前記シランカップリング剤としてジメチルジクロロシランが用いられることが多く、ジメチルジクロロシランを用いて前記疎水化処理を行う場合、外添剤の表面のヒドロキシル基はジメチルシリル基に変換されることになるが、反応過程において、〔化1〕に示されるオクタメチルシクロテトラシロキサンが副生成物として生成される(あるいは、シランカップリング剤の原料に含まれている場合もある)。
そして、前記のオクタメチルシクロテトラシロキサンは、外添剤の表面に付着された状態で当該外添剤に残存すると考えられる。このオクタメチルシクロテトラシロキサンは、沸点が175℃であるものの、常温でも揮発しやすい。
したがって、このオクタメチルシクロテトラシロキサンの付着した外添剤を含むトナーを画像形成装置1にて使用すると、トナーからオクタメチルシクロテトラシロキサンが徐々に揮発し、このオクタメチルシクロテトラシロキサンがコロナ帯電器21の鋸歯状電極32に付着するものと考えられる。
そして、コロナ帯電器21では、画像形成プロセス実行時には高電圧が印加されコロナ放電が起こっており、この放電電圧に起因して酸化還元反応が生じ、オクタメチルシクロテトラシロキサンが不揮発性の珪素化合物へと化学変化し、この珪素化合物が異物として鋸歯状電極32に付着し、徐々に蓄積していくものと推測される。
そこで、本願発明者は、前記疎水化処理が行われることによって表面にジメチルシリル基が導入されている酸化物微粒子を主成分とする外添剤であっても、この外添剤に対して後述する第1揮発試験を行った際のオクタメチルシクロテトラシロキサンの揮発量が所定量以下であれば、この外添剤を用いたトナーによって画像形成プロセスを実行しても、放電電極に不純物が付着することを抑制でき、帯電ムラを防止できると考えた。
以下では、本実施形態のトナー用外添剤についてさらに詳細に説明する。本実施形態のトナー用外添剤は、酸化物微粒子を主成分とし、この酸化物微粒子表面にはジメチルシリル基が導入されており、且つ、当該トナー用外添剤に対して第1揮発試験を行った場合に測定されるオクタメチルシクロテトラシロキサンの揮発量が0.2μg以下になることを特徴としている。
ここで、前記第1揮発試験の手順について詳細に説明する。まず、容積50リットルの密閉容器を用意し、この密閉容器内部を120度に加熱し維持する。そして、この容器内部に試験対象である外添剤2.0gを入れ、10分後にサンプリングポンプSP204−50(GLサイエンス社製)を用いて密閉容器中のガス(空気)の採取を開始した。この採取の手順は、密閉容器内の温度を120度に維持したまま、1分当たりに0.2リットルの割合で30分間ガスを採取し続けてTenax捕集管に送り、合計6リットルのガスをTenax捕集管に捕集する、というものである。
つぎに、ガスクロマトグラフ質量分析装置(Agilent社製、6890/5973 inertMSD)並びに加熱脱着装置(GERSTEL社製、TDS/ClS4 SYSTEM)を用いて、Tenax捕集管に捕集したガスに含有されているオクタメチルシクロテトラシロキサンの含有量を計測する。そして、この計測された含有量を前記の揮発量として扱う。
つまり、前記の第1揮発試験とは、密閉容器の内部にサンプルとして外添剤2.0gを入れ且つ当該密閉容器内部を120℃にした状態を10分間継続させることによって前記外添剤からオクタメチルシクロテトラシロキサンを揮発させる実験を意味し、前記の揮発量とは、この実験において当該密閉容器内の外添剤から揮発したオクタメチルシクロテトラシロキサンの量を意味する。
なお、加熱脱着装置を用いた分析においては、インジェクション温度を280度とし、ジメチルポリシロキサンでコーティングした担体を充填した分離カラム(長さ60m)を使用した。
そして、前記の第1揮発試験を行った場合にオクタメチルシクロテトラシロキサンの揮発量が0.2μgを超える外添剤を含むトナーを画像形成装置1で使用すると、得られる画像に黒筋が発生するなどの不具合が発生することが後述する実験例により明らかになった。このような不具合が発生するのは、オクタメチルシクロテトラシロキサンの含有量が多い外添剤を含有したトナーを画像形成装置1にて使用すると、徐々に、コロナ帯電器21の鋸歯状電極32に珪素化合物からなる不純物が付着し、その結果、コロナ放電が不安定になり、感光体ドラムを均一に帯電させることができなくなり、帯電ムラが生じることによって、得られる画像に黒筋が発生するからである。
そして、主成分たる酸化物微粒子の表面にジメチルシリル基が導入されたものであって、且つ、前記第1揮発試験を行った場合に測定されるオクタメチルシクロテトラシロキサンの揮発量が0.2μg以下を示す外添剤を含有したトナーを用いて画像形成を行えば、コロナ帯電器21の鋸歯状電極32に異物が付着してしまう事を抑制でき、この異物に起因して生じる画質劣化を抑制する事ができる事が後述する実験例によって明らかになっている。
