以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
本発明の一実施形態が適用されたブレーキ振動検知装置を有するブレーキ振動抑制装置について説明する。図1は、本実施形態のブレーキ振動抑制装置1のブロック構成を示したものである。以下、図1を参照して、本実施形態のブレーキ振動抑制装置1について説明する。
図1に示されるように、ブレーキ振動抑制装置1には、ブレーキペダル11、倍力装置12、マスタシリンダ(以下、M/Cという)13、ホイールシリンダ(以下、W/Cという)14、15、34、35、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50、ブレーキECU70、エンジンECU(E/G−ECU)71、トランスミッションECU(T/M−ECU)72、ストップスイッチ80および車輪速度センサ91〜94が備えられている。図2は、これら各部の詳細構造を示した図である。
図2に示されるように、車両に制動力を加える際にドライバによって踏み込まれるブレーキ操作部材としてのブレーキペダル11は、ブレーキ液圧発生源となる倍力装置12およびM/C13に接続されており、ドライバがブレーキペダル11を踏み込むと、倍力装置12にて踏力が倍力され、M/C13に配設されたマスタピストン13a、13bを押圧する。これにより、これらマスタピストン13a、13bによって区画されるプライマリ室13cとセカンダリ室13dとに同圧のM/C圧が発生させられるようになっている。
M/C13には、プライマリ室13cおよびセカンダリ室13dそれぞれと連通する通路を有するマスタリザーバ13eが備えられている。マスタリザーバ13eは、その通路を通じてM/C13内にブレーキ液を供給したり、M/C13内の余剰のブレーキ液を貯留したりする。なお、各通路は、プライマリ室13cおよびセカンダリ室13dから延びる各主管路の管路直径よりも非常に小さい直径に形成されるため、M/C13のプライマリ室13cおよびセカンダリ室13d側からマスタリザーバ13eへのブレーキ液の流入の際にはオリフィス効果を発揮するようになっている。
M/C13に発生させられるM/C圧は、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50を通じて各W/C14、15、34、35に伝えられるようになっている。これにより、各W/C14、15、34、35にW/C圧が加えられることになり、各W/C14、15、34、35に対応して設けられたブレーキキャリパ14a、15a、34a、35aにてディスクロータ14b、15b、34b、35bが挟まれ、各車輪FL、FR、RL、RRの制動力が発生させられるようになっている。
ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50は、第1配管系統50aと第2配管系統50bとを有して構成されている。第1配管系統50aは、左前輪FLと右後輪RRに加えられるブレーキ液圧を制御するもので、第2配管系統50bは、右前輪FRと左後輪RLに加えられるブレーキ液圧を制御するものであり、これら第1、第2配管系統50a、50bの2配管系によりX配管が構成されている。
以下、第1、第2配管系統50a、50bについて説明するが、第1配管系統50aと第2配管系統50bとは、略同様の構成であるため、ここでは第1配管系統50aについて説明し、第2配管系統50bについては、第1配管系統50aを参照して説明を省略する。
第1配管系統50aには、上述したM/C圧を左前輪FLに備えられたW/C14及び右後輪RRに備えられたW/C15に伝達する主管路となる管路Aが備えられている。この管路Aを通じて、各W/C14、15それぞれにW/C圧を発生させられるようになっている。
また、管路Aには、連通・差圧状態の2位置を制御できる電磁弁で構成された第1差圧制御弁16が備えられている。この第1差圧制御弁16は、通常ブレーキ状態では弁位置は連通状態とされており、ソレノイドコイルに電力供給が成されると弁位置が差圧状態になる。第1差圧制御弁16における差圧状態の弁位置では、W/C14、15側のブレーキ液圧がM/C圧よりも所定以上高くなった際にのみ、W/C14、15側からM/C13側へのみブレーキ液の流動が許可される。このため、常時W/C14、15側がM/C13側よりも所定圧力以上高くならないように維持され、それぞれの管路の保護が成されている。
そして、管路Aは、この第1差圧制御弁16よりもW/C14、15側の下流において、2つの管路A1、A2に分岐する。2つの管路A1、A2の一方にはW/C14へのブレーキ液圧の増圧を制御する第1増圧制御弁17が備えられ、他方にはW/C15へのブレーキ液圧の増圧を制御する第2増圧制御弁18が備えられている。
第1、第2増圧制御弁17、18は、連通・遮断状態を制御できる2位置弁として電磁弁により構成されている。そして、これら第1、第2増圧制御弁17、18が連通状態に制御されているときには、M/C圧あるいは後述するポンプ19からのブレーキ液の吐出によるブレーキ液圧をW/C14、15に加えることができるようになっている。
なお、ドライバが行うブレーキペダル11の操作による通常のブレーキ時においては、第1差圧制御弁16及び第1、第2増圧制御弁17、18は、常時連通状態に制御されている。
