JP4382896B2 - 有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体の焼成方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、筒状セラミックス成形体の焼成方法に関する。更に詳しくは、焼成中に構成成分の一部が揮散しやすいようなセラミックスからなる筒状セラミック成形体の焼成方法に関する。例えば、焼成中に酸化ナトリウムが揮散しやすいベータアルミナ質成形体の焼成方法として好適であり、ナトリウム硫黄電池、ナトリウム溶融塩電池、AMTEC(Alkali Metal Thermo-Electric Convertor)、SOxセンサ等の高強度を要求されるベータアルミナ質固体電解質管の製造に適用できる。
【0002】
【従来の技術】
ナトリウム−硫黄電池は、一方に陰極活物質である金属ナトリウム、他方に陽極活物質である硫黄を配し、両者をナトリウムイオンに対して選択的な透過性を有するベータ・アルミナ固体電解質管で隔離し、300〜350℃の高温で作動させる二次電池である。このベータ・アルミナ固体電解質管は、放電時に陰極側のナトリウムイオンを選択的に透過させ、陽極側に移動させる、また充電時には陽極側のナトリウムイオンを選択的に透過させ、陰極側に移動させる重要な役割を果たしている。
【0003】
しかし、ベータアルミナ質固体電解質管の製造においては、焼成工程に起因する不具合が多いことが知られている。固体電解質管としての基本性能を左右する問題としては、焼結体密度の低下、電気特性の不具合が挙げられる。不具合発生の基本的な機構は以下のようである。すなわち、焼成中にベータアルミナ質セラミックスを構成する酸化ナトリウム等のアルカリ成分が揮散しやすいため、いわゆるアルカリ雰囲気の制御が困難となり、その結果、焼結体の組成比が所望の範囲から微妙にずれてしまうからである。
【0004】
かかる組成のずれは、焼結体の組織をポーラスにして焼結体密度を低下させたり、ベータアルミナ以外の化合物を生成してナトリウムイオン伝導性を低下させて電気特性の不具合を生ずる等の問題を引き起こす。焼成時のアルカリ雰囲気の制御方法としては、種々の方法が検討されている。
【0005】
一般的な方法としては、焼成容器内にいわゆる目砂を設置する方法が知られている。ここにいう「目砂」とは、アルカリ成分を含有する物質を表面積を上げるべく砂状にしたものをいう。目砂に含まれるアルカリ成分の量をコントロールすることで、セラミックスの焼結性を制御するものである。
【0006】
しかし、目砂に含まれるアルカリ成分の量を精密にコントロールするのは容易ではなく、また、目砂を製造するために手間やコストがかかってしまう問題がある。さらに、焼成前に目砂を焼成容器内に設置し、焼成後に目砂を取り除くという2つの作業が必要となる。これらの諸問題が影響して、工業的な量産工程が組みにくく、コスト低減を図ることができなかった。
【0007】
上記技術以外にも、焼成時のアルカリ成分の揮散を防止するために密閉容器内で焼成する方法が特開平3−78974号公報に開示されている。具体的には、アルミナ、マグネシア、スピネル等からなる焼成容器を被焼成物であるベータアルミナ成形体に被せて焼成することで、焼成容器内をアルカリ雰囲気として酸化ナトリウムの揮散を抑える方法である。しかし、この方法では、ベータアルミナ成形体の大きさや本数が変わると、焼結性や電気特性がばらつく問題が発生してしまい、実質的には焼成容器内のアルカリ雰囲気が最適に制御できない問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これら従来技術が有する問題点を解決するものであり、簡便な手法により焼成容器内の揮散成分の雰囲気を最適制御した有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体の焼成方法を提供する。具体例としては、電気的特性及び機械的特性に優れたベータアルミナ質固体電解質管の工業的な量産方法として好適である。すなわち、ナトリウム硫黄電池の固体電解質管に用いる有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体を焼成するにあたり、該成形体の表面積と焼成容器の容積との関係を整合させて、焼成容器内のアルカリ雰囲気を最適に制御するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体の焼成方法は、有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体の表面積の総計R(単位:cm2)と焼成容器の容積をS(単位:cm3)とを、所定の関係式を満たすように設定することを要旨とする。
【0010】