つぎに、主成分たる酸化物微粒子の表面にジメチルシリル基が導入され、前記第1揮発試験を行った場合のオクタメチルシクロテトラシロキサンの揮発量が0.2μg以下となる外添剤の製法について説明する。
まず、ジメチルシリル基を表面に導入した酸化物微粒子(アルミナ、シリカ、チタニア等)を公知の方法によって生成し、加熱機構を備えるミキサーなどの攪拌装置の攪拌槽内にて前記酸化物微粒子を流動させ、さらに前記攪拌槽に100度〜200度の空気を30分〜60分間送風することによって前記酸化物微粒子からオクタメチルシクロテトラシロキサンを揮発させる。これにより、主成分たる酸化物微粒子の表面にジメチルシリル基が導入され、前記第1揮発試験を行った場合のオクタメチルシクロテトラシロキサンの揮発量が0.2μg以下となる外添剤を得ることができる。
なお、前記攪拌槽において攪拌される酸化物微粒子の量にもよるが、攪拌槽内に送風する空気量が少な過ぎるとオクタメチルシクロテトラシロキサンを十分に除去できないので、十分な量の空気を送風する必要がある。送風する空気量については、オクタメチルシクロテトラシロキサンの揮発量が0.2μg以下となるように適宜決定すればよい。また、攪拌槽から排出された空気を通過させるダクト(排気路)においてオクタメチルシクロテトラシロキサンを回収するために凝縮器を設ければ、加熱空気を循環させることが可能となる。
また、外添剤の主成分としては、表面にヒドロキシル基を有する個数平均粒径が5〜50nmの酸化物微粒子を使用でき、例えば、気相高温加水分解法によって得られるヒュームドシリカ(二酸化珪素,SiO2)、アルミナ(酸化アルミニウム,Al2O3)、チタニア(二酸化チタン,TiO2)、あるいは、珪素とアルミニウムとの共酸化物などを使用できる。具体的には、日本アエロジル社製のアエロジル50(平均粒径:約30nm)、アエロジル90(平均粒径:約30nm)、アエロジル130(平均粒径:約16nm)、アエロジル200(平均粒径:約12nm)、アエロジル300(平均粒径:約7nm)、アエロジル380(平均粒径:約7nm)、デグサ社製のアルミナムオキサイドC(平均粒径:約13nm)、チタニウムオキサイドP−25(平均粒径:約21nm)、MOX170(平均粒径:約15nm)などがある。
なお、上述した酸化物微粒子のうち、シランカップリング処理によってジメチルシリル基が導入されたシリカ微粒子は優れた絶縁性を備える。これは、シリカ微粒子はその表面に多くの活性なヒドロキシル基を有しており、シランカップリング剤と反応しやすく、ジメチルシリル基が導入されやすいためであると考えられる。
そして、シリカ微粒子を外添剤として含有したトナーは、シリカ微粒子の高絶縁性に起因して、帯電量の低下が起こりにくく、カブリなどの不具合が発生しにくい。それゆえ、シランカップリング処理によってジメチルシリル基が導入されたシリカ微粒子はトナー用外添剤に好適である。
また、酸化物微粒子にジメチルシリル基を導入するために用いるシランカップリング剤としては、ジメチルジクロロシラン、あるいはオクタメチルシクロテトラシロキサンなどが挙げられる。
特に、シランカップリング剤としてジメチルジクロロシランを用いることによって表面にジメチルシリル基が導入されたシリカ微粒子は、疎水性や絶縁性に優れている。それゆえ、このシリカ微粒子を外添剤として含むトナーは、高湿環境下においても、帯電量が安定し、カブリなどの不具合が発生しにくい。それゆえ、シランカップリング剤としてジメチルジクロロシランを用いることによって表面にジメチルシリル基が導入されたシリカ微粒子はトナー外添剤として好適である。
また、ジメチルジクロロシランによって表面にジメチルシリル基が導入されたシリカ微粒子を攪拌器の攪拌槽に入れて攪拌しつつ、この攪拌槽に150度の乾燥空気を30分間送風することによってオクタメチルシクロテトラシロキサンを揮発させて得られるシリカ微粒子が前記外添剤として好ましい(前記送風の条件は、シリカ微粒子100g当たりの送風量が0.1m3/分になるようにする)。このようなシリカ微粒子を用いることによって、コロナ帯電器の放電電極への異物付着を高いレベルで抑えることができる。