また、第1差圧制御弁16及び第1、第2増圧制御弁17、18には、それぞれ安全弁16a、17a、18aが並列に設けられている。第1差圧制御弁16の安全弁16aは、第1差圧制御弁16の弁位置が差圧状態である際にドライバによりブレーキペダル11が踏み込まれた場合に、M/C圧をW/C14、15に伝達可能とするために設けられている。また、各増圧制御弁17、18の安全弁17a、18aは、特にABS制御時において各増圧制御弁17、18が遮断状態に制御されている際に、ドライバによりブレーキペダル11が戻された場合において、この戻し操作に対応して左前輪FLおよび右後輪RRのW/C圧を減圧可能とするために設けられている。
管路Aにおける第1、第2増圧制御弁17、18及び各W/C14、15の間と調圧リザーバ20とを結ぶ減圧管路としての管路Bには、連通・遮断状態を制御できる2位置弁として、電磁弁からなる第1減圧制御弁21と第2減圧制御弁22とがそれぞれ配設されている。そして、これら第1、第2減圧制御弁21、22は、通常ブレーキ時には、常時遮断状態とされている。
調圧リザーバ20と主管路である管路Aとの間を結ぶように還流管路となる管路Cが配設されている。この管路Cには調圧リザーバ20からM/C13側あるいはW/C14、15側に向けてブレーキ液を吸入吐出するように、モータ60によって駆動される自吸式のポンプ19が設けられている。
なお、ポンプ19の吐出口側には、ポンプ19に対して高圧なブレーキ液が加えられないように、安全弁19aが備えられている。また、ポンプ19が吐出したブレーキ液の脈動を緩和するために管路Cのうちポンプ19の吐出側には固定容量ダンパ23が配設されている。
そして、調圧リザーバ20とM/C3とを接続するように補助管路となる管路Dが設けられている。この管路Dを通じ、ポンプ19にてM/C13からブレーキ液を吸入し、管路Aに吐出することで、TCS制御時やABS制御時などにおいて、W/C14、15側にブレーキ液を供給し、対象となる車輪のW/C圧を増加できるようになっている。
調圧リザーバ20は、管路Dに接続されてM/C3側からのブレーキ液を受け入れるリザーバ孔20aと、管路B及び管路Cに接続されW/C14、15から逃がされるブレーキ液を受け入れると共にポンプ19の吸入側にブレーキ液を供給するリザーバ孔20bとが備えられ、これらがリザーバ室20cと連通している。リザーバ孔20aより内側には、ボール弁20dが配設されている。このボール弁20dには、ボール弁20dを上下に移動させるための所定ストロークを有するロッド20fがボール弁20dと別体で設けられている。
また、リザーバ室20c内には、ロッド20fと連動するピストン20gと、このピストン20gをボール弁20d側に押圧してリザーバ室20c内のブレーキ液を押し出そうとする力を発生するスプリング20hが備えられている。
このように構成された調圧リザーバ20は、所定量のブレーキ液が貯留されると、ボール弁20dが弁座20eに着座して調圧リザーバ20内にブレーキ液が流入しないようになっている。このため、ポンプ19の吸入能力より多くのブレーキ液がリザーバ室20c内に流動することがなく、ポンプ19の吸入側に高圧が印加されないようになっている。
一方、上述したように、第2配管系統50bは、第1配管系統50aにおける構成と略同様となっている。つまり、第1差圧制御弁16は、第2差圧制御弁36に対応する。第1、第2増圧制御弁17、18は、それぞれ第3、第4増圧制御弁37、38に対応し、第1、第2減圧制御弁21、22は、それぞれ第3、第4減圧制御弁41、42に対応する。調圧リザーバ20は、調圧リザーバ40に対応する。ポンプ19は、ポンプ39に対応する。ダンパ23は、ダンパ43に対応する。また、管路A、管路B、管路C、管路Dは、それぞれ管路E、管路F、管路G、管路Hに対応する。以上のようにブレーキ振動抑制装置1における液圧配管構造が構成されている。
また、ブレーキECU70は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従って、RAMに記憶された各種データを用いて各種演算などの処理を実行するようになっている。
このブレーキECU70からの電気信号に基づいて、上記のように構成されたブレーキ液圧制御用アクチュエータ50における各制御弁16〜18、21、22、36〜38、41、42及びポンプ19、39を駆動するためのモータ60への電圧印加制御が実行されるようになっている。これにより、各W/C14、15、34、35に発生させられるW/C圧の制御が行われるようになっている。
例えば、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50は、ブレーキECU70からモータ60および電磁弁駆動用のソレノイドに対して制御電圧が印加されると、その印加電圧に応じてブレーキ液圧制御用アクチュエータ50内のブレーキ配管の経路が設定される。そして、設定されたブレーキ配管の経路に応じたブレーキ液圧がW/C14、15、34、35に発生させられ、各車輪の制動力を制御できるようになっている。
エンジンECU71は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従って、RAMに記憶された各種データを用いて各種演算などの処理を実行するようになっている。このエンジンECU71では、一般的なエンジン制御が実行されると共に、ブレーキECU70と協調したエンジン制御が実行される。例えば、車両走行中にドライバがアクセルペダル図示せず)の踏み込みを止めたときには、その時の車速およびギア位置に応じたエンジン回転数となってエンジンブレーキが発生させられることになる。しかしながら、エンジンECU71に対して、ブレーキECU70からブレーキ振動が検知された際に出力されるアイドル要求の指令信号が入力された場合には、エンジンブレーキが発生させれる期間中に、トランスミッションECU72とも協調して、エンジン回転数をアイドリング状態とする制御が行われるようになっている。