S/Rが15よりも大きい場合は、焼成容器内の揮散成分の雰囲気が希薄となり、充分な雰囲気保持ができなくなる。ベータアルミナを例にすれば、焼成容器内のアルカリ雰囲気が希薄となり、その結果、β”−アルミナ相の生成率が低下し、電気的特性の優れたベータアルミナ質焼結体が得られなくなる。また、S/Rが1よりも小さい場合は、焼成容器内のアルカリ雰囲気が濃密になりすぎて、ベータアルミナ質焼結体の表面にベータアルミナ質以外のアルミン酸ソーダ(NaAlO2)が生成する。アルミン酸ソーダはナトリウムイオン伝導性の非常に悪い物質であるため、得られるベータアルミナ質焼結体の電気的特性を低下させる。したがって、S/Rの範囲が1以上15以下になるようにSとRを設定する必要がある。S/Rのさらに好ましい範囲としては、1.5以上10以下である。かかる範囲に設定することで、ベータアルミナ質焼結体の比抵抗値を大幅に低減できる。
【0011】
また、二以上の複数本の有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体を一つの焼成容器内で焼成する場合でも、各有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体の表面積の総計Rと焼成容器の容積Sとを整合させることで、電気特性に優れた筒状セラミックス焼結体を複数本同時に得られる。ベータアルミナを例にすれば、比抵抗値を大幅に低減した有底円筒状ベータアルミナ質焼結体を複数本同時に得ることができるため、効率良く量産できる。
【0012】
「筒状」とは、断面形状が円形の円筒状、断面形状が多角形の角柱状等のみならず、関数曲線等で示される連続曲線からなる断面形状を有するあらゆる筒状のものも含み、さらには、有底円筒状、有底角柱状、円錐状、角柱状といった有底構造物をも包含する概念として定義される。また、本請求項にいう「立てる」とは、基本的には有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体を自立させることを言うが、柱状の支持体に有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体を緩挿した状態や、同じく柱状の支持体に有底円筒状セラミックス成形体を倒立せしめて緩挿した状態をも含む概念として定義される。これらの定義は以下の請求項においても同様である。
【0013】
本発明の有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体の焼成方法は、前記焼成容器が通気性を有することを特徴とする。
【0014】
通気性を有する焼成容器を用いて焼成容器内の過剰な揮散成分の蒸気を外部へ適度に流出させることで、焼成容器内のアルカリ雰囲気を最適な状態にコントロールできる。0.4≦S/R≦2のような焼成容器内の揮散成分の雰囲気が濃密になる条件において好適である。特には、0.4≦S/R≦1のような焼成容器内の揮散成分の雰囲気が極めて濃密になる条件において最適である。ベータアルミナを例にすれば、係る構成を採用することによって焼成容器内のアルカリ雰囲気を最適な状態にコントロールし、比抵抗値等の電気特性に優れたナトリウム−硫黄電池用固体電解質が得られる。
【0015】
S/Rが0.4未満の場合は、焼成容器内に有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体が入らないか、焼成容器で有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体を覆うことが非常に困難になる。また、S/Rが2よりも大きい場合でも問題はなく、請求項1と同様に15以下であればよい。
【0016】
請求項2に記載の有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体の焼成方法は、焼成容器に通気性を確保するための通気孔を設けることを要旨とし、本発明の有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体の焼成方法の好ましい実施形態を例示したものである。
【0017】
通気孔の形態は特に限定されるものではなく、気体の通過が可能であれば本発明の目的を達成できる。焼成容器の一個所又は複数箇所に通気孔を設けることが望ましい。例えば、複数個の通気孔を設ける場合は、焼成容器の壁面に等間隔で設けるのが好ましい。焼成容器内の揮散成分の雰囲気に極端な濃淡が発生するのを防止できるからである。
【0018】