この理由は次のように推測される。ジメチルジクロロシランによって表面にジメチルシリル基が導入されたシリカ微粒子には、オクタメチルシクロテトラシロキサン以外にも、多種の揮発性有機珪素化合物(沸点が99℃以上)が付着していると考えられる。画像形成装置1内部において、トナーは定着装置によって紙などの記録媒体に定着されるが、その際にトナーが溶融する温度(110℃〜150℃)までトナーは加熱されるので、シリカ微粒子表面に付着している高沸点の揮発性有機珪素化合物が定着装置の加熱によって揮発し、コロナ帯電器21の鋸歯状電極32へ付着すると考えられる。これに対し、150度の乾燥空気によって乾燥させた後のシリカ微粒子をトナー用外添剤として用いた場合、オクタメチルシクロテトラシロキサンのみならず、オクタメチルシクロテトラシロキサン以外の有機珪素化合物も十分に揮発されていると考えられ、コロナ帯電器の放電電極へ付着する異物の量を抑制できるものと考えられるからである。
また、シランカップリング剤を用いて酸化物微粒子の表面に存在する親水性のヒドロキシル基を疎水性の官能基に変換する処理は公知の方法で行うことができる。例えば、表面にヒドロキシル基を有する酸化物微粒子を攪拌しながら、シランカップリング剤を噴霧し、その後に当該酸化物微粒子を加熱する方法などがある。
さらに、以上にて説明した本実施形態のトナー用外添剤は、重量パーセント濃度が0.5重量%〜3重量%になるようにトナーに添加されることが好ましい。
これは、0.5重量%を下回るとトナーの流動性を向上させることができず、3重量%を超える添加量では定着処理において定着性の低下が起こりやすくなるからである。なお、前記の重量パーセント濃度は下記の式(2)によって求められる。
重量パーセント濃度(重量%)=添加した外添剤の重量/外添剤を含めたトナーの全重量×100 式(2)
また、以上にて説明した本実施形態のトナー用外添剤は、個数平均粒子径が7nm〜30nmであることが好ましい。個数平均粒子径が7nm〜30nmの外添剤をトナーに添加すれば、トナーの定着性、帯電性、流動性を良好にでき、良質な画像を得る事ができるからである。
また、外添剤をトナーに添加すると、外添剤の一部はトナーに含有される着色樹脂粒子に埋没する。外添剤表面のうちの着色樹脂粒子に埋没している面に付着しているオクタメチルシクロテトラシロキサンが揮発する虞は少ないが、外添剤表面のうちの外気と接触している面に付着しているオクタメチルシクロテトラシロキサンは揮発し易く、コロナ帯電器21の鋸歯状電極32に付着する。
より具体的には、本実施形態の外添剤(前記疎水化処理が行われることによって表面にジメチルシリル基が導入されている酸化物微粒子を主成分とする外添剤)が含有されているトナーであって後述する第2揮発試験を行った場合にオクタメチルシクロテトラシロキサンの揮発量が0.02μgを超えるようなトナーを用いて画像形成を行った場合、形成される画像に黒筋が生じ、画質劣化が生じることがわかった(後述する実験例参照)。
これは、第2揮発試験を行った場合にオクタメチルシクロテトラシロキサンの揮発量が0.02μgを超えるようなトナーを用いて画像形成を行うと、特に定着プロセスにおいてオクタメチルシクロテトラシロキサンが揮発し、この揮発によってコロナ帯電器21の鋸歯状電極に異物が付着することになり、帯電ムラが生じ、形成される画像に黒筋が生じ易くなるからである。
それゆえ、前記疎水化処理が行われることによって表面にジメチルシリル基が導入されている酸化物微粒子を主成分とする外添剤が含有されているトナーであって後述する第2揮発試験を行った場合にオクタメチルシクロテトラシロキサンの揮発量が0.02μg以下になるようなトナーが好ましい。
ここで、前記第2揮発試験の手順について詳細に説明する。まず、容積50リットルの密閉容器を用意し、この密閉容器内部を100℃に加熱し維持する。そして、実験対象のトナー10gを均一に広げたアルミ皿(20cm×20cm)を前記密閉容器内部に入れ、30分後にサンプリングポンプSP204−50(GLサイエンス社製)を用いて密閉容器中のガス(空気)の採取を開始した。ガスの採取手法は、密閉容器内の温度を100℃に維持したまま、1分当たりに0.2リットルの割合で30分間ガスを採取し続けてTenax捕集管に送り、合計6リットルのガスをTenax捕集管に捕集する、というものである。
そして、Tenax捕集管に捕集したガスに含有されているオクタメチルシクロテトラシロキサンの含有量を計測し、計測された含有量を前記の揮発量として扱う。なお、第2揮発試験におけるオクタメチルシクロテトラシロキサンの含有量の計測方法は、前記第1揮発試験におけるオクタメチルシクロテトラシロキサンの含有量の計測方法と同様であるため、その説明を省略する。
つまり、前記の第2揮発試験とは、ジメチルシリル基が導入されている酸化物微粒子を主成分とする外添剤が含有されているトナー10gを密閉容器内部に入れ且つ当該密閉容器内部を100℃にした状態を30分間継続させることによって前記トナーからオクタメチルシクロテトラシロキサンを揮発させる実験を意味し、前記の揮発量とは、第2揮発試験において当該密閉容器内のトナーから揮発したオクタメチルシクロテトラシロキサンの量を意味する。