トランスミッションECU72は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従って、RAMに記憶された各種データを用いて各種演算などの処理を実行するようになっている。このトランスミッションECU72では、一般的なトランスミッション制御(ギア位置制御)が実行されると共に、ブレーキECU70と協調したトランスミッション制御が実行される。例えば、エンジンECU71の場合と同様に、トランスミッションECU72に対して、ブレーキECU70からブレーキ振動が検知された際に出力されるニュートラル要求の指令信号が入力された場合には、エンジンブレーキが発生させれる期間中に、ギア位置をニュートラルとする制御が行われるようになっている。
ストップスイッチ80は、制動検出手段に相当するものであり、ブレーキペダル11の踏み込みが為されたか否かを検出するもので、車両が制動中であるか否かの検出に用いられる。ドライバによってブレーキペダル11が踏み込まれると、このストップスイッチ80がオンされ、ストップスイッチ80からそれを示す検出信号が出力されるようになっている。
車輪速度センサ91〜94は、各車輪FL、FR、RL、RRそれぞれに備えられた、ほぼ等間隔に配置された多数(例えば48個)の歯部を有する歯車型のセンサロータ95〜98の歯部に対向した位置に配置される。この車輪速度センサ91〜94は、例えば電磁ピックアップ式のもので構成され、センサロータ95〜98に備えられた歯部の凹凸によって車輪速度センサ91〜94に備えられたマグネットが発生させる磁界の方向が変化することから、それによる磁気抵抗素子の出力変化に基づいてパルス信号(正弦波)となる検出信号を出力する。この検出信号により、センサロータ25〜28の回転状態、つまり車輪FL、FR、RL、RRの回転状態が検出されるようになっている。
次に、上記のように構成されたブレーキ振動抑制装置1の作動について説明する。
図3は、ブレーキ振動抑制装置1におけるブレーキECU70がプログラムに従って実行するブレーキ振動抑制制御処理の全体のフローチャートを示したものである。この図に示されるブレーキ振動抑制制御処理は、図示しないイグニッションスイッチがオンされている際に所定の演算周期毎に実行されるもので、各車輪FL、FR、RL、RR毎に順に実行される。
まず、ステップ100では、RAMに記憶されたデータのリセットなど、一般的な初期化処理が実行される。この後、ステップ110に進み、車輪速度パルスの取り込み処理が実行される。これにより、車輪速度センサ91〜94の検出信号が読み込まれる。続いて、ステップ120に進み、ステップ110で読み込まれた車輪速度センサ91〜94の検出信号から、周知の手法により、各車輪FL、FR、RL、RRの車輪速度が演算される。
次に、ステップ130では、ブレーキ振動検知判定が実行されることで、ブレーキ振動が発生しているか否かが検知される。図4は、このブレーキ振動検知判定の詳細を示したフローチャートである。
この図に示されるように、まず、ステップ200では、車輪速度センサ91〜94の検出信号から単位距離サンプリングを行う。ブレーキECU70のうち、この処理を実行する部分が通過時間検出手段に相当する。
ここでいう単位距離サンプリングとは、車輪速度センサ91〜94の検出信号に表されるセンサロータ95〜98の1歯又は数歯の通過時間を求めるものである。一般的に、車輪速度センサ91〜94からの検出信号から求められる車輪速度は、単位時間当たりにセンサロータ95〜98のどれだけの歯数分のパルスが検出されたかを検出することで求められるが、ここでは逆に、センサロータ95〜98の1歯又は数歯の通過時間、言い換えれば、センサロータ95〜98の1歯又は数歯分に相当する車輪FL、FR、RL、RRの距離走行する毎にかかった時間を求めている。
本実施形態では、具体的には、センサロータ95〜98の1歯の通過時間ΔTを求めるようにしており、図10に示されるセンサロータ95〜98の1歯分に相当する車輪速度センサ91〜94の1パルス分の幅(時間)がその通過時間ΔTとなる。
続いて、ステップ210では、過去の車輪1回転分における通過時間ΔTの平均値Taveが求められる。ブレーキECU70のうち、この処理を実行する部分が通過時間平均値算出手段に相当する。
平均値Taveは、次式により求められ、車輪1回転分におけるセンサロータ95〜98の1歯の通過時間ΔTをすべて加算し、これをセンサロータ95〜98の全歯数で割った値となる。なお、数式1におけるΔTnのnはセンサロータ95〜98に形成された歯の番号を示したものであり、歯の番号が1〜48の通過時間ΔTの総和を求めることで、車輪1回転にかかる時間が求まることになる。
次に、ステップ220に進み、ステップ210で求められた平均値Taveに対する比率αが演算される。ブレーキECU70のうち、この処理を実行する部分が比率演算手段に相当する。
比率αとは、次式により求められるもので、平均値Taveに対するセンサロータ95〜98の1歯1歯の通過時間ΔTkの比として表されるものである。なお、数式2におけるΔTkのkもセンサロータ95〜98に形成された歯の番号を示したものであり、ΔTkは、k番目の歯の通過時間ΔTに相当するものである。したがって、この処理により、各番号の歯について、平均値Taveに対する通過時間ΔTkの比が求められることになる。