請求項2に記載の有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体の焼成方法は、有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体の表面積の総計R(単位:cm2)と焼成容器の通気孔の通気性を律する部位の断面積の総計Q(単位:cm2)とを所定の関係式を満たすように設定することを要旨とし、本発明の有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体の焼成方法のより好ましい実施形態を例示したものである。
【0019】
上記Rと上記Qとの比R/Qは20以上が好ましい。R/Qが20未満では、通気孔が大きすぎて焼成容器内の揮散成分の雰囲気が希薄になり、十分な雰囲気保持ができなくなるからである。ベータアルミナを例にすれば、焼成容器内のアルカリ雰囲気が希薄となり、焼結体の電気特性が低下する。ベータアルミナの電気特性を左右するβ”−アルミナ相の生成率が低下するからである。
【0020】
R/Qには原則として上限はない。少なくとも揮散成分が通過可能な通気孔が設けてあれば本発明の目的を達成できるからである。R/Qの好ましい範囲は、S/Rの値により変化する。S/Rが1未満(焼成容器内の揮散成分の雰囲気が濃密な範囲)の場合、R/Q=70〜1000の範囲が好ましい。S/Rが1〜2の範囲では、R/Q=500〜15000の範囲が好ましい。S/Rが2を越える範囲では、R/Qは5000以上が望ましい。ベータアルミナを例にすれば、
R/Qをかかる範囲に設定することで焼結体の比抵抗値を大幅に低減できる。
【0021】
請求項1に記載の有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体の焼成方法は、通気性を有する多孔質体からなる焼成容器を用いることを要旨とする。本発明のように、焼成容器の内外に連通した気孔を有して通気性のある多孔体を焼成容器に用いても焼成容器内の揮発成分の雰囲気濃度の制御が可能である。多孔体を用いることの他のメリットとしては、焼成容器自体が軽くなること、焼成容器の繰り返し焼成寿命が長くなること等が挙げられる。
【0022】
請求項1に記載の有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体の焼成方法は、多孔質体からなる焼成容器の気孔率が30%以下であることを要旨とする。焼成容器の見かけの気孔率が30%を越えると、揮散成分(ベータアルミナを例にすれば、酸化ナトリウム成分等)が焼成容器の外へ過剰に流出してしまい、焼結体の緻密化が阻害されたり、焼結体の組成比が変動してしまうからである。
【0023】
より具体的には、焼成容器の見かけ気孔率が5〜30%の範囲が好ましく、10〜25%の範囲であるとより好ましい。焼成容器の見かけの気孔率をかかる範囲に制御すれば、焼成容器内の揮散成分の流出速度が適度に制御され、雰囲気調整がより容易になるからである。
【0024】
請求項3に記載の有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体の焼成方法は、有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体をマグネシア、スピネル、アルミナ、ジルコニアのいずれかから選ばれるセラミックス製焼成容器であることを要旨とし、請求項1又は請求項2に記載の有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体の焼成方法の好ましい実施形態を例示したものである。
【0025】
かかる構成をとることによって、焼成容器内のアルカリ雰囲気を精密に制御可能となり、電気的特性及び機械的特性に優れたベータアルミナ質焼結体を容易に量産できる。焼成容器のより好ましい材質としては、マグネシアまたはスピネルが好適である。ベータアルミナ質焼結体との化学的反応性に乏しいからである。
【0026】
【実施例】
以下に、実施例によって本発明を詳しく説明する。尚、本実施例では有底円筒状ベータアルミナ質成形体の焼成方法を例示するが、本発明の構成、作用・効果、利用分野等は以下の実施例にのみ限定されるものではない。尚、実施例1は一つの焼成容器に一つのベータアルミナ質有底円筒状セラミックス成形体を入れて焼成する、いわゆる一本焼成の例を示す。また、実施例2は一つの焼成容器に複数本のベータアルミナ質有底円筒状セラミックス成形体を入れて焼成する、いわゆる複数本焼成の例を示す。
【0027】
(実施例1)
(1)ベータアルミナ質有底円筒状セラミックス成形体の製作
原料粉末には、純度99.9%のα−アルミナ粉末、試薬1級品の炭酸ナトリウム、炭酸リチウムを用いた。まず、α−アルミナと炭酸ナトリウムを、最終的に酸化アルミニウム、酸化ナトリウムおよび酸化リチウムに換算したときの重量部で、それぞれ90.4%、8.85%および0.75%となるように秤量した。α−アルミナ及び炭酸ナトリウムをロッキングミキサにて乾式で18時間混合した。その後、この混合物を1250℃で10時間仮焼した。仮焼物を解砕した後、振動ミルで乾式粉砕して、平均粒径2μmのベータアルミナ粉砕粉末を得た。