〔実験例〕
本願発明者は、表1に示す外添剤G1〜外添剤G5を製造し、外添剤G1〜外添剤G5の製造条件と外添剤G1〜外添剤G5の品質との関係を分析する実験を行った。ここで、外添剤G1〜外添剤G5の品質とは、外添剤G1〜外添剤G5について前記第1揮発試験を行った際のオクタメチルシクロテトラシロキサンの揮発量を指すものとする。
まずは、外添剤G1〜外添剤G5の製造手順について説明する。ジメチルジクロロシランにて表面処理されることによってジメチルシリル基が表面に導入された酸化物微粒子としてアエロジル社製の疎水性シリカ微粒子(製品名:R8200、個数平均粒径が12nm)100gを用意し、空気供給口と空気排出口とを設けた気流混合機(三井鉱山社製:ヘンシェルミキサ)に前記疎水性シリカ微粒子を投入した。そして、気流混合機において、攪拌羽根の周速を5m/秒にして前記疎水性シリカ微粒子を攪拌しながら、150℃の空気を空気供給口から送風した。空気の送風量を0.1m3/分として前記送風を30分間続けることによって、疎水性シリカ微粒子表面のオクタメチルシクロテトラシロキサンの揮発除去を行った。そして、この揮発除去後の疎水性シリカ微粒子を外添剤G1とした。
また、気流混合機において送風する空気の温度を120℃にしたことを除いて、外添剤G1と同様の方法で外添剤G2を製造した。さらに、気流混合機において空気の送風時間を30分にしたことを除いて、外添剤G2と同様の方法で外添剤G3を製造した。
また、気流混合機において送風する空気の温度を60℃にしたことを除いて、外添剤G3と同様の方法で外添剤G4を製造した。さらに、気流混合機において送風加熱を行う前の前記疎水性シリカ微粒子を外添剤G5とした。
以上のようにして製造した外添剤G1〜外添剤G5の各々について、前記した第1揮発試験を行ってオクタメチルシクロテトラシロキサンの揮発量を計測した。この計測結果を表1に示す。表1に示されるように、外添剤G1〜外添剤G5の各々について、第1揮発試験を行った際のオクタメチルシクロテトラシロキサンの揮発量は、外添剤製造時に気流混合機において外添剤に送風する加熱空気の温度を高く設定するほど減少し、外添剤製造時に気流混合機において外添剤に加熱空気を送風する時間を長く設定するほど減少することを確認できた。
また、本願発明者は、表1に示す外添剤G1〜外添剤G5を用いて表2に示すトナーT1〜トナーT5を製造し、トナーT1〜トナーT5に関して各種分析を行った。
まずは、トナーT1〜トナーT5の製造手順について説明する。式(2)にて示される重量パーセント濃度が2重量%になるように外添剤G1を着色樹脂粒子に添加することによってトナーT1を製造した。なお、前記添加は、着色樹脂粒子と外添剤とを気流混合機(三井鉱山社製:ヘンシェルミキサ)に投入し、攪拌羽根の先端速度を15m/秒に設定して2分間混合することにより行われた。
また、添加する外添剤をG2にしたことを除いて、トナーT1と同様の方法でトナーT2を製造した。さらに、添加する外添剤をG3にしたことを除いて、トナーT1と同様の方法でトナーT3を製造した。また、添加する外添剤をG4にしたことを除いて、トナーT1と同様の方法でトナーT4を製造した。さらに、添加する外添剤をG5にしたことを除いて、トナーT1と同様の方法でトナーT5を製造した。
そして、以上のようにして製造したトナーT1〜トナーT5の各々について、前記した第2揮発試験を行ってオクタメチルシクロテトラシロキサンの揮発量を計測した。この計測結果を表2に示す。
また、トナーT1〜トナーT5の各々を用いて実際に画像を印刷して、印刷画像に黒筋が表れたか否かを判定した。この判定は以下のようにして行われた。トナーT1〜T5の各々について、図1に示す画像形成装置1のテストマシーンを用いて5万枚の連続プリントテストを行った。なお、テストマシーンにおいては、感光体ドラム20の周速を400mm/秒、現像ローラ3の周速を560mm/秒、感光体ドラム20と現像ローラ3との間隔(ギャップ)を0.42mm、現像ローラ3と規制部材7との間隔(ギャップ)を0.5mmに設定した。また、テストマシーンにおいては、ベタ画像(濃度100%)を印刷する場合における用紙上のトナー付着量が0.5mg/cm2、非画像部におけるトナー付着量が最も少なくなるように、感光体ドラム20の表面電位および現像バイアスをそれぞれ調整した。また、テストマシーンでは、A4サイズの電子写真用紙(マルチレシーバー:シャープドキュメントシステム社製)を使用し、用紙の上に記録されるプリント画像のカバレージが6%となるテキスト画像を印刷した。