この後、ステップ230に進み、平均化処理として、ステップ220で求められた比率αの平均値αaveが求められる。ブレーキECU70のうち、この処理を実行する部分が平均化処理手段に相当する。
平均値αaveは、ノイズ成分や車輪の加減速によるオフセット成分を除去するために、各歯毎に過去の車輪数回転分の比率αを加算して、その加算個数分で割ったものである。例えば、番号が1番の歯の比率αが過去数回から数十回加算され、その回数分で割ることで平均値αaveが求められると共に、平均値αaveを求める際の比率αの積算回数が例えば積算回数カウンタが1つインクリメントされることでブレーキECU70に記憶される。この演算式は次式のように表され、各歯ごとに平均値αaveが求められることになる。
ただし、数式3中において、Mは比率αの積算回数、αk(t−0)は番号がkの歯における最新の比率α、αk(t−n)は番号がkの歯におけるn周前の比率αを示している。すなわち、数式3は、過去の車輪M回転分の比率αを積算することを意味している。なお、平均値αaveを求める際の比率αの積算回数は任意に設定されるものであり、ノイズ成分や車輪の加減速によるオフセット成分を効果的に除去できる数であるのが望ましい。
続いて、ステップ240に進み、ステップ230で行われる平均化処理において、予め平均化数として設定された分の平均値αaveが求められたか否かが判定される。これは、ステップ230において平均値αaveを求めたときの比率αの積算回数が予め設定された平均化数に至っているか否かを判定することで行われる。
ここで否定判定された場合には、予め設定された平均化数に至るまで、上記各処理が繰り返される。そして、肯定判定されると、ステップ250に進み、平均化中のデータ、つまり平均値αaveを求める際に用いた比率αのデータがすべて制動中のものであるか否かが判定される。制動中であるか否かに関しては、ストップスイッチ80からオンされたことを示す検出信号が出力されているか否かに基づいて判定され、ストップスイッチ80からオンされたことを示す検出信号が出力されている最中に求められた比率αに関しては、制動中のものとして取り扱われる。
このステップで否定判定された場合には、ステップ260に進み、今度は平均化中のデータがすべて非制動中のものであるか否かが判定される。非制動中であるか否かに関しても、ストップスイッチ80からオンされたことを示す検出信号が出力されているか否かに基づいて判定され、ストップスイッチ80からオンされたことを示す検出信号が出力されていないときに求められた比率αに関しては、非制動中のものとして取り扱われる。そして、ここで否定判定された場合には、学習するのに適切なデータではないものとして、再びステップ200に戻り、肯定判定された場合には、ステップ270に進む。
ステップ270では、車輪1回転中の振幅量(ゲイン)A0が求められる。ブレーキECU70のうち、この処理を実行する部分が非制動中振幅量演算手段に相当する。
振幅量A0とは、非制動中における車輪1回転中の各歯それぞれの比率αの最大値と最小値との差に相当するものである。通常、非制動中には、ディスクロータ14b、15b、34b、35bの偏磨耗に起因する制動トルク変動が発生しないため、比率αは同一の値となる。しかしながら、ディスクロータ14b、15b、34b、35bの製造誤差によって各歯の幅にズレがある場合や車輪のアンバランスもしくはタイヤ空気圧の影響等、何らかの要因により比率αが同一の値とならない可能性がある。このため、非制動中における車輪1回転中の振幅量A0を求めることで、ディスクロータ14b、15b、34b、35bの製造誤差によって各歯の幅にズレがある場合や車輪のアンバランスもしくはタイヤ空気圧の影響等、何らかの要因に基づく比率αの変動を学習することが可能となる。
このようにして、振幅量A0が求められると、その振幅量A0がそのときの車輪速度と対応付けられて学習され、その後、再びステップ200に戻り、上記各処理が繰り返される。なお、振幅量A0がそのときの車輪速度と対応付けられて学習されるのは、車輪FL、FR、RL、RRの制動トルク変動が車輪遠心力に応じて変化するためであり、各車輪速度毎の学習値として振幅量A0を記憶しておくと好ましいからである。また、そのときの車輪速度は、ブレーキECU70でABS制御等を実行するに際して元々演算されていることから、それが利用される。勿論、車輪速度が元々演算されていない場合には、ブレーキECU70内に周知の車輪速度を検出(演算)する手段を設けるようにすれば良い。
一方、ステップ250で肯定判定された場合には、ステップ280に進み、車輪1回転中の振幅量Aが求められる。ブレーキECU70のうち、この処理を実行する部分が制動中振幅量演算手段に相当する。
振幅量Aは、制動中における車輪1回転中の各歯それぞれの比率αの最大値と最小値との差に相当するものである。この振幅量Aは、ディスクロータ14b、15b、34b、35bが偏磨耗しているか否かによって変化する。これは、以下の理由による。
上述したように、比率αは、平均値Taveに対するセンサロータ95〜98の1歯1歯の通過時間ΔTkの比であるため、通過時間ΔTkが長いほど大きく、短いほど小さくなる。この通過時間ΔTkは、ディスクロータ14b、15b、34b、35bが偏磨耗していなければ、ディスクロータ14b、15b、34b、35bの製造誤差によって各歯の幅にズレがある場合や車輪のアンバランスもしくはタイヤ空気圧の影響等を要因とする変動を除けばほぼ同一の値となる。ところが、ディスクロータ14b、15b、34b、35bが偏磨耗していると、偏磨耗した部分と対応する位置に備えられた歯に関しては小さく、その他の部分と対応する位置に備えられた歯に関しては大きくなる。したがって、ディスクロータ14b、15b、34b、35bが偏磨耗しているか否かにより、通過時間ΔTkが変動するのである。