【0028】
得られた粉砕粉末に炭酸リチウムを、最終的に酸化アルミニウム、酸化ナトリウムおよび酸化リチウムに換算したときの重量部で、それぞれ90.4%、8.85%および0.75%となるように秤量し、バインダー及び分散剤とともに水溶媒中に混合してスラリとし、スプレードライ法にて造粒粉末を調製した。この造粒粉末をCIP法(冷間静水圧プレス法)により2000kg/cm2の圧力で所定寸法の有底円筒状に成形した。得られた成形体をNC旋盤にて表1乃至表3に示す外径及び長さの組み合わせになるように研削加工した。研削後の成形体の肉厚としては、外径が2.0cmのチューブは1.0mm、外径が3.0cmのチューブは1mm、外径6.5cm、6.0cm、5.3cm、5.0cm及び4.5cmのチューブは2.5mmとした。
【0029】
(2)ベータアルミナ質有底円筒状セラミックス焼結体の製作(一本焼成)
焼成容器は純度99%のマグネシア製とした。焼成容器の寸法は表1乃至表3に示す種々の形状を準備した。焼成容器はそれぞれ通気孔無し、通気孔有り(図1、2)及び多孔質の3つのタイプを用いた。焼成容器の通気孔(図1、4及び5)は、面積Qが0.6cm2以下の場合は焼成容器の上部に一個所、面積Qが4.0cm2以上の場合は焼成容器の上部と下部に四個所ずつ設けた。
【0030】
有底円筒状ベータアルミナ成形体1をセッター3の上に立てた後、該成形体の外周側に99%マグネシア製焼成容器を設置した。焼成条件は、最高温度で1570℃×30分保持して焼成を行った。焼結体の密度は、ベータアルミナの吸湿による影響を避けるために、エタノールを用いたアルキメデス法で測定した。焼結体の密度の測定値と原料組成から計算した理論密度から相対密度を求めた。相対密度は98.6%以上を合格とした。結果を「相対密度」として表1乃至表3に併記した。
【0031】
(3)内圧破壊強度
内圧破壊強度とは、有底円筒状のベータアルミナ質焼結体の円筒内壁面全体に圧力媒体を介して均一に加圧していき、破壊した時点での印加圧力と有底円筒のサイズとから算出して得られるものである。具体的には、円筒内径をr1、円筒外径をr2、破壊時点での印加圧力をPとしたとき、内圧破壊強度σは以下の数式1により近似計算される。各条件につき10本ずつの内圧破壊強度を測定した。内圧破壊強度は155MPa以上を合格とした。結果を「内圧強度」として表1乃至表3に併記した。
【0032】
【数1】
σ=P×(r2 2+r1 2)/(r2 2−r1 2)
【0033】
(4)比抵抗値の測定
ここでいう比抵抗値とは、ナトリウムイオン伝導率をいう。具体的には、アルゴン雰囲気下、グローブボックス中で350℃に加熱し、ベータアルミナ焼結体の円筒内側と円筒外側とに金属ナトリウムを接触させて、焼結体の抵抗値を4端子法で測定した。比抵抗値は3.8Ω・cm以下を合格とした。結果を「比抵抗値」として表1乃至表3に併記した。
【0034】
(5)焼結体外表面の結晶相の測定
各条件で得られた焼結体の外表面を微少X線回折装置により調査し、外表面の結晶構造の同定を行った。結果は、β−アルミナ相が同定されたものは「β」、β”−アルミナ相が同定されたものは「β”」、アルミン酸ソーダが同定されたものは「NaAlO2」として表1乃至表3の「外表面の結晶相」に併記した。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
(実施例2)
(1)ベータアルミナ質有底円筒状セラミックス成形体の製作
ベータアルミナ質有底円筒状セラミックス成形体の製作は実施例1(1)に記載の方法で行った。得られた成形体をNC旋盤にて表4乃至表5に示す外径及び長さの組み合わせになるように研削加工した。研削後の成形体の肉厚としては、外径が2.5cmのチューブは1.0mm、外径が3.0cmのチューブは1mm、外径5.3cmのチューブは2.5mmとした。
【0039】
(2)ベータアルミナ質有底円筒状セラミックス焼結体の製作(複数本焼成)
焼成容器は純度99%のマグネシア製とした。焼成容器の寸法は表1乃至表4に示す種々の形状を準備した。焼成容器はそれぞれ通気孔無し、通気孔有り(図3、20)及び多孔質の3つのタイプを用いた。焼成容器の通気孔(図3、40及び50)は、焼成容器の上部と下部に四個所ずつ設けた。その他は実施例1に準じて行った。相対密度、内圧破壊強度、比抵抗値の測定及び焼結体外表面の結晶相の測定は、実施例1(2)〜(5)に準じて行った。結果を表4乃至表5に併記した。
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
表1乃至表3は、実施例1における、いわゆる一本焼成の結果を示す。表1は通常の焼成容器を用いた結果である。表1に示す実施例である試料番号2乃至試料番号7の結果より、優れた諸特性を有する焼結体が得られることがわかる。