以上のようにして、トナーT1〜トナーT5の各々について、印刷画像を5万枚印刷し、印刷画像に黒筋が表れたか否かを判定したが、この判定結果を表2に示す。表2に示すように、トナーT1〜T3を用いた場合は、5万枚連続印刷しても、印刷された5万枚全ての画像において黒筋の発生は全く見られなかった。図5は、トナーT1によって5万枚印刷した後のコロナ帯電器21の鋸歯状電極(放電電極)32を撮影した写真であるが、先端部分に付着物は観察されなかった。なお、撮影は走査型電子顕微鏡(SEM)によって行った。
また、表2に示すように、トナーT4を用いて5万枚連続印刷した場合、5万枚印刷後の画像においてわずかながら黒筋が発生しているのが確認された。トナーT5を用いて5万枚連続印刷した場合、5万枚印刷後の画像においてはっきりと黒筋が発生しているのが確認された。図6は、トナーT5によって5万枚印刷した後のコロナ帯電器21のノコ歯帯電器(放電電極)32を走査型電子顕微鏡にて撮影した写真であるが、先端部分に異物が付着していることが確認された。
なお、コロナ帯電器21の鋸歯状電極(放電電極)32の先端に付着していた異物についてSEM−EDXで分析した結果、珪素元素の存在を示すピークと酸素元素の存在を示すピークとが検出された。これは、鋸歯状電極32に付着している異物が、トナーに含有される外添剤から揮発されるオクタメチルシクロテトラシロキサンに起因するものである事を示唆していると考えられる。
さらに、表2に示される結果を考察すると、前記第2揮発試験を行った場合のオクタメチルシクロテトラシロキサンの揮発量が0.02μg以下のトナーを用いて画像の印刷を行うと良質な画像が得られ、前記第2揮発試験を行った場合のオクタメチルシクロテトラシロキサンの揮発量が0.02μgを超えるトナーを用いて画像の印刷を行うと当該画像に黒筋が発生する事がわかる。
また、表1および表2に示される結果を考察すると、前記第1揮発試験を行った場合のオクタメチルシクロテトラシロキサンの揮発量が0.2μg以下である外添剤G1〜G3が添加されているトナーT1〜T3を用いて画像の印刷を行うと良質な画像が得られ、前記第1揮発試験を行った場合のオクタメチルシクロテトラシロキサンの揮発量が0.2μgを超える外添剤G4〜G5が添加されているトナーT4〜T5を用いて画像の印刷を行うと当該画像に黒筋が発生する事がわかる。
なお、以上説明した実験例において、トナーT1〜トナーT5に用いられる着色樹脂粒子は以下のS1〜S5の工程を実行することによって製造される。まず、S1においては、下記(a)〜(d)を気流混合機(三井鉱山社製:ヘンシェルミキサ)にて10分間混合する。
(a)バインダー樹脂(ビスフェノールAプロピレンオキサイドとテレフタル酸と無水トリメリット酸とを単量体として縮合重合して得られるポリエステル樹脂:ガラス転移温度60℃、軟化温度130℃) 100重量部
(b)カーボンブラック(三菱化学社製:MA−100) 6重量部
(c)帯電制御剤(日本カーリット社製:LR−147) 2重量部
(d)ポリプロピレンワックス(三洋化成製:ビスコール550P) 2重量部
S2においては、S1にて得られる混合物を混練分散処理装置(三井鉱山株式会社製:ニーディックスMOS140−800)によって溶融混練する。S3においては、S2にて得られる混練物を冷却し、冷却後の混練物をカッティングミルで粗粉砕する。S4においては、S3にて得られる粗粉砕物を微粉砕機(三井鉱山社製:CGS)によって微粉砕
する。S5においては、S4にて得られる微粉砕物について、風力分級機(ホソカワミクロン社製:TSPセパレータ)を用いて分級する。以上のS1〜S5の工程を実行することによって、体積平均粒径が6.5μm、BET比表面積が1.8m2/gの着色樹脂粒子を得ることができる。なお、体積平均粒径はコールターマルチサイザー2(ベックマン・コールター株式会社製)で測定した。
また、以上説明した実験例において、トナーT1〜トナーT5は二成分現像剤に含有される形態で画像形成装置1にて使用された。二成分現像剤は、トナー6重量部とキャリア94重量部とをナウターミキサー(商品名:VL−0、ホソカワミクロン社製)に投入し、当該トナーとキャリアとを20分間攪拌混合することによって調整された。