図5、図6は、ディスクロータ14b、15b、34b、35bが偏磨耗していない場合と偏磨耗している場合それぞれの比率αの変動を示したものである。これらの図に示されるように、ディスクロータ14b、15b、34b、35bが偏磨耗していない場合には、各歯の比率αは約1に収束することになるが、ディスクロータ14b、15b、34b、35bが偏磨耗している場合には、各歯の比率αが約1を中心として大小に変動していることが分かる。
このように、ディスクロータ14b、15b、34b、35bが偏磨耗しているか否かによって車輪1回転中の各歯それぞれの比率αが変動するため、振幅量Aも変動するのである。
なお、図5において、比率αが1から若干ずれているのは、比率αが過去の車輪1回転分の平均値Taveを用いて演算されているためである。また、この図は、過去の車輪1回転分の平均値Taveとして、ディスクロータ14b、15b、34b、35bの歯の番号が変わる毎に、通過時間ΔTの平均化に用いられる歯も1つずつずらしていくという移動平均で求めた値を適用した場合を示している。ただし、これは単なる一例であり、例えば、1〜48の番号の歯それぞれに関して比率αを求めるまでは、前回もしくは前々回の車輪1回転分の平均値Taveを用い、車輪1回転分の比率αを求め終わったら、今度は、今回もしくは前回の車輪1回転分の平均値Taveを用いて次回の車輪1回転分の比率αを求めるという手法を採用することもできる。
続いて、上記のようにして振幅量Aが求められると、ステップ290以降に進み、ブレーキ振動検知が行われる。
具体的には、ステップ290にて、ステップ280で求められた振幅量Aとステップ270で学習された振幅量A0との差が求められる。このとき、ステップ270で学習された振幅量A0としては、ステップ280で振幅量Aを求めたときの車輪速度と対応するものが用いられる。
これにより、ステップ280で求められた振幅量Aからディスクロータ14b、15b、34b、35bの製造誤差等に起因して生じる振幅量A0が取り除かれ、ディスクロータ14b、15b、34b、35bの偏磨耗に起因して発生する比率αの変動分のみが抽出される。そして、ここで求められた差が、偏磨耗の検知基準として予め定められた所定のしきい値と比較され、この所定のしきい値を超えているか否かが判定される。
このステップで否定判定された場合には、ディスクロータ14b、15b、34b、35bは偏磨耗しておらず、ブレーキ振動は発生していない(もしくはブレーキ振動の予兆が無い)ものとして、ステップ300に進んでブレーキ振動未検知との判定結果が出される。例えば、ブレーキ振動検知フラグがリセットされるなどにより、その判定結果が示される。
一方、このステップで肯定判定された場合には、ディスクロータ14b、15b、34b、35bが偏磨耗しており、ブレーキ振動が発生している(もしくはブレーキ振動の予兆がある)ものとして、ステップ310に進んでブレーキ振動検知との判定結果が出される。例えば、ブレーキ振動検知フラグがセットされるなどにより、その判定結果が示される。
なお、本実施形態の場合、上記ステップ200〜ステップ290を通じて求められた振幅量Aと振幅量A0との差がブレーキ振動に応じた振動ゲインに相当するものであり、ブレーキECU70のうち、これらの処理を実行する部分がゲイン演算手段に相当する。また、ステップ290〜310において、振動ゲインに基づくブレーキ振動の検知を行っているが、ブレーキECU70のうち、これらの処理を実行する部分がブレーキ振動検知手段に相当する。
以上のようにして、図3のステップ130におけるブレーキ振動検知判定が完了すると、次に、ステップ140に進み、走行時ブレーキ要求判定処理が実行される。この処理は、ブレーキ振動検知判定によってブレーキ振動が発生していることが検知されたか否かという判定結果に基づいて実行されるもので、ブレーキ振動が検知されたことが例えばブレーキ振動検知フラグがセットされること等によって示されていた場合に実行される。以下、この走行時ブレーキ要求判定処理について、図7に示す走行時ブレーキ要求判定処理のフローチャートを参照して説明する。
まず、ステップ400では、制動中であるか否かが判定される。制動中であるか否かに関しては、ストップスイッチ80からオンされたことを示す検出信号が出力されているか否かに基づいて判定され、ストップスイッチ80からオンされたことを示す検出信号が出力されていれば制動中として取り扱われる。
そして、この処理で肯定判定された場合には、ステップ410に進み、走行時のブレーキ制御を要求しないことを示す走行時ブレーキ未要求という判定結果が出される。例えば、走行時ブレーキ要求フラグがリセットされるなどにより、その判定結果が示されることになる。
一方、この処理で否定判定された場合には、ステップ420に進み、アクセルオフされているか否かが判定される。ブレーキECU70のうち、この処理を実行する部分がアクセルオフ検出手段に相当する。この処理は、例えばエンジンECU71で扱われている情報の中からアクセルのオンオフを示す情報(例えばスロットル開度情報)をブレーキECU70で読み込み、この情報に基づいて行われる。