【0043】
S/Rが1.5よりも大きく15よりも小さい実施例である試料番号4乃至試料番号7においては、比抵抗値が3.1〜3.3Ωcmと良好な電気的特性を示した。特には、S/Rが1.5よりも大きく10よりも小さい実施例である試料番号4乃至試料番号6においては、比抵抗値、相対密度、内圧強度の全てにおいて良好な特性を示した。
【0044】
一方、表1に示す試料番号1は、S/Rが1よりも小さい比較例である。この場合、比抵抗値が4.7Ωcmと電気的特性が劣る結果となった。この試料番号1の外表面の結晶相を同定したところ、アルミン酸ソーダ(NaAlO2)が検出された。試料番号1の比抵抗値が高くなった原因は、該焼結体外表面にアルミン酸ソーダに富んだ高抵抗層が形成されたためと推察される。また、表1に示す試料番号8は、S/Rが20よりも大きい比較例である。焼成容器内のアルカリ雰囲気濃度が希薄なため焼結体の相対密度が上がらず、その結果、電気的特性及び機械的特性が低下したことがわかる。
【0045】
表2は通気孔を有する焼成容器を用いた結果である。表2に示す実施例である試料番号9乃至試料番号13、試料番号15乃至試料番号18、試料番号20、試料番号21、試料番号23乃至試料番号25は、S/Rが0.4よりも大きく15よりも小さい場合である。これらの結果より、優れた諸特性を有する焼結体が得られることがわかる。
【0046】
S/Rが0.4よりも大きく2よりも小さい試料番号10乃至試料番号13、試料番号16乃至試料番号18、試料番号20、試料番号21、試料番号23が焼結体の諸特性面でより好ましいことがわかる。このうちS/Rが0.4〜1の範囲、且つ、R/Qが70〜1000の範囲にある試料番号10乃至試料番号12、試料番号16、試料番号17と、S/Rが1〜2の範囲、且つ、R/Qが500〜15000の範囲にある試料番号20、試料番号21、試料番号23が特に電気的特性面に優れることがわかる。
【0047】
一方、R/Qが20未満の比較例である試料番号14、試料番号19、試料番号22では、焼成容器内のアルカリ雰囲気の希薄化により緻密化が阻害され相対密度が低下し、焼結体の諸特性が低下していることがわかる。また、S/Rが15を越える比較例である試料番号26においても同様に、焼成容器内のアルカリ雰囲気の希薄化により緻密化が阻害され相対密度が低下し、焼結体の諸特性が低下していることがわかる。
【0048】
表3は多孔体からなる焼成容器を用いた結果である。焼成容器の気孔率が30%以下の実施例である試料番号27乃至試料番号31、試料番号34乃至試料番号37においては、諸特性面で良好な結果が得られることがわかる。このうち焼成容器の気孔率が10〜25%の範囲にある実施例である試料番号28乃至試料番号30、試料番号34乃至試料番号36においては、特に電気特性面で良好な結果が得られることがわかる
【0049】
一方、焼成容器の気孔率が30%を越える比較例である試料番号32及び試料番号38においては、焼成容器内のアルカリ雰囲気の希薄化により緻密化が阻害され相対密度が低下し、焼結体の諸特性が低下していることがわかる。
【0050】
表4は通気孔を有する焼成容器と通気孔を有しない焼成容器とを用いて複数本焼成を行った結果である。通気孔を有する焼成容器を用いた実施例である試料番号40乃至試料番号48、試料番号50、試料番号52乃至試料番号55、試料番号57、試料番号58においては、優れた諸特性を有する焼結体が複数本同時に得られることがわかる。
【0051】
通気孔を有しない焼成容器を用いた実施例である試料番号51及び試料番号56においては、S/Rを所定の範囲内に調整して焼成容器内のアルカリ雰囲気を制御することで、同じく優れた諸特性を有する焼結体が複数本同時に得られることがわかる。
【0052】
一方、通気孔を有せず、且つ、S/Rが1未満の焼成容器を用いた比較例である試料番号39及び試料番号49においては、電気的特性面で劣る結果となった。試料番号39及び試料番号49の外表面の結晶相を同定したところ、アルミン酸ソーダ(NaAlO2)が検出された。試料番号39及び試料番号49の比抵抗値が高くなった原因は、該焼結体外表面にアルミン酸ソーダに富んだ高抵抗層が形成されたためと推察される。
【0053】
表5は多孔体からなる焼成容器を用いて複数本焼成を行った結果である。焼成容器の気孔率が30%以下の実施例である試料番号59乃至試料番号63においては、諸特性面で良好な焼結体が複数本同時に得られることがわかる。このうち焼成容器の気孔率が10〜25%の範囲にある実施例である試料番号60乃至試料番号62においては、特に電気特性面で良好な焼結体が複数本同時に得られることがわかる。
【0054】