前記キャリアは、以下に示す方法にて作成される。まず、フェライト原料をボールミルにて混合した後、このフェライト原料をロータリーキルンにて900℃で仮焼し、得られた仮焼粉を、湿式粉砕機により粉砕媒体としてスチールボールを用いて平均粒径2μm以下にまで微粉砕した。得られたフェライト微粉末をスプレードライ方式により造粒し、造粒物を1300℃で焼成した。焼成後、焼成物をクラッシャによって解砕し、体積平均粒子径が約50μm、体積抵抗率が1×109Ω・cmのフェライト成分からなるコア粒子を得た。次にコア粒子を被覆するための被覆用塗液として、シリコーン樹脂(商品名:TSR115、信越化学社製)をトルエンに溶解および分散することによって被覆用塗液を調製した。スプレー被覆装置により、コア粒子100重量部に対して、前記被覆用塗液5重量部(シリコーン樹脂換算)をスプレーすることによって前記コア粒子を被覆した。その後、トルエンを完全に蒸発除去し、体積平均粒子径が50μm、シリコーン樹脂の膜厚が1μm、飽和磁化65emu/gのキャリアを作製した。
〔変形例〕
つぎに、本実施形態のトナーに使用される着色樹脂粒子、バインダー樹脂、着色剤、帯電制御剤、離型剤のバリエーションについて順に説明する。本実施形態のトナーは、例えば、前記酸化物微粒子と着色樹脂粒子とをヘンシェルミキサなどの気流混合機を用いて混合する(すなわち、外添処理をする)ことによって作製できる。着色樹脂粒子の体積平均粒径としては3〜15μmの範囲内にあるものが好適に使用できる。なお、この体積平均粒径は、コールーター社製のコールターカウンターで100μmのアパーチャーを用いて測定した値である。
(a)着色樹脂粒子
着色樹脂粒子は、混練粉砕法や重合法など、公知の方法によって作製でき、一例として、混練粉砕法においては、バインダー樹脂、着色剤、帯電制御剤、離型剤、ならびにその他の添加剤を、ヘンシェルミキサ、スーパーミキサ、メカノミル、Q型ミキサなどの混合機により混合し、得られる原料混合物を2軸混練機、1軸混練機などの混練機により100〜180℃程度の温度で溶融混練し、得られる混練物を冷却固化し、固化物をジェットミルなどのエア式粉砕機により粉砕し、必要に応じて分級などの粒度調整を行うことにより作製できる。
(b)バインダー樹脂
バインダー樹脂としては、公知の各種スチレン・アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂などが使用できるが、特に線形又は非線形のポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂は、機械的強度(微粉が発生しにくい)、定着性(定着後に紙から剥離しにくい)、および耐ホットオフセット性の全てを兼ね備える上で優れている。
また、前記のポリエステル樹脂は、2価以上の多価アルコールと多塩基酸とを重合することにより得られる。なお、この重合においては、必要に応じて3価以上の多価アルコールあるいは多塩基酸からなるモノマー組成物をもモノマーとして加えてもよい。
ポリエステル樹脂の重合に用いられる2価のアルコールとしては、たとえばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのグリコール類を例示でき、また、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのジオール類を例示でき、また、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールAを例示できる。さらに、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールAなどのビスフェノールAアルキレンオキシド付加物、その他をも挙げることができる。
3価以上の多価アルコールとしては、たとえばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、蔗糖、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン、その他を挙げることができる。
2価の多塩基酸としては、たとえばマレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、これらの酸の無水物、低級アルキルエステルを例示でき、また、n−ドデセニルコハク酸などのアルケニルコハク酸類もしくはn−ドデシルコハク酸などのアルキルコハク酸類を挙げることができる。
3価以上の多塩基酸としては、たとえば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、およびこれらの無水物などを挙げることができる。
(c)着色剤
本実施形態のトナーに使用できる着色剤としては、トナーに一般に用いられている公知の顔料や染料を使用できる。具体例として、黒トナー用には、カーボンブラックやマグネタイトなどを挙げることができる。