また、この処理で否定判定された場合にも、ステップ410に進み、走行時ブレーキ未要求という判定結果が出される。そして、この処理で肯定判定された場合にのみ、ステップ430に進み、走行時のブレーキ制御を要求することを示す走行時ブレーキ要求という判定結果が出される。例えば、走行時ブレーキ要求フラグがセットされるなどにより、その判定結果が示されることになる。
ここで、走行時のブレーキ制御について説明する。本実施形態において、走行時のブレーキ制御とは、車両走行中にブレーキ振動を抑制すべく、意図的にホイールシリンダ圧を発生させることでブレーキパッド14a、15a、34a、35aをディスクロータ14b、15b、34b、35bに接触させ、ディスクロータ14b、15b、34b、35bを磨耗させることを示している。具体的には、ディスクロータ14b、15b、34b、35bのうちの偏磨耗していない場所(非磨耗部分)を積極的に磨耗させることで、偏磨耗してしまったディスクロータ14b、15b、34b、35bを全体的に磨耗させて偏磨耗の度合いが少なくなるように、好ましくは偏磨耗が無くなるようにする。
上述したように、ステップ400において、制動中であるか否かが判定され、制動中である場合には、走行時のブレーキ制御が為されないようにされている。すなわち、制動中には、車両を停止させるという本来の目的を優先させ、制動中では無い時にディスクロータ14b、15b、34b、35bを磨耗させるようにしている。
一般的に、ディスクロータにブレーキパッドを接触させれば、これらの摩擦力により、ディスクロータが磨耗する。しかしながら、ディスクロータの磨耗量と、ブレーキパッドをディスクロータに押さえ付ける押圧力との関係は、必ずしも比例関係となるわけではない。この関係は、例えば、ディスクロータの材質によって変わるものであり、ブレーキパッドがディスクロータに僅かに触る程度、つまり上記押圧力が非常に小さい場合に最もディスクロータの磨耗量が大きくなるような材質のものもあれば、押圧力が大きくなるに従ってディスクロータの磨耗量が大きくなるような材質のものもある。
これに対し、通常の制動時には、高い制動力を得ることを優先させるために、ブレーキ効率が高くなるように、ディスクロータへのブレーキパッドの押圧力、つまりホイールシリンダ圧が調整されることになるため、ディスクロータの磨耗量が大きくなるときの押圧力とは異なる。
したがって、本実施形態では、走行中に、ディスクロータ14b、15b、34b、35bの磨耗量が大きくなるようなホイールシリンダ圧に制御することで、ディスクロータ14b、15b、34b、35bの非磨耗部分を積極的に磨耗させる。なお、ディスクロータ14b、15b、34b、35bの磨耗量が小さかったとしても、勿論、ディスクロータ14b、15b、34b、35bの偏磨耗の度合いを小さくできる。ただし、走行時のブレーキ制御が長期に亘って必要とされることから、ディスクロータ14b、15b、34b、35bの磨耗量が大きくなるホイールシリンダ圧で行うのが好ましい。このようなホイールシリンダ圧は、予め、ディスクロータ14b、15b、34b、35bの材質毎に実験を行なって調べることが可能である。
さらに、本実施形態では、このような走行時のブレーキ制御をアクセルオフの時に実行されるようにしている。具体的には、ステップ420において、アクセルオフされているか否かを判定し、アクセルオフされている場合にのみ走行時のブレーキ制御が実行されるようにしている。これは、通常、走行中にアクセルオフされた時にエンジンブレーキが掛けられることになるため、このエンジンブレーキの代わりに走行時のブレーキ制御が実行されるようにするためである。
すなわち、エンジンブレーキが掛かる時には、ドライバはそれを認識しているため、ブレーキペダル11が踏み込まれていないときに車両が減速してもドライバは違和感を感じない。このため、エンジンブレーキの代わりに走行時のブレーキ制御が行われるようにすれば、車両が減速してもドライバに違和感を与えないで済む。
このようにして、走行時のブレーキ制御を行われ、上記ステップ400〜430において、走行時のブレーキ制御を行うタイミングか否かが判定されるようになっている。
そして、ステップ430において、走行時のブレーキ制御を要求することを示す走行時ブレーキ要求という判定結果が出されると、ステップ440に進み、その時の車速(車体速度)やギア位置からエンジンブレーキ力が演算される。
車速に関しては、各車輪FL、FR、RL、RRの車輪速度に基づいて車速を求める一般的な手法(車輪速度のうちの最も大きいものを用いる手法や、最も遅いものを除いた3つの平均値を用いる手法)等で求めても良いし、車速が車両に搭載された他のECUで求められている場合には、そのECUから情報を得るようにしても良い。
また、ギア位置に関しては、トランスミッションECU72からのギア位置情報で得ることが可能である。
なお、エンジンブレーキ力の演算に関しては、その時の車速とギア位置が分かれば、周知の手法(例えば、マップから求める手法等)によって行うことができるため、ここでは省略する。
このように、走行時ブレーキ要求判定処理が実行され、走行時ブレーキ要求の判定が為されると共に、走行時ブレーキ要求が為された場合には、エンジンブレーキ力が演算されるようになっている。そして、この走行時ブレーキ要求判定処理が完了すると、図3におけるステップ150に進み、エンジン(E/G)およびトランスミッション(T/M)協調処理が実行される。図8に、エンジンおよびトランスミッション協調処理のフローチャートを示し、この図を参照して説明する。