一方、焼成容器の気孔率が30%を越える比較例である試料番号64においては、焼成容器内のアルカリ雰囲気の希薄化により緻密化が阻害され相対密度が低下し、焼結体の諸特性が低下していることがわかる。
【0055】
【発明の効果】
本発明の焼成方法によれば、簡便な手法により焼成容器内の揮散成分の雰囲気を最適制御した筒状セラミックス成形体の焼成方法を提供することができる。具体例としては、電気的特性及び機械的特性に優れたベータアルミナ質固体電解質管の工業的な量産方法として好適である。すなわち、ナトリウム硫黄電池の固体電解質管に用いる有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体を焼成するにあたり、該成形体の表面積と焼成容器の容積との関係を整合させて、焼成容器内のアルカリ雰囲気を最適に制御することで、焼結体密度、電気的特性及び機械的特性を良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】通気孔を有する焼成容器を用いて一本焼成する場合における有底円筒状セラミックス成形体の焼成容器内への配置状態の説明図。
【図2】通気孔を有する焼成容器を用いて複数本焼成する場合における有底円筒状セラミックス成形体の集合体の配置状態の説明図。
【図3】通気孔を有する焼成容器を用いて複数本焼成する場合における有底円筒状セラミックス成形体の集合体の焼成容器内への配置状態の説明図。
【符号の説明】
1 セラミックス成形体。
10 有底円筒状セラミックス成形体の集合体。
2 一本焼成用の焼成容器。
20 複数本焼成用の焼成容器。
3 一本焼成用の焼成容器のセッター。
30 複数本焼成用の焼成容器のセッター。
4 一本焼成用の焼成容器上部に設けた通気孔。
40 複数本焼成用の焼成容器上部に設けた通気孔。
5 一本焼成用の焼成容器下部に設けた通気孔。
50 複数本焼成用の焼成容器下部に設けた通気孔。
Claims (3)
- 有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体を、該有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体の開口端部の少なくとも一部を接地せしめて立てる工程と、該有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体の外周面の少なくとも一部を覆うように焼成容器を配置する工程とを有する有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体の焼成方法であって、
前記焼成容器は、通気性を確保するための多孔質体からなり、
前記セラミックス成形体の表面積の総計をR(単位:cm 2 )、前記焼成容器の容積をS(単位:cm 3 )とした場合において、
前記Rと前記Sとを、次の関係式
0.4≦S/R≦15
を満たすように設定し、
前記多孔質体からなる焼成容器の気孔率が、5%以上30%以下となるように設定することを特徴とする有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体の焼成方法。 - 有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体を、該有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体の開口端部の少なくとも一部を接地せしめて立てる工程と、該有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体の外周面の少なくとも一部を覆うように焼成容器を配置する工程とを有する有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体の焼成方法であって、
前記焼成容器に、通気性を確保するための通気孔を設け、
前記セラミックス成形体の表面積の総計をR(単位:cm 2 )、前記焼成容器の容積をS(単位:cm 3 )、前記焼成容器の通気孔の通気性を律する部位の断面積の総計をQ(単位:cm 2 )とした場合において、
前記Rと前記Sとを、次の関係式
0.4≦S/R≦15
を満たすように設定し、
前記Rと前記Qとを、次の関係式
20≦R/Q≦18105
を満たすように設定することを特徴とする有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体の焼成方法。 - 前記焼成容器がマグネシア、スピネル、アルミナ、ジルコニアのいずれかから選ばれるセラミックス製焼成容器であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有底円筒状ベータアルミナ質セラミックス成形体の焼成方法。
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