イエロートナー用には、C.I.ピグメント・イエロー1、同3、同74、同97、同98等のアセト酢酸アリールアミド系モノアゾ黄色顔料を例示でき、また、C.I.ピグメント・イエロー12、同13、同14、同17等のアセト酢酸アリールアミド系ジスアゾ黄色顔料を例示でき、また、C.I.ピグメント・イエロー93、同155等の縮合モノアゾ系黄色顔料を例示でき、また、C.I.ピグメント・イエロー180、同150、同185等のその他黄色顔料を例示でき、また、C.I.ソルベント・イエロー19、同77、同79、C.I.ディスパース・イエロー164等の黄色染料などを例示できる。
マゼンタトナー用には、C.I.ピグメント・レッド48、同49:1、同53:1、同57、同57:1、同81、同122、同5、同146、同184、同238、C.I.ピグメント・バイオレット19等の赤色もしくは紅色顔料などを例示でき、また、C.I.ソルベント・レッド49、同52、同58、同8等の赤色系染料なども例示できる。
シアントナー用には、C.I.ピグメント・ブルー15:3、同15:4等の銅フタロシアニンおよびその誘導体の青色系染顔料、また、C.I.ピグメント・グリーン7、同36(フタロシアニン・グリーン)等の緑色顔料などが例示できる。
なお、着色剤の添加量としては、バインダー樹脂100重量部に対して1〜15重量部程度であることが好ましく、より好適には2〜10重量部の範囲で用いられる。
(d)帯電制御剤
本実施形態のトナーに使用できる帯電制御剤としては、公知の帯電制御剤が使用できる。具体的には負帯電性を付与する帯電制御剤としては、クロムアゾ錯体染料、鉄アゾ錯体染料、コバルトアゾ錯体染料、サリチル酸もしくはその誘導体のクロム・亜鉛・アルミニウム・ホウ素錯体もしくは塩化合物、ナフトール酸もしくはその誘導体のクロム・亜鉛・アルミニウム・ホウ素錯体もしくは塩化合物、ベンジル酸もしくはその誘導体のクロム・亜鉛・アルミニウム・ホウ素錯体もしくは塩化合物、長鎖アルキル・カルボン酸塩、長鎖アルキル・スルフォン酸塩などを挙げることができる。
正荷電性トナー用帯電制御剤としては、ニグロシン染料、およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、四級アンモニウム塩、四級ホスフォニウム塩、四級ピリジニウム塩、グアニジン塩、アミジン塩等の誘導体などを挙げることができる。
これらの帯電制御剤の添加量としては、バインダー樹脂100重量部に対して0.1重量部〜20重量部の範囲内がより好ましく、0.5重量部〜10重量部の範囲内がさらに好ましい。
(e)離型剤
本実施形態のトナーに使用できる離型剤としては、ポリプロピレンまたはポリエチレン等の合成ワックスを例示でき、また、パラフィンワックスおよびその誘導体、マイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体等の石油系ワックスを例示でき、また、この石油系ワックスの変成ワックスを例示でき、また、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の植物系ワックスなどを例示できる。これら離型剤をトナー中に含有させることにより、定着ローラまたは定着ベルトに対するトナーの離型性を高めることができ、定着時の高温・低温オフセットを防止することができる。離型剤の添加量は特に制限されないが、一般的には、バインダー樹脂100重量部に対して1〜5重量部の離型剤が添加される。
(f)キャリア
本実施形態のトナーはキャリアと混合して二成分現像剤として使用される。トナーとキャリアとの混合方法については、一般に、キャリア100重量部に対してトナー3〜15重量部の割合で混合され、ナウターミキサーなどの混合機で攪拌することによって作製できる。但し、本実施形態のトナーの使用形態は、二成分現像剤に限定されるものではなく、当然、一成分現像剤としても使用することが可能である。
前記キャリアは、特に制限されるものではないが、体積平均粒径が20〜100μmの磁性体を使用することが好ましい。キャリアの粒径は、小さすぎると、現像時に現像ローラから感光体ドラムにキャリアが移動することにより、得られる画像に白抜けが発生する。また、大きすぎるとドット再現性が悪くなり、画像が粗くなるため、キャリアの体積平均粒径としては、30〜60μmであることがさらに好ましい。なお、キャリアの体積平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置HELOS(SYMPATEC社製)と乾式分散装置RODOS(SYMPATEC社製)とを用いて分散圧3.0barの条件下で測定した時の値である。
また、キャリアの飽和磁化が低いほど感光体ドラムと接する磁気ブラシが柔らかくなって静電潜像に忠実な画像が得られるが、飽和磁化が低すぎると感光体ドラム表面にキャリアが付着して白抜け現象が発生しやすくなる。これに対し、飽和磁化が高すぎると、磁気ブラシが硬くなりすぎて静電潜像に忠実な画像が得られにくくなる。したがって、キャリアの飽和磁化として30〜100emu/gの範囲内のものが好適に使用される。