まず、ステップ500では、走行時ブレーキ要求が為されているか否かが判定される。この処理は、上記走行時ブレーキ要求判定処理での判定結果に基づいて行われるもので、例えば、上述したステップ430で走行時ブレーキ要求フラグがセットされていれば肯定判定され、ステップ410で走行時ブレーキ要求フラグがリセットされていれば否定判定される。
ここで肯定判定された場合には、ステップ510に進んで、ブレーキ振動が検知されているか否かが判定される。この処理は、図3のステップ130におけるブレーキ振動検知判定の判定結果に基づいて行われるものであり、例えば図4におけるステップ310でブレーキ振動検知フラグがセットされていれば肯定判定されるようになっている。
このステップで肯定判定された場合には、ステップ520に進んでエンジンECU71に対してアイドル要求が出されると共に、ステップ530に進んでトランスミッションECU72に対してニュートラル要求が出される。
アイドル要求とは、エンジン回転数をアイドル状態に制御するようにエンジンECU71に対して指令信号を出力することを意味しており、ニュートラル要求とは、ギア位置をニュートラルに制御するようにトランスミッションECU72に対して指令信号を出力することを意味している。このため、これらの要求が出されると、エンジンECU71はエンジン回転数をアイドル状態に制御し、トランスミッションECU72はギア位置をニュートラルにする。
すなわち、走行時のブレーキ制御は、エンジンブレーキの代わりに実行されるものであるため、この制御が行われる際には、エンジンブレーキが行われないことになる。このため、エンジンブレーキが掛からないように、エンジンECU71およびトランスミッションECU72に対して、上記要求が出されるのである。
このように、エンジンECU71およびトランスミッションECU72への各要求が出されると、処理が完了となる。
一方、ステップ500で否定判定された場合、もしくは、ステップ510で否定判定された場合には、ステップ540に進み、エンジンECU71およびトランスミッションECU72への各要求が解除される。これにより、通常のエンジンブレーキが掛けられることになる。
以上のようにして、エンジンおよびトランスミッション協調処理が完了すると、図3のステップ160に進み、上述した図7のステップ440で演算されたエンジンブレーキ力を制動力目標値として設定される。そして、ステップ170に進み、ステップ160で設定された制動力目標値を実現するためのアクチュエータ駆動要求処理が実行され、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50に対して駆動要求を示すアクチュエータ駆動信号が出力される。
これにより、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50に備えられたモータ60や各種制御弁が駆動され、制動力目標値に相応する制動力が発生させられることで、ブレーキ振動が発生していることが検知された車輪(以下、振動車輪という)のディスクロータ14b、15b、34b、35bの非磨耗部分が削れるようにする。すなわち、振動車輪のディスクロータ14b、15b、34b、35bの非磨耗部分にブレーキパッド14a、15a、34a、35aが位置しているタイミングでW/C圧が加えられ、非磨耗部分が削られる。
このようなタイミングは、上述したステップ280で説明したように、センサロータ95〜98の各歯それぞれについて比率αを求めていることから、その比率αに基づいて求められる。つまり、比率αが大きくなっている場所が非磨耗部分となり、比率αが小さくなっている場所が偏磨耗した部分となる。このため、比率αが大きくなるタイミングでW/C圧が加えられ、非磨耗部分が削られる。
ただし、ディスクロータ14b、15b、34b、35bの磨耗量を多くできるW/C圧とした場合には、振動車輪に対してのみW/C圧を掛けたとしても、制動力目標値に相応する制動力を発生させることができない場合がある。また、制動車輪に対してのみW/C圧をかければ、車両の片側についてのみ制動力が発生させられるような状況になるため、あまり好ましくない。
このため、振動車輪に対して左右逆側に位置する車輪もしくは振動車輪に対して対角に位置する車輪に対しても振動車輪と同様のW/C圧を掛け、それでも制動力目標値に足りない場合には残る2輪に対しても足りない分の制動力に応じたW/C圧を掛けるようにすると良い。
例えば、左前輪FLにブレーキ振動が発生していることが検知された場合には、左前輪FLおよびそれと対称的に配置された右前輪FRのW/C14、34に関してはディスクロータ14b、34bの磨耗量を大きくするのに適したW/C圧となるように、後輪RL、RRのW/C15、35に関しては制動力目標値から左前輪FLおよび右前輪FRによって発生させられる制動力分を減算した制動力が発生させられるW/C圧となるように調整する。
具体的には、ブレーキECU70からの電気信号に基づいて第1、第2差圧制御弁16、36が差圧状態にされると共に、モータ60がオンされることでポンプ19、39が駆動される。そして、第1〜第4増圧制御弁17、18、37、38の連通、遮断状態を適宜調整すると共に、第1〜第4減圧制御弁21、22、41、42の連通、遮断状態を適宜調整することで、W/C14、15、34、35におけるW/C圧が調整される。
このようにすれば、振動車輪のディスクロータ14bの非磨耗部分を削りつつ、エンジンブレーキ分に相当する制動力を発生させることが可能となる。