また、キャリアとして、磁性を有するコア粒子表面に被覆層を設けた被覆キャリアが一般的によく使用される。コア粒子としては公知の磁性粒子が使用できるが、帯電性や耐久性の点でフェライト系粒子が好ましい。フェライト系粒子としては公知のものを使用でき、たとえば、亜鉛系フェライト、ニッケル系フェライト、銅系フェライト、ニッケル−亜鉛系フェライト、マンガン−マグネシウム系フェライト、銅−マグネシウム系フェライト、マンガン−亜鉛系フェライト、マンガン−銅−亜鉛系フェライトなどが挙げられる。
これらのフェライト系粒子は、公知の方法で作製できる。例えば、Fe2O3やMg(OH)2などのフェライト原料を混合し、この混合粉を加熱炉で加熱して仮焼する。得られた仮焼品を冷却後、振動ミルでほぼ1μm程度の粒子となるように粉砕し、粉砕粉に分散剤と水とを加えてスラリーを作製する。このスラリーを湿式ボールミルで湿式粉砕し、得られる懸濁液をスプレードライヤーで造粒乾燥することによって、フェライト粒子が得られる。
また、被覆材としては公知の樹脂材料が使用でき、例えば、アクリル樹脂やシリコーン樹脂などを使用できる。特に、シリコーン樹脂を被覆した被覆キャリアは、その表面にホウ素化合物をスペント(付着)しにくく、長期に渡ってトナーの帯電付与能力を維持できるので好ましい。
シリコーン樹脂としては公知のものが使用でき、たとえば、シリコーンワニス(商品名:TSR115、TSR114、TSR102、TSR103、YR3061、TSR110、TSR116、TSR117、TSR108、TSR109、TSR180、TSR181、TSR187、TSR144、TSR165など、いずれも信越化学(株)製、KR271、KR272、KR275、KR280、KR282、KR267、KR269、KR211、KR212など、(株)東芝製)、アルキッド変性シリコーンワニス(商品名:TSR184、TSR185など、(株)東芝製)、エポキシ変性シリコーンワニス(商品名:TSR194、YS54など、(株)東芝製)、ポリエステル変性シリコーンワニス(商品名:TSR187など、(株)東芝製)、アクリル変性シリコーンワニス(商品名:TSR170、TSR171など、(株)東芝製)、ウレタン変性シリコーンワニス(商品名:TSR175など、(株)東芝製)、反応性シリコーン樹脂(商品名:KA1008、KBE1003、KBC1003、KBM303、KBM403、KBM503、KBM602、KBM603など、信越化学(株)製)などが挙げられる。
被覆材は、キャリアの体積抵抗率を制御するために、導電材が添加される。導電材としては、たとえば、酸化ケイ素、アルミナ、カーボンブラック、グラファイト、酸化亜鉛、チタンブラック、酸化鉄、酸化チタン、酸化スズ、チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどの導電材が挙げられる。これらの導電材の中でも、作製安定性、コスト、電気抵抗の低さという観点からカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの種類は特に限定されないが、DBP(ジブチルフタレート)吸油量が90〜170ml/100gの範囲にあるものが、作製安定性に優れる点で好ましい。また、一次粒径として50nm以下のものが分散性に優れるため特に好ましい。導電材は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。導電材の使用量としては、被覆材100重量部に対して0.1〜20重量部が使用される。
被覆材をキャリア粒子に被覆するには、公知の方法が採用できる。たとえば、被覆材の有機溶媒溶液中にキャリア粒子を浸漬させる浸漬法、被覆材の有機溶媒溶液をキャリア粒子に噴霧するスプレー法、キャリア粒子を流動エアにより浮遊させた状態で被覆材の有機溶媒溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリア粒子と被覆材の有機溶媒溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法などが挙げられる。この時、被覆材の有機溶媒溶液には被覆材とともに抵抗値制御用の導電材が添加される。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、上述した実施形態において開示された各技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。