参考として、図9に、本実施形態のブレーキ振動抑制装置1によるブレーキ振動抑制制御が実行された場合の各部のタイミングチャートを示す。この図に示されるように、アクセル開度がゼロになると共に、エンジン回転数がアイドル状態とされ、ギア位置がニュートラルに設定される。そして、制動力目標値がエンジンブレーキ相当分に設定される。このように、エンジンブレーキの代わりに、W/C圧の加圧による制動力を発生させ、その制動力を発生させる際に振動車輪のディスクロータ14b、15b、34b、35bの非磨耗部分を削るようになっている。
以上説明した本実施形態のブレーキ振動抑制装置1による効果について説明する。
本実施形態のブレーキ振動抑制装置1によれば、ブレーキ振動が検知された場合に、振動車輪のディスクロータ14b、15b、34b、35bの非磨耗部分を削るようなブレーキ振動抑制制御を行うようにしている。
これにより、振動車輪のディスクロータ14b、15b、34b、35bの偏磨耗を徐々に少なくすることが可能となり、偏磨耗に起因して発生するブレーキ振動を抑制することが可能となる。
そして、本実施形態では、ブレーキ振動抑制制御をエンジンブレーキ時にのみ実行するようにしている。このため、ブレーキペダル11を踏み込んでいないのにも関わらず、制動力が発生しているというような違和感をドライバに与えないようにすることができる。
さらに、振動車輪のディスクロータ14b、15b、34b、35bの非磨耗部分を削る際に、振動車輪と左右対称位置もしくは対角に位置する車輪に関しても制動力を発生させるようにしている。このため、車両の片側にのみ制動力が発生させられてしまうことを防止することができ、車両走行安定性を確保することが可能となる。
(他の実施形態)
上記実施形態では、エンジンブレーキ時に振動車輪のディスクロータ14b、15b、34b、35bの非磨耗部分を削るようにしているが、必ずしもエンジンブレーキ時のみに限るものではない。要は、振動車輪のディスクロータ14b、15b、34b、35bの非磨耗部分を削ることで、ディスクロータ14b、15b、34b、35bの偏磨耗を小さくできれば、ブレーキ振動抑制の効果を得ることができる。
また、ドライバに違和感を与えないタイミングとして、エンジンブレーキ時を例に挙げて説明したが、駆動トルクが十分に発生しているような状況、つまり、制動力が多少掛けられたとしても、ドライバが気付かないような状況であれば、ドライバに違和感を与えないようにすることができる。
さらに、上記実施形態では、エンジンブレーキに代えて振動車輪のディスクロータ14b、15b、34b、35bの非磨耗部分を削るという制御を行っているが、これらを協調することも可能である。つまり、エンジンブレーキを発生させるに当たり、振動車輪のディスクロータ14b、15b、34b、35bの非磨耗部分を削る時に発生する制動力分を減らした分だけエンジンブレーキを発生させるようにしても良い。
また、上記実施形態では車輪速度センサ91〜94として、電磁ピックアップ式のものを用いる例を挙げているが、センサロータ95〜98の歯部の移動に伴って検出信号が変動するものであれば、他の周知の形式のものであっても構わない。また、上記実施形態では、センサロータ95〜98として歯車型のものを用いる例を挙げたが、非磁性材料の回転体に磁性材料を埋め込み、その磁性材料を等間隔で露出させることで歯車型のものと同等の構成としたロータスイッチも、本発明でいうセンサロータに含まれる。この場合、ロータスイッチのうち等間隔で露出する複数の磁性材料が歯の凸部に相当し、磁性材料が露出していない部分、つまり露出する複数の磁性材料の間に位置する部分が歯の凹部に相当することになり、歯車型のセンサロータ95〜98と同様の役割を果たす。
また、上記実施形態では、過去の車輪1回転分の平均値Taveを用いて各歯の比率αを求めるようにしているが、今回各歯が通過した後に車輪1回転分の平均値Taveを求め、その平均値Taveを用いて各歯の比率αを求めるようにしても構わない。
また、上記実施形態では、比率αが平均値Taveに対するセンサロータ95〜98の1歯1歯の通過時間ΔTkの比として表されるものとして説明したが、数歯の通過時間とすることもできる。また、実質的に平均値Taveに対するセンサロータ95〜98の1歯1歯の通過時間ΔTkの比率と考えられるものであっても構わない。例えば、1歯1歯の通過時間ΔTの平均値Taveではなく、車輪1回転分のトータルの通過時間に対する1歯もしくは複数歯の通過時間の比率であっても構わない。
さらに、上記実施形態では、ブレーキ操作部材に相当するブレーキペダル11が操作させると、M/C13および圧力調整手段に相当するブレーキ液圧制御用アクチュエータ50を介してホイールシリンダ14、15、34、35にブレーキ液圧が加えられる油圧式のブレーキ振動抑制装置1について説明したが、電気式であっても構わない。この場合、モータを駆動することでホイールシリンダに対して圧力を加えることになるため、モータが圧力調整手段に相当することになる。
なお、各図中に示したステップは、各種処理を実行する手段に対応するものである。
1…ブレーキ振動抑制装置、11…ブレーキペダル、13…M/C、14、15、34、35…W/C、14a、15a、34a、35a…ブレーキキャリパ、14b、15b、34b、35b…ディスクロータ、16、36…差圧制御弁、17、18、37、38…増圧制御弁、21、22、41、42…減圧制御弁、50…ブレーキ液圧制御用アクチュエータ、50a、50b…第1、第2配管系統、70…ブレーキECU、71…エンジンECU、72…トランスミッションECU、80…ストップスイッチ、91〜94…車輪速度センサ、95〜98…センサロータ。